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特許6347839車両を動作させる方法及び運転者支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347839
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】車両を動作させる方法及び運転者支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20180618BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20180618BHJP
   B60W 30/16 20120101ALI20180618BHJP
【FI】
   B60W30/10
   G08G1/16 C
   B60W30/16
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-547007(P2016-547007)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-508652(P2017-508652A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2014076265
(87)【国際公開番号】WO2015106875
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】102014200687.2
(32)【優先日】2014年1月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャーロッテ グリーネンファール
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−240816(JP,A)
【文献】 特開2010−247571(JP,A)
【文献】 特開2008−006995(JP,A)
【文献】 特開2011−156955(JP,A)
【文献】 米国特許第09081387(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−50/16
G08G 1/00− 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(301)を動作させる方法であって、
・第1時点に、第1目標軌跡(403)を求め(101)、当該第1目標軌跡(403)に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御する(103)、
方法において、
・前記第1時点よりも時間的に後の第2時点に、前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御可能であるか否かをチェックし(105)、
・前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御可能である場合には、前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御し(107)、
・前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御可能でない場合には、第2目標軌跡を求め(109)、当該第2目標軌跡(109)に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御(111)、
前記第1目標軌跡(403)のうち、前記第2時点において前記現行軌跡の制御のために既に使用済みの部分(601)を除いた前記第1目標軌跡(403)に相当する、残留目標軌跡(603)を求め、
前記第2時点に、走行路(303b)を求め、
前記残留目標軌跡(603)が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在するかどうかをチェックし、
前記残留目標軌跡(603)が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在する場合には、前記残留目標軌跡(603)に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御し、
前記残留目標軌跡(603)が、前記走行路(303b)の内側に完全には存在しない場合には、前記第2目標軌跡に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御し、
前記残留目標軌跡(603)の端部を、前記第2時点における又は前記第2時点後における前記車両(301)の位置(405,407,503)と結合する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記走行路(303b)は、横方向に予め定められた長さを有し、
前記第1目標軌跡(403)は、解析関数を用いて記述され、これによって前記残留目標軌跡を、前記解析関数に基づいて前記走行路(303b)の長手方向端部(415)まで延長させ、
延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在するか否かをチェックし、
延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在する場合には、延長された前記残留目標軌跡に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御し、
延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路(303b)の内側に完全には存在しない場合には、前記第2目標軌跡に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御する、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記現行軌跡の制御は、車両動作の長手方向の制御、及び/又は、車両動作の横方向の制御を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両(301)の前を走行する別の車両(803)が存在する場合であって、且つ、前記車両(301)と前記別の車両(803)との間の目標間隔に合わせて現行間隔を制御するために、前記車両動作の長手方向の制御を行う場合には、前記現行間隔と前記目標間隔との差が、予め定められた差の閾値よりも小さければ、前記現行軌跡を引き続き制御するために前記第1目標軌跡(403)を使用する、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
処理装置(203)上で実行された場合に、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項に記載のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータ読み出し可能なデータ担体。
【請求項7】
処理装置(203)を含む、車両(301)用の運転者支援システム(201)であって、
前記処理装置(203)は、
・第1時点に、第1目標軌跡(403)を求め(101)、当該第1目標軌跡(403)に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御する(103)、
車両(301)用の運転者支援システム(201)において、
前記処理装置(203)は、
・前記第1時点よりも時間的に後の第2時点に、前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御可能であるか否かをチェックし(105)、
・前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御可能である場合には、前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御し(107)、
・前記車両(301)の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡(403)に基づいて制御可能でない場合には、第2目標軌跡を求め(109)、当該第2目標軌跡(109)に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御する(111)、
ように構成されており
前記処理装置(203)は、
前記第1目標軌跡(403)のうち、前記第2時点において前記現行軌跡の制御のために既に使用済みの部分(601)を除いた前記第1目標軌跡(403)に相当する、残留目標軌跡(603)を求め、
前記第2時点に、走行路(303b)を求め、
前記残留目標軌跡(603)が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在するかどうかをチェックし、
前記残留目標軌跡(603)が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在する場合には、前記残留目標軌跡(603)に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御し、
前記残留目標軌跡(603)が、前記走行路(303b)の内側に完全には存在しない場合には、前記第2目標軌跡に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御する、
ように構成されており、
前記処理装置(203)は、
前記残留目標軌跡(603)の端部を、前記第2時点における又は前記第2時点後における前記車両(301)の位置(405,407,503)と結合する、
ように構成されている、
ことを特徴とする、車両(301)用の運転者支援システム(201)。
【請求項8】
前記走行路(303b)は、横方向において予め定められた長さを有し、
前記処理装置(203)は、
解析関数を用いて前記第1目標軌跡(403)を記述し、これによって前記残留目標軌跡を、前記解析関数に基づいて前記走行路(303b)の長手方向端部(415)まで延長させ、
延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在するか否かをチェックし、
延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路(303b)の完全に内側に存在する場合には、延長された前記残留目標軌跡に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御し、
延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路(303b)の内側に完全には存在しない場合には、前記第2目標軌跡に基づいて前記車両(301)の現行軌跡を制御する、
ように構成されている、請求項に記載の運転者支援システム(201)。
【請求項9】
前記現行軌跡の制御は、車両動作の長手方向の制御、及び/又は、車両動作の横方向の制御を含む、
請求項7又は8に記載の運転者支援システム(201)。
【請求項10】
前記処理装置(203)は、
前記車両(301)の前を走行する別の車両(803)が存在する場合であって、且つ、前記車両(301)と前記別の車両(803)との間の目標間隔に合わせて現行間隔を制御するために、前記車両動作の長手方向の制御を行う場合には、前記現行間隔と前記目標間隔との差が、予め定められた差の閾値よりも小さければ、前記現行軌跡を引き続き制御するために前記第1目標軌跡(403)を使用する、
ように構成されている、請求項に記載の運転者支援システム(201)。
【請求項11】
前記運転者支援システム(201)は、渋滞走行支援システムとして構成されている、
請求項乃至10のいずれか一項に記載の運転者支援システム(201)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を動作させる方法に関する。本発明はさらに、コンピュータプログラム製品と、運転者支援システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、車両の走行機能や、例えば自動間隔制御、衝突警告、車線維持支援、歩行者認識機能を備える暗視カメラ、車両を自動で駐車するための駐車支援、死角にある車両を検出するための車線変更支援等のような他の機能を支援する、様々な運転支援システムが知られている。様々な運転者支援システムが、記事“Zukunft der Fahrerassistenz mit neuen E/E-Architekturen(新しいE/Eアーキテクチャによる運転者支援の未来)”ATZ Elektronik、2011年4月号、第8乃至15頁に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の概要
本発明の基礎となる課題は、車両を動作させるための改善された方法を提供することとすることができる。
【0004】
本発明の基礎となる課題はさらに、対応するコンピュータプログラム製品を提供することとすることができる。
【0005】
本発明の基礎となる課題はまた、対応する運転者支援システムを提供することとすることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、各独立請求項のそれぞれの対象によって解決される。有利な実施形態は、各従属請求項のそれぞれの対象である。
【0007】
1つの態様によれば、車両を動作させる方法であって、
・第1時点に、第1目標軌跡を求め、当該第1目標軌跡に基づいて前記車両の現行軌跡を制御する、方法において、
・前記第1時点よりも時間的に後の第2時点に、前記車両の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡に基づいて制御可能であるか否かをチェックし、
・そうである場合には、前記車両の現行軌跡を、引き続き前記第1目標軌跡に基づいて制御し、
・そうでない場合には、第2目標軌跡を求め、当該第2目標軌跡に基づいて前記車両の現行軌跡を制御する、方法が提供される。
【0008】
別の1つの態様によれば、処理装置上で実行された場合、又は、コンピュータ読み出し可能なデータ担体に保存されている場合に、車両を動作させる方法を実施するプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0009】
別の1つの態様によれば、車両を動作させる方法を実施するように構成された処理装置を含む、車両用の運転者支援システムが提供される。
【0010】
別の1つの態様によれば、運転者支援システムを含む車両が提供される。
【0011】
本発明はつまり、当初に計算した、即ち特に前回のサイクルで計算した第1目標軌跡が、引き続き、即ち現在のサイクルにおいて、車両の現行軌跡を制御するために使用可能であるか否かをチェックするという着想を特に含む。そうである場合には、車両の現行軌跡が、引き続き第1目標軌跡に基づいて制御される。そうでない場合には、第2目標軌跡が求められ、当該第2目標軌跡に基づいて、車両の現行軌跡が制御される。
【0012】
従来技術では、第2時点には常に第2目標軌跡が計算されていた。第1目標軌跡は、廃棄されていたのである。本発明によれば、チェック結果に応じて、引き続き第1目標軌跡を、車両の現行軌跡を制御するための基礎として使用するので、計算時間及び計算コストを有利にも削減することが可能となる。このことは、実時間応用の場合に特に有利である。
【0013】
1つの実施形態では、前記第1目標軌跡のうち、前記第2時点において前記現行軌跡の制御のために既に使用済みの部分を除いた前記第1目標軌跡に相当する、残留目標軌跡を求め、前記第2時点に、走行路を求め、前記残留目標軌跡が、前記走行路の完全に内側に存在するかどうかをチェックし、そうである場合には、前記残留目標軌跡に基づいて前記車両の現行軌跡を制御し、そうでない場合には、前記第2目標軌跡に基づいて前記車両の現行軌跡を制御することができる。
【0014】
このことはつまり、これから実際に走行すべき区間(残留目標軌跡)だけが考慮されるということを特に意味している。既に走行済みの区間(既に制御のために使用された部分)はこれ以上考慮されない。走行路は、基本的に走行可能な平面を規定するものであり、この平面の内側において車両がガイドされる。走行路の外側には、通常は静止した障害物が存在しているか、さもなければ、走行路の外側を車両が走行すべき場合であれば、乗り心地の損失を覚悟しなければならない。しかしながら、残留目標軌跡が走行路の内側に存在する限り、上記の欠点を回避することができる。特に、障害物との衝突を回避することができる。特に有利には、乗り心地の損失を阻止することができる。
【0015】
さらには、例えばセンサの脆弱性に起因した走行路のノイズによって引き起こされる又は生じる、走行特性に対する影響、即ち制御に対する影響は、第2時点に常に第2目標軌跡が計算されていた従来技術に比べてより小さくなる。なぜなら、1つの実施形態によれば、走行路は、少なくとも1つのセンサ(例:ビデオセンサ、レーザセンサ、超音波センサ、レーダセンサ、ライダーセンサ)によって検出される、車両周囲の少なくとも1つのパラメータに基づいて求められるからである。このようなセンサはノイズを有する可能性があり、従って、これによって間接的に、走行路のノイズも引き起こされるおそれがある。制御のために引き続き第1目標軌跡が使用可能であるためには、残留目標軌跡が走行路の内側に存在していなければならないという条件によって、ノイズの影響が低減されるか、又はそれどころか回避されさえする。
【0016】
1つの実施形態によれば、第1時点には、第1走行路を求めることができる。第1走行路は、1つの実施形態によれば、前述した走行路と同じようにして求めることができる。第1目標軌跡は、第1走行路の完全に内側に配置されるように求められる。このことはつまり、第1時点に、第1走行路が求められ、この場合に、当該第1走行路の内側にある第1目標軌跡が求められるということを特に意味している。より良好に区別するために、第1走行路を含む実施形態では、第2時点に求められる走行路を、別の走行路と呼ぶことができる。
【0017】
さらなる1つの実施形態によれば、前記残留目標軌跡を、前記第2時点における又は前記第2時点後における前記車両の位置と結合することができる。特に、残留目標軌跡は、第2時点における又は第2時点後における車両の走行方向と結合される。
【0018】
この場合には有利にも、車両が、場合によっては第2時点において第1目標軌跡上に存在しない位置を有するという状況が考慮される。このような状況は例えば、外部影響、例えば横風、及び/又は位置検出時のノイズに起因する。理想的なケースでは、車両は、第2時点には第1目標軌跡上に配置されている、又は位置している。位置検出時のノイズは、例えばセンサノイズに起因して引き起こされる可能性がある。即ち、上述した結合によって特に有利には、残留目標軌跡が継ぎ目なしに又は継続的に、つまり連続的に、車両の目下の現行軌跡、つまり結合した時点に存在する現行軌跡に移行する。これによって有利には、車両動作の制御時における突然のジャンプが回避される。なぜなら、車両が目標軌跡から逸脱した位置に存在する場合には、通常、第1目標軌跡へと到達させるために突然の走行操作が実施されてしまうからである。
【0019】
1つの実施形態では、前記走行路は、予め定められた長さを有し、前記第1目標軌跡は、解析関数を用いて記述され、これによって前記残留目標軌跡を、前記解析関数に基づいて前記走行路の長手方向端部まで延長させ、延長された前記残留目標軌跡が、前記走行路の完全に内側に存在するか否かをチェックし、そうである場合には、延長された前記残留目標軌跡に基づいて前記車両の現行軌跡を制御し、そうでない場合には、前記第2目標軌跡に基づいて前記車両の現行軌跡を制御することができる。
【0020】
一般的に、車両の目下の位置に結合されている走行路が、車両動作に起因して相応にずれてしまったために、当初に計算された第1目標軌跡が、水平線とも呼ぶことができる長手方向端部まで達しないということも起こり得る。というのは、第1目標軌跡を計算した時点にはこの走行路はまだ存在していなかったので、後々に、即ち第2時点で初めて計算されることとなるこの走行路の水平線に到達するように第1目標軌跡を求めることは不可能であったからである。しかしながら第1目標軌跡は、解析関数によって記述可能であるので、残留目標軌跡を長手方向端部まで、又は走行路の水平線まで簡単に延長させることが可能である。このようにして有利にも、延長された残留目標位置が走行路の内側に存在する場合に、この延長された残留目標軌跡に基づいて車両の現行軌跡を制御することが可能となる。そうでない場合には、第2目標軌跡が求められ、当該第2目標軌跡に基づいて、車両の現行軌跡が制御される。
【0021】
本発明における水平線とは、例えば、センサの検出距離(即ちセンサ技術的にセンサがどの程度の範囲まで周囲を検出できるか)、又はセンサ(若しくはセンサ機器)の視界であると理解することができる。水平線とは特に、対応する走行路を求めた時点に車両から測定された、車両の長手方向に関して、状況分析から妥当な長さであると理解することができる。従って、この妥当な長さは、特にセンサの検出距離よりも短くてもよい。これは特に、状況分析(即ち目下に存在する状況の分析)の結果、延長された残留目標軌跡を計算するための基礎として、センサの検出距離よりも短い長さ(妥当な長さ)のみを使用すべきであると判明した場合である。即ち残留目標軌跡は、この妥当な長さと同じ長さになるまで延長される。
【0022】
1つの実施形態では、前記現行軌跡の制御は、車両動作の長手方向の制御、及び/又は、車両動作の横方向の制御を含むことができる。
【0023】
別の1つの実施形態では、前記車両の前を走行する別の車両が存在する場合であって、且つ、前記車両と前記別の車両との間の目標間隔に合わせて現行間隔を制御するために、前記車両動作の長手方向の制御を行う場合には、前記現行間隔と前記目標間隔との差が、予め定められた差の閾値よりも小さければ、特に差の閾値以下であれば、前記現行軌跡を引き続き制御するために前記第1目標軌跡を使用することが可能である。このことはつまり、現行間隔と目標間隔との差が差の閾値より小さい限り、好ましくは差の閾値以下である限り、引き続き第1目標軌跡に基づいて現行軌跡が計算されるということを特に意味している。
【0024】
本発明における走行路は、特に走行タスクを形成する。横方向の制御のための走行路の水平線は、特にx方向(走行方向)における走行タスクにとって妥当な長さである。長手方向のガイドの場合には、走行路の水平線は、特に走行タスクの1つ又は複数の位置目標にいつまでに到達すべきかを示す時間である。走行路は、好ましくは横方向のガイドのための境界線と、特定の平面を禁止する通過点と、時間にわたる通過点の動きの予測とを含む、又は有する。走行路は、例えばこの空間(自由空間)における目標位置及び目標方向に対する目標の定義を有する自由空間の記述である。
【0025】
ここでも有利には、長手方向の制御の場合に、計算時間及び計算コストを削減することができる。これによって間隔測定時のノイズ、例えば間隔測定センサの脆弱性に基づくノイズによって不快な長手方向の制御が引き起こされることがなくなる。
【0026】
1つの実施形態によれば、前記運転者支援システムを、渋滞走行支援システムとして構成することができる。
【0027】
本発明における渋滞走行支援システムは、渋滞又は交通遅延が存在する場合に運転者の車両操縦を支援するものである。特に渋滞走行支援システムは、高度に自動化することができ、即ち渋滞及び交通遅延中における運転者の介入をなくすことができる。
【0028】
本発明におけるガイドは、特に長手方向のガイド及び/又は横方向のガイドを含む。
【0029】
運転者支援システムに関する特徴及び機能は、方法の各実施形態と同様である、又は、方法に関する特徴及び機能は、運転者支援システムと同様である。
【0030】
本発明は、以下、好ましい実施例に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】車両を動作させる方法のフローチャートである。
図2】車両用の運転者支援システムを示す図である。
図3】走行路における車両を示す図である。
図4】走行路における車両を示す図であり、ここでは現行軌跡を制御するために引き続き目標軌跡を使用することが可能である。
図5】走行路における車両を示す図であり、ここでは現行軌跡を引き続き制御するために第2目標軌跡を計算する必要がある。
図6】2つの相異なる時点における走行路における車両を示す図であり、時間的に後の方の時点では、車両が第1目標軌跡上に配置されていない。
図7】車両を動作させるための別の方法のフローチャートである。
図8】車両と当該車両に先行する車両とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、同一の特徴に対して、同一の参照符号が使用されうる。見易くするために、図示されている全ての特徴に必ずしも参照符号が付されているとは限らない。
【0033】
図1は、車両を動作させる方法のフローチャートを示す。
【0034】
ステップ101において、第1時点に、第1目標軌跡が求められる。このことは、特に第1サイクル、つまり特に第1制御サイクルにおいて行われる。ステップ103では、第1目標軌跡に基づいて車両の現行軌跡が制御される。
【0035】
ステップ105において、第1時点よりも時間的に後の第2時点に(特に第2サイクルに、つまり特に第2制御サイクルに)、引き続き第1目標軌跡に基づいて車両の現行軌跡を制御可能か否かがチェックされる。ステップ105において、車両の現行軌跡を制御するための基礎として引き続き第1目標軌跡が使用可能であると判断された場合には、ステップ107において、引き続きこの第1目標軌跡に基づいて車両の現行軌跡が制御される。
【0036】
ステップ105において、これ以上第1目標軌跡に基づいて車両の現行軌跡を制御することは不可能であると判断された場合には、ステップ109において、第2目標軌跡が求められ、ステップ111において、この第2目標軌跡に基づいて車両の現行軌跡が制御される。
【0037】
図2は、車両(図示せず)用の運転者支援システム201を図示している。
【0038】
運転者支援システム201は、処理装置203、例えばコンピュータを含む。処理装置203は、車両を動作させる方法を実施するように構成されている。
【0039】
図3は、それぞれ異なる時点に求められた複数の走行路303a,b,cにおける車両301を図示している。各走行路303a,b,cはそれぞれ、参照符号305a,305bが付された境界線、参照符号307a,bが付された境界線、及び、参照符号309a,bが付された境界線によってシンボリックに画定されている。理想的なケースでは、境界線305a,bと、境界線307a,bと、境界線309a,bとが継ぎ目なく、即ち互いに連続的に移行しているべきである。通常は、走行路を検出する際のセンサノイズに起因して、境界線を備える走行路にもノイズが生じてしまう。このことは、図3において、個々の境界線305a,b(走行路303a)と、境界線307a,b(走行路303b)と、境界線309a,b(走行路303c)とが、互いにずれて記載されているという点でシンボリックに図示されている。参照符号311が付された両矢印が、このノイズをシンボリックに表している。この場合には、参照符号311が付された両矢印の長さが、ノイズ振幅に相当する。
【0040】
図3にはさらに、各走行路303a,b,cが形成されたのと同じ時点に形成された別の走行路313a,b,cが図示されている(走行路303a,313aに対して同じ第1時点、走行路303b,313bに対して同じ第2時点、走行路303c,313cに対して同じ第3時点)。これらの別の走行路313a,b,cも、走行路303a,b,cと同様に、それぞれ境界線315a,bと、境界線317a,bと、境界線319a,bとによって画定されている。別の走行路313a,b,cは、それぞれ走行路303a,b,cを含んでいる。このことはつまり、走行路303a,b,cが、別の走行路313a,b,cの内側に配置されているということを特に意味している。従って例えば、別の走行路313a,b,cは、越えてはならない境界線を有するそれぞれ1つの走行路を規定することができる。なぜなら、これらの境界線を越えた場合には、事故が発生するおそれがあるからである。これは特に、別の走行路313a,b,cの外側に静止した障害物が存在する場合である。
【0041】
走行路303a,b,cは、緊急時には越えても構わない境界線を有するそれぞれ1つの走行路を規定することができる。しかしながら基本的には、走行路303a,b,cから逸脱するべきではない。なぜならこれらの走行路303a,b,cは、基本的に、最も高い走行快適性が保証されるように選択されているからである。
【0042】
複数の異なる時点におけるこれらの別の走行路313の境界線315a,bと、317a,bと、319a,bも、ノイズを有する。この場合にもこのことは、参照符号321が付された両矢印によって表されている。
【0043】
参照符号323が付された両矢印は、走行路303bの幅を表している。参照符号325が付された両矢印は、別の走行路313aの幅を表している。参照符号327が付された両矢印は、走行路303a内における車両301の自由度をシンボリックに表している。この自由度327は、車両301が走行路303aから逸脱することのない、車両301と境界線305aとの最大側方向間隔に相当する。従って、自由度327は、側方向又は横方向における車両301の最大可動域に相当する。このことは、参照符号329が付された矢印によってシンボリックに表された、車両の走行方向に関連している。
【0044】
図4は、第1位置405での第1時点における走行路303aと、第2位置407での第2時点における走行路303bとにおける車両301を図示している。第1時点における走行路303aの境界線は、境界線305a及び305bである。第2時点における、即ち車両が位置407に存在する場合における走行路303bの境界線は、境界線307a及び307bである。車両301は、第2時点において位置407に存在する場合には、参照符号401によって表されている。
【0045】
第1時点に求められた第1目標軌跡は、参照符号403によって表されている。第1目標軌跡403上に存在する位置405と、境界線305bとの間隔は、参照符号409が付された単矢印によって表されている。第1時点における走行路303aの長手方向端部において、これに相応する目標軌跡403の間隔は、参照符号411が付された矢印によって表されている。第1時点における走行路303aの長手方向端部は(第2時点における走行路303bの長手方向端部も)は、参照符号415が付された破線によって表されている。
【0046】
参照符号413は、第2時点における走行路303bの長手方向端部415の方向へと、第1目標軌跡403が延長された部分を表している。このような延長が可能であるのは、特に第1目標軌跡403が、解析関数によって記述可能であるからである。
【0047】
図4に図示されるように、延長された第1目標軌跡403は、第2時点における走行路303bの完全に内側に存在している。このことはつまり、第2時点には、目標軌跡の再計算(即ち第2目標軌跡の計算)を実施しなくてよいということを特に意味している。このことはつまり、車両の現行軌跡を、引き続きこの延長された第1目標軌跡403に基づいて制御可能であるということを特に意味している。
【0048】
さて今度は、目標軌跡の再計算を実施しなければならない例が、図5に図示されている。このとき車両は、第2時点よりも時間的に後の第3時点おいて、境界線309a,bを有する走行路303c内における位置503に存在する。位置503では、車両は、参照符号502によって表されている。図4に基づいて延長された目標軌跡は、ここでも、第3走行路303cの長手方向端部まで延長される。この延長された部分は、参照符号501によって表されている。この場合には、この延長された部分501は、部分的に、第3時点に求められた走行路303cの外側に位置している。つまり第3走行路303cに対しては、現行軌跡の制御のために、これまでの目標軌跡はこれ以上使用できないということである。第3走行路303cに対しては、新しい目標軌跡、即ち第2目標軌跡を計算する必要がある。
【0049】
図6は、位置405に対する第1時点における走行路303aと、位置407に対する第2時点における走行路303bとにおける車両301を図示している。この場合には、位置407は、図4及び図5とは異なり、第1目標軌跡403から側方向に離れて存在している。車両301が既に走行済みの軌跡は、参照符号601によって表されている。従って、参照符号603によって表された残留目標軌跡が残っている。この残留目標軌跡603は、第2時点における車両の位置、即ち位置407と結合される。結合された残留目標軌跡は、参照符号605によって表されている。結合された残留目標軌跡605の、第2時点における走行路303bの長手方向端部415まで延長された部分は、参照符号607によって表されている。ここでも、この結合され延長された残留目標軌跡は、第2時点における走行路、即ち第2走行路の内側に位置している。第2走行路303bに対して、新しい目標軌跡を使用する必要はない。この結合され延長された残留目標軌跡が、現行軌跡の制御のために使用される。これは特に、第3走行路が求められる第3時点までである。その後、第3時点において、この結合され延長された残留目標軌跡が、第3走行路の内側における現行軌跡の制御のためにも使用可能かどうかがチェックされる。
【0050】
図7は、車両を動作させる別の方法のフローチャートを示す。
【0051】
ステップ701によれば、第1走行路が求められる。ステップ703によれば、求められた第1走行路に基づいて、軌跡の計画が実施される。このことはつまり、ステップ703では、第1走行路の内側に配置されている第1目標軌跡が求められるということを特に意味している。ステップ705によれば、第1目標軌跡に基づいて現行軌跡が制御される。この場合には、ステップ701に基づいて走行路が周期的に求められ、ステップ707において、前回のサイクルでステップ703に基づいて求めた目標軌跡が、現在のサイクルのために使用可能であるかどうかがチェックされる。そうである場合には、前回のサイクルのこの目標軌跡が、運動制御のため、即ち現行軌跡を目標軌跡に合わせて制御するための基礎として使用される。そうでない場合には、新しい目標軌跡が計算される。
【0052】
図8は、車両801を図示しており、この車両801の前に、別の車両803が走行している。車両801は、参照符号805が付された矢印によってシンボリックに示された速度で走行する。同様にして、参照符号807が付された矢印は、別の車両803の速度をシンボリックに表している。
【0053】
車両801をガイドすることによって当該車両801と別の車両803との間の間隔を一定に制御すべき場合には、距離を検出する際における信号のノイズ(即ち例えばセンサ信号のノイズ)によって、不快な長手方向の制御、即ち走行方向の制御が引き起こされるべきではない。ここでは参照符号809が、車両801と別の車両803との間の両矢印を示しており、この両矢印809は、第1時点又は第1サイクルにおいて測定された、2つの車両801と803との間の間隔に相当する。相応にして、参照符号811は、第1時点よりも時間的に後の第2時点又は第2サイクルにおいて測定された、2つの車両801と803との間の測定間隔を表している両矢印を示している。従って、例えば間隔を測定するセンサのノイズに起因して、距離測定値が変動する可能性がある。このことは、2つの車両801及び803が同じ速度で走行しているにも拘わらず発生してしまう。しかしながら、このことによって新しい軌跡の計画(即ち第2目標軌跡の計算)が自動的に実施されないようにするために、特に2つの車両801と803との間の現行間隔と、目標間隔との差が、予め定められた差の閾値よりも小さい場合、特に差の閾値以下である場合にのみ、第2時点において第2目標軌跡が計算されるようにすることができる。
【0054】
このことはつまり、長手方向のガイドの場合にも、横方向のガイドの例と同じように、所定の自由度を上回った場合、ここでは特に差の閾値を上回った場合に初めて新たに目標軌跡が計画されるということを特に意味している。所定の自由度を上回らない限り、車両の現行軌跡は、引き続き当初に計画された目標軌跡、即ち第1目標軌跡に基づいて制御される。
【0055】
本発明はつまり、予め定められた又は予め設定された自由度を上回った場合に初めて新しい目標軌跡を計画又は計算するという着想を含むものである。これによって有利には、走行路のノイズ及び/又はセンサノイズに対して車両動作が反応しなくなる。このことはつまり、たとえセンサ不良の場合であっても快適な動作をもたらすことが可能であるということを特に意味している。
【0056】
このことによってさらに、迅速な変化にも依然として反応することが可能となる。このことは、例えば車両と別の車両との間の間隔、又は車両と障害物や任意の対象物との間の間隔を測定するセンサ、若しくは、車両の周囲をセンサ技術的に検出するセンサの入力信号を、ノイズ除去のためにフィルタリングするような場合とは対照的である。なぜなら、このような場合であれば、機能反応性のダイナミクスが損なわれてしまうからである。これに対して本発明は、迅速な変化に対する良好な反応性に対して悪影響を及ぼさない。即ち特に、第1時点に計算された又は求められた古い目標軌跡の残りの部分が、車両の現在位置及び現在方向に結合され、この結合され延長された残留目標軌跡が、第2時点で計算された走行路の内側に引き続き存在しているかどうかがチェックされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8