特許第6348107号(P6348107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348107Zn−Al−Mgコーティングを有するプレラッカー塗装された金属シートを製造する方法および対応する金属シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348107
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】Zn−Al−Mgコーティングを有するプレラッカー塗装された金属シートを製造する方法および対応する金属シート
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/14 20060101AFI20180618BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180618BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20180618BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20180618BHJP
   C23C 2/26 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B05D7/14 A
   B05D7/14 J
   B05D7/24 302K
   B05D7/24 302T
   B05D7/24 302V
   B32B15/08 G
   B32B15/08 P
   C23C2/06
   C23C2/26
【請求項の数】25
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-507653(P2015-507653)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公表番号】特表2015-515379(P2015-515379A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】IB2013053279
(87)【国際公開番号】WO2013160866
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】PCT/FR2012/050910
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510215651
【氏名又は名称】アルセロルミタル・インベステイガシオン・イ・デサロジヨ・エセ・エレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシャド・アモラン,ティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】リシャール,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エリク
(72)【発明者】
【氏名】レルメルー,オドレイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルタン,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ルメール,ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】アレリー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ディエス,リュック
(72)【発明者】
【氏名】マテーニュ,ジャン−ミシェル
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−348678(JP,A)
【文献】 特開2007−131906(JP,A)
【文献】 特表2003−528218(JP,A)
【文献】 特開2002−317257(JP,A)
【文献】 特開2003−013192(JP,A)
【文献】 特表2008−544081(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/062214(JP,A1)
【文献】 特開2006−152436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シート(1)を製造する方法であって、以下の一連の工程:
−鋼基板(3)を浴に浸し、冷却することにより得られる金属コーティング(7)でそれぞれコーティングされた2つの面(5)を有する鋼基板(3)を用意する工程であって、当該浴は、マグネシウムおよびアルミニウム、および場合によりSi、Sb、Pb、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及びBiから選択される、それぞれ最大0.3重量%までの任意の添加元素、および場合により最大5重量%までの鉄からなる溶融亜鉛浴からなり、
各金属コーティング(7)は、亜鉛、0.1から20重量%のアルミニウム、および0.1から10重量%のマグネシウムを含み、このようにコーティングされた基板(3)は、スキンパス工程を施されている工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を脱脂する工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)をすすぎ、乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)上に形成される、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層を改質させる工程であって、改質工程が、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性溶液の塗布を行うことを含む工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)をすすぎ、場合によって乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)に変換溶液を塗布する工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を塗装して、電気泳動塗料を除く、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む塗膜(9、11)で各外面を被覆する工程
からなる方法。
【請求項2】
脱脂工程が、金属コーティング(7)の外面(15)にアルカリ性溶液を塗布することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.2秒から30秒の時間の間、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性溶液が塗布される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
0.2秒から15秒の時間の間、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性溶液が塗布される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
0.5秒から15秒の時間中に、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性溶液が塗布される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酸性溶液が1から4のpHを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸性溶液が1から3.5のpHを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸性溶液が1から3のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属シート(1)を製造する方法であって、以下の一連の工程:
−鋼基板(3)を浴に浸し、冷却することにより得られる金属コーティング(7)でそれぞれコーティングされた2つの面(5)を有する鋼基板(3)を用意する工程であって、
当該浴は、マグネシウムおよびアルミニウム、および場合によりSi、Sb、Pb、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及びBiから選択される、それぞれ最大0.3重量%までの任意の添加元素、および場合により最大5重量%までの鉄からなる溶融亜鉛浴からなり、
各金属コーティング(7)は、亜鉛、0.1から20重量%のアルミニウム、および0.1から10重量%のマグネシウムを含み、このようにコーティングされた基板(3)は、スキンパス工程を施されている工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を脱脂する工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)をすすぎ、乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)に、クロムを含有しない酸性変換溶液を塗布する工程であって、変換溶液が、1から2のpHを有する工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を塗装して、電気泳動塗料を除く、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む塗膜(9、11)で各外面を被覆する工程
からなる方法。
【請求項10】
0.2秒から30秒の時間の間、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性変換溶液が塗布される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
0.2秒から15秒の時間の間、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性変換溶液が塗布される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
0.5秒から15秒の時間の間、金属コーティング(7)の外面(15)に酸性変換溶液が塗布される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
金属シート(1)を製造する方法であって、以下の一連の工程:
−鋼基板(3)を浴に浸し、冷却することにより得られる金属コーティング(7)でそれぞれコーティングされた2つの面(5)を有する鋼基板(3)を用意する工程であって、
当該浴は、マグネシウムおよびアルミニウム、および場合によりSi、Sb、Pb、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及びBiから選択される、それぞれ最大0.3重量%までの任意の添加元素、および場合により最大5重量%までの鉄からなる溶融亜鉛浴からなり、
各金属コーティング(7)は、亜鉛、0.1から20重量%のアルミニウム、および0.1から10重量%のマグネシウムを含み、このようにコーティングされた基板(3)は、スキンパス工程を施されている工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)上に形成される、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層を改質させる工程であって、改質させる工程が、金属コーティング(7)の外面(15)に機械力を加えること、および場合によって金属コーティング(7)の外面(15)に酸性溶液を塗布することを含む工程、
−改質工程が、酸性溶液を塗布することを含む場合、金属コーティング(7)の外面(15)をすすぎ、場合によって乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を非酸化脱脂する工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)をすすぎ、乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)に変換溶液を塗布する工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を乾燥させる工程、
−金属コーティング(7)の外面(15)を塗装して、電気泳動塗料を除く、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む塗膜(9、11)で各外面を被覆する工程
からなる方法。
【請求項14】
酸性溶液を塗布する前または酸性溶液が外面(15)上に存在するときに、金属コーティング(7)の外面(15)に機械力が加えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ローラーレベラーに通すことによって機械力が加えられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
機械力が、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムの層にひび割れを生じる、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
金属コーティング(7)が、0.3から10重量%のマグネシウムを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
金属コーティング(7)が、0.3から4重量%のマグネシウムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
金属コーティング(7)が、0.5から11重量%のアルミニウムを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
金属コーティング(7)が、0.7から6重量%のアルミニウムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
金属コーティング(7)が、1から6重量%のアルミニウムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
金属コーティング(7)のマグネシウムとアルミニウムとの間の重量比が、1以下である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
金属コーティング(7)のマグネシウムとアルミニウムとの間の重量比が、厳密に1未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
金属コーティング(7)のマグネシウムとアルミニウムとの間の重量比が、厳密に0.9未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウムを含む金属コーティング(7)と、電気泳動塗料を除く、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む塗膜(9、11)とによりそれぞれコーティングされた2つの面(5)を有する金属シート(1)であって、金属コーティング(7)が、0.1から20重量%のアルミニウムおよび0.1から10重量%のマグネシウムを含み、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる金属シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムを含む金属コーティングと塗膜とでそれぞれコーティングされた2つの面を有する鋼基板を含む金属シートに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような金属シートは、一般的に、「プレラッカー塗装された」といわれ、例えば家庭電化製品の分野または建築業界を対象とする。
【0003】
そのような金属シートを製造する方法全体は、製鋼工により行われているので、使用者に対する塗装に関するコストおよび制約は低減されている。
【0004】
少ない割合(典型的にはおよそ0.1重量%)の亜鉛およびアルミニウムを本質的に含む金属コーティングは、優れた防食として従来から使用されている。これらの金属コーティングは現在、特に、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムを含むコーティングとの競争に晒されている。
【0005】
そのような金属コーティングは、以下で全体を通して、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムまたはZnAlMgコーティングと呼ぶ。
【0006】
マグネシウムを添加すると、これらのコーティングの耐食性が著しく上昇し、この上昇が、厚さを減少させ、長期間にわたる防食性の保証を向上させることを可能にし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、ZnAlMgコーティングを有する、プレラッカー塗装された金属シートであって、さらに一層向上した耐食性を有する金属シートの製造を可能にする方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明は、まず、請求項1、9および13に記載の方法に関する。
【0009】
この方法は、請求項8、10から12および14から22の特徴も、単独でまたは組み合わせて含み得る。
【0010】
本発明は、請求項23に記載の金属シートにも関する。
【0011】
ここで、本発明を、添付図面を参照して、情報のために非限定的に提供する例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による方法を使用して得られた金属シートの構造を図示する概略断面図である。
図2】金属シートの外面のXPS分光分析の結果を示す図である。
図3】金属シートの外面のXPS分光分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の金属シート1は、2つの面5を金属コーティング7でそれぞれ被覆した鋼基板3を含む。コーティング7は、上層塗膜9および下層塗膜11でそれぞれ被覆されている。
【0014】
説明を容易にするために、図1において基板3および基板を被覆する様々な層の相対的な厚さは重視されていないことがわかる。
【0015】
2つの面5に存在するコーティング7は同様であり、一方のみを以下に詳細に記載されるものとする。
【0016】
コーティング7は、一般的に、25μm以下の厚さを有し、基板3を腐食から保護することを従来から目的としている。
【0017】
コーティング7は、亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウムを含む。コーティング7は、0.1から10重量%のマグネシウムおよび0.1から20重量%のアルミニウムを含むことが特に好ましい。
【0018】
また、好ましくは、コーティング7は、0.3重量%超のマグネシウム、さらには0.3重量%から4重量%のマグネシウム、および/または0.5から11重量%、さらには0.7から6重量%のアルミニウムを含む。
【0019】
好ましくは、コーティング7中のマグネシウムとアルミニウム間のMg/Al重量比は、1以下、さらに厳密に1未満、さらに厳密に0.9未満である。
【0020】
塗膜9および11は、例えば、ポリマー系である。好ましくは、塗膜は、電気泳動塗料を除く、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0021】
膜9および11は、典型的には、1から200μmの厚さを有する。
【0022】
金属シート1を製造するために、例えば、以下の方法が使用され得る。
【0023】
使用される設備は、単一のライン、または、例えば、金属コーティングおよび塗装をそれぞれ実行するために2本の異なるラインを含み得る。2本の異なるラインが使用される場合、ラインは同じ場所、または異なる場所に位置していてよい。この記載の残りの部分では、変形例は、2本の別々のラインが使用される例としてみなされるものとする。
【0024】
金属コーティング7を製造する第1のラインにおいて、例えば、熱間圧延、次いで冷間圧延によって得られる基板3が使用される。基板3は、溶融めっきにより、浴をくぐらせ、コーティング7を付着させたバンドの形態である。
【0025】
浴は、マグネシウムおよびアルミニウムを含有する溶融亜鉛浴である。浴はまた、場合による添加元素、例えばSi、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、ZrまたはBiをそれぞれ最大0.3重量%含有してもよい。
【0026】
これらの様々な元素は、とりわけ、延性またはコーティング7の基板3に対する接着を改善することを可能にできる。コーティング7の特性に対する元素の影響を知る当業者は、求められる補完的目的に基づいて、元素を使用する方法もわかる。最後に、浴は、供給インゴット由来の、または、浴に基板3を通過させることにより生じる残留元素、例えば鉄を、最大5重量%まで、一般的に2から4重量%の含有量で含有し得る。
【0027】
コーティング7の付着後、基板3は、例えば、基板3の片面にガスを発射するノズルを使用して脱水される。
【0028】
次いで、コ−ティング7は、管理された手段で放冷させる。
【0029】
次に、このように処理されたバンドは、いわゆるスキンパス工程にかけることができ、この工程は、バンドを冷間加工して、弾性プラトーを解消し、機械的特性を定め、スタンピング作業および得ようとする塗装面の品質に適した粗度にすることを可能にする。スキンパス作業を調整する手段は、伸び率であり、この伸び率は、目的を達成するために十分でなければならず、その後の変形能力を保つことができる程度に低率でなければならない。この伸び率は、典型的には0.3から3重量%であり、好ましくは0.3から2.2%である。
【0030】
バンドは、プレラッカー塗装ラインに送達される前に、場合によって巻き取ってもよい。
【0031】
ここで、コーティング7の外面15は、以下の工程にかけられる:
−例えば、アルカリ性溶液を塗布することにより、脱脂する工程、次いで
−すすぎ、乾燥させる工程、次いで
−塗料の接着および耐食性を上昇させるために、表面処理する工程、次いで
−すすぎ、場合によって乾燥させる工程、次いで
−塗装する工程。
【0032】
脱脂工程の目的は、外面15を清浄にし、したがって、微量の有機汚染物、金属粒子および塵埃を除去することである。
【0033】
好ましくは、この工程は、酸化/水酸化アルミニウム表面層いずれかの改質を除いて、外面15の化学的性質を改質させない。したがって、この脱脂工程に使用される溶液は非酸化性である。その結果、脱脂工程中、より一般的には、塗装工程の前に、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムは外面15に形成されない。
【0034】
表面処理工程は、外面15と化学的に反応し、したがって、外面15上に変換層(図示せず)を形成することを可能にする変換溶液を、外面15に塗布することを含む。好ましくは、変換溶液はクロムを含有しない。したがって、変換溶液はヘキサフルオロチタン酸またはヘキサフルオロジルコン酸系溶液になり得る。
【0035】
塗装は、例えば、一般的には上膜9を製造する場合である、2つの連続する塗料層、すなわち、下塗り層および上塗り層を付着させること、または、一般的には、下層膜11を製造する場合である、単一の塗料層を付着させることにより行うことができる。ある変形例では、他の数の層を使用することができる。
【0036】
塗料層は、例えば、ローラーコータを使用して付着される。
【0037】
塗料層の各付着後、一般的に、炉での焼成行われる。
【0038】
このようにして得られた金属シート1は、切断される前に、もう1度巻き取られ、使用者により、場合によって成形し、他の金属シート1または他の部品と組み立てられることがある。
【0039】
本発明者らは、各コーティング7の外面15上に存在する酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層を改質させる工程を使用することにより、金属シート1の耐食性を改善すること、特に、金属シート1が腐食環境に曝される場合、塗膜9および11の発泡現象を制限することが可能になることを示している。
【0040】
本明細書では、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層は、Mg型の化合物もしくはMgx(OH)y型の化合物またはそれらの2つの型の化合物の混合物を含有し得る層を指す。
【0041】
実際に、コーティング7のアルミニウムおよびマグネシウムの含有量が同様である場合でさえ、コーティング7の外面15のXPS(X線光電子分光)分光分析により、塗装する前には、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムが優勢に存在することが示されている。
【0042】
しかし、少ない割合の亜鉛およびアルミニウムを本質的に含む典型的なコーティングでは、金属コーティングの外面は、アルミニウム含有量がきわめて少ないにもかかわらず、酸化アルミニウム層で被覆される。したがって、同様のマグネシウムおよびアルミニウム含有量に対して、優勢量の酸化アルミニウムが見出されることが予想される。
【0043】
塗装する前に、XPS分光法を使用して、外面15上に存在する酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層の厚さも測定した。これらの層は、数nmの厚さを有すると考えられる。
【0044】
これらのXPS分光分析は、腐食環境に曝されていない金属シート1の試験片で行われたことがわかる。したがって、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層の形成は、コーティング7の付着に関連する。
【0045】
図2および3は、XPS分光分析中の、エネルギー準位C1s(曲線17)、O1s(曲線19)、Mg1s(曲線21)、Al2p(曲線23)およびZn2p3(曲線25)に対する元素のスペクトルをそれぞれ図示する。対応する原子濃度は、y軸で示され、分析深さはx軸で示される。
【0046】
図2で分析した試料は、3.7重量%のアルミニウムおよび3重量%のマグネシウムを含むコーティング7と一致し、0.5%の伸び率である従来からのスキンパス工程を施されているが、図3の標本ではそのような工程を施されていない。
【0047】
XPS分光分析により、これらの2つの試験片で、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層の厚さがおよそ5nmであると推定できる。
【0048】
したがって、これらの酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層は、従来からのスキンパス工程によって、または従来からのアルカリ性脱脂処理および従来からの表面処理によって除去されないと考えられる。
【0049】
本発明によれば、金属シート1を製造する方法は、塗装する前に、コーティング7の外面15上に存在する酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層を改質させる工程を含む。
【0050】
そのような改質工程は、表面処理工程の前または最中に行われ得る。改質工程は、例えば、コーティング7の製造ラインまたはプレラッカー塗装ラインで行われ得る。
【0051】
第一の実施形態において、改質工程は、外面15に、例えば1から4、好ましくは1から3.5、およびさらにより好ましくは1から3のpHを有する酸性溶液を塗布することを含む。この溶液は、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸を含み得る。
【0052】
酸性溶液の塗布時間は、溶液のpHならびに塗布される時機および手段に応じて、0.2秒から30秒、好ましくは0.2秒から15秒、およびさらにより好ましくは0.5秒から15秒になり得る。
【0053】
溶液は、浸漬、散布または他の任意の系により塗布され得る。溶液の温度は、例えば周囲温度または他の任意の温度であってよい。
【0054】
第一の実施形態において、酸性溶液を塗布する工程は、脱脂工程に続く、すすぎ、乾燥させる工程の後で行われる。酸性溶液の塗布の後、変換溶液を塗布する工程の前の、外面15をすすぎ、場合によって乾燥させる工程が行われる。
【0055】
第二の実施形態において、変換溶液を塗布する工程は、コーティング7の外面15上に存在する酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層を改質させる工程を構成する。
【0056】
その場合、使用される変換溶液は、1から2までのpHを有する。
【0057】
塗布時間は、第一の実施形態のものと同様である。
【0058】
第三の実施形態において、改質工程は、金属コーティング7の外面15に機械力を加えること、および場合によって酸性溶液を塗布することを含む。
【0059】
そのような機械力は、ローラーレベラー、ブラッシング装置、ショットブラスト装置などにより加えられ得る。
【0060】
これらの機械力は、機械力の作用のみによって、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層の改質に役立ち得る。したがって、ブラッシングおよびショットブラスト装置は、それらの層のすべてまたは一部を除去できる。
【0061】
同様に、ローラー間をたわませて塑性変形を加えることに特性付けられるローラーレベラーを調整して、そこを通る金属シートを、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層にひびが入る程度に変形させることができる。
【0062】
機械力を加えることが、酸性溶液を塗布することと組み合わせられる場合、機械力は、好ましくは、酸性溶液の前に、または酸性溶液の作用に都合がよい外面15上に酸性溶液が存在する間に加えられることになる。
【0063】
その場合、機械力は強くなくてもよい。
【0064】
酸性溶液は、次いで、ローラーレベラーで塗布され得る。
【0065】
酸性溶液が、機械力を加えることと組み合わせて使用される場合、酸性溶液のpHはより高くなり、特に3より高くなり得る。
【0066】
この第三の実施形態において、改質工程は脱脂工程の前に行う。
【0067】
第三の実施形態の改質工程が酸性溶液を塗布することを含む場合、金属コーティング7の外面15をすすぎ、場合によって乾燥させる工程が続いて行われる。
【0068】
本発明による方法、すなわち、金属コーティングに存在する酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム層を改質させる工程を有する方法を使用して得られた金属シート1の標本、および従来のように得られた金属シートを耐食性試験にかけた。本発明による方法を使用して得られた金属シート1は、より優れた耐食性を有していると考えられる。
図1
図2
図3