特許第6348063号(P6348063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348063
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】車両内装部材にステッチを施す方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 23/00 20060101AFI20180618BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20180618BHJP
   D05B 1/06 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   D05B23/00 Z
   B60R13/02 B
   D05B1/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-519079(P2014-519079)
(86)(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公表番号】特表2014-520603(P2014-520603A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012045798
(87)【国際公開番号】WO2013009634
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/505,833
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513089958
【氏名又は名称】インテヴァ プロダクツ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INTEVA PRODUCTS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】ウェンゼル,エドワード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マセッティ,ジョセフ アンソニー
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02673537(US,A)
【文献】 米国特許第02430087(US,A)
【文献】 特開2006−273312(JP,A)
【文献】 実公昭41−005322(JP,Y1)
【文献】 特開平02−178021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 23/00
B60R 13/02
D05B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮層と、基材層と、前記外皮層と前記基材層との間に配置される中間層と、を備える内装部材にステッチを施す方法であって、当該方法は、
a)前記外皮層、前記基材層、及び前記中間層を千枚通しにより下方へ貫通してこれらを刺し通す孔を形成する過程、
b)前記千枚通しを、前記外皮層、前記基材層、及び前記中間層から上方へ引き抜く過程、
c)縫い針を、前記基材層、前記中間層、及び前記外皮層を通り抜けるように前記孔を介して上方へ挿入して、前記外皮層上に配置された糸を掴む過程、
d)当該糸を、前記外皮層、前記中間層、及び前記基材層を通り抜けるように下方へ引っ張る過程、
e)前記外皮層、前記中間層、及び前記基材層を通過した先行するステッチを用いて、前記糸によりループを形成する過程、
f)前記内装部材を他の一つの位置へと進める過程、及び
g)所定量のステッチが前記内装部材に施されるまで、前記aからfまでの過程を繰り返す過程
を含み、
前記基材層の厚みは、前記ステッチの経路に沿って局所的に薄くされる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記外皮層は、ビニール、革、及び熱可塑性ポリオレフィンから成る群から形成され、前記中間層は発泡体であり、前記基材層はプラスチックから形成される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記内装部材は車両の内装トリム部材である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記内装トリム部材は、前記車両のインストルメントパネルの一部である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記内装部材は車両の内装トリム部材である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記内装トリム部材は、前記車両のインストルメントパネルの一部である、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記外皮層は革から形成され、前記中間層は発泡体であり、前記基材層はプラスチックから形成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2011年7月8日に提出された米国仮出願第61/505,833号に基づく優先権を主張する。当該仮出願の内容は、参照することによりここに組み込まれる。
【0002】
この発明は、車両内装の内装構造に関する。より詳細には、本発明は車両内装部材にステッチを施す装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在のところ、自動車の内装において見受けられる多くのステッチは実用的で多様である。当該ステッチにおいては、二つ又はそれ以上の材料(革、ビニール、TPO、布、等)が、座席クッション、ヘッドレスト、アームレスト、コンソール蓋、インストルメントパネル基材、等のような部材に巻き付けられる前に、パターンから切り取られ、縫い合わされる(カットアンドソー;cut−n−sew)。このような実用的なステッチは、非常に大きな労働力を要し、通常は、低級・中級の車両において必要とされる場所にのみ用いられる。コストによる制限から、インストルメントパネルリテーナやドアパネルのような装飾的な部材に実用的なステッチを施したものは、より高級な車両において見受けられるのみであった。
【0004】
近年、自動車産業における相手方ブランド製品の製造会社(OEM)は、より広範囲の価格帯にわたる車両に、「ステッチ」のように見えるものを施すことに関心を抱いている。いくつかの出願においては、ステッチを装った装飾的なステッチが用いられることもあった。しかしながら、現時点では、見せかけのステッチを対照的な色で提供することは、製造上実行できるものではない。さらに、より多くのOEMが、装飾的な部材に本物の又は「存在感のある」ステッチを用いることにより本物のカットアンドソーのような見た目及び雰囲気を提供することを求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、装飾的な自動車トリム部材に、存在感のある装飾的なステッチを施すことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
外皮層と、基材層と、前記外皮層と前記基材層との間に配置される中間層と、を備える内装部材にステッチを施す方法であって、当該方法は、a)前記外皮層、前記基材層、及び前記中間層を千枚通しにより貫通してこれらを刺し通す孔を形成する過程、b)前記千枚通しを、前記外皮層、前記基材層、及び前記中間層から引き抜く過程、c)縫い針を、前記基材層、前記中間層、及び前記外皮層を通り抜けるように前記孔を介して挿入して、前記外皮層上に配置された糸を掴む過程、d)当該糸を、前記外皮層、前記中間層、及び前記基材層を通り抜けるように引っ張る過程、e)前記外皮層、前記中間層、及び前記基材層を通過した先行するステッチを用いて、前記糸によりループを形成する過程、f)前記内装部材を他の一つの位置へと進める過程、及びg)所定量のステッチが前記内装部材に施されるまで、前記aからfまでの過程を繰り返す過程を含む、方法。
【0007】
また、ここでは、上述の方法により形成される車両の内装部材についても提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
他の特徴、利点、及び細部は、以下に続く実施形態の説明において例としてのみ現れる。説明においては以下の図面が参照される。
【0009】
図1図1は、本発明の例としての実施形態に従ってステッチが施された部材の内装部材を示す断面図である。
【0010】
図2図2は、本発明の例としての実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図面を参照するが、図面においては、可能な範囲で、例えば参照符号は、様々な角度から見るに際して例えば部材を指定するのに用いられる。図1においては、車両の内装部材16が示されているのが見受けられる。一つの実施においては、内装部材16は、車両のインストルメントパネルの一部である。
【0012】
図1において最もよく示されているように、内装部材16は、好ましくは多層構造である。この多層構造は、好ましくは、十分に滑らかな外表面を有する外皮層18と、この外表面に対して反対を向いている底面と、を含む。外皮層18は、好ましくは、十分な柔軟性を有すると共に審美的に心地よい特性を有するプラスチック材料により形成される。
【0013】
内装部材16の柔軟性を増進するために、外皮層18の下の領域にはクッション支持材料20の層が設けられる。クッション支持材料20は、潜在的には、架橋ポリプロピレン(XLPP)発泡体のような発泡材料により形成されるものとすることが好ましいが、あらゆる数の異なる構造により形成されるものとすることもできると考えられる。前記クッション支持材料の下には、好ましくは、寸法的に安定したプラスチック又はその他の適切な材料により作られた基材パネル22が配置される。
【0014】
潜在的に好適な実施形態においては、クッション支持材料20と、基材パネル22と、は、このように、外皮層18の支持構造を提供するように協調的に機能するのである。
【0015】
クッション支持材料20を形成するXLPP発泡体は、外皮層18と基材パネル22との間で膨張するものとすることができる。そうすることにより、大体において図1に示されるような形態の多層複合材料構造が形成されると考えられる。また、外皮層18が予めクッション材料20を覆うような状態となるように、外皮層18をクッション材料20に取り付けておくこともできる。そうすることにより、予め層状となった複合材料を形成することができ、これをその後、利用状況に応じて基材パネル22に適用することができると考えられる。
【0016】
本発明の例としての実施形態に従えば、以下の手法のうちのいずれか一つにより、存在感のある装飾的なステッチを内装部材に施すことができる。
【0017】
選択1)まだ形成されていない単一層又は多重層の構造のトリム材料にステッチを施し、その縫ったトリムシートを、予め形成された/予め切られた基材に巻き付ける。
【0018】
選択2)予め形成された単一層又は多重層の構造のトリム材料にステッチを施し、その縫ったトリムプリフォームを予備成形モールド基材に巻き付ける。
【0019】
選択3)平らな又は比較的平らな単一層又は多重層の構造のトリム及び基材部材にステッチを施す。
【0020】
部材の複雑さ及び大きさが増加するにつれて、選択1は実行が難しくなる。まだ形成されていないトリム材料は、比較的平らな表面にしか適用できないからである。
【0021】
選択2においては、あらかじめ形成されステッチが施された皮の大きさ及び形状が、成形基材のそれと略完全に適合することが必要とされる。また、選択2においては、プリフォームに損傷を与えることがないように入れ子を適合するために、引き抜き型の中の全ての表面は適切な傾斜を有していることが要求される。選択2における全てのアンダーカットは、仕上げするために縁を機械により又は手動でラッピングする必要がある。
【0022】
選択3においては、選択2に関連するようなフィットしなければならいという問題や仕上げる際の問題はなくなる。しかしながら、縫い針が部材のトリム及び基材材料を貫くように駆動する性能を有しつつ、縫い針が部材の限られた領域に近づけるようにすることが必要であるため、縫製装置の能力により制限される。同様に、構成要素に必要とされるあらゆる背後の部材(肋材、ボス、等)や付属品は、ステッチの通り道の背後/真下に直接的に配置することはできない。
【0023】
この出願は、上述の選択2に関連する製造コスト及び複雑性を削減するべく、大きな、成形ソフトトリムにより覆われた自動車内装トリムパネルのトリム及び基材にステッチを施す手段を提供する。そしてこのステッチは、必要であれば、背後の部材のすぐ上に直接的に配置されるように設計し、製造することができる。
【0024】
ここで説明する発明の例としての多様な実施形態は、チェーンステッチ装置の使用から成る。当該チェーンステッチ装置は、ヘッドの上部にある千枚通しを用いて、内装部材のトリム及び基材を貫通させるのである。千枚通しが、当該千枚通しにより部材に形成した孔24から引き出された後、装置の下部アームから、孔24を通って、フック付きの縫い針が突き出して、糸テンションアームにより所定の位置に保持されている糸が掴まれる。一旦フックに引っ掛けられると、糸は孔を通り抜けるように引き出されて、そして先行するステッチのループを通り抜けるように引き出される。縫い針が孔24を通り抜けるように糸を下へと引き出したら、針はまた、その部分を千枚通しが貫通する次の位置へと進める。それから縫い針はもう一度フックの位置へと進むが、そのとき、千枚通しは部材と係合した状態であり、そのため部材は動かない。一旦千枚通しが部材から引き出されたら、邪魔をされることなく、縫い針は新しく形成された孔の中へと移動することができる。
【0025】
ステッチの孔を形成するのに千枚通しを用いることにより、部材の上面又は千枚通しに与える損傷を最小限に抑えつつ、より丈夫な材料構造(複合材料、金属、等)にもステッチを施すことができる。二重縫いの場合のように糸が孔の内外を何度も行ったり来たりすることがないので、糸の損傷が最小限に抑えられる。針の破損を心配することなく、非常に大きなテックスの糸を用いることができる。
【0026】
上述したようなチェーンステッチ装置のポストベッドステッチプレートは、10mm×15mm程度の大きさとすることができ、これは、従来の機械的チェーンステッチプレートの寸法である16mm×44mmと比較して面積が大きく減少している(もちろん、これよりも大きい又は小さい面積のものも、本発明の例としての実施形態の範囲内に含まれると考えられる)。部材の、緻密に限られた範囲の部分へのアクセスが可能であり、とりわけ、ステッチプレートの長さを最小化する通過平面距離が重要である。
【0027】
手作業でトリム/基材構造を縫うための最適な装置の構成は、高い柱の、長いアームの装置となるであろう。手動による部品の供給、又は、取り付けられた付属品によりガイドされる部品の供給が要求される。
【0028】
機械的縫製のための最適な装置の構成は、部材のデザインに依存して決まる。ここでも、鍵となる因子は、ステッチプレートをコンパクトな寸法にすることである。シリンダーアームの長さやポストベッドの高さは、適用に応じて定まるであろう。
【0029】
部材におけるステッチの配置を容易とするために、固定具の背面又はISM側は、あらゆるマルチプレーン様式の線、リブ、ボス、又はその他のステッチ全長についての部材の背面に沿ってのステッチプレートの経路/接触を妨害する可能性のあるあらゆる妨害物から自由とされはっきりと分離していることが提案される。背後の部材がステッチの経路から動かすことのできないものである場合には、前記の部材を含む分離した部材が成形され、その後ステッチが施された後に基材に取り付けられることが提案される。この二次的な取り付けは、熱かしめ、IR溶接、接着、その他のあらゆる適切な方法により行われる。
【0030】
また、基材材料は、必要が生ずれば、ステッチを施すのにより適切な厚さとなるように局所的に薄くされることが提案される。例えば、表面上の壁厚さが2.5mmの材料は、ステッチの経路に沿って、幅15〜20mmで局所的に1.5mm又は2.0mmの厚さにまで薄くすることができる。この部材の背後の凹所は、取り付ける前に、必要に応じて、リブ又はボスを含む分離したパーツを配置するのにも役立つ。パネル基板を圧縮成形することは、表面上の壁厚さが2.0mmのもののステッチ領域を1−1.5mmにまで薄くするのに適合する。もちろん、前述した値よりも大きい又は小さい寸法のものも、本発明の例としての実施形態の範囲内に含まれるものと考えることができる。
【0031】
次に、図2を参照すると、本発明の一つの例としての実施形態に従って内装部材にステッチを施す方法を示すフローチャート30が提供されている。ここで、内装部材は、外皮層と、基材層と、前記外皮層と前記基材層との間に配置される中間層と、を有する。
【0032】
ボックス32においては、前記外皮層、前記基材層、及び前記中間層は千枚通しにより貫通されてこれらを刺し通す孔が形成される。ボックス34においては、孔が形成された後に千枚通しが引き抜かれる。
【0033】
その後、ボックス36において、縫い針が、(例えば、前記基材層、前記中間層、及び前記外皮層を通り抜けるように)前記孔を通り抜けるように挿入されて、前記外皮層上に配置された糸が掴まれる。ボックス36のステップが完了したら、ボックス38において、前記糸が、前記外皮層、前記中間層、及び前記基材層を通り抜けるように引っ張られる。
【0034】
その後、ボックス40において、前記外皮層、前記中間層、及び前記基材層を通過した先行するステッチを用いて、前記糸によりループが形成される。但しもちろん、これは先行するステッチが最初のステッチである場合を除く。ボックス40のステップが完了したら、ボックス42において、前記内装部材は、千枚通し及び縫い針に対して、他の一つの位置へと進み又は移動し、それから、所定量のステッチが前記内装部材に施されるまで、ボックス32−42の過程又はステップが繰り返される。
【0035】
発明について、例としての実施形態を参照しながら説明したが、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、多様な変更を加えることができ、そして均等物によりその要素を置き換えることができるものと、当業者によって理解されるべきであろう。さらに、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に従ったものとするために、多くの修飾が加えられるであろう。したがって、本発明は、この発明を実施するに際しての最適な実施形態と考えられて開示された特定の実施形態に制限されることはないと考えられる。すなわち、本発明は、本出願の範囲内に含まれる全ての実施形態を包
含すると考えられる。
図1
図2