(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
《ガソリン組成物》
本発明に係るガソリン組成物は、リグノセルロース系バイオマスに含まれるヘミセルロースから製造されるペンテン(以下、ヘミセルロース由来ペンテンという。)を含む。リグノセルロース系バイオマスは、主としてセルロース、ヘミセルロース、及びリグニンから構成されているバイオマスである。このようなリグノセルロース系バイオマスとしては、広葉樹、針葉樹、稲わら、麦わら、もみ殻、コーンストーバー、バガス、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラス、及びススキのような農林資源、並びにそれらの廃棄物やエネルギー作物、それらに由来する木材チップ、木くず、パルプ類、及び古紙類なども挙げられる。リグノセルロース系バイオマスは、食糧生産と競合を起こさない植物由来の資源であり、食糧問題を生じない。また、本発明においては、ヘミセルロースから製造されるエタノールではなく、ヘミセルロースから製造されるペンテンをガソリン基材に混合してバイオ燃料とする。ヘミセルロース由来ペンテンは、エタノールのようにガソリン中の含有量に制限がないため、石油燃料の代替物として多く利用できる。
【0014】
本発明に係るガソリン組成物は、ヘミセルロース由来ペンテンを0.3〜10.0vol%、好ましくは0.5〜9.0vol%含む。ヘミセルロース由来ペンテンが少ないと、二酸化炭素排出量削減の効果が小さく、多いと50%留出温度が低くなり燃費が悪くなることがある。
【0015】
ヘミセルロース由来ペンテンは、1−ペンテン、及び2−ペンテンを含むことが好ましい。ヘミセルロース由来ペンテン中、1−ペンテンは5.0〜15.0vol%であることが好ましく、7.0〜13.0vol%であることがより好ましい。2−ペンテンは85.0〜95.0vol%であることが好ましく、87.0〜93.0vol%であることがより好ましい。
【0016】
本発明に係るガソリン組成物は、リグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースから製造されるヘキセン(以下、セルロース由来ヘキセンという。)を含むのが好ましい。リグノセルロース系バイオマスには、ヘミセルロースの他に、セルロースも含まれ、セルロースを有効に利用することができる。
【0017】
本発明に係るガソリン組成物は、セルロース由来ヘキセンを、好ましくは1.0〜23.0vol%、より好ましくは1.5〜23.0vol%、更に好ましくは2.0〜22.0vol%含む。セルロース由来ヘキセンが少ないと、二酸化炭素排出量削減の効果が小さく、多いと酸化安定性が悪くなることがある。
【0018】
セルロース由来ヘキセンは、1−ヘキセンを少なくとも含むことが好ましい。セルロース由来ヘキセン中、1−ヘキセンは1.0〜15.0vol%であることが好ましく、3.0〜9.0vol%であることがより好ましく、3.0〜7.0vol%であることが更に好ましい。
【0019】
セルロース由来ヘキセンは、1−ヘキセン、2−ヘキセン、及び3−ヘキセンを含むことが好ましい。セルロース由来ヘキセン中、1−ヘキセンは1.0〜15.0vol%であることが好ましく、3.0〜9.0vol%であることがより好ましく、3.0〜7.0vol%であることが更に好ましい。2−ヘキセンは55.0〜80.0vol%であることが好ましく、60.0〜75.0vol%であることがより好ましく、60.0〜70.0vol%であることが更に好ましい。3−ヘキセンは10.0〜40.0vol%であることが好ましく、19.0〜28.0vol%であることがより好ましく、20.0〜28.0vol%であることが更に好ましい。
【0020】
本発明に係るガソリン組成物は、ヘミセルロース由来ペンテンの他に、ガソリン基材に含まれるペンテンを含んでいてもよく、ガソリン組成物中に含まれるペンテン(以下、ペンテン分という。)を好ましくは1.0〜12.0vol%、より好ましくは2.0〜11.0vol%含んでいてもよい。ペンテン分に含まれる(2−ペンテン分)/(1−ペンテン分)は、好ましくは3.0〜7.0vol%/vol%、より好ましくは3.3〜6.5vol%/vol%である。ヘミセルロース由来ペンテンは、後述のように製造した後1−ペンテンと2−ペンテンとを分留等で分離しなければ、2−ペンテンの割合が高いため、ヘミセルロース由来ペンテンの含有量が高まると、(2−ペンテン分)/(1−ペンテン分)は大きくなる傾向がある。
【0021】
本発明に係るガソリン組成物は、セルロース由来ヘキセンの他に、ガソリン基材に含まれるヘキセンを含んでいてもよく、ガソリン組成物中に含まれるヘキセン(以下、ヘキセン分という。)は1.5〜27.0vol%であるのが好ましく、1.5〜24.0vol%であるのがより好ましい。ヘキセン分が少なすぎるとCO
2削減効果が小さく、多すぎると酸化安定性が悪くなることがある。ヘキセン分に含まれる(2−ヘキセン分)/(1−ヘキセン分)は、好ましくは4.5〜10.0vol%/vol%、より好ましくは5.0〜9.5vol%/vol%、更に好ましくは6.0〜9.0vol%/vol%である。セルロース由来ヘキセンは、後述のように製造した後1−ヘキセンと2−ヘキセンとを分留等で分離しなければ、2−ヘキセンの割合が高いため、セルロース由来ヘキセンの含有量が高まると、(2−ヘキセン分)/(1−ヘキセン分)は大きくなる傾向がある。
【0022】
本発明に係るガソリン組成物は、オレフィン分を15.0vol%以上、好ましくは17.0vol%以上、より好ましくは18.0〜40.0vol%、さらに好ましくは19.0〜36.0vol%含んでいてもよい。オレフィン分が多いと酸化安定性が悪くなることがある。パラフィン分は、25.0〜60.0vol%含んでいてもよい。ナフテン分は、3.0〜10.0vol%含んでいてもよい。芳香族分は、好ましくは15.0vol%以上、より好ましくは18.0〜35.0vol%含んでいてもよい。芳香族分が少ないとオクタン価が低くなることがあり、多いと排ガス性能が悪化することがある。
【0023】
本発明に係るガソリン組成物は、15℃における密度が、好ましくは0.7000g/cm
3以上、より好ましくは0.7100〜0.7300g/cm
3である。密度が低すぎると燃費が悪くなることがあり、高すぎると排ガス性能が悪化することがある。蒸気圧は、好ましくは44.0〜93.0kPa、より好ましくは44.0〜88.0kPaであり、更に好ましくは44.0〜72.0kPaである。蒸気圧が低いと、エンジンの始動性が悪くなることがあり、高いと蒸発ガスエミッション(エバポエミッション)が増加し、また、ベーパーロックによりエンジンを停止させることがある。
【0024】
10%留出温度は、好ましくは70.0℃以下であり、より好ましくは38.0〜60.0℃である。10%留出温度が低いと蒸発ガスエミッション(エバポエミッション)が増加し、また、ベーパーロックによりエンジンを停止させることがあり、高いとエンジン始動性が悪くなることがある。50%留出温度は、好ましくは75.0℃以上、より好ましくは75.0〜100.0℃、更に好ましくは75.0〜95.0℃である。50%留出温度が低いと燃費が悪くなることがあり、高いとエンジンの加速不良となることがある。90%留出温度は、好ましくは180.0℃以下、より好ましくは110.0〜170.0℃である。90%留出温度が低いと燃費が悪化することがあり、高いとオイル希釈を起こしエンジン故障の原因となることがある。
【0025】
酸化安定度は、好ましくは240分以上、より好ましくは280分以上である。
【0026】
オクタン価は、好ましくは90.0以上である。
【0027】
《ガソリン組成物の製造方法》
ヘミセルロース由来ペンテンは、例えば、リグノセルロース系バイオマスに含まれるヘミセルロースからペンタノールを製造し、製造したヘミセルロース由来のペンタノールを脱水することで得ることができる。ヘミセルロースからペンタノールは、Ir−Re(イリジウム−レニウム)系触媒の存在下且つヘミセルロースを分解する温度において、水相中のヘミセルロースを加水分解し糖化させるとともに水素化分解させ、これに液体の炭化水素からなる油相を加え溶解させることで、単一の反応容器内で効率良くペンタノールを得ることができる(特開2016−33129号)。
【0028】
Ir−Re系触媒としては、IrとReを含むことを基本とし特に限定はされないが、Ir−ReOx/SiO
2であると、ヘミセルロースの転化率及びペンタノールの収率を高め得る。ここで、ReOxにおけるxは酸化数を示し、任意の実数である。特に、Ir−ReOx/SiO
2である場合に、Irに対するReのモル比を1以上とすることで、ペンタノールをより高い収率で得ることができて好ましい。
【0029】
油相としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等の飽和炭化水素、若しくは、芳香族炭化水素が好ましい。
【0030】
油相は、上記した加水分解工程及び水素化分解工程における反応を阻害しないものである。例えば、エーテルを溶媒として用いると、エーテル自体が分解されるため、アルコールを溶解させる油相としての機能を損ない得る。また、OH基を有するアルコールなどは触媒に吸着して活性点を覆うため触媒能を損なわせ得る。さらに、不飽和炭化水素、例えば、オレフィン系炭化水素は、それ自体が水素化され、グルコースの水素化及びソルビトールの水素化分解に用いられる水素を消費してペンタノールの収率を低下させてしまう。なお、芳香族炭化水素も水素化され得るが、かかる水素化の反応速度は遅いことから、溶媒としても用い得る。
【0031】
油相は、Ir−Re系触媒の反応条件としての温度及び圧力において液相(液体)であることが必要である。典型的には、同触媒の反応条件は140℃〜200℃、1MPa〜10MPaであるから、溶媒の沸点は1MPaにおいて140℃以上、好ましくは1MPaにおいて200℃以上であり、より好ましくは290℃以上である。また、油相を取り出す際に固相となってしまうとアルコールの回収が困難になるため、常温常圧でも液相を維持することが好ましい。このような飽和炭化水素として、例えば、n−ドデカンやn−デカンなどを用い得る。なお、油相は2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
その他、ヘミセルロースからペンタノールを製造する方法は、例えば、Sibao Liu et al., Green Chem., 2016, 18, 165-175に記載されている。
【0033】
ペンタノールは、公知の酸触媒による脱水反応によってペンテンとすることができる。得られたペンテンは1−ペンテン、2−ペンテンを含む。さらに精密蒸留操作により1−ペンテン、2−ペンテンに分留してもよい。
【0034】
セルロース由来ヘキセンは、例えば、リグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースからヘキサノールを製造し、製造したセルロース由来のヘキサノールを脱水することで得ることができる。セルロースからヘキサノールは、Ir−Re(イリジウム−レニウム)系触媒の存在下且つセルロースを分解する温度において、水相中のセルロースを加水分解し糖化させるとともに水素化分解させ、これに液体の炭化水素からなる油相を加え溶解させることで、単一の反応容器内で効率良くヘキサノールを得ることができる(特開2016−33129号)。触媒や油相としては、上述のヘミセルロース由来ペンテンの製造方法で説明したものと同様のものを用いることができる。その他、セルロースからヘキサノールを製造する方法は、例えば、Sibao Liu et al., ChemSusChem, 2015, 8, 628-635に記載されている。ヘキサノールは、公知の酸触媒による脱水反応によってヘキセンとすることができる。得られたヘキセンは、1−ヘキセン、2−ヘキセン、及び3−ヘキセンを含む。さらに精密蒸留操作により1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセンに分留してもよい。
【0035】
ヘミセルロース由来ペンテンとセルロース由来ヘキセンは、別々の反応容器内のリグノセルロース系バイオマスからそれぞれ別々に製造してもよく、同一の反応容器内のリグノセルロース系バイオマスからヘミセルロース由来ペンテンとセルロース由来ヘキセンの両方を製造してもよい。
【0036】
例えば上述のように得られたヘミセルロース由来ペンテンをベースとなるガソリン基材(以下、ベースガソリンという)に混合することにより、本発明に係るガソリン組成物を得ることができる。セルロース由来ヘキセンを混合する場合は、ヘミセルロース由来ペンテンとは別の反応容器内のリグノセルロース系バイオマスから得られたセルロース由来ヘキセンを混合してもよいし、ヘミセルロース由来ペンテンと同じ反応容器内のリグノセルロース系バイオマスから得られたセルロース由来ヘキセンを一緒に混合してもよい。
【0037】
上記のような密度などの所定の性状を有するガソリン組成物を得るために、ヘミセルロース由来ペンテンの混合量や、ベースガソリンの性状を調整すればよい。ただし、ヘミセルロース由来ペンテンが多すぎると、上述のように酸化安定性が悪くなったり、50%留出温度が低くなり燃費が悪くとなることがあったりするので、所定量とする必要がある。ベースガソリンは、公知の方法により、その性状を調整できる。
【0038】
本発明に係るガソリン組成物は、そのままガソリン燃料として用いてもよいし、さらに添加剤や他の基材を加えて用いてもよい。
【0039】
添加剤としては、例えば、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤、ポリイソブチレンアミン化合物などの清浄剤、アミンカルボニル縮合化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤などの帯電防止剤、並びにアゾ染料などの着色剤などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
≪合成例1:ヘミセルロース由来ペンテンの製造≫
[触媒等の調製]
二酸化ケイ素(SiO
2)(富士シリシア化学株式会社製「CARiACT G−6」)に塩化イリジウム酸(H
2IrCl
6)水溶液を滴下して、全体を湿潤させ、90℃程度で乾燥させた。かかる湿潤及び乾燥工程を繰り返して、触媒全体に対してIrが4質量%となるようにした。さらに、110℃で半日程度の乾燥を行った。次に、過レニウム酸アンモニウム(NH
4ReO
4)水溶液で同様の湿潤及び乾燥工程を繰り返して、ReのIrに対するモル比、すなわち[Re]/[Ir]を0.25〜3とするように二酸化ケイ素に担持させた。その後、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、Ir−ReOx/SiO
2触媒を得た。
【0041】
反応容器として、ガラス製内管を有するオートクレーブを用いた。反応容器の内部を加熱できるよう、その周囲に電気炉を配置した。また、内部を攪拌できるように、反応容器をマグネチックスターラーの上に配置するとともに、テフロン(登録商標)コーティングが施されたマグネチックスターラーチップ(攪拌子)を反応容器の内管の内側に収容した。上記Ir−ReOx/SiO
2触媒を1.0重量部、水63.3重量部を反応容器に入れ、水素置換を三回以上繰り返した。反応容器内が200℃になった時に、全圧を8MPaとするように水素を導入し、200℃で1時間保持して触媒を還元させた。
【0042】
[ペンタノールの製造]
ヘミセルロースの主成分であるキシランには予めミル処理を施しておいた。かかるミル処理では、ボールミルのドラムにキシランとともにZrO
2球を100個投入し、回転数を300rpmとし、2時間の粉砕を行った。なお、2時間以上粉砕すれば、得られるキシランは十分に粉砕される。
【0043】
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、上記のミル処理を施したキシラン3.3重量部を加えた。反応容器内に油相として20.0〜100.0重量部のn−ドデカンを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持し、ヘミセルロース由来ペンタノールを得た。
【0044】
[ペンテンの製造]
上記の方法で得た1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノールの少なくとも一つを含むヘミセルロース由来ペンタノール1.0重量部を、別の反応容器(前述のオートクレーブと同型)に導入し、溶媒としてトリデカンを10.0重量部、酸触媒としてゼオライト(HZSM−5)を0.2重量部添加し、室温で0.6MPaとなるように窒素を導入し、約20分で所定の反応温度180℃に昇温した。反応温度に達した直後の脱水反応生成物を分析した。その結果、1−ペンテン及び2−ペンテンを含むヘミセルロース由来ペンテンが得られた。
【0045】
≪合成例2:セルロース由来ヘキセンの製造≫
[触媒等の調製]
合成例1と同様にして、触媒等を調製した。
【0046】
[ヘキサノールの製造]
リグノセルロース系バイオマス由来のセルロースには予めミル処理を施しておいた。かかるミル処理では、ボールミルのドラムにセルロースとともにZrO
2球を100個投入し、回転数を300rpmとし、2時間の粉砕を行った。なお、2時間以上粉砕すれば、得られるセルロースは十分に粉砕される。
【0047】
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース3.3重量部を加えた。反応容器内に油相として20.0〜100.0重量部のn−ドデカンを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持し、セルロース由来ヘキサノールを得た。
【0048】
[ヘキセンの製造]
上記の方法で得た1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノールの少なくとも一つを含むセルロース由来ヘキサノール1.0重量部を、別の反応容器(前述のオートクレーブと同型)に導入し、溶媒としてトリデカンを10.0重量部、酸触媒としてゼオライト(HZSM−5)を0.2重量部添加し、室温で0.6MPaとなるように窒素を導入し、約20分で所定の反応温度180℃に昇温した。反応温度に達した直後の脱水反応生成物を分析した。その結果、1−ヘキセン、2−ヘキセン、及び3−ヘキセンを含むセルロース由来ヘキセンが得られた。
【0049】
≪合成例3:ヘミセルロース由来ペンテンとセルロース由来ヘキセンの同時製造≫
[触媒等の調製]
合成例1と同様にして、触媒等を調製した。
【0050】
[ペンタノール及びヘキサノールの製造]
リグノセルロース系バイオマス由来のヘミセルロースの主成分であるキシランとリグノセルロース系バイオマス由来のセルロースには予めミル処理を施しておいた。かかるミル処理では、ボールミルのドラムにキシラン及びセルロースとともにZrO
2球を100個投入し、回転数を300rpmとし、2時間の粉砕を行った。なお、2時間以上粉砕すれば、得られるキシラン及びセルロースは十分に粉砕される。
【0051】
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したキシランとセルロースを合わせて3.3重量部を加えた。反応容器内に油相として20.0〜100.0重量部のn−ドデカンを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持し、ヘミセルロース由来ペンタノール及びセルロース由来ヘキサノールを得た。
【0052】
[ペンテン及びヘキセンの製造]
上記の方法で得た、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノールの少なくとも一つを含むヘミセルロース由来ペンタノール及び1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノールの少なくとも一つを含むセルロース由来ヘキサノール1.0重量部を、別の反応容器(前述のオートクレーブと同型)に導入し、溶媒としてトリデカンを10.0重量部、酸触媒としてゼオライト(HZSM−5)を0.2重量部添加し、室温で0.6MPaとなるように窒素を導入し、約20分で所定の反応温度180℃に昇温した。反応温度に達した直後の脱水反応生成物を分析した。その結果、1−ペンテン及び2−ペンテンを含むヘミセルロース由来ペンテン及び1−ヘキセン、2−ヘキセン、及び3−ヘキセンを含むセルロース由来ヘキセンが得られた。
【0053】
上記のような合成により、表1に記載のペンテン中の異性体比、ヘキセン中の異性体比でペンテン及びヘキセンがそれぞれ得られる。表1に記載の組成となるように、基材A〜Eを調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
≪実施例1〜9,比較例1〜3≫
表1に示される基材A〜Eを、表2〜4に記載の配合割合でベースガソリン(ベースRG1、ベースRG2)に混合し、実施例1〜9及び比較例1〜3に係るガソリン組成物を得た。得られたガソリン組成物の性状等を表2〜4に示す。ベースガソリンの性状も併せて表2に示す。表2〜4に示された性状等は、以下の方法によって測定した。
【0056】
密度:JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に従って測定した。
【0057】
蒸気圧:JIS K 2258−1「原油及び石油製品−蒸気圧の求め方 第1部:リード法」に従って測定した。
【0058】
留出温度:JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に従って測定した。
【0059】
組成:JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」に従って測定した。
【0060】
酸化安定度:JIS K 2287「ガソリン−酸化安定度試験方法 誘導期間法」に従って測定した。
【0061】
オクタン価:ベースガソリンのオクタン価はJIS K 2280「石油製品−燃料油―オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン価指数算出方法」に従って測定した。実施例及び比較例のオクタン価は、ベースガソリンのオクタン価とヘミセルロース由来ペンテン及びセルロース由来ヘキセンのオクタン価から次式(1)により算出した。
【0062】
オクタン価 =(ベースガソリンのオクタン価×ベースガソリンの混合割合(容量%)÷100)+(ヘミセルロース由来ペンテン及び/又はセルロース由来ヘキセンのオクタン価×ヘミセルロース由来ペンテン及び/又はセルロース由来ヘキセンの混合割合(容量%)÷100) ・・・(1)
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
実施例1〜9より、リグノセルロース系バイオマスからエタノールではなく、ヘキセンやペンテンを製造し、それらをガソリンに含めてもガソリンとしての性状を満たすことが分かる。ただし、比較例1〜3に示されるように、多量のヘキセンやペンテンを含むと酸化安定性が悪くなったり、50%留出温度が低くなり燃費が悪くなったりすることが分かる。
【0067】
上記のペンテンの製造により、表5に記載のペンテン中の異性体比でペンテンが得られる。表5に記載の組成となるように、基材F〜Iを調製した。
【0068】
【表5】
【0069】
≪実施例10〜13≫
表5に示される基材F〜Iを、表6に記載の配合割合でベースガソリン(ベースRG3)に混合し、実施例10〜13に係るガソリン組成物を得た。得られたガソリン組成物の性状等を表6に示す。ベースガソリンの性状も併せて表6に示す。表6に示された性状等は、実施例1と同様に測定した。
【0070】
【表6】
【0071】
実施例10〜13より、リグノセルロース系バイオマスからエタノールではなく、ペンテンを製造し、それをガソリンに含めてもガソリンとしての性状を満たすことが分かる。