特許第6347844号(P6347844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6347844赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347844
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20180618BHJP
【FI】
   G01N21/3504
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-553004(P2016-553004)
(86)(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公表番号】特表2017-506344(P2017-506344A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2015051202
(87)【国際公開番号】WO2015124367
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】102014102050.2
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511236970
【氏名又は名称】エイヴィエル エミッション テスト システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AVL Emission Test Systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フェッツナー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ウルマー
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−266303(JP,A)
【文献】 特開2010−258432(JP,A)
【文献】 特表2001−507785(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0287418(US,A1)
【文献】 中国特許第102570289(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 21/84−21/958
G01J 3/00−3/52
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置であって、
分析セル(16)を通して放射を案内可能な赤外放射源(12)と、
前記分析セル(16)内へ導通可能な試料ガス流と、
前記分析セル(16)内で生じた吸収スペクトルを測定可能な検出器(22)と、
前記赤外放射源(12)又は前記検出器(22)に熱伝導可能に接触している低温側(70)、及び、冷却体(46)に熱伝導可能に接触している高温側(68)を有する、ペルチエ冷却素子(66)と、
を備えた装置において、
前記冷却体(46)は、回転数制御されるファン(38)によって冷却され、
前記ペルチエ冷却素子(66)の前記高温側(68)の温度にほぼ対応する温度を測定する温度センサ(81)が設けられており、
前記温度センサ(81)は、前記ファン(38)の電子計算ユニット(37)に電気的に接続されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ファン(38)の回転数制御は、パルス幅変調によって行われる、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記赤外放射源(12)は、前記ペルチエ冷却素子(66)の前記低温側(70)に熱伝導可能に接続された金属プレート(72)上に配置されている、
請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記ペルチエ冷却素子(66)の前記低温側(70)の温度にほぼ対応する温度を測定する別の温度センサ(80)が設けられており、
前記別の温度センサ(80)は、前記ペルチエ冷却素子(66)の電子制御ユニット(82)に電気的に接続されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記赤外放射源(12)は、支承部(76)によって固定されかつ金属プレート(72)に熱伝導可能に接触しているレーザーチップ(74)を有する、
請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記金属プレート(72)は、銅ブロックである、
請求項3又は5記載の装置。
【請求項7】
複数の光学素子(12,18,22,24,26,28)が、前記分析セル(16)の外部で光学系プレート(60)上に配置されており、
前記光学系プレート(60)は、前記冷却体(46)と前記ペルチエ冷却素子(66)の前記高温側(68)との間に熱伝導可能に配置されている、
請求項記載の装置。
【請求項8】
前記温度センサ(81)は、前記ペルチエ冷却素子(66)の直接近傍にある前記光学系プレート(60)の上面(62)上の温度を測定する、
請求項記載の装置。
【請求項9】
前記冷却体(46)、前記光学系プレート(60)、前記ペルチエ冷却素子(66)及び前記金属プレート(72)の各要素のうち2つ以上の要素が、熱伝導ペーストによって相互に接続されている、
請求項記載の装置。
【請求項10】
前記冷却体(46)は、前記ペルチエ冷却素子(66)とは反対側の下面(48)に複数のリブ(50)を有する、
請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、ハウジング(10)を有しており、
前記ハウジング(10)の周囲から前記ファン(38)が周囲空気を吸引し、
前記ハウジング(10)内に、空気流を前記冷却体(46)の下面(48)へ導通する導通体(44)が配置されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記ハウジング(10)の第1の側壁(40)に空気流入スリットが、反対側の第2の側壁(54)に空気流出スリット(52)が形成されており、
前記空気流入スリットは、主として前記ファン(38)の周の上方に延在しており、
前記空気流出スリット(52)は、前記ハウジング(10)の底部(56)と前記冷却体(46)の下面(48)との間に延在している、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記赤外放射源(12)は、量子カスケードレーザーである、
請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の装置を用い、赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める方法であって、
赤外放射源(12)の放射を分析セル(16)へ案内し、
前記分析セル(16)に試料ガス流を通流させ、これに応じて、検出器(22)により、前記分析セル(16)から出る放射の吸収スペクトルを求め、前記吸収スペクトルから計算ユニット(37)において前記試料ガス流中のガスの濃度を計算し、
前記赤外放射源(12)又は前記検出器(22)をペルチエ冷却素子(66)によって冷却する、
方法において、
前記ペルチエ冷却素子(66)の高温側(68)を、回転数制御されるファン(38)によって少なくとも間接的に冷却し、
温度センサ(81)により、前記ペルチエ冷却素子(66)の前記高温側(68)の温度にほぼ対応する温度を測定し、
前記温度センサ(81)に電気的に接続された、前記ファン(38)の電子計算ユニット(37)を介し、前記温度センサ(81)の測定値に依存して、前記ファンの回転数を制御する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記ファン(38)の回転数を、パルス幅変調信号を変化させることによって制御する、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ファン(38)によって、周囲空気を、前記ペルチエ冷却素子(66)に熱伝導可能に接続された冷却体(46)に沿って圧送する、
請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
前記冷却体(46)を、30℃から50℃の一定値へ向かって制御する、
請求項14から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記冷却体(46)を、40℃の一定値へ向かって制御する、
請求項17記載の方法
【請求項19】
前記ペルチエ冷却素子(66)への通電をほぼ一定に行う、
請求項14から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記ペルチエ冷却素子(66)への通電を、前記ペルチエ冷却素子(66)の高温側(68)と低温側(70)との間に20Kから40Kまでの一定の温度差が生じるように調整する、
請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置であって、分析セルを通して放射を案内可能な赤外放射源と、分析セル内へ導通可能な試料ガス流と、分析セル内で生じた吸収スペクトルを測定可能な検出器と、赤外放射源又は検出器に熱伝導可能に接触している低温側、及び、冷却体に熱伝導可能に接触している高温側を有するペルチエ冷却素子とを備えた装置に関する。本発明はまた、上述した装置を用いて、赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める方法であって、赤外放射源の放射を分析セルへ案内し、分析セルに試料ガス流を通流させ、これに応じて、検出器により、分析セルから出る放射の吸収スペクトルを求め、この吸収スペクトルから計算ユニットにおいて試料ガス流中のガスの濃度を計算し、赤外放射源又は検出器をペルチエ冷却素子によって冷却する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外分光法は、個々のガス成分の濃度を求める手法として公知である。最も広い意味での当該手法には、フーリエ変換赤外分光計又は非分散性赤外センサが含まれる。コンパクトかつハイパワーの半導体レーザーの開発にともない、レーザー分光に基づくガス分析機器がますます利用されるようになってきている。量子カスケードレーザーなどの新たなタイプのレーザーによって、中赤外領域のレーザー分光は進化している。
【0003】
これらの分析法の全ては、試料ガスに赤外ビームを照射したときに所定の周波数領域が吸収されることを基礎としている。この場合、赤外放射は、吸収によって励振される分子結合の振動レベルの領域にある。その前提となるのは、既存の双極子モーメントもしくは分子中に生じうる双極子モーメントである。種々の振動状態は、種々の光周波数の赤外放射の吸収損失に起因する。このように、透過時のスペクトルはガスを表す特徴的な個々の吸収線を含むので、試料ガスにおける具体的な分子の有無を検査し、試料ガス中の当該分子の濃度を求めることができる。
【0004】
量子カスケードレーザーによれば、特に、内燃機関の排気ガス中に存在する障害物質分子、例えば一酸化二窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素及びアンモニア等の分子とその濃度とを求めることができる。
【0005】
通常のレーザー分光分析装置は、放射源としてのレーザーを有し、その放射は所定の光路を経て分析セルに案内される。当該分析セルでは、ビームが適切な鏡のコンフィグレーションによって多重に反射される。同時に、当該分析セルへは試料ガス流が導通され、このガス流をレーザー放射が貫通し、その際に光周波数に対応する分子が励起される。当該励起によって各周波数のエネルギが吸収される。透過ビームの強度はスペクトルの当該位置で低下する。吸収そのものは厳密に正確には行われず、温度及び圧力の変化に基づく広がりを有する。こうしてスペクトルの点で変化したビームが測定セルを出て検出器へ入射し、そこで変化した周波数帯域が評価され、所定の物質の有無及びその濃度が推定可能となる。試料ガス流の圧送は、通常、後置接続された真空ポンプによって行われる。
【0006】
濃度を求める際には、スペクトルにおける吸光特性が評価もしくは分析される。当該特性は、一般に、吸光性ガスの線形スペクトルと称される。長い間、量子カスケードレーザーは0℃を下回る温度範囲においてしか確実に動作させることができなかった。レーザー結晶の構造が変更された新世代の量子カスケードレーザーは、高温量子カスケードレーザーとも称され、通常の周囲温度15℃から40℃までにおいても動作可能であるが、複数の半導体層から形成される量子カスケードレーザーは大きな損失熱を発生し、測定中に自身を加熱してしまうこともわかっている。量子カスケードレーザーの確実な冷却のための最も簡単な方法として、レーザーが定義された温度領域に保たれるように調整を行うペルチエ冷却素子を設けることが挙げられる。発生した熱が放出されないと、レーザーの動作温度の変化が測定中に発生して不可欠の調整波長を変化させるので、温度とともに増大する電荷担体の熱運動に基づいて不正確な測定結果が生じる。こうした理由から、量子カスケードレーザーの温度変動は、理想的には±5mKまで低減すべきである。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0173870号明細書には、ヒートシンクとして用いられる金属板上に実装された量子カスケードレーザーの構造が記載されている。金属板の反対側の面はペルチエ冷却素子の低温側に接続されており、これにより金属板を介してレーザーからの熱を放出させることができる。制御のためにレーザーの増幅媒体に温度センサが配置され、この温度センサを介してレーザーの温度が測定及び制御される。当該制御はレーザー出力の変更もしくはペルチエ素子に供給される電力の変更によって行われる。
【0008】
ただし、こうした制御の欠点として、ペルチエ冷却素子の高温側が周囲温度の変動に曝されるために定常状態を形成できず、つねに追従制御が必要となることが挙げられる。このために温度変動はしばしば必要以上に大きくなり、その結果、検出器信号に雑音が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置及び方法を提供し、量子カスケードレーザーでの温度変動を最小化して、公知の構成に比べて測定結果がさらに改善されるようにすることである。その際、制御及び測定はできるだけ簡単かつ低コストに行えるようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項1に記載の特徴を有する赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置、及び、独立請求項14に記載の特徴を有する、上述した装置を用いた方法により、解決される。
【0011】
回転数制御されるファンによって冷却体を冷却することにより、レーザーの損失電力を一定としたままで、ペルチエ冷却素子の高温側の温度を一定に保持でき、ひいてはペルチエ冷却素子の低温側の温度も一定に保持できる。これは、周囲温度すなわちペルチエ冷却素子の放熱が行われる温度からの独立が達成されるからである。ファンの冷却作用は、周囲温度が上昇する際に回転数が増大することによって、ほぼ一定に保持できる。
【0012】
よって、本発明の方法では、ペルチエ冷却素子の高温側が回転数制御されるファンによって少なくとも間接的に冷却される。こうした冷却は理論的には直接に行うことができるが、通常は熱伝導可能に接続された冷却体によって行われる。重要なのは、ファンの回転数制御により、ペルチエ冷却素子の出力を変更せずに放熱を制御できるということである。
【0013】
この場合、ファンの回転数制御は好ましくはパルス幅変調によって行われる。したがって、ファンの回転数は、パルス幅変調信号を変化させることで制御される。こうした制御は制御部において簡単に実現でき、電流消費量も低減される。
【0014】
有利な実施形態では、赤外放射源は、ペルチエ冷却素子の低温側に熱伝導可能に接続される金属プレート上に配置される。これにより良好な熱伝導が保証され、同時に例えば金属プレートでのねじ止めによってレーザーの確実な固定が可能となる。また、当該プレートは、レーザー用の相応の支承部によって構成されてもよい。さらに、適正な使用にとって必須の、ペルチエ冷却素子上の全面にわたる載置も保証される。
【0015】
好ましくは、ペルチエ冷却素子の高温側の温度にほぼ対応する温度を測定する温度センサが設けられ、この温度センサはファンの電子計算ユニットに電気的に接続される。相応に、ペルチエ冷却素子の高温側の温度、すなわち、ファンの制御によって一定に保持可能な温度に依存して、制御が行われる。
【0016】
付加的に、ペルチエ冷却素子の低温側の温度にほぼ対応する温度を測定する別の温度センサが設けられ、この別の温度センサはペルチエ冷却素子の電子制御ユニットに電気的に接続される。電流強度の適合化により、レーザーチップに一定の温度が形成される。こうした制御は、高温側がファンによって一定の温度に保持されるため、きわめて狭い範囲で行われる。2段階の制御により、きわめて小さな温度変動しか生じない。
【0017】
赤外放射源は、好ましくは支承部によって固定されかつ金属プレートに熱伝導可能に接触するレーザーチップを有する。これによりレーザーの実装が簡単化される。
【0018】
ここで、金属プレートは好ましくは銅プレートである。これは、銅がきわめて良好な熱伝導性を有し、半導体チップからの熱を良好に放出できるからである。
【0019】
別の実施形態では、冷却体は、ペルチエ冷却素子とは反対側の下面に複数のリブを有する。これらのリブによって熱交換面積が増大され、空気流によってより多くの熱を放出できるようになる。
【0020】
特に好ましい実施形態では、複数の光学素子が分析セルの外部で光学系プレート上に配置され、光学系プレートが冷却体とペルチエ冷却素子の高温側との間に熱伝導可能に配置される。相応に、光路全体を、熱交換量を低減するために一貫して一定の温度に保持することができる。
【0021】
この構成では、温度センサは、ペルチエ冷却素子の直接近傍にある光学系プレートの上面の温度を測定する。この温度は、直接に熱伝導可能な結合により、ペルチエ冷却素子の高温側の温度にほぼ相当する。同時に、光学系プレートが、ペルチエ冷却素子の高温側の温度制御への影響なしに一定温度に保持されることも保証される。当該温度センサは光学系プレートに簡単に取り付け可能である。
【0022】
好ましくは、装置はハウジングを有しており、ハウジングの周囲からファンが周囲空気を吸引する。ハウジング内には、空気流を冷却体の下面側へ導通する導通体が配置される。このように、冷却は、分析器の外部からの周囲空気によって行われる。付加的な冷却素子を設ける必要はない。
【0023】
操作人員が回転するファンホイールの領域に入って怪我をする危険を防止するために、かつ、電磁耐性を改善するために、ハウジングの第1の側壁に空気流入スリットが、反対側の第2の側壁に空気流出スリットが形成され、ここで、空気流入スリットは主としてファンの周の上方に延在し、空気流出スリットはハウジングの底部と冷却体の下面との間に延在する。これにより、冷却空気流は光学系プレート全体に沿って案内される。よって、光学系プレートの領域内でのハウジング内の温度勾配が一貫して回避される。
【0024】
種々の要素間の熱伝導をできるだけ良好にするために、冷却体、光学系プレート、ペルチエ冷却素子及び金属プレートの要素のうち2つ以上の要素が熱伝導ペーストによって相互に接続される。このようにすれば、空隙を介した熱伝導を一貫して損失なく行えるので、例えばペルチエ冷却素子の高温側と光学系プレートとがほぼ等しい温度を有することになり、つまりこれらの2つの部分から同じ熱量を放出できるようになる。
【0025】
有利には、赤外放射源は、中赤外領域で特に良好な測定結果を送出する量子カスケードレーザーである。
【0026】
したがって、本発明の方法に関して有利には、ファンにより周囲空気が冷却体に沿って圧送される。このため、冷却のための付加的な準備が必要なく、分析器を低コストに製造して駆動できる。
【0027】
特に好ましくは、冷却体は、30℃から50℃の一定値、特に40℃へ向かって制御される。通常の動作温度に比べて高められたこうした動作温度により、周囲空気によって駆動されるファンが、一定の動作温度を形成するための充分な熱をつねに放出できることが保証される。さらに、こうした制御は周囲温度が変化する場合にも確実に機能する。
【0028】
これに関するさらなる実施形態では、ペルチエ冷却素子への通電が一定に行われる。レーザーは遮断後に一定の熱量を生じるが、他方では同じ熱量が回転数制御されるファンを介して放出可能となるので、ペルチエ冷却素子への一定の通電を活用でき、これにより制御回路を著しく簡単化できる。
【0029】
この場合、ペルチエ冷却素子への通電は、好ましくは、ペルチエ冷却素子のプレート間に20Kから40Kまでの一定の温度差が生じるように調整される。これにより同様に全体として一定の通常の動作条件が得られる。よって、全体として、レーザーの一定の温度を形成するための簡単な制御が行われる。
【0030】
このように、ガスの有無及び濃度を高精度かつ高い再現性で一貫して熱雑音なしに検出できる、赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める装置及び方法が提供される。これは、±5mK未満の温度変動しか有さない安定した境界条件が達成されるからである。同時に、こうした制御が行われるレーザーは、公知の構成に比べて単純であり、低コストに製造及び実装できる。
【0031】
赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める本発明の装置の実施形態を量子カスケードレーザーに即して図示し、本発明の方法と関連させながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】試料ガス流中のガスの濃度を求める本発明の装置を上から見た概略図である。
図2】接続された複数の要素を含む量子カスケードレーザーの構造を側方から見た概略図である。
図3図1の装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
赤外吸光分光法によって試料ガス流中の少なくとも1つのガスの濃度を求める本発明の装置は、第1の実施形態では、量子カスケードレーザー吸光分光計として構成されている。当該分光計は、ハウジング10と、複数の半導体層から形成されかつ赤外放射源として配置された量子カスケードレーザー12と、から成る。ここでのレーザーは、連続駆動可能であるか又はパルス駆動可能であり、特に中赤外領域の放射を放出する。当該レーザーは、電流ドライバ14によって駆動される。
【0034】
レーザー12のビームは、複数の鏡18を経て分析セル16の空間20に案内されるか又は選択的に鏡18を介して直接に検出器22へ案内される。ここでの検出器は、例えば、特に中赤外領域での光起電検出に適しかつ生じた光量子を測定可能な光電流に直接に変換するMCT検出器(水銀‐カドミウム‐テルル化物検出器)であってよい。空間20内で当該ビームが対物鏡もしくはフィールド鏡24で多重に反射され、その際に空間20内へ圧送される試料ガスを通過する。これにより、送信された光帯域の所定の周波数領域で、所定の分子の存在及び濃度を表す特徴的なビームの吸収が発生する。ビームが対物鏡もしくはフィールド鏡24で多重に反射された後、このビームは分析セル16を出てあらためて後続の鏡26を経て検出器22へ供給される。
【0035】
複数の鏡のうち1つは傾動鏡28として構成されており、その位置に応じて、基準レーザー光として用いられる量子カスケードレーザー12のレーザービームが、基準ガス源もしくは基準ガスキュベット29を介して検出器22へ達するか、又は、上述したように、分析セル16を通って案内されるレーザービームが検出器22へ達する。
【0036】
試料ガスの圧送は、試料ガス流を空間20へ吸引する真空ポンプ30によって行われる。なお、測定結果の誤りを回避するために、光路の全体が、測定すべきガスの分子を含まないガス、通常は窒素によって洗浄される。
【0037】
分析セル16には、試料ガス導入管34が構成されている。試料ガス導入管34は、図示されていない管を介して、試料ガス源、例えば内燃機関の排気ガス管路に接続されるか、又は、既に希釈された試料ガスを含む源に接続される。真空ポンプ30により、試料ガスは導入管34から空間20及び試料ガス管路36を経て真空ポンプ30へ吸引される。
【0038】
検出器22で測定された光周波数帯域は、吸収された放射に基づくギャップを有し、このギャップの大きさ及び深さが当該周波数領域を吸収するガスの濃度の尺度量となる。相応の変換は、計算ユニット37においてランベルト‐ベールの法則を用いて公知の手法で行われる。送信されたレーザー12の波長は、ここでは、所定のガス成分の吸光線の吸光領域が選択的に走査可能となるように調整され、これにより、他のガス成分への横断感応が回避される。こうして、アンモニアが存在する場合、例えば約10μmの波長領域のギャップが生じる。
【0039】
ただし、注意しなければならないのは、ビームの波長と試料ガス流中の測定すべき分子の予測濃度との間の正確な調整を行わないかぎり確実な測定が不可能であるため、非希釈の試料ガス流又は希釈された試料ガス流のいずれかで動作させなければならないという点である。また、測定条件は一定に保持されなければならない。
【0040】
特に、温度変動による熱雑音を防止するには、量子カスケードレーザー12及び/又は検出器22を安定した温度で駆動する必要がある。
【0041】
このことは、本発明によれば、回転数制御されるファン38によって達成される。当該ファン38は、ハウジング10の第1の側壁40に配置されており、この第1の側壁40の図示されていない空気流入スリットを介して、周囲空気を、金属板壁の形態の導通体44によって画定されたトンネル42内へ吸引する。トンネル42は、高さが徐々に低下する形状で冷却体46の下方に通じており、その下面48に沿って、ファンで吸引された冷却用の周囲空気が流れる。大きな熱交換面積を利用できるようにするために、冷却体46の下面48には、流れ方向に延在する複数のリブ50が構成されている。空気は、空気流出スリット52(図3参照)を通ってハウジング10を出る。空気流出スリット52は、第1の側壁40の反対側の第2の側壁54に形成されており、ハウジングの底部56から冷却体46の下面48まで延在する。
【0042】
冷却体46は、上面58に配置された光学系プレート60上の全面にわたって固定されるので、光学系プレート60から冷却体46への良好な放熱が可能となる。光学系プレート60は、鏡18,24,26,28と検出器22と量子カスケードレーザー12とから成る光学素子群の支持体として用いられる。この光学素子群は光学系プレート60の上面62上に固定されている。
【0043】
光学系プレート60上にレーザーハウジング64がねじ止めによって固定されている。レーザーハウジング64の下面はペルチエ冷却素子66を形成しており、このペルチエ冷却素子66は、その高温側68が光学系プレート60の全面にわたって固定され、その低温側70が銅ブロック72の全面にわたって固定されるように配置されている。ペルチエ冷却素子66と光学系プレート60と銅ブロック72との間の熱伝導を最適化するために、当該固定は、好ましくは、熱伝導ペーストを用いた薄膜接着によって行われる。量子カスケードレーザー12のレーザーチップ74は、支承部76によって銅ブロック72に固定されている。コリメートレンズ75などの残りのレーザー光学素子群は、公知の手法でレーザーハウジング64内に配置されている。レーザーハウジング64からは、レーザーチップ74及びペルチエ冷却素子66に電流を供給するための電気端子コンタクトが突出している。制御は、公知の手法で、導通体44上に配置された電子制御ユニット82によって行われる。
【0044】
使用開始時に、レーザーチップ74にはまず0mAから約400mAまでの勾配で電流が供給され、これにより、所定の周波数スペクトルに沿った光ビームが形成される。発生する損失電力は、境界条件が同じであればほぼ一定である。発生する熱を放出するために、ペルチエ冷却素子66にも直流電圧が加えられる。24Vの直流電圧及び0.5Aの電流で、例えばペルチエ冷却素子66の高温側68と低温側70との間に約30Kの温度差が生じる。ここでの制御は、レーザーハウジング64内でレーザーチップ74の近傍に実装された温度センサ80によって求められた温度、すなわち、ペルチエ冷却素子の低温側70の温度にほぼ相当する温度が、制御ユニット82によるペルチエ冷却素子66の電流強度の制御によって、例えば11℃へ制御されるように行われる。このために、温度センサ80は、例えばPt100として構成される。
【0045】
レーザーチップ74において±5mKの範囲のできるだけ小さい温度変動を保証できるようにするには、ペルチエ冷却素子66の電流強度のみについての制御では充分でないことが多い。このため、レーザーハウジング64の直接近傍の光学系プレート60上に付加的な温度センサ81が配置される。この温度センサ81の測定温度は、良好な熱伝導の可能な接続に基づいて、ペルチエ冷却素子66の高温側の温度にほぼ相当する。温度センサ81の測定値は電子計算ユニット37へ供給され、この電子計算ユニット37により、ファン38を駆動する際の変調パルス幅を変更することで、ファン38の回転数も制御できる。
【0046】
一定の、例えば11℃のレーザー温度、すなわち、銅ブロック72の全面での接続とペルチエ冷却素子66の低温側70での熱伝導可能な接続とによってペルチエ冷却素子66の低温側70の温度に相当する温度を達成するために、ペルチエ冷却素子66の高温側68の温度が温度センサ81によって例えば一定の40℃に保持される。相応に、ペルチエ冷却素子66への通電により、29Kのできるかぎり一定の温度差が調整される。ここでの40℃の温度は、ペルチエ冷却素子66の高温側68が光学系プレート60の全面にわたって接続されていることにより、ひいては冷却体46に熱伝導可能に接続されていることにより、冷却体46及び光学系プレート60の少なくともペルチエ冷却素子66近傍の領域にも生じ、光学系プレート60の上面のペルチエ冷却素子66の近傍で温度センサ81によって測定される温度に相当する。当該温度は公知の制御に比べて高くなるが、高温側68の動作温度も高くなるので、冷却体46での放熱を調整して、この位置での温度を冷却体46の空気流のみによって一定に維持する手段が得られる。これは、放熱を行う空気流がファン38の回転数制御によって完全に制御可能となるからである。したがって、ほぼ定常的な温度特性を得ることができる。このため、レーザー12の温度は±5mKの範囲内でしか変動しない。
【0047】
このことは、公知の構成に比べて、周囲空気の加熱及びここから生じるペルチエ冷却素子の高温側の加熱のためのペルチエ冷却素子の追従制御がきわめて狭い領域でしか必要とならないことを意味する。つまり、レーザーの温度制御がいっそう安定化され、これにより熱雑音が低減される。また、吸収される放射の測定ひいてはガス濃度の検出の際に、高い精度が得られる。
【0048】
本発明が上述した実施形態に制限されず、本願の独立請求項の権利範囲内での種々の修正が可能であることは明らかである。本発明の装置は、特に量子カスケードレーザーでの使用に適する。もちろん、パルス幅変調のほか、ファンを他の方式で制御することもできる。また、検出器のための温度制御を利用することもできる。
図1
図2
図3