特許第6347923号(P6347923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347923
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】光センサ用半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20180618BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20180618BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   G01J1/42 J
   H01L31/10 G
   H01L31/10 A
   G01J1/44 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-158412(P2013-158412)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-28455(P2015-28455A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599037300
【氏名又は名称】億光電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Everlight Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 祐也
(72)【発明者】
【氏名】マークス オベラッシャー
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−140098(JP,A)
【文献】 特開2011−106875(JP,A)
【文献】 特開2007−227551(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110249(WO,A1)
【文献】 特表2012−526280(JP,A)
【文献】 特開2012−083174(JP,A)
【文献】 特開2013−050422(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0312990(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0132369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、11/00
H01L 31/10−31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を減衰させ赤外光を透過するカバー部材と集光レンズとを介して、環境光を受光し、受光光量に基づき視感度補正を行い、前記環境光の照度を検出する光センサ用半導体集積回路であって、
第1の分光特性を有する第1の受光素子と、
第2の分光特性を有する第2の受光素子と、
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子の出力に応じて視感度補正を行う視感度補正手段と、を有し、
前記視感度補正手段は、
前記第1の受光素子の出力と、前記第2の受光素子の出力を時分割でAD変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換された各デジタル信号を減算する演算部と、
前記演算部にオフセットを入力するオフセット入力部と、を有することを特徴とする光センサ用半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1の分光特性は、可視光を透過する第1のフィルタにより得られ、
前記第2の分光特性は、赤外光を透過する第2のフィルタにより得られることを特徴とする請求項1に記載の光センサ用半導体集積回路。
【請求項3】
前記視感度補正手段は、前記第2の受光素子の出力に対応する前記デジタル信号に補正係数を乗算する乗算器と、
前記補正係数を設定する補正係数設定手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光センサ用半導体集積回路。
【請求項4】
近接センサ用の第3の受光素子を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光センサ用半導体集積回路。
【請求項5】
前記第3の受光素子は、赤外光を透過する第3のフィルタにより得られる第3の分光特性を有することを特徴とする請求項4に記載の光センサ用半導体集積回路。
【請求項6】
前記第1の分光特性は、第1の波長で第1の最大感度を有し、
前記第2の分光特性は、第2の波長で第2の最大感度を有し、
前記第1の波長は、前記第2の波長と異なることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光センサ用半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサ用半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等のモバイル機器には、環境光に応じた表示画面の輝度調整及び視認性向上、或いは通話時の省電力化のために、1つの小型パッケージに実装された照度センサ及び近接センサが搭載されている。これらのセンサは、通常、可視光をほぼ遮断する黒系のカバーガラス等のカバー部材で覆われる。
【0003】
照度センサの分光特性は、視感度特性(人間の目と同様の分光特性)に近づけなければならない。視感度特性に近づけるための、2つの方法がある。第1の方法は、1つのPDを用いて、光学フィルタの役割を果たす特殊な樹脂をパッケージに被せる方法、又は、特殊なフィルタの役割を果たすコーティング材を直接PDに塗る方法である。第2の方法は、2つのPDを用いる方法である。一方のPDは、可視光領域及び赤外光領域に相対感度を有し、もう一方のPDは、赤外光領域のみに相対感度を有する。視感度特性に近づけるため、赤外光領域のみに相対感度を有するPDの分光特性(測定値)を、可視光領域及び赤外光領域に相対感度を有するPDの分光特性(測定値)から、差し引く。この計算はセンサ内部で自動的に行うことはできないため、CPU等により計算は行われる必要がある。計算式は、それぞれの光源が持つIR(赤外光)含有量により異なる。
【0004】
両方の方法においても、通常の使用状態に影響を及ぼさない程度に、赤外光領域に僅かな相対感度が残ってしまう。
【0005】
しかし、多くのアプリケーション(例えば、携帯電話やテレビ等)において、デザイン上の理由から、照度センサは、パネル等のカバー部材の後ろに配置される。パネル等は、可視光領域にとても低い透過率を有し、赤外光領域にとても高い透過率を有する。これは、センサ全体の分光特性に影響を及ぼす。なぜなら、パネル等の後ろに配置されることで、照度センサに対して、多くの赤外光が入射してしまう。これにより、異なる光源を用いているのと同じ様な、照度センサの誤検出を引き起こしてしまう。IR含有量が低い光源(例えば、蛍光灯やLED等)であっても、可視光は、少ししか入射しない。なぜなら、バックパネルによって、ほぼ可視光が遮断されてしまうためである。しかし、IR(赤外光)含有量が高い光源(例えば、白熱電球等)においては、光量が同じであれば、赤外光領域の測定値はとても高くなってしまうだろう。なぜなら、パネル等によって、ほぼ可視光が遮断され、更に多くの赤外光が透過することで、赤外光光量の測定値の増大を招いてしまうからだ。結果的に、光やバックライトの調整が、異なる光源の元で正確に行われなくなる。
【0006】
図8に示す様に、照度センサ用PDの分光特性は、黒系のガラス等のカバー部材で覆われる場合、黒系のカバーガラス等のカバー部材で覆われない場合と比較して、赤外光領域での相対感度が高くなり、結果的に誤検出が生じる。
【0007】
具体的には、例えば、カレントミラー回路を介して2つのPDの出力電流を減算し、ADコンバータによりAD変換することで視感度補正を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
又、分光特性の異なる2つのフォトセンサの出力電流を、異なるADコンバータでAD変換し、デジタル演算を行うことで照度を測定する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2012/0049048号
【特許文献2】特開2011−58853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、カレントミラー回路は微小電流に対して精度を確保し難いため、高精度な視感度補正を行うことが困難である。又、照度センサ用PDの出力電流と視感度補正用PDの出力電流を、異なるADコンバータでAD変換する場合、ADコンバータ間のばらつきにより、変換後のデジタル信号間に変換誤差が生じるため、高精度な視感度補正を行うことが困難である。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高精度な視感度補正を行う光センサ用半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施の形態の光センサ用半導体集積回路は、可視光を減衰させ赤外光を透過するカバー部材(3)と集光レンズ(2)とを介して、環境光を受光し、受光光量に基づき視感度補正を行い、前記環境光の照度を検出する光センサ用半導体集積回路(1)であって、第1の分光特性を有する第1の受光素子(21)と、第2の分光特性を有する第2の受光素子(22)と、前記第1の受光素子(21)と前記第2の受光素子(22)の出力に応じて視感度補正を行う視感度補正手段(30)と、を有し、前記視感度補正手段(30)は、前記第1の受光素子(21)の出力と、前記第2の受光素子(22)の出力を時分割でAD変換するAD変換部(313)と、前記AD変換部(313)で変換された各デジタル信号を減算する演算部(318)と、前記演算部(318)にオフセットを入力するオフセット入力部と、を有することを要件とする。
【0013】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施の形態によれば、高精度な視感度補正を行う光センサ用半導体集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る光センサ用半導体集積回路に光が入射する様子の一例を模式的に示す図である。
図2】実施形態に係る光センサ用半導体集積回路の構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る受光素子における電圧と暗電流との関係の一例を示すグラフである。
図4】実施形態に係る光センサ用半導体集積回路の構成の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る受光素子における波長と相対感度との関係の一例を示すグラフである。
図6】実施形態に係るADコンバータのタイミングチャートの一例である。
図7】実施形態に係るADコンバータのタイミングチャートの他の例である。
図8】分光特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0017】
本明細書において、「相対感度」とは、照度センサ用受光素子の、ある波長での感度(最大感度)を100%として正規化した分光特性における、それぞれの波長(波長400nm〜波長1150nm)での感度を指すものとする。又、本明細書において、平面形状とは対象物を受光部20の表面20sの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0018】
[光センサ用半導体集積回路の構成]
まず、本実施形態に係る光センサ用半導体集積回路の構成の一例と、該光センサ用半導体集積回路が、環境光を受光してから照度を検出するまでの流れを、図1を用いて簡単に説明する。
【0019】
光センサ用半導体集積回路1は、受光部20と視感度補正手段30を含む。
【0020】
光10(環境光)は、カバー部材3と、集光レンズ2とを介して、受光部20に入射する。受光部20は、同一基板上に形成される複数の受光素子を含む。各受光素子は、光電変換部、電極等を含み、受光光量に基づき電流が流れる。各受光素子としては、PN型フォトダイオード、PIN型フォトダイオード、フォトトランジスタ等を用いることができる。なお、各受光素子の出力電流は、pAオーダーの微弱電流である。
【0021】
光11は、受光部20の表面20sに対して垂直方向から入射する光(以下、直進光と記載する)であり、光12は、受光部20の表面20sに対して斜め方向から入射する光(以下、斜光と記載する)である。
【0022】
カバー部材3は、受光部20を隠す部材として用いられるため、黒色の樹脂、黒色のガラス等により形成される。カバー部材3は、可視光を減衰させ(90%程度遮断)、赤外光を透過する。カバー部材3の厚さ、材質、遮光率等を、適宜調整することで、受光部20が受光する環境光の光量を変化させることが可能である。
【0023】
集光レンズ2は、カバー部材3を透過する光を集光する。直進光が入射する場合と、斜光が入射する場合とで、受光部20に集光する光の位置は異なる。どちらの場合であっても、受光部20内に形成される複数の受光素子間において、受光光量のばらつきは、少ないことが好ましい。集光レンズ2の種類は特に限定されないが、凸レンズやシリンドリカルレンズ等を用いることができる。
【0024】
視感度補正手段30は、照度センサ用受光素子及び視感度補正用受光素子の出力電流を、同じADコンバータで、交互にAD変換し、演算処理することで、視感度補正を行う。演算処理としては、照度センサ用受光素子の出力電流に対応するデジタル信号から、補正係数を乗じた視感度補正用受光素子の出力電流に対応するデジタル信号を減算する。視感度補正手段30にて高精度な視感度補正を行い、照度センサ用受光素子の分光特性を視感度特性に近づけることで、光センサ用半導体集積回路1の誤検出を低減できる。
【0025】
[受光部の構成]
図2(A)に、本実施形態に係る光センサ用半導体集積回路1が備える受光部20の構成の一例を示す。
【0026】
受光部20は、第1の受光素子21と、第2の受光素子22と、第3の受光素子23を含む。図2(A)に示す様に、第1の受光素子21は、照度センサ用の受光素子であり、第2の受光素子22は、視感度補正用の受光素子であり、第3の受光素子23は、近接センサ用の受光素子である。
【0027】
照度センサは、第1の受光素子21が受光する環境光の光量に基づき、周囲の明るさを検出する。又、近接センサは、第3の受光素子23が受光する赤外光の光量の変化に応じて、物体の接近を検出する。近接センサは、動く物体から反射する微弱な赤外光を検出するため、第3の受光素子23は、高感度に設計されることが好ましい。
【0028】
第1の受光素子21は、第1の分光特性を有する。第1の分光特性は、可視光領域に高い相対感度を有する。第1の分光特性は、例えば、波長が約550nmで最大感度を有し、波長が約800nmで僅かな相対感度を有する。
【0029】
図2(B)に示す様に、第1の受光素子21を覆うように、赤外光カットフィルタ(第1のフィルタ)500を形成することが好ましい。赤外光カットフィルタは、可視光を透過し、赤外光を減衰させる。該フィルタを形成することで、第1の分光特性における赤外光領域での相対感度を低くすることができる。
【0030】
第2の受光素子22及び第3の受光素子23は、第2の分光特性を有する。第2の分光特性は、赤外光領域に高い相対感度を有する。
【0031】
図2(C)に示す様に、第2の受光素子22及び第3の受光素子23を覆うように、可視光カットフィルタ(第2のフィルタ)501を形成することが好ましい。可視光カットフィルタは、赤外光を透過し、可視光を減衰させる。該フィルタを形成することで、第2の分光特性における可視光領域での相対感度を、より低くすることができる。
【0032】
なお、第2のフィルタを形成する場合、第2の受光素子22及び第3の受光素子23を、第2のフィルタで同時に覆うことができる様に、第2の受光素子22と第3の受光素子23とを隣接して配置することが好ましい。
【0033】
[視感度補正手段]
図4に、本実施形態に係る光センサ用半導体集積回路1が備える視感度補正手段30の一例を示す。
【0034】
視感度補正手段30は、スイッチ回路311、スイッチ回路312、ADコンバータ313、第1のデシメーションフィルタ314(照度センサ用)、第2のデシメーションフィルタ315(視感度補正用)、乗算器316、制御回路317、加算器318を含む。
【0035】
視感度補正手段30は、入力信号24、25を、ADコンバータ313により時分割でAD変換し、デシメーションフィルタ314、315により間引きし、乗算器316及び加算器318により演算処理して、出力信号170を出力する。
【0036】
スイッチ回路311は、第1の受光素子21からの入力信号24の、ADコンバータ313への入力、非入力の切り替えを行う。スイッチ回路311のオン、オフの切り替えは、制御回路317により制御される。例えば、スイッチ回路311がオンの時、入力信号24は、ADコンバータ313に入力される。
【0037】
スイッチ回路312は、第2の受光素子22からの入力信号25の、ADコンバータ313への入力、非入力の切り替えを行う。スイッチ回路312のオン、オフの切り替えは、制御回路317により制御される。例えば、スイッチ回路312がオンの時、入力信号25は、ADコンバータ313に入力される。
【0038】
制御回路317は、スイッチ回路311のオン(オフ)のタイミングと、スイッチ回路312のオン(オフ)のタイミングとが一致しない様に、各スイッチ回路を制御する(詳細は、後述のタイミングチャート参照)。
【0039】
ADコンバータ313(AD変換部)は、例えば16ビットの△Σ型ADコンバータであり、△Σ変調を利用してAD変換を行う。具体的には、ADコンバータ313は、スイッチ回路311、312のオン、オフの切り替えのタイミングと同期して、入力信号24、25をAD変換し、出力信号120(デジタル信号)を生成する。言い換えれば、ADコンバータ313は、第1の受光素子21の出力である入力信号24と、第2の受光素子22の出力である入力信号25を時分割でAD変換し、出力信号120(デジタル信号)を生成する。又、ADコンバータ313は、出力信号120を、第1のデシメーションフィルタ314及び第2のデシメーションフィルタ315に入力する。
【0040】
第1のデシメーションフィルタ314は、出力信号120を間引きし、第1の受光素子21の出力電流に対応する信号140(デジタル信号)を生成する。又、信号140を演算部である加算器318に入力する。第2のデシメーションフィルタ315は、出力信号120を間引きし、第2の受光素子22の出力電流に対応する信号150(デジタル信号)を生成する。又、信号150を乗算器316に入力する。同じADコンバータにより2つの入力信号が時分割でAD変換されるため、信号140と信号150との間には、ほぼ変換誤差は生じない。なお、デシメーションフィルタにより、出力信号120に発生するノイズ等を除去することもできる。
【0041】
第1のデシメーションフィルタ314及び第2のデシメーションフィルタ315の動作、非動作は、制御回路317により制御される。
【0042】
乗算器316は、補正係数と信号150とを乗算し、信号160(デジタル信号)を生成する。なお、乗算器316には、反転回路(インバータ)が設けられるため、信号160は、補正係数を乗じた信号150の反転信号となる。
【0043】
加算器318は、信号140と信号160とを加算(実質的には減算)し、出力信号170(デジタル信号)を生成する。
【0044】
つまり、照度センサ用受光素子である第1の受光素子21の出力電流に対応する信号140から、補正係数を乗じた視感度補正用受光素子である第2の受光素子22の出力電流に対応する信号160を減算する。これにより、第1の受光素子21における赤外光領域での相対感度を低くすることができる。
【0045】
なお、加算器318にオフセット入力部を設け、視感度補正手段30による演算処理では暗電流を完全に相殺できない場合等に、オフセット入力部からオフセットを入力することで暗電流を相殺できるようにしてもよい。
【0046】
乗算器316及び加算器318での演算処理は、次式で表せる。(信号140)−{(補正係数)×(信号150){=(信号160)}}=出力信号170
なお、視感度補正手段30は、補正係数を任意に設定する補正係数設定回路や、設定された補正係数を適宜選択する補正係数選択回路等(図示せず)を備えていても良い。これらの回路を用いて、補正係数を諸条件に合わせて適宜調整することが好ましい。
【0047】
例えば、視感度補正手段30を所定のインターフェイス(例えば、ICバス等)を介してCPU等と接続し、CPU等から補正係数の設定や選択を行えるようにしてもよい。この場合は、CPU等により補正係数設定手段を実現できる。補正係数設定手段は、ソフトウェアにより実現しても良いし、ハードウェアにより実現してもよいし、両者を含むものであってもよい。
【0048】
図5は、補正係数を、0、4、16、24と変化させた場合の、カバー部材3で覆われた第1の受光素子21の相対感度と、波長との関係を示すグラフである。横軸は波長[nm](波長400nm〜波長1150nm)、縦軸は相対感度[%]である。
【0049】
補正係数が大きくなる程、赤外光領域での相対感度は、低くなることがわかる。例えば、波長が800[nm]の場合、補正係数が0での相対感度は約25%、補正係数が24での相対感度は約6%である。
【0050】
即ち、補正係数を変化させることで、赤外光領域での相対感度を制御できることがわかる。受光素子特性等、諸条件に応じて、補正係数を適宜設定することが好ましい。なお、ベアチップ(受光部20がカバー部材3で覆われない)での第1の受光素子21の相対感度は、波長が800[nm]、補正係数が0の場合、約5%である。受光部20がカバー部材3で覆われることにより、赤外光領域での相対感度は高まってしまう。
【0051】
表1に、光源及び補正係数を変化させた場合の、黒ガラスで覆われた照度センサの出力値(単位:count)、及び白熱灯を使用した場合の測定結果と蛍光灯を使用した場合の測定結果の比率を示す。
【0052】
【表1】
光源には、蛍光灯と白熱灯を使用している。蛍光灯は、赤外光含有量の少ない光源であり、白熱灯は、赤外光含有量の多い光源である。
【0053】
表1より、補正係数を大きくする程、赤外光含有量を低減することができ、また、蛍光灯に比べ白熱灯における赤外光含有量の低減量が大きいことがわかる。特に、補正係数が24の場合、蛍光灯と白熱灯に対する出力の比率は、約1.0となり、どちらの光源を使用しても、同等な測定結果を得る事ができる。
【0054】
これより、補正係数を大きくする程、黒ガラスで覆われた第1の受光素子21の分光特性において、赤外光領域での相対感度を低くし、該分光特性を視感度特性に近づけられることが示唆される。即ち、補正係数を制御することで、黒ガラスによる悪影響を効果的に取り除けることが実証された。
【0055】
[タイミングチャート]
図6及び図7に、ADコンバータ313におけるタイミングチャートを示す。図6は、AD変換期間が、100[ms]の場合のタイミングチャートである。図7は、AD変換期間が、50[ms]の場合のタイミングチャートである。
【0056】
ADコンバータ313が、入力信号24又は入力信号25をAD変換する期間を、期間T1とする。ADコンバータ313が、入力信号24をAD変換する期間を、期間T2、入力信号25をAD変換する期間を、期間T3とする。期間T1、期間T2、期間T3は、任意に設定できる。
【0057】
図6及び図7より、スイッチ回路311がオンのタイミングとスイッチ回路312がオンのタイミングとは一致しないことがわかる。ADコンバータ313は、スイッチ回路311がオンの時、入力信号24のみをAD変換し、スイッチ回路312がオンの時、入力信号25のみをAD変換する。つまり、ADコンバータ313は、入力信号24と入力信号25とを、時分割でAD変換する。
【0058】
期間T1が、100[ms]の場合、制御回路317は、例えば、期間T2及び期間T3を50[ms]として、スイッチ回路311及びスイッチ回路312のオン、オフの切り替えを、50[ms]毎に制御する。この場合、ADコンバータ313は、入力信号24と入力信号25とを、50[ms]毎に交互に1回取り込み、AD変換して、照度センサ用デジタル信号を1回、視感度補正用デジタル信号を1回出力する。
【0059】
期間T1が、50[ms]の場合、制御回路317は、例えば、期間T2及び期間T3を6.25[ms]として、スイッチ回路311及びスイッチ回路312のオン、オフの切り替えを、6.25[ms]毎に制御する。この場合、ADコンバータ313は、入力信号24と入力信号25とを、6.25[ms]毎に交互に4回取り込み、AD変換して、照度センサ用デジタル信号を4回、視感度補正用デジタル信号を4回出力する。取り込み回数と出力回数を増やすことで、AC電圧源の50/60Hz周波数による蛍光灯のリップル(光量のゆらぎ)を低減できる。
【0060】
なお、光センサ用半導体集積回路には、近接センサ用の赤外線LED等を駆動するための、LED駆動回路が備えられていても良い。この場合LED駆動回路の駆動のタイミングは、視感度補正手段の外部に備えられる制御回路により、近接センサ用受光素子である第3の受光素子23の出力電流に対応するデジタル信号と同期する様に制御される。従って、視感度補正手段におけるAD変換のタイミング(図6及び図7参照)と、LED駆動回路の駆動タイミングとは、別個に制御される。
【0061】
このように、本実施の形態に係る視感度補正手段によれば、同一のADコンバータを用いて2つの入力信号を交互にAD変換して演算処理することで視感度補正を行うため、微小電流に対しても精度を確保し易く、高精度な視感度補正が可能である。その結果、光センサ用半導体集積回路の検出精度を高められる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 光センサ用半導体集積回路
2 集光レンズ
3 カバー部材
10 環境光
21 第1の受光素子
22 第2の受光素子
30 視感度補正手段
313 ADコンバータ
316 乗算器
318 加算器
500 赤外光カットフィルタ(第1のフィルタ)
501 可視光カットフィルタ(第2のフィルタ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8