(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347956
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】経口用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/074 20060101AFI20180618BHJP
A61K 36/82 20060101ALI20180618BHJP
A61K 36/21 20060101ALI20180618BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20180618BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20180618BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
A61K36/074
A61K36/82
A61K36/21
A61K36/899
A61K9/20
A61K47/04
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-6403(P2014-6403)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134730(P2015-134730A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年10月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名 株式会社ポーラ ホームページ プレスリリース「健美三泉シリーズ発売」 掲載アドレス http://www.pola.co.jp/company/pressrelease/pdf/2013/po20130827.pdf http://www.pola.co.jp/company/pressrelease/2013.html 掲載日 2013年8月27日 商品 健美三泉シリーズ ビオバリア 発売日 2013年10月24日 販売者 株式会社ポーラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐子
(72)【発明者】
【氏名】三谷 信
【審査官】
横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−241174(JP,A)
【文献】
特表2008−509877(JP,A)
【文献】
特表2007−530574(JP,A)
【文献】
特開2012−001473(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/001672(WO,A1)
【文献】
特開2010−053127(JP,A)
【文献】
特開2011−136939(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101961480(CN,A)
【文献】
特開2009−046391(JP,A)
【文献】
特開2007−246470(JP,A)
【文献】
明治薬科大学研究紀要, 2007, No.36, p.1-10
【文献】
Chem Pharm Bull., 2006, Vol.54 No.3, p.359-362
【文献】
薬剤学, 2003, Vol.63 Suppl, p.212(6-3-14)
【文献】
農環研ニュース, 2007, No.86, p.6-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
霊芝、トンブリ及び茶からなる群から選択される少なくとも1種の天然成分の含有量が0.1〜90質量%であり、炭の含有量が0.001〜50質量%であり、打錠により成形される錠剤の形態であることを特徴とする、経口用組成物。
【請求項2】
霊芝、トンブリ及び茶からなる群から選択される少なくとも1種の天然成分を含む経口用組成物の打錠適性の向上方法であって、
打錠前の前記経口用組成物に、炭を添加し、
炭を添加後の前記経口用組成物における、前記天然成分の含有量が0.1〜90質量%であり、前記炭の含有量が0.001〜50質量%であることを特徴とする、打錠適性の向上方法。
【請求項3】
霊芝、トンブリ、及び茶からなる群から選択される少なくとも1種の天然成分を含む錠剤の製造方法であって、
前記天然成分の含有量が0.1〜90質量%であり、炭の含有量が0.001〜50質量%である経口用組成物を、打錠することを特徴とする、錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中国伝統医学の気血水という考えに基づき、気血水のうち水を整えるための天然成分と炭を組み合わせた経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偏った食事のため、必要な栄養素が不足してしまい、また、健康志向により、食事だけでは摂取が難しい栄養素を栄養補助食品により摂取することが一般的になってきている。加えて、平均寿命は男女とも約80歳以上となり、高齢化にともない、食事量を増やせない高齢者では特に気軽に摂取可能な栄養補助食品は人気が高い。
【0003】
目的別に多種多様な栄養補助食品が発売されており、特に女性では美容、美肌目的に発売された商品が人気で、コラーゲン、コンドロイチン硫酸塩、セラミドを配合されたものが報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、人参、枸杞子、大棗、桂皮、鬱金、酸棗仁、陳皮、冬虫夏草等の古来より、生薬として使用されてきたものを配合したもの(例えば、特許文献3参照)、疲労回復、老化抑制、抗酸化、代謝促進、血行促進目的にショウガを配合した商品等も依然人気が高い(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
一方、中国伝統医学では、気血水という考え方があり、気は目に見えない生命の基本エネルギー、血は体全体に酸素、栄養、ホルモンなどを運ぶ働き、水は体中の細胞や組織に潤いを与える赤くない水分と考えられ、この考えに基づいた健康食品が開発されている(例えば、特許文献5)。
【0005】
このような気血水に基づき開発された商品には、粉末状、錠剤等の様々な形態の栄養補助食品があるが、錠剤として製造する場合、圧縮成型の際に粉末が十分錠剤の形態にならない、又は成型時に損傷を受け商品とならない場合があった。更に結着性の不足により、成型後、充填、包装時にかけ、割れなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−073735号公報
【特許文献2】特開2013−138632号公報
【特許文献3】特開2002−275075号公報
【特許文献4】特開2007−222116号公報
【特許文献5】特開2002−253169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下なされたものであり、気血水の考え方に基づき水の改善効果を有する天然成分を含有する経口用組成物において、錠剤の結着性を改善し、打錠適性の向上及び打錠後の損傷を改善するために、水の改善効果を有する天然成分に炭を組み合わせた経口用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、気血水における水の改善効果を有する天然成分を含有する錠剤の結着性を改善し、打錠適性の向上及び打錠後の損傷を改善可能な経口用組成物を提供すべく研究を進め、意外にも、水の改善効果を有する天然成分を含む経口用組成物に、食用の炭を加えることにより顕著に錠剤の結着性を向上し、打錠適性の向上及び打錠後の損傷を改善することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
<1> 気血水における水の改善効果を有する天然成分及び炭を含有する経口用組成物。
<2> 前記天然成分が、霊芝、ウコン、クチナシ、トンブリ、茶からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載の経口用組成物。
<3> 錠剤の形態であることを特徴とする、<1>または<2>に記載の経口用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の経口用組成物について説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の具体的な実施形態にのみ限定されるものではない。
【0010】
本発明の実施態様は、気血水における水の改善効果を有する天然成分と炭を含有する経口用組成物である。
本実施態様に係る経口用組成物は、本発明者らが得た知見である、水の改善効果を有する天然成分と炭を組み合わせることにより、錠剤製造時の結着性の向上、及び打錠後の錠剤の割れ、かけ等の破損を防ぎ、錠剤の損傷を改善できる。
【0011】
(1)水の改善効果を有する天然成分
本発明の水の改善効果を有する天然成分における水の改善効果とは、体内の血液を除く体液を体中に巡らせ、不要なものを解毒、排泄し、毒素から体を守る効果を意味する。
本発明の水の改善効果を有する天然成分は、市販の天然成分で水の改善効果を有するものであれば、特段限定されないが、例えば、ハトムギ、ゴマ、キュウリ、スイカ、霊芝、ウコン、クチナシ、トンブリ、茶が例示できる。このうち、霊芝、ウコン、クチナシ、トンブリ、茶が好ましく、更に霊芝、ウコン、クチナシ、トンブリが好ましい。
これらの天然成分は水の改善効果を有する植物の根、茎、枝、葉、種、全草をそのまま粉砕、又は乾燥したもの、エタノール、水等の極性溶媒の1種又は2種以上で抽出した抽出液、その抽出液を乾燥し粉末にしたもの、これらの粉砕物、抽出物、乾燥物等をカラムや溶液間の分配により精製し、有効成分を高めたもの等が好ましく例示できる。
霊芝としては、マンネンタケ科キノコのGanoderma lucidumの抽出物、乾燥物を用いることができ、特に、子実体を水等の極性溶媒で抽出したもの、子実体を乾燥したもの、抽出物を乾燥させたものを用いることが好ましい。
ウコンとしては、ショウガ科ウコン属植物のCurcuma
domestica Valの抽出物、乾燥物を用いることができ、特に、根をエタノール等の極性溶媒で抽出したもの、根を乾燥したもの、抽出物を乾燥させたものを用いることが好ましい。
クチナシとしては、アカネ科クチナシ属の植物のGardenia
jasminoides Ellisの抽出物、乾燥物を用いることができ、特に、果実を水等の極性溶媒で抽出したもの、果実を乾燥したもの、抽出物を乾燥させたものを用いることが好ましい。
トンブリとしては、アカザ科ホウキギ属の植物のKochia scopariaL.shradの抽出物、乾燥物を用いることができ、特に、果実を水等の極性溶媒で抽出したもの、果実を乾燥したもの、抽出物を乾燥させたものを用いることが好ましい。
茶としては、ツバキ科ツバキ属の植物のCamellia
sinensisの抽出物、乾燥物を用いることができ、特に、葉をエタノール等の極性溶媒で抽出したもの、葉を乾燥したもの、抽出物を乾燥させたものを用いることが好ましい。
また、水の改善効果を示す可能性のある天然成分を経口用組成物として調製し、一定量を摂取し、摂取前後の利尿作用、むくみの改善作用等を常法により測定し、水の改善効果の高い天然成分を選択し、使用してもよい。
【0012】
本発明の前記天然成分は、通常使用される範囲で経口用組成物に含有させることができるが、0.1〜90質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜70質量%であり、更に好ましくは1〜60質量%である。上限を超えると錠剤製造適性上の課題を生じる場合もあり、下限未満では水の改善効果を求めるため、多量に摂取する必要があるため、前記の範囲で用いることが好ましい。
【0013】
(2)炭
本発明の炭は、市販の炭を使用することができる。例えば、竹炭パウダー(日本エイム製)、食用炭パウダー(株式会社日本漢方研究所)、純炭(株式会社ダステック製)が例示できる。
例えば、繊維を含む植物又は樹木を用い、その一部又は全部、及びこれらから抽出されたセルロース、科学的に合成されたセルロースを1000℃以上で焼成し粉砕し用いることが出来る。特に不純物を含まないセルロースの焼成物を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の前記炭は、通常使用される範囲で経口用組成物に含有させることができるが、0.001〜50質量%を含有させることが好ましく、より好ましくは0.01〜20質量%であり、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
上限を超えると錠剤製造適性上の課題を生じる場合や錠剤の色の課題が生じる場合があり、下限未満では結着性が低下し、打錠後の錠剤が割れ、かけ等の破損を防ぎ、錠剤の損傷を防ぐ効果が減弱するため、前記の範囲で用いることが好ましい。
【0015】
(3)本発明の経口用組成物
本発明の経口用組成物は、水の改善効果を有する天然成分と炭を含有することを特徴とする。かかる構成により、錠剤製造時の錠剤の結着性、及び打錠後の錠剤が割れ、かけ等の破損を防ぎ、錠剤の不良率を改善できる。
本発明の経口用組成物に於いては、前記の成分以外に、通常の食品、栄養補助食品、医療用食品等で使用される任意の成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルや、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、α化されていても良いデンプン、結晶セルロース、乳糖などの賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアガム、糖アルコール、還元麦糖水あめ等の結合剤、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの滑沢剤、クエン酸トリエチル、カプリン酸モノグリセリドなどの可塑剤などが例示出来る。また、錠剤として用いることが好ましく、錠剤として使用する場合、飲用しやすくするため、糖衣等のコーティングを施すことが出来る。
以下に実施例を挙げて本発明について詳細に説明を加えるが、本発明はかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0016】
以下の表1に従い本発明の経口用組成物を作製した。表1の水の改善効果を有する天然成分、炭に結晶セルロース、還元麦芽糖、ショ糖脂肪酸エステルを造粒後、打錠して錠剤状の経口用組成物を作製した。
【0017】
【表1】
【0018】
<比較例>
表1と同様に以下の表2に従い、比較例の経口用組成物を作製した。
【0019】
【表2】
【0020】
<試験例1>
実施例1〜5及び比較例1〜6の錠剤について摩損度を測定した。実施例1〜5及び比較例1〜6の錠剤のうち、割れ、かけのないものをそれぞれ無作為に25粒選び、その重量を測定した。重量測定後、回転機で25回転/分にて4分間回転させた後、ふるいにより摩損により生じた粉を取り除いた。その後、25粒の重量を測定し、回転前後の重量から摩損度を以下の式より求めた。結果は表3に示した。
摩損度(%)=100−(回転機にかけた後の25粒の重量/回転機にかける前の25粒の重量)*100
【0021】
【表3】
【0022】
表3の結果から明らかに実施例は比較例に比べ、摩損度が低かった。打錠後の結着性も高く、錠剤の物理的損傷を明らかに抑制した。特に、実施例1及び2は、比較例1及び2に比べ顕著な損傷の抑制効果が認められ、炭の有無による改善効果が顕著であった。また、実施例では比較例に比べ、錠剤作製時の割れ、かけは少なく、無作為に25粒を選択することが容易であった。このことから実施例では打錠適性の向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、錠剤の結着性を向上し、損傷しにくい錠剤の製造が可能となる。