(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、治療時間の延長は不利益であると考えられる。例えば残りの残量が適切な治療に対して十分ではないために注入されず廃棄されることによって、使用可能な透析液量が完全に利用され得ない場合も同様に不利益である。
【0007】
実際の治療時間は複数の要素、すなわち特に透析液の注入及び廃液段階において実際に達した流量、実際に注入された注入量、及び患者により生じ排出段階において廃棄される限外濾過量により影響され得る。
【0008】
また、要求される治療時間については変更され得る。すなわち例えば患者による治療コースの変更(例えば、手動による排出又は治療サイクルの省略)の結果、治療中における治療処方パラメータの変更(後続の注入量の変更、貯留時間の変更)又は患者による治療の中断又は一時停止によって変更され得る。
【0009】
個々の溶液は患者に注入されてしまうので、使用可能なバッグ量もまた治療途中で変更され得る。また、溶液が内部工程(例えば、ポンプ調整や、プライミング等)に必要であるか、又は溶液が警告(例えば、液体の温度が高すぎる)により廃棄される等の理由により、バッグ量は変更され得る。また、治療に必要な注入液は、例えばユーザー側の治療コースの変更(例えば、手動による排出又は治療サイクルの省略)、又は治療中における治療処方パラメータの変更(例えば後続の注入量の変更)により変化する可能性もある。
【0010】
国際公開第2009/149002A2号パンフレットにより知られる腹膜透析装置は、表示された治療パラメータを入力により変更することができる。
【0011】
国際公開第1999/51287A1号パンフレットに記載された腹膜透析装置は、TPD(タイダール腹膜透析)モードで動作可能である。
【0012】
国際公開第2007/091217A1号パンフレットに開示された腹膜透析装置は、患者内における透析液の貯留時間を変更することが可能である。
【0013】
国際公開第2005/035023A1号パンフレットは、患者の腹膜からの透析液の排出をセンサを用いて監視する腹膜透析装置に関する。この点において、透析液の排出は閾値に達した時点で中断する。
【0014】
国際公開第2006/034178A2号パンフレットに開示された腹膜透析装置では、まだ注入されていない透析液の測定が行われる。
【0015】
特開2009−011667A号公報に記載された腹膜透析装置は、透析液の必要量を計算する。
【0016】
米国特許出願公開2010/0191180A1号明細書は、治療パラメータの最適化を可能とする腹膜透析装置に関する。
【0017】
従って、本発明の目的は、当初挙げた種類の透析装置をさらに効果の高いものに、特に予定治療時間が実質的に観測され、使用可能な透析液量もまた最適化されて使用され得るように、改良発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1の特徴を備える透析装置による発明を用いて達成される。従って透析装置は、透析治療、特に腹膜透析治療を予め決定された及び/又は入力可能な治療パラメータに従って透析装置により実行することができ、透析装置が、少なくとも1つの治療パラメータを動的に及び/又は透析装置の治療動作中に設定することができる少なくとも1つの設定手段を備える構成とすることができる。
【0019】
特に、部分量又は個々の量、治療サイクル数、使用される透析液、及び貯留時間は治療パラメータとして治療実行前に固定され、透析装置内に治療計画として保存される。全て接続された注入液の使用可能な最小バッグ量は、例えば接続前のバーコードを通じて識別されるため、治療開始前に判明する。溶液の性質は識別の結果、情報として又はさらなる治療パラメータとして装置側で把握することができる。それは特に、溶液の種類、バッグサイズ、最小オーバーフィル量、名目容量、グルコース濃度、カルシウム濃度、二重チャンバーバッグ又は単一チャンバーバッグ等のバッグの種類に関する情報の問題である。ここで、最小オーバーフィル量は、名目容量に加えて溶液バッグに含まれる製造元により保証された溶液量である。また、注入量は、治療サイクル中に患者に注入される、又は患者への注入用に提供又は測定される透析液量である。
【0020】
少なくとも1つの治療パラメータの設定が自動的に最適化され得るのは特に効果的であり、また特に効果的である可能性がある。
【0021】
また、1つ又は複数の治療パラメータは貯留時間及び/又は注入量であり、治療中に変更することができるようになっている。なお、貯留時間は治療を受ける患者の腹膜内に透析液が貯留する時間である。
【0022】
従って、透析治療の個々のサイクル中に腹膜内の透析液の貯留時間、及び腹膜を満たすための透析液量を変更可能であることは有効であり得る。予め決定された許容範囲内において特定の状況下で注入量及び貯留時間を短縮可能であることは特にあり得る。従って、例えばサイクル中に注入量を減量することによって、できる限り理想的な全透析液量が使用されるべきであり、また処方又は予定された治療時間後の治療もまた貯留時間を短縮することにより終了され得る。なお、これらの手段にも拘わらず、治療目標は治療パラメータである貯留時間及び/又は注入量の設定可能性に基づいて確実に達成され得る。
【0023】
ここで、特に透析装置に接続されたバッグは最大限使用することができるようになっている。また特に好ましくは、バッグ許容量及び特にオーバーフィル量が装置自身の消費に使用され、またさらに好ましくは、バッグ許容量及び特にオーバーフィル量が装置自身の消費に十分でない場合に最適化することができるようになっている。
【0024】
さらに、透析装置は治療コースを計画するための計画手段及び該治療コースを監視するためのモニタ手段を備え、設定手段を使用して、実際の治療コースが計画された治療コースと一致するか、又は異なるかどうかを比較できるようになっている。計画された治療コースは例えば患者カードを用いて計画手段へ移行可能である。また、そのような患者カードは計画手段の構成要素であることが考えられる。
【0025】
また、少なくとも予定治療時間を前記計画手段により予め決定することができ、少なくとも予測治療時間を前の治療経過に基づいて前記モニタ手段により計算する及び/又は見積もることが可能である。
【0026】
さらに、複数の貯留時間が全治療時間の間に設定され、該貯留時間の長さは予め決定可能であり、及び/又は予め決定されて計画手段内に保存されており、また少なくとも1つの貯留時間の修正を、予定治療時間を保持できるように、予測治療時間についてのモニタ手段による計算及び/又は見積もりに基づいて設定手段により行うことができる。
【0027】
個々の貯留段階前に貯留時間を動的に最適化することにより貯留段階は比較的均一に短縮化される。限外濾過量の発生及び異物除去は貯留段階の時間とともにかなり低減されるため、貯留段階が短縮化されるにも拘わらず適切な治療が実行され、従って特に治療目標が達成され得る。この動的な最適化は、貯留段階の短縮化を実行するべきかどうかを最後の治療サイクル前に評価することができる透析装置の設計と組み合わせることが好ましい。貯留時間が例えば約5分よりも短い場合、治療サイクルは実行されないか、又は装置側において開始されない。ここで、この評価は効率及び快適性のために行われる。このとき最後の貯留段階時間の簡単なチェックは非効率であり、治療の遅れが既に全治療時間又は少なくとも治療時間の一部を通じて補われているという点で避けることが好ましい。また、非効率な最後の治療サイクルは比較的短い貯留時間により回避することが特に好ましい。さらに効率を高めることによって、貯留時間が短すぎるために最後の治療サイクルが省略され、従って貴重な透析液が未使用のまま廃棄されるといった状況はもはや起こり得ないようになる。
【0028】
設定手段は、貯留時間の最大限できる修正を制限する百分率要素を予め決定することができる制限手段を備え、前記百分率要素が好ましくは計画された貯留時間の10%に達するようにすることができる。
【0029】
また、予定治療時間と実際の治療時間との時間差を設定手段により計算することができ、計算された時間差を設定手段により前もって予め決定された貯留時間から差し引くことができ、従って計算された時間差により修正された貯留時間を設定することができることが考えられる。
【0030】
さらに、透析液の少なくとも1つの計画注入量、特に全ての現時点での計画注入量を計画手段により予め決定することができ、少なくとも即時使用可能な透析液量をモニタ手段により計算する及び/又は見積もることができる。
【0031】
例えば、現時点で使用可能な透析液量が現時点で計画された全注入量には十分ではないという状況が起こり得る。従って例えば、計画注入量が保持されている場合、透析液量不足のため治療サイクルを省略せざるを得ない結果になり得る。しかしながらこのような場合、現時点での減少した注入量で全計画治療サイクルを維持することができるように、複数の計画注入量、特に全ての注入量を減少させることが好ましい。なぜなら、濃度差により、透析治療により除去されるべき物質又は異物の透析液への移動は、実質的には治療サイクル開始時により効果的に起こるため、新しい透析液への異物移動の高い効果を利用するために全治療サイクルを維持し、また逆に任意で治療サイクルの個々の注入量を減少させることがより効果的である。
【0032】
注入量は個々の注入前に設定手段により動的に最適化されることが好ましいため、関連する詳細及び従って最小治療量について上述したように、透析装置について知られている使用可能な溶液量が理想的に消費され得る。治療のために安全量を固定する必要はもはやない。このため、処方に必要な透析液バッグの選択性が増す。従って15リットル(L)治療においては例えば5L容量バッグを3つ又は3L容量バッグを5つ使用することが可能となるが、この2つの選択肢においては名目バッグ容量と保証オーバーフィル量から生じる保証最小量は異なる。また、注入が治療の終盤で(警告により)短縮化される場合と異なり、注入量が均一に減少されることはさらに有効である。このことにより、既に詳しく上述したが、患者に対しより適切な治療を行うことが可能となり、従って治療目的をより良い形で果たすことになる。また例えば、後処理中及び睡眠中の患者に対し、溶液不足によって注入を中断する警告により患者を起こす必要はもはやなくなる。
【0033】
また、少なくとも1つの計画注入量及び/又は全ての現時点での計画注入量の修正を、即時使用可能な透析液量についてのモニタ手段による計算及び/又は見積もりに基づいて設定手段により実行可能とすることができる。
【0034】
設定手段が、計画注入量の最大限できる修正を制限する百分率要素を予め決定することができる制限手段を備え、前記百分率要素が好ましくは前記計画注入量の10%に達するようにすることが考えられる。
【0035】
さらに、1つ又は複数の計画注入量と実際の注入量との量差(体積の差)を設定手段により計算することができ、1つ又は複数の計算された前記注入量を、1つ又は複数の前もって予め決定された注入量から設定手段により差し引くことができ、従って計算された量差により修正された1つ又は複数の注入量を設定可能とすることができる。
【0036】
この方法は請求項1〜3の1項に記載された透析装置を用いて実行され得ることが特に好ましい。
【0037】
動的設定及び特に自動設定により治療を許容範囲内で実行することが可能となる。なお、この許容範囲は時間軸依存(横軸)態様及び容量軸依存(縦軸)態様の両方を考慮する。この許容範囲は時間管理及び容量管理の要素を固定することにより横軸及び縦軸方向において最適化され得る。従って、予め決定された治療は予め決定された許容範囲内で効果的に実行される。
【0038】
本発明のさらなる詳細及び効果については、図面に示した実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
まず本発明が用いられる透析装置の機能について以下に概説する。なお、本実施形態における透析装置は腹膜透析装置である。しかしながら、以下に述べる構成要素はまた、同じ又は同様の態様で血液透析装置用に使用され得る。
【0041】
腹膜透析は人工血液透析の変形であり、良好な血液供給量を有する患者の腹膜が体内に自然に備えられた濾過膜として使用される。透析液は、この目的のためにカテーテルを通して腹腔に注入される。ここで、浸透の原理に従い血液の尿素成分が腹腔内に存在する透析液に腹膜を通して拡散する。特定の貯留時間後、尿素成分を含む透析液が再度腹腔から排出される。
【0042】
自動腹膜透析においては新しい透析液の腹腔への注入及び使用済み透析液の排出を制御及び監視する。なお、このような透析装置はサイクラーとも呼ばれ、一般的に夜間、すなわち患者が寝ている間に数回にわたり腹腔を満たし、かつ空にする。
【0043】
図1a〜1cに、例えば透析装置において実行される3つの異なる方法手順を示している。なお、より多くのこのような手順のうちの1つは透析装置の制御部内に保存される。また、保存された工程手順を患者に最適化することが一般的に可能である。
【0044】
図1a〜1cにおいて、それぞれ、患者の腹腔内に存在する透析液量Vが時間tに対して示されている。ここで、
図1aは夜間における通常の自動腹膜透析治療の進行を示している。治療開始時に初期排出過程5がまず実行され、一日中患者の腹腔内にあった透析液が排出される。次に複数の治療サイクル1が実行され、
図1aにおいては治療サイクル1が3回連続で実行される。それぞれの治療サイクルは注入段階2、貯留段階3、及び排出段階4により構成される。ここで、特定の新しい透析液量が注入段階2の間に患者の腹腔内へ注入される。このとき、最大限許容される透析液量は患者に応じて約1.5〜3Lに達する。そして、新しい透析液は特定の貯留時間3の間、腹腔内に貯留される。ここで、一般的に貯留段階は数時間に及ぶ。従って、ここで使用された透析液は排出段階4において再度腹腔から排出される。そして、新しい治療サイクルが開始する。治療は最終注入6により患者の腹腔内に特定量の新しい透析液が注入されて終了する。従って、この透析液は一日中患者の腹腔に留まることになる。
【0045】
なお、夜間に行われる治療サイクル1のそれぞれは、透析装置の制御部により自動制御される。初期排出過程及び最終注入は同様に透析装置により自動制御され得る。また代わりに、これらはオペレータ又は患者により手動で実行される。
【0046】
いわゆるタイダール法の治療が
図1bに示されている。これはまた初期排出過程5に始まり最終注入6により終了する。また、複数のタイダールサイクル8に分割された基本サイクル7が実行される。このとき、基本注入段階2’が最初に実行される。しかしながら、貯留時間3の後は完全な透析液量が腹腔から排出されるのではなく、代わりに腹腔内にある透析液の一部分のみが排出される。従ってこの部分は新しい透析液の相当量と交換される。次の貯留サイクルの後に次のタイダール排出が実行され、このとき腹部に存在する全透析液は排出されない。基本サイクル7の終了時、基本排出段階4’が実行され、このとき全透析液が排出される。なお、1つの基本サイクルのみが
図1bに示されている。しかしながら、代わりに複数の基本サイクルもまた実行され得る。
【0047】
いわゆるPDプラス治療の腹膜透析治療コースが
図1cに示されている。ここで、従来の腹膜透析治療が夜間9において実行され、これは例えば
図1a又は
図1bに従って実行され得る。しかしながら、追加のPDプラス治療がさらに日中において実行され、このとき使用済みの透析液が排出段階5’において排出され、注入段階6’において新しい透析液に交換される。PDプラス治療においては、通常の夜間の腹膜透析治療を日中の1回以上の追加の治療サイクルと組み合わせる。なお、夜間治療コースは透析装置により自動的に習慣として実行される。日中の治療サイクルは同様に装置により実行され、監視される。
【0048】
典型的な腹膜透析システムの設計が模式的に
図2に示されている。ここで、腹膜透析システムは新しい透析液を収容する容器10と、使用済み透析液用の排出部20を含む。また、患者のカテーテルに接続して患者の腹腔内に新しい透析液を注入し又は使用済みの透析液を腹腔から排出するためのコネクタ30が備えられている。なお、新しい透析液用の容器10、使用済み透析液用の排出部20、及び患者に接続されたコネクタ30は流体経路100を通じて互いに接続されており、これらと共に腹膜透析システムの流体システムを構成している。
【0049】
透析装置40はまたサイクラーとも呼ばれるが、腹膜透析治療を実行するために備えられている。なお、透析装置40は以下の主要構成要素を含む。
−液体の送液に使用するポンプ50。ここで、ポンプ50は新しい透析液を容器10からコネクタ30へ送液する。またポンプ50は使用済みの透析液をコネクタ30から排出部20へ送液することができる。
−液体の流れの制御に使用するバルブ70。従って容器10、コネクタ30及び排出部20間の対応する流体接続を確立するために、バルブ70は流体経路100を開閉する。
−新しい透析液を患者に注入する前に約37℃の温度まで加熱する加熱部60。腹膜透析においては比較的大量の透析液が患者の腹腔内に直接供給されるため、患者を過度に冷やさないよう、また冷たすぎる透析液を使用して不快感を与えないようにするために加熱部60が必要である。
−正しい治療手順を監視及び/又は制御可能なセンサ80。なお、特に温度センサが使用され得る。また任意で圧力センサを使用することも可能である。
【0050】
ここで、透析装置40の全構成部品は制御部90により制御される。なお、制御部90は特にポンプ50、加熱部60及びバルブ70をセンサ80のデータに基づいて制御する。また、制御部90は腹膜透析の自動手順を実行する。さらに、制御部90は重要な構成要素として患者に供給される透析液量と患者から排出される透析液量とを均等化するバランス部95を含む。ここで、バランス部は患者に対して過剰の透析液が注入されたり、又は過剰の透析液が排出されたりすることを防いでいる。
【0051】
このとき、バランス部95は専らポンプ50用の制御データ及び/又はセンサデータに基づいて実行され得る。また代わりに、バランス部は別に備えられたバランスチャンバにより実行され得る。同様に均等化には秤を使用することができる。例えば、そのような秤により新しい透析液を含む容器10及び/又は使用済み透析液を含む容器20の重量を量ることになる。
【0052】
腹膜透析において、透析液は患者に対し腹腔内に直接注入されるため、極度の滅菌状態でなければならない。従って、新しい透析液及び/又は使用済み透析液に接触することになる流体経路又は流体システムは一般的に使い捨て部品として設計される。この点で、流体経路又は流体システムは特にプラスチック部品として設計される。従ってこれらは滅菌包装状態で供給され、治療の直前に開封され得るのみである。
【0053】
しかしながら透析装置40による腹膜透析の制御を可能とするためには、流体システムは透析装置40に接続されていなければならない。この点において、透析装置40の個々の構成要素が流体システムの対応領域にどのように接続されているかを
図3に示している。
【0054】
ここで、透析装置40は加熱素子61を備える。これは流体システムの対応する加熱領域62に接続されなければならない。このように接続することにより加熱素子61から加熱領域62に存在する透析液への熱エネルギー移動が可能となる。
【0055】
また透析装置40は流体システムのポンプ領域52に接続された1つ以上のポンプアクチュエータ51を備える。ここで、ポンプアクチュエータ51はポンプ領域52に伝達されるポンプ力を発生する。これにより、ポンプ領域52に存在する液体は流体経路に沿って移動し得る。
【0056】
また、透析装置は1つ以上のバルブアクチュエータ71を備える。これらは流体経路の対応するバルブ領域72に伝達される閉動作を生じる。これにより、流体経路のバルブ領域72は対応して開閉される。
【0057】
また、透析装置は1つ以上のセンサ81を備える。これらは流体システムの対応するセンサ領域82に接続される。これにより、センサ81は透析液の特性を測定することができる。ここでは特に透析液の温度が測定され得る。また、流体システムにおける圧力を測定することも可能である。
【0058】
透析装置は当然任意で追加のアクチュエータ及び/又はセンサを備え、これらは流体経路に接続されている必要はない。
【0059】
ここで、腹膜透析システムの個々の構成要素を実施形態に基づき以下でより詳細に説明する。
【0060】
(1)流体システム
(1−1)透析容器
新しい透析液は一般的にプラスチックバッグとして準備される。このようなプラスチックバッグは一般的に、互いに余白部分で溶着されて、新しい透析液で満たされた容器を形成する二層のプラスチックフィルムを有している。ホース部は一般的にこの容器に溶着され、これにより透析液をバッグから取り出すことができる。コネクタは一般的にホース部に配置され、これにより透析液容器を他の流体経路に接続することができる。またバッグには一般的にホースの反対側に配置された側面に切抜き部分又は小孔があり、これによりバッグをフックに掛けられるようになっている。このようにして確実に透析液が問題なくバッグから流れ出るようにすることができる。
【0061】
一般的に透析液はバッファ、浸透圧剤及び電解質を含有する。なお、バッファとして例えば重炭酸塩が使用され得る。浸透圧剤としては一般的にグルコースが使用される。また代わりにグルコースポリマー又はグルコースポリマー誘導体も使用され得る。電解質は一般的にカルシウム及びナトリウムを含む。
【0062】
また、透析液は加熱滅菌され得る。これは透析液がバッグに充填された後に行われることが有効である。これにより透析液及びバッグは共に加熱滅菌される。また、充填されたバッグは一般的にまず外装パックに入れられ、その上から全体が滅菌処理される。
【0063】
調整された透析液は多くの場合、含有成分によって加熱滅菌できないか、又は長時間保存できないため、透析液の個々の組成物を別々に保存しておき、治療の直前に混ぜ合わせるのみとすることができる。このような場合、一般に第1液はバッファを含み、第2液はグルコース及び電解質を含む。また任意で2つよりも多くの溶液、従って2つよりも多くの領域をバッグに備えることも可能である。従って、個々の溶液を保存するための複数の区画された領域を有する多室バッグ、特に2室バッグが準備され得る。これらの領域は、機械的に開封して個々の液体を互いに混合することができる接続部により区画されている。この点で、特にいわゆるピールシーム(peel seam)をバッグの2つの領域間に施すことができ、これはバッグの少なくとも一方の領域に特定の圧力を加えることで開封する。
【0064】
夜間の腹膜透析治療では比較的大容量の透析液が消費されるため、一般的には複数の透析液容器が同時に使用される。これらは対応するコネクタにより流体経路に接続され、対応するバルブの切り替えにより患者への注入に使用される。
【0065】
(1−2)排出部
使用済み透析液の排出用には、廃液システムに直接排出するか又はまず排出部容器に収容することが可能である。ここで、一般的にバッグは同様に排出部容器として使用される。バッグは治療開始前は空であり、従って使用済み透析液を収容することができる。従ってこのバッグは治療終了後には対応して廃棄され得る。
【0066】
(1−3)カセット
上述のごとく、流体システムは複数の領域を有し、この領域において透析装置は流体システムに作用しなければならない。この目的のために流体システムは透析装置に接続されなければならない。
【0067】
カセットは、透析装置への流体経路の接続及び透析装置の対応する構成部位の流体経路への作用を簡素化するために使用される。透析装置が流体経路に作用する複数の領域は、そのようなカセット内に一体的に配置される。この目的のために、カセットは一般的に硬質プラスチック部分を有し、この中に片側が開放されたチャンバが流体経路として設けられる。これらのチャンバは可撓性プラスチックフィルムにより覆われ、これにより透析装置と接続される。ここで、可撓性プラスチックフィルムは一般に硬質部分の縁部に溶着されている。カセットは透析装置の接続表面に押し付けられ、これにより透析装置のアクチュエータ及び/又はセンサがカセットの対応領域に接触するようになっている。
【0068】
またカセットは透析液容器10、コネクタ30及び排出部20の接続用の接続部を備えている。
【0069】
ここで、カセットは一般的に少なくとも1つのポンプ領域及び1つ以上のバルブ領域を含む。従って液体の送液はカセットを通じて流体システムにより制御され得る。またカセットは透析装置のセンサを流体システムに簡単に接続することができるセンサ領域を有する。またカセットは任意で透析装置の対応する加熱素子に接続され得る1つ以上の加熱領域を有し得る。
【0070】
カセットの第1実施形態は
図4a及び
図4bに示されている。カセットは硬質プラスチック部分101を備え、ここに流体経路及び接続領域が対応する切り抜き、チャンバ及び通路として設けられている。ここで、硬質部分は例えば射出成形部品として、又は深絞り成形部品として製造することができる。硬質部分101の接続表面は、縁部で硬質部分に溶着された可撓性フィルム102により覆われている。カセットを透析装置の接続表面に押し付けることにより可撓性フィルム102は硬質部分に押し付けられる。カセット内の流体経路は、可撓性フィルムを硬質部分のウェブ領域に押し付けることにより液密状に互いに区画される。
【0071】
カセットは他の流体経路にカセットを接続するための接続部を備える。一方、接続部21は排出部20に接続するために、そして接続部31はコネクタ30に接続するために設けられている。
図4aに示されていない対応するホース部をこれらの接続部に備えることができる。また、カセットは透析液容器10の接続用に複数の接続部11を有する。ここで、接続部11は、第1実施形態において対応する接続部品が接続され得るためのコネクタとして設計されている。
【0072】
いずれの場合にも接続部はカセット内で流体経路に接続されている。バルブ領域はこれらの流体経路に備えられている。これらのバルブ領域においては、装置側のバルブアクチュエータにより可撓性フィルム102を硬質部分101へ押し付けることができ、対応する流体経路がブロックされるようになっている。ここで、カセットはまずそれぞれの接続部用の対応バルブを有し、これにより接続部を開閉することができる。また、バルブV10は排出部20用の接続部21に連係し、バルブV6は患者コネクタ30用の接続部31に連係している。バルブV11〜V16は透析液容器10用の接続部11に連係している。
【0073】
またポンプチャンバ53,53’はカセット内に設けられ、これにより透析装置の対応するポンプアクチュエータを作動させることができる。ここで、ポンプチャンバ53,53’は硬質部分101内の凹状の切り抜きであり、可撓性フィルム102により覆われている。ここで、フィルムは透析装置のポンプアクチュエータによりポンプチャンバ53,53’に押し付けられ、又は再度これらのポンプチャンバから引き出され得る。また、カセットを通る送液の流れは、
図4a内において参照番号73で示された、ポンプチャンバ53,53’の流入口及び流出口を切り替えるバルブV1〜V4との相互作用により生じ得る。なお、ポンプチャンバは対応するバルブ回路によりカセットの全接続部と接続され得る。
【0074】
また、加熱領域62はカセット内に組み込まれている。この領域において、カセットのこの領域を流れる透析液を加熱する透析装置の加熱素子とカセットは接触することになる。ここで、加熱領域62は加熱領域62上にらせん状に延びる透析液用通路を備える。また、この通路は可撓性フィルム102により覆われた硬質部分のウェブ64により形成される。
【0075】
ここで、加熱領域62はカセットの両側に設けられている。この目的のために、可撓性フィルムがまたカセットの加熱領域の下側63の硬質部分に配置されている。そして、この可撓性フィルムはまた硬質部分の縁部に溶着されている。同様に通路が下側に配置され、透析液はこの通路を通じて流れる。このとき、下側及び上側の通路は硬質部分の中間プレートにより形成されており、このプレートにより上側と下側が分離され、このプレート上に通路壁を形成するウェブが上下に備えられている。まず透析液は上側を中間プレートを通って開口部65までらせん状に流れ、そこから透析液は下側を対応する通路を通って逆方向に流れていく。液体の加熱用に使用できる加熱表面は上側及び下側に備えられた加熱領域により対応して拡大され得る。しかしながら、カセットの実施形態においては、加熱領域がカセットの片側にのみ配置されることも当然可能である。
【0076】
また、加熱素子がカセット内に組み込まれたカセットの実施形態も可能である。ここで、例えば加熱コイルなどの電気加熱素子は特にカセットの硬質部分に組み込まれ得る。従って、装置側の加熱素子は不要であり、流水式加熱部をカセットに組み込むことができる。この点で、電気加熱素子の接続用に電気的接触部がカセットに配置される。
【0077】
またカセットはセンサ領域83,84を備え、これにより透析装置の温度センサをカセットに接続することができる。ここで、温度センサは可撓性フィルム102上に配置され、従って下に配置された通路を流れる液体の温度を測定することができる。そして、2つの温度センサ84が加熱領域の入口に配置されている。患者に送液される透析液の温度を測定することができる温度センサ83が患者側の流出口に備えられている。
【0078】
図5にカセットの第2実施形態を示す。ここで、カセットは実質的にその設計上は第1実施形態に対応しているが、加熱領域を含まない。従ってこのカセットを使用する場合は、加熱は第1実施形態に示されるようにカセットに組み込まれた加熱領域により行われず、代わりに例えば透析装置の加熱プレート上に配置された加熱用バッグにより行われる。
【0079】
また
図5に示すカセットの第2実施形態において今度は、ここで同様にV1〜V16の連続番号が付されたバルブ領域により開閉され得る流体経路を備える。また、カセットは流体システムの追加の構成要素に接続するための接続部を備える。なお、接続部21は今度は排出部20への接続用に設けられ、接続部31は患者用コネクタ30への接続用に設けられている。また、接続部11は透析液容器10の接続用に設けられている。
【0080】
第1実施形態と異なり、第2実施形態に示されたカセットは加熱用バッグ接続用の追加接続部66を備える。ここで、液体は透析液容器10から液体加熱用に接続部66を通って加熱用バッグ内へと送液され得る。この加熱用バッグは加熱素子上に配置され、加熱用バッグ内にある液体が加熱され得る。そして液体は加熱用バッグから患者へと送液される。
【0081】
ポンプチャンバ53,53’及びバルブV1〜V4は設計及び機能において第1実施形態の対応する構成要素に対応している。
【0082】
第1実施形態と異なり、第2実施形態のカセットは温度センサ接続用のセンサ領域を備えない。代わりにそれは加熱素子の領域に配置される。しかしながら、カセットはポンプチャンバ53,53’の圧力測定用に測定領域85,86を備える。なお、測定領域85,86はポンプチャンバと流体連通され、同様に可撓性フィルムで覆われたチャンバである。測定チャンバ85,86、従ってポンプチャンバ53,53’内の圧力を測定する装置側の圧力センサは測定領域に接続され得る。
【0083】
第2実施形態においてカセットの接続部11,21,31,66はホース接続により流体システムの追加構成要素に接続される。接続部は任意でホース接続部に配置される。
【0084】
(1−3)ホース
一般的に、システムの個々の容器、カセット及び患者コネクタ間はホース接続により接続される。ここで、いずれの場合にもそれらは使い捨て部品であるため、ホースは通常少なくとも片側において追加要素に既に固定接続されている。例えばホースはカセットの1つ以上の接続部に既に接続され得る。同様にホースはバッグと既に連通固定され得る。
【0085】
(1−4)接続
いずれの場合も流体システムは一般的に複数の部品に分割され、滅菌状態で包装されている。治療に際し、これらの部品はまず互いに接続されなければならない。なお、カセット及び1つ又は複数の透析液バッグは特に互いに別々に包装されている。
【0086】
流体システムの個々の構成要素間の接続は一般的にコネクタを用いて行われる。なお、コネクタは個々の構成要素間の滅菌接続がなされるように設計されている。例えば、このことはコネクタを閉めると自動的に開封される対応保護フィルムを用いて行われる。
【0087】
ここで、個々の構成要素の接続はオペレータ又は患者自身により手動で行うことができる。代わりに個々の構成要素の接続が透析装置により行われるようにすることもできる。
【0088】
この目的のために、例えば対応するコネクタを透析装置のコネクタ受けに一体化させることができ、透析装置により自動的に接続させることができる。
【0089】
またシステムの正しい構成要素が互いに接続されていることを監視する電子制御を備えることもできる。構成要素を識別するバーコード又はRFID等の識別手段をこの目的のためにコネクタに備えることができる。この場合、透析装置はコネクタ上の識別手段を検出するバーコードリーダ又はRFID検出ユニット等の識別手段検出用ユニットを含む。これにより、腹膜透析の制御部は正しいコネクタが挿入されているかどうかを認識することができる。
【0090】
このような流体システムの正しい組み合わせのチェックは特にコネクタの自動接続と共に行われ得る。従って、まずシステムは正しいコネクタがコネクタ受けに挿入されているかどうかをチェックする。コネクタ間の接続は正しいコネクタが挿入された場合にのみ透析装置により形成される。そうでない場合は、透析装置は誤ったコネクタが挿入されていることについてユーザーの注意を喚起する。
【0091】
(2)透析装置
ここで、透析装置の個々の構成要素について、2つの実施形態に基づいて以下により詳細に述べる。
【0092】
ここで、透析装置の第1実施形態は
図6に示されており、本実施形態において第1実施形態のカセットが使用されている。なお、第1実施形態の透析装置及び第1実施形態のカセットを使用した腹膜透析システムは
図7に示されている。
【0093】
透析装置の第2実施形態は
図8に示されており、本実施形態において第2実施形態のカセットが使用されている。従って第2実施形態の透析装置及び第2実施形態のカセットの組み合わせからなる透析システムは
図9に示されている。
【0094】
一方、2つの実施形態は、加熱部の設計、透析装置とカセットとの接続、並びにアクチュエータ及びセンサの設計において異なる。
【0095】
(2−1)加熱部
新しい透析液は患者の腹部に送液される前に体温にまで温められなければならない。透析装置はこのための対応加熱部を備えている。
【0096】
ここで、加熱は一般的に1つ以上の加熱素子によって行われる。なお、加熱素子は例えばセラミック加熱素子である。そのようなセラミック加熱素子では、抵抗片がセラミック担体に取り付けられている。加熱片は電圧を印加することにより加熱され、これによりセラミック担体材料もまた加熱される。セラミック加熱素子はこの点において一般的に加熱プレート上に配置される。例えばこの加熱プレートはアルミニウム製とすることができる。そして流体経路は加熱プレートに接続され、流体経路内に存在する透析液が加熱され得るようになっている。
【0097】
2つの異なる実施形態を流体の加熱に利用することができる。一方にはまずより多量の透析液が加熱され得、加熱段階後にのみ患者に送液される。これは一般的にはダイアライザの加熱プレート上に配置された加熱用バッグにより行われる。
【0098】
ここで、加熱用バッグは透析液が提供される透析液バッグであり得る。しかしながら、一般的には別の加熱用バッグが使用され、加熱のため透析液はそのバッグに送液される。透析液は加熱用バッグ内で加熱された場合、そこから患者に送液される。
【0099】
そのような概念は
図8及び
図9に示された第2実施形態の透析装置において実行されている。ここで、加熱用バッグ67は加熱プレート68上に設置されている。なお、加熱プレート68は腹膜ダイアライザの上側に配置され、使用しやすくなっている。また、加熱用バッグ67はライン66’によりカセットに接続されている。そして、カセットはバルブV5、V9及びV15を備え、これにより加熱用バッグ67を流体システムの他の構成要素に接続することができる。従って新しい透析液はポンプチャンバにより透析液容器10から加熱用バッグ67へ送液され得る。従って治療開始時には、加熱用バッグ67は冷たい透析液で満たされている。その後、加熱用バッグ67内の透析液は加熱プレート68により体温にまで加熱される。そこから透析液はポンプチャンバにより患者へ送液される。その後、加熱用バッグ67は次の治療サイクルに必要な透析液量が加熱されるように再度充填され得る。
【0100】
温度センサ88は加熱用バッグ67に接触しており、従って加熱用バッグ内67内の透析液の温度を測定することができ、この点で加熱プレート68の領域に備えられていることが効果的である。また、加熱素子又は加熱プレートの温度を測定することができる温度センサを加熱プレート又は加熱素子に備えることができる。ここで対応する制御部は確実に加熱プレートがバッグ内の物質に対して高温になりすぎないようにする。
【0101】
加熱用バッグ67に液体の流れの均等化という追加的な機能を備えることも可能である。従って加熱プレート68は秤87の一部をなし、これにより加熱用バッグ67の重量が測定され得る。従って加熱後に患者に供給される液量を測定することができる。
【0102】
また、第2実施形態に示された加熱用バッグにより透析液を加熱する代わりに、透析液を患者へ送液しながら加熱することもできる。従って加熱部は連続流水ヒータの形で作動し、これにより流体経路を送液されながら流体システム内を移動する透析液を加熱する。
【0103】
この概念では、透析装置の加熱素子に接続された透析液通路が設けられる。透析液が透析液通路を流れる間に、流れながら透析装置の加熱素子から熱を取り込む。
【0104】
そのような概念は
図6及び
図7に示した第1実施形態の透析装置において実行されている。ここで、加熱領域は上述のごとくカセットに一体的に組み込まれている。カセットを透析装置に接続することにより、カセットの加熱領域は透析装置の加熱素子に熱的に接触することになる。
【0105】
ここで、加熱素子は同様にセラミック加熱素子として設計され、カセットの加熱領域に接続された加熱プレートに接触させることができる。なお、カセットに関し既に示したように、加熱領域を流れる透析液を加熱する個々の加熱プレートは加熱領域の上側及び下側と接触している。
【0106】
個々の温度領域はカセット内で加熱領域の流入口及び流出口に備えられ、カセットの接続により腹膜透析液の温度センサと接触することになる。従って加熱領域に流入する透析液の温度及び加熱領域から流出する透析液の温度は温度センサT1〜T3により測定することができる。また、加熱素子及び/又は加熱プレートの温度を測定する温度センサT4,T5が備えられている。
【0107】
ここで、少なくとも2つの加熱素子を使用することにより、供給電圧220Vで供給電圧110Vと実質的に同じ電力を出力するように、いずれの場合においても加熱素子を互いに接続することができる。この目的のために2つの加熱素子は並列回路において110Vで作動し、また一方で直列回路においては供給電圧220Vで作動する。なお、このように加熱素子の接続を供給電圧に合わせることは、加熱が第1実施形態又は第2実施形態のどちらで行われるかということには無関係に行われ得る。
【0108】
(2−2)カセットの接続
透析装置のアクチュエータ及び/又はセンサをカセットの対応領域に接続させるため、透析装置はカセットが接続される接続表面を備えたカセット受けを有する。透析装置の対応アクチュエータ、センサ及び/又は加熱素子はこの接続表面に配置されている。対応アクチュエータ、センサ及び/又は加熱素子がカセット内の対応領域に接するように、カセットはこの接続表面に押し付けられる。
【0109】
ここで、可撓性材料のマット、特にシリコンマットが透析装置の接続表面に備えられていることが好ましい。これにより、カセットの可撓性フィルムがカセットのウェブ領域に確実に押し付けられ、従ってカセット内において流体経路の区画が確実に行われる。
【0110】
また、接続表面に周縁を設け、これがカセットの縁部に押し付けられることが有効である。なお、接続表面とカセットとの間に減圧状態が形成され得るように気密状に押し付けが行われることが好ましい。
【0111】
また、任意で真空装置を備え、接続表面とカセットとの間のスペースから空気を排出することもできる。従って、腹膜透析装置のアクチュエータ、センサ及び/又は加熱素子をカセットの対応領域に特に効果的に接続させることが可能となる。また、真空システムはカセットの気密チェックを可能とする。この目的のために、接続後に対応する真空引きが行われ、この真空が維持されているかどうかについてチェックが行われる。
【0112】
例えば、カセットの押し付けは空気圧により行われる。この目的のために、一般的に圧縮空気で満たされ、従ってカセットを接続表面に押し付けるエアクッションが備えられている。
【0113】
一般的にカセット受けは接続表面の反対側に配置された受け表面を有し、ここにカセットの硬質部分が挿入される。この目的のために、受け表面は対応する凹部を有することが有効である。従ってカセットが挿入された状態の受け表面は空気圧装置により接続表面に押し付けられ得る。
【0114】
また、カセットの挿入は様々な方法で行われ得る。
図6に示された第1実施形態の透析装置においては、透析装置から引き出すことができる引出し111がこの目的のために備えられている。カセットはこの引出しに挿入される。そして、カセットは引出しと共に透析装置に押し込まれる。従って、装置内部に配置された接続表面にカセットが押し付けられる。なお、カセット及び接続表面はまず機械的に互いの方向に向かって動かされ、その後、空気圧により互いに押し付けられる。
【0115】
第2実施形態におけるカセット110の接続は
図10により詳しく示されている。ドア140を開けることにより接続表面130がすぐに現れるので、カセットを接続表面130の正しい位置に配置することができる。なお、接続表面130は垂直方向に対し後方に傾いているため、容易に接続させることができる。また、ドア140を閉めることにより、ドアの受け表面をカセットの背面に接触させることができる。ここで、押し付けはドアに配置されたエアクッションにより行われる。また、接続表面とカセット110との間に対して真空引きが行われる。
【0116】
また第1実施形態の透析装置は自動接続用の装置を有する。この目的のためにコネクタ受け112が備えられ、ここに透析液バッグ10のコネクタが挿入される。そして、コネクタ受け112は、コネクタに付されたバーコードを読むためのバーコードリーダを備えた装置内に移動する。従って装置は、正しいバッグが挿入されているかどうかチェックすることができる。正しいバッグが認識された場合、コネクタ受け112は完全に内部に移動し、バッグのコネクタをコネクタとして形成されたカセットの接続部11に接続する。
【0117】
これに対して、第2実施形態ではそのような自動接続は省略された。従ってホース部分はカセットの接続部11に配置され、コネクタにより対応するバッグに手動で接続されなければならない。
【0118】
(2−3)ポンプアクチュエータ
流体システムを通る液体の送液は、実施形態においてカセットの可撓性フィルムと共にポンプチャンバ53,53’により形成される膜ポンプにより行われる。ここで、可撓性フィルムが対応するポンプアクチュエータによりポンプチャンバへ押し込まれている場合、液体はポンプチャンバからカセットの流体経路の開放領域へ送液される。逆に、フィルムをポンプチャンバから引き出すことにより液体は流体経路からポンプチャンバへ吸引される。
【0119】
ここで、ポンプストロークはポンプアクチュエータのポンプチャンバへの移動により起こる。ポンプアクチュエータは吸引ストロークのために再度ポンプチャンバから移動する。なお、カセット及び接続表面の気密状の押し付けによって減圧状態が生じ、これによりカセットの可撓性フィルムがポンプアクチュエータに従って再度ポンプチャンバから引き出される。
【0120】
ポンプアクチュエータをカセットの可撓性フィルムに良好に接続するために、真空システムをさらに備えることができる。なお、特に吸引ストロークにおいて可撓性フィルムをポンプチャンバから最大限引き離す力を、接続表面とカセットの間の対応する真空の設定により定めることができる。
【0121】
従って、ポンプの吸引力は極めて細かく設定することができる。それに対してポンプ力はアクチュエータのスラスト力により設定される。
【0122】
また、膜ポンプは個々のストロークにより送液される液量が極めて正確であるため、流量の均等化は吸引及びポンプストローク数を数えることにより行うことができる。
【0123】
(2−3−1)液圧駆動
ポンプアクチュエータの第1実施形態の構造を
図11に示す。この場合、ポンプアクチュエータは液圧により作動する。この目的のため、カセットの可撓性フィルムに配置された膜59が備えられている。ここで、膜59は例えばシリコーン製であってよい。作動液が充填され得るチャンバ54は膜59の後方に備えられている。チャンバ54を加圧することにより膜59は可撓性フィルムと共にカセットのポンプチャンバ53へ押し込まれる。それに対し、チャンバ54を減圧することにより膜59はチャンバ54内へ引き込まれる。可撓性フィルムと膜との間の減圧により、可撓性フィルムがこの動きに追従してポンプチャンバ53の体積が増加する。なお、ポンプストローク及び吸引ストロークのポンププロセスは
図12bに模式的に示されている。
【0124】
液圧ポンプ58は液圧ポンプシステムの作動用に備えられる。これはシリンダを有し、シリンダ内においてピストンはモータ57により往復動可能である。ここで、作動液は対応する接続ラインによりチャンバ54内に圧入され、又は再度チャンバ54内から吸出される。なお、トランスデューサ56が液圧ポンプ58に備えられ、これによりピストン動作が記録され得る。従って、チャンバ54内に圧入された作動液量及びチャンバ54内から排出される作動液量が測定され得る。また、液圧システムにおいて圧力を測定する圧力センサ55が液圧システムに備えられている。一方、これら圧力センサ55により、圧力センサのデータをトランスデューサ56のデータと比較し、従って液圧システムの気密性を検査することができるため、液圧システムの機能試験が可能となる。
【0125】
また、圧力センサによりカセットのポンプチャンバ53内の圧力を測定することができる。液圧ポンプ58が作動しない場合、チャンバ54とポンプチャンバ53との間で圧力バランスが保たれるようになっている。従って、作動液圧はポンプチャンバ53内の圧力に一致する。
【0126】
ここで、ポンプアクチュエータをポンプチャンバ53に接続する手順は
図12aに示されている。このとき、チャンバ54には、接続準備のため膜59が外側へ膨らむようにまず作動液が注入される。そして、接続表面及びカセットは、膜59がカセットの可撓性フィルムをポンプチャンバ53内へ押し込むように互いの方向へ向かって動かされる。接続表面及びカセットを押し付けた後、可撓性フィルムが膜動作に追従するように、膜及び可撓性フィルム間の空間が外側に気密状に閉じられる。この様子が
図12bに示されている。
【0127】
また、
図11に示されたポンプアクチュエータは第1実施形態の透析装置において実行されており、これは
図7からも理解することができる。なお、対応するポンプアクチュエータは2つのポンプチャンバ53,53’の各々にそれぞれ備えられている。
【0128】
(2−3−2)電気機械駆動
また代わりに、ポンプアクチュエータは電気モータの態様でも作動し得る。この目的のために対応する形状のピストンが備えられ、電気モータ、特にステッピングモータにより可撓性フィルムに対して往復動し、これによりポンプストローク又は吸引ストロークが生じる。このようなポンプアクチュエータ151,152は
図10の実施形態に示されている。なお、吸引動作において可撓性フィルムがピストン動作に確実に追従するように真空システムを備えることも有効である。
【0129】
(2−4)バルブアクチュエータ
バルブアクチュエータとして、カセットの可撓性フィルムを硬質部分の対応チャンバ内へ圧入し、この領域の流体経路を閉じるバルブプランジャを備えることができる。ここで、バルブアクチュエータは例えば空気圧により作動し得る。なお、プランジャは加圧なしで開くか又は加圧なしで閉じるようにばねにより付勢され得る。
【0130】
代わりに、バルブアクチュエータは液圧又は空気圧により作動する可撓性膜により実行され得る。ここで、可撓性膜は加圧によりカセットに向かって動き、従って可撓性フィルムの対応バルブ領域が流体経路に圧入されて流体経路を閉鎖する。
【0131】
図10の接続表面において、カセットのバルブ領域V1〜V16に接続されたバルブアクチュエータ71を確認することができる。
【0132】
(2−5)センサ
透析装置は、透析装置を制御又はその適切な動作を監視することができるようセンサを備えている。
【0133】
一方、この場合、1つ以上の温度センサが備えられ、これにより透析液及び/又は加熱素子の温度を測定することができる。また、第1実施形態においては、温度センサはカセットへの接続表面に配置され、従ってカセットを流れる透析液の温度を測定することができる。これに対して第2実施形態においては、温度センサ88が加熱プレート68上に備えられ、バッグ67内に存在する透析液の温度を測定する。また温度センサは1つ又は複数の加熱素子に備えることができる。
【0134】
また、1つ以上の圧力センサがポンプチャンバ圧を測定するために備えられ得る。従って、圧力が高すぎる状態で透析液が患者に注入されるか、又は患者から透析液を吸引する際に吸引圧が上昇しすぎるのを防ぐことができる。
【0135】
ここで、上述のごとく、第1実施形態においてはポンプアクチュエータの液圧システム内の圧力センサにより圧力測定が行われる。これに対し、第2実施形態においてはカセットの対応する圧力測定領域内の圧力を直接測定する圧力センサ85’,86’が接続表面内に備えられる。なお、これら圧力センサのカセットへの接続は真空システムにより確実に行われることが有効である。
【0136】
(2−6)入力/出力装置
また、透析装置はオペレータとの通信のための入力/出力装置を含む。ここで、対応するディスプレイが情報出力のために備えられ、例えば発光ダイオード、液晶ディスプレイ、又はスクリーンにより実行され得る。対応する入力装置はコマンド入力のために備えられる。この場合、例えばプッシュボタン及びスイッチが備えられる。
【0137】
ここで、両実施形態において、タッチスクリーン120が備えられることにより対話型メニューナビゲーションが可能になる。また、透析装置の状態をコンパクトに表示するディスプレイ部品121,122が備えられる。
【0138】
また、第1実施形態はカードリーダ125を有し、これにより患者カードを読み取ることができる。患者カードには個々の患者の治療に関するデータを保存することができる。従って個々の患者のための治療手順を個別に設定することができる。
【0139】
また、腹膜透析装置は音響信号を出力することができる音響信号装置を備える。ここで、特にエラー状態が検知された場合に音響警告信号を出力することができる。なお、スピーカを備えることが好ましく、これにより音響信号が発せられる。
【0140】
(2−7)制御部
また、腹膜透析装置は制御部を有し、これにより全ての構成要素が制御及び監視される。また、制御部は治療の自動手順を提供する。
【0141】
そのような制御部の実施形態の基本構造を
図13に示す。
【0142】
ここで、オペレータ及び外部情報源との通信はインターフェースコンピュータ150により行われる。インターフェースコンピュータ150は患者カードリーダ200、患者との通信用の入出力装置210、及びモデム220と通信する。更新されたソフトウェアは例えばモデム220によりアップロードされ得る。
【0143】
インターフェースコンピュータ150は内部バスにより活動コンピュータ160及び保護コンピュータ170に接続される。活動コンピュータ160及び保護コンピュータ170はシステムの冗長性を生じる。ここで、活動コンピュータ160はシステムのセンサから信号を受信し、アクチュエータ180用の制御信号を算出する。保護コンピュータ170は同様にセンサ180から信号を受信し、活動コンピュータ160により出力されたコマンドが正しいかどうかをチェックする。保護コンピュータ170がエラーを判断した場合、対応する緊急用手順を開始する。ここで、保護コンピュータ170は特に警告信号を発することができる。保護コンピュータ170はまた患者へのアクセスを切断することができる。この目的のために特別なバルブが患者側のカセットの流出口に配置されており、保護コンピュータ170はそれにアクセスするだけである。なお、この安全バルブは加圧されていない状態で閉じるので、空気圧システムの誤動作において自動的に閉じる。
【0144】
また、保護コンピュータ170はバーコードリーダ190に接続され、正しい透析液バッグが接続されているかをチェックする。
【0145】
また、診断システム230が備えられ、これによりシステムのエラーが判定され修正され得る。
【0146】
(3)発明の実行
ここで、上に示した透析装置に使用される、又は上に示された透析装置の1つにおいて使用される本発明の実施形態を以下に説明する。なお、本発明の実施形態は上述のごとく個々の構成要素又は複数の構成要素と組み合わせることができる。
【0147】
透析装置は設定手段を有し、これにより少なくとも1つの治療パラメータを自動的に透析装置の治療動作中に動的に設定することができる。
【0148】
ここで、設定手段はタイムマネジャーとも呼ばれる時間管理部品とボリュームマネジャーとも呼ばれる液量管理部品とを有する。設定手段は上述の透析装置の構成要素であることが好ましい。
【0149】
タイムマネジャーは治療時間を個々の貯留段階前に固定要素(例えば10%)により短縮すべきかどうか評価する。実行された治療段階が装置側で記録され、又はログ記録されるので、その瞬間の治療の時間計画が保持されているかどうかを個々の貯留段階前に評価することができる。
【0150】
装置側で遅れが認識された場合、予定治療時間及び実際の治療時間の時間差がまず測定される。時間差(治療遅れ)は固定短縮時間(例えば貯留段階時間の10%未満の遅れ)を超えない場合、評価された貯留段階時間から差し引かれる。貯留時間短縮の最大許容時間を超えた場合は、結果として貯留段階は正確にこの最大固定時間分短縮される。
【0151】
これを第1例に基づいて説明することができる。ここで、貯留時間が100分であるとする。この場合、その時点の治療遅れは既に5分である。貯留時間は結果的に95分に短縮される。これは百分率表示で5%の短縮に相当する。短縮百分率は百分率要素10%を下回っているため、設定手段により貯留段階時間が95分に調整される。
【0152】
さらに別の例により説明することができる。ここで、貯留時間が100分であるとする。この場合、その時点の治療遅れは既に20分である。従って治療遅れは貯留段階時間に対して既に20%に及ぶ。百分率短縮時間は百分率要素を10%超過しているため、貯留段階時間は設定手段の一部である制限手段を使用して90分に固定される(評価された貯留段階時間の90%、すなわち時間短縮は貯留段階時間の10%に相当する)。
【0153】
ボリュームマネジャーは注入量を個々の注入前に固定要素(例えば10%)分減量するべきかどうか評価する。その瞬間使用可能な注入量、及び透析装置側で実行される残りの治療段階又は治療サイクルについて常時ログが記録されるので、特定の溶液タイプが十分量あるかどうか、又は以降の注入段階を実行するのに十分な液量があるかどうか個々の注入前に評価することができる。
【0154】
溶液の注入量が上述のごとく治療を実行するのに十分でない場合は、全ての現時点での実行前の計画注入量を減量することが好ましく、まず不足量が測定される。
【0155】
この目的のために、第1段階において不足量はこの注入段階の評価された注入量から差し引かれる。不足する注入量が固定最小要素(例えば10%未満)を下回る場合、この量は注入量から差し引かれる。百分率要素を超過する場合は結果として注入量は正確にこの百分率要素分減量される。
【0156】
これは第1例及び第2例に基づいてより詳細に示される。
【0157】
第1例において、注入量が1000mLであるとする。ここで、以降の治療を実行するために2000mL必要である。しかし、現時点での使用可能量は1980mLのみである。従って不足量は20mLになる。このとき注入量は980mL(1000mL−20mL)に減量される。これは百分率表示で2%の減量に相当する。百分率での不足量が百分率要素(10%)を下回っているため、結果として装置側で980mLが注入されることになる。
【0158】
第2例において、注入量が1000mLであるとする。ここで、以降の治療を実行するために2000mLの溶液がまた必要である。しかし、現時点での使用可能量は1800mLのみである。従って不足量は200mLに及ぶ。このとき注入量は800mL(=1000mL−200mL)にまで減る。これは百分率表示で20%の減量に相当する。百分率での不足量が百分率要素の10%を超過しているので、結果として装置側で900mLが注入され、これは評価された注入量の90%、又は10%分の減量に相当する。