(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料粉末を圧縮成形したものを焼結することで形成され、両端面の少なくとも外周縁に面取り部を設けると共に、内周面にサイジングによる動圧発生部を設けた焼結金属軸受において、
外周面と前記両端面を何れもサイジング面とし、
前記面取り部の軸方向寸法を径方向寸法よりも大きくすると共に、軸方向一端側と他端側との間での前記面取り部の軸方向寸法の差を0.05mm以上でかつ0.1mm以下とし、前記面取り部の径方向寸法の差を0.02mm以下とし、これにより上下反転することで前記両端面の各端面をスラスト軸受面として使用可能としたことを特徴とする焼結金属軸受。
請求項1に記載の焼結金属軸受と、この焼結金属軸受の内周に挿通される軸部と、該軸部と一体的に回転し、前記焼結金属軸受の何れかの端面と対向する端面対向部とを備えた流体動圧軸受装置であって、
前記焼結金属軸受は、前記両端面の一方の端面を前記端面対向部と対向配置した際に前記軸部の正回転に対応する形状の動圧発生部を前記一方の端面に有すると共に、前記両端面の他方の端面を前記端面対向部と対向配置した際に前記軸部の逆回転に対応する形状の動圧発生部を前記他方の端面に有する流体動圧軸受装置。
内周面に前記焼結金属軸受が接着剤で固定されるハウジングをさらに備え、該ハウジングの内周面と前記面取り部との間に前記接着剤が保持される請求項2に記載の流体動圧軸受装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記焼結金属軸受の両端面に、スピンドルの回転方向に対応した形状の動圧溝が形成されている場合には、例えばこの軸受を上下反転させてファンモータに組み込むことで、上下一方の端面を正回転用のスラスト軸受面、他方の端面を逆回転用のスラスト軸受面として使用することが期待できる。このような使用態様が可能であれば、正逆何れの回転用のモータにも一種類の焼結金属軸受で対応することができるので、生産効率の観点からも非常に望ましい。
【0007】
しかしながら、実際の製造プロセスを考慮した場合、上述のように上下反転して正逆両回転モータ用の軸受として兼用可能な焼結金属軸受を量産することは困難である。すなわち、上述のように焼結金属軸受を上下反転して使用する場合においては、上下何れの端面を使用した場合であってもスラスト方向に同等の軸受剛性を発揮させる必要がある。ここで、スラスト方向の軸受剛性は、各端面に形成された動圧溝により発生する動圧の大きさに影響され、この動圧の大きさは、当該動圧溝の形状やサイズ(溝深さ、長さ)によって決定される。一方で、この種の焼結金属軸受においては、通常、軸部やハウジングとの組付け性を考慮して、その端面外周面及び内周縁に面取り部が設けられる(例えば、特許文献1を参照)。焼結金属軸受の外径寸法や内径寸法は、軸部やハウジングの径方向寸法との兼ね合いで変更することは難しいため、動圧溝の長さを大きくとろうとすれば、必然的に面取り部の径方向寸法を小さくせざるを得ない。
【0008】
ところが、この面取り部は、焼結金属軸受をハウジングに接着固定する場合においては、一種の接着剤溜りとして機能する。そのため、あまりに面取り部の径方向寸法を小さくすると、ハウジングの内周面に接着剤を塗布して焼結金属軸受を軸方向一端側から導入した際、導入方向に押し出された接着剤が面取り部とハウジングの内周面との対向空間(接着剤溜り)に収まり切らず、焼結金属軸受の端面にまで回り込むおそれが生じる。以上の理由より、面取り部の径方向寸法として許容できる範囲は非常に狭い。
【0009】
しかしながら、最終のプレス工程である動圧溝サイジング工程においては、焼結体の内周面に動圧溝を成形した後のサイジングピンの円滑な引抜きのために、径方向への相応のスプリングバックが必須となる。そのため、どうしても焼結体のダイへの圧入代を大きく取らざるを得ないが、径方向の圧入代を大きくとるほどスプリングバック量も大きくなるため、サイジング後の面取り部の径方向寸法が上端側と下端側とで大きくばらつき易い。これでは両端面で面取り部の径方向寸法に大きな差が生じ、スラスト軸受面積と接着剤の保持容量とを両立させる寸法設計が非常に困難になる。
【0010】
以上の事情に鑑み、上下反転することで各端面をスラスト軸受面として使用することのできる焼結金属軸受を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題の解決は、本発明に係る焼結金属軸受により達成される。すなわち、この軸受は、原料粉末を圧縮成形したものを焼結することで形成され、両端面の少なくとも外周縁に面取り部を設けると共に、内周面にサイジングによる動圧発生部を設けた焼結金属軸受において、外周面と両端面を何れもサイジング面とし、面取り部の軸方向寸法を径方向寸法よりも大きくすると共に、軸方向一端側と他端側との間での面取り部の軸方向寸法の差を0.05mm以上でかつ0.1mm以下とし、面取り部の径方向寸法の差を0.02mm以下とし、これにより上下反転することで
前記両端面の各端面をスラスト軸受面として使用可能とした点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「面取り部の軸方向寸法」とは、焼結金属軸受のうち面取り部が形成された領域の軸方向一端から他端までの軸方向の離間距離を意味し、「面取り部の径方向寸法」とは、上記面取り部が形成された領域の径方向外径端から内径端までの径方向の離間距離を意味する。
【0012】
本発明では、従来、あまり考慮されることのなかった端面外周縁の面取り部に着目し、その形状及びサイズを、スラスト軸受面積と接着剤の保持容積との観点から最適化した。すなわち、従来、径方向寸法と軸方向寸法とが同じであった(傾斜角45°の)面取り部について、その軸方向寸法を径方向寸法よりも大きくした。また、動圧発生部をサイジングで成形する際のスプリングバックで不可避的に生じる軸方向一端側と他端側との間での面取り部の軸方向寸法の差を相対的に大きくすることで、径方向寸法の差を相対的に小さくした。このように面取り部の軸方向寸法を工夫してその形状を設定することにより、面取り部の径方向寸法を小さくすると共にその上下端側での差を極力小さくすることができる。これにより、面取り部の内径側に位置する両端面の面積を相対的に大きくとって、スラスト軸受面積を確保することができる。また、この種の軸受にあっては、径方向に比べて軸方向の寸法(許容範囲)に比較的設計上の余裕があるので、軸方向寸法を比較的大きめにとったとしても接着強度の面で問題は生じない。従って、本発明によれば、上述したスラスト軸受性能及びラジアル軸受性能と、ハウジングとの接着強度を共に満たす面取り部の設計が成立可能となる。
【0013】
また、本発明に係る焼結金属軸受は、面取り部の軸方向寸法の差を0.05mm以上でかつ0.1mm以下とし、面取り部の径方向寸法の差を0.02mm以下としたものであってもよい。この範囲に設定することで、後述するように内周面及び両端面に動圧発生部としての動圧溝をサイジングで成形する場合においても、必要十分なラジアル軸受剛性及びスラスト軸受剛性を発揮することができ、かつ必要十分な接着強度を発揮することができる。
【0014】
以上の説明に係る焼結金属軸受は、例えば上記焼結金属軸受と、この焼結金属軸受の内周に挿通される軸部と、軸部と一体的に回転し、焼結金属軸受の何れかの端面と対向する端面対向部とを備えた流体動圧軸受装置として好適に提供することも可能である。また、この場合、焼結金属軸受は、その一方の端面を端面対向部と対向配置した際に軸部の正回転に対応する形状の動圧発生部を一方の端面に有すると共に、他方の端面を端面対向部と対向配置した際に軸部の逆回転に対応する形状の動圧発生部を他方の端面に有するものであってもよい。
【0015】
また、この場合、本発明に係る流体動圧軸受装置は、内周面に焼結金属軸受が接着剤で固定されるハウジングをさらに備え、ハウジングの内周面と面取り部との間に接着剤が保持されるものであってもよい。
【0016】
また、以上の説明に係る流体動圧軸受装置は、上下何れの端面もスラスト軸受面として好適に使用可能な焼結金属軸受を備えていることから、この流体動圧軸受装置と、軸部に取付けられるファンとを備えたファンモータとして好適に提供することも可能である。
【0017】
また、以上の説明に係るファンモータは、上述した理由から、当該ファンモータとして、ファンの回転方向が異なる2種類のファンモータを搭載した情報機器として好適に提供することも可能である。
【0018】
また、前記課題の解決は、本発明に係る焼結金属軸受の製造方法によっても達成される。すなわち、この製造方法は、原料粉末を圧縮成形して圧粉成形体を得る工程と、圧粉成形体を焼結して焼結体を得る工程と、焼結体にサイジングを施して焼結体の内周面に動圧発生部を成形する工程とを備えた焼結金属軸受の製造方法において、原料粉末を圧縮成形する工程において、圧粉成形体の両端面の少なくとも外周縁に面取り部を成形すると共に、焼結体をサイジングする工程において、面取り部における軸方向のサイジング代を径方向のサイジング代で除した値が、0.25以上でかつ1.5以下となるようにした点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「軸方向のサイジング代」とは、サイジング前後での各面取り部の軸方向寸法の変化量を意味し、「径方向のサイジング代」とは、サイジング前後での各面取り部の径方向寸法の変化量を意味する。
【0019】
このように、本発明に係る製造方法では、動圧発生部のサイジング工程において、従来、ほとんど零か、あっても径方向のサイジング代に比べて極めて小さかった軸方向のサイジング代を積極的に大きくとるようにした。本願ではこのことを径方向のサイジング代に対する割合で規定した。このように軸方向のサイジング代を従来よりも大きくすることで、サイジング後の面取り部の軸方向寸法が上下端の間でそれなりの差を生じたとしても、その分径方向寸法の差を極力小さくすることができる。これにより、内周面に十分な大きさ(深さ)の動圧発生部を設けつつも、面取り部の上下端の間における径方向寸法のばらつきを小さくでき、径方向寸法自体を従来に比べて小さく設計することができる。よって、何れの端面にも十分な大きさのスラスト軸受面積を付与することができ、何れの端面をスラスト軸受面として使用した場合にあっても、所要のスラスト軸受剛性を発揮させることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る焼結金属軸受の製造方法は、面取り部における軸方向のサイジング代を径方向のサイジング代で除した値が、0.5以上でかつ1.0以下となるようにしたものであってもよい。この範囲に設定することで、後述するように内周面及び両端面に動圧発生部としての動圧溝をサイジングで成形する場合においても、必要十分なラジアル軸受剛性及びスラスト軸受剛性を発揮することができる。
【0021】
また、本発明に係る焼結金属軸受の製造方法は、原料粉末を圧縮成形する工程において、圧粉成形体における面取り部の軸方向寸法が径方向寸法よりも大きくなるように、面取り部を成形するものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、上述したスラスト軸受性能及びラジアル軸受性能と、ハウジングとの接着強度を共に満たすように面取り部を設計することができるので、上下反転することで各端面をスラスト軸受面として使用することのできる焼結金属軸受を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、焼結金属軸受から見て、ハブ部の円盤部の側を「上側」、蓋部材の側を「下側」として取り扱う。もちろん、この上下方向は、実際の製品の設置態様、使用態様を限定するものではない。
【0025】
図1は、本発明に係る流体動圧軸受装置1を備えたファンモータ2、及びこのファンモータ2を搭載した情報機器3の概略断面図を示している。このファンモータ2は、いわゆる遠心タイプのファンモータ2であって、冷却すべき部品(情報機器3)のベース4に取付けられる。本実施形態では、回転方向が互いに異なる2種類のファンモータ2,2’がそれぞれ1個ずつ、合計で2個搭載されている。
【0026】
このうち、一方のファンモータ2(以後、一方のファンモータ2が正回転、他方のファンモータ2’がこれとは逆の回転を行うものとする。)は、流体動圧軸受装置1と、流体動圧軸受装置1の回転部材9に設けられた複数枚のファン5と、これらファン5を回転部材9と一体に回転させるための駆動部6とを備える。駆動部6は、例えば半径方向のギャップを介して対向させたコイル6a及びマグネット6bからなり、本実施形態では、コイル6aが固定側(ベース4)に、マグネット6bが回転側(回転部材9を構成するハブ部10)にそれぞれ固定される。
【0027】
コイル6aに通電すると、コイル6aとマグネット6bとの間の励磁力でマグネット6bが回転し、それによって、回転部材9(本実施形態ではハブ部10)の外周縁に立設された複数枚のファン5が回転部材9と一体に回転する。この回転により、各ファン5は外径方向外側への気流を生じ、この気流に引き込まれる形で、ファンモータ2の軸方向上側に設けたベース4の穴4aから吸気流が軸方向下側に向けて生じる。このようにして情報機器3の内部に気流を発生させることで、情報機器3の内部に発生した熱を外部に放出(冷却)可能としている。
【0028】
図2は、ファンモータ2に組み込まれた流体動圧軸受装置1の断面図を示している。この流体動圧軸受装置1は、主にハウジング7と、ハウジング7の内周に固定される焼結金属軸受8、および、焼結金属軸受8に対して相対回転する回転部材9とを備えている。
【0029】
回転部材9は、ハウジング7の上端開口側に配置されるハブ部10と、焼結金属軸受8の内周に挿入される軸部11とを有する。
【0030】
ハブ部10は、ハウジング7の上端開口側を覆う円盤部10aと、円盤部10aから軸方向下側に伸びる第1筒状部10bと、第1筒状部10bよりも外径側に位置し、円盤部10aから軸方向下側に伸びる第2筒状部10cと、第2筒状部10cの軸方向下端からさらに外径側に伸びる鍔部10dとで構成される。円盤部10aは、ハウジング7の内周に固定された焼結金属軸受8の一方の端面(上端面8b)と対向している。よって、本実施形態では、円盤部10aが端面対向部に相当する。また、複数枚のファン5は、鍔部10dの外周縁から立設する形でハブ部10と一体的に設けられている。
【0031】
軸部11は、この実施形態ではハブ部10と一体に形成され、その下端にフランジ部12を別体に有する。この場合、フランジ部12の上端面12aは焼結金属軸受8の他方の端面(下端面8c)と対向する。もちろん、軸部11をハブ部10と別体に形成することもでき、その際には、軸部11の上端をハブ部10の中央に設けた孔に圧入、接着等の手段により固定することも可能である。あるいは、異材料で形成される軸部11とハブ部10の一方をインサート部品として他方を金属や樹脂の射出成形で形成することもできる。
【0032】
ハウジング7は、その軸方向両端を開口した筒状をなし、その下端開口側を蓋部材13で封口している。また、ハウジング7の内周面7aは焼結金属軸受8に固定されると共に、その外周面7bは情報機器3のベース4に固定されている。ハウジング7の上端面7cと、ハブ部10の円盤部10aの下端面10a1との軸方向の対向間隔は、焼結金属軸受8の上端面8bと円盤部10aの下端面10a1との対向間隔より大きく、ここでは、回転駆動時のロストルク増加に実質的に影響しないとみなせる程度の大きさに設定されている。
【0033】
ハウジング7の外周上側には、上方に向かうにつれて外径寸法が増加するテーパ状のシール面7dが形成される。このテーパ状のシール面7dは、第1筒状部10bの内周面10b1との間に、ハウジング7の閉塞側(下方)から開口側(上方)に向けて半径方向寸法を漸次縮小させた環状のシール空間Sを形成する。このシール空間Sは、軸部11およびハブ部10の回転時、後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間の外径側と連通しており、各軸受隙間を含む軸受内部空間との間で潤滑油の流通を可能としている。また、潤滑油を軸受内部空間に充填した状態では、潤滑油の油面(気液界面)は、常にシール空間S内に維持されるよう、潤滑油の充填量が調整される。
【0034】
焼結金属軸受8は、例えば銅(純銅だけでなく銅合金を含む)や鉄(純鉄だけでなくステンレスなどの鉄合金を含む)などの金属を主成分とする原料粉末を圧縮成形し、焼結してなる焼結金属の多孔質体であり、概して円筒形状をなす。焼結金属軸受8の内周面8aの全面又は一部には、動圧発生部として複数の動圧溝8a1を配列した領域が形成される。本実施形態では、この動圧溝8a1配列領域は、
図3に示すように、円周方向に対して所定角傾斜させた複数の動圧溝8a1と、これら動圧溝8a1を円周方向に区画する傾斜丘部8a2と、円周方向に伸びて各動圧溝8a1を軸方向で区画する帯部8a3(傾斜丘部8a2、帯部8a3ともに
図3でクロスハッチングを付した部分)とをヘリングボーン形状に配列してなるもので、軸方向に離隔して2箇所に形成される。この場合、上側の動圧溝8a1配列領域と、下側の動圧溝8a1配列領域はともに、軸方向中心線(帯部8a3の軸方向中央を円周方向につなぐ仮想線)に対して軸方向対称に形成されており、その軸方向寸法は互いに等しい。
【0035】
焼結金属軸受8の上端面8bの全面又は一部には、動圧発生部としての複数の動圧溝8b1を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば
図4(a)に示すように、スパイラル状に伸びる複数の動圧溝8b1を円周方向に並べて配列した領域が形成されている。この際、動圧溝8b1のスパイラルの向きは、回転部材9の正回転方向に対応した向きに設定される。上記構成の動圧溝8b1配列領域は、
図2に示す流体動圧軸受装置1を回転駆動させた状態では、対向するハブ部10の円盤部10aの下端面10a1との間に後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する。
【0036】
また、焼結金属軸受8の下端面8cの全面又は一部には、動圧発生部としての複数の動圧溝8c1を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば
図4(b)に示すように、スパイラル状に伸びる複数の動圧溝8c1を円周方向に並べて配列した領域が形成されている。この際、動圧溝8c1のスパイラルの向きは、この焼結金属軸受8を上下反転させて下端面8cをハブ部10の下端面と対向させた状態(
図1のファンモータ2’を参照)で、回転部材9の逆回転に対応した向きに設定される。従って、
図2に示す設置態様では、回転部材9のフランジ部12の正回転方向に対応した向き(フランジ部12との間に動圧を発生可能な向き)となる。上記構成の動圧溝8c1配列領域は、
図2に示す流体動圧軸受装置1を回転駆動させた状態では、対向するフランジ部12の上端面12aとの間に後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(
図2を参照)。
【0037】
スラスト軸受隙間は、流体動圧軸受装置1を組立てた時点で自動的に設定される。すなわち、流体動圧軸受装置1を
図2の如く組立てた状態では、ハウジング7に固定した焼結金属軸受8を軸方向に挟む位置に、フランジ部12とハブ部10の円盤部10aとが配置される。よって、ハブ部10の下端面10a1とフランジ部12の上端面12aとの対向間隔から、焼結金属軸受8の軸方向寸法を減じた値が双方のスラスト軸受隙間の総和に設定される。
【0038】
焼結金属軸受8の外周面8dには、1又は複数本(本実施形態では3本)の軸方向溝8d1が形成される。この軸方向溝8d1は、ハウジング7に焼結金属軸受8を固定した状態では、ハウジング7の内周面7aとの間に潤滑油の流路を形成する(
図2を参照)。
【0039】
また、焼結金属軸受8の両端面8b,8cの外周縁及び内周縁には、それぞれ所定形状の外側面取り部8e(8e’)と内側面取り部8f(8f’)が形成されており、上端面8bと外周面8d、及び下端面8cと外周面8dとが外側面取り部8e,8e’でつながると共に、上端面8bと内周面8a、及び下端面8cと内周面8aとが内側面取り部8f,8f’でつながっている。
【0040】
このうち、上端面8b及び下端面8cの外周縁に位置する外側面取り部8e(8e‘)は何れも、その軸方向寸法a1(a1’)が径方向寸法b1(b1’)よりも大きく形成されている(
図3)。また、上端面8bと下端面8cとの間での外側面取り部8e,8e’の軸方向寸法の差a1−a1’(絶対値)が、径方向寸法の差b1−b1’(絶対値)よりも大きくなっている。具体的には、例えば軸方向寸法の差a1−a1’が0.05mm以上でかつ0.10mm以下となるように上下双方の外側面取り部8e,8e’が形成されている。また、径方向寸法の差b1−b1’が0.02mm以下となるように上下双方の外側面取り部8e,8e’が形成されている。このような寸法関係を有するため、外側面取り部8e,8e’は何れも、上端面8b又は下端面8cに対して45度を超える角度で傾斜している。
【0041】
このように、焼結金属軸受8の両端面8b,8c(特に上端面8b)の外周縁には、外側面取り部8e,8e’が設けられるため、例えばこの焼結金属軸受8をハウジング7の内周に接着固定した際、この外側面取り部8e(8e‘)とハウジング7の内周面7aとの間の空間は、一種の接着剤溜りとして機能する。すなわち、焼結金属軸受8のハウジング7への接着固定は、通常、ハウジング7の内周面7aに予め所定量の接着剤14を塗布し、然る後、ハウジング7の軸方向一方側(例えば、下端側)から焼結金属軸受8を導入することで行われる。この際、ハウジング7の内周面7aに塗布しておいた接着剤14は焼結金属軸受8によってその導入方向前方側へ押出される一方、上端面8bの外側面取り部8eとハウジング7の内周面7aとの間に形成される空間により接着剤14が保持される。よって、この空間が接着剤14の押出し量に比べて、当該接着剤14を保持するのに十分な大きさを有していれば、押出された接着剤14が焼結金属軸受8の上端面8bに侵入する事態を回避することができる。
【0042】
一方、上端面8b及び下端面8cの内周縁に位置する内側面取り部8f,8f‘は何れも、その軸方向寸法a2と径方向寸法b2とが等しくなるように形成されている(
図3)。また、本実施形態では、少なくとも内側面取り部8f(8f’)の軸方向寸法a2(a2‘)が、外側面取り部8e(8e’)の軸方向寸法a1(a1‘)よりも小さくなるよう形成されている。
【0043】
上記構成の流体動圧軸受装置1の内部(軸受内部空間)には潤滑流体としての潤滑油が充填される。ここで、潤滑油としては、種々のものが使用可能であり、例えば、蒸発率が小さく、かつ低温時の粘度低下が少ないエステル系の潤滑油が好適に使用される。
【0044】
上記構成の流体動圧軸受装置1において、軸部11(回転部材9)の回転時、焼結金属軸受8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2ヶ所の動圧溝8a1配列領域)は、軸部11の外周面とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部11の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1配列領域の軸方向中心側に押し込まれ、軸方向中心側の領域において潤滑油の圧力が上昇する。このような動圧溝8a1の動圧作用によって、軸部11をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とがそれぞれ構成される。
【0045】
また、焼結金属軸受8の上端面8b(動圧溝8b1配列領域)とこれに対向するハブ部10の下端面10a1との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝8b1の動圧作用により潤滑油の油膜が形成される。また、焼結金属軸受8の下端面8c(動圧溝8c1配列領域)とこれに対向するフランジ部12の上端面12aとの間のスラスト軸受隙間に、動圧溝8c1の動圧作用により潤滑油の油膜が形成される。そして、これらの油膜の圧力によって、回転部材9をスラスト双方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1および第2スラスト軸受部T2が構成される。
【0046】
以下、上述した焼結金属軸受8の製造方法の一例を主に
図5〜
図7に基づき説明する。
【0047】
すなわち、上記構成の焼結金属軸受8は、原料粉末を圧縮成形して圧粉成形体を得る圧粉成形工程(S1)と、圧粉成形体を焼結して焼結体8’を得る焼結工程(S2)と、焼結体8’にサイジングを施して、焼結体8’の少なくとも内周面8aに動圧発生部としての動圧溝8a1を成形する動圧溝サイジング工程(S3)とを主に備える。本実施形態では、焼結工程(S2)の後で動圧溝サイジング工程(S3)の前に、焼結体8’に寸法サイジングを施す寸法サイジング工程(S031)と、焼結体8’の内周面8aに回転サイジングを施す回転サイジング工程(S032)とをさらに備える。動圧溝サイジング工程(S3)を中心に各工程(S1)〜(S3)を説明する。
【0048】
(S1)圧粉成形工程
まず、最終的な製品となる焼結金属軸受8の材料となる原料粉末を用意し、これを金型プレス成形により所定の形状に圧縮成形する。具体的には、図示は省略するが、ダイと、ダイの孔内に挿入配置されるコアピンと、ダイとコアピンとの間に配設され、ダイに対して昇降可能に構成された下パンチ、および、ダイと下パンチの何れに対しても相対変位(昇降)可能に構成された上パンチとで構成される成形金型を用いて原料粉末の圧縮成形を行う。この場合、ダイの内周面とコアピンの外周面、および、下パンチの上端面とで区画形成される空間に原料粉末を充填し、然る後、下パンチを固定した状態で上パンチを下降させ、充填状態の原料粉末を軸方向に加圧する。そして、加圧しながら所定の位置まで上パンチを下降させ、原料粉末を所定の軸方向寸法にまで圧縮することで、圧粉成形体が成形される。
【0049】
また、この際、図示は省略するが、上パンチの下端面及び下パンチの上端面の外周縁及び内周縁に、成形すべき外側面取り部8e,8e’及び内側面取り部8f,8f’に対応する形状の成形型を設けておき、上述のように原料粉末を圧縮成形することで、最終製品に準じた形状(筒状)の圧粉成形体が成形されると共に、当該圧粉成形体の対応箇所に外側面取り部8e,8e’及び内側面取り部8f,8f’が成形される。
【0050】
(S2)焼結工程
上述のようにして、圧粉成形体を得た後、この圧粉成形体を原料粉末に応じた温度で焼結することにより、焼結体8’を得る。
【0051】
(S031)寸法サイジング工程、及び(S032)回転サイジング工程
そして、焼結体8’に対して寸法サイジングを施して、焼結体8’の外径寸法や内径寸法、及び軸方向寸法を最終製品に準じた寸法に矯正すると共に、内周面8aの表面開孔率を、動圧軸受として好適な割合に調整する。この段階では、焼結体8’の内周面8aに所定の動圧溝8a1配列領域は未だ形成されてない(
図5)。同様に、図示は省略するが、焼結体8’の両端面8b,8cに所定の動圧溝8b1,8c1配列領域は未だ形成されていない。そのため、寸法サイジング時、及び回転サイジング時には、上下方向の区別なく、成形金型に焼結体8’を投入することが可能となる。
【0052】
(S3)動圧溝サイジング工程
上記一連の工程を経て得られた焼結体8’に対して所定の動圧溝サイジングを施すことで、焼結体8’の内周面8aに動圧溝8a1配列領域を成形する。ここで使用する成形装置は、
図6に示すように、焼結体8’の圧入穴21aを有するダイ21と、ダイ21の圧入穴21aに挿入可能に配置されるサイジングピン22と、ダイ21とサイジングピン22との間に配設され、ダイ21に対して相対的に昇降可能に構成された下パンチ23、および、ダイ21と下パンチ23の何れに対しても昇降可能に構成された上パンチ24とを有する。この場合、ダイ21の圧入穴21aの内径寸法は、サイジングすべき焼結体8’の圧入代に応じて適宜設定される。また、サイジングピン22の外周面には、成形すべき内周面8aの動圧溝8a1配列領域に対応する形状の第1成形型が設けられると共に(
図6)、上パンチ24の下端面24a、及び下パンチ23の上端面23aにはそれぞれ、成形すべき上端面8bの動圧溝8b1配列領域、下端面8cの動圧溝8c1配列領域に対応する形状の第2成形型及び第3成形型が設けられる(図示は省略)。なお、上パンチ24の下端面24aは、焼結体8’の上端面8bよりも外径側に大きく形成されており、上パンチ24の下降による上端面8bの加圧動作により、上端面8bの外周縁に位置する外側面取り部8eを押圧可能としている。下パンチ23の上端面23aについても、上パンチ24と同様、焼結体8’の下端面8cよりも外径側に大きく形成されており、下端面8cの加圧時、下端面8cの外周縁に位置する外側面取り部8e’を押圧可能としている。
【0053】
次に、上記成形装置を用いた動圧溝サイジングの一態様を説明する。まず、
図6(a)に示すように、ダイ21の上端面21bに焼結体8’を配置した状態で、その上方から上パンチ24とサイジングピン22を下降させる。これにより、焼結体8’の内周にサイジングピン22を挿入し、サイジングピン22の外周に設けておいた第1成形型22aを内周面8aと半径方向で対向させる。そして、第1成形型22aが内周面8aの軸方向所定位置にまで到達したら、上パンチ24のみを引き続き下降させて焼結体8’の上端面8bを押圧する(
図6(b))。これにより、焼結体8’がダイ21の圧入穴21aに押込まれ、焼結体8’の外周面8dが圧迫されると共に、予め内周に挿入したサイジングピン22の第1成形型22aに内周面8aが食い付く。また、この状態から、さらに上パンチ24を下降させて、焼結体8’を上パンチ24と下パンチ23とで挟持し、外径方向への変形をダイ21により拘束された状態の焼結体8’を軸方向に圧迫することで、さらに内周面8aが第1成形型22aに食い付く(
図7(a))。このようにして、第1成形型22aの形状が内周面8aに転写され、動圧溝8a1配列領域が成形される。また、この際、上パンチ24の下端面24a及び下パンチ23の上端面23aに設けた第2成形型及び第3成形型がそれぞれ焼結体8’の上端面8b及び下端面8cに食い込むことで、上端面8bと下端面8cとに第2成形型と第3成形型の形状が転写され、対応する動圧溝8b1,8c1配列領域が成形される。
【0054】
このようにして焼結体8’の内周面8a及び両端面8b,8cに所定の動圧溝8a1〜8c1配列領域を成形した後、ダイ21を下パンチ23に対して相対的に下降させて、ダイ21による焼結体8’の拘束状態を解除する(
図7(b))。これにより、焼結体8’は外径方向へのスプリングバックを生じ、外周面8d及び外側面取り部8e,8e’の外径寸法が増加する。また、上パンチ24を上昇させて、上パンチ24と下パンチ23とによる焼結体8’の軸方向の拘束状態を解除することで(
図7(b))、焼結体8’は軸方向へのスプリングバックを生じ、外周面8d及び外側面取り部8eの軸方向寸法が増加する。また、この際、外側面取り部8e,8e’における軸方向のサイジング代(動圧溝サイジングの前後における外側面取り部8e,8e’の軸方向寸法の変化量a1−a01,a1’−a01’)を径方向のサイジング代(動圧溝サイジングの前後における外側面取り部8e,8e’の径方向寸法の変化量b1−b01,b1’−b01’)で除した値が、0.25以上でかつ1.5以下となるように、より好ましくは0.5以上でかつ1.0以下となるように、ダイ21の圧入穴21aの内径寸法、上パンチ24の下端面24aと下パンチ23の上端面23aとの最大近接距離、焼結体8’の外側面取り部8e,8e’の寸法等を設定する。ここで、上記の値(比率)は、同一の外側面取り部8e(8e’)における軸方向のサイジング代a1−a01(a1’−a01’)と径方向のサイジング代b1−b01(b1’−b01’)とに基づき算出される。また、上端側と下端側、何れの外側面取り部8e,8e’においても上記の値が上記範囲に収まるように設定される。これにより得られた焼結体8’は、最終製品と同一の形状、サイズをなし、上端側と下端側との間での外側面取り部8e,8e’の軸方向寸法の差a1−a1’が、上述の如く0.05mm以上でかつ0.10mm以下に収まる。また、径方向寸法の差b1−b1’が、上述の如く0.02mm以下に収まる。
【0055】
この種のサイジング工程においては、焼結体8’の内周面8aに動圧溝8a1を成形した後のサイジングピン22の円滑な引抜きのために、径方向への相応のスプリングバックが必須となるが、その性質上、スプリングバック量を厳密に管理することは難しい。また、上述のように、焼結体8’に対して上下一方の側から(本実施形態では上パンチ24により)焼結体8’を押圧することで、どうしても焼結体8’への押圧態様が上下で不均一となり易い。これに対して、本発明では、軸方向のサイジング代を従来に比べて積極的に大きくとるようにした。具体的には、外側面取り部8e(8e’)の軸方向のサイジング代a1−a01(a1’−a01’)を径方向のサイジング代b1−b01(b1’−b01’)で除した値を0.25以上でかつ1.5以下とした(従来は0.25未満)。これにより、サイジング後の外側面取り部8e(8e’)の軸方向寸法a1(a1’)が上下端の間で相応の差を生じたとしても、その分径方向寸法の差b1−b1’を極力小さく(0.02mm以下)することができる。これにより、内周面8aに十分な大きさ(深さ)の動圧溝8a1を設けつつも、外側面取り部8e,8e’の上下端の間における径方向寸法b1,b1’のばらつきを小さくでき、径方向寸法b1,b1’自体を従来に比べて小さく設計することができる。よって、何れの端面8b,8cにも十分な大きさのスラスト軸受面積を付与することができ、何れの端面8b(8c)をスラスト軸受面として使用した場合(
図1に示す左右何れかのファンモータ2,2’)にあっても、所要のスラスト軸受剛性を発揮させることが可能となる。
【0056】
また、本発明では、外側面取り部8e(8e’)の軸方向寸法a1(a1’)を径方向寸法b1(b1’)よりも大きくすると共に、軸方向一端側と他端側との間での外側面取り部8e,8e’の軸方向寸法の差a1−a1’を、径方向寸法の差b1−b1’よりも大きくした。このように外側面取り部8e,8e’の軸方向寸法a1,a1’を工夫してその形状を設定することにより、外側面取り部8e,8e’の径方向寸法b1,b1’を小さくすると共にその上下端側での差を極力小さくすることができる。これにより、外側面取り部8e,8e’の内径側に位置する両端面8b,8cの面積を相対的に大きくとって、スラスト軸受面積を確保することができる。また、この種の軸受8にあっては、径方向に比べて軸方向の寸法(許容範囲)に比較的設計上の余裕があるので、軸方向寸法a1(a1’)を比較的大きめにとったとしても接着強度の面で問題は生じない。従って、本発明によれば、上述したスラスト軸受性能及びラジアル軸受性能と、ハウジング7との接着強度を共に満たす外側面取り部8e,8e’の設計が成立可能となる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る焼結金属軸受8及びその製造方法は上記形態には限られることなく、本発明の範囲内において種々の変形、変更が可能なことはもちろんである。
【0058】
例えば、上記実施形態では、動圧溝サイジング工程において、ダイ21に焼結体8’を圧入すると共に、上パンチ24及び下パンチ23で焼結体8’を軸方向に圧縮することで内周面8aへの動圧溝8a1配列領域の成形を行う場合を例示したが、可能であれば、ダイ21への圧入なしで軸方向への圧入のみで焼結体8’の内周面8aに動圧溝8a1配列領域を形成しても構わない。また、軸方向圧縮に際しての上パンチ24及び下パンチ23の移動態様についても上記例示の形態には限られない。例えば、上パンチ24を下降させて下パンチ23との間で焼結体8’を軸方向にある程度圧縮した状態から下パンチ23を上昇させてさらに焼結体8’を圧縮する等、他の押圧態様を採用することも可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、内周面8aの動圧発生部として、複数の動圧溝8a1と、これら動圧溝8a1を円周方向に区画する傾斜丘部8a2と、円周方向に伸びて各動圧溝8a1を軸方向で区画する帯部8a3とをヘリングボーン形状に配列してなるものを例示したが、もちろんこれ以外の形状をなす動圧溝8a1配列領域に対しても本願発明を適用することは可能である。例えば
図8に示すように、帯部8a3を省略して、動圧溝8a1と傾斜丘部8a2をそれぞれ軸方向に連続させた形態を取ることも可能である。また、上端面8b又は下端面8cの動圧発生部についても同様で、スパイラル形状をなす動圧溝8b1,8c1配列領域に限らず、他の形状をなす動圧溝8b1,8c1配列領域を形成しても構わない。
【0060】
また、上記実施形態では、焼結金属軸受8の内周面8aの動圧溝8a1が、外側面取り部8e(8e’)と連続する内周面8a、及び上端面8b(又は下端面8c)と同一平面レベルに存在する場合(この場合、動圧溝8a1配列領域間の領域が動圧溝8a1と同一平面レベルに存在する)を例示したが、動圧溝8a1の区画部(傾斜丘部8a2、帯部8a3など)が内周面8a、上端面8b又は下端面8cと同一平面レベルに存在するよう、動圧溝8a1及びその区画部を成形するようにしてもよい。
【0061】
また、本発明に係る流体動圧軸受装置1は、上記例示の如き遠心タイプのファンモータ2だけでなく、軸流タイプなど他のタイプのファンモータ2にも適用可能である。もちろん、ファンモータ2に限ることなく、HDD等のディスク駆動装置に用いられるスピンドルモータや、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ等、高速回転下で使用される情報機器3用の小型モータ、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ等、種々のモータ駆動用軸受装置として好適に使用することが可能である。この際、上下反転して使用する以外の用途にも本発明を適用可能であることはもちろんである。