特許第6347941号(P6347941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347941
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】液状栄養剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/115 20160101AFI20180618BHJP
【FI】
   A23L33/115
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-250990(P2013-250990)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-107075(P2015-107075A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷 泰代
【審査官】 北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−169735(JP,A)
【文献】 特開平10−139683(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141316(WO,A1)
【文献】 特開2009−102235(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/120717(WO,A1)
【文献】 食品と開発, 2004, 39(7), p.60-61
【文献】 食品と科学, 2007, 49(4), p.16-23
【文献】 月刊フードケミカル, 2011, 27(10), p.11-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00−33/29
A61K 38/00−38/58
A61K 31/00−31/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状栄養剤において、100mL中、EPA・DHAを100〜300mg、たんぱく質を3〜15g、前記EPA・DHAを含む魚油を0.1〜3g、ナトリウムを150〜190mg含有し、カロリーが140〜200Kcal/100mLである液状栄養剤。
【請求項2】
100mL中、脂質を1〜15g、炭水化物を10〜30g含有する請求項に記載の液状栄養剤。
【請求項3】
100mL中、フレーバーを、1.0〜3.5g含有する請求項1又は2に記載の液状栄養剤。
【請求項4】
前記フレーバーが、野菜スープ風味、和風だし風味、クリームシチュー風味、ビーフシチュー風味、カレー風味、味噌汁風味、豚汁風味、クラムチャウダー風味またはラーメン風味のいずれかである請求項に記載の液状栄養剤。
【請求項5】
ビタミン、ミネラル及び微量元素の少なくとも一つを含む請求項1〜のいずれかに記載の液状栄養剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に経口または経管により栄養素を補給するための液状栄養剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴い、日常の食生活で不足しがちな栄養素を補給するための液状栄養剤が注目されており、これまでに種々の栄養剤が提案され市販されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3393946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの液状栄養剤は、必要な栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、微量元素など)が多く含まれ、さらに、近年、必須脂肪酸として重要視されているn−3系脂肪酸のEPA・DHAが、血栓生成抑制、抗炎症や加齢黄班変性症の予防など様々な効能・効果が認められており、それらの液状栄養剤への添加が必要とされている。
【0005】
これらの液状栄養剤は、必要な栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、微量元素など)が多く含まれるため、非常に濃厚であるため、独特の臭み、えぐ味、苦味など有しているものが多い。さらに、液状栄養剤にEPA・DHAを添加することによって、EPA・DHAは魚油由来の原料を使用するため魚特有の臭みがあるので、液状栄養剤の風味を劣化させる原因となり、摂取する場合には非常に飲みづらいという状況がある。
【0006】
本発明の目的は、必須脂肪酸であり臨床での有用性が高いEPA・DHAを含有しつつも、抵抗感なく毎日の食事として、摂取できる液状栄養剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
【0008】
(1)本発明は、液状栄養剤において、100mL中、EPA・DHAを100〜300mg、たんぱく質を3〜15g、前記EPA・DHAを含む魚油を0.1〜3g、ナトリウムを100mL中、150〜190mg含有し、カロリーが140〜200Kcal/100mLである液状栄養剤である。
液状栄養剤である。
【0011】
)本発明は、100mL中、脂質を1〜15g、炭水化物を10〜30g含有する上記(1)に記載の液状栄養剤である。
【0013】
)本発明は、100mL中、フレーバーを、1.0〜3.5g含有する上記(1)又は(2)のいずれかに記載の液状栄養剤である。
【0014】
)本発明は、前記フレーバーが、野菜スープ風味、和風だし風味、クリームシチュー風味、ビーフシチュー風味、カレー風味、味噌汁風味、豚汁風味、クラムチャウダー風味またはラーメン風味のいずれかである上記()に記載の液状栄養剤である。
【0015】
)本発明は、ビタミン、ミネラル及び微量元素の少なくとも一つを含む上記(1)〜()のいずれかに記載の液状栄養剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液状栄養剤は、EPA・DHAを含有し、抵抗感なく毎日の食事として、栄養素を摂取できる液状栄養剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の液状栄養剤は、栄養補給及びカロリー補給を目的として栄養素を含むものである。カロリーは100Kcal/100mL以上、好ましくは140〜220Kcal/100mL、より好ましくは160〜200Kcal/100mL含まれるものである。栄養素としては、たんぱく質、脂質、炭水化物を含み、さらに、ビタミン、ミネラル、微量元素および機能成分からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の液状栄養剤は、EPA・DHAを、100〜300mg/100mL、好ましくは100〜200mg/100mL、より好ましくは100〜150mg/100mL含むものである。EPA・DHAの配合比は、一般的にはEPA40〜60%、DHA40〜60%であるが、特に限定されるものではない。
【0019】
EPA・DHA含む魚油として配合する場合、その量は0.1〜3g/100mL、好ましくは0.2〜2g/100mL、より好ましくは0.5〜1.5g/100mL含まれるものである。この場合、EPA・DHAを、100〜300mg/100mL、好ましくは100〜200mg/100mL、より好ましくは100〜150mg/100mL含むようにできることが好ましい。
【0020】
EPA・DHAは、日本人の食事摂取基準(2010年版)において1日の目標量(1000mg/1日)が設定されており、必須脂肪酸とされている。EPA・DHAの効果としては、血栓生成抑制作用や抗炎症作用(間接リウマチ等)、脂質代謝改善作用、加齢黄班変性症予防作用などが知られており、特に高齢者では加齢に伴い、脂質異常症や加齢黄班変性症が発症する割合は高くなる為、栄養剤への添加は重要視されている。EPA・DHAは、魚油から抽出した原料を配合しても良いが、EPA・DHAを含む魚油として配合しても良い。魚油としては、サバ、サンマ、サケ、ブリ、イワシなど青物の魚や、クロマグロ、ミナミマグロ等の魚油が挙げられる。
【0021】
本発明の液状栄養剤は、EPA・DHAや、これらの栄養素を濃厚に含むことにより、独特の臭み、えぐ味や苦味など有するものであるが、本発明の液状栄養剤は、たんぱく質を3〜15g/100mL、好ましくは5〜15g/100mL、より好ましくは5〜10g/100mL含むことにより、独特の臭みや、えぐ味、苦みなどの不快に感じる風味を低減させるものである。
【0022】
本発明の液状栄養剤は、さらに、ナトリウムを100〜300mg/mL、好ましくは150〜190mg/100mL、より好ましくは160〜190mg/100mL、さらに好ましくは160〜180mg/100mL含むことにより、さらに飲みやすく、風味が良好になる。
【0023】
本発明の液状栄養剤においてナトリウムは、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、クエン酸第1鉄ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムなどとして配合させることができる。
【0024】
本発明の液状栄養剤は、さらに、フレーバーを含むことで、さらに飲みやすく、風味が良好になる。ここで、フレーバーとは、飲料に香りや味を付与するために加えるものをいい、「フレーバー」として販売されているものや、「エキス」「粉末調味料」「粉末香料」「液体香料」として販売されているものなどがあげられる。その含有量としては、1.0〜3.5g/100mL、好ましくは1.5〜3.0g/100mL、より好ましくは1.5〜2.5g/100mLである。
【0025】
本発明の液状栄養剤において、フレーバーの種類としては、特に限定されないが、トマト風味等の野菜スープ味、和風だし風味(かつお、こんぶ)、クリームシチュー風味、ビーフシチュー風味、カレー風味、味噌汁風味、豚汁風味、クラムチャウダー風味、または、ラーメン風味(味噌、とんこつ、醤油)のものがあげられる。なお、フレーバーは、市販のスープの素や粉末スープを用いても良い。
【0026】
本発明の液状栄養剤においては、たんぱく質としては、動物性たんぱく質や植物性たんぱく質などの公知のものを用いることができる。なお、本発明において、たんぱく質とは、アミノ酸やペプチドも含む概念である。
【0027】
本発明で使用するたんぱく質としては、牛乳等に含まれるたんぱく質や大豆たんぱくなどが挙げられる。より具体的には、牛乳を原料とする、カゼイン、カゼイネート、乳清、トータルミルクプロテイン(TMP)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、ホエイプロテインコンセントレート(WPC)、ホエイプロテインアイソレート(WPI)、加水分解ホエイペプチド(WPH)、大豆を原料とする大豆たんぱくを用いることがより好ましい。
【0028】
TMP、MPC、WPCやWPI、大豆たんぱく等は市販されているものを用いてもよく、市販品としては、MPC80(日本新薬株式会社製)、MPC80LR(日本新薬株式会社製)、カゼインマグネシウムS(日本新薬株式会社製)、カゼインカリウムS(日本新薬株式会社製)、カゼインナトリウムCW(日本新薬株式会社製)、エンラクトHG(日本新薬株式会社製)、エンラクトCC(日本新薬株式会社製)、PROGEL800(日本新薬株式会社製)、ラクトクリスタル(日本新薬株式会社製)、WPI18855(Fonterra社製)、WPI18822(Fonterra社製)、WPI1895(Fonterra社製)、WPC392(Fonterra社製)、WPC80(Fonterra社製)、WPC7009(Fonterra社製)、WPC164(Fonterra社製)、WPC162(Fonterra社製)、WPC132(Fonterra社製)、WPC472(Fonterra社製)、プロリーナ900(不二製油株式会社製)、プロリーナ700(不二製油株式会社製)、プロリーナ800(不二製油株式会社製)、ニューフジプロ3000(不二製油株式会社製)、ニューフジプロ1700N(不二製油株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン等の必須アミノ酸、およびグリシン、アラニン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン等の非必須アミノ酸が挙げられる。これらのアミノ酸は、無機酸塩(塩酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩等)、生体内で加水分解可能なエステル体(メチルエステル等)の形態であってもよい。
【0030】
ペプチドとしては、上記アミノ酸の2以上がペプチド結合(アミド結合)を介して重合したものが用いられうる。当該ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド(アミノ酸が約10個程度のもの)、ポリペプチド(アミノ酸が数十〜数百個のもの)のいずれであってもよい。
【0031】
なお、たんぱく質、アミノ酸、ペプチドは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、たんぱく質、アミノ酸、ペプチドは、フレーバーから由来するものであっても良い。
【0032】
本発明の液状栄養剤は、脂質を1〜15g含むことが好ましい。脂質としては、ヒトが摂取可能なものであれば特に制限されず、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、植物油、動物性油脂等が挙げられる。
【0033】
飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0034】
不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α−リノレン酸等が挙げられる。
【0035】
植物油としては、ココナッツオイル、コーン油、綿実油、オリーブオイル、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、サフラワー油(紅花油)、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、モンゴンゴ油、ペカン油、松の実油、ピスタチオ油、クルミ油、ヒョウタン実油、バッファローカボチャ油、カボチャ実油、スイカ実油、アマランサスオイル、あんず油、リンゴ油、アルガンオイル、アボカド油、ババスオイル、モリンガ油、ボルネオ脂、ケープ栗油、ココアバター、キャロブオイル、コフネヤシ油、コリアンダー種油、ディカ油、アマニ油、グレープシードオイル、ヘンプオイル、カポック実油、ラッレマンチアオイル、マルーラ油、メドウフォーム油、カラシ油、ナツメグバター、オクラ油、パパイヤ油、シソ油、ペクイ油、松の実油、ケシ油、プルーン油、キヌア油、ニガー種子油、こめ油、Royle油、サッチャインチオイル、ツバキ油、アザミ油、トマト油、コムギ油、エゴマ油、サンフラワー油、胚芽油、ヤシ油、落花生油等が挙げられる。
【0036】
動物性油脂としては、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)等が挙げられる。
【0037】
上述の脂質は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、脂質は、フレーバーから由来するものであっても良い。
【0038】
本発明の液状栄養剤は、炭水化物を10〜30g含むことが好ましい。炭水化物としては、生体に吸収されてカロリー源になるものであれば特に制限はなく、例えば、単糖、二糖、および多糖が挙げられる。単糖の具体例としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等が挙げられる。二糖の具体例としては、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース等が挙げられる。多糖の具体例としては、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、デキストリン等が挙げられる。これらのうち、デキストリンを用いることが好ましい。
【0039】
デキストリンは、数個のα−グルコースがグリコシド結合によって重合した物質の総称であり、デンプンを加水分解して得ることができる。デキストリンは、小腸内での分解速度が遅く吸収が緩やかであることから、急激な血糖上昇を防止しうる。また、デキストリンを用いることにより、半固形化栄養剤の浸透圧を低減することができ、浸透圧性の下痢を予防しうる。デキストリンとしては、α−グルコースの重合度が高い高分子デキストリン、およびα−グルコースの重合度が低い低分子デキストリンのいずれを用いてもよいが、より浸透圧を低減可能な高分子デキストリンを用いることが好ましい。なお、低分子デキストリンは、マルトデキストリンとも呼ばれ、通常、3〜5個のα−グルコースが重合したものである。
【0040】
デキストリンは、自ら調製しても、市販品を用いてもよい。デキストリンを調製する場合には、公知のデンプン、例えば、トウモロコシ、ワキシーコーン、小麦、米、ワキシーライス、ワキシーミロ、豆(ソラマメ、緑豆、小豆等)、馬鈴薯、甘藷、タピオカ等に含有されるデンプンを、公知の方法により加水分解することで調製することができる。一方、市販されたデキストリンとしては、TK−16(松谷化学工業株式会社製)、サンデック♯300(三和澱粉工業株式会社製)、サンデック♯250(三和澱粉工業株式会社製)、サンデック♯150(三和澱粉工業株式会社製)等が挙げられ、好適に使用することができる。
【0041】
上述の炭水化物は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、炭水化物は、フレーバーから由来するものであっても良い。
【0042】
本発明の液状栄養剤は、ビタミンを含ませることができる。ビタミンとしては、特に制限されず、各種ビタミンがあげられ、これらを単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。液状栄養剤100mLあたりの各ビタミンの好ましい含有量は以下の通りである。
【0043】
ビタミンA:好ましくは0〜3000μg、より好ましくは20〜200μg
ビタミンD:好ましくは0.1〜50μg、より好ましくは0.1〜5.0μg
ビタミンE:好ましくは1〜800mg、より好ましくは0.2〜10mg
ビタミンK:好ましくは0.5〜1000μg、より好ましくは2〜50μg
ビタミンB1:好ましくは0.01〜40mg、より好ましくは0.1〜10mg
ビタミンB2:好ましくは0.01〜20mg、より好ましくは0.05〜10mg
ナイアシン:好ましくは0.1〜300mgNE、より好ましくは0.5〜60mgNE
パントテン酸:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは0.2〜30mg
ビタミンB6:好ましくは0.01〜60mg、より好ましくは0.1〜30mg
ビオチン:好ましくは0.1〜1000μg、より好ましくは1〜100μg
葉酸:好ましくは1〜1000μg、より好ましくは10〜200μg
ビタミンB12:好ましくは0.01〜100μg、より好ましくは0.2〜60μg
ビタミンC:好ましくは1〜2000mg、より好ましくは5〜1000mg
【0044】
本発明の液状栄養剤は、ナトリウム以外にもミネラルを含ませることができる。ミネラルとしては、特に制限されず、各種ミネラルがあげられ、これらを単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。液状栄養剤100mLあたりの各ミネラルの好ましい含有量は以下の通りである。
【0045】
カリウム:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1800mg
カルシウム:好ましくは10〜2300mg、より好ましくは30〜300mg
リン:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1500mg
マグネシウム:好ましくは1〜740mg、より好ましくは10〜150mg
【0046】
本発明の液状栄養剤は、微量元素を含ませることができる。微量元素としては、特に制限されず、各種微量元素があげられ、これらを単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。液状栄養剤100mLあたりの各微量元素の好ましい含有量は以下の通りである。
【0047】
鉄:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは1〜10mg
亜鉛:好ましくは0.1〜30mg、より好ましくは1〜15mg
銅:好ましくは0.01〜10mg、より好ましくは0.06〜6mg
ヨウ素:好ましくは0.1〜3000μg、より好ましくは1〜150μg
マンガン:好ましくは0.01〜11mg、より好ましくは0.1〜4mg
セレン:好ましくは0.1〜450μg、より好ましくは1〜35μg
クロム:好ましくは0.1〜40μg、より好ましくは1〜35μg
モリブデン:好ましくは0.1〜320μg、より好ましくは1〜25μg
【0048】
本発明の液状栄養剤には、機能成分として、ポリグルタミン酸、グルコサミン、フコイダン、コラーゲン、ヒアルロン酸、食物繊維、オリゴ糖等の機能成分を含有することができる。これらの成分は、唾液分泌促進作用、カルシウム吸収促進、保湿作用、ピロリ菌の排除、胃粘膜の保護・修復促進、持久力向上、血漿コレステロールの低下、血糖応答の改善、大腸機能の改善、および大腸がんの予防等の様々な機能を有する。
【0049】
食物繊維としては、特に制限されないが、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、不溶性ペクチン、キチン、キトサン、サイリウム種皮、低分子化アルギン酸ナトリウム等の不溶性食物繊維、水溶性ペクチン、グァーガム、コンニャクマンナン、グルコマンナン、アルギン酸、寒天、化学修飾多糖類、ポリデキストロース、難消化性オリゴ糖、マルチトール、イヌリン、カラギーナン、小麦ふすま、難消化性デキストリン(例えば、パインファイバーC(松谷化学工業社製)、ポリデキストロース、グァーガム分解物等の水溶性食物繊維等が挙げられる。これらの食物繊維は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。本発明の液状栄養剤の食物繊維の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節される。
【0050】
本発明の液状栄養剤は、さらにその他の公知の成分、例えば、保健機能成分、食品添加物、安定剤等を含んでいてもよい。
【0051】
保健機能成分とは、摂取することによって生体に対し一定の機能を発揮する成分である。例えば、難消化性オリゴ糖、糖アルコール、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)およびカゼインホスホペプチド(CPP)、キトサン、L−アラビノース、グァバ葉ポリフェノール、小麦アルブミン、豆鼓エキス、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロール植物性ステロール、大豆イソフラボン、乳塩基性たんぱく質等が挙げられる。
【0052】
難消化性オリゴ糖とは、単糖類がグリコシド結合によって結合した化合物のうち、多糖類ほどは分子量が大きくない(300〜3000程度)糖類である。前記難消化性オリゴ糖はヒトの消化酵素では分解されず、ヒトの消化酵素で分解されるものについては、上述の糖質に包含されうる。難消化性オリゴ糖を摂取することにより、整腸効果が得られうる。
【0053】
難消化性オリゴ糖としては、特に制限されないが、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。これらの難消化性オリゴ糖は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
本発明の液状栄養剤の難消化性オリゴ糖の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節される。
【0055】
糖アルコールとは、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成する糖の一種であり、小腸から体内への吸収が悪くカロリーになりにくいものである。糖アルコールは、口内細菌によって酸に代謝されにくく、歯垢の形成を防止しうる。当該糖アルコールは、低カロリー甘味料として用いられうる。
【0056】
糖アルコールとしては、エリトリトール、マルチトール、パラチノース等が挙げられる。これらの糖アルコールは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
本発明の液状栄養剤の糖アルコールの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
【0058】
CCMおよびCPPは、カルシウムの吸収を促進し、骨形成を促進しうる。当該CCMおよびCPPは、単独で用いても、混合して用いてもよい。また、CCMおよびCPPは、カルシウムと併用することが好ましい。
【0059】
本発明の液状栄養剤のCCMおよびCPPの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節される。
【0060】
本発明の液状栄養剤は、食品添加物を含有することができる。食品添加物は、食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、湿潤その他の方法によって使用するものである。食品添加物としては、栄養強化の目的以外にも、例えば、グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅、アスコルビン酸2−グルコシド、シクロデキストリン、保存料、防かび剤、酸化防止剤、着色料、マスキング剤、pH調整剤、酸味剤、乳化剤、香料等が挙げられる。
【0061】
アスコルビン酸2−グルコシドは、ビタミンC(アスコルビン酸)の2位の水酸基にグルコースがα−配位で結合した化合物であり、酸素の攻撃を受けないため通常のビタミンCよりも安定性が高いビタミンC誘導体である。アスコルビン酸2−グルコシドによって効率的にビタミンCを吸収することができる。アスコルビン酸2−グルコシドの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節される。
【0062】
シクロデキストリンとは、グルコースがグルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖である。6個のグルコースからなるものをα−シクロデキストリン、7個のグルコースからなるものをβ−シクロデキストリン、8個のグルコースからなるものをγ−シクロデキストリンという。シクロデキストリンは、アレルギー抑制効果、血糖値上昇抑制効果、乳化作用等の機能を有しうる。シクロデキストリンは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。シクロデキストリンの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節される。
【0063】
酸化防止剤は、酸化による変質を防止する機能を有する。酸化防止剤としては、特に制限されないが、アスコルビン酸およびそのナトリウム塩、エリソルビン酸およびそのナトリウム塩等が用いられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
着色料は、美しく見せる機能を有する。着色料としては、特に制限されないが、食用タール色素(食用赤色2号、3号、40号、102号、104号、105号、および106号、食用青色1号および2号、食用黄色4号および5号、食用緑色3号等)、β−カロテン、水溶性アナトー、クロロフィル誘導体(クロロフィルa、クロルフィルb、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム等)、リボフラビン、三二酸化鉄、二酸化チタン、ベニバナ黄色素、コチニール色素、クチナシ黄色素、ウコン色素、赤キャベツ色素、ビートレッド、ブドウ果皮色素、パプリカ色素、カラメル等が用いられる。これらの着色料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
マスキング剤は、原料由来の独特のえぐ味等を抑え、隠す機能を有する。マスキング剤としては、特に制限されないが、サッカリンおよびそのナトリウム塩、キシリトール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ズルチン、チクロ(サイクラミン酸)、ネオテーム、トレハロース、エリスリトール、マルチトース、パラ地ノース、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア、ソーマチン、クルクリン、リチルリチン酸二ナトリウム等が用いられうる。これらのマスキング剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
pH調整剤は、pHを調整する機能を有する。pH調整剤としては、特に制限されないが、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アジピン酸等が用いられうる。これらのpH調整剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
酸味料は、酸味の付与、食品の酸化の防止、およびpHの調整等の機能を有する。酸味料としては、特に制限されないが、酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸等が用いられる。これらの酸味料は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
乳化剤は、脂質等の油溶性成分の水への溶解性の向上等の機能を有する。乳化剤としては、特に制限されないが、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の天然乳化剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
香料は、着香・嬌臭する機能を有する。香料としては、特に制限されないが、アセトフェノン、α−アミルシンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、デカナール、デカノール、アセト酢酸エチル、ケイ皮酸エチル、デカン酸エチル、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、dl−メントール、l−メントール、サリチル酸メチル、ピペロナール、プロピオン酸、テルピネオール、バニリン、d−ボルネオール等が挙げられる。これらの香料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
安定剤は、食感改良とともに製造工程の安定化に寄与する機能を有する。安定剤としては、一般的に使用されている安定剤用いることができる。具体的には寒天、ゼラチン、セルロース、キチン、デキストラン、分岐デキストラン、グリコーゲン、イヌリン、マンナン、グルコマンナン、キシラン、プルラン、アルギン酸、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、サイクロデキストリン、ファーセレラン、加工澱粉、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム、グァーガム分解物、キサンタンガム、タマリンドガム、アラビアガム、ジェランガム、植物性たんぱく質、植物性たんぱく質分解物、動物性たんぱく質、動物性たんぱく質分解物などが例示される。これらの安定剤は、単独で用いても、2種以上を混合して安定剤として用いてもよい。なお、安定剤は、上述した食物繊維としての作用を兼ねることもできる。安定剤の含有量は、食感、安定性等を考慮して適宜調節される。
【0071】
その他の添加剤として、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、トレハロース生成酵素、トレハロース遊離酵素、グルタミナーゼ等の酵素や酵母等が用いられる。上記食品添加物の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節される。
【0072】
本発明の液状栄養剤は、公知の方法によって製造することができる。また、本発明の液状栄養剤は、例えば、連続殺菌した後に容器に充填して、製品化することができる。当該連続殺菌の方法としては、特に制限されないが、超高温短時間(UHT)殺菌、熱水殺菌、バッチ式殺菌、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の液状栄養剤を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。当該容器としては、テトラパック、カート缶、ガラス容器、金属缶、アルミパウチ、プラスチック容器等が挙げられる。これらのうち、プラスチック容器を用いることが好ましい。
【0073】
以下、本発明を、実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制
限されるものではない。
【実施例】
【0074】
(実施例)
表1、2に示す12種類の液状栄養剤(各160kcal/100ml)を作成した。
【0075】
なお、各表中、※1は、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、クエン酸3カリウム、グルコン酸亜鉛及びグルコン酸銅、※2は、水溶性ビタミン及び脂溶性ビタミン、※3は、マンガン、セレン、クロム及びモリブデンからなる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(比較例)
表3に示す6種類の液状栄養剤(各160kcal/100ml)を作成した。
【0079】
【表3】
【0080】
(評価)
実施例1〜12の液状栄養剤と、比較例1〜6について味について評価を行った。評価方法は、表4の評価基準にて評価者20名による評価を行い、その平均点を得た。結果を表5に示す。
【0081】
実施例の液状栄養剤は、風味の平均点が全て4以上であり、臭みが無く風味が良好であることが確認できた。一方、比較例1〜6については、臭みが増し、非常に飲みづらいことが明らかになった。
【0082】
【表4】


【0083】
【表5】