特許第6347884号(P6347884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6347884環形動物生息床、有機物処理方法、及び、環形動物糞収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6347884
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】環形動物生息床、有機物処理方法、及び、環形動物糞収集方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20180618BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20180618BHJP
   C05F 1/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   A01K67/033 503
   B09B3/00 DZAB
   C05F1/00ZBP
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-216545(P2017-216545)
(22)【出願日】2017年11月9日
【審査請求日】2017年11月9日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503396354
【氏名又は名称】田代 光洋
(74)【代理人】
【識別番号】100131428
【弁理士】
【氏名又は名称】若山 剛
(72)【発明者】
【氏名】田代 光洋
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−48300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環形動物に生息環境を提供する環形動物生息床であって、
水を保持する複数のスポンジ片からなるとともに、前記複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層と、
前記スポンジ層の鉛直下方に、土を含む土層と、を備える、環形動物生息床。
【請求項2】
請求項1に記載の環形動物生息床であって、
前記スポンジ層は、前記スポンジ層の体積に対する、前記隙間の体積の割合である空隙率が0.45乃至0.6の値である、環形動物生息床。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の環形動物生息床であって、
前記複数のスポンジ片は、立方体状のスポンジ片を含む、環形動物生息床。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の環形動物生息床であって、
前記立方体状のスポンジ片は、一辺の長さが、5mm乃至15mmの長さである、環形動物生息床
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の環形動物生息床であって、
前記スポンジ層と、前記土層と、を区画するとともに、前記スポンジ片よりも小さい孔を有する区画体を備える、環形動物生息床。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の環形動物生息床であって、
前記スポンジ層の鉛直方向における長さは、150mm以下の長さである、環形動物生息床。
【請求項7】
環形動物に有機物を処理させる有機物処理方法であって、
水を保持する複数のスポンジ片からなるとともに、前記複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層を、土を含む土層の鉛直上方に形成することにより、前記スポンジ層と前記土層とを備える環形動物生息床を形成し、
前記環形動物生息床にて、前記環形動物を生息させ、
前記環形動物生息床にて生息する前記環形動物に前記有機物を供給し、
前記供給された有機物を前記環形動物に処理させる、
ことを含む、有機物処理方法。
【請求項8】
環形動物の糞を収集する環形動物糞収集方法であって、
複数のスポンジ片からなるとともに、前記複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層を備える環形動物生息床にて、前記環形動物を生息させ、
前記環形動物生息床から前記スポンジ片を取り出し、
前記取り出されたスポンジ片を振動させることにより、前記スポンジ片から前記糞を落下させ、
前記落下した糞を収集する、
ことを含む、環形動物糞収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環形動物生息床、有機物処理方法、及び、環形動物糞収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環形動物に生息環境を提供する環形動物生息床が知られている。例えば、特許文献1に記載の環形動物生息床は、土(換言すると、土壌)からなる土層を備える。例えば、環形動物生息床にて生息する環形動物に、生ごみ(例えば、食品残滓、又は、食品廃棄物等)等の有機物(換言すると、食品由来有機物)が供給されると、環形動物は、供給された有機物を処理(例えば、消化、又は、分解)するとともに、糞を排泄する。また、環形動物から排泄された糞は、肥料として利用可能であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−39053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環形動物は、供給された食品由来有機物を食餌することにより処理(例えば、消化、又は、分解)するが、土を飲み込むことにより、土に含まれる有機物(換言すると、土壌有機物)も処理する。従って、特許文献1に記載の環形動物生息床において、供給された食品由来有機物の処理される量が多くなりにくいという課題があった。
また、特許文献1に記載の環形動物生息床において、環形動物の糞は、土に混在する。従って、当該糞を土から分離された状態にて収集することが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明の目的の一つは、供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加させることである。また、本発明の目的の他の一つは、環形動物の糞を、土から分離された状態にて収集することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面では、環形動物生息床は、環形動物に生息環境を提供する。
更に、この環形動物生息床は、
複数のスポンジ片からなるとともに、上記複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層を備える。
【0007】
他の一つの側面では、有機物処理方法は、環形動物に有機物を処理させる。
更に、この有機物処理方法は、
複数のスポンジ片からなるとともに、上記複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層を備える環形動物生息床にて、上記環形動物を生息させ、
上記環形動物生息床にて生息する上記環形動物に上記有機物を供給し、
上記供給された有機物を上記環形動物に処理させる、ことを含む。
【0008】
他の一つの側面では、環形動物糞収集方法は、環形動物の糞を収集する。
更に、この環形動物糞収集方法は、
複数のスポンジ片からなるとともに、上記複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層を備える環形動物生息床にて、上記環形動物を生息させ、
上記環形動物生息床から上記スポンジ片を取り出し、
上記取り出されたスポンジ片を振動させることにより、上記スポンジ片から上記糞を落下させ、
上記落下した糞を収集する、ことを含む。
【発明の効果】
【0009】
供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加できる。また、環形動物の糞を、土から分離された状態にて収集できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の環形動物飼育装置の左前上方斜視図である。
図2】第1実施形態の環形動物飼育装置の平面図である。
図3図2のIII−III線により表される平面により切断された環形動物飼育装置の断面図である。
図4】第1実施形態の環形動物飼育装置が分解された状態における環形動物飼育装置の左前上方斜視図である。
図5】第1実施形態のスポンジ層の一部を拡大した図である。
図6】第1実施形態の変形例のスポンジ層の一部を拡大した図である。
図7】第2実施形態の環形動物飼育装置の左前上方斜視図である。
図8】第2実施形態の環形動物飼育装置の平面図である。
図9図8のIX−IX線により表される平面により切断された環形動物飼育装置の断面図である。
図10】第2実施形態の環形動物飼育装置が分解された状態における環形動物飼育装置の左前上方斜視図である。
図11】第2実施形態の環形動物飼育装置が分解された状態における環形動物飼育装置の左前下方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の、環形動物生息床、有機物処理方法、及び、環形動物糞収集方法に関する各実施形態について図1乃至図11を参照しながら説明する。
【0012】
<第1実施形態>
(概要)
第1実施形態の環形動物生息床は、環形動物に生息環境を提供する。環形動物生息床は、複数のスポンジ片からなるとともに、当該複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層を備える。
【0013】
ところで、環形動物は、供給された食品由来有機物を食餌することにより処理するが、土を飲み込むことにより、土壌有機物も処理する。従って、土壌有機物が比較的多く存在する場合、供給された食品由来有機物の処理される量が多くなりにくいことがある。
これに対し、第1実施形態の環形動物生息床によれば、環形動物が土壌有機物を処理する量が減少しやすいので、供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加できる。換言すると、食品由来有機物の処理を促進できる。
【0014】
また、第1実施形態の環形動物生息床によれば、環形動物が、スポンジ片間の隙間に糞を排泄することを促進できる。これにより、環形動物から排泄された糞は、土に混在することなく、スポンジ片に付着する。例えば、スポンジ片を振動させることにより、当該糞をスポンジ片から容易に分離できる。従って、環形動物の糞を、土から分離された状態にて収集できる。
次に、第1実施形態の環形動物生息床について、より詳細に説明する。
【0015】
(構成)
以下、図1乃至図6に表されるように、x軸、y軸及びz軸を有する右手系の直交座標系を用いて、第1実施形態の環形動物生息床HBを備える環形動物飼育装置1を説明する。
【0016】
環形動物飼育装置1は、環形動物に生息環境を提供する環形動物生息床HBを備える。
本例では、環形動物は、シマミミズである。なお、環形動物は、シマミミズ以外のミミズであってもよい。また、環形動物は、ミミズ以外のヒル綱又は多毛綱であってもよい。
【0017】
本例では、z軸方向は、鉛直方向に一致する。また、本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向は、環形動物飼育装置1の前後方向、環形動物飼育装置1の左右方向、及び、鉛直方向とそれぞれ表されてもよい。また、本例では、x軸の正方向、x軸の負方向、y軸の正方向、y軸の負方向、z軸の正方向、及び、z軸の負方向は、環形動物飼育装置1の前方向、環形動物飼育装置1の後方向、環形動物飼育装置1の左方向、環形動物飼育装置1の右方向、鉛直上方向、及び、鉛直下方向とそれぞれ表されてもよい。
【0018】
図1は、環形動物飼育装置1の左方であり、環形動物飼育装置1の前方であり、且つ、環形動物飼育装置1の鉛直上方である位置から、環形動物飼育装置1を見た図(換言すると、左前上方斜視図)である。図2は、環形動物飼育装置1の鉛直上方から環形動物飼育装置1を見た図(換言すると、平面図)である。
【0019】
図3は、図2のIII−III線により表される平面により切断された環形動物飼育装置1の断面をy軸の正方向にて見た図である。
図4は、環形動物飼育装置1が分解された状態において、環形動物飼育装置1の左方であり、環形動物飼育装置1の前方であり、且つ、環形動物飼育装置1の鉛直上方である位置から、環形動物飼育装置1を見た図(換言すると、左前上方斜視図)である。
【0020】
図1に表されるように、環形動物飼育装置1は、z軸方向にて延びる柱体状である。本例では、z軸に直交する平面(換言すると、xy平面)により切断された環形動物飼育装置1の断面は、x軸方向にて延びる短辺と、y軸方向にて延びる長辺と、を有する長方形状である。換言すると、環形動物飼育装置1は、z軸方向にて延びる四角柱状である。なお、xy平面により切断された環形動物飼育装置1の断面は、長方形状と異なる形状(例えば、円形状、楕円形状、又は、正方形状等)であってもよい。換言すると、環形動物飼育装置1は、四角柱状と異なる形状(例えば、円柱状等)であってもよい。
【0021】
図1乃至図4に表されるように、環形動物飼育装置1は、第1容器部11と、第2容器部12と、蓋部13と、土層14と、第1区画体15と、スポンジ層16と、第2区画体17と、第3区画体18と、被覆体19と、を備える。なお、図3及び図4において、土層14、スポンジ層16、及び、後述される有機物層FDは、詳細な図示が省略されている。
【0022】
本例では、第1容器部11、第2容器部12、及び、蓋部13は、透光性を有しない。例えば、第1容器部11、第2容器部12、及び、蓋部13は、木質材料、金属、又は、樹脂からなる。
本例では、環形動物飼育装置1は、ミミズ箱と表されてもよい。
【0023】
図4に表されるように、第1容器部11は、z軸方向にて延びるとともに、z軸の正方向における端面にて開口する、有底且つ中空の柱体状である。本例では、xy平面により切断された第1容器部11の断面は、x軸方向にて延びる短辺と、y軸方向にて延びる長辺と、を有する長方形状である。換言すると、第1容器部11は、z軸方向にて延びるとともに、z軸の正方向における端面にて開口する、有底且つ中空の四角柱状である。なお、第1容器部11は、有底且つ中空の四角柱状と異なる形状(例えば、円柱状等)であってもよい。なお、環形動物飼育装置1は、第1容器部11を備えなくてもよい。
【0024】
図3及び図4に表されるように、第2容器部12は、複数の孔121を有する点を除いて、第1容器部11と同様の構成を有する。なお、第2容器部12が有する孔121の数は、1つであってもよい。例えば、第2容器部12の底に溜まる液体は、複数の孔121を通って、第2容器部12の外部(本例では、第1容器部11の内部空間)へ流出する。
【0025】
複数の孔121のそれぞれは、第2容器部12の底面にて開口するとともに、第2容器部12の内部空間と第2容器部12の外部とを連通する。本例では、複数の孔121は、格子状に位置する。本例では、各孔121は、円柱状である。なお、各孔121は、円柱状と異なる形状(例えば、角柱状等)であってもよい。
【0026】
ところで、孔121の大きさは、環形動物が孔121を通過しにくく、且つ、液体が流出可能な大きさであることが好適である。このため、孔121の大きさは、環形動物の大きさに応じて設定されることが好適である。例えば、環形動物がシマミミズである場合、各孔121の直径は、1mm以下であることが好適である。
【0027】
第2容器部12は、第1容器部11に対して取り外し可能に取り付けられる。本例では、第2容器部12は、第1容器部11に載置される。なお、第2容器部12は、第1容器部11に固定されていてもよい。
【0028】
蓋部13は、xy平面に沿って延びる平板状である。蓋部13は、第2容器部12のうちの、z軸の正方向における端面の開口を、当該開口の全体に亘って被覆する(換言すると、当該開口を塞ぐ)。蓋部13は、第2容器部12に対して取り外し可能に取り付けられる。本例では、蓋部13は、第2容器部12に載置される。なお、環形動物飼育装置1は、蓋部13を備えなくてもよい。
【0029】
土層14は、土砂からなる。本例では、土層14は、土砂以外の物質(例えば、動物の糞等の有機物等)を含まない。なお、土層14は、土砂に加えて、土砂以外の物質(例えば、動物の糞等の有機物等)を含んでもよい。また、土層14は、土砂に代えて土からなっていてもよい。
【0030】
土層14は、xy平面に沿って延びる平板状である。本例では、土層14は、土砂を第2容器部12の内部空間に敷設することにより形成される。本例では、土層14は、第2容器部12の内部空間において、z軸の負方向における端部に位置する。
【0031】
例えば、土層14のz軸方向における長さ(換言すると、土層14の深さ又は厚さ)は、第2容器部12の内部空間のz軸方向における長さの1/5乃至1/3の長さである。本例では、土層14のz軸方向における長さは、第2容器部12の内部空間のz軸方向における長さの1/3の長さである。なお、土層14のz軸方向における長さは、土砂を補充する周期が短くなるほど短くなるように設定されていてもよい。
【0032】
図3及び図4に表されるように、スポンジ層16は、xy平面に沿って延びる平板状である。スポンジ層16は、土層14の鉛直上方に位置する。換言すると、土層14は、スポンジ層16の鉛直下方に位置する。
【0033】
図5に表されるように、スポンジ層16は、複数のスポンジ片161からなる。本例では、各スポンジ片161は、立方体状である。なお、各スポンジ片161は、立方体状と異なる形状(例えば、球状、楕円体状、円柱状、角柱状、円錐台状、又は、角錐台状等)であってもよい。例えば、図6に表されるように、各スポンジ片161Aは、直方体状であってもよい。
【0034】
また、複数のスポンジ片161は、同一の形状でなくてもよい。複数のスポンジ片161の少なくとも一部は、互いに異なる大きさを有してもよい。複数のスポンジ片161の少なくとも一部は、互いに異なる形状を有してもよい。
【0035】
本例では、複数のスポンジ片161は、ブロック状のスポンジを切断することにより製造される。例えば、ブロック状のスポンジの切断は、当該スポンジに軽く吸水させた後に当該スポンジを凍結させ、その後、実行されてよい。例えば、ブロック状のスポンジは、合成樹脂(例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、又は、ゴム等)を発泡成形することにより製造される。なお、複数のスポンジ片161は、合成樹脂を発泡成形することにより製造されてもよい。
【0036】
スポンジ層16は、複数のスポンジ片161が、スポンジ片161間に隙間を有するように構成される。本例では、スポンジ層16は、複数のスポンジ片161が無秩序に積み重ねられる。本例では、スポンジ層16は、複数のスポンジ片161を第2容器部12の内部空間に敷設する(例えば、撒き入れる)ことにより形成される。
【0037】
環形動物生息床HBを湿潤な状態に維持するために、複数のスポンジ片161に水を保持させるとともに、スポンジ層16の空隙率が0.6以下であることが好適である。スポンジ層16の空隙率は、スポンジ層16における、スポンジ片161間の隙間(換言すると、空間)の体積と、複数のスポンジ片161の体積と、の和(換言すると、スポンジ層16の体積)に対する、スポンジ片161間の隙間の体積の割合である。
【0038】
環形動物は、隙間を糞で埋めるように糞を排泄することがある。そこで、環形動物による糞の排泄を促進するために、スポンジ層16の空隙率は、0.45以上であることが好適である。従って、スポンジ層16の空隙率は、0.45乃至0.6の値であることが好適である。本例では、スポンジ層16の空隙率は、0.5乃至0.55の値である。
【0039】
また、スポンジ層16の空隙率が過少になることを抑制するために、各スポンジ片161の一辺の長さが5mm以上であることが好適である。
ところで、各スポンジ片161の一辺の長さが15mmよりも長くなると、スポンジ層16の空隙率が過大になる。また、各スポンジ片161の一辺の長さが15mmよりも長くなると、環形動物の移動がスポンジ片161によって阻害されやすくなる。従って、環形動物は、スポンジ層16の上部への移動が困難となり、土層14とスポンジ層16との境界に滞留する虞がある。そこで、各スポンジ片161の一辺の長さは、15mm以下であることが好適である。
【0040】
従って、各スポンジ片161の一辺の長さは、5mm乃至15mmの長さであることが好適である。本例では、各スポンジ片161の一辺の長さは、約10mmの長さである。
【0041】
ところで、環形動物がシマミミズである場合、環形動物が鉛直方向にて移動可能な距離は、約150mmの長さであることが多い。従って、環形動物が土層14に到達できるように、スポンジ層16のz軸方向における長さ(換言すると、スポンジ層16の深さ又は厚さ)は、150mm以下の長さであることが好適である。本例では、スポンジ層16のz軸方向における長さは、150mmの長さである。
【0042】
図3及び図4に表されるように、第1区画体15は、xy平面に沿って延びるシート状である。第1区画体15の外縁は、当該外縁の全体に亘って、第2容器部12の内壁面に接する。換言すると、第1区画体15は、xy平面により切断された、第2容器部12の内部空間の断面と同じ形状を有する。
【0043】
第1区画体15は、土層14と、スポンジ層16と、の間に位置する。換言すると、第1区画体15は、土層14と、スポンジ層16と、を区画する。
【0044】
第1区画体15は、複数の孔151を有する。なお、第1区画体15が有する孔151の数は、1つであってもよい。
複数の孔151のそれぞれは、第1区画体15をz軸方向にて貫通する。本例では、複数の孔151は、格子状に位置する。本例では、各孔151は、正四角柱状である。なお、各孔121は、正四角柱状と異なる形状(例えば、三角柱状、又は、円柱状等)であってもよい。
【0045】
本例では、孔151は、環形動物が孔151を通過可能であるとともに、スポンジ層16と土層14とを分離可能である大きさを有する。例えば、スポンジ層16と土層14とを分離可能である孔151の大きさは、スポンジ片161が孔151を通過不能である大きさである。また、例えば、スポンジ層16と土層14とを分離可能である孔151の大きさは、スポンジ片161の任意の断面のうちの、面積が最大である断面よりも小さい。
【0046】
例えば、環形動物がシマミミズである場合、各孔151の一辺の長さは、2mmよりも長く且つ9mmよりも短いことが好適である。換言すると、孔151は、スポンジ片161よりも小さい。
このように、孔151の大きさは、環形動物の大きさ、及び、スポンジ片161の大きさに応じて設定されることが好適である。
【0047】
本例では、第1区画体15は、網(換言すると、メッシュ)である。本例では、網は、樹脂(例えば、ポリエチレン等)からなる。なお、網は、繊維、又は、金属等からなっていてもよい。また、天然繊維は、環形動物によって処理(例えば、消化、又は、分解)されやすい。従って、網が繊維からなる場合、繊維は、化学繊維であることが好適である。また、第1区画体15は、網に代えて、敷物又はマットとして用いられるシート状の物体であってもよい。また、環形動物飼育装置1は、第1区画体15を備えなくてもよい。
【0048】
図3及び図4に表されるように、第2区画体17は、第1区画体15と同様の構成を有する。従って、第2区画体17は、第1区画体15と同様に、複数の孔171を有する。
第2区画体17は、スポンジ層16と、後述される有機物層FDと、の間に位置する。換言すると、第2区画体17は、スポンジ層16と、有機物層FDと、を区画する。
なお、環形動物飼育装置1は、第2区画体17を備えなくてもよい。
【0049】
本例では、土層14、第1区画体15、スポンジ層16、及び、第2区画体17は、環形動物生息床HBを構成する。本例では、環形動物生息床HBは、ミミズ床と表されてもよい。
【0050】
有機物層FDは、生ごみ等の有機物(換言すると、食品由来有機物)からなる。例えば、食品由来有機物は、食品(例えば、野菜、果物、穀物、肉、若しくは、魚、又は、これらの少なくとも1つが加工された食品)の残滓(換言すると、食品残滓)、又は、廃棄物(換言すると、食品廃棄物)等である。有機物層FDは、第2区画体17の鉛直上方に位置する。本例では、有機物層FDは、食品由来有機物を、第2区画体17のうちのz軸の正方向における端面に敷設することにより形成される。
【0051】
図3及び図4に表されるように、第3区画体18は、第1区画体15と同様の構成を有する。従って、第3区画体18は、第1区画体15と同様に、複数の孔181を有する。第3区画体18は、有機物層FDの鉛直上方に位置する。
なお、環形動物飼育装置1は、第3区画体18を備えなくてもよい。
【0052】
図3及び図4に表されるように、被覆体19は、第3区画体18の鉛直上方に位置する。被覆体19は、透光性を有しない。被覆体19は、xy平面に沿って延びるシート状である。被覆体19の外縁は、当該外縁の全体に亘って、第2容器部12の内壁面に接する。換言すると、被覆体19は、xy平面により切断された、第2容器部12の内部空間の断面と同じ形状を有する。
【0053】
本例では、被覆体19は、繊維からなる。例えば、被覆体19は、絨毯である。天然繊維は、環形動物によって処理(例えば、消化、又は、分解)されやすい。従って、被覆体19が繊維からなる場合、繊維は、化学繊維であることが好適である。
【0054】
被覆体19によれば、被覆体19の鉛直下方に光が入射することを抑制できる。また、被覆体19によれば、被覆体19の鉛直下方における乾燥を抑制できる。また、被覆体19によれば、被覆体19の鉛直下方へ害虫が進入することを抑制できる。また、被覆体19によれば、被覆体19の鉛直上方から水が散布された場合、被覆体19の鉛直下方の空間に、均等に且つ緩慢に水を供給できる。また、被覆体19によれば、環形動物生息床HBと環形動物生息床HBの外部との通気を確保できる。
なお、環形動物飼育装置1は、被覆体19を備えなくてもよい。
【0055】
(使用方法)
次に、環形動物飼育装置1の使用方法について説明する。
先ず、土砂を第2容器部12の内部空間に敷設することにより、土層14を形成する。次いで、第1区画体15を土層14の上面(z軸の正方向における端面)に敷設する。
【0056】
次いで、複数のスポンジ片161に吸水させる。例えば、各スポンジ片161を水に浸した後に、各スポンジ片161から水が滴下しないように各スポンジ片161を軽く絞ることにより、各スポンジ片161に含まれる空気を抜くことによって各スポンジ片161に吸水させる。
【0057】
次いで、複数のスポンジ片161を第1区画体15の上面に敷設することにより、スポンジ層16を形成する。次いで、第2区画体17をスポンジ層16の上面に敷設する。これにより、第2容器部12の内部に、環形動物生息床HBが形成される。次いで、環形動物を環形動物生息床HBに入れる。
【0058】
次いで、食品由来有機物を第2区画体17の上面に敷設することにより、有機物層FDを形成する。次いで、第3区画体18を有機物層FDの上面に敷設する。次いで、被覆体19を第3区画体18の上面に載置する。次いで、第2容器部12を第1容器部11に載置する。次いで、蓋部13を第2容器部12に載置する。
【0059】
なお、第2容器部12が第1容器部11に載置された後に、第2容器部12の内部に、環形動物生息床HBが形成されてもよい。また、有機物層FDが形成された後に、環形動物が環形動物生息床HBに入れられてもよい。
なお、第2容器部12の内部の温度が、例えば、摂氏20度に維持されるように、ヒーターを用いて、第2容器部12の内部の温度が制御されてもよい。
【0060】
本例では、有機物層FDを構成する食品由来有機物は、所定の給餌時間(例えば、2日間)が経過する毎に供給される。本例では、1回の供給において供給される食品由来有機物の量は、給餌時間において環形動物が処理(例えば、消化、又は、分解)可能な範囲において最も多い量に調整される。
また、各スポンジ片161が乾燥しないように、所定の給水時間(例えば、2日間)が経過する毎に、被覆体19の鉛直上方から第2容器部12の内部へ水が散布される。本例では、水は、噴霧状にて散布される。また、本例では、食品由来有機物の供給と、水の散布と、は、ほぼ同じタイミングにて行われる。
【0061】
このようにして、環形動物飼育装置1において環形動物を生息させる(換言すると、飼育する)。環形動物は、土層14を構成する土砂を飲み込むとともに、有機物層FDを構成する食品由来有機物を処理することにより、糞を排泄する。排泄された糞は、スポンジ片161に付着する。
【0062】
本例では、1ヶ月乃至3ヶ月間(例えば、2ヶ月間)に亘って、環形動物飼育装置1において環形動物を生息させる。その後、蓋部13、被覆体19、第3区画体18、有機物層FD、及び、第2区画体17を第2容器部12から取り外すとともに、第2容器部12からスポンジ層16を取り出す。
【0063】
次いで、臭気に対する忌避反応を用いて、環形動物をスポンジ層16から分離する。例えば、特願2017−159578号明細書に開示された方法を用いる。これにより、環形動物は、スポンジ層16の外部へ移動する。従って、環形動物は、スポンジ層16から分離される。
【0064】
なお、環形動物による臭気に対する忌避反応に加えて、又は、当該忌避反応に代えて、環形動物による他の忌避反応(例えば、光に対する忌避反応等)を用いて、環形動物をスポンジ層16から分離してもよい。
【0065】
この場合、例えば、第2容器部12からスポンジ層16を取り出すとともに、スポンジ層16を、底面に孔を有するトレイに収容し、光を当該トレイの鉛直上方から照射することにより、当該トレイの鉛直下方に配置された容器又は袋等に環形動物を当該孔を通して落下させることが好適である。
【0066】
また、例えば、環形動物飼育装置1からスポンジ層16を取り出す前に、環形動物をスポンジ層16から分離してもよい。この場合、環形動物の糞が、鉛直下方から鉛直上方へ向かって順に溜まりやすいため、スポンジ層16のうちの鉛直下方の部分を鉛直上方に移動させ、光をスポンジ層16の鉛直上方から照射することにより、環形動物がスポンジ層16のうちの鉛直下方の部分へ移動した後に、スポンジ層16のうちの鉛直上方の部分を第2容器部12から取り出すことが好適である。
【0067】
次いで、複数のスポンジ片161を乾燥させる。本例では、各スポンジ片161から糞が剥がれ落ちやすくなるように、複数のスポンジ片161を陰干しする。次いで、複数のスポンジ片161を振動させることにより、複数のスポンジ片161から糞を落下させる。本例では、複数のスポンジ片161を篩にかけることにより、複数のスポンジ片161を振動させる。次いで、落下した糞を収集する。
これにより、環形動物の糞を、土から分離した状態にて容易に収集できる。
【0068】
次いで、複数のスポンジ片161を、水が主成分である液体(本例では、水)を用いて洗浄する。洗浄されたスポンジ片161は、環形動物生息床HBのスポンジ層16として繰り返し利用できる。また、洗浄に用いられた液体は、スポンジ片に付着していた環形動物の体液を含む。ところで、当該体液を含む液体は、液体の肥料(換言すると、液肥)である。従って、液肥を容易に取得できる。液肥は、コンポストティーと表されてもよい。
【0069】
以上、説明したように、第1実施形態の環形動物生息床HBは、環形動物に生息環境を提供する。更に、環形動物生息床HBは、複数のスポンジ片161からなるとともに、複数のスポンジ片161がスポンジ片161間に隙間を有するスポンジ層16を備える。
【0070】
ところで、環形動物は、供給された食品由来有機物を食餌することにより処理するが、土を飲み込むことにより、土壌有機物も処理する。従って、特許文献1に記載の環形動物生息床において、供給された食品由来有機物の処理される量が多くなりにくいことがある。
これに対し、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物が土壌有機物を処理する量が減少しやすいので、供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加できる。換言すると、食品由来有機物の処理を促進できる。
【0071】
また、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物が、スポンジ片161間の隙間に糞を排泄することを促進できる。これにより、環形動物から排泄された糞は、土に混在することなく、スポンジ片161に付着する。従って、スポンジ片161を振動させることにより、当該糞をスポンジ片161から容易に分離できる。この結果、環形動物の糞を、土から分離された状態にて収集できる。
【0072】
また、環形動物が生息するためには、環形動物生息床HBの通気性が良好であることが好ましい。
ところで、環形動物は、体液(例えば、粘液)を排出する。例えば、特許文献1に記載の環形動物生息床において、排出された体液は、環形動物生息床の土に付着する。環形動物生息床の土は、付着した体液の乾燥に伴って、土塊を形成しやすい。その結果、土層における通気性が悪化しやすい。
これに対し、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物から排出された体液が乾燥した場合であっても、スポンジ層16における通気性は、土層よりも良好である。従って、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物に適切な生息環境を提供できる。
【0073】
また、環形動物が生息するためには、環形動物生息床HBが湿潤であることが好ましい。ところで、スポンジ層16は、土層よりも水分を保持しやすい。従って、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物に適切な生息環境を提供できる。
【0074】
また、特許文献1に記載の環形動物生息床においては、例えば、環形動物は、土を掘るとともに、排出した体液を用いて土を固めることによりトンネルを形成し、形成したトンネルを通ることにより土層において移動する。これに対し、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物は、スポンジ片161間の隙間を通ることにより、スポンジ層16において容易に移動できる。
このようにして、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物に適切な生息環境を提供できる。
【0075】
また、特許文献1に記載の環形動物生息床においては、土層における通気性を良好に維持するために、土塊をほぐさなければならない。ところで、土は比較的重いため、土塊をほぐす作業は過大な労力を要する。
これに対し、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物から排出された体液が乾燥した場合であっても、土塊をほぐす作業を行うことなく、環形動物に適切な生息環境を提供できる。換言すると、環形動物に適切な生息環境を提供するための労力を軽減できる。
【0076】
また、特許文献1に記載の環形動物生息床においては、環形動物生息床から環形動物を取り出す場合、又は、環形動物の糞を含む土を肥料として用いる場合等、環形動物生息床に含まれる土を運搬する作業が行われることがある。この場合、運搬物の重量が重くなりやすい。これに対し、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物生息床HBから環形動物を取り出す場合、又は、環形動物の糞を含む土を肥料として用いる場合等において、土に代えて、スポンジ片161が運搬されるので、運搬物の重量を軽くできる。
【0077】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBにおいて、スポンジ層16は、スポンジ層16の体積に対する、スポンジ片161間の隙間の体積の割合である空隙率が0.45乃至0.6の値である。
【0078】
これによれば、例えば、環形動物がシマミミズである場合において、環形動物にとって適度な隙間を容易に形成できる。
【0079】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBにおいて、複数のスポンジ片161は、立方体状のスポンジ片を含む。
【0080】
これによれば、複数のスポンジ片161を敷設することによりスポンジ層16を形成する場合、スポンジ層16において適度な隙間を容易に形成できる。また、複数のスポンジ片161を容易に製造できる。
【0081】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBにおいて、立方体状のスポンジ片161は、一辺の長さが、5mm乃至15mmの長さである。
【0082】
これによれば、例えば、環形動物がシマミミズである場合において、環形動物にとって適度な隙間を容易に形成できる。
【0083】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBは、スポンジ層16の鉛直下方に、土を含む土層14を備える。
【0084】
これによれば、環形動物は、土層14に含まれる土を飲み込む。これにより、環形動物は、供給された食品由来有機物を砂嚢において擂り潰すために、飲み込んだ土を用いることができる。この結果、環形動物は、供給された食品由来有機物から十分な栄養を得ることができる。
【0085】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBにおいて、土層14は、土砂以外の物質(例えば、動物の糞等の有機物等)を含まない。
【0086】
これによれば、環形動物は、土層に含まれる土から十分な栄養を得にくい。従って、環形動物が、供給された食品由来有機物から十分な栄養を得るために、食品由来有機物の処理が促進されやすい。換言すると、供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加できる。
【0087】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBは、スポンジ層16と、土層14と、を区画するとともに、スポンジ片161よりも小さい孔151を有する第1区画体15を備える。
【0088】
これによれば、スポンジ片161と土とが混ざることを抑制できる。また、環形動物生息床HBからスポンジ片161を容易に取り出すことができる。
【0089】
更に、第1実施形態の環形動物生息床HBにおいて、スポンジ層16の鉛直方向における長さは、150mm以下の長さである。
【0090】
例えば、環形動物がシマミミズである場合、環形動物が鉛直方向にて移動可能な距離は、約150mmの長さであることが多い。従って、第1実施形態の環形動物生息床HBによれば、環形動物が、スポンジ層16の鉛直下方の層(本例では、土層14)に到達できる。
【0091】
また、第1実施形態の有機物処理方法は、スポンジ層16を備える環形動物生息床HBにて環形動物を生息させ、環形動物生息床HBにて生息する環形動物に有機物を供給し、供給された有機物を環形動物に処理させる、ことを含む。
【0092】
これによれば、環形動物によって処理される有機物の量を増加できる。
【0093】
また、第1実施形態の環形動物糞収集方法は、スポンジ層16を備える環形動物生息床HBにて環形動物を生息させ、環形動物生息床HBからスポンジ片161を取り出し、取り出されたスポンジ片161を陰干しした後に、スポンジ片161を振動させることにより、スポンジ片161から糞を落下させ、落下した糞を収集する、ことを含む。
【0094】
これによれば、環形動物の糞を、土から分離した状態にて容易に収集できる。
【0095】
(実験例)
環形動物生息床が環形動物に及ぼす影響を調べるために、環形動物生息床が互いに異なる4つの環形動物飼育装置を用いて環形動物を飼育する実験が行われた。
【0096】
比較例の環形動物飼育装置は、環形動物生息床が土層により構成される。比較例の環形動物飼育装置は、従来の環形動物飼育装置であると捉えられてよい。換言すると、比較例の環形動物飼育装置は、第1区画体15及びスポンジ層16を備えない点を除いて、第1実施形態の環形動物飼育装置1と同様の構成を有する。比較例の環形動物飼育装置において、土層は、100mmの深さを有する。
【0097】
第1実施例の環形動物飼育装置は、第1実施形態の環形動物飼育装置1と同様の構成を有する。第1実施例の環形動物飼育装置において、スポンジ層16を構成する複数のスポンジ片のそれぞれは、当該スポンジ片の最長の長さ(換言すると、スポンジ片の表面における任意の2点間の距離のうちの最長の距離)が約5mm以下である小片である。本例では、スポンジ層16を構成する複数のスポンジ片は、互いに異なる形状を有する(換言すると、不定形である)。
【0098】
本例では、複数のスポンジ片の一部は、ブロック状のスポンジを指でちぎることにより製造される。また、本例では、複数のスポンジ片の他の一部は、ブロック状のスポンジに吸水させた後に、当該スポンジを凍結させ、その後、当該スポンジを、スライサー、カッター、又は、紙裁断機等により切断することにより製造される。第1実施例の環形動物飼育装置において、土層14は、25mmの深さを有するとともに、スポンジ層16は、75mmの深さを有する。
【0099】
第2実施例の環形動物飼育装置は、第1実施形態の環形動物飼育装置1と同様の構成を有する。第2実施例の環形動物飼育装置において、スポンジ層16を構成する複数のスポンジ片のそれぞれは、一辺の長さが、10mmの長さである立方体状である。第2実施例の環形動物飼育装置において、土層14は、25mmの深さを有するとともに、スポンジ層16は、75mmの深さを有する。
【0100】
第3実施例の環形動物飼育装置は、環形動物生息床がスポンジ層により構成される。換言すると、第3実施例の環形動物飼育装置は、土層14及び第1区画体15を備えない点を除いて、第1実施形態の環形動物飼育装置1と同様の構成を有する。第3実施例の環形動物飼育装置において、スポンジ層16を構成する複数のスポンジ片は、第2実施例のスポンジ層16を構成する複数のスポンジ片と同じである。第3実施例の環形動物飼育装置において、スポンジ層16は、75mmの深さを有する。
【0101】
第3実施例の環形動物飼育装置において、スポンジ層16を構成する複数のスポンジ片のそれぞれは、スポンジ層16として使用された後に洗浄されたスポンジ片(換言すると、再利用されたスポンジ片)である。本例では、各スポンジ片は、スポンジ層16として使用された際にスポンジ片の内部に入り込んだ、微細な土又は砂を含む。換言すると、各スポンジ片に含まれる、微細な土又は砂は、洗浄によって除去できなかったために、各スポンジ片に残留している。
【0102】
本実験例では、土層を構成する土は、畑土と、完熟腐葉土と、を3対1の割合で混合することにより製造される。畑土は、土壌有機物を含んでいてよい。
【0103】
本実験例では、2日間が経過する毎に、第2容器部12の内部に水が散布される。本実験例では、水は、噴霧状にて散布される。
本実験例では、有機物層FDを構成する食品由来有機物は、2日間が経過する毎に供給される。本実験例では、1回の供給において供給される食品由来有機物の量は、2日間において環形動物が処理(例えば、消化、又は、分解)可能な範囲において最も多い量に調整される。
また、本実験例では、食品由来有機物の供給と、水の散布と、は、ほぼ同じタイミングにて行われる。
【0104】
本実験例では、上記4つの環形動物飼育装置を用いて、2ヶ月間に亘って環形動物(本例では、シマミミズ)が飼育された。更に、飼育を開始した時点(換言すると、開始時)と、飼育を終了した時点(換言すると、終了時)と、のそれぞれにおける、土層、スポンジ層、及び、環形動物のそれぞれの重量が測定された。加えて、飼育中に環形動物によって処理された食品由来有機物の重量が測定された。
【0105】
土層の重量は、土層の状態が第1生息環境状態である場合において測定された。本実験例では、第1生息環境状態は、土層を構成する土を片手で握ってから手を開いた場合に、握られた土が団子状に固まっているとともに、当該団子状の土に軽く指で触れることにより当該団子状の土が容易に崩れる状態である。
【0106】
スポンジ層の重量は、スポンジ層の状態が第2生息環境状態である場合において測定された。本実験例では、第2生息環境状態は、各スポンジ片から水が滴下しないように各スポンジ片に吸水させた状態である。
【0107】
環形動物の重量は、特願2017−159578号明細書に開示された方法を用いて、環形動物を環形動物生息床から分離することにより測定された。
測定の結果は、表1により表される。表1において、重量の単位は、kgである。土層の重量は、土層に含まれる環形動物の糞の重量を含む。同様に、スポンジ層の重量は、スポンジ層に含まれる環形動物の糞の重量を含む。
【表1】
【0108】
また、表2は、表1に表される測定の結果に基づいて算出された、環形動物重量増加率、スポンジ層重量増加率、土層重量増加率、及び、食品由来有機物処理率を表す。
【表2】
【0109】
環形動物重量増加率は、開始時における環形動物の重量に対する、終了時における環形動物の重量の比を表す。環形動物重量増加率は、環形動物が繁殖及び成長した程度を表すパラメータであると捉えられてよい。
【0110】
表2に表されるように、環形動物重量増加率は、比較例において+30.9%であり、第1実施例において+12.9%であり、第2実施例において+29.8%であり、第3実施例において+26.8%であった。このように、比較例の環形動物重量増加率は、第2実施例の環形動物重量増加率とほぼ同じであった。また、第3実施例の環形動物重量増加率は、比較例の環形動物重量増加率よりも僅かに低かった。
【0111】
スポンジ層重量増加率は、開始時におけるスポンジ層の重量に対する、終了時におけるスポンジ層の重量の比を表す。スポンジ層の重量の増加量は、スポンジ片に付着した、環形動物の糞の量が増加するにつれて増加する。従って、スポンジ層重量増加率は、収集可能な糞の量が反映されたパラメータであると捉えられてよい。
【0112】
土層重量増加率は、開始時における土層の重量に対する、終了時における土層の重量の比を表す。土層の重量は、環形動物により飲み込まれた土の量が増加するにつれて減少するとともに、環形動物により土層にて排泄された糞の量が増加するにつれて増加する。従って、土層重量増加率は、環形動物により飲み込まれた土の量と、環形動物により土層にて排泄された糞の量と、が反映されたパラメータであると捉えられてよい。
【0113】
食品由来有機物処理率は、環形動物によって処理された食品由来有機物の重量(換言すると、食品由来有機物処理量)の、比較例における食品由来有機物処理量に対する比を表す。
表2に表されるように、食品由来有機物処理率は、第1実施例において1.08であり、第2実施例において1.26であり、第3実施例において1.46であった。このように、第2実施例の食品由来有機物処理率、及び、第3実施例の食品由来有機物処理率は、比較例の食品由来有機物処理率よりも相当高くなった。
【0114】
表2において、生息環境変化は、終了時における環形動物生息床の生息環境を表す。生息環境は、空間が減少する(換言すると、通気性が悪化する)ほど悪化する。
【0115】
表1に表されるように、4つの環形動物飼育装置のいずれにおいても、環形動物の重量は増加した。また、4つの環形動物飼育装置のいずれにおいても、卵胞が観察されたことから、繁殖が行われたことが推定される。
【0116】
また、4つの環形動物飼育装置のいずれにおいても、環形動物は、有機物層を構成する食品由来有機物を処理した。
更に、土層を備える環形動物飼育装置のいずれにおいても、土層の重量が減少したことから、環形動物は、土層を構成する土に含まれる土壌有機物を処理したことが推定される。
また、スポンジ層を備える環形動物飼育装置のいずれにおいても、スポンジ層の重量が増加するとともに、スポンジ片に付着した糞が観察された。収集可能な糞の重量は、第2実施例の環形動物飼育装置が最も多い。
【0117】
第2実施例において環形動物により飲み込まれた土の量は、第1実施例において環形動物により飲み込まれた土の量よりも相当少ない。しかしながら、第2実施例の環形動物飼育装置においては、隙間を糞で埋めようとする環形動物の行動に起因して、環形動物が、より多くの糞を排泄しようとするため、食品由来有機物処理量が増加したことが推定される。
【0118】
また、食品由来有機物処理量は、第3実施例の環形動物飼育装置が最も多い。上述したように、第3実施例の環形動物飼育装置において、各スポンジ片は、再利用されたスポンジ片である。本例では、各スポンジ片は、洗浄によって除去できなかったために、各スポンジ片の内部に入り込んだ、微細な土又は砂を含む。
環形動物は、各スポンジ片に含まれる、微細な土又は砂を飲み込む。環形動物は、供給された食品由来有機物を砂嚢において擂り潰すために、飲み込んだ、微細な土又は砂を用いる。
【0119】
ところで、各スポンジ片に含まれる微細な土又は砂は、微量であるとともに、有機物を殆ど含まない。従って、第3実施例の環形動物飼育装置において、環形動物は、主に、有機物層を構成する食品由来有機物から栄養を得る。このため、第3実施例における食品由来有機物処理量は、環形動物が十分な栄養を得るために増加したことが推定される。
【0120】
また、環形動物の糞の主な原料は、土である。ところで、第3実施例の環形動物飼育装置において、環形動物により飲み込まれる土の量は、微量である。このため、第3実施例の環形動物飼育装置において収集可能な糞の量が、第1実施例及び第2実施例の環形動物飼育装置よりも少なくなったことが推定される。
【0121】
終了時において、比較例の環形動物飼育装置は、土層の状態が環境悪化状態であった。本実験例では、環境悪化状態は、土層の表面に排泄される、環形動物の糞の量が過大となることにより、有機物層を構成する食品由来有機物が糞に埋もれる状態である。従って、土層において空間が不足するとともに、土層における通気性が悪化していることが推定される。
【0122】
第3実施例の環形動物飼育装置は、土層を備えないので、環形動物の飼育を継続した場合であっても、土塊をほぐす作業が不要である。従って、第3実施例の環形動物飼育装置は、環形動物に適切な生息環境を提供するために要する労力が最小である。
また、第1実施例及び第2実施例の環形動物飼育装置は、比較例の環形動物飼育装置よりも土の量が少ない。従って、第1実施例及び第2実施例の環形動物飼育装置は、環形動物に適切な生息環境を提供するために要する労力が、比較例の環形動物飼育装置よりも小さい。換言すると、軽作業化を図ることができる。
【0123】
なお、土層を構成する土は、畑土と、完熟腐葉土と、が混合された土(換言すると、肥沃な土)に代えて、川砂、又は、山砂等が主成分である土(換言すると、貧弱な土)であってよい。肥沃な土は、貧弱な土よりも有機物を多く含む。この場合、環形動物が十分な栄養を得るために、環形動物により飲み込まれる土の量は増加するが、環形動物により処理される食品由来有機物の量は増加しにくい。
【0124】
従って、例えば、上述した環形動物飼育装置において、土層を構成する土が貧弱な土であるとともに、各スポンジ片が、一辺の長さが約10mmである立方体状であることは、収集可能な糞の量と、処理される食品由来有機物の量と、をともに十分に多くするために好適である。
【0125】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の環形動物生息床について説明する。第2実施形態の環形動物生息床は、第1実施形態の環形動物生息床に対して、地面を土層として用いる点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又はほぼ同様のものである。
【0126】
(構成)
以下、図7乃至図11に表されるように、x軸、y軸及びz軸を有する右手系の直交座標系を用いて、第2実施形態の環形動物生息床HBを構成する環形動物飼育装置2を説明する。
【0127】
環形動物飼育装置2は、環形動物に生息環境を提供する環形動物生息床HBを構成する。
本例では、環形動物は、シマミミズである。なお、環形動物は、シマミミズ以外のミミズであってもよい。また、環形動物は、ミミズ以外のヒル綱又は多毛綱であってもよい。
【0128】
本例では、z軸方向は、鉛直方向に一致する。また、本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向は、環形動物飼育装置2の前後方向、環形動物飼育装置2の左右方向、及び、鉛直方向とそれぞれ表されてもよい。また、本例では、x軸の正方向、x軸の負方向、y軸の正方向、y軸の負方向、z軸の正方向、及び、z軸の負方向は、環形動物飼育装置2の前方向、環形動物飼育装置2の後方向、環形動物飼育装置2の左方向、環形動物飼育装置2の右方向、鉛直上方向、及び、鉛直下方向とそれぞれ表されてもよい。
【0129】
図7は、環形動物飼育装置2の左方であり、環形動物飼育装置2の前方であり、且つ、環形動物飼育装置2の鉛直上方である位置から、環形動物飼育装置2を見た図(換言すると、左前上方斜視図)である。図8は、環形動物飼育装置2の鉛直上方から環形動物飼育装置2を見た図(換言すると、平面図)である。
【0130】
図9は、図8のIX−IX線により表される平面により切断された環形動物飼育装置2の断面をy軸の正方向にて見た図である。
図10は、環形動物飼育装置2が分解された状態において、環形動物飼育装置2の左方であり、環形動物飼育装置2の前方であり、且つ、環形動物飼育装置2の鉛直上方である位置から、環形動物飼育装置2を見た図(換言すると、左前上方斜視図)である。
図11は、環形動物飼育装置2が分解された状態において、環形動物飼育装置2の左方であり、環形動物飼育装置2の前方であり、且つ、環形動物飼育装置2の鉛直下方である位置から、環形動物飼育装置2を見た図(換言すると、左前下方斜視図)である。
【0131】
図7乃至図11に表されるように、環形動物飼育装置2は、z軸方向にて延びる柱体状である。本例では、xy平面により切断された環形動物飼育装置2の断面は、x軸方向にて延びる短辺と、y軸方向にて延びる長辺と、を有する長方形状である。換言すると、環形動物飼育装置2は、z軸方向にて延びる四角柱状である。なお、xy平面により切断された環形動物飼育装置2の断面は、長方形状と異なる形状(例えば、円形状、楕円形状、又は、正方形状等)であってもよい。換言すると、環形動物飼育装置2は、四角柱状と異なる形状(例えば、角柱状、又は、円柱状等)であってもよい。
【0132】
図9及び図10に表されるように、環形動物飼育装置2は、環形動物飼育装置2のうちの、z軸の正方向における端部以外の部分が、地面ETに形成された有底の穴に収容される。本例では、地面ETに形成された穴の底面は、xy平面と平行である。なお、図7乃至図11において、地面ETは、簡略に表すために直方体状の領域のみが表される。
【0133】
地面ETは、土砂からなる。なお、地面ETは、土砂に加えて、土砂以外の物質(例えば、動物の糞等の有機物等)を含んでもよい。また、地面ETは、土砂に代えて土からなっていてもよい。本例では、地面ETのうちの、環形動物飼育装置2よりもz軸の負方向の部分は、土層を構成する。
【0134】
図7乃至図11に表されるように、環形動物飼育装置2は、側壁部21と、蓋部22と、第1区画体23と、スポンジ層24と、第2区画体25と、第3区画体26と、被覆体27と、を備える。なお、図9乃至図11において、スポンジ層24、及び、後述される有機物層FDは、詳細な図示が省略されている。
【0135】
本例では、側壁部21、及び、蓋部22は、透光性を有しない。例えば、側壁部21、及び、蓋部22は、木質材料、金属、又は、樹脂からなる。
本例では、環形動物飼育装置2は、ミミズピットと表されてもよい。
【0136】
図10及び図11に表されるように、側壁部21は、z軸方向にて延びるとともに、z軸方向における両端面にて開口する、中空の柱体状である。本例では、側壁部21は、z軸方向にて延びるとともに、z軸方向における両端面にて開口する、中空の四角柱状である。なお、側壁部21は、中空の四角柱状と異なる形状(例えば、角柱状、又は、円柱状等)であってもよい。
【0137】
蓋部22は、xy平面に沿って延びる平板状である。蓋部22は、側壁部21のうちの、z軸の正方向における端面の開口を、当該開口の全体に亘って被覆する(換言すると、当該開口を塞ぐ)。蓋部22は、側壁部21に対して取り外し可能に取り付けられる。本例では、蓋部22は、側壁部21に載置される。なお、環形動物飼育装置2は、蓋部22を備えなくてもよい。
【0138】
図9乃至図11に表されるように、スポンジ層24は、xy平面に沿って延びる平板状である。スポンジ層24は、地面ETのうちの土層を構成する部分の鉛直上方に位置する。換言すると、土層は、スポンジ層24の鉛直下方に位置する。
スポンジ層24は、第1実施形態のスポンジ層16を構成する複数のスポンジ片161と同様の複数のスポンジ片からなる。本例でも、スポンジ層24は、スポンジ層16と同様に、空隙率が0.5乃至0.55の値であるとともに、z軸方向における長さが150mmである。
【0139】
図9乃至図11に表されるように、第1区画体23は、土層と、スポンジ層24と、の間に位置する。換言すると、第1区画体23は、土層と、スポンジ層24と、を区画する。
第1区画体23は、支持枠231と、支持枠231により支持されるとともに、xy平面に沿って延びるシート状のシート部232と、を備える。
【0140】
支持枠231は、側壁部21の内壁面に沿って延びる柱体状の外縁部材と、支持枠231のy軸方向における中央部においてx軸方向にて延びるとともに、当該外縁部材のうちの互いに平行に延びる一対の直線部を連結する柱体状の連結部材と、からなる。本例では、外縁部材、及び、連結部材のそれぞれは、断面が正方形状である。なお、外縁部材、及び、連結部材のそれぞれは、断面が正方形状と異なる形状(例えば、長方形状、又は、円形状等)であってもよい。
【0141】
シート部232は、支持枠231のうちの、z軸の負方向における端面に固定される。シート部232の外縁は、当該外縁の全体に亘って、側壁部21の内壁面に接する。換言すると、シート部232は、xy平面により切断された、側壁部21の内部空間の断面と同じ形状を有する。
【0142】
図9に表されるように、シート部232は、複数の孔233を有する。なお、第1区画体23が有する孔233の数は、1つであってもよい。
複数の孔233のそれぞれは、シート部232をz軸方向にて貫通する。本例では、複数の孔233は、格子状に位置する。本例では、各孔233は、正四角柱状である。なお、各孔233は、正四角柱状と異なる形状(例えば、三角柱状、又は、円柱状等)であってもよい。
【0143】
本例では、孔233は、環形動物が孔233を通過可能であるとともに、スポンジ片が孔233を通過不能である大きさを有する。例えば、環形動物がシマミミズである場合、各孔233の一辺の長さは、2mmよりも長く且つ9mmよりも短いことが好適である。換言すると、孔233は、スポンジ片よりも小さい。
このように、孔233の大きさは、環形動物の大きさ、及び、スポンジ片の大きさに応じて設定されることが好適である。
【0144】
本例では、シート部232は、網(換言すると、メッシュ)である。本例では、網は、樹脂(例えば、ポリエチレン等)からなる。なお、網は、繊維、又は、金属等からなっていてもよい。また、天然繊維は、環形動物によって処理(例えば、消化、又は、分解)されやすい。従って、網が繊維からなる場合、繊維は、化学繊維であることが好適である。なお、シート部232は、網に代えて、敷物又はマットとして用いられるシート状の物体であってもよい。また、第1区画体23は、支持枠231を備えなくてもよい。また、環形動物飼育装置2は、第1区画体23を備えなくてもよい。
【0145】
図9乃至図11に表されるように、第2区画体25は、スポンジ層24と、後述される有機物層FDと、の間に位置する。換言すると、第2区画体25は、スポンジ層24と、有機物層FDと、を区画する。
第2区画体25は、支持枠251と、支持枠251により支持されるとともに、xy平面に沿って延びるシート状のシート部252と、を備える。
【0146】
支持枠251は、支持枠231と同様の構成を有する。また、シート部252は、支持枠251のうちの、z軸の正方向における端面に固定される点を除いて、シート部232と同様の構成を有する。従って、図9に表されるように、シート部252は、シート部232と同様に、複数の孔253を有する。
なお、シート部252は、支持枠251のうちの、z軸の負方向における端面に固定されていてもよい。また、第2区画体25は、支持枠251を備えなくてもよい。また、環形動物飼育装置2は、第2区画体25を備えなくてもよい。
【0147】
本例では、土層、第1区画体23、スポンジ層24、及び、第2区画体25は、環形動物生息床HBを構成する。本例では、環形動物生息床HBは、ミミズ床と表されてもよい。
【0148】
有機物層FDは、第1実施形態と同様に、生ごみ等の有機物(換言すると、食品由来有機物)からなる。有機物層FDは、第2区画体25の鉛直上方に位置する。本例では、有機物層FDは、生ごみ等の有機物を、第2区画体25のうちのz軸の正方向における端面に敷設することにより形成される。
【0149】
図9乃至図11に表されるように、第3区画体26は、有機物層FDの鉛直上方に位置する。第3区画体26は、xy平面に沿って延びるシート状である。第3区画体26は、シート部232と同様の構成を有する。従って、図9に表されるように、第3区画体26は、シート部232と同様に、複数の孔261を有する。
なお、環形動物飼育装置2は、第3区画体26を備えなくてもよい。
【0150】
図9乃至図11に表されるように、被覆体27は、第3区画体26の鉛直上方に位置する。被覆体27は、透光性を有しない。被覆体27は、xy平面に沿って延びるシート状である。被覆体27の外縁は、当該外縁の全体に亘って、側壁部21の内壁面に接する。換言すると、被覆体27は、xy平面により切断された、側壁部21の内部空間の断面と同じ形状を有する。
【0151】
本例では、被覆体27は、繊維からなる。例えば、被覆体27は、絨毯である。天然繊維は、環形動物によって処理(例えば、消化、又は、分解)されやすい。従って、被覆体27が繊維からなる場合、繊維は、化学繊維であることが好適である。
【0152】
被覆体27によれば、被覆体27の鉛直下方に光が入射することを抑制できる。また、被覆体27によれば、被覆体27の鉛直下方における乾燥を抑制できる。また、被覆体27によれば、被覆体27の鉛直下方へ害虫が進入することを抑制できる。また、被覆体27によれば、被覆体27の鉛直上方から水が散布された場合、被覆体27の鉛直下方の空間に、均等に且つ緩慢に水を供給できる。また、被覆体27によれば、環形動物生息床HBと環形動物生息床HBの外部との通気を確保できる。
なお、環形動物飼育装置2は、被覆体27を備えなくてもよい。
【0153】
(使用方法)
次に、環形動物飼育装置2の使用方法について説明する。
先ず、地面ETに穴を形成する。次いで、形成された穴に、側壁部21のうちの、z軸の正方向における端部以外の部分が収容されるように、側壁部21を当該穴に設置する。
【0154】
次いで、第1区画体23を、上記穴の底面に敷設する。次いで、複数のスポンジ片に吸水させる。例えば、各スポンジ片を水に浸した後に、各スポンジ片から水が滴下しないように各スポンジ片を軽く絞ることにより、各スポンジ片に含まれる空気を抜くことによって各スポンジ片に吸水させる。
【0155】
次いで、複数のスポンジ片を第1区画体23の上面に敷設することにより、スポンジ層24を形成する。次いで、第2区画体25をスポンジ層24の上面に敷設する。これにより、環形動物生息床HBが形成される。次いで、環形動物を環形動物生息床HBに入れる。
【0156】
次いで、食品由来有機物を第2区画体25の上面に敷設することにより、有機物層FDを形成する。次いで、第3区画体26を有機物層FDの上面に敷設する。次いで、被覆体27を第3区画体26の上面に載置する。次いで、蓋部22を側壁部21に載置する。
なお、有機物層FDが形成された後に、環形動物が環形動物生息床HBに入れられてもよい。
【0157】
なお、図示されないヒーターを用いて、環形動物飼育装置2の内部の温度が、例えば、摂氏20度に維持されるように、環形動物飼育装置2の内部の温度が制御されてもよい。
【0158】
本例では、有機物層FDを構成する食品由来有機物は、所定の給餌時間(例えば、7日間)が経過する毎に供給される。本例では、1回の供給において供給される食品由来有機物の量は、給餌時間において環形動物が処理(例えば、消化、又は、分解)可能な範囲において最も多い量に調整される。
また、各スポンジ片が乾燥しないように、所定の給水時間(例えば、7日間)が経過する毎に、環形動物飼育装置2の内部に水が散布される。
【0159】
このようにして、環形動物飼育装置2において環形動物を生息させる(換言すると、飼育する)。環形動物は、有機物層FDを構成する食品由来有機物を処理することにより、糞を排泄する。排泄された糞は、スポンジ片に付着する。
【0160】
本例では、所定の飼育期間に亘って、環形動物飼育装置2において環形動物を生息させる。例えば、飼育期間は、1年のうちの、最高気温が摂氏10度以下である期間を除いた期間(例えば、1ヶ月乃至8ヶ月間)であってよい。その後、蓋部22、被覆体27、第3区画体26、有機物層FD、及び、第2区画体25を側壁部21から取り外すとともに、環形動物飼育装置2からスポンジ層24を取り出す。
【0161】
次いで、臭気に対する忌避反応を用いて、環形動物をスポンジ層24から分離する。例えば、特願2017−159578号明細書に開示された方法を用いる。これにより、環形動物は、スポンジ層24の外部へ移動する。従って、環形動物は、スポンジ層24から分離される。
【0162】
なお、環形動物による臭気に対する忌避反応に代えて、環形動物による他の忌避反応(例えば、光に対する忌避反応等)を用いて、環形動物をスポンジ層24から分離してもよい。この場合、蓋部22、被覆体27、第3区画体26、有機物層FD、及び、第2区画体25を側壁部21から取り外すことにより、スポンジ層24に光を照射する。これにより、環形動物は、土層へ移動する。従って、環形動物は、スポンジ層24から分離される。次いで、環形動物飼育装置2からスポンジ層24を取り出す。
【0163】
次いで、複数のスポンジ片を乾燥させる。本例では、各スポンジ片から糞が剥がれ落ちやすくなるように、複数のスポンジ片を陰干しする。次いで、複数のスポンジ片を振動させることにより、複数のスポンジ片から糞を落下させる。本例では、複数のスポンジ片を篩にかけることにより、複数のスポンジ片を振動させる。次いで、落下した糞を収集する。
これにより、環形動物の糞を、土から分離した状態にて容易に収集できる。
【0164】
次いで、複数のスポンジ片を、水が主成分である液体(本例では、水)を用いて洗浄する。洗浄されたスポンジ片は、環形動物生息床HBのスポンジ層24として繰り返し利用できる。また、洗浄に用いられた液体は、スポンジ片に付着していた環形動物の体液を含む。ところで、当該体液を含む液体は、液体の肥料(換言すると、液肥)である。従って、液肥を容易に取得できる。液肥は、コンポストティーと表されてもよい。
【0165】
以上、説明したように、第2実施形態の環形動物生息床HBによれば、第1実施形態の環形動物生息床HBと同様の作用及び効果が奏される。
また、第2実施形態の環形動物生息床HBは、第1実施形態の環形動物生息床HBよりも、土層の鉛直方向における長さを長くしやすい。従って、環形動物飼育装置2からスポンジ層24を取り出す前に、環形動物をスポンジ層24から分離する場合、多量の環形動物が存在する場合であっても、環形動物を土層に移動させることができる。
【0166】
また、第2実施形態の環形動物生息床HBは、第1実施形態の環形動物生息床HBよりも、大型化しやすい。従って、供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加できる。また、土から分離された状態にて収集可能な環形動物の糞の量を増加できる。
【0167】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において当業者が理解し得る様々な変更が加えられてよい。
【符号の説明】
【0168】
1 環形動物飼育装置
11 第1容器部
12 第2容器部
121 孔
13 蓋部
14 土層
15 第1区画体
151 孔
16 スポンジ層
161,161A スポンジ片
17 第2区画体
171 孔
18 第3区画体
181 孔
19 被覆体
2 環形動物飼育装置
21 側壁部
22 蓋部
23 第1区画体
231 支持枠
232 シート部
233 孔
24 スポンジ層
25 第2区画体
251 支持枠
252 シート部
253 孔
26 第3区画体
261 孔
27 被覆体
ET 地面
FD 有機物層
HB 環形動物生息床

【要約】      (修正有)
【課題】供給された食品由来有機物の、環形動物によって処理される量を増加させること、又は、環形動物の糞を、土から分離された状態にて収集することが可能な環形動物生息床を提供する。
【解決手段】環形動物生息床HBは、環形動物に生息環境を提供する。環形動物生息床HBは、複数のスポンジ片からなるとともに、当該複数のスポンジ片がスポンジ片間に隙間を有するスポンジ層16を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11