(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347987
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20180618BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20180618BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20180618BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20180618BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
G06F3/042 L
G06F3/042 480
G02F1/1333
G02F1/13357
G09F9/00 366A
G06F3/041 410
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-108760(P2014-108760)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-225423(P2015-225423A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103747
【氏名又は名称】京セラディスプレイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊地 康人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭典
【審査官】
▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−032005(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0321339(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/042
G02F 1/1333
G02F 1/13357
G06F 3/041
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線の透過、非透過をスイッチング制御可能な赤外線スイッチング素子が複数設けられている表示パネルと、その表示パネルの反表示面側に設置されたバックライト装置と、そのバックライト装置に設置された、赤外線を前記表示パネル側に照射する赤外線発光素子及び前記表示パネルの表示面に近接した被検知体によって反射された前記赤外線を受光する赤外線受光素子と、を有する表示装置であって、前記表示パネルに前記赤外線を透過させる赤外線透過領域を形成するとともにその赤外線透過領域を前記表示パネルの表示領域においてX方向及び/又はY方向に走査することによって前記被検知体の位置を特定する表示装置。
【請求項2】
前記赤外線スイッチング素子は液晶単位素子であり、前記表示パネルは液晶表示パネルである請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルに前記赤外線を透過させる前記赤外線透過領域を形成するとともに前記赤外線透過領域を60Hz〜200Hzの走査周波数で走査する際に、前記バックライト装置を消灯する請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルに近接した人の指等の被検知体を検知するための赤外線センサを有する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のナビゲーションシステム、タブレット端末、スマートフォン等に用いられる液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)においては、LCDに備えられたタッチパネル等を操作するために人の指が表示面に近接したときに、画面表示を起動させる、表示面にアイコン、タッチボタン、インジケータ等の隠れた表示部を表示させる、あるいは静止画表示を動画表示に切り替えるといった表示駆動をするための近接センサを設ける場合がある。この近接センサとしては、静電容量型センサ、インダクタンス型センサ等があるが、静電的な導電体である人の指等の近接を静電容量の変化として非接触で検知できる静電容量型センサが多く用いられている。
【0003】
従来の近接センサを備えたLCDの1例を
図9に示す。
図9はLCDの主要部品を分解して示す平面図であり、LCDは、液晶表示パネル22と、その液晶表示パネル22の表示面を覆うガラス板等から成る透明部材21と、液晶表示パネル22の反表示面側に設置された平板状のバックライト24と、そのバックライト24の液晶表示パネル22と反対側の主面に設置されたプラスチック等から成る保護部材25と、を有している。そして、透明部材21は、その視認者側の主面に液晶表示パネル22の周囲を囲むように、アルミニウム(Al),銀等の金属、合金、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:ITO)等の透明導電体等の材料から成る導体線26bから構成された静電容量型近接センサ26が形成されている。
図9において、26aは静電容量型近接センサ26にパルス電流を供給する給電部、23は液晶表示パネル22を嵌め込んで位置を固定するための開口23aを有する、プラスチック等から成る枠体である。
【0004】
図10は、
図9に示す主要部品を組み立てて構成されたLCDの横断面図である。
図10に示すように、視認者側(
図10で白抜き矢印で示す側)から、透明部材21、液晶表示パネル22、液晶表示パネル22を嵌め込むための開口23aを有する枠体23、バックライト24、アルミニウム等から成る、バックライト24の金属枠体24aと、保護部材25が配置されている。金属枠体24aはフレーム23に嵌めこみ、ネジ止め等の手段で固定され、保護部材25は枠体23にネジ止め等の手段で固定される。
図10において、27はバックライト24の液晶表示パネル22と反対側の主面に設けられたアルミニウム(Al)等から成る接地用の導体板である。
【0005】
そして、
図10のLCDの静電容量型近接センサ26は、例えば以下のように動作する。まず、導体線26bに人の指等の外部の導電体が近接すると、導体線26bと外部の導電体との間に静電的な容量結合が発生する。このとき、導体線26bに新たな電気的容量が付加されるために、給電部26aに接続された外部の制御IC,LSI等へ導体線26bから反射してくる電流値(電荷量)が変化する。その変化した電流値を電圧値の変化として制御IC,LSI等によって検知することによって、外部の導電体の近接を検知することができる。
【0006】
また、他の従来例として、不透明体から反射される赤外線を透過させる透明窓、及び透明窓を通じて入射される赤外線光を感知するための複数の赤外線センサを有する液晶パネル、及び液晶パネルの下で液晶パネルに赤外線光を照射するバックライトユニットを備えるマルチタッチ感知機能を有する液晶表示装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−83675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図9、
図10に示す上記従来のLCDにおいては、導体線26bを有する静電容量型近接センサ26を用いているために、導体線26bから放射された電磁波が周囲の電子部品、回路配線等にEMI(Electromagnetic Interference:電磁気妨害)を生じさせるという問題点があった。また、逆に、周囲の電子部品、回路配線等から放射された電磁波が導体線26bにEMIを生じさせるという問題点もあった。
【0009】
このようなEMIの問題を解消できる近接センサとして、特許文献1に開示されているような赤外線センサを用いた液晶表示装置が知られている。しかしながら、特許文献1に開示されている液晶表示装置においては、液晶パネルのカラーフィルタ側基板である上部透明基板に透明窓を設ける必要があるために、カラーフィルタの面積が小さくなり、表示画像の色度が低下しやすいという問題点があった。また、赤外線(infrared rays:IR)を発光するIRLEDと、赤外線を受光する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)であるIRTFTとをアレイ側基板及びその周辺に形成する必要があるために、表示画像の解像度が低下しやすいという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記に問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、表示パネルを構成する透明基板に赤外線を透過させる透明窓を物理的に設ける必要がないので表示画像の色度が良好に維持でき、また表示パネルに赤外線発光部及び赤外線受光部を形成する必要がないので表示画像の解像度を良好に維持できる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、赤外線の透過、非透過をスイッチング制御可能な赤外線スイッチング素子が複数設けられている表示パネルと、その表示パネルの反表示面側に設置されたバックライト装置と、そのバックライト装置に設置された、赤外線を前記表示パネル側に照射する赤外線発光素子及び前記表示パネルの表示面に近接した被検知体によって反射された前記赤外線を受光する赤外線受光素子と、を有する表示装置であって、前記表示パネルに前記赤外線を透過させる赤外線透過領域を形成するとともにその赤外線透過領域を
前記表示パネルの表示領域においてX方向及び/又はY方向に走査することによって前記被検知体の位置を特定する構成である。
【0012】
本発明の表示装置は、好ましくは、前記赤外線スイッチング素子は液晶単位素子であり、前記表示パネルは液晶表示パネルである。
【0013】
また、本発明の表示装置は、好ましくは、前記表示パネルに前記赤外線を透過させる前記赤外線透過領域を形成するとともに前記赤外線透過領域を
60Hz〜200Hzの走査周波数で走査する際に、前記バックライト装置を消灯する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液晶表示装置は、赤外線の透過、非透過をスイッチング制御可能な赤外線スイッチング素子が複数設けられている表示パネルと、その表示パネルの反表示面側に設置されたバックライト装置と、そのバックライト装置に設置された、赤外線を表示パネル側に照射する赤外線発光素子及び表示パネルの表示面に近接した被検知体によって反射された赤外線を受光する赤外線受光素子と、を有する表示装置であって、表示パネルに赤外線を透過させる赤外線透過領域を形成するとともにその赤外線透過領域を走査することによって被検知体の位置を特定することから、表示パネルを構成する構成部材に、赤外線発光素子及び赤外線受光素子を設ける必要がないので、表示画像の色度及び解像度を良好に維持した状態で、表示面に近接した被検知体を検知できる。
【0015】
本発明の表示装置は、赤外線スイッチング素子は液晶単位素子であり、表示パネルは液晶表示パネルである場合、液晶自体が赤外線の透過、非透過をスイッチング制御可能な赤外線スイッチング部材としても機能するため、液晶単位素子が画像表示機能と赤外線スイッチング機能を兼ね備えるものとなる。従って、表示パネルに別個の赤外線スイッチング素子を設ける必要がなくなり、薄型化された表示パネルを構成することができる。
【0016】
また、本発明の表示装置は、表示パネルに赤外線を透過させる赤外線透過領域を形成するとともに赤外線透過領域を走査する際に、バックライト装置を消灯する場合、バックライト装置の白色光等が赤外線透過領域を通過してちらつきの発生、コントラスト低下等の表示不良が発生することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の表示装置としての液晶表示装置について実施の形態の1例を示す図であり、液晶表示装置の主要部品を分解して示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の液晶表示装置に用いられるバックライト装置の斜視図である。
【
図3】
図3(a)〜(d)は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の1例を示す図であり、それぞれ赤外線透過領域の走査状態を示す液晶表示装置の平面図である。
【
図4】
図4(a)〜(d)は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の他例を示す図であり、それぞれ赤外線透過領域の走査状態を示す液晶表示装置の平面図である。
【
図5】
図5(a)〜(d)は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の他例を示す図であり、それぞれ赤外線透過領域の走査状態を示す液晶表示装置の平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の1例を示す図であり、液晶表示パネルの赤外線透過領域が被検知体を検知不能な部位にある走査状態を示す液晶表示装置の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の他例を示す図であり、液晶表示パネルの赤外線透過領域が被検知体を検知可能な部位にある走査状態を示す液晶表示装置の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の1例を示す図であり、液晶表示装置のブロック回路図である。
【
図9】
図9は、従来の液晶表示装置の主要部品を分解して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の表示装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、本発明の表示装置の実施の形態における主要な構成部材を示している。従って、本発明の表示装置は、図に示されていない回路基板、配線導体、制御IC,LSI等の周知の構成部材を備えていてもよい。
【0019】
図1は、本発明の表示装置の好適な1例である液晶表示装置(LCD)について実施の形態の1例を示す図であり、LCDの主要部品を分解して示す平面図である。
図2は、
図1のLCDに用いられるバックライト装置の斜視図である。
図3(a)〜(d)は、本発明のLCDの駆動方法について実施の形態の1例を示す図であり、それぞれ赤外線透過領域の走査状態を示すLCDの平面図である。
【0020】
これらの図に示すように、本発明のLCDは、赤外線の透過、非透過をスイッチング制御可能な赤外線スイッチング素子としての液晶単位素子が複数設けられている液晶表示パネル2と、その液晶表示パネル2の反表示面側に設置されたバックライト装置4と、そのバックライト装置4に設置された、赤外線を液晶表示パネル2側に照射する赤外線発光素子6a及び液晶表示パネル2の表示面に近接した被検知体10によって反射された赤外線を受光する赤外線受光素子6bと、を有するLCDである。なお、液晶単位素子は、画素を構成する一つの単位であり、カラー液晶表示装置の場合は、R、G、Bそれぞれの絵素が液晶単位素子である。そして、液晶表示パネル2に赤外線を通過させる赤外線透過領域2c(X1〜Xn)を形成するとともにその赤外線透過領域2c(X1〜Xn)を表示面の表示領域内において走査することによって被検知体10の位置を特定する構成である。この構成により、液晶表示パネル2を構成するカラーフィルタ側基板及びアレイ側基板等の構成部材に、赤外線発光素子6a及び赤外線受光素子6bを形成する必要がないので、表示画像の色度及び解像度を良好に維持した状態で、表示面に近接した被検知体10を検知できる。また、液晶自体が赤外線の透過、非透過をスイッチング制御可能な赤外線スイッチング部材としても機能するため、液晶単位素子が画像表示機能と赤外線スイッチング機能を兼ね備えるものとなる。従って、表示パネルに別個の赤外線スイッチング素子を設ける必要がなくなり、薄型化された表示パネルを構成することができる。
【0021】
図1に示すように、本発明のLCDは、液晶表示パネル2の表示面を覆うガラス板、プラスチック板等から成る透明部材1と、液晶表示パネル2を嵌め込むための開口3aを有するプラスチック等から成る枠体3と、液晶表示パネル2の反表示面側に設けられたプラスチック等から成る保護部材5と、を有している。バックライト装置4には、赤外線を液晶表示パネル2側に照射する赤外線発光素子6aと、液晶表示パネル2の表示面に近接した被検知体10によって反射された赤外線を受光する赤外線受光素子6bとが設置されている。なお、
図1において6は赤外線発光素子6a及び赤外線受光素子6bから成る赤外線センサユニットである。
【0022】
バックライト装置4には2つの方式がある。1つの方式は、発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)素子が液晶表示パネル2の画面の端に配置されているエッジライト方式である。このエッジライト方式においては、液晶表示パネル2の画面の端に配置されたLED素子からの光を導光板によって画面全体に導いて均一に分散させる。エッジライト方式は、最大60インチ程度までの画面において良好な光学的均一性を保持することができ、5〜10mm程度の厚さのバックライト装置4が実現できる。
【0023】
もう1つの方式は、直下型方式であり、液晶の画素の直下に多数のLED素子を配置して、LED素子からの光を画素に直接入射させる方式である。この直下型方式は、それが適用される液晶表示パネル2の画面サイズに制限はなく、低消費電力、良好な熱放散性を有している。また、直下型方式は、エッジライト方式に比べてバックライト装置が厚くなる傾向があるが、10mm程度以下の厚さに抑えることもできる。なお、LED素子の発光の駆動方法としては、一般にPWM(Pulse Width Modulation)方式によってパルス電流をLED素子に入力する駆動方法が用いられる。
【0024】
図2は、エッジライト方式の直方体状のバックライト装置4を示すものであり、多数のLED素子等の発光素子を有する発光装置7がバックライト装置4の1つの側面4cに設けられている構成である。さらに発光装置7は、赤外線発光素子6a及び赤外線受光素子6bを備えている。発光装置7は、アルミニウム(Al)等から成る枠体4aの1つの側面4a1に形成された開口に嵌め込み、ネジ止め等の手段によって、側面4a1に設置される。また、バックライト装置4は、発光装置7から出射された光を導光し液晶表示パネル2側へ照射させる導光板4bを有している。この導光板4bにより、赤外線発光素子6aから放射された赤外線も液晶表示パネル2側へ照射される。
【0025】
エッジライト方式のバックライト装置4は、発光装置7、導光板4b、導光板4bの液晶表示パネル2と反対側の主面(主面aとする)に形成された反射部材、反射部(図示せず)が組み合わされて構成される。導光板4bはアクリル樹脂板等から成り、白色インクから成る反射ドット部を主面aに印刷するシルク印刷方式で作製されたもの、スタンパー法またはインジェクション法によって主面aに凹凸をつけた成型方式で作製されたもの、アクリル樹脂板と反射板をドット状の粘着材で貼り付ける粘着ドット方式で作製されたもの、主面aに溝加工を施す溝加工法で作製されたものがある。溝加工法には、機械的に溝を形成する物理的溝加工法、レーザ光によって溝を形成する非接触式溝加工法がある。非接触式溝加工法であるレーザ光による加工法では、一枚単位からの加工が可能であり、その都度、面光源としての導光板の大きさ、縦横比、光入射辺部を考慮して、溝の長さ、幅、深さ、分布等の設計をして、均質な面光源とすることが可能である。溝加工の精度はレーザ光による加工法が高いが、数量が多い場合は金型を用いた射出成型法が有利である。超大型のバックライトにおいては粘着ドット法が有利である。このような反射部の分布及び溝分布等の設計を、コンピュータシミュレーションによって設計することもできる。
【0026】
発光装置7から出射された光は導光板4bの側部から入射するが、このとき導光板4bの側部表面で反射する約7%の光を除いた殆ど全ての光が導光板4b内に入射する。導光板4b内に入射した光は、導光板7bの表面で反射を繰り返して導光板4b内に広がる。このとき、反射ドット等の反射部があると、そこで光が散乱され、導光板4bの表面から外に光が出て行く。また例えば、導光板4bにおいて、発光装置7に近い反射部の面積を小さくし、発光装置7から遠い反射部ほどその面積を大きくすることにより、導光板4b全体が均一に光るものとなる。即ち、発光装置7から導光板4b内に導かれた光を、導光板4bの表面で全反射させて導光板4b全体に導き、反射部に当たった光がその進路を変えて全反射角よりも小さい角度で導光板4bの表面に入射し、導光板4bの表面から出射することによって、導光板4b全面が均一に光るものとなる。赤外線発光素子6aから放射された赤外線も、上記と同様の原理によって導光板4bの全面からほぼ均一に出射することとなる。これにより、液晶表示パネル2の反表示面に赤外線がほぼ均一に照射されることとなる。
【0027】
また、直下型方式のバックライト装置4である場合、導光板4bは不要である。この場合、液晶の画素の直下に多数のLED素子等の発光素子を配置して、発光素子からの光を画素に直接入射させる構成とする。そして、一部の発光素子に代えて、赤外線発光素子6a、赤外線受光素子6bを設置するが、それらの配置はバックライト装置4の発光面の全面に規則的にかつ均一に分布するように構成することが好ましい。また、発光素子として、赤色(R)発光素子、緑色(G)発光素子、青色(B)発光素子を用いて、バックライト装置4が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を発光するものとすることができる。
【0028】
図3に示すように、液晶表示パネル2の表示面に近接した人の指等の被検知体10を、赤外線を通過させる赤外線透過領域2c(X1〜Xm)を表示面の表示領域において走査することによって検知する。
図3の場合、赤外線透過領域2c(X1〜Xm)を表示領域の横方向(X方向とする)に走査する構成であり、(a)〜(d)は左端から右端に向かって走査している状態を示している。そして、赤外線透過領域2cが被検知体10に対向する位置にきたとき、被検知体10を検知するとともにそのx方向における位置を特定する。
【0029】
図6、
図7は、被検知体10の検知の原理を説明するための図であり、
図6は赤外線透過領域2cが被検知体10を検知不能な部位にある走査状態を示すLCDの断面図であり、
図7は赤外線透過領域2cが被検知体10を検知可能な部位にある走査状態を示すLCDの断面図である。
図6に示すように、赤外線透過領域2cが被検知体10に対向しない位置にある場合、赤外線発光素子6aから放射された赤外線11aは、導光板4bから液晶表示パネル2側へ照射されて液晶表示パネル2の赤外線透過領域2cを通過するが、被検知体10に照射されないので被検知体10を検知することはない。一方、
図7に示すように、赤外線透過領域2cが被検知体10に対向する位置にある場合、赤外線発光素子6aから放射された赤外線11aは、導光板4bから液晶表示パネル2側へ照射されて液晶表示パネル2の赤外線透過領域2cを通過し、被検知体10に照射される。その結果、被検知体10で反射された赤外線11bが赤外線透過領域2cを通過し、導光板2b内に入射して赤外線受光素子6bによって受光される。これにより、被検知体10が検知される。なお、
図6、
図7において、2aは液晶表示パネル2の表示面、2bは液晶表示パネル2の反表示面、4aはその開口に導光板4bを嵌め込むためのアルミニウム(Al)等から成る金属枠体、9はアルミニウム(Al)等から成る接地用の導体板である。
【0030】
また、表示領域における赤外線透過領域2cは、例えば液晶分子が垂直配向状態等の赤外線が透過可能な状態にある領域であり、この赤外線透過領域2cでは赤外線のほとんどが透過することになる。一方、画像が表示されている表示領域は、赤外線の光波長にもよるが、液晶分子が水平配向等の赤外線が減衰される状態あるいは透過不能な状態にある領域であり、表示領域では赤外線が相当程度(数10%程度)減衰するか、あるいは大部分透過しないことになる。一般に赤外線の波長が赤色光に近いくらいに短い場合、表示領域での減衰が大きくなり、赤外線の光波長が長くなると表示領域での減衰が小さくなる傾向がある。従って、赤外線の光波長は赤色光に近い700nm〜1000nm程度がよく、より好ましくは、700nm〜800nm程度がよい。
【0031】
図4(a)〜(d)は、赤外線透過領域2c(Y1〜Ym)を表示面2aの上下方向(Y方向とする)に走査する構成であり、(a)〜(d)は上端から下端に向かって走査している状態を示している。そして、赤外線透過領域2cが被検知体10に対向する位置にきたとき、被検知体10を検知するとともにそのY方向における位置を特定する。そして、
図3(a)〜(d)に示す走査と
図4(a)〜(d)に示す走査とを交互に行うことにより、被検知体10の位置を特定することができる。
【0032】
図3(a)〜(d)に示す赤外線透過領域2c(X1〜Xm)の大きさは、その面積が表示面2aの面積の10%〜50%であることが好ましい。10%未満では被検知体10の検知が十分に行えなくなる傾向がある。50%を超えると表示画像のちらつきが発生する傾向がある。
図4(a)〜(d)に示す赤外線透過領域2c(Y1〜Ym)の大きさについても同様である。
【0033】
図3(a)〜(d)に示す走査の走査周波数は60Hz〜200Hzであることが好ましい。60Hz未満では表示画像のちらつきが発生する傾向がある。200Hzを超えると被検知体10の検知が十分に行えなくなる傾向がある。
図4(a)〜(d)に示す走査の走査周波数も同様である。
【0034】
図5(a)〜(d)は、赤外線透過領域2c(A11〜Anm)を表示面2aのX方向及びY方向に走査する構成であり、(a)〜(d)は左上端から右下端に向かって走査している状態を示している。即ち、X方向に1行分走査し、その行の走査が終わったら次行の走査を開始するという動作を繰り返すものである。そして、赤外線透過領域2cが被検知体10に対向する位置にきたとき、被検知体10を検知するとともにその位置を特定する。この場合、1周期の走査で被検知体10の位置が特定できるという利点がある。
図5(a)〜(d)に示す走査の走査周波数は60Hz〜200Hzであることが好ましい。60Hz未満では表示画像のちらつきが発生する傾向がある。200Hzを超えると被検知体10の検知が十分に行えなくなる傾向がある。赤外線透過領域2c(A11〜Anm)の大きさは、その面積が表示面2aの面積の10%〜25%であることが好ましい。10%未満では被検知体10の検知が十分に行えなくなる傾向がある。25%を超えると表示画像のちらつきが発生する傾向がある。
【0035】
図3〜
図5に示した赤外線透過領域2cの走査を行う際に、バックライト装置4を消灯することが好ましい。この場合、バックライト装置4の白色光等が赤外線透過領域2cを通過してちらつきの発生、コントラストの低下等の表示不良が発生することを抑えることができる。また、例えば赤外線透過領域2cの走査は、1フレーム期間のうちの所定の期間例えば0.5フレーム期間に実施することができる。この場合、残りの0.5フレーム期間に画像表示を行う。あるいは、フレーム期間を跨って赤外線透過領域2cの走査を行うこともできる。
【0036】
図3〜
図5に示した赤外線透過領域2cの走査は、常時実施可能としてよく、または被検知体10が表示面2aに近接した場合にのみ行ってもよい。その場合、液晶表示パネル2の周囲に別個の赤外線センサユニットを設けておき、その赤外線センサユニットによって被検知体10の近接を検知し、走査を開始する構成等を採用できる。
【0037】
本発明の表示装置における赤外線発光素子6aは、光波長が700nm〜1000nm程度の赤外線、より具体的には光波長が850nm〜950nm程度の赤外線を放射するものである。また、赤外線センサユニット6は、液晶表示パネル2の表示面2aに人の指等が数10cm程度以下の距離に近接した場合、例えば、画面表示を起動させる、表示面2aにアイコン、タッチボタン、インジケータ等の隠れた表示部を表示させる、あるいは静止画表示を動画表示に切り替えるといった表示駆動をするための起動スイッチ等として用いられる。
【0038】
本発明の表示装置としてのLCDにおいて、液晶表示パネル2は、赤外線を通過させる赤外線透過領域2cを形成するとともにその赤外線透過領域2cを表示面2aの表示領域において走査する表示制御手段を備えている。
図8は、本発明のアクティブマトリクス型のLCDの基本構成を示すブロック回路図である。例えば、LCDのアレイ側基板は、その上の第1の方向(例えば、行方向)に形成された複数本のゲート信号線31(Ga,G2,G3・・・Gn)と、第1の方向と交差する第2の方向(例えば、列方向)にゲート信号線31と交差させて形成された複数本の画像信号線32(S1,S2,S3・・・Sm)と、ゲート信号線31と画像信号線32の交差部に形成された、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)素子33、画素電極及びその画素電極との間で液晶に印加する横電界等の電界を形成するための共通電極(基準電極)を含む液晶単位素子としての画素電極部P11,P12,P13・・・Pnmと、共通電極に共通電圧(Vcom)を供給する共通電圧線34と、を有する構成である。また、35はゲート信号線駆動回路、36は画像信号(ソース信号)線駆動回路である。表示制御手段は、ゲート信号線駆動回路3及び画像信号線駆動回路36に設けられた制御IC,LSI等であってもよく、またはゲート信号線駆動回路3及び画像信号線駆動回路36と別個に設けられた制御IC,LSI等であってもよい。
【0039】
本発明のLCDは以下のようにして作製される。TFT素子を含む画素電極部が多数形成されたガラス基板等から成るアレイ側基板と、カラーフィルタ及びブラックマトリクスが形成されたガラス基板等から成るカラーフィルタ側基板とを互いに対向させて、それらの基板を所定の間隔でもって貼り合わせ、それらの基板間に液晶を充填、封入させることによって作製される。また、一般的に、カラーフィルタ側基板は、TFT素子及び画素電極に対向する側の主面(主面bとする)の全面に、画素電極との間で液晶に印加する垂直電界を形成するための共通電極(基準電極)が形成されている。この共通電極は、IPS(In-Plane Switching)方式のLCDの場合、アレイ側基板の画素電極部に画素電極と同じ面内に形成されることによって横電界を生じさせるものとなる。また共通電極は、FFS(Fringe Field Switching)方式のLCDの場合、アレイ側基板の画素電極部に画素電極の上方または下方に絶縁層を挟んで形成されることによって端部電界(Fringe Field)を生じさせるものとなる。また、カラーフィルタ側基板の主面bには、それぞれの画素に対応する赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタが形成されており、それぞれの画素を通過する光が相互に干渉することを防ぐブラックマトリクスがカラーフィルタの外周を囲むように形成されている。
【0040】
本発明の表示装置は、LCDに限られるものではなく、バックライト装置4と、バックライト装置4の光を制御することによって画像表示を可能とする表示パネルを有するものであればよい。また、赤外線スイッチング素子として微小電気機械素子(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)などを用いてもよい。その場合、表示面に、赤外線の透過、非透過を制御する赤外線透過・非透過窓、赤外線透過・非透過素子等の赤外線透過制御部を圧電部等によって電気機械的に制御する微小電気機械素子を、マトリクス状に多数配列した構成等を採用し得る。微小電気機械素子は、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのガラス基板、有機材料などの上に集積化したものである。微小電気機械素子の主要部分は半導体集積回路作製技術によって作製することができる。また、微小電気機械素子の立体形状や可動構造はエッチングプロセス等によって作製することができる。
【0041】
なお、本発明の表示装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜の設計的な変更、改良を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の表示装置としてのLCDは各種の電子機器に適用できる。その電子機器としては、自動車経路誘導システム(カーナビゲーションシステム)、船舶経路誘導システム、航空機経路誘導システム、スマートフォン端末、携帯電話、タブレット端末、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子手帳、電子書籍、電子辞書、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム機器の端末装置、テレビジョン、商品表示タグ、価格表示タグ、産業用のプログラマブル表示装置、カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー、ファクシミリ、プリンター、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、ヘッドアップディスプレイ、デジタル表示式腕時計などがある。
【符号の説明】
【0043】
1 透明部材
2 液晶表示パネル
2c 赤外線透過領域
3 枠体
3a 開口
4 バックライト装置
4a 枠体
4b 導光板
5 保護部材
6 赤外線センサユニット
6a 赤外線発光素子
6b 赤外線受光素子
10 被検知体