(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347961
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】手摺
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-22985(P2014-22985)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-148122(P2015-148122A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301056041
【氏名又は名称】宮吉硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】国立 大介
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−279859(JP,A)
【文献】
特開2011−190675(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0305639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材と、
上方が開放された略U字状の凹部を有し、被固定面に固定される複数のU字型支持金物と、を備え、
前記U字型支持金物の前記凹部に、前記板材の下端部が挿入されるとともに、当該板材を挟むように膨張性固定用部材が充填されることで、前記板材が立設されている手摺であって、
前記複数のU字型支持金物の幅の合計は、前記板材の幅の1/2以下であることを特徴とする手摺。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺において、
前記板材における露出する部分の下端が直線状となるように、前記板材の下端部を前記U字型支持金物とともに覆うカバー部材をさらに備えることを特徴とする手摺。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の手摺において、
階段がなす傾斜に沿って前記被固定面が形成されていて、
前記板材は、上辺及び下辺が前記被固定面の傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されていることを特徴とする手摺。
【請求項4】
板材と、
上方が開放された略U字状の凹部を有し、被固定面に固定される複数のU字型支持金物と、を備え、
前記U字型支持金物の前記凹部に、前記板材の下端部が挿入されるとともに、当該板材を挟むように膨張性固定用部材が充填されることで、前記板材が立設されている手摺であって、
前記板材における露出する部分の下端が直線状となるように、前記板材の下端部を前記U字型支持金物とともに覆うカバー部材をさらに備え、
前記カバー部材には、前記U字型支持金物を収容する切欠が設けられていることを特徴とする手摺。
【請求項5】
請求項4に記載の手摺において、
前記複数のU字型支持金物の幅の合計は、前記板材の幅の1/2以下であることを特徴とする手摺。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の手摺において、
階段がなす傾斜に沿って前記被固定面が形成されていて、
前記板材は、上辺及び下辺が前記被固定面の傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されていることを特徴とする手摺。
【請求項7】
板材と、
上方が開放された略U字状の凹部を有し、被固定面に固定される複数のU字型支持金物と、を備え、
前記U字型支持金物の前記凹部に、前記板材の下端部が挿入されるとともに、当該板材を挟むように膨張性固定用部材が充填されることで、前記板材が立設されている手摺であって、
階段がなす傾斜に沿って前記被固定面が形成されていて、
前記板材は、上辺及び下辺が前記被固定面の傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されていることを特徴とする手摺。
【請求項8】
請求項7に記載の手摺において、
前記板材における露出する部分の下端が直線状となるように、前記板材の下端部を前記U字型支持金物とともに覆うカバー部材をさらに備えることを特徴とする手摺。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の手摺において、
前記U字型支持金物は前記被固定面に複数本のボルトによって固定されていることを特徴とする手摺。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の手摺において、
前記U字型支持金物における前記凹部をなす壁部の外側面には、上下方向に沿う補強部が設けられていることを特徴とする手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス等の板材を立設させてなる手摺が知られている。このような手摺の場合、板材の下端を床面に埋設して板材が自立しているように見せている。具体的には、長尺の鋼製のアングル材を、床となるコンクリートに埋め込むことにより、床面上に溝を形成し、当該溝に対して板材を差し込む。そして溝内において一定間隔に板材を両側から挟み込むように板材固定用部材を膨張させることで、板材を固定する。これにより板材が自立することになる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−129716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した手摺は、ある程度以上の規模の建築物に対して設置されることを前提としている。このため、床面上に板材固定用の溝を形成する工法は、一般的な住宅や小規模建築には手間がかかりすぎて不向きなものであった。
このため、本発明の課題は、床面上に溝を形成しなくとも板材を確実に立設させることができ、一般的な住宅や小規模建設に対しても容易に適用可能な手摺を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る手摺1は、例えば
図1〜
図13に示すように、
板材2と、
上方が開放された略U字状の凹部33を有し、被固定面102aに固定される複数のU字型支持金物3と、を備え、
前記U字型支持金物3の前記凹部33に、前記板材2の下端部が挿入されるとともに、当該板材2を挟むように膨張性固定用部材38が充填されることで、前記板材2が立設されていることを特徴としている。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、被固定面102aに固定された複数のU字型支持金物3の凹部33内に、板材2の下端部が挿入され、なおかつ膨張性固定用部材38が板材2を挟むように充填されることで板材2が立設しているので、従来のように床面上に板材固定用の溝を形成しなくとも、被固定面102aに固定されたU字型支持金物3を介することにより板材2を確実に立設させることができる。したがって、一般的な住宅や小規模建設に対しても容易に適用することができる手摺1を提供することができる。
【0007】
そして、請求項1記載の発明は、例えば図1に示すように、
前記複数のU字型支持金物3の幅w1,w2の合計は、前記板材2の幅w3の1/2以下であることを特徴としている。
【0008】
したがって、請求項1記載の発明によれば、複数のU字型支持金物3の幅w1,w2の合計が、板材2の幅w3の1/2以下であるので、U字型支持金物3の幅を必要以上に長くせずに済む。これによって、U字型支持金物3を取り扱いしやすくなるので施工性の向上を図ることができる。また、製造にかかるコストも低減できる。さらに板材2とU字型支持金物3との見た目上のバランスをよくすることができる。
【0009】
請求項
2記載の発明は、例えば
図1,10,11に示すように、請求項
1に記載の手摺1において、
前記板材2の下端部を前記U字型支持金物3とともに覆うカバー部材4Aをさらに備えることを特徴としている。
請求項2記載の発明によれば、板材2の下端部をカバー部材4,4A,4BがU字型支持金物3とともに覆っているので、板材2の下端部の見栄えをよくすることができる。また、U字型支持金物3及びカバー部材4,4A,4Bをさらに覆うように化粧板を設ける場合には、カバー部材4,4A,4Bをその下地材として用いることもできる。
【0010】
請求項3記載の発明は、例えば図4に示すように、請求項1又は2に記載の手摺1において、
階段100がなす傾斜に沿って前記被固定面102aが形成されていて、
前記板材2は、上辺及び下辺が前記被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されていることを特徴としている。
請求項3記載の発明によれば、階段100がなす傾斜に沿って被固定面102aが形成されていて、板材2の上辺及び下辺が被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されているので、階段100に沿って設けられた被固定面102a上に従来のような溝部を形成することが不要となり、簡易な構成を採用できるとともに、見栄えのよい手摺1を提供することができる。
【0011】
請求項4記載の発明に係る手摺1は、例えば図1〜図13に示すように、
板材2と、
上方が開放された略U字状の凹部33を有し、被固定面102aに固定される複数のU字型支持金物3と、を備え、
前記U字型支持金物3の前記凹部33に、前記板材2の下端部が挿入されるとともに、当該板材2を挟むように膨張性固定用部材38が充填されることで、前記板材2が立設されていることを特徴としている。
請求項4記載の発明によれば、被固定面102aに固定された複数のU字型支持金物3の凹部33内に、板材2の下端部が挿入され、なおかつ膨張性固定用部材38が板材2を挟むように充填されることで板材2が立設しているので、従来のように床面上に板材固定用の溝を形成しなくとも、被固定面102aに固定されたU字型支持金物3を介することにより板材2を確実に立設させることができる。したがって、一般的な住宅や小規模建設に対しても容易に適用することができる手摺1を提供することができる。
【0012】
そして、請求項4記載の発明は、例えば図1,10,11に示すように、
前記板材2の下端部を前記U字型支持金物3とともに覆うカバー部材4Aをさらに備えることを特徴としている。
したがって、請求項4記載の発明によれば、板材2の下端部をカバー部材4,4A,4BがU字型支持金物3とともに覆っているので、板材2の下端部の見栄えをよくすることができる。また、U字型支持金物3及びカバー部材4,4A,4Bをさらに覆うように化粧板を設ける場合には、カバー部材4,4A,4Bをその下地材として用いることもできる。
さらに、請求項4記載の発明は、例えば、図1,10に示すように、
前記カバー部材4,4Aには、前記U字型支持金物3を収容する切欠41が設けられていることを特徴としている。
したがって、請求項4記載の発明によれば、U字型支持金物3を収容する切欠41がカバー部材4に設けられているので、U字型支持金物3とカバー部材4とを一体化することができ、U字型支持金物3の目立たない統一感のある見た目を印象づけることができる。また、U字型支持金物3及びカバー部材4,4Aをさらに覆うように化粧板を設ける場合には、U字型支持金物3がその妨げにならなくなり、施工性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、例えば
図1に示すように、請求項
4に記載の手摺1において、
前記複数のU字型支持金物3の幅w1,w2の合計は、前記板材2の幅w3の1/2以下であることを特徴としている。
請求項5記載の発明によれば、複数のU字型支持金物3の幅w1,w2の合計が、板材2の幅w3の1/2以下であるので、U字型支持金物3の幅を必要以上に長くせずに済む。これによって、U字型支持金物3を取り扱いしやすくなるので施工性の向上を図ることができる。また、製造にかかるコストも低減できる。さらに板材2とU字型支持金物3との見た目上のバランスをよくすることができる。
【0014】
請求項6記載の発明は、例えば図4に示すように、請求項4又は5に記載の手摺1において、
階段100がなす傾斜に沿って前記被固定面102aが形成されていて、
前記板材2は、上辺及び下辺が前記被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されていることを特徴としている。
請求項6記載の発明によれば、階段100がなす傾斜に沿って被固定面102aが形成されていて、板材2の上辺及び下辺が被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されているので、階段100に沿って設けられた被固定面102a上に従来のような溝部を形成することが不要となり、簡易な構成を採用できるとともに、見栄えのよい手摺1を提供することができる。
【0015】
請求項7記載の発明に係る手摺1は、例えば図1〜図13に示すように、
板材2と、
上方が開放された略U字状の凹部33を有し、被固定面102aに固定される複数のU字型支持金物3と、を備え、
前記U字型支持金物3の前記凹部33に、前記板材2の下端部が挿入されるとともに、当該板材2を挟むように膨張性固定用部材38が充填されることで、前記板材2が立設されていることを特徴としている。
請求項7記載の発明によれば、被固定面102aに固定された複数のU字型支持金物3の凹部33内に、板材2の下端部が挿入され、なおかつ膨張性固定用部材38が板材2を挟むように充填されることで板材2が立設しているので、従来のように床面上に板材固定用の溝を形成しなくとも、被固定面102aに固定されたU字型支持金物3を介することにより板材2を確実に立設させることができる。したがって、一般的な住宅や小規模建設に対しても容易に適用することができる手摺1を提供することができる。
【0016】
そして、請求項7記載の発明は、例えば図4に示すように、
階段100がなす傾斜に沿って前記被固定面102aが形成されていて、
前記板材2は、上辺及び下辺が前記被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されていることを特徴としている。
したがって、請求項7記載の発明によれば、階段100がなす傾斜に沿って被固定面102aが形成されていて、板材2の上辺及び下辺が被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されているので、階段100に沿って設けられた被固定面102a上に従来のような溝部を形成することが不要となり、簡易な構成を採用できるとともに、見栄えのよい手摺1を提供することができる。
【0017】
請求項
8記載の発明は、例えば
図1,10,11に示すように、請求項
7に記載の手摺1において、
前記板材2の下端部を前記U字型支持金物3とともに覆うカバー部材4Aをさらに備えることを特徴としている。
請求項8記載の発明によれば、板材2の下端部をカバー部材4,4A,4BがU字型支持金物3とともに覆っているので、板材2の下端部の見栄えをよくすることができる。また、U字型支持金物3及びカバー部材4,4A,4Bをさらに覆うように化粧板を設ける場合には、カバー部材4,4A,4Bをその下地材として用いることもできる。
【0018】
請求項9記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1から8のいずれか一項に記載の手摺1において、
前記U字型支持金物3は前記被固定面102aに複数本のボルト34によって固定されていることを特徴としている。
請求項9記載の発明によれば、複数本のボルト34によってU字型支持金物3が被固定面102aに固定されているので、従来のように床面に溝を形成し当該溝内に板材を固定する場合と比しても簡易な構成とすることができる。
また、単にU字型支持金物3が接着剤によって被固定面102aに固定されていると、板厚方向に力が作用した際にU字型支持金物3を被固定面102aから引きはがす力が作用してしまうため、長期間にわたる安定性に疑問が残る。しかしながら、ボルト34によってU字型支持金物3が被固定面102aに固定されていれば引きはがす方向に力が作用したとしてもU字型支持金物3を強固に被固定面102a上に維持することができ、長期間にわたる安定性を確保することができる。
請求項10記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項1から9のいずれか一項に記載の手摺1において、
前記U字型支持金物3における前記凹部33をなす壁部32の外側面には、上下方向に沿う補強部37が設けられていることを特徴としている。
請求項10記載の発明によれば、上下方向に沿う補強部37が凹部33をなす壁部32の外側面に設けられているので、補強部37によって壁部32の強度が高められることとなり、ひいてはU字型支持金物3自体の強度も高められることとなる。
また、板材2に対して板厚方向に力が作用した際には壁部32においても壁厚方向の力が作用する。この壁厚方向の力が作用したとしても補強部37が設けられていれば、壁部32を撓ませにくくすることができ、壁部32の破損を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被固定面上に溝を形成しなくとも板材を確実に立設させることができ、一般的な住宅や小規模建設に対しても容易に適用可能な手摺を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る手摺の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るU字型支持金物の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るU字型支持金物を収容した状態の切欠を示す正面図である。
【
図4】本実施形態に係る手摺の設置工程の一工程を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る手摺の設置工程の一工程を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る手摺の設置工程の一工程を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る手摺の設置工程の一工程を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る手摺の設置工程の一工程を示す斜視図である。
【
図9】本実施形態に係る手摺の設置工程の一工程を示す斜視図である。
【
図10】本実施形態に係るカバー部の変形例を示す斜視図である。
【
図11】本実施形態に係るカバー部の変形例を示す斜視図である。
【
図12】
図10におけるXII-XII切断線から見た断面図である。
【
図13】本実施形態に係るU字型支持金物の変形例を示す斜視図である。
【
図14】本実施形態に係るU字型支持金物の変形例を示す斜視図である。
【
図15】本実施形態に係る板材の変形例を示す斜視図である。
【
図16】本実施形態に係る板材の変形例を示す斜視図である。
【
図17】本実施形態に係る手摺の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る手摺の概略構成を示す分解斜視図である。手摺1は階段100(
図4参照)に設置されるものである。手摺1には、板材2と、立設した板材2を支持するU字型支持金物3と、板材2の下端部を全幅に亘って挟持するカバー部材4とが設けられている。
【0022】
板材2は、例えばガラス板であり、階段100の傾斜に合わせて、上辺及び下辺が水平面に対し傾斜した略平行四辺形状に形成されている。板材2の下端部21は、床に当接するように面取りされている。
【0023】
U字型支持金物3は、複数(本実施形態では2つ)備えられており、板材2の下端部における両端部に設けられている。U字型支持金物3は、上方が開放された略U字状の凹部33を有するU字型支持金物である。なお、複数のU字型支持金物の幅w1,w2の合計は、板材2の幅w3の1/2以下である。
【0024】
図2はU字型支持金物3の概略構成を示す斜視図である。
図2に示すようにU字型支持金物3には、被固定面に固定される底板31と、底板31から立設する一対の壁部32とを備えており、底板31の上面及び一対の壁部32の内面とによって凹部33が形成されている。
底板31には、固定用のボルト34が挿通される複数の貫通孔35が一対の壁部32よりも外側の位置に形成されている。
一対の壁部32は、外側が開放された上面視略コ字状に形成されていて、互いの背板36が間隔を空けて対峙するように配置されている。また背板36の両端部には、外側に向けて突出し、底板31から上下方向に一様に延在する補強部37が一体的に設けられている。
互いの背板36がなす間隔、つまり凹部33内には、板材2の下端部が挿入されるとともに、当該板材2を挟むように膨張性固定用部材38が充填される。これにより、板材2がU字型支持金物3に固定されて立設されることになる。
【0025】
カバー部材4は、階段100側と板材2を挟んでその反対側にそれぞれ設けられていて、上面が階段100の各段差に対応した段状に形成されている。カバー部材4の底面は、階段100の傾斜に合わせて水平面に対して傾斜している。このカバー部材4の底面には、U字型支持金物3を収容する切欠41が両端部に設けられている。
【0026】
図3は、U字型支持金物3を収容した状態の切欠41を示す正面図である。
図3に示すように、切欠41は、カバー部材4の底面に対して略矩形状に形成されている。この切欠41は、U字型支持金物3よりも大きく形成されている。
【0027】
そして、カバー部材4に対しては、切欠41を閉塞するように重なる化粧板5が設けられている(
図8,
図9参照)。この化粧板5は例えば石膏ボード等である。階段100側のカバー部材4に重なる化粧板5Aの外形は、前記カバー部材4の切欠41が埋まった形状に対応するように形成されている。他方、前記反対側のカバー部材4に重なる化粧板5Bの外形は、前記カバー部材4から床まで覆うように形成されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る手摺1の設置工程について説明する。
図4に示すように、すでに壁101沿いに設置された階段100の前記反対側の側面に対して、当該階段100と同じように傾斜した桁材である二本の半割102を重ねて固定する。この半割102の上面(傾斜面)がU字型支持金物3を固定する被固定面102aとなる。これにより、被固定面102aが階段100に沿って設けられるとともに当該階段100の昇降方向に沿った傾斜面となる。
【0029】
次に、
図5に示すように、半割102の下方に補強用の柱103を立てて、当該補強用の柱103で半割102を支持する。
【0030】
次に、
図6に示すように、予め所定の位置に2つのU字型支持金物3が取り付けられた板材2を半割102の被固定面102a上に固定する。具体的にはU字型支持金物3と半割102とは、底板31の複数の貫通孔35に固定用のボルト34を挿通し半割102に打ち込むことで固定される(
図3参照)。
【0031】
次に、
図7に示すように、板材2の下端部における階段100側と前記反対側のそれぞれの面に対してカバー部材4が重なるように、半割102上にカバー部材4を取り付ける。このとき、切欠41内にU字型支持金物3が収まるように位置合わせをする。
【0032】
次に、
図8に示すように、階段100側のカバー部材4に対して化粧板5Aを重ねて固定する。
次に、
図9に示すように、前記反対側のカバー部材4に対して化粧板5Bを重ねて固定する。
これにより、手摺1の設置が完了する。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、被固定面102aに固定された複数のU字型支持金物3の凹部33内に、板材2の下端部が挿入され、なおかつ膨張性固定用部材38が板材2を挟むように充填されることで板材2が立設しているので、従来のように被固定面上に板材固定用の溝を形成しなくとも、被固定面102aに固定されたU字型支持金物3を介することにより板材2を確実に立設させることができる。したがって、一般的な住宅や小規模建設に対しても容易に適用することができる手摺を提供することができる。
【0034】
また、複数のU字型支持金物3の幅w1,w2の合計が、板材2の幅w3の1/2以下であるので、U字型支持金物3の幅を必要以上に長くせずに済む。これによって、U字型支持金物3を取り扱いしやすくなるので施工性の向上を図ることができる。また、製造にかかるコストも低減できる。さらに、板材2とU字型支持金物3との見た目上のバランスをよくすることができる。
【0035】
また、複数本のボルト34によってU字型支持金物3が被固定面102aに固定されているので、被固定面102aに溝を形成し当該溝内に板材2を固定する場合と比しても簡易な構成とすることができる。
また、単にU字型支持金物3が接着剤によって被固定面102aに固定されていると、板厚方向に力が作用した際にU字型支持金物3を被固定面102aから引きはがす力が作用してしまうため、長期間にわたる安定性に疑問が残る。しかしながら、ボルト34によってU字型支持金物3が被固定面102aに固定されていれば引きはがす方向に力が作用したとしてもU字型支持金物3を強固に被固定面102a上に維持することができ、長期間にわたる安定性を確保することができる。
【0036】
また、上下方向に沿う補強部37が凹部33をなす壁部32の外側面に設けられているので、補強部37によって壁部32の強度が高められることとなり、ひいてはU字型支持金物3自体の強度も高められることとなる。
また、板材2に対して板厚方向に力が作用した際には壁部32においても壁厚方向の力が作用する。この壁厚方向の力が作用したとしても補強部37が設けられていれば、壁部32を撓ませにくくすることができ、壁部32の破損を防止することが可能となる。
【0037】
また、板材2の下端部をカバー部材4がU字型支持金物3とともに覆っているので、板材2の下端部の見栄えをよくすることができる。また、U字型支持金物3及びカバー部材4をさらに覆うように化粧板5を設ける場合には、カバー部材4をその下地材として用いることもできる。
また、U字型支持金物3を収容する切欠41がカバー部材4に設けられているので、U字型支持金物3とカバー部材4とを一体化することができ、U字型支持金物3の目立たない統一感のある見た目を印象づけることができる。また、U字型支持金物3及びカバー部材4をさらに覆うように化粧板5を設ける場合には、U字型支持金物3がその妨げにならなくなり、施工性の向上を図ることができる。
【0038】
また、被固定面102aが、階段100に沿って設けられるとともに当該階段100の昇降方向に沿った傾斜面とされていて、なおかつ板材2の上辺及び下辺が被固定面102aの傾斜に略平行となる略平行四辺形状に形成されているので、階段100に沿って設けられた被固定面102a上に従来のような溝部を形成することが不要となり、簡易な構成を採用できるとともに、見栄えのよい手摺1を提供することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ガラス板からなる板材2を例示して説明したが、板材としてはアクリル板や木板など、ガラス板以外の板状部材を用いることが可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、カバー部材4が階段100の各段差に対応した形状に形成されている場合を例示して説明したが、例えば
図10に示すように、板材2における露出する部分の下端が直線状となるような形状のカバー部材4Aを用いてもよい。また、板材2における露出する部分の下端が直線状になるのであれば、
図11に示すように、複数のU字型支持金物3の間に配置され、なおかつU字型支持金物3の上面と面一となるカバー部材4Bを設けるようにしてもよい。
このように板材2における露出する部分の下端が直線状となるように、板材2の下端部をカバー部材4A,4BがU字型支持金物3とともに覆っているので、板材2の下端部の見栄えをよくすることができる。
図12は、
図10におけるXII-XII切断線から見た断面図である。この
図12に示すように、U字型支持金物3の一対の背板36の間には、板材2を挟むように膨張性固定用部材38が設けられている。また、板材2と底板31との間には例えばゴムなどのクッション材50が設けられている。
【0041】
また、上記実施形態では、本発明に係る手摺として階段100に設置された手摺1を例示して説明したが、平らな被固定面に設置される手摺に対しても本発明に係る構成は適用可能である。
また、上記実施形態では、U字型支持金物3が2つ所定の間隔を空けて配置されている場合を例示して説明したが、U字型支持金物3は3つ以上設けられていてもよく、また板材2を安定して支持できるのであればU字型支持金物3は1つであってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、U字型支持金物3の補強部37が、背板36の両端部に設けられて、底板31から上下方向に一様に延在している場合を例示して説明したが、補強部37の形状や設置箇所はこれに限定されるものではない。例えば、
図13に示すように背板36の略中央に設けられた補強部37Aや、
図14に示すように背板36の両端部に設けられ下方に向かって徐々に厚みを増す補強部37B等が挙げられる。
【0043】
なお、上記実施形態では、平面上の板材2をU字型支持金物3で支持する場合を例示して説明したが、
図15に示すL字状の板材2Aや、角がR状となった板材などのようなコーナー部用の立体的な板材をU字型支持金物3で支持することも可能である。
また、
図16に示すような湾曲した板材2BをU字型支持金物3で支持することも可能である。なお、そうする場合、U字型支持金物3の形状を板材2Bの湾曲に合わせる必要がある。湾曲した板材2Bを組み合わせれば
図17に示すように円弧状の手摺1Bを形成することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 手摺
2 板材
3 U字型支持金物
4 カバー部材
5 化粧板
21 下端部
31 底板
32 壁部
33 凹部
34 ボルト
35 貫通孔
36 背板
37 補強部
38 膨張性固定用部材
41 切欠
100 階段
101 壁
102 半割
102a 被固定面
103 柱