特許第6347904号(P6347904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6347904
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】シート状ノズルキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20180618BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B65D77/20 M
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-4798(P2018-4798)
(22)【出願日】2018年1月16日
【審査請求日】2018年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-157233(P2017-157233)
(32)【優先日】2017年8月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-157604(P2017-157604)
(32)【優先日】2017年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-166581(P2017-166581)
(32)【優先日】2017年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-236900(P2017-236900)
(32)【優先日】2017年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−195742(JP,A)
【文献】 特開2014−122067(JP,A)
【文献】 特表2002−543008(JP,A)
【文献】 特開2013−121844(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0246391(US,A1)
【文献】 特開2013−244990(JP,A)
【文献】 特開2011−225272(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3198001(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに着脱自在に装着され、該ノズルの注出口を密閉保持するキャップであって、
前記キャップは、開口を通してノズルの少なくとも先端部分に装着される袋状の挿入部を有し、該挿入部の内壁面の全域が該ノズルの外周壁に密着可能な二枚重ねのラミネートフィルムからなり、
前記二枚重ねのラミネートフィルムが、前記挿入部および前記開口を区画する内側接合ラインを形成するとともに、それらラミネートフィルム同士を相互に接合する接合部を有し、
前記内側接合ラインが、前記開口、該開口の近傍域および前記挿入部の少なくとも一箇所において突出し、ノズルの外周壁に圧着可能な一または二以上の膨出部を有することを特徴とするシート状ノズルキャップ。
【請求項2】
前記二枚重ねのラミネートフィルムは、その縁部に、摘み部として使用可能な耳部を有することを特徴とする請求項1に記載したシート状ノズルキャップ。
【請求項3】
前記膨出部の対向壁面には、ラミネートフィルムの内面同士を局所的に相互に密着、接合させて形成され、ノズルの外周壁に圧着可能な隆起部を有することを特徴とする請求項1または2に記載したシート状ノズルキャップ。
【請求項4】
前記内側接合ラインは、前記開口へ向けて前記挿入部の開放寸法を拡大する傾斜またはアール(R)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載したシート状ノズルキャップ。
【請求項5】
前記二枚重ねのラミネートフィルムは、Al箔もしくは、Al、AlまたはSiOの蒸着層を含むプラスチックフィルムの積層体を相互に重ね合わせて構成されたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載したシート状ノズルキャップ。
【請求項6】
前記二枚重ねのラミネートフィルムは、一枚当たりの厚さが50〜120μmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載したシート状ノズルキャップ。
【請求項7】
前記挿入部の内面壁が、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂またはフッ素系樹脂の層からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載したシート状ノズルキャップ。
【請求項8】
前記二枚重ねのラミネートフィルムは、一方の端縁からもう一方の端縁に向けて該二枚重ねのラミネートフィルムを引き千切ることにより該挿入部につながる貫通開孔を形成する少なくとも一本の引き千切り予定線を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載したシート状ノズルキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気、水分との接触により固化あるいは品質の劣化が避けられない、例えば、シーリング材や接着剤、食品、薬剤等を内容物(液状、粘性のあるもの)として充填する容器の注出ノズルに装着して好適なシート状ノズルキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーリング材や接着剤(瞬間接着剤等)等を内容物として充填する容器は、容器の先端部に設けられたノズルを通して内容物を注出するのが普通であり、内容物の使用を終えた後は、注出ノズルの先端部にキャップを取り付けて保管している。
【0003】
ところで、従来のこの種のキャップは、注出ノズルに適合する形に成形された硬質素材にて形作られているため、ノズルの注出口の密封が十分とはいえず、容器を一旦開封したのちは、キャップを装着していたとしても容器内に残存する内容物の固化、品質の劣化が避けられない状況にある。
【0004】
この点に関する先行技術として、例えば特許文献1には、キャップ本体の開口部の円周面に切れ目を入れたフタを設け、切れ目のあるフタの方からノズルの先にキャップを被せるとともに、キャップの内部に容器内の内容物を充填してキャップ内の空気を排出する構造のノズル用キャップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−287038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のキャップは、ノズルへの取り付けがフタに形成された切れ目を通して単に差込むものであることからキャップの装着姿勢が不安定であり、しかも、キャップの内部には内容物を充填するため内容物の無駄な使用が避けられない不具合を有している。
【0007】
本発明の課題は、ノズルの注出口を、安定した装着姿勢のもとに確実に密封することができるシート状ノズルキャップを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ノズルに着脱自在に装着され、該ノズルの注出口を密閉保持するキャップであって、前記キャップは、開口を通してノズルの少なくとも先端部分に装着される袋状の挿入部を有し、該挿入部の内壁面の全域が該ノズルの外周壁に密着可能な二枚重ねのラミネートフィルムからなり、前記二枚重ねのラミネートフィルムが、前記挿入部および前記開口を区画する内側接合ラインを形成するとともに、それらラミネートフィルム同士を相互に接合する接合部を有し、前記内側接合ラインが、前記開口、該開口の近傍域および前記挿入部の少なくとも一箇所において突出し、ノズルの外周壁に圧着可能な一または二以上の膨出部を有することを特徴とするシート状ノズルキャップである。ここで、二枚重ねのラミネートフィルムとは、相互に切り離された二枚のラミネートフィルムを重ね合わせて構成されるもののほか、一枚のラミネートフィルムを任意の箇所で折り返すことによって重ね合わせものを含むものとする。
【0009】
上記の構成からなるシート状ノズルキャップにおいて、二枚重ねラミネートフィルムは、その縁部に、摘み部として使用可能な耳部を有することが好ましい。
【0010】
また、膨出部の対向壁面には、ラミネートフィルムの内面同士を局所的に相互に密着、接合させて形成され、ノズルの外周壁に圧着可能な隆起部を有すること、また、内側接合ラインは、開口へ向けて挿入部の開放寸法を拡大する傾斜またはアール(R)を有すること、また、該二枚重ねのラミネートフィルムは、Al箔もしくはAl、AlまたはSiOの蒸着層を含むプラスチックフィルムの積層体を相互に重ね合わせて構成されたものであること、さらに、二枚重ねのラミネートフィルムは、一枚当たりの厚さが50〜120μmであること、前記挿入部の内面壁が、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂またはフッ素系樹脂の層からなること、二枚重ねのラミネートフィルムは、一方の端縁からもう一方の端縁に向けて該二枚重ねのラミネートフィルムを引き千切ることにより該挿入部につながる貫通開孔を形成する少なくとも一本の引き千切り予定線を有すること、が具体的解決手段として好ましい。なお、接合部は、ヒートシールにより形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート状ノズルキャップを、開口を通してノズルの先端部に装着される袋状の挿入部を有し、内壁面の全域が該ノズルの外周壁に密着可能な二枚重ねのラミネートフィルムにて構成したため、安定した装着姿勢のもとでノズルの注出口を確実に密封することができる。
【0012】
また、本発明によれば、二枚重ねのラミネートフィルムの縁部に、シート状ノズルキャップを把持する摘み部として使用する耳部を設けることにより、シート状ノズルキャップの、ノズルに対する着脱が容易になる。
【0013】
また、本発明によれば、挿入部および開口を区画する内側接合ラインを形成するとともにラミネートフィルム同士が相互に接合された接合部を設けるようにしたため、ラミネートフィルム同士の接合とプレス型等による打ち抜きのみでシート状ノズルキャップを製造することができる。
【0014】
接合部の内側接合ラインに、前記開口、該開口の近傍域および前記挿入部の少なくとも一箇所において突出しノズルの外周壁に圧着可能な一または二以上の膨出部を設けることにより、該膨出部の圧着に伴って生じるスプリングバックによる力(もとの形状に戻ろうとする力)が、ノズルの胴体を締め付ける締め付け力として作用することとなるため、該シート状ノズルキャップがノズルから簡単に脱落することがない。膨出部の対向位置には、ラミネートフィルムの内面同士を局所的に相互に密着、接合させて形成され、ノズルの外周壁に圧着可能な隆起部を設けておくことができ、これによればノズルの胴体を締め付ける締め付け力がより一層高まるとともに、シート状ノズルキャップの、ノズルに対する密着性が良好となり確実なシールが行える。また、内側接合ラインに、開口へ向けて挿入部の開放寸法を拡大する傾斜またはアール(R)を設けることにより開口を開放しやすくなりシート状ノズルキャップの、ノズルへの装着が容易となる。
【0015】
さらに、本発明によれば、空気(酸素)や水分の透過を回避するラミネートフィルムを用いることにより、容器内の内容物の固化や品質の劣化が避けられる。
【0016】
挿入部の内面壁を、ポリオレフィ系熱可塑性樹脂または、フッ素系樹脂の層とすることにより、容器内の内容物がシート状ノズルキャップの内壁面に接触しても化学的な変化が起こりにくく、該内壁面で内容物が固化したとしても簡単に取り除くことができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、ラミネートフィルムの接合をヒートシールで行うようにしたため、シート状ノズルキャップを効率的に製造することができる。
【0018】
引き千切り予定線に沿って二枚重ねのラミネートフィルムを引き千切り、挿入部につながる貫通開孔を形成することによりシート状ノズルキャップを装着したままで内容物の注出が可能となる。この場合、貫通開孔の開口面積を、ノズルの注出口の開口面積よりも小さくしておくことにより内容物の少量注出が行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に好適なシート状ノズルキャップのを模式的に示した図であり、(a)は平面図、(b)は、正面図、(c)は、側面図、(d)は、背面図である。
図2】(a)は、図1(a)〜(d)に示したシート状ノズルキャップをノズルに装着する直前の状態を示した外観斜視図であり、(b)は、図1に示したシート状ノズルキャップをノズルに装着した状態を示した外観斜視図である。
図3】本発明に好適なシート状ノズルキャップの他のをその側面について示した図である。
図4】本発明に好適なシート状ノズルキャップの他のをその側面について示した図である。
図5】本発明に好適なシート状ノズルキャップの他のをその側面について示した図である。
図6】本発明に好適なシート状ノズルキャップの他のをその側面について示した図である。
図7】本発明に好適なシート状ノズルキャップのさらに他の例をその側面について示した図である。
図8図7に示したシート状ノズルキャップの使用状態を示した外観斜視図である。
図9】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの実施の形態をその側面について示した図である。
図10】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの使用状態を要部について示した図である。
図11】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態をその側面について示した図である。
図12】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態をその側面について示した図である。
図13】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態をその側面について示した図である。
図14】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態をその側面について示した図である。
図15】(a)〜(c)は、本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を要部について示した図である。
図16】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
図17】(a)〜(d)は、本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
図18図17(a)〜(d)に示したシート状ノズルキャップの外観斜視図である。
図19】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
図20】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
図21】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
図22】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
図23】本発明にしたがうシート状ノズルキャップの他の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1(a)〜(d)は、本発明に好適なシート状ノズルキャップのを模式的に示した図であり、図2(a)(b)は、図1(a)〜(d)に示したシート状ノズルキャップを、内容物を充填した容器の注出ノズルに装着する直前および装着後の状態をそれぞれ示した図である。
【0021】
図における符号1は、ノズルNの先端部分に装着されるシート状ノズルキャップである。このシート状ノズルキャップ1は、袋状の挿入部1aを有するものであって、二枚のラミネートフィルム1b、1cを重ね合わせて、その縁部に接合部2を設けることによって製造される。接合部2を設けるに当たっては、内側接合ラインLにより挿入部1aと挿入部1aにノズルNを導入する開口1a1とを区画しておく必要があり、その部位については接合部2を設けない。挿入部1aは、ノズルNの外周全体に対し隙間が形成されない密着状態で装着できるものでなければならず、好ましくは、ノズルNの長さに略等しい長さとする。
【0022】
かかる構成からなるシート状ノズルキャップ1は、開口1a1を通して挿入部1aにノズルNを挿入すると、その内側(内壁面または内周面)の全域がノズルNの外周壁に密着する(面接触)ことになるため、安定した装着姿勢のもとでノズルNの注出口N1を確実に密封することができる。シート状ノズルキャップ1の内壁面とノズルNの外周壁との相互間は比較的高い摩擦力に維持されるため、シート状ノズルキャップ1がノズルNから簡単に外れることはない。
【0023】
シート状ノズルキャップ1としては、少なくとも一層の合成樹脂の層で構成されたフィルムを用いることができるが、空気(酸素)、水分がシート状ノズルキャップ1の壁面を透過するのを避けるために、Al箔もしくは、Al、AlまたはSiOの蒸着層を含むラミネートフィルムを使用する。
【0024】
ラミネートフィルムは、一枚当たりの厚さが50〜120μm程度のものを使用するのが望ましく、これによりフィルムそのものの柔軟性を維持することが可能となりシート状ノズルキャップ1の内壁面の全域をノズルNの外周壁に面状態で密着させることができる(シール性の向上)。とくに、Al箔を含むラミネートフィルムを用いて構成されたシート状ノズルキャップ1は、一旦ノズルNに装着するとその形状をそのまま維持することができる(保形性が良好)ので、再度シート状ノズルキャップ1をノズルNに装着する場合にシート状ノズルキャップ1をノズルNに装着し易い利点がある。
【0025】
ラミネートフィルムとしては、PET樹脂等(またはナイロン)+アルミニウム箔+PET樹脂等(またはナイロン)+ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)またはフッ素系樹脂の層構成からなるものを適用するのが好適である。
【0026】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂あるいはフッ素系樹脂(PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE、ECTFE等)の層がシート状ノズルキャップ1の内面壁となるようにラミネートフィルムを構成することにより、該ポリオレフィン系熱可塑性樹脂あるいはフッ素系樹脂をシーラント層として機能させることが可能となり、接合部2を形成する際に、ヒートシールによりフィルム同士を効率的に接合できる。
【0027】
また、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂あるいはフッ素系樹脂がシート状ノズルキャップ1の内周面に位置していると、内容物が内周面に付着したとしてもそれらの相互間での化学的な反応が起こりにくいため該内容物を容易に剥離、除去できる利点がある。なお、上記の層構成は、一例を示したものであって、本発明のシート状ノズルキャップ1が該層構成に限定されることはない。
【0028】
図3は、本発明に好適なシート状ノズルキャップ1の他のを示した図である。この例は、シート状ノズルキャップ1の縁部、とりわけ、接合部2の縁部に該接合部2を延長させることによって耳部3(シート状ノズルキャップ1と同じラミネートフィルムからなるもの)を設けたものである。
【0029】
耳部3は、本発明のシート状ノズルキャップ1を指で挟んで取り扱うのに便利な摘み部として使用することができる。
【0030】
本発明に好適なシート状ノズルキャップ1は、ラミネートフィルムを二枚重ねにして接合部2を形成するとともに該ラミネートフィルムをノズルNの外観形状に合わせて打ち抜くことにより製造することができる。とくに、耳部3を設けたシート状ノズルキャップ1は、ノズルNの形状に合わせた打ち抜きが不要で、挿入部1aを含む長さにして裁断するだけでよいため、シート状ノズルキャップ1を効率的に製造できる利点がある。
【0031】
図4は、挿入部1aの開口1a1が位置するラミネートフィルム1bの端縁に該フィルム1bと一体になる舌片4を設けた例である。舌片4を設けておくことにより挿入部1a開口1a1を開放しやすくなり、シート状ノズルキャップ1の、ノズルNへの装着が容易になる。なお、舌片4は、ラミネートフィルム1b、1cのいずれか一方もしくは両方に設けることができる。また、舌片4を設ける代わりにラミネートフィルム1b、1cの少なくとも一方に図5に示すように切り欠き部5を設けるか、あるいは図6に示すように開口1a1が位置するラミネートフィルム1b、1cの端縁を相互にずらしてもよく、この場合にも挿入部1aの開口1a1を簡単に開放することができる。
【0032】
図7は、挿入部1aの開口1a1が位置するラミネートフィルム1b、1cの端縁に非接合部2’を設けた例である。かかるシート状ノズルキャップ1においては図8に示すように、非接合部2’を起点にしてラミネートフィルム1b、1cを相互に離反させることができ、この場合にも挿入部1aの開口1a1が開放しやすくなる。なお、図7に示したシート状ノズルキャップ1は、ラミネートフィルム1b、1cの端縁が揃ったものを例として示しているが、上掲図6に示すようにラミネートフィルム1b、1cの端面を相互にずらしておくことができるのはいうまでもない。
【0033】
本発明の好適例では、ノズルNの外観形状が円錐台形状になるものに適用するものを例として示し、挿入部1aの形状はノズルNの外観形状に合わせたものとしたが、挿入部1aの形状はノズルの外観形状に合わせて適宜変更可能であって、図示の形状に限定されることはない。
【0034】
図9は、接合部2により形成された内側接合ラインLに、挿入部1aの開口1a1において突出する膨出部2aを設けることによって構成された、本発明にしたがうシート状ノズルキャップ1のさらに他の例を示した図である。かかる膨出部2aは、接合部2と同様に、フィルム同士(ラミネートフィルム1b、1c)をヒートシール等の接合手段により接合することによって形成されるものである。挿入部1aの開口1a1において突出する膨出部2aを設けたシート状ノズルキャップ1においては、シート状ノズルキャップ1がノズルNに装着されるとその要部を図10に示すように、該膨出部2aはノズルNの外周壁(外表面)との接触により圧着され、その際に生じる該膨出部2aのスプリングバックによる力がシート状ノズルキャップ1の締め付け力(図中矢印)として作用することとなり、該シート状ノズルキャップ1がノズルNにしっかりと取り付けられることになる。なお、図10は、ラミネートフィルム1bを取り除いた状態で示してある。膨出部2aは、シート状ノズルキャップ1をノズルNへ装着する時の押し込み力でもって少なくとも一部分が剥離するとともにその剥離を伴いながら押し潰されるものであってもよい。膨出部2aが剥離しながら押し潰されることにより、シート状ノズルキャップ1の、ノズルNの外周壁に対する密着がより一層良好となる。
【0035】
膨出部2aは、図11に示すように、挿入部1aの開口1a1の対向位置の内側接合ラインLにも設けることも可能であり、これによりシート状ノズルキャップ1のノズルNに対する締め付け力がより一層増すことになる。
【0036】
図12は、膨出部2aを、開口1a1の近傍域(開口1a1よりも内側(挿入部1aの先端側)の位置)の内側接合ラインLに設けた例であり、図13は、膨出部2aを、挿入部1aの長手方向の中央部に位置する内側接合ラインLに設けた例である。いずれの構造のものも上掲図11に示したものと同様、シート状ノズルキャップ1のノズルNに対する締め付け力が高められることになる。なお、膨出部2aは、例えば、図14に示すように、同じ部位に連続的に、あるいは、間隔をあけて断続的に設けることもできる。
【0037】
膨出部2aの側面形状は、半円形状(楕円を含む)とすることができるほか、図15(a)〜(c)に示すように、三角形状、矩形状、台形状とすることも可能であり、その形状は任意に変更し得る。
【0038】
膨出部2aは、接合部2の内側接合ライン(挿入部1aの外縁)Lよりも挿入部1a側に突出していればよく、その突出代t(図15(a)参照)は最大でもt=1.0mm程度に留めておくのが好ましく、これにより、膨出部2aは、ノズルNの装着時にその外周壁により確実に押し潰され、シート状ノズルキャップ1の内壁面の全域がノズルNの外周壁に密着することになる。シート状ノズルキャップ1をノズルNに装着するに当たっては、ノズルNの先端から内容物を長さにして5mm程度排出し、その状態を維持したまま該シート状ノズルキャップ1を被せるようにしてもよい。
【0039】
図16は、挿入部1aの先端に該挿入部1aにつながる副室6を設けた例である。かかるシート状ノズルキャップ1においては、ノズルNに装着した状態においてノズルNの注出口N1から内容物が流出することがあっても流出にかかる内容物を副室6で受け止めることができるものである(内容物の注出後は、容器の内部は圧力が高い状態に保持されていることがあり、内容物の注出直後にキャップを取り付けると、キャップ内に内容物が流出しキャップがずれるおそれがある)。この場合、内容物は、副室6に残存することになるが、該内容物の固化後にシート状ノズルキャップ1の外側から開口1a1に向けて押しやることにより該内容物を簡単に取り除くことができる。
【0040】
図17(a)〜(d)は、一枚のラミネートフィルムを折り返すとともに、折り返しによる重ね合わせ部分をヒートシールにより相互に接合することによって形成された、本発明にしたがうシート状ノズルキャップ1の他の例を示したものであり、図18図17(a)〜(d)に示したシート状ノズルキャップにつき、その開口1a1を開放した状態で示した外観斜視図である。
【0041】
本発明にしたがうシート状ノズルキャップ1は、図17(a)〜(b)、図18に示すように、一枚のラミネートフィルムを用いて構成することも可能であり、かかるシート状ノズルキャップ1は、シート状ノズルキャップ1を作製するのに使用するラミネートフィルムの使用量を削減できる利点がある。
【0042】
膨出部2aについては、ノズルNの外周壁の全周にわたって圧着可能な環状体で構成することもできる。膨出部2aを環状体で構成することによりシート状ノズルキャップ1のノズルNの外周壁に対する密着性がより一層改善されるとともに、シート状ノズルキャップ1をノズルNに装着する際に、膨出部2aの圧着に伴って生じるスプリングバックによる力が高まるため、シート状ノズルキャップ1をノズルNにしっかりと固定することできる。
【0043】
図19は、接合部2の内側接合ラインLに、開口1a1に向けて挿入部1aの開放寸法を拡大するアール(R)7を設けた、本発明にしたがうシート状ノズルキャップ1を示した図である。
【0044】
かかるシート状ノズルキャップ1では、開口1a1が開きやすくなるため、シート状ノズルキャップ1を、ノズルNに簡単に装着することができる。なお、図19では、アール(R)7を付したものを例として示したが、図20に示すように、アール(R)7の代わりに傾斜8を設けてもよい。
【0045】
図21は、ラミネートフィルムの厚さを薄くすることによって形成された引き千切り予定線9を備えた、本発明にしたがうシート状ノズルキャップの例を示した図である。
【0046】
かかるシート状ノズルキャップ1は、引き千切り予定線9に沿いラミネートフィルムを一方の端縁からもう一方の端縁に向けて引き千切ることにより、挿入部1aにつながる貫通開孔を形成するものであって、貫通開孔のサイズを予めノズルNの注出口N1のサイズよりも小さくなるように設定しておくことによりシート状ノズルキャップ1をノズルNに装着したままで内容物の少量注出が可能となる。引き千切り予定線9は間隔をおいて複数本設けておくことも可能であり、これにより内容物の注出量を可変とすることができる。
【0047】
図22は、一枚のラミネートフィルムを折り返したのち、折り返しによる重ね合わせ部分をヒートシールにより相互に接合して接合部2を形成するとともに、内側接合ラインLの膨出部2aの対向壁面に隆起部10を設けることによって構成された、本発明にしたがうシート状ノズルキャップ1の例を示した図である。
【0048】
かかるシート状ノズルキャップ1は、膨出部2a、隆起部10がそれぞれノズルNの外周壁に圧着することになるため、シート状ノズルキャップ1のノズルNに対する締め付け力がより一層高まるとともに密着性がさらに良好となり確実なシールが可能となる。
【0049】
隆起部10は、ラミネートフィルムを両側から局所的に挟み込むとともにその部位をヒートシールにより相互に密着、接合させることにより形成することができる。このような隆起部10は、シート状ノズルキャップ1をノズルキャップNへ装着する時の押し込み力でもって該隆起部10の少なくとも一部分が剥離しながら押し潰されてノズルNの外周壁に密着することになる。隆起部10は、図23に示すように、膨出部2aの個数に合わせて複数設けるようにしてもよいし、隆起部10を膨出部2aの対向壁面からずらした位置に設けてもよく、この点については限定されない。隆起部10の壁面からの突出代は膨出部2aと同等とすることができる。
【0050】
Al箔を含む厚さ80μmのラミネートフィルムにて構成された図1に示した構成からなるシート状ノズルキャップを用意し、シリコン系のシーリング材が充填された開封済み容器のノズルに該シート状ノズルキャップを装着して内容物の固化状況を調査したところ、本発明にしたがうシート状ノズルキャップを装着した場合にあっては、1カ月以上経過したのちにおいても内容物の固化が起こらず内容物の恒久的な品質の維持が可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、ノズルの注出口を、安定した装着姿勢のもとで確実に密閉し得るシート状ノズルキャップが提供できる。
【符号の説明】
【0052】
1 シート状ノズルキャップ
1a 挿入部
1a1 開口
1b、1c、1d ラミネートフィルム
2 接合部
2′ 非接合部
2a 膨出部
3 耳部
4 舌片
5 切り欠き部
6 副室
7 アール(R)
8 傾斜
9 引き千切り予定線
10 隆起部
N ノズル
N1 注出口
L 内側接合ライン
【要約】
【課題】空気あるいは水分との接触により固化、品質劣化が避けられない内容物を充填した容器につき、その容器の注出ノズルに装着して好適なシート状ノズルキャップを提案する。
【解決手段】ノズルNに着脱自在に装着され、該ノズルNの注出口N1を密閉保持するシート状ノズルキャップにおいて、該キャップを、開口を通してノズルNの少なくとも先端部分に装着される袋状の挿入部1aを有し、該挿入部1aの内壁面の全域が該ノズルNの外周壁に密着可能な二枚重ねのラミネートフィルム1a、1bで構成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図20
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図22
図23