(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部材がタイヤケース本体を含むものでありかつ前記第2部材が該タイヤケース本体に一部が連結されたサイドウォールゴムであるか、又は、前記第1部材がタイヤケースでありかつ前記第2部材が該タイヤケースに一部が連結されたベルトとトレッドゴムを含むベルト/トレッド部材である、請求項2記載のシミュレーション装置。
前記第1部材モデルと前記第2部材モデルに、ステッチャー工程での前記第1部材と前記第2部材の回転角速度に相当する遠心力を負荷する、請求項3記載のシミュレーション装置。
前記第1部材モデルと前記第2部材モデルとの圧着面における各節点の接触圧力を前記ステッチャーツールモデルによる荷重の負荷ごとに計算する接触圧力計算部と、前記圧着面の各節点における接触圧力の最大値を取得し、該最大値の前記圧着面での極小値を抽出する極小値抽出部と、抽出した前記極小値が閾値以上であることを満足するか否か判定する判定部と、を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係るシミュレーション装置は、タイヤ製造工程において生タイヤを構成するゴム部材を圧着するステッチャー工程をシミュレートする装置である。圧着するゴム部材としては、圧着させる部位がゴムで形成された部材であればよく、そのため、ゴム単独で構成される部材には限らず、内部にカーカスプライやベルト、ビードコアなどの補強材が埋設されたゴム部材であってもよい。
【0011】
本実施形態に係るステッチャー工程では、生タイヤを構成する第1部材と第2部材を、タイヤ軸を中心に回転させながら、第2部材側からステッチャーツールにより押圧して圧着させる。ステッチャーツールは、これら第1及び第2部材とともに回転しつつ、移動しながら、第2部材を押圧することにより、両部材を圧着する。
【0012】
かかるステッチャー工程としては、例えば、(1)内圧を負荷してトロイダル状としたタイヤケースとベルト/トレッド部材とを一体化した後、ベルト/トレッド部材のタイヤ軸方向端部をタイヤケースの外周面に圧着させる工程、(2)トロイダル状のタイヤケース本体に一部が連結されたサイドウォールゴムを、当該タイヤケース本体に圧着させる工程、(3)成型ドラム上で円筒状(トロイダル状にする前)のタイヤケースを作成する際におけるカーカスプライやゴムパッド、ゴムテープなどの各種ゴム部材間の貼り付け工程等が挙げられる。
【0013】
ここで、ベルト/トレッド部材とは、ベルトとトレッド部を備えて構成される円筒状部材であり、タイヤケースとは、カーカスプライ、ビードコア、ビードフィラー及びサイドウォールゴムを備えて形成され、ベルト/トレッド部材の内周面側に配されるトロイダル状の部材である。タイヤケース本体は、該タイヤケースを構成するものであり、上記(2)ではサイドウォールゴムとともにタイヤケースを構成する。
【0014】
上記(1)のステッチャー工程の場合、前記第1部材がトロイダル状のタイヤケースであり、前記第2部材が該タイヤケースに一部が連結されたベルト/トレッド部材である。タイヤケースとベルト/トレッド部材は、上記内圧負荷により、ベルト/トレッド部材のタイヤ軸方向両端部を除いて連結一体化されるので、連結されていない軸方向両端部において、上記第2部材であるベルト/トレッド部材の外表面側からステッチャーツールを押し当てることにより、タイヤケースとベルト/トレッド部材との圧着がなされる。この場合、ステッチャーツールは、上記連結されたベルト/トレッド部材の中央部側から、連結されてない端部に向かって、順次押圧していく。
【0015】
上記(2)のステッチャー工程の場合、前記第1部材がトロイダル状のタイヤケース本体を含んでなり、前記第2部材が該タイヤケース本体に一部が連結されたサイドウォールゴムである。サイドウォールゴムはその一端部がタイヤケース本体のビード部に連結一体化されているので、連結されたビード部側から連結されていないトレッド部側に向かって、上記第2部材であるサイドウォールゴムの外表面側からステッチャーツールを押し当てることにより、タイヤケース本体とサイドウォールゴムとの圧着がなされる。
【0016】
以下、上記(2)のステッチャー工程について、図面に基づいて詳細に説明するが、上記(1)やその他のステッチャー工程についても同様に適用することができる。
【0017】
図1に示すように、一実施形態に係るシミュレーション装置10は、入力部11、ステッチャー条件設定部12、タイヤ部材モデル設定部14、ステッチャーモデル設定部16、解析対象モデル生成部18、遠心力負荷部20、ステッチャーモデル動作部22、接触圧力計算部24、極小値抽出部26、判定部28、解析条件更新部30、及び出力部32を有する。
【0018】
このシミュレーション装置10は、汎用のコンピュータを基本ハードウェアとして用いることで実現することが可能である。
図2は、シミュレーション装置10のハードウェア構成の一例を表すブロック図である。シミュレーション装置10は、プロセッサ(CPU)101と、プログラムなどを記憶するロム(ROM)102と、ラム(RAM)103と、記憶装置であるHDD104と、HDD104とのインターフェースであるI/F105と、マウスやキーボードなどの入力装置106と、入力装置106とのインターフェースであるI/F107と、ディスプレイやプリンタなどの出力装置108と、出力装置108とのインターフェースであるI/F109と、バス110とを備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。CPU101、ROM102、RAM103、I/F105、I/F107、及びI/F109は、バス110を介して互いに接続されている。
【0019】
シミュレーション装置10では、CPU101がROM102からプログラムをRAM103上に読み出して実行することにより、上記各部(入力部11、ステッチャー条件設定部12、タイヤ部材モデル設定部14、ステッチャーモデル設定部16、解析対象モデル生成部18、遠心力負荷部20、ステッチャーモデル動作部22、接触圧力計算部24、極小値抽出部26、判定部28、解析条件更新部30、出力部32)がコンピュータ上で実現され、HDD104に記憶されているデータ等を用いて処理を行う。なお、プログラムはHDD104に記憶されていてもよく、また、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、メモリカード、DVD、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されるようにしてもよい。また、プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供又は配布するようにしてもよい。
【0020】
以下、上記各部の構成と機能について順番に説明する。
【0021】
[1]入力部11
入力部11は、解析対象となる生タイヤを構成するゴム部材及びステッチャーについてのデータを取得する。生タイヤを構成するゴム部材についてのデータとして、この例では、タイヤケースとベルト/トレッド部材について、それらのモデルを作成するために必要なデータが挙げられ、具体的には、それらの外形形状や内部構造(複合体である場合にはその内部に埋設された部材の形状および配置)等の各寸法諸元、及び材料物性値などが挙げられる。
【0022】
また、ステッチャーについてのデータとしては、ゴム部材を押圧するステッチャーツールと、それを動作させるステッチャー装置をモデル化するために必要なデータが挙げられ、具体的には、複数種のステッチャーツールについて各形状、及びステッチャー装置の動作条件などが挙げられる。
【0023】
これらのデータの入力は、キーボードやマウスを用いて行われてもよく、あるいはまたCD−ROM等の記録媒体やネットワーク等を通じて行われてもよい。
【0024】
[2]ステッチャー条件設定部12
ステッチャー条件設定部12は、入力部11で取得したデータに基づき、ステッチャー工程で使用するステッチャーツールの形状を選定するとともに、ステッチャーツールを動作させるステッチャー装置の動作条件(ゴム部材に押し当てるときの角度、ゴム部材に負荷する荷重、移動速度)などを設定する。
【0025】
[3]タイヤ部材モデル設定部14
タイヤ部材モデル設定部14は、入力部11で取得したデータに基づき、ステッチャー工程で圧着させる対象とする第1部材及び第2部材の断面形状(タイヤ子午線断面の形状)をモデル化した二次元の第1部材モデル及び第2部材モデル(これらをまとめてタイヤ部材モデルという。)を設定する。ここでは、該断面形状を複数の有限要素に分割した有限要素モデルを作成する。このような有限要素モデルの作成方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。なお、予め作成された第1部材モデル及び第2部材モデルを入力部11で取得し、これを解析対象とするタイヤ部材モデルとして設定してもよい(この点、後述するステッチャーツールモデル及び機構モデルについても同様)。
【0026】
図4は、タイヤ部材モデルの一例を示したものである。ここでは、タイヤ赤道線CLに対して一方側のみの半断面図を示したが、タイヤの全幅で作成してもよい。
図4に示すように、タイヤケースをモデル化したタイヤケースモデルT10と、ベルト/トレッド部材をモデル化したベルト/トレッド部材モデルT20とが作成される。タイヤケースモデルT10は、タイヤケース本体をモデル化したケース本体モデルT11と、該タイヤケース本体に一部が連結されたサイドウォールゴムをモデル化したサイドウォールゴムモデルT12とからなるものである。サイドウォールゴムモデルT12は、そのビード部側の一端部T12aが、ケース本体モデルT11のビード部に連結一体化されている。なお、符号T13,T14及びT15は、それぞれケース本体モデルT11を構成するカーカスプライ、ビードコア及びビードフィラーを示し、符号T21及びT22は、それぞれベルト/トレッド部材モデルT20を構成するベルト及びトレッドゴムを示す。
【0027】
なお、本実施形態において、ステッチャー工程の解析対象となるのは、後述する
図6に示す、タイヤケースモデルT10にベルト/トレッド部材モデルT20を一体化させた後の解析対象モデルであるため、該解析対象モデルを生成する解析対象モデル生成部18は、タイヤ部材モデル設定部14の一部を構成する。
【0028】
[4]ステッチャーモデル設定部16
ステッチャーモデル設定部16は、ステッチャーツールの断面形状をモデル化したステッチャーツールモデルと、該ステッチャーツールモデルを動作させる機構モデルとを設定する(両モデルをまとめてステッチャーモデルという。)。
【0029】
図5は、その一例を、上記タイヤケースモデルT10及びベルト/トレッド部材モデルT20とともに示したものであり、符号A10がステッチャーツールモデルを示し、符号A20が機構モデルを示す。
【0030】
ステッチャーツールは、タイヤ軸を中心に回転する上記第1部材及び第2部材(この例では、タイヤケース本体と、該タイヤケース本体に一部が連結されたサイドウォールゴム)を、第2部材(サイドウォールゴム)側からの押圧により圧着させる回転体であり、円板状ないし円筒状の部材である。この例では、
図5に示すように、ステッチャーツールモデルA10として、有限要素に分割しない解析的剛体を用いており、ステッチャーツールの断面形状(断面形状における外形線)を再現した線で構成されている。但し、ステッチャーツールモデルとしては、有限要素に分割した有限要素モデルを用いてもよく、その場合、変形体としてモデル化しても、剛体としてモデル化してもよい。
【0031】
ステッチャーツールを動かすステッチャー装置は、ステッチャーツールを、上記生タイヤを構成する第1部材及び第2部材とともに回転させながら、タイヤケースの外形形状に沿ってビード部側からトレッド側に向かって移動させる。このような動きを二次元断面モデルにおいて再現するため、機構モデルA20は、
図5に示すように、一端A21にステッチャーツールモデルA10の旋回中心を持つとともに、該一端A21と剛体結合された他端A22を持つ直線状の線形モデルである。これら一端A21と他端A22との間にはステッチャーツールモデルA10がその先端A11を前記一端A21側に向けて設置されている。そして、上記他端A22とステッチャーツールモデルA10との間にはエアシリンダに相当するトランスレータA23が介設されており、トランスレータA23の作用により、ステッチャーツールモデルA10が線形モデルに沿って平行移動可能に構成されている。また、旋回中心である上記一端A21は、タイヤ径方向X及びタイヤ軸方向Yの双方にそれぞれ移動可能に構成されている。
【0032】
なお、本明細書において、タイヤ軸方向Yはタイヤ軸Jに平行な方向であり、タイヤ径方向Xはタイヤ軸Jに垂直な方向である。
【0033】
[5]解析対象モデル生成部18
解析対象モデル生成部18は、上記タイヤ部材モデルから、ステッチャー工程の解析対象となる解析対象モデルを生成する。この例では、
図4に示すタイヤケースモデルT10及びベルト/トレッド部材モデルT20に対して、タイヤケースを成型する成型解析を実施する。かかる成型解析自体は公知のシミュレーション方法を用いることができる。
【0034】
詳細には、
図4に示す初期位置から、タイヤケースモデルT10に内圧を負荷して膨張させ、タイヤケースモデルT10の外周面をベルト/トレッド部材モデルT20の内周面に圧着させて両者を一体化させる。これにより、ベルト/トレッド部材T20はそのタイヤ軸方向両端部を除いて連結一体化されるので、次いで、連結されていない軸方向両端部に対して、上記連結された軸方向中央側から軸方向外側に向けて、タイヤ外表面側から所定の分布荷重の負荷と解除を繰り返すことにより、タイヤケースモデルT10とベルト/トレッド部材T20とを圧着させる。
【0035】
これにより、
図6に示すように、ステッチャー工程の解析対象となるタイヤ部材モデルである解析対象モデルが得られる。この例では、トロイダル状をなすタイヤケースモデルT10の外周面にベルト/トレッド部材モデルT20が連結一体化される一方、該タイヤケースモデルT10を構成するサイドウォールゴムモデルT12は、そのビード部側の一端部T12aでケース本体モデルT11に連結され、トレッド部側の他端部T12bは連結固定されていない自由端となっている。
【0036】
[6]遠心力負荷部20
遠心力負荷部20は、上記第1部材モデル及び第2部材モデルに、ステッチャー工程での第1部材及び第2部材の回転角速度に相当する遠心力を負荷する。この例では、
図6に示すタイヤケースモデルT10とベルト/トレッド部材モデルT20とからなる解析対象モデルに対して、ステッチャー工程での回転角速度に相当するタイヤ径方向外方に向かう遠心力を付与する。これにより、ケース本体モデルT11だけでなく、該ケース本体モデルT11に一部が連結されたサイドウォールゴムモデルT12についてもその自由端T12bが立ち上がるように変形し、回転中の生タイヤの形状をより正確に再現することができる。
【0037】
[7]ステッチャーモデル動作部22
ステッチャーモデル動作部22は、ステッチャーツールモデルA10が上記第1部材モデルと第2部材モデルとの圧着させる部位の一端側から他端側に向けて順次第2部材モデルを押圧するように、機構モデルA20により、ステッチャーツールモデルA10を、第2部材モデルに対して荷重を負荷し、負荷した荷重を解除し、その後、他端側に向けて移動させることを、圧着させる部位の一端から他端に至るまで繰り返して動作させる。
【0038】
この例では、
図6に示すように、圧着させる部位は、サイドウォールゴムモデルT12とケース本体モデルT11(より詳細には、ケース本体モデルT11及びベルト/トレッドゴム部材モデルT20のトレッドゴムT22)との間であり、サイドウォールゴムモデルT12のタイヤ外面側を、上記連結側の端部であるビード部側の一端部T12a側から、非連結側の端部であるトレッド部側の他端部T12b側に向けて順次押圧する。
【0039】
そのため、まず、機構モデルA20を用いて、
図7に示すように、ステッチャーツールモデルA10を、サイドウォールゴムモデルT12の上記一端部T12a側に位置する初期位置に配置する。
【0040】
次いで、機構モデルA20のトランスレータA23により、
図8に示すように、ステッチャーツールモデルA10をサイドウォールゴムモデルT12に向かって変位させて、サイドウォールゴムモデルT12に荷重を負荷する。
【0041】
次いで、トランスレータA23により、
図9に示すように、ステッチャーツールモデルA10を後退させて、サイドウォールゴムモデルT12から離間させることにより、負荷した荷重を解除する。
【0042】
その後、機構モデルA20により、
図10に示すように、ステッチャーツールモデルA10をトレッド部側に向かって一定の送り幅Waで移動させる。この例では、送り幅Waは、ステッチャーツールモデルA10の先端A11の幅Wt以下に設定される。
【0043】
ステッチャーモデル動作部22は、このようなステッチャーツールモデルA10による荷重負荷、荷重解除、及び移動を、上記初期位置からサイドウォールゴムモデルT12のトレッド部側の他端部T12bの先端に至るまで繰り返して行いながら、サイドウォールゴムモデルT12、ケース本体モデルT11及びベルト/トレッド部材モデルT20の変形計算を行う。このような変形計算自体は、例えば、ダッソー・システムズ社製の「ABAQUS」、エムエスシーソフトウェア株式会社製の「MARC」などの市販のFEM解析ソフトウェアを用いて行うことができ、また、汎用プログラム言語(フォートランなど)を用いて、独自のプログラムを作成し、実行することも可能である。
【0044】
これにより、
図11に示すように、サイドウォールゴムモデルT12がケース本体モデルT11及びベルト/トレッドゴム部材モデルT20に圧着された生タイヤモデルT30が得られる。
【0045】
[8]接触圧力計算部24
接触圧力計算部24は、第1部材モデル(ケース本体モデルT11及びベルト/トレッド部材モデルT20)と第2部材モデル(サイドウォールゴムモデルT12)との圧着面T31(
図11において太線で示している。)における各節点の接触圧力をステッチャーツールモデルA10による荷重の負荷ごとに計算する。
【0046】
図12(a)は、圧着面T31の有限要素を構成する各節点における接触圧力の計算結果の一例を示したものである。圧着面T31のビード部側の一端T31aからトレッド部側の他端T31b(
図11参照)までの各節点において、サイドウォールゴムモデルT12とそれに圧着されるケース本体モデルT11及びベルト/トレッド部材モデルT20との間の接触圧力を、ステッチャーツールモデルA10の荷重負荷毎に算出してプロットした。
【0047】
[9]極小値抽出部26
極小値抽出部26は、上記圧着面T31の各節点における接触圧力の最大値を取得し、該最大値の圧着面T31での極小値を抽出する。
【0048】
図12(b)は、圧着面T31の各節点における接触圧力の最大値をプロットした結果の一例を示すグラフである。該最大値の圧着面T31上での極小値は、符号M1,M2及びM3で示す通りであり、このような極小値M1,M2,M3を抽出する。
【0049】
[10]判定部28
判定部28は、上記で抽出した極小値が閾値以上であることを満足するか否かを判定する。閾値としては、例えば、上記接触圧力の平均値の40%とすることができ、極小値が該平均値の40%以上であるか、否かを判定する。
【0050】
[11]解析条件更新部30
解析条件更新部30は、判定部28において極小値が閾値を満足していないと判定したときに、ステッチャーツールの形状及びステッチャー装置の動作条件などのステッチャー条件、並びにゴム部材形状のうち、少なくとも1つを更新する。ステッチャー装置の動作条件としては、例えば、ゴム部材に押し当てるときの角度、押し当てる荷重(圧力)、移動速度(タイヤ回転速度に対する送り幅Wa)などが挙げられる。ゴム部材形状としては、例えば、サイドウォールゴムの形状、タイヤケース本体の形状、ベルト/トレッド部材の形状などが挙げられる。
【0051】
[12]出力部32
出力部32は、上記により得られた
図11に示すステッチャー工程後の生タイヤモデルT30を出力するとともに、最適化されたステッチャー条件を出力する。これらの出力は、ディスプレイによって表示したり、プリンタによって印刷したりすることにより行うことができる。
【0052】
次に、本実施形態に係るシミュレーション装置10の動作状態について、
図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
ステップS1において、入力部11が、解析対象となる生タイヤを構成するゴム部材としてタイヤケースとベルト/トレッド部材についてのデータを取得するとともに、ステッチャーについてのデータを取得する。
【0054】
次いで、ステップS2において、ステッチャー条件設定部12が、ステッチャー工程で使用するステッチャーツールの形状を選定するとともに、ステッチャーツールを動作させるステッチャー装置の動作条件を設定する。そして、ステップS3に進む。
【0055】
ステップS3で、タイヤ部材モデル設定部14が、ステッチャー工程で圧着させる対象とするタイヤ部材モデルを作成するために、
図4に示すように、タイヤケースをモデル化したタイヤケースモデルT10と、ベルト/トレッド部材をモデル化したベルト/トレッド部材モデルT20を作成する。その際、タイヤケースモデルT10については、サイドウォールゴムモデルT12がそのビード部側の一端部T12aにおいてケース本体モデルT11のビード部に連結一体化された形態にて作成する。
【0056】
次いで、ステップS4において、ステッチャーモデル設定部16が、
図5に示すように、ステッチャーツールの断面形状をモデル化したステッチャーツールモデルA10と、それを動作させる機構モデルA20とを作成する。なお、ステップS2〜S4については、ステップS2がステップS4よりも先に実行される限り、順番は問わない。
【0057】
次いで、ステップS5において、解析対象モデル生成部18が、ステップS3で作成したタイヤ部材モデルから、成型解析を実施することにより、
図6に示すようなステッチャー工程の解析対象となる解析対象モデルを生成する。解析対象モデルは、ベルト/トレッド部材モデルT20が連結一体化されたケース本体モデルT11と、該ケース本体モデルT11に対してビード部側の一端部T12aが連結され他端部T12bが自由端とされたサイドウォールゴムモデルT12とを備える。そして、ステップS6以降のステッチャー工程解析に進む。
【0058】
ステップS6において、遠心力負荷部20が、上記解析対象モデルに遠心力を負荷する。そして、ステップS7に進む。
【0059】
ステップS7において、ステッチャーモデル動作部22が、機構モデルA20を用いて、
図7に示すようにステッチャーツールモデルA10をサイドウォールゴムモデルT12の上記一端部T12a側に位置する初期位置に配置する。次いで、ステップS8において、
図8に示すように、ステッチャーツールモデルA10をサイドウォールゴムモデルT12に向かって変位させて、サイドウォールゴムモデルT12のタイヤ外面側から荷重を負荷する。次いで、ステップS9において、
図9に示すように、ステッチャーツールモデルA10を後退させて、サイドウォールゴムモデルT12から離間させることにより、ステップS8で負荷した荷重を解除する。次いで、ステップS10において、
図10に示すように、ステッチャーツールモデルA10をトレッド部側に向かって一定の送り幅Waで移動させる。次いで、ステップS11において、ステッチャーモデル動作部22は、上記のステッチャーツールモデルA10による荷重負荷、荷重解除及び移動が、上記初期位置からサイドウォールゴムモデルT12のトレッド部側の他端部T12bの先端に至るまで繰り返して実施されたか否かを判定する。すなわち、ステッチャーツールモデルA10がステッチャー工程において圧着させる部位の終端である他端部T12bの先端まで移動したか否かを判定し、移動していなければ、ステップS8に戻ってステップS8〜S11を繰り返す。一方、終端まで移動していれば、ステッチャー工程は終了したと判断して、ステップS12に進む。
【0060】
ステップS12において、接触圧力計算部24が、第1部材モデル(ケース本体モデルT11及びベルト/トレッド部材モデルT20)と第2部材モデル(サイドウォールゴムモデルT12)との圧着面T31における各節点の接触圧力をステッチャーツールモデルA10による荷重の負荷ごとに計算して、
図12(a)に示すような計算結果を得る。
【0061】
次いで、ステップS13において、極小値抽出部26が、
図12(b)に示すような圧着面T31の各節点における接触圧力の最大値を取得し、該最大値の圧着面T31での極小値M1,M2,M3を抽出する。
【0062】
次いで、ステップS14において、判定部28が、上記極小値が閾値を満足するか否かを判定し、閾値を満足していなければ、ステップS15において、解析条件更新部30が、ステッチャー条件及び/又はゴム部材形状を更新してから、ステップS3に進む。一方、ステップS14において、閾値を満足していれば、ステップS16に進む。このように、ステップS14において、所定の閾値を満足するまで、解析を繰り返す。なお、このように解析を繰り返す場合において、ステップS15でゴム部材形状に変更を加えない場合は、ステップS3及びS5は省略することができる。
【0063】
ステップS16において、出力部32が、ステップS8〜S11を経て得られた
図11に示すようなステッチャー工程後の生タイヤモデルT30を出力するとともに、最適化されたステッチャー条件を出力する。
【0064】
以上よりなる本実施形態によれば、従来はモデル化されていなかったステッチャーツールについて、その二次元断面モデルとその動きを再現する機構モデルを設定したので、ステッチャー工程をより現実に近い形態で再現することができる。また、ステッチャーツールの形状を含めた適切なステッチャー条件を導出することが容易である。
【0065】
また、ステッチャーツールモデルA10の荷重付与、除荷及び移動を順次繰り返し行うことで、生タイヤとステッチャーツールが互いに回転してステッチャーツールが移動しながらゴム部材を圧着する動きを二次元断面モデルで再現することができる。
【0066】
また、圧着面T31における各節点の接触圧力の最大値を取得し、これを評価指標とすることで、各節点における圧着状態を評価することができ、ステッチャーツールの適切な条件を見出すことができる。
【0067】
以上より、ステッチャー工程において形成される空気溜まりの予測を行うことができ、また対応策を検討することが事前に可能となるので、タイヤの製品不具合の削減に繋がる。
【0068】
なお、上記実施形態では、トレッドゴムの両端部の上にサイドウォールゴムのタイヤ径方向外端部を被せる、いわゆるSWOT構造の場合について説明したが、サイドウォールゴムのタイヤ径方向外端部の上にトレッドゴムの両端部を被せる、いわゆるTOS構造においても同様に適用することができる。その場合、トレッドゴムの端部を被せる前に、サイドウォールゴムをタイヤケース本体に圧着されるステッチャー工程で上記実施形態を適用することができる。
【0069】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。