特許第6347967号(P6347967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347967
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】電池保護回路および電池パック
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20180618BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H02H7/18
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-46469(P2014-46469)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-128361(P2015-128361A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-247144(P2013-247144)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】荻野 直晃
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小寺 裕司
(72)【発明者】
【氏名】西脇 一貴
(72)【発明者】
【氏名】山野 光徳
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−125199(JP,A)
【文献】 特開2009−076280(JP,A)
【文献】 特開平08−116627(JP,A)
【文献】 特開2009−060734(JP,A)
【文献】 特開2007−252175(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0163134(US,A1)
【文献】 特表2012−509053(JP,A)
【文献】 特開2004−357440(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0085519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
H02H 7/00
H02H 7/10 −7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の二次電池が接続された電池セルと共に電池パックに内蔵されて用いられ、前記電池セルを保護する電池保護回路であって、
前記電池セルから外部端子に至る充放電経路に挿入されたスイッチ回路と、
前記電池セルあるいはその周辺の状態異常を検出する少なくとも一種の異常検出部と、
前記異常検出部からの入力信号が正常状態を示しているときは前記スイッチ回路を通電状態に制御し、異常状態を示しているときは非通電状態に制御するスイッチ制御部と、
前記スイッチ回路と前記スイッチ制御部との少なくともいずれか一方に異常が生じていることを検知した場合に、前記充放電経路を切断する復帰不可型の保護素子を有する経路切断ユニットとを備え、
前記異常検出部は、前記充放電経路を流れる電流を検出する電流検出部を有し、
前記経路切断ユニットは、前記保護素子を制御する切断制御部を有し、
前記切断制御部は、前記スイッチ制御部から前記スイッチ回路へと前記スイッチ回路を非通電状態に制御する制御信号が送出されている状態であるにもかかわらず、前記電流検出部が前記充放電経路を流れる電流を検知した場合に、前記スイッチ回路に異常が生じたものと判断して前記保護素子で前記充放電経路を切断し、
前記切断制御部は、前記電流検出部によって検出された前記充放電経路を流れる電流値が所定の閾値電流値以下となった後も、さらに所定の時間、前記保護素子で前記充放電経路を切断する動作を継続し、
さらに、前記切断制御部が前記スイッチ制御部の動作を確認する動作検出部であり、前記動作検出部が、前記スイッチ制御部が一定時間動作していないことを検知した場合に、前記スイッチ制御部に異常が生じたものと判断して前記保護素子で前記充放電経路を切断することを特徴とする電池保護回路。
【請求項2】
前記動作検出部がタイマー機能を有し、前記スイッチ制御部からの応答信号が所定時間内に得られなかった場合に前記スイッチ制御部に異常が生じたと判断する請求項に記載の電池保護回路。
【請求項3】
前記保護素子が、低融点金属からなる導通部と前記導通部に隣接して配置された抵抗素子とを備え、前記抵抗素子への通電時の発熱により前記低融点金属を溶断して非導通状態となる自己発熱型の保護スイッチであり、
前記切断制御部は、前記スイッチ回路および前記スイッチ制御部の少なくともいずれか一方に異常が生じたものと判断したときに、前記抵抗素子に電流を流す請求項1または2に記載の電池保護回路。
【請求項4】
単数または複数の二次電池が接続された電池セルと、
請求項1〜のいずれかに記載の電池保護回路とを備えたことを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池などの二次電池と共に電池パック内に内蔵されて二次電池を保護する電池保護回路、ならびにこの電池保護回路と電池セルとを備えた電池パックに関し、特に、異常を検知したときに二次電池からの充放電を停止させる電池保護回路およびこれを備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、一又は複数の二次電池が内蔵されていて、これらの二次電池の電極端子を直列または並列に接続した正極および負極に接続された外部端子を備えている。この外部端子間に所定の充電回路が接続されることで、電池パックの充電が行われる。また、充電された電池パックの外部端子間に負荷が接続された場合には、電池パックは所定の電圧値範囲内での放電を行う。
【0003】
このような電池パックは、過充電あるいは過放電等の異常状態から二次電池を保護するために、異常状態が発生したときには充放電を停止する制御が可能な電池保護回路を内蔵している。電池保護回路は、外部端子と二次電池の電極との間の充放電経路にこれを切断可能なスイッチ回路を介在させて、過充電あるいは過放電などの状態異常を検出したときにスイッチ制御部がスイッチ回路を遮断する制御を行うように構成される。電池保護回路が対処すべき異常状態は、過充電あるいは過放電に留まらず、例えば電池パック内の異常な温度上昇等にも対応が必要である。このため電池保護回路は、電池パック内の温度を監視する温度センサを備えて、電池パック内の温度異常を検出した場合にもスイッチ制御部がスイッチ回路を遮断する制御を行う等、種々の異常に対処することができるようになっている。
【0004】
電池パックを構成する二次電池の過充電や過放電を防止する電池保護回路として、二次電池の電極と外部端子との間に配置された充電保護用スイッチおよび放電保護用スイッチとしての2つのFETと、これら2つのFETを動作させる監視ICとを備えたものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の電池保護回路において、監視ICは、充電保護用スイッチのON/OFF状態に応じて、短絡電流が流れていると判断する電極端子間の電圧レベルの判断基準を異ならせて放電保護用スイッチをOFFするため、適切な安全性を確保しながら二次電池から負荷への効率のよい電力供給を行うことができる。
【0005】
また、二次電池の温度保護を容易に実施できる電池保護回路として、充電保護用スイッチ(FET)と放電保護用スイッチ(FET)とこれらスイッチを制御する制御用ICとに加えて、温度スイッチICと温度スイッチICの動作に伴って充電保護用スイッチを制御できるトランジスタとを備えた構成が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の電池保護回路では、充電保護用スイッチと放電保護用スイッチとを制御する制御用ICが温度制御用の端子を備えていない場合でも、簡易な構成で二次電池が異常な高温となった場合に電池パックの動作を停止させることができ、二次電池を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−030283号公報
【特許文献2】特開2011−142789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および特許文献2に開示されているように、二次電池に外部から印加される充電電圧/電流や、二次電池から負荷へと供給される放電電圧/電流の異常、また、二次電池の温度異常などを検知した場合に、二次電池の電極と外部端子との間の充放電経路の電気的接続を遮断して二次電池を保護する、電池パックに内蔵された電池保護回路が実現されている。
【0008】
しかし、電池保護回路を構成する回路素子、特に、電池セルと電池パックの外部端子との間の充放電経路を遮断する充電/放電保護用のスイッチ素子からなるスイッチ回路や、異常検知部が異常を検出したことを把握してスイッチ回路を動作させるスイッチ制御部が故障してしまった場合には、電池保護回路が正常に動作せず、二次電池に不所望な過電圧や過電流が加わるなどして、二次電池の破損や場合によっては発熱等の深刻な事態を引き起こすことになってしまう。
【0009】
本開示は、上記従来の課題を解決し、電池保護回路を構成するスイッチ回路やスイッチ回路を制御する制御部が正常に動作しない場合でも、二次電池に過剰な電圧や電流が加わることを防止することができるフェイルセーフの視点に立った電池保護回路、さらに、このような電池保護回路を備えた安全性の高い電池パックを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本願で開示する電池保護回路は、単数または複数の二次電池が接続された電池セルと共に電池パックに内蔵されて用いられ、前記電池セルを保護する電池保護回路であって、前記電池セルから外部端子に至る充放電経路に挿入されたスイッチ回路と、前記電池セルあるいはその周辺の状態異常を検出する少なくとも一種の異常検出部と、前記異常検出部からの入力信号が正常状態を示しているときは前記スイッチ回路を通電状態に制御し、異常状態を示しているときは非通電状態に制御するスイッチ制御部と、前記スイッチ回路と前記スイッチ制御部との少なくともいずれか一方に異常が生じていることを検知した場合に、前記充放電経路を切断する復帰不可型の保護素子を有する経路切断ユニットとを備え、前記異常検出部は、前記充放電経路を流れる電流を検出する電流検出部を有し、前記経路切断ユニットは、前記保護素子を制御する切断制御部を有し、前記切断制御部は、前記スイッチ制御部から前記スイッチ回路へと前記スイッチ回路を非通電状態に制御する制御信号が送出されている状態であるにもかかわらず、前記電流検出部が前記充放電経路を流れる電流を検知した場合に、前記スイッチ回路に異常が生じたものと判断して前記保護素子で前記充放電経路を切断し、前記切断制御部は、前記電流検出部によって検出された前記充放電経路を流れる電流値が所定の閾値電流値以下となった後も、さらに所定の時間、前記保護素子で前記充放電経路を切断する動作を継続し、さらに、前記切断制御部が前記スイッチ制御部の動作を確認する動作検出部であり、前記動作検出部が、前記スイッチ制御部が一定時間動作していないことを検知した場合に、前記スイッチ制御部に異常が生じたものと判断して前記保護素子で前記充放電経路を切断することを特徴とする。
【0011】
また、本願で開示する電池パックは、単数または複数の二次電池が接続された電池セルと、本願で開示する電池保護回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願で開示する電池保護回路は、電池セルあるいはその周辺の状態の異常が検出されたときに、電池セルを保護するためのスイッチ回路やスイッチ制御部に異常が発生した場合でも、これを検出して電池パックと外部端子との間の充放電経路を切断することができる。このため、スイッチ回路やスイッチ制御部に異常が発生して電池セルの保護が行えない場合でも、フェイルセーフ機能によってより確実に電池セルを保護することができる。
【0013】
また、本願で開示する電池パックは、電池セルと本願で開示する電池保護回路とを備え、過電圧や過電流が加わる異常事態であっても、発煙や発火など最悪の事態が引き起こされることが防止された安全性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態にかかる電池保護回路、およびこの電池保護回路を備えた電池パックの構成を示すブロック図である。
図2】電池保護回路の保護素子として、自己発熱型で復帰不可型の保護素子を用いた場合の経路切断ユニットの構成を説明する回路図である。
図3】第2の実施の形態にかかる電池保護回路、およびこの電池保護回路を備えた電池パックの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の電池保護回路は、単数または複数の二次電池が接続された電池セルと共に電池パックに内蔵されて用いられ、前記電池セルを保護する電池保護回路であって、前記電池セルから外部端子に至る充放電経路に挿入されたスイッチ回路と、前記電池セルあるいはその周辺の状態異常を検出する少なくとも一種の異常検出部と、前記異常検出部からの入力信号が正常状態を示しているときは前記スイッチ回路を通電状態に制御し、異常状態を示しているときは非通電状態に制御するスイッチ制御部と、前記スイッチ回路と前記スイッチ制御部との少なくともいずれか一方に異常が生じていることを検知した場合に、前記充放電経路を切断する経路切断ユニットとを備える。
【0016】
本開示の電池保護回路は、電池セルあるいはその周辺の状態の異常が検出されたときに、電池セルに過電圧や過電流が加わることを防止して保護するスイッチ回路やスイッチ制御部に異常が発生した場合でも、この異常発生を検出して電池パックと外部端子との間の充放電経路を切断する経路切断ユニットを備える。このため、スイッチ回路やスイッチ制御部に異常が発生して電池セルの保護が行えない場合でも、より確実に電池セルを保護することができるフェイルセーフ機能を備えた、電池パックに内蔵された電池保護回路を実現することができる。
【0017】
上記本開示の電池保護回路において、前記経路切断ユニットが、復帰不可型の保護素子により前記充放電経路を切断するものであることが好ましい。経路切断ユニットで充放電経路を切断する場合は、電池保護回路において異常が生じている状態であり、充放電経路を復帰不可の状態とすることで、より確実に安全を確保することができる。
【0018】
また、前記経路切断ユニットが、前記保護素子を制御する切断制御部をさらに備え、前記切断制御部は、前記スイッチ制御部から前記スイッチ回路へと前記スイッチ回路を非通電状態に制御する制御信号が送出されている状態であるにもかかわらず、前記充放電経路を流れる電流が検知された場合に、前記スイッチ回路に異常が生じたものと判断して前記保護素子で前記充放電経路を切断することが好ましい。このようにすることで、スイッチ回路がスイッチ制御部からの制御信号どおりに動作していない場合でも、切断制御部がこれを検知して保護素子により充放電経路を非導通状態として、電池セルに過電圧や過電流が加わることを確実に防止することができる。
【0019】
この場合において、前記異常検出部として、前記電池セルからの出力電流値を検出する電流検出部を備え、前記切断制御部は、前記電流検出部によって検出された前記充放電経路を流れる電流値に基づいて、前記スイッチ回路の異常を判断することが好ましい。このようにすることで、充放電経路を流れる電流値を検出する部材が一つとなり、電池保護回路の構成を簡略化することができる。
【0020】
さらに、前記切断制御部が、前記電流検出部によって検出された前記充放電経路を流れる電流値が所定の閾値電流値以下となった後も、さらに所定の時間、前記保護素子で前記充放電経路を切断する動作を継続することが好ましい。このようにすることで、充放電経路を確実に切断することができる。
【0021】
また、本開示の電池保護回路において、前記経路切断ユニットが、前記保護素子を制御する切断制御部をさらに備え、前記切断制御部が前記スイッチ制御部の動作を確認する動作検出部であり、前記動作検出部が、前記スイッチ制御部が一定時間動作していないことを検知した場合に、前記スイッチ制御部に異常が生じたものと判断して前記保護素子で前記充放電経路を切断することが好ましい。このようにすることで、切断制御部である動作検出部が、スイッチ制御部自体が動作していない異常事態を検知して保護素子により充放電経路を非導通状態とし、電池セルに過電圧や過電流が加わることを確実に防止することができる。
【0022】
この場合において、前記動作検出部がタイマー機能を有し、前記スイッチ制御部からの応答信号が所定時間内に得られなかった場合に前記スイッチ制御部に異常が生じたと判断することが好ましい。このようにすることで、コンピュータのハングアップなどを検知するいわゆるウォッチドッグタイマーを用いて、スイッチ制御部の異常を検知することができる。
【0023】
また、前記異常検出部として、前記電池セルからの出力電流値を検出する電流検出部を備え、前記動作検出部が、前記電流検出部によって検出された前記充放電経路を流れる電流値が所定の閾値電流値以下となった後も、さらに所定の時間、前記保護素子で前記充放電経路を切断する動作を継続することが好ましい。このようにすることで、充放電経路を確実に切断することができる。
【0024】
さらに、前記保護素子が、低融点金属からなる導通部と前記導通部に隣接して配置された抵抗素子とを備え、前記抵抗素子への通電時の発熱により前記低融点金属を溶断して非導通状態となる自己発熱型の保護スイッチであり、前記切断制御部は、前記スイッチ回路および前記スイッチ制御部の少なくともいずれか一方に異常が生じたものと判断したときに、前記抵抗素子に電流を流すことが好ましい。簡易な構成で導通を制御することができ、かつ、自身が充放電電流を監視するヒューズとしても機能する自己発熱型の保護スイッチを保護素子として使用することができるので、電池保護回路の全体構成をより簡素化することができる。
【0025】
また、本開示の電池パックは、単数または複数の二次電池が接続された電池セルと、上記本願で開示する電池保護回路とを備えることを特徴とする。
【0026】
このようにすることで、上記した本願にかかる電池保護回路の特徴を活かして、過電圧や過電流が加わった場合に充放電経路を非導通とするスイッチ回路やスイッチ制御部に異常が生じた場合でも、フェイルセーフ機能を備え、発煙や発火など最悪の事態が引き起こされることが防止された安全性の高い電池パックを実現することができる。
【0027】
以下、本開示の電池保護回路、および、この電池保護回路を備えた電池パックの実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明に用いられるブロック図において、それぞれの回路ブロックは所定の機能を果たすひとまとまりものとして表示されていて、これらの回路ブロックは物理的な電気回路自体に直接対応してこれを指し示すものではない。このため以下の各図の説明は、一つのブロックが複数の回路基板に分けて構成される場合や、複数のブロックが一つの電気回路素子に搭載される場合を妨げるものではない。
【0028】
(第1の実施の形態)
図1は、本開示にかかる電池保護回路を備えた電池パックの、第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態にかかる電池パック1は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池を単数もしくは複数個直列に接続して構成された電池セル2と、この電池セル2を保護する電池保護回路3とを内蔵している。なお、電池セルとしては、複数個の二次電池を並列に接続する構成も可能である。
【0030】
電池セル2の正極(+電極)端子には電池パック1の正(+)の外部端子4が、また、電池セル2の負極(−電極)端子には電池パック1の負の外部端子5が、それぞれ接続され、この電池セル2の電極端子と電池パック1の両外部端子4、5間が電池パック1の充放電経路6となる。
【0031】
電池パック1は、外部端子4、5に携帯型電子機器などの所定の電圧で動作する動作回路を備えた電子機器が接続された場合に、外部端子4、5を介して負荷としての電子機器に対する電力の供給を行う。また、外部端子4、5に、一例として100Vの商用電源に接続され、交流電圧を整流回路等で直流電圧に変換しさらに所定の充電電圧値に変換した状態で外部端子4、5間に印加する、充電回路を備えた充電装置が接続された場合には、外部端子4、5を介して電池セル2に対する充電が行われる。
【0032】
また、本実施形態の電池パック1は、電池セル2に過電圧や過電流が加わって電池セル2が破損することを防ぐ電池保護回路3を内蔵している。電池保護回路3は、電池セル2の一方の電極側(図1の場合は一例として正極側)の充放電経路6にスイッチ回路12が挿入され、スイッチ制御部11によってスイッチ回路12が開閉されて、電池セル2からの出力および電池セル2への充電の電圧/電流を制御するものである。
【0033】
電池保護回路3は、さらに、電圧検出部13、電流検出部14、電池セル2の温度や電池パック1と他の機器との接続を検出する環境検出部16を備えている。スイッチ制御部11、電圧検出部13、電流検出部14、環境検出部16は、電池保護用ICとして一体化・標準化されたものを用いることができる。また、特許文献2に記載された従来技術のように、スイッチ制御部11、電圧検出部13、電流検出部14の機能が一体化されたICに、温度検出部を含む環境検出部16として働くICを組み合わせて使用することもできる。また、環境検出部16として、外部機器との接続状態であるか否かは監視せず、単に電池セル2の温度のみを監視する構成とされる場合もある。
【0034】
電圧検出部13は、電池セル2の充放電電圧を監視し、過放電あるいは過充電電圧を検出した場合に、所定の制御信号を生成する。電流検出部7は、図1に示す例では負極側の充放電経路6に挿入された抵抗15を介して、電池セル2に流れる電流を監視し、過電流を検出した場合に、所定の制御信号を生成する。環境検出部16は、電池パック1内に配置されたサーミスタ17などの温度検出素子を用いて温度を監視し、温度異常を検出した場合に所定の制御信号を生成する。また、図1に示すように、環境検出部16は、一例として外部端子4、5との間の電池パック表面などに配置された接続検出端子7からの信号に基づいて、電池パック1が外部機器と接続された状態であるか否かを判別し、その結果を表す信号を生成する。
【0035】
電圧検出部13、電流検出部14、および環境検出部16が生成する制御信号は、スイッチ制御部11に供給され、スイッチ制御部11はその制御信号に基づいてスイッチ回路12の通電(導通)または非通電(遮断)を制御する。これにより、過充電あるいは過放電等の異常発生時に充放電経路6を遮断して、電池セル2の保護や発熱等の事故発生の防止が可能となる。また、電池パック1が外部機器に接続されていない状態では、外部端子4、5に電圧が印加されないようにして、電池パック1からの不所望な漏電やスパークの発生などを防ぐことができる。
【0036】
電圧検出部13、電流検出部14、および環境検出部16は、電池セル2あるいはその周辺の状態の異常を検出するための異常検出部の例である。なお、本開示の電池パック1の電池保護回路3が備える異常検出部は、これら図1に例示した構成に限られるものではなく、3つの異常検出部13、14、16の内のいずれか1つまたは2つのみを備える場合もあり、また、図1に例示したもの以外の異常検出部を備えることもできる。
【0037】
スイッチ回路12は、一例として過充電保護スイッチ(FET)121と過放電保護スイッチ(EFT)122と、それぞれに付随させたダイオード123と124とを備え、スイッチ制御部11からの信号がそれぞれのFETのゲートに印加されることで動作して、充放電経路6を遮断する。なお、本開示の電池パック1が備える電池保護回路3に使用されるスイッチ回路12は、図1に示した構成に限られず、スイッチング素子として一つのFETを用いたもの、FETではなくリレー等の他のスイッチング素子を用いたものなど、スイッチ制御部11からの制御信号に応じて充放電経路6を遮断/導通の制御が可能な各種のスイッチ素子を利用することができる。また、スイッチ回路12に付属させて、スイッチ回路11の両端の電圧値を把握することができる素子をさらに備えて、電池セル2の電圧値を詳細に把握しながら充放電をより細かく制御する構成とすることもできる。
【0038】
本実施形態の電池保護回路3は、さらに、充放電経路6を切断可能な経路切断ユニット18として、切断制御部19と切断制御部19からの制御信号に応じて充放電経路6を切断可能なスイッチ素子である保護素子20を備えている。
【0039】
切断制御部19は、スイッチ制御部11からスイッチ回路12への制御信号と、電流検出部14で検出された充放電経路6を流れる電流値に基づいて、保護素子20のON/OFFを制御する。より具体的には、スイッチ制御部11からスイッチ回路12において充放電経路6を非導通とする制御信号が出力されているにもかかわらず、電流検出部14において充放電経路6を流れる所定の値以上の電流が検出された場合には、スイッチ回路12がスイッチ制御部11の制御下にない状態であるため、切断制御部19は、スイッチ回路12に異常が生じたものと判断して保護素子20により充放電経路6を切断するよう制御する。保護素子20が充放電経路6を切断して非導通状態することで、スイッチ回路12に異常が生じていても結果としてスイッチ制御部11の制御通りの結果が得られる。このようにして、過電圧や過電流が生じる異常状態において、電池セル2を保護することができる。
【0040】
このような切断制御部19としては、一例として、スイッチ制御部11からの出力と電流検出部14からの電流検知を示す信号出力との論理和を出力するAND回路を用いて実現することができる。また、切断制御部19は、論理回路素子が組み合わされた論理回路ユニットとして、また、論理回路が搭載されたIC素子として実現することができる。さらに、切断制御部19は、スイッチ制御部11や電圧検出部13、電流検出部14などの異常検出部とともに一つの制御用ICを構成することができる。
【0041】
本実施形態の電池パック1が備える電池保護回路3は、保護素子20として自己発熱型でかつ復帰不可型の保護スイッチを使用することができる。
【0042】
図2は、保護素子として利用可能な自己発熱型保護スイッチの構成例を説明するための、経路切断ユニットの構成を示す回路図である。
【0043】
図2に示すように、自己発熱型の保護素子20は、電池セル2の電極端子と電池パック1の外部端子4との間の充放電経路6における、電池セル2の電極端子とスイッチ回路12との間に配置されている。本実施形態の保護素子20は、充放電経路6を自動的には復帰不可の状態に切断する復帰不可型(非復帰型)の回路素子であり、低融点金属からなる2つの導通部201、202と、これら2つの導通部201、202にそれぞれ隣接して配置された2つの抵抗素子203、204と、これら抵抗素子203、204への通電を制御する通電スイッチ素子(FET)205を備えている。切断制御部19が、スイッチ回路12に異常が生じたと判断した場合に、切断制御部19から通電スイッチ205のゲートにON電圧が印加されることで、通電スイッチ205が導通して抵抗素子203、204に通電し、抵抗素子203、204の発熱によって導通部201、202が溶断されて充放電経路6が非導通状態に切断される。
【0044】
図2に例示した自己発熱型の保護素子20は、充放電経路6に低融点金属からなる導通部201、202が配置されているため、この導通部201、202自体が単独のヒューズとして機能することができる。また、上記のように、切断制御部19からの制御信号に応じて充放電経路6を非導通状態に切断するスイッチ素子として機能することができる。このため、自己発熱型の保護素子20は、充放電経路6に不所望な大電流が流れた場合と、スイッチ回路12に異常が生じた場合との両方において、充放電経路6を切断して電池セル2を保護することができる。
【0045】
また、本実施形態にかかる電池保護回路1の経路切断ユニット18では、切断制御部19が、保護素子20によって充放電経路6を切断する切断動作を行った後も電流検知部14によって得られる充放電経路6を流れる電流値を監視し、充放電経路6を流れる電流値が所定の閾値(一例として1A)以下となっていることを確認するようになっている。このようにすることで、経路切断ユニット18による充放電経路6の切断動作が確実に行われたことを確認することができ、万一、充放電経路6を流れる電流が所定閾値以下となっていない場合には、閾値以下となるまで充放電経路6の切断動作を継続することで、電池セル3の確実な保護を行うことができる。
【0046】
またさらに、切断制御部19が、電流検知部14によって得られる充放電経路6を流れる電流値が所定の閾値(一例として1A)以下となったことを確認できた後、直ちに保護素子20による充放電経路6の切断動作を停止するのではなく、その後の所定の期間(一例として10秒間以上)保護素子20による充放電経路6の切断動作を継続させることができる。例えば、図2に示した経路切断ユニット18の場合、充放電経路6を流れる電流値が所定の閾値である1A以下となった後、所定の期間である10秒間かそれ以上の期間、切断制御部19から通電スイッチ205のゲートにON電圧を印加し続ける。このようにすることで、抵抗素子203、204への通電による発熱によって導通部201、202の溶断を確実に行うことができ、導通部201、202の溶断が不十分であって、抵抗素子203、204への通電を停止したとたんに導通部201、202が再び接続されてしまい、充放電経路6の切断が達成できなくなってしまうという事態を回避することができる。なお、充放電経路6を流れる電流値が所定の閾値以下となった後に、充放電経路6の切断動作を行い続ける所定の期間は、上記例示した10秒間以上に限られるのではなく、保護素子20の形状などを勘案して、充放電経路6が確実に切断されるために必要な時間に基づいて適宜設定すべきである。
【0047】
なお、本実施形態にかかる経路切断ユニットは、電池保護回路の異常時にこれを検出して充放電経路を切断するものであるため、上記例示したような復帰不可型の保護素子を用いて電池セルに不所望な電圧や電流が印加される事態の再発を確実に防いでいる。このように保護素子として復帰不可型の素子を用いることは、電池セルを確実に保護することができるため好ましいが、自己発熱型の保護素子としては、図2に示した抵抗素子の熱で導通部を溶断するもの以外に、導通部の代わりにバイメタル金属を用いた復帰型のヒューズを備えているものが知られており、本実施形態にかかる電池保護回路の保護素子として、このような自己復帰型の保護素子を用いることも可能である。また、本実施形態にかかる電池保護回路の保護素子として、リレー素子などの各種スイッチ素子を用いることもできる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の電池パックは、電池セルを保護する電池保護回路として、電池セルあるいはその周辺の状態異常を検出する少なくとも一種の異常検出部と、異常検出部からの入力信号が異常状態を示しているときに電池セルから外部端子に至る充放電経路に挿入されたスイッチ回路を非通電状態に制御するスイッチ制御部とを内蔵している。さらに、本実施形態の電池パックの電池保護回路は、経路切断ユニットとして充放電経路に配置された保護素子とこれを制御する切断制御部とを備え、スイッチ回路に異常が生じていることを検知した場合に、保護素子を用いて充放電経路を切断する。このため、スイッチ制御部が充放電経路の切断を意図しているにもかかわらず、スイッチ回路の異常により充放電経路を非導通状態にできない場合でも、経路切断ユニットが充放電経路を非導通として電池セルを保護することができるという、フェイルセーフ機能を備えた電池保護回路とこれを備えた電池パックを実現することができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
図3は、本開示にかかる電池パックの第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0050】
図3に示す電池パック31は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池を単数または複数個直列に接続して構成された電池セル2と、この電池セル2を保護する電池保護回路32とを備えている。
【0051】
第2の実施の形態にかかる電池パック31の基本的な構成は、第1の実施の形態にかかる電池パック1と同様である。このため、本実施形態の電池パック31において、電池パック1と同一の要素については同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを避ける。
【0052】
本実施の形態にかかる電池パック31が第1の実施の形態にかかる電池パック1と相違する点は、電池保護回路32の経路切断ユニット33において保護素子20を制御する切断制御部がスイッチ制御部11の動作を確認する動作検出部21で構成されている点である。
【0053】
動作検出部21は、たとえばウォッチドッグタイマーを備えて構成されていて、スイッチ制御部11に対して一定の間隔で信号を送信し、送信した信号に対するスイッチ制御部11からの応答を受信する。そして、タイマー機能により時間をカウントしながら、所定の時間が経過してもスイッチ制御部11からの応答信号が得られない場合に、スイッチ制御部11に異常が生じてその動作が停止していると判断して、保護素子20に充放電経路6を切断する信号を送信する。
【0054】
本実施形態にかかる電池パック31が備える電池保護回路32に使用される保護素子20は、第1の実施形態のものと同様に、たとえば図2に示した自己発熱型でかつ復帰不可型の保護素子を用いることができる。また、上記第1の実施形態で説明したように、切断制御部としての動作検出部21が、充放電経路6を切断する動作を行った後の充放電経路6を流れる電流値を監視する構成、さらに、充放電経路6を流れる電流が所定の閾値以下となった後も、所定の期間、充放電経路6を切断する切断動作を継続する構成を採用することができる。
【0055】
さらにまた、保護素子20として、バイメタル金属を用いた自己復帰型のスイッチ素子、その他リレーなどの各種のスイッチ素子を用いることもできる。
【0056】
電池セル2やその周囲の異常を検出する異常検出部から異常を知らせるための制御信号が正常に発せられていて、かつ、スイッチ回路12が正常に動作する状態であっても、検出された異常に対応してスイッチ回路12を動作させて充放電経路6を非導通状態とするスイッチ制御部11が停止していた場合には、充放電経路6が切断されずに電池セル2に過剰な電圧や電流が印加され、電池セル2を保護することができない。しかし、このような場合でも、本実施形態の電池保護回路32では、動作検出部21と保護素子20とで経路切断ユニット33を構成することで、動作検出部21が、スイッチ制御部11が停止しているなどの異常状態にあることを検知して、充放電回路6を切断することができる。このため、本実施形態の電池保護回路32も、第1の実施形態の電池保護回路3と同様に、フェイルセーフ機能を備えて、電池セル2を保護することができる。また、本実施形態の電池パック31は、高い安全性を備えたものとして実現できる。
【0057】
以上説明したように、本開示にかかる電池保護回路、およびこの電池保護回路と電池セルとを備えた電池パックは、異常を検出した場合に充放電経路を非導通にする構成とともに、このような電池保護のためのスイッチ回路、およびスイッチ回路を制御するスイッチ制御部の少なくともいずれか一方に異常が生じた場合に、この異常の発生を検出して充放電経路を切断することができる。このようなフェイルセーフ機能を備えることで、電池セルをより確実に保護することができる電池保護回路、および、電池セルとこのような電池保護回路を備えた高い安全性を備えた電池パックを実現することができる。特に、本開示にかかる電池保護回路は、電池パックに電池セルと共に内蔵されるものであるため、電池セルの保護回路を電池パック外の外部機器に備える場合と比較して、電池パック単独で電セルの保護を確実に行うことができるという利点を有している。
【0058】
なお、上記実施形態では、スイッチ回路の異常を検出して充放電経路を切断可能とする経路切断ユニットを備えた構成と、スイッチ制御部の異常を検出して充放電経路を切断可能とする経路切断ユニットを備えた構成とを、それぞれ別々の実施の形態として説明したが、経路切断ユニットとして、スイッチ制御部とスイッチ回路との両方の異常を検出可能とし、充放電経路を切断可能とする構成とすることができる。
【0059】
またその他にも、本開示の電池保護回路や電池パックは、二次電池セルの充電状況に応じて充電電圧を制御する機能を電池パックが備える構成や、残容量や電池パック自体の状態の正常/異常の別などをユーザに知らせることができる表示部を備えた構成など、電池パックが備えることができる各種の構成を備えた電池保護回路、または、電池パックとして実現することができる。
【0060】
また、上記実施形態の説明において、電池セルを構成する二次電池としてリチウムイオン電池が用いられることを例示した。しかし、本開示の電池パックに用いられる電池セルを構成する二次電池は、リチウムイオン電池に限られないことは言うまでもなく、所定の電圧により充放電が可能なイオン電池などの各種の二次電池を用いることができる。また、二次電池の特性に対応して、異常検知部が検知する異常状態の検知対象が上記例示のものと異なる場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示の電池保護回路はフェイルセーフ機能を備え、異常発生時に電池セルを保護するために充放電経路を非導通状態とするスイッチ回路やスイッチ制御部に異常が生じた場合でも、充放電経路を切断する経路切断ユニットによって、確実に電池セルを保護することができる。
【0062】
また、本開示の電池パックは、異常発生時により確実に電池セルを保護することができる電池保護回路を備えた高い安全性を実現した電池パックとして、電動バイク等の産業用に用いられる電池パックを中心に各分野において使用される電池パックとして有用である。
【符号の説明】
【0063】
1、31 電池パック
2 電池セル
3、32 電池保護回路
4、5 外部端子
6 充放電経路
11 スイッチ制御部
12 スイッチ回路
13 電圧検出部(異常検出部)
14 電流検出部(異常検出部)
16 環境検出部(異常検出部)
18 経路切断ユニット
図1
図2
図3