(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0021】
紙幣処理装置は、紙幣を処理する多機能装置である。一般に、スーパーマーケットや銀行など、大量に現金が取り扱われる分野において用いられる。例えば、銀行の窓口などでの出納業務や、スーパーマーケットの売上金の管理業務などで、手間のかかる現金の入金や出金、計数、保管管理等の処理に用いられ、紙幣処理装置を用いることで、これら作業の高精度化、効率化を図ることができる。ここで説明する紙幣処理装置は、特に銀行のテラーカウンターに設置された紙幣入出金機として用いられる。従って、この紙幣入出金機を操作するオペレータは、基本的にはテラーである。
【0022】
図1及び
図2に、紙幣入出金機1(以下、単に入出金機1ともいう)を示す。この入出金機1は、いわゆる循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出す紙幣には、入金処理時に収納部3に収納した紙幣が含まれる。入出金機1は、図示は省略するが、LANやWAN等のネットワークを介して、又は、直接的に上位機等と通信可能に接続し、システム化して用いることができる。入出金機1に接続される上位機は1台だけでなく、複数台に接続し、いずれか一つの上位機を選択的に切り替えて用いることができる。
【0023】
入出金機1は、上部の処理部11と、下部の金庫部13とに大別される。処理部11を構成する筐体111内には、入金口211を有する入金部21と、出金口231を有する出金部23と、紙幣の識別を行う識別部25と、一時的に紙幣を収納する出金リジェクト一時保留部51(以下、単に一時保留部51ともいう)と、入金部21、出金部23、識別部25及び一時保留部51を相互に連結するループ搬送路411を含む搬送部41と、が配設されている。一方、処理部11を構成する筐体111の下側に配置される筐体131は、金庫部13を構成する筐体であり、その内部に格納している収納部3を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成されている(防護筐体131ともいう)。
【0024】
金庫部13には、複数の(図例では5個の)スタック式の収納カセット31を含んで構成された収納部3が配設されている。防護筐体131の前面には、金庫部13を開閉するための開閉扉133が設けられている。開閉扉133の前面には、電子錠1331が設けられ、この電子錠1331は、例えば、予め設定された暗証番号を入力することによって解錠することができる。電子錠1331の解錠により、開閉扉133を開放して、収納部3にアクセス(接触)することが可能になる。
【0025】
入金口211は、例えば入金処理の際に入金する紙幣を投入するための口である。入金口211は、処理部側筐体111の上面において上向きに開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。入金部21はまた、入金口211に投入された複数枚の紙幣を、一枚ずつ、ループ搬送路411に繰り出す繰り出し機構を備えている。
【0026】
出金口231は、例えば出金処理の際に紙幣を払い出すための口である。出金口231は、入金口211よりも奥行き方向の手前側で、処理部側筐体111の上面において上向きに開口している。出金口231は、搬送されてきた紙幣を集積し、複数枚の紙幣を一度に保持可能なリフトを有している(図示省略)。リフトは、リフト機構により、紙幣の抜き取り可能な払出位置と、紙幣の抜き取り不能な待機位置とに移動する。
【0027】
識別部25は、ループ搬送路411上に配設されて、そのループ搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損を識別するように構成されている。具体的には、画像センサ、赤外線センサ、紫外線センサ、及び磁気センサ等の、紙幣の特徴を取得するセンサを搭載し、搬送される紙幣の特徴が、記憶している各種紙幣の特徴と一致するかを判定し、金種、真偽、及び正損を識別する。入出金機1の識別部25はまた、紙幣に印字されている記番号を光学的に読み取る機能を有している。ここで、記番号の読み取りは、紙幣における所定の位置に印字されている記番号の画像を取得し、その取得した画像に基づいて、記番号の各桁の文字や数字を認識することである。尚、識別部25が記番号の読み取りを行うのではなく、識別部25とは別の読取部を、例えばループ搬送路411上に配置してもよい。また、識別部25におけるセンサ以外の機能を、後で述べる制御部513が行ってもよい。
【0028】
搬送部41は、処理部側筐体111内においてエンドレスに設けられたループ搬送路411を備えている。紙幣は、このループ搬送路411に沿って
図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。このループ搬送路411は、図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、搬送される紙幣を検出するセンサ及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。ループ搬送路411は、その搬送路に沿って、紙幣と紙幣との間に所定間隔を隔てた状態で、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。ループ搬送路411と入金口211との間は、投入路413によって互いに接続されており、入金口211に投入された紙幣は、この投入路413を通ってループ搬送路411まで搬送される。
【0029】
ループ搬送路411には、後述する第1〜第4の4つの収納カセット31のそれぞれに接続される分岐路417が、図示省略の分岐機構を介して接続されており、各分岐機構の動作制御によって、ループ搬送路411上を搬送されている紙幣が選択的に、分岐路417を通じて4つの収納カセット31のいずれかに搬送されてそこに収納されると共に、いずれかの収納カセット31から繰り出された紙幣が、分岐路417を介してループ搬送路411に搬送されるようになる。
【0030】
ループ搬送路411にはまた、払出路415が、紙幣の搬送方向を切り替える分岐機構(図示省略)を介してそれぞれ接続されている。払出路415の先端は、出金口231に接続されている。分岐機構は、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。分岐機構の具体的な構成は、国際公開第2009/034758号に例示されている。この構成によって、ループ搬送路411上を搬送されている紙幣は、分岐機構の動作制御によって選択的に、払出路415を通って出金口231に搬送される。
【0031】
ループ搬送路411にはさらに、一時保留部51に接続される第1接続路416と、後述する第5収納カセット31
−5に接続される第2接続路418と、第4収納カセット下部31
−4Lに接続される第3接続路419とが、それぞれ図示省略の分岐機構を介して接続されている。この内、第3接続路419は、金庫部13を下向きに延びて配設されており、その下流端が、第4収納カセット下部31
−4Lに接続されている。
【0032】
これら第1〜第3接続路416、418、419の接続位置に設けられた各分岐機構もまた、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。この構成によって、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣は、分岐機構の動作制御によって選択的に、第1接続路416を通って一時保留部51に搬送されるか、第2接続路418を通って第5収納カセット31
−5に搬送されるか、第3接続路419を通って、第4収納カセット下部31
−4Lに搬送される。また、一時保留部51、第5収納カセット31
−5、又は、第4収納カセット下部31
−4Lから繰り出され、第1、第2又は第3接続路416、418、419を通って搬送されてきた紙幣が、ループ搬送路411上で時計回り又は反時計回り方向に搬送される。
【0033】
図示は省略するが、処理部側筐体111は開放可能に構成されており、後述するように搬送部4の搬送路途中において紙幣の詰まり等の搬送エラーが発生したときには、処理部側筐体111を開放することによって、オペレータは、搬送エラーの原因である搬送路上の紙幣を手で取り除くことが可能に構成されている。
【0034】
収納部3は、前述したように、図例では第1〜第5のスタック式の収納カセット31を含んで構成されている。ここで、以下の説明において、各々の収納カセットを総称する場合には、符号「31」を付し、第1、第2、第3…の、各々の収納カセットを区別する場合には、符号「31
−1、31
−2、31
−3…」を付す。尚、収納カセット31の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。第1〜第5の収納カセット31の内、第1〜第4の収納カセット31
−1〜31
−4は、この例では、装置の奥行き方向に並んで配設されている。また、第5の収納カセット31
−5は、金庫部13内において、第3接続路419を挟んだ第4収納カセット31
−4とは反対側の位置に配設されている。
【0035】
各収納カセット31の内部には、
図2に示すように、そこに集積される紙幣の量に応じて昇降する集積台311が配設されている。第1〜第3及び第5収納カセット31
−1、31
−2、31
−3、31
−5は、ループ搬送路411から、各カセットの出入口を通ってその内部に送り込まれた紙幣を、集積台311の上で、下から上の順に積み重ねて収納するように構成され、かつ、集積台311上に積み重ねられた紙幣を、上から下の順に一枚ずつ出入口を通じてループ搬送路411に繰り出すことが可能に構成されている。
【0036】
これに対し、第4収納カセット31
−4は、その内部に仕切りが設けられており、これによって第4収納カセット31
−4は、上側のカセット上部(第4収納カセット上部31
−4U)と、下側のカセット下部(第4収納カセット下部31
−4L)に分割されている。第4収納カセット上部31
−4Uの出入口は、その上面に形成されている。第4収納カセット下部31
−4Lの出入口は、その側面に形成されている。第4収納カセット上部31
−4Uの出入口には、ループ搬送路411から分岐した分岐路417が接続され、第4収納カセット下部31
−4Lの出入口には、第3接続路419が接続されている。
【0037】
これにより、第4収納カセット上部31
−4Uは、第1収納カセット31
−1等と同様に、紙幣を収納、繰り出すことが可能に構成されている。対して、第4収納カセット下部31
−4Lは、ループ搬送路411から、第3接続路419を通ってその内部に送り込まれた紙幣を、集積台311の上で、下から上の順に積み重ねて収納するように構成され、かつ、集積台311上に積み重ねられた紙幣を、上から下の順に一枚ずつ第3接続路419及びループ搬送路411に繰り出すことが可能に構成されている。
【0038】
図示は省略するが、収納部3は、金庫部13の開閉扉133を開けた状態で、装置の手前に引き出すことが可能であり、オペレータは、引き出した収納部3の各収納カセット31を個別に開けて、収納されている紙幣を取り出すことが可能に構成されている。
【0039】
一時保留部51は、前述したように、第1接続路416に接続されている。この一時保留部51は、例えば出金処理時に発生したリジェクト紙幣を一時的に収納する収納部である。一時保留部51は、スタック式の収納カセット31等とは異なり、巻き取り方式に構成されている。
【0040】
つまり、この巻き取り方式の一時保留部51は、特開2000−123219号公報に例示されるように、概略矩形箱状の筐体内に、紙幣をガイドする一枚のテープ、ガイド部材、及び、紙幣と共にテープを巻き取るリールを備えて構成されるか、又は、国際公開第2011/036782号に例示されるように、筐体内に、紙幣を挟む2枚のテープ、及び、紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るリールを備えて構成される。いずれの構成においても、巻き取り方式の一時保留部51は、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。
【0041】
図3は、入出金機1の動作制御に係る構成を示している。入出金機1は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部513を備えている。制御部513には、前述した入金部21、出金部23、第1〜第5収納カセット31を含む収納部3、一時保留部51、及び搬送部41が、信号の送受信可能に接続されている。これらの各部21,23,3,41,51は、例えば
図2に示す、収納カセット31の出入口に設けられかつ、紙幣の通過を検知する通過センサ312のような、搬送中の紙幣を検知するといった機能を有する各種のセンサを含んでおり、各種センサの検知信号は制御部513に入力される。制御部513は、入力された検知信号等に基づいて制御信号を出力し、各部21,23,3,41,51は、その制御信号に従って動作する。通過センサ312は、例えば紙幣の通過を遮光によって検知する遮光センサによって構成される。
【0042】
制御部513にはまた、識別部25が接続されており、識別部25は、識別結果及び記番号の読み取り結果を制御部513に提供する。さらに、入出金機1を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分としての操作部55が接続されている。例えばLANやシリアルバスを通じて、入出金機1が上位機等との間で信号の送受信を行うための通信部57も制御部513に接続されている。各種の情報を記憶するための、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成される記憶部59も制御部513に接続されている。
【0043】
記憶部59は、入出金機1が収納している紙幣の金種別枚数又は金額である在高を少なくとも記憶する。また、記憶部59は、収納カセット31毎の在高も記憶する。具体的には、記憶部59はカウンタを有し、各カセットへの紙幣の収納時及び各カセットからの紙幣の繰出時に、通過センサ312の検知結果に基づいてリアルタイムに紙幣のカウントを行う現物在高として、収納カセット31毎にカウンタが設定されている。また、入金処理や出金処理が完了したときに、機内在高としてのカウンタが設定されている。また、記憶部59は、入出金機1において実行された各種処理の履歴をログとして記憶する。記憶部59はさらに、後述するように、識別部25が読み取った紙幣の記番号の情報を記憶するようにも構成されている。
【0044】
入出金機1には、各種の情報を表示するため、
図3に仮想的に示すように、例えばフラットパネルディスプレイからなる表示部511が装着可能に構成されている。この表示部511もまた、制御部513に接続される。表示部511をタッチパネル式のディスプレイとして、表示部511と操作部55とを一体にしてもよい。
【0045】
制御部513は、通信部57を通じて受けた上位機からの指令、及び/又は、操作部55を通じて受けた各種の指令に応じて、各部21,23,25,3,41,51,55,57,59,511の動作を制御する。
【0046】
(入金処理)
入金処理は、入金する紙幣を、収納カセット31に収納する処理である。入出金機1においては、第1〜第5収納カセットのそれぞれに収納する紙幣の種類(例えば、金種等)が予め設定されており(以下、この設定を収納割り当てという場合がある)、入金口211に投入された紙幣の内、識別部25において識別可能な正常紙幣は、識別部25による識別結果と収納割り当てとに従って、いずれかの収納カセット31に収納される。
【0047】
図4に、入金処理時における入出金機1の動作を示す。入金する紙幣を入金口211に投入した状態で、例えば上位機等の操作によって入金処理の開始コマンドを、入出金機1に入力する。入金部21の繰り出し機構は、同図に矢印(実線)で示すように、入金口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、その紙幣の識別や計数、記番号の読み取り(これらを包括的に識別ともいう)を行う。
【0048】
搬送部41はまた、正常紙幣を、同図に矢印(実線)で示すように、その識別結果及び予め設定された収納割り当てに従って、所定の収納カセット31に収納する。すなわち、各紙幣は、金種別や正損別に応じて、第1〜第5のいずれかの収納カセット31に収納される。このように、この入出金機1においては、入金処理時に、入金口211に投入された紙幣を収納カセット31に直接収納する、いわゆるダイレクト入金処理を行うように構成されている。
【0049】
一方、搬送部41は、収納カセット31に収納することができないリジェクト紙幣を、同図に矢印(破線)で示すように、出金口231に払い出す。尚、入金処理時に発生したリジェクト紙幣は、入金口211に再度投入され、識別部25による識別が、もう一度行われることになる。
【0050】
入金処理において、各収納カセット31に紙幣が収納される度に、通過センサ312の検知結果を受けて記憶部59に記憶している在高が更新される。
【0051】
(出金処理)
出金処理は、入出金機1に収納されている正常紙幣を払い出す処理である。
図5に、その動作を示す。具体的には、上位機等において、出金金額を指定して最小構成枚数の金種と枚数を自動的に指定するか、或いは金種と枚数を直接指定することにより、所定の出金操作を行うことによって、出金処理は開始する。収納部3は、同図に矢印(実線)で示すように、指定された金種の紙幣を、それが収納されている収納カセット31から、必要な枚数だけ繰り出す。搬送部41は、繰り出された紙幣を識別部25に搬送し、識別部25が識別と、記番号の読み取りとを行った後に、正常紙幣は、出金口231に払い出される。
【0052】
出金処理時に発生するリジェクト紙幣は、同図に矢印(破線)で示すように、一時保留部51に搬送され、収納される。一時保留部51に収納された紙幣は、必要に応じて、出金処理の終了後に、各収納カセット31に戻される。
【0053】
一連の処理が終了すると、上位機等からの指示により、リフトが払出位置に移動し、出金口231に払い出された紙幣は、紙幣の抜き取り待ちとなる。紙幣が抜き取られると、リフトは待機位置に移動する。
【0054】
出金処理においても、各収納カセット31から紙幣が繰り出される度に、通過センサ312の検知結果を受けて記憶部59に記憶している在高が更新される。
【0055】
(記番号管理)
次に、この入出金機1における記番号管理について説明する。前述したように、この入出金機1では、入金処理時に、識別部25が各紙幣の記番号を読み取る。記憶部59は、識別部25が読み取った記番号を記憶する。
【0056】
ここで、識別部25は、記番号の全桁を読み取れなくても、一部の桁を読み取ることも許容されている。つまり、識別部25が読み取りを行う記番号の最低桁数は、変更可能に構成されている。これは、後述するように、識別部25は読み取って記憶部59に記憶する記番号を照合する際に、一部桁のみであっても、紙幣を特定することが可能だからである。一部桁の読み取りを許容することは、処理の負担を軽減して処理の高速化に有利になるだけでなく、記番号の読み取り不可の紙幣が増えてしまうことを回避する上で有効である。最低桁数の記番号を読み取ることができなかった紙幣は、出金口231に払い出される。
【0057】
図6は、記憶部59が記憶をする記番号の情報を概念的に示す図である。記憶部59は、第1の記憶部591と第2の記憶部592とを備えており、第1の記憶部591が、識別部25が読み取った記番号を、先ず記憶する。
図6に示す白四角は、記番号を記憶する領域に相当し、一つの白四角が一つの記番号を記憶する。
【0058】
第1の記憶部591は、第1〜第5収納カセット31毎に、記番号を記憶するように構成されていて、識別部25が紙幣の金種を認識すると共に記番号を読み取ったことを受けて、記憶部59は、紙幣が実際に収納カセット31に収納される前に、第1の記憶部591において当該紙幣が収納される予定の収納カセット31の記憶領域に、当該記番号を記憶する。記憶部59はまた、当該紙幣が収納カセット31に収納されたときに、第1の記憶部591において記憶している記番号を、第2の記憶部592に移行する。これによって、第1の記憶部591に記憶していた記番号は消去される。従って、第1の記憶部591において記番号を記憶している紙幣は、搬送部4において識別部25を通過した後、収納カセット31に収納する前の、搬送路上に存在している紙幣である。尚、第1の記憶部591は、各収納カセット31について、所定枚数分の記番号を記憶可能な記憶容量が予め設定されている。この記憶容量は、搬送路上に存在し得る紙幣の最大枚数に基づいて設定すればよく、一例として、但し、これに限定されないが、16枚分の記番号を記憶可能な容量を設定してもよい。こうして第1の記憶部591は、概念的には、
図6に示すように、識別部25が識別を行った順に(旧から新の順番に)、記番号を記憶するように構成されている。
【0059】
第2の記憶部592も、第1の記憶部591と同様に、第1〜第5収納カセット31毎に、記番号を記憶するように構成されている。記憶部59は、前述したように、各収納カセット31の出入口に設けられた通過センサ312が、収納カセット31に紙幣が収納されたことを検知したことを受けて、第1の記憶部591に記憶している当該収納された紙幣の記番号を、第2の記憶部592に移行する。従って、第2の記憶部592において記番号を記憶している紙幣は、収納カセット31内に収納された紙幣である。第2の記憶部592もまた、各収納カセット31について、所定枚数分の記番号を記憶可能な記憶容量が予め設定されている。図例では、第2の記憶部592の記憶容量は、各収納カセット31について5枚分に設定されている。但し、第2の記憶部592の記憶容量は、これに限定されない。記憶部59は、新たな紙幣が収納カセット31に収納される毎に、第2の記憶部592において以前に記憶している記番号の情報を消去し、新たな紙幣の記番号を記憶する。このように、第2の記憶部592は、5枚分の紙幣の記番号を循環記憶するように構成されており、第2の記憶部592が記番号を記憶している紙幣は、各収納カセット31において集積台311上に積み重ねられた紙幣の内、上から5枚分の紙幣である。積み重ねられた紙幣の上から下は、第2の記憶部592においては新から旧に対応する。
【0060】
記憶部59が第1及び第2の記憶部591、592に記憶している記番号の情報は、入金処理の最中に搬送エラーが発生したときに利用される。次に、搬送エラーが発生したときの復旧手順について、
図7を参照しながら具体的に説明する。
【0061】
先ず、
図7のP1に示すように、入出金機1が入金処理を実行することにより、紙幣BNが搬送路411上を順次搬送される。尚、
図7においては理解容易のために、搬送路411を仮想線で描いている。識別部25は、通過する紙幣BNの識別を行い、第1の記憶部591は、読み取った記番号(図例では、12346、12344等)を、順次、記憶する。
【0062】
通過センサ312が、収納カセット31に紙幣BNが収納されたことを検知する、具体的には、遮光センサが透光、遮光、透光を検知することによって、記憶部59の在高が登算されると共に、第1の記憶部591の記番号が、第2の記憶部592に移行される(
図7の矢印参照)。図例では、紙幣BN1が、第1収納カセット31
−1に収納されることに伴い、当該紙幣BN1の記番号「12346」が、第1の記憶部591から第2の記憶部592に移行している(P2も参照)。
【0063】
続くP2において、搬送路411上の紙幣、例えば紙幣BN4の詰まりが発生して搬送が停止したとする。ここで、第1収納カセット31
−1の出入口付近において、2枚の紙幣BN2、BN3が重なった状態で搬送が停止したと仮定する。
【0064】
搬送エラーの発生によって紙幣の搬送が停止すれば、エラー復旧のために、オペレータは入出金機1の処理部側筐体111を開けて、搬送路411上で詰まった紙幣、ここでは紙幣BN4を手で取り除く。その後、オペレータは、入出金機1に設けられたリセットスイッチ(図示省略)を押下する。このことにより、入出金機1は、
図7のP3に示すように、搬送路411上に存在している紙幣を全て出金口に搬送し(同図の矢印参照)、そこに投出するようにする。一方で、収納カセット31の出入口付近の紙幣は、搬送路411の側に引き戻すことができない場合があり、その場合、入出金機1は、収納カセット31内に紙幣を収納する。図例では、第1収納カセット31
−1の出入口付近において重なっていた2枚の紙幣を、第1収納カセット31
−1内に収納しており、第1収納カセット31
−1内には、合計3枚の紙幣が収納されている。
【0065】
ここで、P3に示す復旧処理時の最中に収納カセット31に紙幣が収納されたときには、具体的に、通過センサ312が透光、遮光、透光を検知することによって、紙幣の通過を検知するか、または、復旧処理の開始時に遮光状態であった通過センサ312が、復旧処理の最中に透光に変わったことを検知することによって、出入口付近で止まっていた紙幣が収納カセット31内に収納されたときには、当該収納カセット31についてフラグを立てる。このフラグは、エラー復旧時に紙幣が収納された可能性のある収納カセットを特定するためのフラグである。尚、復旧処理時に、収納カセット31内に紙幣が収納されても、第1の記憶部591から第2の記憶部592への記番号の移行は行わず、また、記憶部59の在高も登算しない。図例では、第1収納カセット31
−1についてフラグが立てられる。
【0066】
こうした復旧処理を行う結果、搬送エラーの発生時に、搬送路411上に存在していた紙幣(搬送路411上で詰まった紙幣BN4も含む)が、装置外に投出されて、オペレータの手許に存在するようになる。
【0067】
入出金機1は、リセットスイッチが押下されることに応じて、第1の記憶部591に記憶している記番号の情報を出力する。具体的には、入出金機1の表示部511に記番号を表示してもよいし、通信部57を通じて上位機に記番号の情報を出力し、上位機の表示部に記番号を表示してもよい。また、入出金機1は、記番号の情報だけでなく、表示している記番号に対応する金種情報も出力してもよい。
図8は、表示画面の一例を示している。この画面には、装置外に投出された紙幣の記番号が順に示されている。ここに含まれる記番号は、第1の記憶部591に記憶されていた記番号である。尚、金種情報も出力する場合は、記番号と共にそれに対応する金種情報を一緒に、表示画面に表示してもよい。オペレータは、画面に含まれている記番号と、手許に存在している紙幣の記番号とを照合する。画面に含まれている記番号に対応する紙幣が全て手許に存在しているときには、搬送エラーの発生時に、搬送路411上に存在していてかつ、収納カセット31内に収納されていなかった紙幣は全て、装置外に投出されたことになる。そのため、装置内在高と、入出金機1内に実際に収納されている紙幣の在高とは同じになるから、エラー復旧が完了したことになる。
【0068】
また、画面に含まれている記番号に対応する紙幣が全て投出されていると共に、画面に含まれない記番号の紙幣が投出されているときも、前記と同様に、装置内在高と入出金機1内に実際に収納されている紙幣の在高とは同じになるから、エラー復旧が完了したことになる。画面に含まれない記番号の紙幣は、搬送エラーの発生時に、識別部25が未識別であった紙幣(
図7のP2においては、紙幣BN6がそれに相当する)と考えられるためである。
【0069】
これに対し、画面に含まれている記番号に対応する紙幣の全てが、手許に存在しないときには、当該紙幣は、エラー復旧の際に収納カセット31内に収納されている可能性がある。入出金機1は、復旧処理時に紙幣が収納された収納カセット31、言い換えるとフラグが立っている収納カセット31の情報を、
図8に示す画面に併せて表示するよう構成されている。図例では、紙幣を収納した可能性のある収納カセットとして、第1収納カセットが表示されている。尚、紙幣を収納した可能性のある収納カセットが複数存在しているときには、その全ての収納カセットが表示される。また、フラグが立っている収納カセット31が無いときには、表示されない。尚、少なくとも1の収納カセット31についてフラグが立てられるときには、全ての収納カセット31についてフラグを立てるようにしてもよい。
【0070】
オペレータは、この情報に基づいて、金庫部13の開閉扉133を開けて、紙幣を収納した可能性のある収納カセット31の中を確認する。図例では、オペレータは、第1収納カセット31
−1を開けて、その中に当該記番号の紙幣が収納されているか否かを確認することになる。紙幣を収納した可能性のある収納カセット31の情報を出力することは、オペレータが確認を要する収納カセット31の数を減らして、オペレータの作業の負担を軽減する。そうして、収納カセット31内に当該記番号の紙幣が収納されていたときには、オペレータは、その紙幣を手で取り出す。
図7の例では、P3において第1収納カセット31
−1に3枚の紙幣が収納されているところ、P4において、2枚の紙幣BN2、BN3が取り出されることによって、第1収納カセット31
−1内には、1枚の紙幣BN1のみが収納されることになる。
【0071】
そうして、収納カセット31内の紙幣を取り出すことを含めて、
図8に示す表示画面に含まれている記番号に対応する紙幣の全てが、装置外に投出されれば、エラー復旧が完了することになる。オペレータは、
図8に示す表示画面において、紙幣取出完了の操作ボタンを選択する操作を行うか、又は、収納カセット31内からの紙幣の取り出しが不要であれば、紙幣取出不要の操作ボタンを選択する操作を行うか、を行って、エラー復旧を完了させる。紙幣取出完了の操作ボタンが選択されたときには、収納カセット31に立てられていたフラグが削除される。また、エラー復旧が完了すれば、記憶部59は、第1の記憶部591の情報を全て消去し、入出金機1の運用を再開する。
【0072】
このように、この入出金機1では、搬送エラーが発生した時に、搬送路上に存在している紙幣の記番号を出力するようにしており、このことは、装置内在高に含まれていない紙幣の追跡を可能にする。つまり、前述の通り、エラー復旧の際に、収納カセット31内に紙幣が収納されたときでも、その紙幣を特定することが可能になる。これにより、装置内在高と収納カセット31内に実際に収納されている紙幣の在高との間に差異が生じてしまうことを回避することができるので、違算の発生が未然に回避される。その結果、搬送エラーが発生したときにも紙幣の管理の適正化が確保される。
【0073】
尚、前述した例では、搬送エラーの発生時に、第1の記憶部591に記憶している記番号の情報のみを出力(つまり、表示)しているが、第1の記憶部591に記憶している記番号の情報と共に、第2の記憶部592に記憶している記番号の情報も出力してもよい。こうすることで、収納カセット31内から紙幣を取り出す際には、復旧時に収納カセット31に収納された紙幣(言い換えると、第1の記憶部591に記憶している記番号の紙幣)と、搬送エラーの発生前に収納カセット31に収納されていた紙幣(言い換えると、第2の記憶部592に記憶している記番号の紙幣)とを、明確に区別することが可能になる。このことは、収納カセット31内から紙幣を取り出す際に、不要な紙幣を取り出したり、必要な紙幣の取り出し漏れを無くしたりする上で有効であり、違算の発生をより確実に防止する上で有利になる。
【0074】
また、前述した例では、エラー復旧時に出金口231に投出した紙幣には、搬送エラーの発生時に搬送路上に存在しているものの、未識別であったため、
図8に示す表示画面には記番号が含まれていない紙幣が存在している。これは、オペレータの違和感を招く可能性がある。そこで、エラー復旧時に出金口231に紙幣を投出する際には、未識別の紙幣については、識別部25において記番号の読み取りを行った上で、出金口231に投出すると共に、表示画面には、第1の記憶部591に記憶している記番号の他に、エラー復旧時に読み取った記番号も表示するようにしてもよい。こうすることで、出金口231に投出した紙幣の記番号は全て、表示画面に含まれるようになり、オペレータの違和感が軽減される。
【0075】
さらに、識別部25において紙幣の記番号の認識に際し取得した紙幣のイメージを記憶しておき、記番号を表示する表示画面において、当該紙幣のイメージを表示するようにしてもよい。また、記番号の表示、イメージの表示、及び、記番号及びイメージの双方を表示を選択可能にしてもよい。
【0076】
尚、ここに開示する技術は、前述した構成の入出金機1に適用することに限らず、これとは異なる種々の構成の入出金機に適用することも可能である。また、入金処理を行う入金機に適用することも可能である。