(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質のバンドギャップは、前記酸化セリウムのバンドギャップより大きいことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の研磨方法。
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質は、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基板の研磨方法。
請求項1乃至6のいずれかに記載のガラス基板の研磨方法を適用して、ガラス基板の表面を研磨する処理と、少なくとも磁性膜を形成する処理とを含む磁気ディスクの製造方法。
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質のバンドギャップは、前記酸化セリウムのバンドギャップより大きいことを特徴とする請求項11に記載のガラス基板の研磨方法。
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質の伝導帯の下端のエネルギー準位は、前記酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いことを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載のガラス基板の研磨方法。
前記酸化セリウム表面における前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質の被覆率は、0.01%〜50%の範囲であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載のガラス基板の研磨方法。
請求項11乃至17のいずれかに記載のガラス基板の研磨方法を適用して、ガラス基板の表面を研磨する処理と、少なくとも磁性膜を形成する処理とを含む磁気ディスクの製造方法。
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質のバンドギャップは、前記酸化セリウムのバンドギャップより大きいことを特徴とする請求項22乃至24のいずれかに記載の酸化セリウムの還元方法。
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質は、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項22乃至25のいずれかに記載の酸化セリウムの還元方法。
前記光を受けて酸化セリウムを還元する物質の伝導帯の下端のエネルギー準位は、前記酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いことを特徴とする請求項22乃至26のいずれかに記載の酸化セリウムの還元方法。
請求項22乃至27のいずれかに記載の酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを含む研磨液を用いて、ガラス基板を研磨処理することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
請求項28乃至30のいずれかに記載のガラス基板の研磨方法を適用して、ガラス基板の表面を研磨する処理と、少なくとも磁性膜を形成する処理とを含む磁気ディスクの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
[第1の実施の形態]
本実施の形態では、主に、磁気ディスク用基板として好適な磁気ディスク用ガラス基板について説明する。
磁気ディスク用ガラス基板は、通常、ガラス基板成型、穴あけ処理、面取処理、研削処理、端面研磨処理、主表面研磨処理、等の処理を経て製造される。なお、処理の順序は上記に限定されるものではない。
【0031】
この磁気ディスク用ガラス基板の製造は、まず、溶融ガラスからダイレクトプレスにより円板状のガラス基板(ガラスディスク)を成型する。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板(ガラスディスク)を得てもよい。その後、適宜、穴あけ処理や面取処理を行い、中心部に円孔を有する円板状ガラス基板(ガラスディスク)とする。
【0032】
次に、上記円板状ガラス基板(ガラスディスク)に寸法精度及び形状精度を向上させるための研削処理を行う。この研削処理は、通常両面研削装置を用い、ガラス基板主表面の研削を行う。こうしてガラス基板主表面を研削することにより、所定の板厚、平坦度に加工するとともに、所定の表面粗さを得る。
【0033】
この研削処理の終了後は、ブラシ研磨等による端面研磨処理を行う。そして、この端面研磨処理の終了後は、高精度な主表面(鏡面)を得るための主表面研磨処理を行う。
本発明においては、ガラス基板の表面の研磨方法としては、酸化セリウムを研磨砥粒として含有する研磨液を供給しながら、ポリウレタン等の研磨パッドを用いて行うのが好適である。なお、ガラス基板の「表面」とは、円板状のガラス基板の「主表面」と「端面」の両方の面を含むものとする。なお、端面を研磨する場合は、ナイロン製等の研磨ブラシを用いて行うのが生産性と品質の観点から好適である。
【0034】
本発明は、上記のとおり、酸化セリウムを研磨砥粒として含む研磨液でガラス基板を研磨処理するガラス基板の研磨方法であって、この研磨液は、光を受けて酸化セリウムを還元する物質を含み、研磨処理に際して上記研磨液に対して光を照射する処理を含むことを特徴とするものである。
【0035】
このような研磨処理に用いられる上記研磨液は、研磨砥粒と溶媒である水の組合せであり、本発明ではさらに上記の光を受けて酸化セリウムを還元する物質が含まれ、その他の添加剤が必要に応じて含有されている。
酸化セリウム砥粒を含む研磨液を組成するには、例えば純水を用い、酸化セリウム砥粒、さらに上記の光を受けて酸化セリウムを還元する物質、その他の添加剤を必要に応じて添加して研磨液とすればよい。
【0036】
本発明において、研磨液に含有される酸化セリウム砥粒は、平均粒径が0.1〜2.0μm程度のものを使用するのが研磨効率の点からは好ましい。特に、平均粒径が0.8〜1.3μm程度のものを使用するのが好ましい。
なお、本発明において、上記平均粒径とは、光散乱法により測定された粒度分布における粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径(以下、「累積平均粒子径(50%径)」と呼ぶ。)を言う。本発明において、累積平均粒子径(50%径)は、具体的には、粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0037】
また、上記酸化セリウム砥粒としては、基本的には不純物を含まない高純度酸化セリウムを使用することができるが、本発明においてはランタン(La)を含むことも好適である。ランタン(La)を含む酸化セリウム砥粒を用いることで、研磨速度をさらに向上させることができる。ランタンの含有量は、TREO(total rare-earth oxides:研磨剤中の全希土類酸化物の量)に対する酸化ランタン(La
2O
3)の含有量として表す。
【0038】
このように酸化セリウム砥粒がランタン(La)を含む場合のランタンの含有量は、TREOに対する酸化ランタン(La
2O
3)としての含有量が、例えば1〜50%の範囲であることが好ましい。また、20〜40%であるとより好ましい。酸化ランタン(La
2O
3)の含有量が1%未満であると、ランタン(La)を含むことによる効果があまり得られない。また、酸化ランタン(La
2O
3)の含有量が50%よりも多いと、酸化セリウム成分が相対的に少なくなり、研磨速度が低下してしまうことがある。
【0039】
上記酸化セリウム砥粒の研磨液中の含有量は特に制約される必要はなく、適宜含有量を調整して用いることができるが、研磨速度とコストの観点から、例えば1〜20重量%とすることができる。なお、本発明においては、光照射によって研磨液中の酸化セリウムを還元する物質が十分に活性化する必要があるため、研磨液(スラリー)に対する紫外線等の光の侵入長を確保する観点から、研磨液中の酸化セリウム砥粒の含有量は、例えば1〜10重量%の範囲とすることがとくに好ましい。
なお、上述のランタンを含む場合の酸化セリウム砥粒の研磨液中の含有量は、上記と同様の範囲である。
【0040】
また、本発明においては、酸化セリウムが研磨砥粒の主成分として含まれる。本発明では、ガラス基板表面に対する研磨作用の主役はあくまでも酸化セリウムであり、後述する光触媒物質は酸化セリウムの研磨作用を補助する役目のためである。具体的には、研磨液中に含まれる研磨砥粒の50重量%超が酸化セリウムであることが好ましく、研磨砥粒の70重量%以上が酸化セリウムであることがより好ましく、最も好ましくは、研磨砥粒の90重量%以上が酸化セリウムである。
【0041】
本発明においては、上記研磨処理に適用する研磨液に、光を受けて酸化セリウムを還元する物質を含有させることを特徴とするものである。この光を受けて酸化セリウムを還元する物質とは、より具体的に説明すれば、光を受けて酸化セリウム砥粒を還元しうる光触媒活性を有する物質である。上記の「光を受けて」とは、例えば「光の照射により」ということである。なお、説明の便宜上、上記の光を受けて酸化セリウムを還元する物質のことを、以降、「本発明の光触媒物質」または単に「光触媒物質」と呼ぶこととする。
【0042】
このような本発明の光触媒物質としては、例えば、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩、酸化チタン、等の物質が挙げられる。これらの物質の具体的な例としては、Ga
2O
3、Ta
2O
5、LiTaO
3、NaTaO
3、KTaO
3、Nb
2O
5、LiNbO
3、NaNbO
3、KNbO
3、(K
0.5Na
0.5)NbO
3、TiO
2等を例示することができる。
酸化チタンを用いる場合、例えばアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3つの結晶形のいずれを用いてもよい。特にアナターゼ型、ブルッカイト型は光触媒活性が高く好ましい。
また、後述する評価結果から、上記の光触媒物質の中でも、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩であるものが好ましい。また、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩であるものがより好ましい。また、酸化ニオブ又はニオブ酸塩がより一層好ましい。
【0043】
酸化セリウムを研磨砥粒として含む研磨液に本発明の光触媒物質を含むことにより、前述の本発明の課題を解決できる理由、すなわち研磨速度を従来よりも向上でき、しかも研磨速度の向上効果を長期にわたって持続させることができる理由は、以下のように推察される。
【0044】
本発明者は、酸化セリウムを研磨砥粒として用いると、その他の材料の研磨砥粒に比べてガラス基板が高効率で研磨されることの理由として、酸化セリウムによるガラス表面のSi−O結合への化学的作用の寄与が大きいことを突き止めた。すなわち、酸化セリウム砥粒中の3価のセリウムイオン(又は3価のセリウム)がガラスのSi−O結合へ電子を与える(すなわち還元する)ことでその結合を弱めるため、研磨速度が向上すると考えられる。ゆえに、酸化セリウムによるガラス表面への化学的作用(還元作用)を促進させることで、上記課題を解決できることを本発明者は見出した。
【0045】
具体的には、酸化セリウムを研磨砥粒として含む研磨液に予め本発明の光触媒物質を添加しておき、この光触媒物質を含む研磨液に対して、研磨処理前又は研磨処理時に一定以上(光触媒物質のバンドギャップ以上)のエネルギーを持つ光照射を行うと、光触媒物質の電子励起が起こって活性化し、その価電子帯から伝導帯へと励起した電子が酸化セリウムへ供与され、酸化セリウムを還元する。要するに、酸化セリウムの表面に存在しているセリウム又はセリウムイオン(4価)を3価に還元する。そして、上記のとおり、3価のセリウム又はセリウムイオンはガラスのSi−Oへ電子を与えることでその結合を弱めるため、研磨速度が向上するわけである。このように3価のセリウム又はセリウムイオンの割合を多くすることでガラスに対する還元的作用が促進される。そして、この光触媒物質による酸化セリウムの還元反応は光照射を継続したり複数回行うことによって持続的に起こるものである。
【0046】
このように、光照射により活性化した光触媒物質によって酸化セリウム砥粒を還元することで、酸化セリウムの高効率な還元が可能となり、その結果、ガラスに対する還元作用も促進されて、従来よりも研磨速度が向上して高い研磨速度が得られ、且つ、高い研磨速度を長期にわたって持続させることが可能となる。
【0047】
なお、光照射を受けると、研磨砥粒として含有されている酸化セリウム自身の電子も励起されるが、この励起電子によるガラスに対する還元作用は小さいと考えられる。その理由として、酸化セリウム自身の電子が伝導帯に励起した場合、価電子帯には正孔(ホール)が形成されるので励起電子の状態が不安定であり、励起状態の寿命が短いためと推察している。一方、本発明のように、酸化セリウムが他の物質(つまり本発明の光触媒物質)から電子を供与される場合、酸化セリウムの価電子帯には正孔(ホール)がない状態で電子をもらうことができるため、励起状態の寿命が長い(すなわち還元作用が強い)と考えられる。
【0048】
本発明の光触媒物質のバンドギャップは、酸化セリウムのバンドギャップより大きいことが望ましい。
図5に示すように、このバンドギャップとは、価電子帯と伝導帯のエネルギー準位の差である。光触媒物質にそのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると電子励起が起こり、価電子帯から伝導帯へと電子が励起する。本発明の光触媒物質のバンドギャップが、酸化セリウムのバンドギャップより大きいことにより、光照射により活性化した光触媒物質による酸化セリウムの還元が効率良く起こるようになる。
【0049】
また、本発明の光触媒物質の伝導帯の下端のエネルギー準位は、酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いことが望ましい。ここでいう伝導帯の下端のエネルギー準位とは、
図5中に示した「E
CL」のことである。光照射によって光触媒物質が活性化し、その価電子帯から伝導帯へと励起した電子が酸化セリウムへ供与され、酸化セリウムを還元するが、本発明の光触媒物質の伝導帯の下端のエネルギー準位が、酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いと、光触媒物質の励起電子の酸化セリウムへの供与が効率良く起こるようになる。その結果、研磨速度が向上しやすくなる。
【0050】
なお、上記のバンドギャップや、伝導帯の下端のエネルギー準位は、以下の方法で測定することができる。
[バンドギャップの評価]
装置として、SolidSpec−3700 DUV 紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製)を使用した。
Ba
2SO
4をリファレンスとして積分球を用いた測定対象試料粉末の拡散反射率測定により反射率を求めた。得られた拡散反射スペクトルをKubelka−Munk 変換し、Kubelka-Munk表示のスペクトルを算出した。Kubelka−Munk 関数とは、試料の相対拡散反射率をRとしたとき(1- R)
2/2Rで与えられる。
この分光特性からバンドギャップを求めるために、次式
(hνα)
1/n= A(hν−E
g)
(hν:光のエネルギー、α:吸収係数、E
g:バンドギャップ、A:定数)
が一般的に用いられ、直接遷移の場合はn=1/2、間接遷移の場合はn=2となる。直接遷移型の光触媒としてバンドギャップを算出するには、横軸hν、縦軸(hνα)
2でプロットしたスペクトルに対し、まず初めに吸収の立ち上がりに相当する曲線の変曲点付近において接線を引く。続いてプロットにおける長波長側でベースラインを引き、その交点のエネルギーを読み取ることでバンドギャップの値とした。
【0051】
[価電子帯の評価]
・装置:UPS (紫外線光電子分光分析法)・・・名称:複合型電子分光分析装置 ESCA-5800 (PHI 製)
・前処理:測定対象物の粉末を金属箔に圧粉して導電性を確保した。サンプル間でのフェルミ準位の補正のために測定面の一部に金を10nm程度の厚さとなるように蒸着して実施。
得られた補正後のUPSスペクトルの立ち上がりに相当する曲線の変曲点付近において接線を引き、横軸との交点の値を読み取り、その値をフェルミ準位(E
f)と価電子帯の上端の位置のエネルギー準位差とした。これらの結果から、価電子帯の上端の位置のエネルギー準位を決定した。
【0052】
[伝導帯の評価]
上記によるバンドギャップ評価とUPSによる価電子帯の上端の位置の情報を組み合わせることで、伝導帯の下端の位置を推定した。
すなわち、UPSの評価結果から、各物質におけるE
fから価電子帯の上端の位置までのエネルギー差が分かり、その価電子帯の上端の位置から伝導帯の下端の位置までのエネルギー準位差がバンドギャップである。そのため、両者の測定結果を組み合わせることで、伝導帯の下端の位置を推定した。
【0053】
ここで、上記で例示した光触媒物質について、上記の方法で測定したバンドギャップおよび伝導帯の下端のエネルギー準位の値を下記の表1に纏めて示す。また、参考までに酸化セリウム(CeO
2)についても測定値を示す。なお、伝導帯の下端のエネルギー準位の値は、酸化セリウムの値を基準(=ゼロ)とした相対値である。
【0055】
本発明において、上述のとおり、光触媒物質のバンドギャップが、酸化セリウムのバンドギャップより大きいことが好ましい。また、光触媒物質のバンドギャップが4eV以上であるとより好ましい。すなわち、上記の例示光触媒物質の中でも、特に、Ga
2O
3、Ta
2O
5、LiNbO
3が好ましい。換言すれば、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩であって光触媒物質であるものがより好ましい。
また、本発明において、上述のとおり、光触媒物質の伝導帯の下端のエネルギー準位が、酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いことが好ましい。この観点から、上記の例示光触媒物質の中でも、特に、Ta
2O
5が好ましい。
なお、LiNbO
3についてはチャージアップ現象の発生により上記方法では伝導帯の下端のエネルギー準位を推定できなかったものの、研磨速度を向上させる効果が最も高かった(後述)。よって、酸化ニオブ又はニオブ酸塩の光触媒物質がより一層好ましい。
【0056】
上記光触媒物質の研磨液中の含有量(添加量)は、0.005重量%〜30重量%の範囲内であることが好適である。含有量が0.005重量%未満であると、本発明の作用効果が十分に得られない場合がある。一方、含有量が30重量%よりも多いと、研磨砥粒である酸化セリウムとガラス表面との接触を妨げるおそれがあり、研磨速度がかえって低下してしまう場合がある。同様の観点から、光触媒物質の研磨液中の含有量は、研磨剤の含有量よりも少ない方が好ましい。具体的には、光触媒物質の研磨液中の含有量は、研磨剤の含有量の半分以下であることがより好ましく、1/5以下であるとより一層好ましい。上記光触媒物質の研磨液中の含有量は、より好ましくは、0.01重量%〜10重量%の範囲内である。なお、含有量の上限を5重量%以下にするとさらに好ましく、3重量%以下ではさらに一層好ましい。
また、上記光触媒物質の平均粒径は、研磨剤として同時に研磨液に含まれる酸化セリウムの平均粒径の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であるとより好ましい。上記値が1/5より大きいと、酸化セリウムによる研磨を阻害して、研磨速度の低下や、研磨後の表面品質の悪化(スクラッチの発生など)を引き起こす恐れがある。
【0057】
また、本発明の酸化セリウム砥粒と光触媒物質を含む研磨液はアルカリ性で用いることが好ましい。本発明の研磨液をアルカリ性で用いることにより、研磨砥粒である酸化セリウム微粒子の凝集や沈降を防止して研磨速度を高くするとともに研磨キズを低減することができる。
【0058】
本発明において、研磨液のpHは、研磨砥粒の凝集や沈降の防止や、光触媒物質の凝集、研磨液中での偏在抑制の観点から、8〜12の範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、9〜11の範囲内である。上記研磨液のpHは、適当なアルカリ剤などを適宜添加して調整することができる。
【0059】
本発明では、研磨処理における研磨方法は特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基板の主表面の研磨処理においては、ガラス基板と研磨パッドとを接触させ、上記酸化セリウム砥粒、光触媒物質を含む研磨液を供給しながら、研磨パッドとガラス基板とを相対的に移動させて、ガラス基板の主表面を研磨すればよい。
例えば
図3は、ガラス基板の主表面の研磨処理に用いることができる遊星歯車方式の両面研磨装置の概略構成を示す縦断面図である。
図3に示す両面研磨装置は、太陽歯車2と、その外方に同心円状に配置される内歯歯車3と、太陽歯車2及び内歯歯車3に噛み合い、太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じて公転及び自転するキャリア4と、このキャリア4に保持された被研磨加工物1を挟持可能な研磨パッド7がそれぞれ貼着された上定盤5及び下定盤6と、上定盤5と下定盤6との間に研磨液を供給する研磨液供給部(図示せず)とを備えている。
【0060】
このような両面研磨装置によって、研磨処理時には、キャリア4に保持された被研磨加工物1、即ちガラス基板を上定盤5及び下定盤6とで挟持するとともに、上下定盤5,6の研磨パッド7と被研磨加工物1との間に研磨液を供給しながら、太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じてキャリア4が公転及び自転しながら、被研磨加工物1の上下両面(主表面)が研磨される。上記研磨パッドとしては樹脂ポリシャ(発泡ウレタン製または発泡ポリウレタン製)を用いることが好適である。なお、研磨速度の高速化の観点から、アスカーC硬度が75〜90の研磨パッドを用いることが好ましい。また、研磨による微小な傷の抑制の観点から、スウェードタイプの研磨パッドを用いることが好ましい。
また、研磨時に基板にかける荷重は、研磨速度と研磨品質の観点から50〜200g/cm
2であることが好ましい。
【0061】
本発明においては、研磨処理に際して研磨液に対して光を照射する処理を含む。研磨液に含まれている本発明の光触媒物質を励起させて活性化するためである。前述したように、光触媒物質に対してバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射することで電子励起が起こる。従って、使用する光触媒物質のバンドギャップに相当するエネルギーを持つ光の波長よりも短い光(大きなエネルギーの光)を照射する必要がある。上記表1に示されるように、物質によってそのバンドギャップの値は異なるが、通常、350nmより短い波長を持つ光を用いるのが望ましい。このような波長の光を発する光源としては、キセノン灯、(超)高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ等の紫外線ランプを用いることができる。
【0062】
光照射のタイミングとしては、研磨処理が実質的に開始される前に行われることが望ましく、そのためには、研磨処理の前に、または研磨処理の最中に、研磨液に対して光照射することが望ましい。たとえば、研磨装置に導入する直前の研磨液に対して光照射することが望ましい。照射時間は1秒以上とすることが好ましい。照射後の研磨液は、できるだけ速やかに研磨装置に導入するとよく、例えば30秒以内とすることが好ましく、10秒以内とするとより好ましい。
【0063】
多数枚の基板の連続研磨処理時には、途中で研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら使用されるが、本発明によれば、このような連続研磨処理が行われる場合においても、最初から研磨速度を高くでき、その効果を長く持続させることができるので、連続研磨処理時のように研磨液を循環させて使用する場合に本発明は好適である。
また、本発明においては、キャリアに複数の基板を同時に保持させ、遊星歯車運動をさせて、複数の基板の両面を同時に研磨することが好ましい。特に、1回の研磨処理(1バッチ)では10枚以上の基板を同時に研磨処理することが好ましく、50枚以上とするとより好ましい。
【0064】
なお、通常、基板主表面の研磨処理は、研削処理で残留した傷や歪みを除去し所定の平滑面にするための第1研磨処理と、ガラス基板主表面の表面粗さをより平滑な鏡面に仕上げる第2研磨処理の2段階を経て行われることが一般的である(但し、3段階以上の多段階研磨を行うこともある)が、この場合、少なくとも前段の第1研磨処理において本発明を適用することが好ましい。第1研磨処理は、通常、複数の研磨処理の中でも最も取代量が多いため、研磨速度がとりわけ重要である。なお、できるだけ取代を少なくして生産性を向上させる観点から、第1研磨処理を行うガラス基板の主表面の表面粗さは、Raで100nm以下であることが好ましい。同様に、第2研磨処理の取代を少なくする観点から、第1研磨処理は、主表面の表面粗さがRaで1.5nm以下となるように行うことが好ましい。
【0065】
また、この場合、後段の仕上げ(精密)研磨処理(第2研磨処理)は、例えば、平均粒径が10〜100nm程度のコロイダルシリカ砥粒を含む研磨液を用いて行うことが好ましい。この場合の研磨液は、研磨速度向上の観点から酸性域に調整されたものが用いられることが好適である。例えば、pHは5以下であることが好ましく、より好ましくは4以下である。また、最終洗浄での表面粗さの増加を低減する観点から、pHは1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上である。また、この仕上げ研磨用の研磨パッドとしては、軟質ポリッシャの研磨パッド(スウェードパッド)であることが好ましい。研磨方法は前記と同様である。なお、最終洗浄での表面粗さの増加をより抑制する観点から、第2研磨処理に用いる研磨液はアルカリ性であってもよい。
【0066】
本発明の研磨方法は、ガラス基板の主表面の研磨処理だけでなく、ガラス基板の端面の研磨処理においても好ましく適用することができる。
次に、ガラス基板の端面研磨処理について説明する。
【0067】
端面研磨処理では、回転ブラシ(研磨ブラシとも呼ばれる。)でガラス基板1の例えば外周端面12(
図1、
図2参照)を研磨する。なお、ガラス基板1の内周端面13に形成される面取面や側壁面を研磨する方法は同様であるので、説明を省略する。
【0068】
上記回転ブラシは、ガラス基板1の表裏の主表面11,11に対して垂直な回転軸と、該回転軸の外周に取り付けられるブラシ毛とを有する。回転ブラシは、上記回転軸を中心に回転しながら、上記ブラシ毛でガラス基板1の外周端面12の2つの面取面12b、12bおよび側壁面12aを研磨する。
【0069】
上記回転ブラシによるガラス基板1の研磨部位には、ノズルから研磨液が供給される。研磨液は研磨材を含み、本発明を適用する場合、研磨材としては酸化セリウム砥粒が用いられる。そして、この研磨液は、上記光触媒物質を含むものである。
【0070】
端面研磨処理では、複数のガラス基板1が積層され、まとめて研磨されてもよい。この場合、ガラス基板1同士の間にはスペーサが配設されてよい。また、上記回転ブラシは、回転軸を中心に回転しながら、ガラス基板1の積層方向(回転軸の中心線と平行な方向)に揺動させるようにしてもよい。
【0071】
被研磨部への研磨液供給量は、例えば5〜20リットル/分、回転ブラシの回転速度は、例えば100〜500rpm、回転ブラシの回転軸方向の揺動速度は、例えば3〜10rpm(1分間に3〜10往復する)、ガラス基板(積層体)の回転速度は、例えば50〜100rpmの範囲で適宜設定することができる。
【0072】
端面研磨処理においても、研磨処理の前に、または研磨処理の最中に、研磨液に対して光照射することが望ましい。たとえば、上記の被研磨部に導入する直前の研磨液に対して光照射することが望ましい。
また、端面研磨処理においても、研磨処理時に、研磨液の交換は行わず、研磨液を循環させて使用する場合に本発明は好適である。
【0073】
以上のようなガラス基板の端面の研磨処理においても本発明を適用することにより、研磨速度を向上でき、また、このような研磨速度向上の効果が長期間に渡って維持することができ、研磨速度の向上効果が長持ちする。
【0074】
本発明においては、ガラス基板を構成するガラスの硝種は、アルミノシリケートガラスとすることが好ましい。また、アモルファスのアルミノシリケートガラスとするとさらに好ましい。このようなガラス基板は表面を鏡面研磨することにより平滑な鏡面に仕上げることができ、また加工後の強度が良好である。このようなアルミノシリケートガラスとしては、SiO
2が58重量%以上75重量%以下、Al
2O
3が5重量%以上23重量%以下、Li
2Oが3重量%以上10重量%以下、Na
2Oが4重量%以上13重量%以下を主成分として含有するアルミノシリケートガラスを用いることができる。
【0075】
さらに、例えば、SiO
2 を62重量%以上75重量%以下、Al
2O
3を5重量%以上15重量%以下、Li
2 Oを4重量%以上10重量%以下、Na
2 Oを4重量%以上12重量%以下、ZrO
2 を5.5重量%以上15重量%以下、主成分として含有するとともに、Na
2O/ZrO
2 の重量比が0.5以上2.0以下、Al
2 O
3 /ZrO
2 の重量比が0.4以上2.5以下であるアモルファスのアルミノシリケートガラスとすることができる。
【0076】
また、次世代基板の特性として耐熱性を求められる場合もある。このようなガラス基板は、ガラス転移点(Tg)が例えば600℃以上と高い。このようなガラス基板を構成するガラス組成の例としては、下記のようなものがある。
(ガラス組成1)
本実施形態のガラス基板の組成を限定するものではないが、本実施形態のガラス基板は好ましくは、酸化物基準に換算し、質量%表示で、
SiO
2 40〜61%、
Al
2O
315〜23.5%、
MgO 2〜20%、
CaO 0.1〜40%、を含有し、
[SiO
2]+0.43×[Al
2O
3]+0.59×[CaO]−74.6≦0、かつ、
[SiO
2]+0.21×[MgO]+1.16×[CaO]−83.0≦0
である無アルカリガラスの組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスである。上記[ ]は、[ ]内のガラス成分の含有率(質量%)である。以下、上記をガラス組成1とも呼ぶ。
【0077】
(ガラス組成2)
また、その他の好ましいガラス組成として下記もあげられる。すなわち、酸化物基準に換算し、質量%表示で、
SiO
2 64〜72、
Al
2O
3 17〜22、
MgO 1〜8、
CaO 4〜15.5、
を含有し、0.20≦MgO/(MgO+CaO)≦0.41であるガラスの組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスである。以下、上記をガラス組成2とも呼ぶ。
【0078】
これらのガラス基板においては、アルカリ金属成分(Li
2O、Na
2O、K
2O)を含んでいてもよいが、Tgを高くしたい場合は含有量を少なくすることが好ましく、含まないようにするのがより好ましい。また、アルカリ金属成分を含むガラスの場合、ガラス組成によってはアルカリ金属成分の溶出が懸念される場合もあるが、その含有量を低下又はゼロ(無アルカリガラス)にすることで、溶出リスクを低減することができる。
なお、次世代の磁性膜を形成する時の加熱処理に対応するために、ガラス転移点(Tg)が600℃以上となるようにガラス組成を調整することが好ましい。ガラス転移点は、より好ましくは700℃以上、さらに好ましくは750℃以上である。特に、ガラス転移点を700℃以上とすると、700℃という非常に高い温度の熱処理にも耐えることが可能となるため、ガラス転移点は700℃以上とすることが好ましい。このようなガラス基板は、熱やマイクロ波等を用いて信号書き込み時の磁化反転をアシストするエネルギーアシスト磁気記録方式用の磁気ディスク向けに用いるガラス基板として好適である。
【0079】
本発明は、上記のようなガラス転移温度(Tg)の高い耐熱性ガラス基板の研磨処理に特に好適である。このような組成の耐熱性ガラス基板は、アルカリ金属(Li,Na,K等)の酸化物の含有量が従来使用されていたガラス基板と比べて相対的に少なく、本発明の酸化セリウム砥粒及び光触媒物質を含む研磨液を適用する研磨処理を行うことによる研磨速度低下抑制効果が高く好ましい。
【0080】
なお、本発明は、特に磁気ディスク用ガラス基板を製造する際の研磨処理に好適であるが、磁気ディスク用以外の例えば光学レンズ用ガラス、マスクブランクス用ガラス基板、液晶パネル用ガラス基板、その他の様々な用途のガラス基板を製造する際の研磨処理にも適用することが可能である。
【0081】
本発明においては、最終研磨処理後のガラス基板の表面は、算術平均表面粗さRaが0.20nm以下、特に0.15nm以下、更に好ましくは0.10nm以下であることが好ましい。更に、最大粗さRmaxが2.0nm以下、特に1.5nm以下、更に好ましくは1.0nm以下であることが好ましい。なお、本発明においてRa、Rmaxというときは、日本工業規格(JIS)B0601:1982に準拠して算出される粗さのことである。Raは算術平均粗さ、Rmaxは最大高さである。これらの表面は、鏡面であることが好ましい。
また、本発明において上記表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲(1辺が1μmの正方形の領域)を256×256ピクセルの解像度で測定したときに得られる表面形状の表面粗さとすることが実用上好ましい。ただし、Raが50nmを超える場合、触針式粗さ計を用いて表面粗さを測定することが好ましい。
【0082】
本発明においては、基板主表面の研磨処理の前または後に、化学強化処理を施してもよい。化学強化処理されたガラス基板は耐衝撃性に優れているので、例えばモバイル用途のHDDに搭載するのに特に好ましい。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属硝酸塩を好ましく用いることができる。例えば、それらの混合物の溶融塩である化学強化液中にガラス基板を浸漬することにより化学強化処理を行なうことができる。
【0083】
本発明のガラス基板の研磨方法を適用した研磨処理を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造によって、
図1および
図2に示すように、両主表面11,11と、その間に外周側端面12、内周側端面13を有する円板状のガラス基板1が得られる。外周側端面12は、側壁面12aと、その両側の主表面との間にある面取面12b、12bによりなる。内周側端面13についても同様の形状である。
【0084】
以上説明したように、本発明によれば、酸化セリウムを研磨砥粒とするガラス基板の研磨処理において、従来よりも高い研磨速度を達成でき、しかもこのような高い研磨速度を長期にわたって持続できるので、たとえば処理中に研磨液の交換は行わずに連続研磨処理に行う場合に好適である。本発明のガラス基板の研磨方法は、特に磁気ディスク用ガラス基板の研磨処理に好適である。そして、本発明によって得られる例えば磁気ディスク用ガラス基板は、生産性が高く、特に基板表面品質への要求が現行よりもさらに厳しいものとなっている次世代用の基板として好適に使用することが可能である。
【0085】
また、本発明は、以上の磁気ディスク用ガラス基板を用いた磁気ディスクの製造方法についても提供する。
磁気ディスクは、本発明により得られる磁気ディスク用ガラス基板の上に少なくとも磁性膜を形成して製造される。磁性膜の材料としては、異方性磁界の大きな六方晶系であるCoCrPt系やCoPt系、FePt系などの強磁性合金を用いることができる。磁性膜の形成方法としてはスパッタリング法、例えばDCマグネトロンスパッタリング法を用いることが好適である。
【0086】
また、磁性膜の上に、保護層、潤滑層をこの順に形成することが好ましい。保護層としてはアモルファスの水素化炭素系保護層が好適である。また、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル系化合物の潤滑剤を用いることができる。
本発明によって得られる磁気ディスク用ガラス基板を用いることにより、たとえばDFH機能を搭載した低浮上量設計の磁気ヘッドと組み合わせた場合においても長期に安定した動作が可能な信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
【0087】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、研磨砥粒を含む研磨液でガラス基板を研磨処理するガラス基板の研磨方法であって、この研磨液は、光を受けて酸化セリウムを還元する物質を表面に有する酸化セリウムを研磨砥粒として含み、研磨処理に際して上記研磨液に対して光を照射する処理を含むことを特徴とするものである。
【0088】
本実施の形態においては、上記研磨処理に適用する研磨液に、光を受けて酸化セリウムを還元する物質を表面に有する酸化セリウムを研磨砥粒として含有させる。この光を受けて酸化セリウムを還元する物質は、第1の実施の形態の場合と同様のものであり、光を受けて酸化セリウム砥粒を還元しうる光触媒活性を有する物質が好ましく挙げられる。従って、本実施の形態においても、上記の光を受けて酸化セリウムを還元する物質のことを、以降、「本発明の光触媒物質」または単に「光触媒物質」と呼ぶこととする。
【0089】
このような本発明の光触媒物質としては、第1の実施の形態と同様、例えば、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩、酸化チタン、等の物質が挙げられる。これらの物質の具体的な例としては、Ga
2O
3、Ta
2O
5、LiTaO
3、NaTaO
3、KTaO
3、Nb
2O
5、LiNbO
3、NaNbO
3、KNbO
3、(K
0.5Na
0.5)NbO
3、TiO
2等を例示することができる。酸化チタンを用いる場合、例えばアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3つの結晶形のいずれを用いてもよい。特にアナターゼ型、ブルッカイト型は光触媒活性が高く好ましい。
【0090】
本発明の光触媒物質を表面に有する酸化セリウムを研磨砥粒として含む研磨液でガラス基板を表面処理することにより、前述の本発明の課題を解決できる理由、すなわち研磨速度を従来よりも向上でき、しかも研磨速度の向上効果を長期にわたって持続させることができる理由は、前述の第1の実施の形態の場合と同様の理由によるものと推察されるが、とくに本実施の形態においては、酸化セリウム砥粒の表面に光触媒物質を有しており、酸化セリウム砥粒の表面に光触媒物質が接触して存在しているため、光触媒物質から酸化セリウムへの電子の移動が効率よく起こり、つまり上記光触媒物質による酸化セリウムの還元作用が効率よく起こるので、研磨速度の向上効果がより高くなる。
【0091】
なお、光照射を受けると、酸化セリウム自身も照射光を吸収するため、研磨液中に酸化セリウム砥粒と光触媒物質がそれぞれ単独に存在していると、酸化セリウムによる照射光の吸収は、光触媒物質の照射光吸収・活性化を阻害する可能性が考えられるが、本実施の形態においては、上記のとおり、酸化セリウム砥粒の表面に光触媒物質が接触した状態で存在しているため、照射光は酸化セリウムよりも光触媒物質に対して優先的に吸収されるようになる。したがって、本実施の形態においては、酸化セリウム自身の照射光吸収による光触媒物質の照射光吸収・活性化を阻害することは効果的に抑制されるため、この点でも、光触媒物質による酸化セリウムの還元作用が効率よく起こるようになる。
【0092】
本実施の形態においても、第1の実施の形態の場合と同様の理由により、本発明の光触媒物質のバンドギャップは、酸化セリウムのバンドギャップより大きいことが望ましい。また、本発明の光触媒物質の伝導帯の下端のエネルギー準位は、酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いことが望ましい。
なお、上記のバンドギャップや、伝導帯の下端のエネルギー準位、及びこれらの測定方法は、前述の実施の形態で説明したとおりである。例示した光触媒物質のバンドギャップ、伝導帯の下端のエネルギー準位は、前出の表1に示した通りである。
【0093】
上記の光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒は、たとえば、以下のようにして製造することができる。
すなわち、混合槽と高速回転する羽根等の部材を備えたミキサを使用し、混合槽内に酸化セリウム砥粒と光触媒物質を入れて混合し、さらにせん断応力が加えられることで、混合槽内の酸化セリウム砥粒と光触媒物質同士が強く擦り付けられる。この場合の酸化セリウム砥粒と光触媒物質の各配合量は、酸化セリウム表面における光触媒物質の被覆率などを考慮して適宜決定すればよい。こうして、酸化セリウム砥粒の表面に光触媒物質が付着、接触した状態で存在する酸化セリウム砥粒が得られる。もちろん、このような製法に限定される必要はない。光触媒物質の粒径は、酸化セリウムの粒径の1/10以下であることが好ましい。光触媒物質の粒径が酸化セリウムの粒径の1/10より大きい場合、酸化セリウム表面への付着力が低下し、繰り返し使用した際に容易に離れてしまう恐れがある。
【0094】
本発明の光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒は、酸化セリウム表面における光触媒物質の被覆率が、0.01%〜50%の範囲であることが好ましい。上記光触媒物質の被覆率が0.01%未満であると、本発明の作用効果が十分に得られない場合がある。一方、上記光触媒物質の被覆率が50%よりも高いと、研磨砥粒である酸化セリウムとガラス表面との接触量が低下するため、研磨速度がかえって低下してしまう場合がある。上記光触媒物質の被覆率は、より好ましくは、0.1%〜30%の範囲である。
なお、上記光触媒物質の被覆率は、たとえば、XRD(X-ray Diffraction)による構造解析や含有量解析、SEM(Scanning Electron Microscope)による表面観察や、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による元素分析及び元素マッピングなどの解析方法を適宜適用して評価することが可能である。例えば、SEMによる表面観察像をEDXにて元素分析して得た元素マッピング画像を用い、画像処理により二値化する手法を用いて比率を評価することができる。
【0095】
本発明の研磨処理に用いられる上記研磨液は、研磨砥粒と溶媒である水の組合せであり、本実施形態では、研磨砥粒として、上記の光触媒物質を表面に有する酸化セリウムが含まれ、その他の添加剤が必要に応じて含有されている。研磨砥粒を含む研磨液を組成するには、例えば純水を用い、上記の光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒、その他の添加剤を必要に応じて添加して研磨液とすればよい。
【0096】
上記光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒は、平均粒径が0.1〜2.0μm程度のものを使用するのが研磨効率の点からは好ましい。特に、平均粒径が0.8〜1.3μm程度のものを使用するのが好ましい。
【0097】
また、上記光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒における酸化セリウムは、基本的には不純物を含まない高純度酸化セリウムを使用することができるが、本発明においてはランタン(La)を含むことも好適である。ランタン(La)を含む酸化セリウム砥粒を用いることで、研磨速度をさらに向上させることができる。ランタンの含有量は、TREO(total rare-earth oxides:研磨剤中の全希土類酸化物の量)に対する酸化ランタン(La
2O
3)の含有量として表す。
【0098】
このように酸化セリウム砥粒がランタン(La)を含む場合のランタンの含有量は、TREOに対する酸化ランタン(La
2O
3)としての含有量が、例えば1〜50%の範囲であることが好ましい。また、20〜40%であるとより好ましい。酸化ランタン(La
2O
3)の含有量が1%未満であると、ランタン(La)を含むことによる効果があまり得られない。また、酸化ランタン(La
2O
3)の含有量が50%よりも多いと、酸化セリウム成分が相対的に少なくなり、研磨速度が低下してしまうことがある。
【0099】
上記光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒の研磨液中の含有量は特に制約される必要はなく、適宜含有量を調整して用いることができるが、研磨速度とコストの観点から、例えば1〜20重量%とすることができる。
なお、上述のランタンを含む場合の酸化セリウム砥粒の研磨液中の含有量は、上記と同様の範囲である。
【0100】
また、本発明においては、光触媒物質を表面に有する酸化セリウムが研磨砥粒の主成分として含まれる。具体的には、研磨液中に含まれる研磨砥粒の50重量%超が上記酸化セリウムであることが好ましく、研磨砥粒の70重量%以上が上記酸化セリウムであることがより好ましく、最も好ましくは、研磨砥粒の90重量%以上が上記酸化セリウムである。
【0101】
また、本発明の光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を含む研磨液はアルカリ性で用いることが好ましい。本発明の研磨液をアルカリ性で用いることにより、研磨砥粒である上記酸化セリウム微粒子の凝集や沈降を防止して研磨速度を高くするとともに研磨キズを低減することができる。研磨液のpHは、研磨砥粒の凝集や沈降の防止や、光触媒物質の(凝集、研磨液中での偏在)抑制の観点から、8〜12の範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、9〜11の範囲内である。上記研磨液のpHは、適当なアルカリ剤などを適宜添加して調整することができる。
【0102】
研磨処理における研磨方法、研磨条件等については、前述の第1の実施形態の場合と同様である。
本実施の形態においても、研磨処理に際して研磨液に対して光を照射する処理を含む。研磨液に含まれている酸化セリウム砥粒の表面に有する本発明の光触媒物質を励起させて活性化するためである。前述したように、光触媒物質に対してバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射することで電子励起が起こるため、使用する光触媒物質のバンドギャップに相当するエネルギーを持つ光の波長よりも短い光(大きなエネルギーの光)を照射する必要がある。物質によってそのバンドギャップの値は異なるが、通常、350nmより短い波長を持つ光を用いるのが望ましく、このような波長の光を発する光源としては、キセノン灯、(超)高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ等の紫外線ランプを用いることができる。
【0103】
光照射のタイミングとしては、研磨処理が実質的に開始される前に行われることが望ましく、そのためには、研磨処理の前に、または研磨処理の最中に、研磨液に対して光照射することが望ましい。たとえば、研磨装置に導入する直前の研磨液に対して光照射することが望ましい。照射時間は1秒以上とすることが好ましい。照射後の研磨液は、できるだけ速やかに研磨装置に導入するとよく、例えば30秒以内とすることが好ましく、10秒以内とするとより好ましい。
【0104】
多数枚の基板の連続研磨処理時には、途中で研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら使用されるが、本発明によれば、このような連続研磨処理が行われる場合においても、最初から研磨速度を高くでき、その効果を長く持続させることができるので、連続研磨処理時のように研磨液を循環させて使用する場合に本発明は好適である。
【0105】
通常、基板主表面の研磨処理は、研削処理で残留した傷や歪みを除去し所定の平滑面にするための第1研磨処理と、ガラス基板主表面の表面粗さをより平滑な鏡面に仕上げる第2研磨処理の2段階を経て行われることが一般的である(但し、3段階以上の多段階研磨を行うこともある)が、この場合、少なくとも前段の第1研磨処理において本実施形態を適用することが好ましい。また、後段の仕上げ(精密)研磨処理(第2研磨処理)は、例えば、平均粒径が10〜100nm程度のコロイダルシリカ砥粒を含む研磨液を用いて行うことが好ましいが、詳細は第1の実施形態で説明したとおりである。
【0106】
本実施形態の研磨方法は、ガラス基板の主表面の研磨処理だけでなく、ガラス基板の端面の研磨処理においても好ましく適用することができる。ガラス基板の端面研磨処理については、第1の実施形態で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
ガラス基板の端面の研磨処理においても本実施形態を適用することにより、研磨速度を向上でき、また、このような研磨速度向上の効果が長期間に渡って維持することができ、研磨速度の向上効果が長持ちする。
【0107】
本実施形態の研磨対象であるガラス基板についても、第1の実施形態で説明したとおりである。本実施形態においても、ガラス転移温度(Tg)の高い耐熱性ガラス基板の研磨処理に特に好適である。このような組成の耐熱性ガラス基板は、アルカリ金属(Li,Na,K等)の酸化物の含有量が従来使用されていたガラス基板と比べて相対的に少なく、本発明の光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を含む研磨液を適用する研磨処理を行うことによる研磨速度低下抑制効果が高く好ましい。
【0108】
以上説明したように、本実施形態の研磨方法によれば、光触媒物質を表面に有する酸化セリウムを研磨砥粒とするガラス基板の研磨処理において、従来よりも高い研磨速度を達成でき、しかもこのような高い研磨速度を長期にわたって持続できるので、たとえば処理中に研磨液の交換は行わずに連続研磨処理に行う場合に好適である。特に磁気ディスク用ガラス基板の研磨処理に好適である。
なお、以上の第2の実施の形態において、前述の第1の実施の形態の場合と同様の点については詳細な説明は省略しているが、第1の実施の形態を同様に適用すればよい。
【0109】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、ガラス基板を研磨処理する際に用いる研磨液中に研磨砥粒として含まれる酸化セリウムの還元方法であって、光を受けて酸化セリウムを還元する物質が固定され、且つ、この酸化セリウムを還元する物質に対して光が照射された領域を、前記酸化セリウムを含む研磨液が通過することによって、前記酸化セリウムを還元させることを特徴とするものである。
また、本実施の形態は、このような酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを含む研磨液を用いて、ガラス基板を研磨処理することを特徴とするものである。
【0110】
図4は、本発明の酸化セリウムの還元方法の一実施形態を示す概略断面図である。
図4に示すように、2本のガラス管20,21が、そのうちの径の大きい方のガラス管20の内部に、径の小さい方のガラス管21が内挿された状態で配置されている。これらのガラス管20,21としては、紫外光の透過性の点で、例えば石英管などを用いるのが好ましい。
【0111】
そして、ガラス管20とガラス管21との間に形成される領域(そのギャップはガラス管20とガラス管21との径の差)内には、粒子状の光を受けて酸化セリウムを還元する物質22が充填された状態で固定されている。なお、この場合、上記の酸化セリウムを還元する物質が自由に動くことのない程度の充填率で充填されることが望ましい。
【0112】
また、上記ガラス管20の外部には、紫外光(UV光)を発する光源24が、上記ガラス管21の内部には、紫外光(UV光)を発する光源25がそれぞれ配置されており、上記の酸化セリウムを還元する物質が充填された領域に対して、その内部および外部から光照射が行われる。なお、上記の光源24と光源25のいずれか一方のみを配置し、上記の酸化セリウムを還元する物質が充填された領域に対して、その内部、外部のいずれか一方から光照射を行うようにしてもよい。
【0113】
そして、ガラス管20とガラス管21との間に形成される領域、つまり上記の光を受けて酸化セリウムを還元する物質22が充填された領域内を、酸化セリウムを含む研磨液を通過させ、その際に上記の光源を用いて光照射を行うことによって、研磨液中の酸化セリウムを還元させることができる。
本発明においては、上記の酸化セリウムを還元する物質を励起させて活性化させる。この酸化セリウムを還元する物質に対してバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射することで電子励起が起こる。従って、使用する上記物質のバンドギャップに相当するエネルギーを持つ光の波長よりも短い光(大きなエネルギーの光)を照射する必要がある。前記の表1に示されるように、物質によってそのバンドギャップの値は異なるが、通常、350nmより短い波長を持つ光を用いるのが望ましい。このような波長の光を発する光源としては、キセノン灯、(超)高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ等の紫外線ランプを用いることができる。
【0114】
この光を受けて酸化セリウムを還元する物質は、第1の実施の形態の場合と同様のものであり、光を受けて酸化セリウム砥粒を還元しうる光触媒活性を有する物質が好ましく挙げられる。従って、本実施の形態においても、上記の光を受けて酸化セリウムを還元する物質のことを、以降、「本発明の光触媒物質」または単に「光触媒物質」と呼ぶこととする。
【0115】
このような本発明の光触媒物質としては、第1の実施の形態と同様、例えば、酸化ガリウム、酸化タンタル、タンタル酸塩、酸化ニオブ、ニオブ酸塩、酸化チタン、等の物質が挙げられる。これらの物質の具体的な例としては、Ga
2O
3、Ta
2O
5、LiTaO
3、NaTaO
3、KTaO
3、Nb
2O
5、LiNbO
3、NaNbO
3、KNbO
3、(K
0.5Na
0.5)NbO
3、TiO
2等を例示することができる。酸化チタンを用いる場合、例えばアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3つの結晶形のいずれを用いてもよい。特にアナターゼ型、ブルッカイト型は光触媒活性が高く好ましい。
【0116】
このような本発明の光触媒物質を用いた酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを含む研磨液を用いて、ガラス基板を研磨処理することにより、前述の本発明の課題を解決できる理由、すなわち研磨速度を従来よりも向上でき、しかも研磨速度の向上効果を長期にわたって持続させることができる理由は、前述の第1の実施の形態の場合と同様の理由によるものと推察される。すなわち、前述したように、研磨速度を向上させるためには、酸化セリウムによるガラスに対する還元作用を促進させることが必要である。そのためには、ガラスに対する還元作用に寄与する3価のセリウム又はセリウムイオンの割合を多くする必要があり、上記の光触媒物質による酸化セリウムの還元が効率的に行われることが望ましい。本発明の酸化セリウムの還元方法では、上述の
図4に示すような一実施形態からも明らかなように、光触媒物質が充填された領域内において光触媒物質は実質的に固定されて自由に移動することがないため、光照射によって光触媒物質を効率よく励起させて活性化することが可能であるとともに、光触媒物質が充填された領域内を、酸化セリウムを含む研磨液を通過させることにより、酸化セリウムと光触媒物質との接触を高効率で起こすことができるので、その結果、酸化セリウムを効率的に還元することが可能となる。
【0117】
また、本発明の酸化セリウムの還元方法を適用すると、光触媒物質が研磨液には含まれないので、研磨処理および洗浄処理後の基板表面に光触媒物質に起因する異物付着が発生するのを抑制できる。
なお、光照射を受けると、研磨砥粒として含有されている酸化セリウム自身の電子も励起されるが、本発明においては、上記のとおり、光触媒物質が充填された領域内を、酸化セリウムを含む研磨液を通過させるため、照射光は効率よく光触媒物質に吸収されるので、照射光が酸化セリウムに吸収されて光触媒物質に到達しないリスクを抑制できる。仮に、酸化セリウムが照射光を吸収した場合、その励起電子によるガラスに対する還元作用は小さいと考えられる。その理由として、酸化セリウム自身の電子が伝導帯に励起した場合、価電子帯には正孔(ホール)が形成されるので励起電子の状態が不安定であり、励起状態の寿命が短いためと推察している。本発明のように、酸化セリウムが他の物質(つまり本発明の光触媒物質)から電子を供与される場合、酸化セリウムの価電子帯には正孔(ホール)がない状態で電子をもらうことができるため、励起状態の寿命が長い(すなわち還元作用が強い)と考えられる。
【0118】
本実施の形態においても、第1の実施の形態の場合と同様の理由により、本発明の光触媒物質のバンドギャップは、酸化セリウムのバンドギャップより大きいことが望ましい。また、本発明の光触媒物質の伝導帯の下端のエネルギー準位は、酸化セリウムの伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高いことが望ましい。
なお、上記のバンドギャップや、伝導帯の下端のエネルギー準位、及びこれらの測定方法は、前述の実施の形態で説明したとおりである。例示した光触媒物質のバンドギャップ、伝導帯の下端のエネルギー準位は、前出の表1に示した通りである。
【0119】
本発明の酸化セリウムの還元方法において、上述の
図4に示すような実施形態では、ガラス管20とガラス管21との間に形成される領域に充填される上記光触媒物質は、粒径が1.5mm以上のものを使用するのが好ましい。上記光触媒物質の粒径の小さいもの(1.5mm未満)をこの領域内で自由に動かない程度に充填すると、粒子間の隙間がほとんどなくなり、この領域内を研磨液が通過することが困難になるからである。
【0120】
また、本発明では、上記の光触媒物質を表面に付着させた(表面に有する)担体粒子が、ガラス管20とガラス管21との間に形成される領域に充填されていてもよい。つまり、製造コストが有利であるなどの点で、全体が光触媒物質からなる粒子の代わりに、光触媒物質を表面に付着させた担体粒子を用いてもよい。この場合の担体粒子としては、ジルコニア、アルミナ、ガラス、炭化ケイ素、ナイロン、ポリウレタン等の粒子が挙げられる。担体粒子の粒径は、上記と同じ理由から1.5mm以上のものを使用するのが好ましい。またこのとき、担体粒子の表面に付着させる光触媒物質の粒径は、担体粒子の粒径の1/1000以下とすることが好ましい。担体粒子が比較的大きい場合、付着させる物質の粒径が担体粒子の粒径の1/1000より大きいと、担体粒子の表面への付着力が低下し、長時間使用した際に容易に離れてしまい研磨液中に混入する恐れがある。
【0121】
上記の光触媒物質を表面に付着させた担体粒子は、たとえば、以下のようにして製造することができる。
すなわち、混合槽と高速回転する羽根等の部材を備えたミキサを使用し、混合槽内にジルコニアビーズ等の担体粒子と光触媒物質を入れて混合し、さらにせん断応力が加えられることで、混合槽内の担体粒子と光触媒物質同士が強く擦り付けられる。この場合の担体粒子と光触媒物質の各配合量は、担体粒子表面における光触媒物質の被覆率などを考慮して適宜決定すればよい。こうして、粒子の表面に光触媒物質が付着した担体粒子が得られる。もちろん、このような製法に限定される必要はない。
【0122】
上記の担体粒子表面における光触媒物質の被覆率は、30%以上であることが望ましく、50%以上であるとより望ましい。上記光触媒物質の被覆率が30%未満であると、本発明の作用効果が十分に得られない場合がある。
なお、上記光触媒物質の被覆率は、たとえば、XRD(X-ray Diffraction)による構造解析や含有量解析、SEM(Scanning Electron Microscope)による表面観察や、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による元素分析及び元素マッピングなどの解析方法を適宜適用して評価することが可能である。例えば、SEMによる表面観察像をEDXにて元素分析して得た元素マッピング画像を用い、画像処理により二値化する手法を用いて比率を評価することができる。
【0123】
なお、本発明の酸化セリウムの還元方法の実施形態は、上述の
図4に示す実施形態に限定されるものではないことは勿論である。
【0124】
このような酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを研磨砥粒とする研磨処理に用いられる研磨液は、研磨砥粒と溶媒である水の組合せである。酸化セリウム砥粒を含む研磨液を組成するには、例えば純水を用い、酸化セリウム砥粒、その他の添加剤を必要に応じて添加して研磨液とすればよい。
【0125】
研磨液に含有される酸化セリウム砥粒は、平均粒径が0.1〜2.0μm程度のものを使用するのが研磨効率の点からは好ましい。特に、平均粒径が0.8〜1.3μm程度のものを使用するのが好ましい。
【0126】
また、上記酸化セリウム砥粒は、基本的には不純物を含まない高純度酸化セリウムを使用することができるが、本発明においてはランタン(La)を含むことも好適である。ランタン(La)を含む酸化セリウム砥粒を用いることで、研磨速度をさらに向上させることができる。ランタンの含有量は、TREO(total rare-earth oxides:研磨剤中の全希土類酸化物の量)に対する酸化ランタン(La
2O
3)の含有量として表す。
【0127】
このように酸化セリウム砥粒がランタン(La)を含む場合のランタンの含有量は、TREOに対する酸化ランタン(La
2O
3)としての含有量が、例えば1〜50%の範囲であることが好ましい。また、20〜40%であるとより好ましい。酸化ランタン(La
2O
3)の含有量が1%未満であると、ランタン(La)を含むことによる効果があまり得られない。また、酸化ランタン(La
2O
3)の含有量が50%よりも多いと、酸化セリウム成分が相対的に少なくなり、研磨速度が低下してしまうことがある。
【0128】
上記酸化セリウム砥粒の研磨液中の含有量は特に制約される必要はなく、適宜含有量を調整して用いることができるが、研磨速度とコストの観点から、例えば1〜20重量%とすることができる。なお、本実施形態においては、光照射によって研磨液中の酸化セリウムを還元する物質が十分に活性化する必要があるため、研磨液(スラリー)に対する紫外線等の光の侵入長を確保する観点から、研磨液中の酸化セリウム砥粒の含有量は、例えば1〜10重量%の範囲とすることがとくに好ましい。
なお、上述のランタンを含む場合の酸化セリウム砥粒の研磨液中の含有量は、上記と同様の範囲である。
【0129】
また、本実施形態においても、酸化セリウムが研磨砥粒の主成分として含まれるため、研磨液中に含まれる研磨砥粒の50重量%超が酸化セリウムであることが好ましく、研磨砥粒の70重量%以上が酸化セリウムであることがより好ましく、最も好ましくは、研磨砥粒の90重量%以上が酸化セリウムである。
【0130】
また、本実施形態においても、酸化セリウム砥粒を含む研磨液はアルカリ性で用いることが好ましい。研磨液をアルカリ性で用いることにより、研磨砥粒である上記酸化セリウム微粒子の凝集や沈降を防止して研磨速度を高くするとともに研磨キズを低減することができる。研磨液のpHは、研磨砥粒の凝集や沈降の防止の観点から、8〜12の範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、9〜11の範囲内である。
【0131】
研磨処理における研磨方法、研磨条件等については、前述の第1の実施形態の場合と同様である。研磨液としては、本発明の酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウム砥粒を含む研磨液を用いることが勿論好ましい。
本発明では、例えば上述の
図4に示すような実施形態にしたがって、還元された酸化セリウム砥粒を含む研磨液をそのまま研磨装置に供給して研磨処理を行うことができる。また、例えば上述の
図4に示すような実施形態にしたがって、還元された酸化セリウム砥粒を含む研磨液を研磨装置に供給する前に、pHや砥粒濃度の調整、添加剤の添加などを適宜行ってもよい。多数枚の基板の連続研磨処理時には、途中で研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら使用されるが、本発明によれば、このような連続研磨処理が行われる場合においても、最初から研磨速度を高くでき、その効果を長く持続させることができるので、連続研磨処理時のように研磨液を循環させて使用する場合に本発明は好適である。
【0132】
通常、基板主表面の研磨処理は、研削処理で残留した傷や歪みを除去し所定の平滑面にするための第1研磨処理と、ガラス基板主表面の表面粗さをより平滑な鏡面に仕上げる第2研磨処理の2段階を経て行われることが一般的である(但し、3段階以上の多段階研磨を行うこともある)が、この場合、少なくとも前段の第1研磨処理において本発明を適用することが好ましい。また、後段の仕上げ(精密)研磨処理(第2研磨処理)は、例えば、平均粒径が10〜100nm程度のコロイダルシリカ砥粒を含む研磨液を用いて行うことが好ましいが、詳細は第1の実施形態で説明したとおりである。
【0133】
本実施形態による酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを含む研磨液を用いた研磨方法は、ガラス基板の主表面の研磨処理だけでなく、ガラス基板の端面の研磨処理においても好ましく適用することができる。ガラス基板の端面研磨処理については、第1の実施形態で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
ガラス基板の端面の研磨処理においても本実施形態を適用することにより、研磨速度を向上でき、また、このような研磨速度向上の効果が長期間に渡って維持することができ、研磨速度の向上効果が長持ちする。
【0134】
本実施形態の研磨対象であるガラス基板についても、第1の実施形態で説明したとおりである。本実施形態においても、ガラス転移温度(Tg)の高い耐熱性ガラス基板の研磨処理に特に好適である。このような組成の耐熱性ガラス基板は、アルカリ金属(Li,Na,K等)の酸化物の含有量が従来使用されていたガラス基板と比べて相対的に少なく、本実施形態による酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを含む研磨液を適用する研磨処理を行うことによる研磨速度低下抑制効果が高く好ましい。
【0135】
以上説明したように、本実施形態によれば、ガラス基板を研磨処理する際に用いる研磨液中に研磨砥粒として含まれる酸化セリウムを効率的に還元できる酸化セリウムの還元方法を提供することができる。また、このような酸化セリウムの還元方法により還元された酸化セリウムを含む研磨液を用いてガラス基板の研磨処理を行うことにより、従来よりも高い研磨速度を達成でき、しかもこのような高い研磨速度を長期にわたって持続できる。また、本発明の酸化セリウムの還元方法を適用すると、光触媒物質が研磨液には含まれないので、研磨処理および洗浄処理後の基板表面に光触媒物質に起因する異物付着が発生するのを抑制できる。また、上記のとおり高い研磨速度を長期にわたって持続できるので、たとえば処理中に研磨液の交換は行わずに連続研磨処理に行う場合に好適である。特に磁気ディスク用ガラス基板の研磨処理に好適である。
なお、以上の第3の実施の形態において、前述の第1又は第2の実施の形態の場合と同様の点については詳細な説明は省略しているが、第1又は第2の実施の形態を同様に適用すればよい。
【実施例】
【0136】
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例は、上記の第1の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例1)
以下の(1)粗研削処理、(2)形状加工処理、(3)精研削処理、(4)端面研磨処理、(5)主表面第1研磨処理、(6)主表面第2研磨処理、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0137】
(1)粗研削処理
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.0mmの円板状のアルミノシリゲートガラスからなるガラス基板を得た。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO
2:58〜75重量%、Al
2O
3:5〜23重量%、Li
2O:3〜10重量%、Na
2O:4〜13重量%を含有するガラスを使用した。なお、Al
2O
3の含有量は、モル%換算で8.5モル%とした。以下、この硝材を硝材1と呼ぶ。
【0138】
次いで、このガラス基板に寸法精度及び形状精度の向上させるためアルミナ系の遊離砥粒を用いて粗研削処理を行った。この粗研削処理は両面研削装置を用いて行った。
【0139】
(2)形状加工処理
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、外周端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
【0140】
(3)精研削処理
この精研削処理は両面研削装置を用い、ダイヤモンド砥粒を樹脂で固定したペレットが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させてクーラントを供給しつつ行なった。精研削処理後の基板主表面の粗さは、Raで100nm以下であった。ただし、精研削処理後の表面粗さは、触針式粗さ計を用いて測定した。
上記精研削処理を終えたガラス基板を洗浄した。
【0141】
(4)端面研磨処理
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)を研磨した。端面研磨処理後の基板端面の粗さは、Raで100nm以下であった。そして、上記端面研磨を終えたガラス基板を洗浄した。
【0142】
(5)主表面第1研磨処理
次に、上述した研削処理で残留した傷や歪みを除去し所定の平滑面にするための第1研磨処理を前述の
図3に示す両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッド7が貼り付けられた上下研磨定盤5,6の間にキャリア4により保持したガラス基板を密着させ、このキャリア4を太陽歯車2と内歯歯車3とに噛合させ、上記ガラス基板を上下定盤5,6によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して各歯車と上下定盤をそれぞれ回転させることによって、ガラス基板が定盤5,6上で自転しながら公転して遊星歯車機構により両面を同時に研磨加工するものである。具体的には、ポリシャ(研磨パッド)としてアスカーC硬度が80のスウェードタイプのポリシャ(発泡ポリウレタン製)を用い、第1研磨処理を実施した。
【0143】
研磨液としては、10重量%の酸化ランタンを含まない酸化セリウム(平均粒径1μm)を研磨砥粒として含み、さらに光触媒物質としてTiO
2(平均粒径100nm)を1.0重量%含み、pH=10のアルカリ性のものを使用した。TiO
2は、ルチル結晶構造の含有率が20%以下のアナターゼ結晶構造を主成分とするものを使用した。また、両面研磨装置に導入する直前の研磨液に対して、3cm離れた距離から、紫外線ランプ(波長254nm)を照射した。なお、研磨液を供給する供給管は、紫外線ランプを照射する部分では透明な材質で形成されており、供給管の外から照射された紫外線が供給管内部の研磨液に照射されるように構成されている。研磨液の流速から計算される照射時間は3.5秒間である。研磨後の研磨液を回収して循環させて使用する場合は、研磨機の直前において繰り返し紫外線が照射される。研磨液が照射部から研磨機内部に供給されるまでの時間は約5秒である。また、研磨荷重は120g/cm
2、取代は板厚換算で30μmとした。研磨後の基板表面の粗さはRaで1.5nm以下であった。
上記第1研磨処理は、研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら使用し、連続20バッチ(1バッチ100枚)を処理した。上記第1研磨処理を終えたガラス基板を洗浄した。
【0144】
(6)主表面第2研磨処理
次いで上記の第1研磨処理で使用したものと同様の両面研磨装置を用い、ポリシャをアスカーC硬度が70の軟質ポリシャ(スウェードタイプ)の研磨パッド(発泡ポリウレタン製)に替えて第2研磨処理を実施した。この第2研磨処理は、ガラス基板主表面の表面粗さをより平滑な鏡面に仕上げる、例えばガラス基板主表面の表面粗さをRaで0.2nm以下、Rmaxで2nm以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨処理である。研磨液としては、10重量%のコロイダルシリカ(平均粒径15nm)を研磨砥粒として含む研磨液を使用した。なお、研磨液のpHは、予め硫酸を添加して酸性(pH=2)に調整した。また、研磨荷重は100g/cm
2、取代は板厚換算で3μmとした。
【0145】
次に、上記第2研磨処理を終えたガラス基板を洗浄処理(最終洗浄処理)した。具体的には、アルカリ性洗剤を純水に添加した洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄を行った。その後、ガラス基板を純水で十分にリンスした後、乾燥させた。
上記各処理を経て得られたガラス基板について、上記最終洗浄処理後のガラス基板主表面の表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Raで0.2nm以下、Rmaxで2nm以下の平滑な鏡面に仕上がっていた。
【0146】
(実施例2〜4)
上記実施例1における主表面第1研磨処理に用いる研磨液に含有させた光触媒物質を、Ga
2O
3(β-Ga
2O
3)、Ta
2O
5、LiNbO
3にそれぞれ替えた研磨液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4のガラス基板を作製した。
【0147】
(比較例1)
上記実施例1における主表面第1研磨処理に用いる研磨液に光触媒物質を添加していない研磨液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のガラス基板を作製した。
【0148】
上記実施例1〜4及び比較例1の上記主表面第1研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目と20バッチ目で測定し、比較例1における研磨速度に対する各実施例における研磨速度の相対比(実施例の研磨速度/比較例1の研磨速度)を算出し、その結果を纏めて以下の表2に示した。なお、研磨速度の相対比は同じバッチ数における比である。
【0149】
【表2】
【0150】
上記表2の結果から以下のことがわかる。
1.本発明の実施例によれば、酸化セリウム砥粒を含む研磨液に本発明の光触媒物質を含有させることにより、光触媒物質を含まない比較例に対して最初から研磨速度を向上させることができる。
2.また、本発明の実施例によれば、このような傾向は、1バッチ目だけではなく、20バッチ目においても持続しており、連続研磨処理によって大量の基板を研磨処理する場合においても、光触媒物質の含有による研磨速度向上の効果が長持ちし、従来よりも高い研磨速度を長期にわたって持続させることができる。
なお、実施例1における主表面第1研磨処理に用いる研磨液に含有させた光触媒物質の代わりに、酸化ランタンを含まない酸化セリウム(平均粒径100nm)を添加した研磨液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例Aのガラス基板を作製したところ、1バッチ目、20バッチ目の研磨速度の相対比はいずれも1.00となり、比較例1からの改善は見られなかった。
【0151】
(実施例5〜8)
上記実施例1〜4における主表面第1研磨処理に用いる各研磨液に含有させた研磨砥粒を、それぞれLaをTREOに対するLa
2O
3の割合として20%含む酸化セリウム砥粒に替えた研磨液を用いたこと以外は、実施例1〜4と同様にして、実施例5〜8のガラス基板を作製した。
【0152】
上記実施例5〜8の上記主表面第1研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目と20バッチ目で測定し、比較例1における研磨速度に対する各実施例における研磨速度の相対比(実施例の研磨速度/比較例1の研磨速度)を算出し、その結果を纏めて以下の表3に示した。
【0153】
【表3】
【0154】
上記表3の結果から以下のことがわかる。
1.Laを添加した酸化セリウム砥粒に本発明の光触媒物質を含有させて研磨液とすることにより、Laを含有しない酸化セリウム砥粒を用いる場合に対して研磨速度を向上させることができる。
2.また、本発明の実施例によれば、1バッチ目だけではなく、20バッチ目においても持続しており、連続研磨処理によって大量の基板を研磨処理する場合においても、光触媒物質の含有による研磨速度向上の効果が長持ちし、従来よりも高い研磨速度を長期にわたって持続させることができる。
また、上記表2、表3の結果から、TiO
2<Ga
2O
3<Ta
2O
5<LiNbO
3、の順に好ましい。換言すれば、光触媒物質の中でも、酸化チタン<酸化ガリウム<酸化タンタル又はタンタル酸塩<酸化ニオブ又はニオブ酸塩、の順に好ましい。
【0155】
(実施例9〜12、比較例2)
上記実施例1と同様にして、(1)粗研削処理、(2)形状加工処理、(3)精研削処理を順次行い、次いで、以下の端面研磨処理を行った。なお、ガラス基板は、上記硝材1を用いた。
上記研削処理後のガラス基板を、支持治具を用いて積層し、ガラス基板積層体を形成した。この時、ガラス基板とガラス基板との間には樹脂製スペーサを挿入し、合計200枚のガラス板を重ね合わせ、ガラス基板積層体とした。
【0156】
上記のようにして形成したガラス基板積層体を、外周端面研磨用の治具に挿入し、ガラス基板積層体の上下方向から締め付けて固定した。このガラス基板積層体を、外周端面研磨装置の所定位置に設置した。端面研磨用の回転ブラシをガラス基板積層体の外周側端面に当接させ、さらに所定量押し当てた。
研磨液をガラス基板積層体の外周端面部に供給し、回転ブラシとガラス基板積層体を反対方向に回転させ、さらに、回転ブラシをガラス基板積層体の積層方向に揺動させながら研磨した。
【0157】
研磨液としては、上記実施例1〜4および比較例1においてそれぞれ使用したものと同じ研磨液(すなわち、酸化セリウム(平均粒径1μm)を研磨砥粒として含み(含有量10重量%)、表4の光触媒物質(平均粒径100nm)を1.0重量%含み、pH=10のアルカリ性のもの)を使用した。
なお、ガラス基板積層体に導入する直前の研磨液に対して、3.0cm離れた距離から、紫外線ランプ(波長254nm)を照射した。研磨液の流速から計算される照射時間は3.5秒間である。研磨後の研磨液を回収して循環させて使用する場合は、研磨機の直前において繰り返し紫外線が照射される。研磨液が照射部から研磨機内部に供給されるまでの時間は約5秒である。
【0158】
なお、本実施例及び比較例では、研磨液供給量を10〜15リットル/分、回転ブラシの回転速度を300rpm、回転ブラシの支持軸方向の揺動速度を3〜5rpm(1分間に3〜5往復する)、ガラス基板積層体の回転速度を80〜90rpmに設定した。取代は板厚換算で40μmとした。
また、各実施例や比較例においては研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら連続20バッチ処理した。
【0159】
上記実施例9〜12及び比較例2の上記端面研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目と20バッチ目で測定し、光触媒物質を含まない研磨液を用いた比較例2における研磨速度に対する各実施例における研磨速度の相対比(実施例の研磨速度/比較例2の研磨速度)を算出し、その結果を纏めて以下の表4に示した。
【0160】
【表4】
【0161】
上記表4の結果から以下のことがわかる。
1.ガラス基板の端面研磨処理においても、研磨液に本発明の光触媒物質を含有させることにより、光触媒物質を含まない比較例に対して研磨速度を向上させることができる。
また、本発明の実施例によれば、このような傾向は、1バッチ目だけではなく、20バッチ目においても持続しており、連続研磨処理時の研磨速度を高いレートで持続させることができる。端面研磨処理は、主表面研磨処理よりも研磨速度が低下しやすいので、本発明がとりわけ有効である。
なお、実施例9における端面研磨処理に用いる研磨液に含有させた光触媒物質の代わりに、酸化ランタンを含まない酸化セリウム(平均粒径100nm)を添加した研磨液を用いたこと以外は、実施例9と同様にしてガラス基板を作製したところ、1バッチ目、20バッチ目の研磨速度の相対比はいずれも1.00となり、端面研磨処理においても比較例2からの改善は見られなかった。
【0162】
(磁気ディスクの製造)
上記実施例1で得られた磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。
すなわち、上記ガラス基板上に、CrTi系合金薄膜からなる付着層、CoTaZr合金薄膜からなる軟磁性層、NiWからなるシード層、Ru薄膜からなる下地層、CoCrPt系合金からなる垂直磁気記録層、カーボン保護層、潤滑層を順次成膜した。保護層は、磁気記録層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。また、潤滑層は、アルコール変性パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。
得られた磁気ディスクについて、DFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを備えたHDDに組み込み、80℃かつ80%RHの高温高湿環境下においてDFH機能を作動させつつ1ヶ月間のロードアンロード耐久性試験を行ったところ、特に障害も無く、良好な結果が得られた。なお、他の実施例で得られた磁気ディスク用ガラス基板を用いた場合も同様の結果が得られた。
【0163】
以下の実施例は、上記の第2の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例13)
以下の(1)粗研削処理、(2)形状加工処理、(3)精研削処理、(4)端面研磨処理、(5)主表面第1研磨処理、(6)主表面第2研磨処理、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0164】
(1)粗研削処理
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.0mmの円板状のアルミノシリゲートガラスからなるガラス基板を得た。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO
2:58〜75重量%、Al
2O
3:5〜23重量%、Li
2O:3〜10重量%、Na
2O:4〜13重量%を含有する化学強化可能なガラスを使用した。なお、Al
2O
3の含有量は、モル%換算で8.5モル%とした。以下、この硝材を硝材1と呼ぶ。
【0165】
次いで、このガラス基板に寸法精度及び形状精度の向上させるためアルミナ系の遊離砥粒を用いて粗研削処理を行った。この粗研削処理は両面研削装置を用いて行った。
【0166】
(2)形状加工処理
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、外周端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
【0167】
(3)精研削処理
この精研削処理は両面研削装置を用い、ダイヤモンド砥粒を樹脂で固定したペレットが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させてクーラントを供給しつつ行なった。精研削処理後の基板主表面の粗さは、Raで100nm以下であった。ただし、精研削処理後の表面粗さは、触針式粗さ計を用いて測定した。
上記精研削処理を終えたガラス基板を洗浄した。
【0168】
(4)端面研磨処理
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)を研磨した。端面研磨処理後の基板端面の粗さは、Raで100nm以下であった。そして、上記端面研磨を終えたガラス基板を洗浄した。
【0169】
(5)主表面第1研磨処理
次に、上述した研削処理で残留した傷や歪みを除去し所定の平滑面にするための第1研磨処理を前述の
図3に示す両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッド7が貼り付けられた上下研磨定盤5,6の間にキャリア4により保持したガラス基板を密着させ、このキャリア4を太陽歯車2と内歯歯車3とに噛合させ、上記ガラス基板を上下定盤5,6によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して各歯車と上下定盤をそれぞれ回転させることによって、ガラス基板が定盤5,6上で自転しながら公転して遊星歯車機構により両面を同時に研磨加工するものである。具体的には、ポリシャ(研磨パッド)としてアスカーC硬度が80のスウェードタイプのポリシャ(発泡ポリウレタン製)を用い、第1研磨処理を実施した。
【0170】
研磨液としては、研磨砥粒として、光触媒物質(TiO
2)を表面に有する酸化セリウム(平均粒径1μm)を10重量%含み、pH=10のアルカリ性のものを使用した。TiO
2は、ルチル結晶構造の含有率が20%以下のアナターゼ結晶構造を主成分とし、平均粒径が30nmのものを使用した。この研磨砥粒は、酸化セリウム砥粒と光触媒物質としてTiO
2を前述の製法にしたがって、ミキサで混合して製造した。なお、得られた砥粒表面の光触媒物質の被覆率は、前述の方法で評価したところ、10%であった。
また、両面研磨装置に導入する直前の研磨液に対して、3cm離れた距離から、紫外線ランプ(波長254nm)を照射した。なお、研磨液を供給する供給管は、紫外線ランプを照射する部分では透明な材質で形成されており、供給管の外から照射された紫外線が供給管内部の研磨液に照射されるように構成されている。研磨液の流速から計算される照射時間は3.5秒間である。研磨後の研磨液を回収して循環させて使用する場合は、研磨機の直前において繰り返し紫外線が照射される。研磨液が照射部から研磨機内部に供給されるまでの時間は約5秒である。また、研磨荷重は120g/cm
2、取代は板厚換算で30μmとした。研磨後の基板表面の粗さはRaで1.5nm以下であった。
上記第1研磨処理は、研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら使用し、連続20バッチ(1バッチ100枚)を処理した。上記第1研磨処理を終えたガラス基板を洗浄した。
【0171】
(6)主表面第2研磨処理
次いで上記の第1研磨処理で使用したものと同様の両面研磨装置を用い、ポリシャをアスカーC硬度が70の軟質ポリシャ(スウェードタイプ)の研磨パッド(発泡ポリウレタン製)に替えて第2研磨処理を実施した。この第2研磨処理は、ガラス基板主表面の表面粗さをより平滑な鏡面に仕上げる、例えばガラス基板主表面の表面粗さをRaで0.2nm以下、Rmaxで2nm以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨処理である。研磨液としては、10重量%のコロイダルシリカ(平均粒径15nm)を研磨砥粒として含む研磨液を使用した。なお、研磨液のpHは、予め硫酸を添加して酸性(pH=2)に調整した。また、研磨荷重は100g/cm
2、取代は板厚換算で3μmとした。
【0172】
次に、上記第2研磨処理を終えたガラス基板を洗浄処理(最終洗浄処理)した。具体的には、アルカリ性洗剤を純水に添加した洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄を行った。その後、ガラス基板を純水で十分にリンスした後、乾燥させた。
上記各処理を経て得られたガラス基板について、上記最終洗浄処理後のガラス基板主表面の表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Raで0.2nm以下、Rmaxで2nm以下の平滑な鏡面に仕上がっていた。
【0173】
(実施例14〜16)
上記実施例13における主表面第1研磨処理に用いる研磨液に含有させた酸化セリウム砥粒表面の光触媒物質を、Ga
2O
3、Ta
2O
5、LiNbO
3にそれぞれ替えた研磨砥粒を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例14〜16のガラス基板を作製した。
【0174】
(比較例3)
上記実施例13における主表面第1研磨処理に用いる研磨液に、表面に光触媒物質を有していない単体の酸化セリウム砥粒(平均粒径1μm)を10重量%含む研磨液を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、比較例3のガラス基板を作製した。
(参考例1)
上記実施例13における主表面第1研磨処理に用いる研磨液に、10重量%の酸化セリウム砥粒(平均粒径1μm)と、光触媒物質として1重量%のTiO
2(平均粒径100nm)をそれぞれ単体として含有させた研磨液を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、参考例1のガラス基板を作製した。
【0175】
上記実施例13〜16及び比較例3、参考例1の上記主表面第1研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目と20バッチ目で測定し、比較例3における研磨速度に対する各実施例、参考例1における研磨速度の相対比(実施例(又は参考例)の研磨速度/比較例3の研磨速度)を算出し、その結果を纏めて以下の表5に示した。
【0176】
【表5】
【0177】
上記表5の結果から以下のことがわかる。
1.本発明の実施例によれば、光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を研磨液に含有させることにより、光触媒物質を含まない比較例に対して最初から研磨速度を向上させることができる。
2.また、本発明の実施例によれば、このような傾向は、1バッチ目だけではなく、20バッチ目においても持続しており、連続研磨処理によって大量の基板を研磨処理する場合においても、光触媒物質を用いることによる研磨速度向上の効果が長持ちし、従来よりも高い研磨速度を長期にわたって持続させることができる。
3.なお、本発明の実施例と参考例との対比から、酸化セリウム砥粒と光触媒物質をそれぞれ単体で研磨液に含有することよりも、本発明のように光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を用いる方が、研磨速度の向上効果がより高くなる。
なお、実施例16の条件を基本として、ミキサにて混合する光触媒物質の配合量を適宜変化させて、被覆率を0.01%、0.1%、30%、50%とする光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を製造し、上記と同様の研磨実験を行った(実施例A〜D)。その結果、20バッチ目における研磨速度比はそれぞれ、1.19、1.32、1.40、1.25であり、被覆率を変えても研磨速度の向上効果が見られることを確認できた。
【0178】
(実施例17〜20、比較例4、参考例2)
上記実施例13と同様にして、(1)粗研削処理、(2)形状加工処理、(3)精研削処理を順次行い、次いで、以下の端面研磨処理を行った。なお、ガラス基板は、上記硝材1を用いた。
上記研削処理後のガラス基板を、支持治具を用いて積層し、ガラス基板積層体を形成した。この時、ガラス基板とガラス基板との間には樹脂製スペーサを挿入し、合計200枚のガラス板を重ね合わせ、ガラス基板積層体とした。
【0179】
上記のようにして形成したガラス基板積層体を、外周端面研磨用の治具に挿入し、ガラス基板積層体の上下方向から締め付けて固定した。このガラス基板積層体を、外周端面研磨装置の所定位置に設置した。端面研磨用の回転ブラシをガラス基板積層体の外周側端面に当接させ、さらに所定量押し当てた。
研磨液をガラス基板積層体の外周端面部に供給し、回転ブラシとガラス基板積層体を反対方向に回転させ、さらに、回転ブラシをガラス基板積層体の積層方向に揺動させながら研磨した。
【0180】
研磨液としては、上記実施例13〜16および比較例3、参考例1においてそれぞれ使用したものと同じ研磨液を使用した。
また、実施例17〜20、参考例2の場合は、ガラス基板積層体に導入する直前の研磨液に対して、3cm離れた距離から、紫外線ランプ(波長254nm)を3.5秒間照射した。
【0181】
なお、本実施例及び比較例、参考例では、研磨液供給量を10〜15リットル/分、回転ブラシの回転速度を300rpm、回転ブラシの支持軸方向の揺動速度を3〜5rpm(1分間に3〜5往復する)、ガラス基板積層体の回転速度を80〜90rpmに設定した。取代は板厚換算で40μmとした。
また、各実施例や比較例、参考例においては研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら連続20バッチ処理した。
【0182】
上記実施例17〜20及び比較例4、参考例2の上記端面研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目と20バッチ目で測定し、光触媒物質を含まない研磨液を用いた比較例4における研磨速度に対する各実施例、参考例における研磨速度の相対比(実施例(又は参考例)の研磨速度/比較例4の研磨速度)を算出し、その結果を纏めて以下の表6に示した。
【0183】
【表6】
【0184】
上記表6の結果から以下のことがわかる。
1.ガラス基板の端面研磨処理においても、研磨液に本発明の光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を含有させることにより、光触媒物質を含まない比較例に対して研磨速度を向上させることができる。
また、本発明の実施例によれば、このような傾向は、1バッチ目だけではなく、20バッチ目においても持続しており、連続研磨処理時の研磨速度を高いレートで持続させることができる。端面研磨処理は、主表面研磨処理よりも研磨速度が低下しやすいので、本発明がとりわけ有効である。
なお、本発明の実施例と参考例との対比から、酸化セリウム砥粒と光触媒物質をそれぞれ単体で研磨液に含有することよりも、本発明のように光触媒物質を表面に有する酸化セリウム砥粒を用いる方が、研磨速度の向上効果がより高くなる。
【0185】
(磁気ディスクの製造)
上記実施例13で得られた磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。
すなわち、上記ガラス基板上に、CrTi系合金薄膜からなる付着層、CoTaZr合金薄膜からなる軟磁性層、NiWからなるシード層、Ru薄膜からなる下地層、CoCrPt系合金からなる垂直磁気記録層、カーボン保護層、潤滑層を順次成膜した。保護層は、磁気記録層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。また、潤滑層は、アルコール変性パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。
得られた磁気ディスクについて、DFHヘッドを備えたHDDに組み込み、80℃かつ80%RHの高温高湿環境下においてDFH機能を作動させつつ1ヶ月間のロードアンロード耐久性試験を行ったところ、特に障害も無く、良好な結果が得られた。なお、他の実施例で得られた磁気ディスク用ガラス基板を用いた場合も同様の結果が得られた。
【0186】
以下の実施例は、上記の第3の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例21)
以下の(1)粗研削処理、(2)形状加工処理、(3)精研削処理、(4)端面研磨処理、(5)主表面第1研磨処理、(6)主表面第2研磨処理、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0187】
(1)粗研削処理
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.0mmの円板状のアルミノシリゲートガラスからなるガラス基板を得た。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO
2:58〜75重量%、Al
2O
3:5〜23重量%、Li
2O:3〜10重量%、Na
2O:4〜13重量%を含有する化学強化可能なガラスを使用した。なお、Al
2O
3の含有量は、モル%換算で8.5モル%とした。以下、この硝材を硝材1と呼ぶ。
【0188】
次いで、このガラス基板に寸法精度及び形状精度の向上させるためアルミナ系の遊離砥粒を用いて粗研削処理を行った。この粗研削処理は両面研削装置を用いて行った。
【0189】
(2)形状加工処理
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、外周端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
【0190】
(3)精研削処理
この精研削処理は両面研削装置を用い、ダイヤモンド砥粒を樹脂で固定したペレットが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させてクーラントを供給しつつ行なった。精研削処理後の基板主表面の粗さは、Raで100nm以下であった。ただし、精研削処理後の表面粗さは、触針式粗さ計を用いて測定した。
上記精研削処理を終えたガラス基板を洗浄した。
【0191】
(4)端面研磨処理
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)を研磨した。端面研磨処理後の基板端面の粗さは、Raで100nm以下であった。そして、上記端面研磨を終えたガラス基板を洗浄した。
【0192】
(5)主表面第1研磨処理
次に、上述した研削処理で残留した傷や歪みを除去し所定の平滑面にするための第1研磨処理を前述の
図3に示す両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッド7が貼り付けられた上下研磨定盤5,6の間にキャリア4により保持したガラス基板を密着させ、このキャリア4を太陽歯車2と内歯歯車3とに噛合させ、上記ガラス基板を上下定盤5,6によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して各歯車と上下定盤をそれぞれ回転させることによって、ガラス基板が定盤5,6上で自転しながら公転して遊星歯車機構により両面を同時に研磨加工するものである。具体的には、ポリシャ(研磨パッド)としてアスカーC硬度が80のスウェードタイプのポリシャ(発泡ポリウレタン製)を用い、第1研磨処理を実施した。
【0193】
研磨液としては、10重量%の酸化セリウム(平均粒径1μm)を研磨砥粒として含み、pH=10のアルカリ性のものを使用した。また、前述の
図4に示す実施形態によって酸化セリウムの還元を行った。ガラス管(石英管使用)20とガラス管(石英管使用)21との間の隙間を2mm程度になるように配置し、この隙間に光触媒物質としてTiO
2が表面に付着したジルコニアビーズ(直径1.5mm)を充填した。このTiO
2が表面に付着したジルコニアビーズは、前述の製法によって作製した。TiO
2の被覆率は、前述の評価方法によって評価した結果、80%以上のものであった。光照射は、紫外線ランプ(波長254nm)を光源(
図4の光源24,25)として実施した。そして、上記の光触媒物質が充填された領域内に研磨液を通過させて、研磨液中に含まれる酸化セリウムを還元させた。こうして還元された酸化セリウム砥粒を含む研磨液を上記研磨装置に供給して、上記の第1研磨処理を実施した。
また、研磨荷重は120g/cm
2、取代は板厚換算で30μmとした。研磨後の基板表面の粗さはRaで1.5nm以下であった。
上記第1研磨処理は、研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら使用し、連続20バッチ(1バッチ100枚)を処理した。上記第1研磨処理を終えたガラス基板を洗浄した。
【0194】
(6)主表面第2研磨処理
次いで上記の第1研磨処理で使用したものと同様の両面研磨装置を用い、ポリシャをアスカーC硬度が70の軟質ポリシャ(スウェードタイプ)の研磨パッド(発泡ポリウレタン製)に替えて第2研磨処理を実施した。この第2研磨処理は、ガラス基板主表面の表面粗さをより平滑な鏡面に仕上げる、例えばガラス基板主表面の表面粗さをRaで0.2nm以下、Rmaxで2nm以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨処理である。研磨液としては、10重量%のコロイダルシリカ(平均粒径15nm)を研磨砥粒として含む研磨液を使用した。なお、研磨液のpHは、予め硫酸を添加して酸性(pH=2)に調整した。また、研磨荷重は100g/cm
2、取代は板厚換算で3μmとした。
【0195】
次に、上記第2研磨処理を終えたガラス基板を洗浄処理(最終洗浄処理)した。具体的には、アルカリ性洗剤を純水に添加した洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄を行った。その後、ガラス基板を純水で十分にリンスした後、乾燥させた。
上記各処理を経て得られたガラス基板について、上記最終洗浄処理後のガラス基板主表面の表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Raで0.2nm以下、Rmaxで2nm以下の平滑な鏡面に仕上がっていた。
【0196】
(実施例22〜24)
上記実施例21における酸化セリウムの還元に用いた光触媒物質を、Ga
2O
3、Ta
2O
5、LiNbO
3にそれぞれ替えたこと以外は、実施例21と同様にして、実施例22〜24のガラス基板を作製した。
【0197】
(比較例5)
光触媒物質による酸化セリウム砥粒の還元は行わずに実施例21の主表面第1研磨処理を実施したこと以外は、実施例21と同様にして、比較例5のガラス基板を作製した。
(参考例3)
実施例21のような研磨処理前に酸化セリウムの還元は行わずに、光触媒物質(平均粒径100nmのTiO
2)1重量%を酸化セリウム砥粒とともに研磨液に添加して、第1実施形態の実施例1と同様に光を照射して主表面第1研磨処理を実施したこと以外は、実施例21と同様にして、参考例3のガラス基板を作製した。
【0198】
上記実施例21〜24及び比較例5、参考例3の上記主表面第1研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目で測定し、比較例5における研磨速度に対する各実施例(又は参考例)における研磨速度の相対比(実施例(又は参考例)の研磨速度/比較例5の研磨速度)を算出し、その結果を以下の表7に示した。
また、上記実施例21〜24及び比較例5、参考例3の上記主表面第1研磨処理及び洗浄後のガラス基板の主表面(5枚10面)を、レーザー式の光学式表面検査装置を用いて検査し、基板表面1面あたりの光触媒物質に由来する異物数を測定した。その結果についても以下の表7に示した。
【0199】
【表7】
【0200】
上記表7の結果から以下のことがわかる。
1.本発明の実施例によれば、本発明の還元方法により還元された酸化セリウム砥粒を用いて研磨処理を実施することにより、光触媒物質を含まない比較例に対して最初から研磨速度を向上させることができる。
2.また。本発明の実施例と参考例の対比から、本発明によれば、基板表面の光触媒物質に由来する異物欠陥の発生を抑制できる。
【0201】
(実施例25〜28、比較例6、参考例4)
上記実施例21と同様にして、(1)粗研削処理、(2)形状加工処理、(3)精研削処理を順次行い、次いで、以下の端面研磨処理を行った。なお、ガラス基板は、上記硝材1を用いた。
上記研削処理後のガラス基板を、支持治具を用いて積層し、ガラス基板積層体を形成した。この時、ガラス基板とガラス基板との間には樹脂製スペーサを挿入し、合計200枚のガラス板を重ね合わせ、ガラス基板積層体とした。
【0202】
上記のようにして形成したガラス基板積層体を、外周端面研磨用の治具に挿入し、ガラス基板積層体の上下方向から締め付けて固定した。このガラス基板積層体を、外周端面研磨装置の所定位置に設置した。端面研磨用の回転ブラシをガラス基板積層体の外周側端面に当接させ、さらに所定量押し当てた。
研磨液をガラス基板積層体の外周端面部に供給し、回転ブラシとガラス基板積層体を反対方向に回転させ、さらに、回転ブラシをガラス基板積層体の積層方向に揺動させながら研磨した。
【0203】
研磨液としては、上記実施例21〜24および比較例5、参考例3においてそれぞれ使用したものと同じ研磨液を使用した。つまり、実施例25〜28では、本発明の方法で還元した酸化セリウム砥粒を含む研磨液、比較例6では、光触媒物質による還元は行わずに酸化セリウム砥粒を含む研磨液、参考例4では、光触媒物質を添加した研磨液をそれぞれ使用して研磨処理を行った。
【0204】
なお、本実施例及び比較例、参考例では、研磨液供給量を10〜15リットル/分、回転ブラシの回転速度を300rpm、回転ブラシの支持軸方向の揺動速度を3〜5rpm(1分間に3〜5往復する)、ガラス基板積層体の回転速度を80〜90rpmに設定した。取代は板厚換算で40μmとした。
また、各実施例や比較例、参考例においては研磨液の交換は行わず、研磨液を回収して循環させながら連続20バッチ処理した。
【0205】
上記実施例25〜28及び比較例6、参考例4の上記端面研磨処理における研磨速度をそれぞれ1バッチ目で測定し、比較例6における研磨速度に対する各実施例(又は参考例)における研磨速度の相対比(実施例(又は参考例)の研磨速度/比較例6の研磨速度)を算出し、その結果を以下の表8に示した。
また、上記実施例25〜28及び比較例6、参考例4の上記端面研磨処理及び洗浄後のガラス基板の主表面を、レーザー式の光学式表面検査装置を用いて検査し、基板の主表面の光触媒物質に由来する異物数を測定した。主表面の品質を評価するのは、端面に付着した異物は、洗浄工程により主表面に移着するためである。その結果についても以下の表8に示した。
【0206】
【表8】
【0207】
上記表8の結果から以下のことがわかる。
1.基板端面研磨処理においても、本発明の実施例によれば、本発明の還元方法により還元された酸化セリウム砥粒を用いて研磨処理を実施することにより、光触媒物質を含まない比較例に対して最初から研磨速度を向上させることができる。
2.また。本発明の実施例と参考例の対比から、本発明によれば、基板表面の光触媒物質に由来する異物欠陥の発生を抑制できる。
【0208】
(磁気ディスクの製造)
上記実施例21で得られた磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。
すなわち、上記ガラス基板上に、CrTi系合金薄膜からなる付着層、CoTaZr合金薄膜からなる軟磁性層、NiWからなるシード層、Ru薄膜からなる下地層、CoCrPt系合金からなる垂直磁気記録層、カーボン保護層、潤滑層を順次成膜した。保護層は、磁気記録層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。また、潤滑層は、アルコール変性パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。
得られた磁気ディスクについて、DFHヘッドを備えたHDDに組み込み、80℃かつ80%RHの高温高湿環境下においてDFH機能を作動させつつ1ヶ月間のロードアンロード耐久性試験を行ったところ、特に障害も無く、良好な結果が得られた。なお、他の実施例で得られた磁気ディスク用ガラス基板を用いた場合も同様の結果が得られた。
本発明では、ガラス基板の研磨面に、酸化セリウムを研磨砥粒として含む研磨液を供給してガラス基板を研磨処理する。この研磨液は、上記酸化セリウムを研磨砥粒として含み、さらに光を受けて酸化セリウムを還元する物質を含む。そして、研磨処理に際しては研磨液に対して光を照射する処理を行う。