(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷却プレートが基板を冷却する上では、冷却プレートにおける対向面の大きさが基板の大きさに近付くほど好ましく、基板と対向面との間の距離が小さいほど好ましい。ただし、対向面が大きくなるほど、冷却プレートと真空処理装置の内周面との隙間が小さくなり、また、基板と対向面との間の距離が小さくなるほど、冷却プレートと基板との隙間が小さくなる。言い換えれば、冷却体としての冷却プレートと基板との隙間が小さくなることによって、コンダクタンスが小さくなり、結果として、排気速度が低下してしまう。
【0005】
なお、こうした事項は、冷却体が冷却水によって冷却される冷却装置に限らず、クライオ機構によって冷却される冷却装置にも共通している。
本発明は、冷却対象が収容される空間において排気速度の低下を抑えることを可能とした冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための冷却装置は、冷却部と、前記冷却部に接続する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する冷却体であって、前記第1面と前記第2面との間で気体が流れる通路を含み、前記冷却部によって冷却される前記冷却体と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、第1面と第2面の間で気体が流れる通路が冷却体に形成されているため、通路を有しない構成と比べて、冷却体の第1面に沿った気体の流れ、および、第2面に沿った気体の流れが形成されやすくなる。それゆえに、冷却体に気体が入りやすくなり、結果として、冷却対象が収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
上記冷却装置において、前記冷却体は、1つの方向である第1方向、および、前記第1方向と交差する第2方向に沿って拡がる板形状を有し、前記通路は、前記第1方向に沿って延び、前記冷却体を複数の冷却部材に区画するスリットであり、前記複数の冷却部材には、互いに異なる大きさを有した2種類以上の前記冷却部材が含まれてもよい。
【0008】
上記冷却装置において、前記冷却体は、1つの方向である第1方向、および、前記第1方向と交差する第2方向に沿って拡がる板形状を有し、前記通路は、前記第1方向に沿って延び、前記冷却体を複数の冷却部材に区画するスリットであってもよい。そして、前記複数の冷却部材のうち、前記第2方向の端に位置する前記冷却部材の少なくとも一方が端部材であり、前記端部材の大きさは、前記端部材以外の他の前記冷却部材の大きさよりも小さくてもよい。
【0009】
上記構成によれば、冷却体のうち、第2方向における端寄りに通路が位置するため、冷却体の周りを流れる気体が、冷却体に入りやすくなる。それゆえに、第1面に沿った気体の流れ、および、第2面に沿った気体の流れが形成されやすくなり、冷却対象が収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
【0010】
上記冷却装置において、前記冷却体は、1つの方向である第1方向、および、前記第1方向と交差する第2方向に沿って拡がる板形状を有し、前記通路は、前記第1方向に沿って延び、前記冷却体を複数の冷却部材に区画するスリットであってもよい。そして、前記複数の冷却部材のうち、前記第2方向の中央に位置する前記冷却部材が中央部材であり、前記中央部材の大きさは、前記中央部材以外の他の前記冷却部材の大きさよりも小さくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、冷却体の周りを流れる気体が、冷却体に入りやすくなるため、冷却体の第1面に沿った気体の流れ、および、第2面に沿った気体の流れが形成されやすくなり、冷却対象が収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
【0012】
上記冷却装置において、前記冷却体は、1つの方向である第1方向、および、前記第1方向と交差する第2方向に沿って拡がる板形状を有し、前記通路は、前記第1方向に沿って延び、前記冷却体を複数の冷却部材に区画するスリットであることが好ましい。そして、前記各冷却部材は他の全ての前記冷却部材とほぼ同じ形状を有し、前記第2方向において等間隔で並ぶことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1面の全体において第1面に沿う気体の流れが形成されやすくなり、また、第2面の全体において第2面に沿う気体の流れが形成されやすくなるため、冷却対象が収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
【0014】
上記冷却装置において、前記第1方向と前記第2方向とによって規定される面が基準面であり、前記複数の冷却部材の少なくとも1つが、前記基準面に対して傾斜した平面に沿って位置する傾斜部材であることが好ましい。そして、前記傾斜部材は、前記第2方向に縁を有し、前記縁は、前記第2方向において前記傾斜部材と隣り合う他の前記冷却部材に重なることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、冷却体のうち、第2方向における傾斜部材の縁の位置が、第2方向において隣り合う冷却部材に重なる部分では、第2面と対向する方向から見て、2つの冷却部材間の隙間が視認されない。そのため、第2面と対向する方向から見て、2つの冷却部材の各々が冷却する領域に隙間が形成されにくい。結果として、冷却装置が冷却対象を冷却する効率が高まる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から
図5を参照して、冷却装置を具体化した1つの実施形態を説明する。以下では、冷却装置が搭載される真空処理装置の一例である成膜装置の概略構成、冷却装置の構成、および、冷却装置の作用を順番に説明する。
【0018】
[成膜装置の概略構成]
図1を参照して成膜装置の概略構成を説明する。
図1は、成膜装置を上面視した構成を模式的に示すブロック図である。
【0019】
図1が示すように、冷却装置10は、冷却部11と、冷却部11によって冷却される冷却体12とを備え、冷却体12は、冷却部11に接続する第1面12aと、第1面12aとは反対側の第2面12bとを有している。
【0020】
冷却装置10は成膜装置100に搭載され、成膜装置100は、例えばスパッタ装置および蒸着装置のいずれかである。成膜装置100は、成膜対象であって、冷却装置10の冷却対象Tgを収容する真空槽101と、冷却対象Tgに向けて成膜種を放出する成膜部102と、冷却対象Tgの下端を支持する支持部103とを備えている。成膜装置100がスパッタ装置であるとき、成膜部102はカソード装置であり、成膜装置100が蒸着装置であるとき、成膜部102は蒸着源である。
【0021】
成膜装置100において、冷却装置10は、冷却体12の第2面12bが成膜部102と対向する状態で配置され、冷却体12と成膜部102とが対向する方向において、支持部103は、冷却体12と成膜部102との間に位置している。
【0022】
成膜装置100は、成膜装置100の内部を所定の圧力に減圧し、かつ、成膜装置100の内部に気体の流れを形成する排気部104を備えている。
【0023】
冷却装置10は、冷却対象Tgに対する成膜処理が行われるとき、冷却対象Tgを冷却し、かつ、真空槽101内の気体を凝縮することによって、冷却対象Tgが収容される空間の圧力を下げる。冷却体12の第2面12bと冷却対象Tgとの間の距離である第1距離L1は、例えば数十mm程度である。また、冷却体12の縁と、真空槽101の内周面のうち、冷却体12の縁と対向する部分との距離である第2距離L2の最小値は、例えば数十mm程度である。
【0024】
[冷却装置の構成]
図2から
図5を参照して冷却装置の構成をより詳しく説明する。
図2が示すように、冷却体12は、1つの方向である第1方向D1、および、第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って拡がる板形状を有している。冷却体12は、第1面12aと第2面12bとの間で気体が流れる通路を含んでいる。本実施形態において、通路は、第1方向D1に沿って延び、冷却体12を複数の冷却部材21に区画するスリット21sである。複数の冷却部材21において、各冷却部材21は他の全ての冷却部材21とほぼ同じ形状を有し、第2方向D2において等間隔で並んでいる。
【0025】
こうした冷却体12によれば、第1面12aの全体において第1面12aに沿う気体の流れが形成されやすくなり、また、第2面12bの全体において第2面12bに沿う気体の流れが形成されやすくなるため、冷却対象Tgが収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
【0026】
第1方向D1と第2方向D2とによって規定される面が基準面Rである。複数の冷却部材21の全てが、基準面Rに対して傾斜した平面に沿って位置する傾斜部材21tであり、傾斜部材21tは、第2方向D2に縁21eを有している。傾斜部材21tの縁21eは、第2方向D2において傾斜部材21tと隣り合う他の傾斜部材21tに重なっている。
【0027】
各傾斜部材21tは他の全ての傾斜部材21tとほぼ平行であり、各傾斜部材21tと基準面Rとが形成する角度である傾斜角度θは、0°よりも大きく90°以下であればよく、30°以上60°以下であることが好ましい。傾斜角度θは、冷却体12による吸熱の効率と排気速度とを加味して設定されればよい。
【0028】
各傾斜部材21tは、冷却部11に接続する第1傾斜面21aと、冷却対象Tgと対向する第2傾斜面21bとを有している。そして、各傾斜部材21tの第1傾斜面21aと対向する方向から見て、複数の第1傾斜面21aは、冷却部11に接続する1つの面、すなわち、冷却体12の第1面12aを構成している。また、各傾斜部材21tの第2傾斜面21bと対向する方向から見て、複数の第2傾斜面21bは、冷却対象Tgと対向する1つの面、すなわち、冷却体12の第2面12bを構成している。言い換えれば、各第1傾斜面21aには、互いに異なる第1面12aの一部が含まれ、各第2傾斜面21bには、互いに異なる第2面12bの一部が含まれている。
【0029】
すなわち、
図3が示すように、各傾斜部材21tの縁21eが、第2方向D2方向において各傾斜部材21tと隣り合う他の傾斜部材21tに重なっているため、基準面Rと対向する方向から見て、複数の傾斜部材21tは、1つの第1面12aおよび1つの第2面12bを構成している。
【0030】
そして、成膜装置100において、冷却対象Tgから冷却体12を見て、第2面12bは1つの面であり、かつ、第2面12bと第1面12aとの間を貫通する部分を有しないように視認される。すなわち、冷却対象Tgの中で、第2面12bと対向する部分のほぼ全体が、冷却体12を構成するいずれかの冷却部材21と対向する。
【0031】
このように、冷却体12のうち、第2方向D2における傾斜部材21tの縁21eの位置が、第2方向D2において隣り合う傾斜部材21tに重なる部分では、第2面12bと対向する方向から見て、2つの傾斜部材21t間の隙間が視認されない。そのため、第2面12bと対向する方向から見て、各傾斜部材21tが冷却する領域の間に隙間が形成されにくい。結果として、冷却装置10が冷却対象を冷却する効率が高まる。
【0032】
各傾斜部材21tは金属製の板部材であり、傾斜部材21tの形成材料は、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、および、銅などであればよい。
【0033】
各傾斜部材21tにおいて、第2傾斜面21bの少なくとも一部が黒色を有していることが好ましく、第2傾斜面21bの全体が黒色を有していることがより好ましい。すなわち、第2傾斜面21bの少なくとも一部における放射率が0.8以上であることが好ましく、第2傾斜面21bの全体における放射率が0.8以上であることがより好ましい。第2傾斜面21bが黒色を有することによって、冷却体12において、放射による吸熱の効率が高まり、結果として、冷却体12による冷却対象Tgの冷却効率が高まる。
【0034】
なお、各傾斜部材21tにおいて、第1傾斜面21aの少なくとも一部が黒色を有してもよい。すなわち、各傾斜部材21tにおいて、第1傾斜面21aの少なくとも一部における放射率が0.8以上であってもよい。各傾斜部材21tでは、上述した傾斜角度θが大きくなるほど、冷却対象Tgと第2傾斜面21bとの間の距離と、冷却対象Tgと第1傾斜面21aとの間の距離との差が小さくなる。これにより、第
1傾斜面21
aが放射による冷却対象Tgの冷却に寄与する度合いが大きくなるため、第
1傾斜面21
aの少なくとも一部も黒色を有していることが好ましい。
【0035】
なお、黒色を有した第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bは、例えば、傾斜部材21tの第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bの各々を酸化することによって形成することができる。また、傾斜部材21tを構成する板部材に、黒色を有した塗料を塗布することによって、第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bの色を黒色にすることもできる。
【0036】
これに対して、第2傾斜面21bにおいて気体の凝縮を起こりやすくする上では、第1傾斜面21aの表面粗さは、第2傾斜面21bの表面粗さよりも小さくてもよい。ここで、第1傾斜面21aは、傾斜部材21tにおける放射率を変えない一方で、傾斜部材21tにおける吸熱量を変える程度の大きさを有する段差を有した段差面であってもよいし、第1傾斜面21aは、傾斜部材21tにおける放射率を変える程度の微細な段差を有した段差面であってもよい。
【0037】
さらには、第1傾斜面21aは、傾斜部材21tにおける吸熱量を変える程度の大きさを有する段差と、放射率を変える程度の微細な段差との両方を有した段差面であってもよい。第2傾斜面21bにおいて、これら2つの段差のいずれを第2傾斜面21bにおける段差よりも小さくしたとしても、第1傾斜面21aでの吸熱量を小さくすることができる。
【0038】
それゆえに、第1傾斜面21aにおける表面粗さが第2傾斜面21bの表面粗さ以上である構成と比べて、第1傾斜面21aが吸熱しにくくなる。結果として、第1傾斜面21aの温度が上がりにくい分だけ、第1傾斜面21aにおいて気体の凝縮が起こりやすくはなる。
【0039】
第1傾斜面21aの表面粗さは、例えば、第1傾斜面21aに対して鏡面加工を行うことによって、第2傾斜面21bの表面粗さよりも小さくすることができる。
【0040】
図4は、冷却体12および冷媒通路における基準面Rと直交する断面構造を示す断面図であり、
図4では、説明の便宜上から、冷媒通路に接続した冷媒循環部のブロック図が、これらの断面構造とともに示されている。
【0041】
図4が示すように、冷却部11は、冷媒を用いて冷却体12を冷却し、冷媒が通る管状を有した冷媒通路11aと、冷媒通路11aに接続する冷媒循環部11bとを備えている。冷媒循環部11bは、冷媒通路11aにおける2つの端部に接続し、冷媒の温度を所定の温度に保ちつつ、冷媒通路11aの一方の端部から他方の端部に向けて冷媒を循環させる。
【0042】
冷媒通路11aは金属製の管部材であり、冷媒通路11aの形成材料は、例えば銅、あるいは、銅と同程度の熱伝導率を有する金属であることが好ましい。冷媒通路11aは、冷媒通路11aの内部を流れる冷媒によって直に冷却され、冷媒通路11aの温度は、例えば90K以上150K以下にまで冷却される。これにより、冷媒通路11aの外表面において気体が凝縮し、真空槽101内が減圧される。
【0043】
各傾斜部材21tの第1傾斜面21aが、冷媒通路11aの一部に取り付けられ、各傾斜部材21tは、冷媒通路11aを流れる冷媒によって冷却される。傾斜部材21tの温度は、例えば冷媒通路11aと同程度にまで冷却され、各傾斜部材21tの第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bにおいて気体が凝縮する。
【0044】
なお、冷媒通路11aの外表面は黒色を有してもよく、黒色を有した外表面は、冷媒通路11aの外表面を酸化することによって形成することができる。あるいは、冷媒通路11aを構成する管部材の外表面に、めっき法によって黒色を有した金属膜を形成することによって、黒色を有した外表面を形成することができる。また、冷媒通路11aを構成する管部材に、黒色を有した塗料を塗布することによって、冷媒通路11aの外表面の色を黒色にすることもできる。
【0045】
冷媒通路11aは、冷却対象Tgが放射する熱を少なからず受ける。そのため、冷媒通路11aの外表面が黒色を有することによって、冷媒通路11aの外表面が金属色を有する構成と比べて、冷却装置10による冷却対象Tgの冷却効率を高めることができる。
【0046】
また、第2方向D2において、互いに隣り合う2つの傾斜部材21tの間の距離Lは、50mm以上100mm以下であることが好ましい。距離Lが50mm以上であることによって、真空槽101内の気体がスリット21sに流れ込みやすくなる。また、距離Lが100mm以下であることによって、第2方向D2における傾斜部材21tの幅を冷媒通路11aによって冷却されやすい大きさにすることができる。
【0047】
図5が示すように、第1面12aと対向する平面視において、冷媒通路11aは複数の屈曲部分を有した折線形状を有している。冷媒通路11aは、第1方向D1に沿って延びる直線形状を有した複数の直線部分11a1と、2つの直線部分11a1の間に1つずつ位置し、第2方向D2に沿って延びる複数の屈曲部分11a2とから構成されている。
【0048】
各直線部分11a1における第1方向D1に沿う長さは、他の全ての直線部分11a1における第1方向D1に沿う長さとほぼ等しく、直線部分11a1は、第2方向D2に沿って等間隔で位置している。
【0049】
各傾斜部材21tのうち、第1傾斜面21aが互いに異なる1つの直線部分11a1に取り付けられ、複数の傾斜部材21tが第2方向D2に沿って連なっている。各傾斜部材21tにおける第1方向D1に沿う長さは、各直線部分11a1における第1方向D1に沿う長さよりも大きい。そのため、冷媒が直線部分11a1を流れている間にわたって、冷媒と傾斜部材21tとの間で熱交換が行われるため、第1方向において直線部分11a1が傾斜部材21tからはみ出す構成と比べて、傾斜部材21tを冷却する効率が高まる。
【0050】
[冷却装置の作用]
冷却装置10の作用を以下に説明する。
上述したように、第1距離L1が数十mm程度であれば、真空槽101内の気体は、冷却対象Tgと冷却体12の第2面12bとの間にはほとんど流れ込まないため、冷却体12の第2面12bには気体が入らない。これにより、冷却体12の第2面12bでは、気体の凝縮がほぼ起こらないため、第2面12bでの排気速度が低下してしまう。
【0051】
また、第2距離L2が数十mm程度であれば、冷却体12の縁と真空槽101の内周面の間にも気体が入りにくいため、第1面12aにも気体が入りにくくなり、結果として、第1面12aでの排気速度も低下してしまう。
【0052】
これに対して、上述した冷却装置10では、冷却体12が、冷却体12の第1面12aと第2面12bとの間を貫通する通路として複数のスリット21sを有する。そのため、スリットを有しない冷却体と比べて、スリット21sにおいて圧力が低下し、真空槽101内の気体が、スリット21sを通じて第2面12bと第1面12aとの間を流れる。これにより、冷却体12の第1面12aと第2面12bとの各々において、気体が冷却体12に入りやすくなるため、気体の凝縮も起こりやすくなる。結果として、冷却装置10による排気速度が低下することが抑えられる。
【0053】
以上説明したように、冷却装置の1つの実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1面12aと第2面12bとの間で気体が流れる通路が冷却体12に形成されているため、通路を有しない構成と比べて、冷却体12の第1面12aに沿った気体の流れ、および、第2面12bに沿った気体の流れが形成されやすくなる。それゆえに、冷却体12に気体が入りやすくなり、結果として、冷却対象Tgが収容される空間における排気速度の低下が抑えられる。
【0054】
(2)冷却部材21がほぼ同じ形状を有し、かつ、第2方向D2に沿って等間隔で並ぶため、第1面12aの全体において第1面12aに沿う気体の流れが形成されやすくなり、また、第2面12bの全体において第2面12bに沿う気体の流れが形成されやすくなる。結果として、冷却対象Tgが収容される空間における排気速度の低下が抑えられる。
【0055】
(3)第2方向D2における傾斜部材21tの縁21eの位置が、第2方向D2において隣り合う傾斜部材21tに重なるため、第2面12bと対向する方向から見て、2つの傾斜部材21t間の隙間が視認されない。そのため、各傾斜部材21tの各々が冷却する領域に隙間が形成されにくく、結果として、冷却装置10が冷却対象Tgを冷却する効率が高まる。
【0056】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・複数の傾斜部材21tには、傾斜角度θが互いに異なる2種類以上の傾斜部材21tが含まれてもよい。こうした構成であっても、1つの傾斜部材21tの第2方向D2における縁21eが、第2方向D2において隣り合う他の傾斜部材21tに重なっていれば、上述した(3)と同等の効果を得ることはできる。
【0057】
・傾斜部材21tにおいて、第2方向D2に沿って並ぶ2つの縁のうち、冷却部11からの距離が小さい縁が基端であり、基端以外の縁が先端である。傾斜部材21tは、上述したように、基端が先端よりも上方に位置するような傾きである正の傾きを基準面Rに対して有してもよいし、基端が先端よりも下方に位置するような傾きである負の傾きを基準面Rに対して有してもよい。また、複数の傾斜部材21tには、正の傾きを有する傾斜部材21tと負の傾きを有する傾斜部材21tとが含まれてもよい。
【0058】
これらの構成であっても、1つの傾斜部材21tの第2方向D2における縁21eが、第2方向D2において隣り合う他の傾斜部材21tに重なっていれば、上述した(3)と同等の効果を得ることはできる。
【0059】
・複数の傾斜部材21tのうち、一部の傾斜部材21tにおける縁21eのみが、第2方向D2において隣り合う傾斜部材21tと重なっていてもよい。こうした構成であっても、1つの傾斜部材21tの縁21eが、第2方向D2において隣り合う傾斜部材21tに重なる部分では、上述した(3)と同等の効果を得ることができる。
【0060】
・複数の冷却部材21のうち、一部の冷却部材21が傾斜部材21tである一方で、残りの冷却部材21が基準面Rに沿って位置してもよい。こうした構成であっても、傾斜部材21tの縁21eが隣り合う冷却部材21に重なる部分では、上述した(3)と同等の効果を得ることができる。また、各冷却部材21が第2方向D2においてスリット21sによって区画され、かつ、各冷却部材21がほぼ同じ形状を有していれば、上述した(1)および(2)と同等の効果を得ることはできる。
【0061】
・
図6が示すように、冷却体12を構成する複数の冷却部材31の全てが、基準面Rに沿って位置してもよい。こうした構成であっても、各冷却部材31がスリット31sによって区画され、かつ、各冷却部材31がほぼ同じ形状を有していれば、上述した(1)および(2)と同等の効果を得ることはできる。
【0062】
・冷却体12が複数の冷却部材から構成されるときには、複数の冷却部材には、互いに異なる形状を有した2種類以上の冷却部材が含まれてもよい。
例えば、
図7が示すように、冷却体12は、第1方向D1および第2方向D2に沿って拡がる板形状を有するとともに、第1方向D1に沿って延び、冷却体12を複数の冷却部材41に区画するスリット41sを有している。複数の冷却部材41のうち、第2方向D2の端に位置する冷却部材41の各々が端部材41aである。複数の冷却部材41において、端部材41aの大きさは、端部材41a以外の他の冷却部材41の大きさよりも小さい。
【0063】
すなわち、冷却体12は、2つの端部材41aと、第2方向D2において2つの端部材41aに挟まれる1つの冷却部材41である中央部材41bを備えている。第1方向D1において、端部材41aの長さと中央部材41bの長さとは互いに等しい一方で、第2方向D2において、端部材41aの長さは、中央部材41bの長さよりも小さい。
【0064】
各冷却部材41は、上述した基準面Rに対して傾斜する平面に沿って位置する傾斜部材であり、各冷却部材41における第2方向D2の縁41eは、第2方向D2において隣り合う冷却部材41に重なっている。
【0065】
上述した構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(4)冷却体12のうち、第2方向D2における端寄りに通路が位置するため、冷却体12の周りを流れる気体が、冷却体12に入りやすくなる。それゆえに、第1面12aに沿った気体の流れ、および、第2面12bに沿った気体の流れが形成されやすくなり、冷却対象Tgが収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
【0066】
・
図7を用いて説明された構成では、冷却部材41の一部における縁41eのみが、第2方向D2において隣り合う冷却部材41に重なっていてもよく、こうした構成であっても、冷却部材41の縁41eが他の冷却部材41に重なる部分では、上述した(3)と同等の効果を得ることができる。また、冷却部材41の一部のみが傾斜部材であってもよいし、複数の冷却部材41の全てが、基準面Rに沿って位置してもよい。こうした構成であっても、冷却体12がスリット41sを有する以上は、上述した(1)と同等の効果を得ることはできる。
【0067】
・
図7を用いて説明された構成では、端部材41aによって挟まれる中央部材41bが端部材41aよりも大きければ、冷却体12は、2つ以上の中央部材41bを含んでもよい。こうした構成であっても、端部材41aによって挟まれる中央部材41bが端部材41aよりも大きい以上は、上述した(4)と同等の効果を得ることはできる。
【0068】
・
図7を用いて説明された構成では、第2方向D2の端に位置する冷却部材41の一方のみが他の冷却部材41よりも小さい端部材41aであってもよい。こうした構成であっても、第2方向D2の端のうち、端部材41aが位置する部分では、上述した(4)と同等の効果を得ることはできる。
【0069】
・複数の冷却部材が、互いに異なる2種類以上の冷却部材を含む構成は、以下に説明する構成であってもよい。
図8が示すように、冷却体12は、第1方向D1および第2方向D2に沿って拡がる板形状を有するとともに、第1方向D1に沿って延び、冷却体12を複数の冷却部材51に区画するスリット51sを有している。複数の冷却部材51のうち、第2方向D2の中央に位置する冷却部材51が中央部材51aであり、中央部材51aの大きさは、中央部材51a以外の他の冷却部材51の大きさよりも小さい。
【0070】
すなわち、冷却体12は、1つの中央部材51aと、第2方向D2において中央部材51aを挟んで互いに対向する2つの端部材51bとを備えている。第1方向D1において、中央部材51aの長さと端部材51bの長さとは互いに等しい一方で、第2方向D2において、中央部材51aの長さは、端部材51bの長さよりも小さい。
【0071】
各冷却部材51は、上述した基準面Rに対して傾斜する平面に沿って位置する傾斜部材であり、各冷却部材51における第2方向D2の縁51eは、第2方向D2において隣り合う冷却部材51に重なっている。
【0072】
上述した構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)冷却体12の周りを流れる気体が、冷却体12の中央に入りやすくなるため、冷却体12の第1面12aに沿った気体の流れ、および、第2面12bに沿った気体の流れが形成されやすくなり、冷却対象Tgが収容される空間において排気速度の低下が抑えられる。
【0073】
・
図8を用いて説明された構成では、冷却部材51の一部における縁51eのみが、第2方向D2において隣り合う冷却部材51に重なっていてもよく、こうした構成であっても、冷却部材51の縁51eが他の冷却部材51に重なる部分では、上述した(3)と同等の効果を得ることができる。また、冷却部材51の一部のみが傾斜部材であってもよいし、複数の冷却部材51の全てが、基準面Rに沿って位置してもよい。こうした構成であっても、冷却体12がスリット51sを有する以上は、上述した(1)と同等の効果を得ることはできる。
【0074】
・
図8を用いて説明された構成では、中央部材51a以外の冷却部材51が中央部材51aよりも大きければ、冷却体12は、中央部材51aの他に、3つ以上の冷却部材51を含んでもよい。こうした構成であっても、中央部材51aが他の冷却部材51よりも小さい以上は、上述した(5)と同等の効果を得ることはできる。
【0075】
・
図9が示すように、冷却体12は、板形状を有する1つの冷却部材61から構成され、かつ、冷却部材61の厚さ方向に沿って、冷却部材61を貫通する貫通孔61aを通路として有する構成であってもよい。冷却部材61は、複数の貫通孔61aを有し、各貫通孔61aは第1方向D1に沿って延び、かつ、第2方向D2に沿って並んでいるが、冷却部材61は、1つの貫通孔61aのみを有してもよい。また、貫通孔61aは第2方向D2に沿って延びていてもよいし、円筒面によって区画された円形孔などであってもよい。
こうした構成であっても、冷却体12が第1面12aと第2面12bとの間で気体が流れる通路を有する以上は、上述した(1)と同等の効果を得ることはできる。
【0076】
・第2方向D2は、第1方向D1に対して直交する方向に限らず、第1方向D1と第2方向D2とが形成する角度が90°以外である方向であってもよい。
【0077】
・冷却部11は、冷媒を用いて冷却体12を冷却する機構に限らず、クライオ機構であってもよく、クライオ機構は、冷凍機と、冷却体12を構成する冷却部材に冷凍機を接続するための接続部とを備えていればよい。なお、冷却体12が複数の冷却部材から構成されるときには、冷却装置10は1つのクライオ機構を備え、1つの冷凍機に対して複数の冷却部材が接続された構成であってもよいし、冷却装置10は複数のクライオ機構を備え、1つの冷却部材に対して1つのクライオ機構が接続された構成であってもよい。