(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348122
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】高放射性元素を含む高密度ペレットを遠隔製造するためのレーザー焼結システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/62 20060101AFI20180618BHJP
G21C 21/02 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
G21C3/62 M
G21C3/62 G
G21C3/62 L
G21C3/62 N
G21C21/02 J
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-553740(P2015-553740)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-503903(P2016-503903A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】US2013076334
(87)【国際公開番号】WO2014133656
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】13/744,711
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジーン
(72)【発明者】
【氏名】フランセッシーニ、ファウスト
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−183677(JP,A)
【文献】
特開昭59−050067(JP,A)
【文献】
特開平03−146606(JP,A)
【文献】
特表2009−540313(JP,A)
【文献】
特開2000−329883(JP,A)
【文献】
特開2004−330280(JP,A)
【文献】
特開2002−115004(JP,A)
【文献】
特開昭54−114698(JP,A)
【文献】
特開昭64−091094(JP,A)
【文献】
特開昭54−121442(JP,A)
【文献】
特開昭54−001310(JP,A)
【文献】
特開平04−093694(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/026862(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/105827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/62
G21C 21/02
B22F 1/00−8/00
B28B 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で使用するための燃料ペレット(24)を遠隔調製するためのレーザー焼結システム(1)であって、
アメリシウム、キュリウム、プルトニウム、ネプツニウム、ウラン、トリウム、プロトアクチニウム、カリホルニウム、セシウム、ストロンチウム、テクネチウムおよびルテニウムから成る群から選択される放射性元素であって、酸化物、珪化物、窒化物、炭化物およびそれらの混合物から成る群から選択される形態の少なくとも1種類の放射性元素と
セラミックマトリクス材
から成り、乾燥状態である供給組成物、
当該供給組成物の層(18)を受けて保持するための平面(16)を内部に配置した遮へい付き筐体(5)、および
当該供給組成物の層(18)を少なくとも1種類のパターンを形成するように焼結して、ペレット(24)を形成するために、ビーム(20)を差し向ける構造を有する少なくとも1つのレーザー(10)とから成り、
当該少なくとも1つのレーザーの制御装置は当該遮へい付き筐体(5)の外側に位置し、当該少なくとも1種類のパターンはあらかじめ決められたペレット(24)の形に対応することを特徴とする
レーザー焼結システム(1)。
【請求項2】
前記ウランはU−232および/またはU−234によって汚染され、前記トリウムはTh−228によって汚染されている請求項1のシステム(1)。
【請求項3】
前記マトリクス材がウラン、トリウム、ジルコニウム、プロトアクチニウム、プルトニウムおよびそれらの混合物の酸化物、窒化物、炭化物および珪化物、ならびにそれらの混合物から成る群から選択される請求項1のシステム(1)。
【請求項4】
前記の供給組成物の層(18)の方に前記ビームを差し向けるために前記平面(16)の上方に反射装置(22)がある請求項1のシステム(1)。
【請求項5】
前記ペレット(24)の密度が理論密度の85%以上である請求項1のシステム(1)。
【請求項6】
前記層(18)が実質的に均一で、厚さが5〜100ミクロンの範囲内である請求項1のシステム(1)。
【請求項7】
前記供給組成物が粉末形態である請求項1のシステム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのパターンが円形であり、前記ペレットが円柱形である請求項1のシステム(1)。
【請求項9】
前記円形とペレット(24)が同等の直径を持つ請求項8のシステム(1)。
【請求項10】
前記マトリクス材が酸化トリウムである請求項1のシステム(1)。
【請求項11】
前記筐体(5)の温度が1000〜2000℃の範囲にある請求項1のシステム(1)。
【請求項12】
原子炉で使用するための燃料ペレット(24)を遠隔調製するためのレーザー焼結法であって、
アメリシウム、キュリウム、プルトニウム、ネプツニウム、ウラン、トリウム、プロトアクチニウム、カリホルニウム、セシウム、ストロンチウム、テクネチウムおよびルテニウムから成る群から選択される放射性元素であって、酸化物、珪化物、窒化物、炭化物およびそれらの混合物から成る群から選択される形態の少なくとも1種類の放射性元素と
セラミックマトリクス材
から成る乾燥状態の供給組成物を作製し、
内部に平面(16)が配置された遮へい付き筐体(5)を入手し、
当該供給組成物を当該平面(16)の上に散布して第1層(18)を形成し、
少なくとも1つのレーザー(10)からビーム(20)を前記供給組成物の当該第1層(18)の方に差し向け、この際に前記少なくとも1つのレーザー(10)は当該遮へい付き筐体(5)の外側にある制御装置から操作し、さらに
前記第1層(18)に、形状があらかじめ定められた前記ペレット(24)の形状に一致する少なくとも1種類のパターンを形成することから成るレーザー焼結法。
【請求項13】
前記第1層(18)の上に第2層を散布し焼結して、ペレット(24)の高さを増加させるために前記レーザー焼結法が繰り返される請求項12の方法。
【請求項14】
ペレット(24)があらかじめ定められた高さになるまで前記レーザー焼結法を複数回繰り返し実行して、複数の層を順次形成する請求項12の方法。
【請求項15】
前記複数の層の厚さがそれぞれ5〜100ミクロンの範囲内である請求項14の方法。
【請求項16】
前記ペレット(24)の高さが1〜500mmの範囲内である請求項12の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックマトリクス材と高放射性元素を含む高密度ペレットを遠隔調製するために特に有用なレーザーシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の商業用原子力発電所の運転により生じる使用済み核燃料を再処理すると、高レベルの核燃料廃棄物が発生する。この廃棄物を処分するには、その中に含まれる長寿命の高放射性元素を回収し、低減する必要がある。長寿命の高放射性元素には、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)、プルトニウム(Pu)、ネプツニウム(Np)、プロトアクチニウム(Pa)、カリホルニウム(Cf)、ウラン(U)、トリウム(Th)、ならびにテクネチウム(Tc)−99、ヨウ素(I)−129、ジルコニウム(Zr)−93、セレン(Se)−79およびスズ(Sn)−126などの或る特定の核分裂生成物が含まれる。UはU−232および/またはU−234により汚染され、ThはTh−228により汚染されているはずである。核燃料中のこれらの元素の或る特定の同位元素は、非常に強く透過性の高い放射線場を有する。この放射線場は、照射ThおよびUがリサイクルされると、Th−228、U−232および随伴する崩壊生成物の増加により、さらに強くなる。また、核分裂炉内で通常生成される放射性核分裂生成物による汚染がさらに進む可能性がある。高レベル廃棄物の放射能の低減は、これらの高放射性元素の酸化物、珪化物、窒化物または炭化物をトリウム、ウランまたはジルコニウムの酸化物、珪化物、窒化物または炭化物のマトリクスとともに含有するペレットを成型した後、当該放射性元素を安定な核分裂生成物に変換してその含有量を最終的に低減できる原子炉の強い中性子スペクトルに当該ペレットを曝すことにより、達成できる。高放射性元素には強く透過性の高い放射線場があるため、製造プロセスを厚く遮へいされた場所で遠隔操作によって実施する必要がある。
【0003】
燃料ペレットが十分な性能を発揮するには、ペレットは商業用原子力発電所の運転要件に基づき高密度(例えば、スミア密度が理論密度の85%を超える)でなければならない。高密度燃料を製造するための当技術分野で既知の複雑なペレット成型および焼結装置ならびに産業用ペレット製造技術は、厚く遮へいされ、遠隔操作される製造セル内での使用には適さない。
【0004】
よって、当技術分野には、厚く遮へいされ、遠隔操作される区域内で高放射性元素を含んだ高密度(例えば、スミア密度が理論密度の85%を超える)のペレットを焼結し、成型するためのシステムおよびプロセスを設計し、開発する必要がある。また、当該焼結およびペレット成型プロセスは遠隔の場所から(例えば、厚く遮へいされた区域内で)、使用期間を通して最小限の保守しか必要とせず、プロセス自動化が簡単な設備を用いて実施できることが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
一局面において、本発明は、原子炉用燃料ペレットを遠隔調製するためのレーザー焼結システムを提供する。当該システムは、酸化物、珪化物、窒化物、炭化物およびそれらの混合物から成る群から選択される形態の少なくとも1種類の高放射性元素と、セラミックマトリクス材とを含む供給組成物を含む。当該供給組成物は、乾燥状態である。前記システムは、供給組成物の層を受けて保持するための平面が内部に配置された遮へい付き筐体も含む。前記システムはさらに、供給組成物の層を少なくとも1種類のパターンを形成するように焼結して、ペレットを形成するために、ビームを差し向ける構造を有する少なくとも1つのレーザーをも含む。この少なくとも1つのレーザーの制御装置は、遮へい付き筐体の外側に設置される。少なくとも1種類のパターンとは、あらかじめ決められたペレットの形に対応する。
【0006】
遮へい付き筐体は、1000〜2000℃の範囲の温度に耐えられる。
【0007】
前記平面の上方に位置する反射装置により、少なくとも1つのレーザーのビームを差し向けることができる。
【0008】
或る特定の実施態様において、少なくとも1種類の高放射性元素は、再処理された核燃料物質中にある、アメリシウム、キュリウム、プルトニウム、ネプツニウム、プロトアクチニウム、カリホルニウム、ウラン、トリウム、核分裂生成物およびそれらの混合物から成る群から選ばれる。ウランはU−232および/またはU−234により汚染され、トリウムはTh−228により汚染されているはずである。核分裂生成物は、セシウム、ストロンチウム、テクネチウム、ルテニウムおよびそれらの混合物から成る群から選択することができる。セラミックマトリクス材は、酸化物、窒化物、炭化物、珪化物およびそれらの混合物から成る群から選択することができる。また、セラミックマトリクス材は、ウラン、トリウム、ジルコニウム、プロトアクチニウム、プルトニウムの酸化物、窒化物、炭化物および珪化物、ならびにそれらの混合物から成る群から選択することができる。ペレットの密度は、理論密度の約85%以上である。また、供給組成物は、粉末形態でもよい。
【0009】
また、前記層は、5〜100ミクロンの実質的に均一な厚さを有することができる。
【0010】
また、前記少なくとも1種類のパターンは、円柱状のペレットを製造するために円形の形にすることができる。
【0011】
或る特定の実施態様において、前記マトリクス材は、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化ウランおよびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0012】
別の局面において本発明は、原子炉用燃料ペレットを遠隔調製するためのレーザー焼結法を提供する。当該方法は、酸化物、珪化物、窒化物、炭化物およびそれらの混合物から成る群から選択される形態の少なくとも1種類の高放射性元素と、セラミックマトリクス材とを含む乾燥した状態の供給組成物の調製を含む。前記方法はまた、内部に平面を配置した遮へい付き筐体を入手し、当該平面上に供給組成物を散布して第1層を形成し、前記の少なくとも1つのレーザーを当該遮へい付き筐体の外側にある制御装置から操作することによりその少なくとも1つのレーザーのビームを当該供給組成物の第1層の方に差し向け、当該第1層に少なくとも1つのパターンを、その形があらかじめ定められたペレットの形に一致するように形成することも含む。
【0013】
或る特定の実施態様において、上記の方法は、前記第1層上への第2層の散布および焼結を繰り返すことによりペレットの高さを増加させる。また、上記の方法は、あらかじめ定められたペレット高さが得られるまで複数回繰り返して、前記第1層の上に複数の層を順次形成することができる。当該複数の層それぞれの厚さは、5〜100ミクロンである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0015】
【
図1】本発明の或る特定の実施態様に基づき放射性元素を含むペレットを製造するためのレーザー式遠隔製造プロセスの概念図を示す。
【0016】
【
図2】本発明の或る特定の実施態様に基づく、焼結されたペレット形材と未焼結の粉末が入った供給組成物トレイの平面図の概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、高放射性元素を含む燃料ペレットを製造するための遠隔操作レーザー式焼結システムと方法に関する。高放射性元素は、使用したまたは使用済み核燃料から発生する。例えば、長半減期の高放射性元素は、使用した核燃料の再処理から得られる物質から回収することが可能であり、核分裂生成物としての汚染物質が含まれる。本発明では、これらの放射性元素をセラミックマトリクス材と結合して、ペレットを作製する。その結果得られたペレットは、一般に、加圧水型炉、沸騰水型炉、重水炉、低減速炉または高速炉などの運転中の原子炉の燃料棒に使用できる。
【0018】
核燃料は一般に、半減期の長い高放射性元素を含む。これらの元素は、酸化物、珪化物、窒化物、炭化物およびそれらの混合物の形態をしている。半減期の長い高放射性元素には、変換生成物と核分裂生成物が含まれる。本書において、「変換生成物」とは、同位元素による中性子の吸収により原子炉内で生成される物質のことをいう。本書において、「核分裂生成物」とは、ウラン原子の核分裂によって生成される物質のことをいう。放射性の変換生成物には、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)、プルトニウム(Pu)、ネプツニウム(Np)、プロトアクチニウム(Pa)、カリホルニウム(Cf)、ウラン(U)およびトリウム(Th)が含まれる。或る特定の実施態様において、UはU−232および/またはU−234により汚染され、ThはTh−228により汚染されているはずである。核分裂生成物には、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)およびそれらの混合物が含まれる。或る特定の実施態様において、核分裂生成物には、Tc−99、ヨウ素(I)−129、ジルコニウム(Zr)−93、セレン(Se)−79およびスズ(Sn)−126が含まれる。
【0019】
本発明の或る特定の実施態様において、本発明は、少なくとも1種類の放射性変換生成物を含む。他の或る特定の実施態様では、本発明は、当該少なくとも1種類の放射性変換生成物に加えて少なくとも1種類の放射性核分裂生成物を含む。他の特定の実施態様において、U−232および/もしくはU−234によって汚染されたUおよびTh−228によって汚染されたThは、存在する場合もしない場合もある。
【0020】
或る特定の実施態様において、前記高放射性元素は、放射能毒性も有する可能性がある。
【0021】
セラミックマトリクス材には、酸化物、窒化物、珪化物、炭化物およびそれらの混合物が含まれる。また、当該セラミックマトリクス材には、親物質または不活性物質の酸化物、窒化物、珪化物および炭化物のうち1種類以上も含まれることがある。或る特定の実施態様において、当該セラミックマトリクス材には、U、Th、ジルコニウム(Zr)、Pa、Puの酸化物、窒化物、珪化物または炭化物およびそれらの混合物が含まれる。或る特定の実施態様において、当該マトリクス材には、酸化トリウム、酸化ウラン、酸化ジルコニウムおよびそれらの混合物が含まれる。
【0022】
供給組成物を形成するために、少なくとも1種類の高放射性元素をセラミックマトリクス材と結合させる。供給組成物は粉末のように乾燥状態であるが、これに限定されない。供給組成物は、原子炉の燃料棒に用いるペレットを製造するための当技術分野で既知の他の物質および添加物を含むこともできる。
【0023】
供給組成物は、例えばトレイの平面上に散布されて、床または層を形成する。供給組成物は、当該平面上に実質的に均一に散布するのが好ましい。また、供給組成物を散布するにあたり、当該平面上に盛り上がらないようにするのが好ましい。当該床または層の厚さは様々である。或る特定の実施態様において、その層は薄く、厚さは5〜100ミクロンまたは10〜100ミクロンとすることができる。
【0024】
本発明に使用される元素は高放射能で、放射能毒性を持つ可能性があるので、前記平面またはトレイを例えば厚く遮へいされた箱のような遮へい付き筐体の中に置くのが好ましい。当該遮へい付き筐体は普通、例えば周囲温度や室温を超える高温に維持される。或る特定の実施態様において、当該遮へい付き筐体の温度は、約1000〜2000℃の範囲である。
【0025】
供給組成物を焼結するために1つ以上のレーザーを使用する。レーザーには、当技術分野において周知で市販されている様々な製品が含まれる。1つ以上のかかるレーザーおよび/またはそれに付随する制御モーターを、焼結プロセスを遠隔制御できるように、遮へい区域の外側に設置することができる。このようにすると、制御装置および/またはレーザーを遮へい付き筐体の外側に設置して作動できると共にレーザービームを遮へい付き筐体の内側で動作させることができる。この設計および構成は、供給組成物が放射能を帯びており、放射能毒性を持つ可能性があるので、有利である。供給組成物中に存在する高放射性元素は、強く透過性の高い放射線場を持つので、従来の製造技術は相応しくない。
【0026】
或る特定の実施態様において、レーザービームは、反射装置、光ファイバー装置、または類似の装置により方向付けされる。或る特定の実施態様において、当該装置は、サーボ制御式鏡または光ファイバーケーブルのような鏡とすることができる。反射装置などを、遮へい付き筐体内の供給組成物の床または層の上方に配置する。レーザービームの向きは、遮へい付き筐体の外側にあるレーザーからx−yコントローラーのモーターを用いて定めることができる。レーザービームを、前記平面上の供給組成物の床または層の少なくとも一部の方に向けて、それと接触させる。ビームの方向を定めるにあたり、ビームを供給組成物に1種類以上のパターンが形成されるように操作する。当該パターンの形は、結果として作製されるペレットの所定または所望の形に対応する。例えば、円柱状のペレットを意図している場合には、供給組成物の層または床に1種類以上の円形のパターンが形成されるようにビームを差し向ける。或る特定の実施態様において、焼結されパターンが形成された供給組成物の層が、ペレットを形成する。他の実施態様において、焼結されパターンが形成された供給組成物の層がペレットの基部となり、当該基部の上に幾重にも層を追加することができる。
【0027】
或る特定の実施態様において、供給組成物の第1の層または床をレーザーで焼結してペレットのパターンを形成した後、当該ペレットの高さを増すために供給組成物の第2の層を焼結済みの当該第1層に追加することができる。レーザービームは、例えば当該第1層(または基層)の頂部の上に散布された第2層に向ける。この第2層を第1層と実質的に同じパターンで焼結することにより、第1層に第2層が加えられ(例えば、第1層の頂部に付着され)、当該ペレットの全高が増すようにする。供給組成物の第2層を焼結した結果ペレットが所望または所定の高さになれば、前記プロセスを終了する。一方、供給組成物の2つの層を焼結してもペレットが所望の高さにならない場合、ペレットが所望の高さになるまで、第3層および必要に応じて追加の層を前記平面上の供給組成物に加え、焼結することができる。
【0028】
供給組成物の第1または基部の床または層に関して既に記述した通り、供給組成物の第2層、第3層およびそれ以後の層は薄く、厚さは普通まちまちでもよい。或る特定の実施態様において、それぞれの層の厚さは5〜100ミクロンまたは10〜100ミクロンとすることができる。また、一致するパターンまたは形状(例えば円柱)を持つ実質的に均一なペレットを形成するために、第2層、第3層およびそれ以後の層はそれぞれ、実質的に第1層と同じ形またはパターン(例えば円形)に焼結される。
【0029】
ペレットの所望の高さは様々である。或る特定の実施態様において、ペレットの高さは、1〜500mmまたは10〜50mmである。
【0030】
ペレットの所望の直径もまた様々である。或る特定の実施態様において、ペレットの直径は、1〜30mmまたは5〜10mmである。
【0031】
その結果得られるペレットが運転中の原子炉に有用であるように、ペレットは高い密度を持つように製造される。本書および請求項の中で用いられる用語「高密度」とは、理論密度の約85%以上のことである。
【0032】
図1に、本発明の或る特定の実施態様に基づき高放射性元素を含有する高密度ペレットを遠隔の場所で作製するためのレーザー式遠隔製造システム1を示す。
図1には、遮へい付き筐体5とレーザー10が含まれる。遮へい付き筐体5の内部には、ホッパー12とディストリビューター14が配置される。高放射性元素とマトリクス材を含む乾燥した供給組成物を、ホッパー12に装荷し、ディストリビューター14に送り込む。ディストリビューター14は、供給組成物をトレイ16の上に放出し散布して、供給組成物の第1層18が形成されるようにする。レーザー10はビーム20を放射し、このビームは遮へい付き筐体5の中にある鏡22の方に向けられる。ビーム20は、鏡22によって反射し、供給組成物の第1層18の方に差し向けられる。その結果、ビーム20は第1層18を焼結する。第1層18は、パターンを形成するように焼結できる。
【0033】
図2は、供給組成物の第1層18の上にビーム20を差し向けることによって作られる複数の焼結ペレット形材24が載ったトレイ16の平面図である。焼結ペレット形材24の周囲外側の区域26は、未焼結の供給組成物である。
【0034】
また、
図1は、未焼結の供給組成物から焼結ペレット形材24を分離するために、トレイ16上の焼結ペレット形材24(
図2に示す)をしてスクリーン28を通過せしめることを示す。未焼結の供給組成物は、ホルダーおよび粉末ミラー30に収集し、戻しライン32を通して運び、ホッパー12に装填(例えば、リサイクル)することができる。焼結ペレット形材24を、グラインダー34へ運んで所定の直径になるように研削した後、クリーナー36へ運んで残った供給組成物を除去し、さらに燃料棒装荷機38へ運んで焼結ペレット形材24を原子炉(図示せず)に装荷することができる。
【0035】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。