特許第6348151号(P6348151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348151抗A抗体または抗B抗体に結合するクロマトグラフィー媒体の品質を評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348151
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】抗A抗体または抗B抗体に結合するクロマトグラフィー媒体の品質を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/282 20060101AFI20180618BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20180618BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180618BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20180618BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20180618BHJP
   C07K 16/34 20060101ALN20180618BHJP
   C07K 17/08 20060101ALN20180618BHJP
【FI】
   B01J20/282
   G01N30/88 J
   G01N33/53 K
   B01D15/38
   B01J20/24 C
   !C07K16/34
   !C07K17/08
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-157259(P2016-157259)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-53847(P2017-53847A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】62/215,423
(32)【優先日】2015年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ティー・ストーン
(72)【発明者】
【氏名】ナーニン・ビアン
(72)【発明者】
【氏名】サントーシュ・ラーハネ
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−531966(JP,A)
【文献】 特表2010−528271(JP,A)
【文献】 特表2003−511468(JP,A)
【文献】 特開2012−254981(JP,A)
【文献】 特開2012−229212(JP,A)
【文献】 Zhui Tua, et al.,Preparation and characterization of novel IgG affinity resin coupling anti-Fc camelid single-domain antibodies,Journal of Chromatography B,米国,2015年 3月 1日,Pages 26-31,URL,http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1570023215000161
【文献】 D.Muller-Schulte,et al.,Comparative affinity chromatography studies using novel grafted polyamide and poly(vinyl alcohol)media,Journal of Chromatography,1991年 1月 1日,539,Pages 307-314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/282
B01D 15/38
B01J 20/24
G01N 30/88
G01N 33/53
C07K 16/34
C07K 17/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドを含有する2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質を比較するための方法であって、
(a)前記媒体試料の各々について、既知濃度C1と体積VMの精製されたモノクローナルIgM−A抗体、および体積VRのアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の溶液を用意するステップ;
(b)(a)の溶液とともに各々のクロマトグラフィー媒体試料をインキュベートするステップ;
(c)各々のクロマトグラフィー媒体試料について上清を得て、前記上清中のIgM−A抗体の濃度C2を測定するステップ;
(d)前記IgM−A抗体に対する各々のクロマトグラフィー媒体試料の静的結合能力を決定するステップ
を含み、前記静的結合能力が、式
【数1】
を用いて測定され、前記媒体試料の静的結合能力は、試料から抗A抗体を除去する媒体試料の能力と相関し、それにより、2つ以上の異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質の比較を与える、方法。
【請求項2】
固相支持体に付着された血液型B抗原リガンドを含有する2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質を比較するための方法であって、
(a)前記媒体試料の各々について、既知濃度C1と体積VMの精製されたモノクローナルIgM−B抗体、および体積VRのアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の溶液を用意するステップ;
(b)(a)の溶液とともに各々のクロマトグラフィー媒体試料をインキュベートするステップ;
(c)各々のクロマトグラフィー媒体試料について、上清を得て、前記上清中のIgM−B抗体の濃度C2を測定するステップ;
(d)前記IgM−B抗体に対する各々のクロマトグラフィー媒体試料の静的結合能力を決定するステップ
を含み、前記静的結合能力が、式
【数2】
を用いて測定され、前記媒体試料の静的結合能力は、試料から抗B抗体を除去する媒体試料の能力と相関し、それにより、2つ以上の異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質の比較を与える、方法。
【請求項3】
固相支持体が、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む多孔質または非多孔質のポリマーの固相支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固相支持体が、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む多孔質または非多孔質のポリマーの固相支持体である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
固相支持体が、ポリビニルエーテル系多孔質固相支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
固相支持体が、ポリビニルエーテル系多孔質固相支持体である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ポリビニルエーテル系多孔質固相支持体がビーズ形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ポリビニルエーテル系多孔質固相支持体がビーズ形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原リガンドの結合能力が、試料から抗A抗体を除去する能力と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
モノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原リガンドの結合能力が、試料から抗B抗体を除去する能力と相関する、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料が、異なるバッチの同じ媒体を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料が、異なるバッチの同じ媒体を構成する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料が異なる使用段階で同じ媒体を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料が異なる使用段階で同じ媒体を構成する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
試料が、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体およびIVIG原料からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
試料が、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体およびIVIG原料からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
濃度測定が、280nmの吸光度を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
濃度測定が、280nmの吸光度を測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
酸性条件またはアルカリ性条件への曝露後に媒体の品質を査定するための方法であって、
(a)固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドのいずれかを有するクロマトグラフィー媒体を用意するステップ;
(b)血液型A抗原抗体の場合において精製されたIgM−A抗体に対する媒体、または血液型B抗原抗体の場合において精製されたIgM−B抗体に対する媒体の結合能力を測定するステップ;
(c)少なくとも5時間、酸性条件またはアルカリ性条件に媒体を曝露するステップ;
(d)血液型A抗原抗体の場合において精製されたIgM−A抗体に対する媒体、または血液型B抗原抗体の場合において精製されたIgM−B抗体に対する媒体の結合能力を測定するステップ
を含み、(b)と比較して(d)における媒体の結合能力の低下は、媒体の品質が酸性条件またはアルカリ性条件への曝露後に減少したことを示す、方法。
【請求項20】
媒体の品質の低下は、抗A抗体または抗B抗体を除去する媒体の能力の低下を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
媒体が血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうかを決定するための方法であって、
(a)媒体が血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうかが未知である媒体を用意するステップ;
(b)精製されたモノクローナルIgM−A抗体について、および別に精製されたモノクローナルIgM−B抗体について未知の媒体の結合能力を測定するステップ;
(c)精製されたモノクローナルIgM−A抗体および精製されたモノクローナルIgM−B抗体について未知の媒体の能力を比較するステップ
を含み、未知の媒体が、モノクローナルIgM−B抗体に対する結合能力と比較して、モノクローナルIgM−A抗体についてより高い結合能力を有する場合、血液型A抗原リガンドを含むものと決定され、未知の媒体が、モノクローナルIgM−A抗体に対する結合能力と比較して、モノクローナルIgM−B抗体についてより高い結合能力を有する場合、血液型B抗原リガンドを含むものと決定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/215,423号の優先権の利益を主張するものであり、この仮出願の全内容を全体として本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンに富んだヒト血漿は、多数の疾患の治療のためならびに特定の先天性欠損症を治療するために使用される。典型的には、ヒト血漿は、異なる血液型を有する、複数のドナーからの血漿をプールすることにより得られる。血液型は、4つの主要な型に分けることができる。血液型Aは赤血球上にA抗原のみを有する(および血漿中にB抗体が存在する);血液型Bは赤血球上にB抗原のみを有する(および血漿中にA抗体が存在する);血液型ABは赤血球上にA抗原とB抗原の両方を有する(しかし、血漿中にA抗体もB抗体も存在しない。);血液型O型は赤血球上にA抗原もB抗原も有していない(しかし、血漿中にA抗体とB抗体の両方が存在する。)。
【0003】
Aのような特定の血液型抗原を有するヒトの赤血球は、抗A抗原抗体のようなこの抗原に結合する抗体と接触することがないことは重要であり、その理由は、このような抗体との接触が死に至る可能性がある赤血球細胞の凝集および/または溶血をもたらすであろうからである。したがって、血液型Aを有するレシピエントは、血液型Aまたは血液型ABを有するドナーから血漿を受け入れることができるだけであり;血液型Bを有するレシピエントは、血液型Bまたは血液型ABを有するドナーから血漿を受け入れることができるだけであり;血液型ABを有するレシピエントは、血液型ABを有するドナーから血漿を受け入れることができるだけであり;血液型Oを有するレシピエントは、ユニバーサルレシピエントと見なされる。異なる血液型の適合性は、安全な輸血および臓器移植の普及に重要である。しかしながら、一貫して平均したタンパク質成分を得るために、多くの人々からの血漿プールに依存する血液由来の治療薬の場合、レシピエントが不適合性の血漿を受け入れないことを確実にすることは特に困難となる。
【0004】
血漿由来の血液型抗体を選択的に除くために多数のアプローチが開発されており、ホルマリン化され、熱処理された赤血球(Vox Sang.、1967年、12、75−77頁)、AおよびB抗原を有する熱処理されたエシェリヒア・コリ O86:B7(Transfusion、1972年、12巻、98−102頁)、赤血球間質粉末、赤血球間質抗原由来の免疫吸着剤(Chemical Soc.Rev.、1978年、7巻、423−452頁)、および合成の血液型AおよびBの免疫吸着剤(Rev.Fr.Transfus.Immunohematol.、1981年、24巻、3号、281−287頁)が挙げられる。
【0005】
固相クロマトグラフィー免疫吸着剤は、血液由来製剤を処置するための商業的なクロマトグラフィー媒体として、さらに、ABO不適合性レシピエントへ移植する前のドナーの準備のために開発されてきた。合成の免疫吸着剤を用いることの重要な利点の1つは、天然供給源に由来する代わりに合成的に構築されること、したがって、バッチごとにより一貫した特性を有することである。
【0006】
現在、血液型A抗原(A−抗原)リガンドおよび/または血液型B抗原(B−抗原)リガンドを有する市販のクロマトグラフィー媒体の中には、Glycosorb−ABOデバイス(Glycorex Transplantation AB)が含まれる。このGlycosorbデバイスは、不適合な血液型を有する患者に移植するための臓器ドナーを準備するために使用される。Glycosorb−ABOデバイスにおける血液型抗原リガンドは、臓器ドナーの血液から血液型A抗原抗体(抗A)および血液型B抗原抗体(抗B)を結合し、除去し、したがって、臓器拒絶の危険性を低減させる。
【0007】
血液由来製剤を精製するためのクロマトグラフィー媒体の利用における主な課題の1つは、異なる媒体の相対的な品質、例えば、異なるバッチの同じタイプの媒体または異なる供給源からの媒体または経時的な同じ媒体試料の相対的な品質を評価するための、効率的であり、再現性のある方法が欠如していることである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Vox Sang.、1967年、12、75−77頁
【非特許文献2】Transfusion、1972年、12、98−102頁
【非特許文献3】Chemical Soc.Rev.、1978年、7巻、423−452頁
【非特許文献4】Rev.Fr.Transfus.Immunohematol.、1981年、24巻、3号、281−287頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載される実施形態は、血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の品質を査定する方法に関する。本明細書に記載される方法は、使用中および使用後にバッチごとに同じタイプの媒体の品質を査定または評価するのに特に有用であり、開発中の媒体を最適化するのに有用である。
【0010】
いくつかの実施形態において、2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質を比較するための方法が提供され、これらはともに、固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドを含有し、該方法は、(a)各々が体積VRである、2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料を用意するステップ;(b)既知濃度C1と体積VMの精製されたモノクローナルIgM−A抗体の溶液とともに各々の試料をインキュベートするステップ;(c)各々の上記試料について上清を得て、該各々の上清中のIgM−A抗体の濃度C2を測定し;以下の式
【0011】
【数1】
を用いて、各々のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の静的結合能力を決定するステップを含み、ここで、IgM−Aに対する媒体試料の静的結合能力は、試料から抗A抗体を除去するそれらの能力と相関し、それにより、2種以上の異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質が比較される。
【0012】
他の実施形態において、2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質を比較するための方法が提供され、各々は、固相支持体に付着された血液型B抗原リガンドを含有し、該方法は、(a)各々が体積VRである、2つ以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料を用意するステップ;(b)既知濃度C1と体積VMの精製されたモノクローナルIgM−B抗体の溶液とともに各々の試料をインキュベートするステップ;(c)各々の上記試料について上清を得て、該各々の上清中のIgM−B抗体の濃度C2を測定し;以下の式
【0013】
【数2】
を用いて、各々のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の静的結合能力を決定するステップを含み、ここで、IgM−Bに対する媒体試料の静的結合能力は、試料から抗B抗体を除去するそれらの能力と相関し、それにより、2種以上のアフィニティークロマトグラフィー媒体試料の品質が比較される。
【0014】
比較される他の試料と比べて、IgM−AまたはIgM−Bに対してより高い結合能力を有する媒体試料は、他の媒体試料と比較してより良好な品質のものである。
【0015】
本明細書に記載される方法によるいくつかの実施形態において、固相支持体は、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む多孔質または非多孔質のポリマーの固相支持体である。特定の実施形態において、固相支持体は、ポリビニルエーテル系固相支持体である。いくつかの実施形態において、固相支持体はビーズ形態(例えば、ポリビニルエーテル系ビーズ)である。
【0016】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料は、異なるバッチの同じタイプの媒体を構成する。
【0017】
他の実施形態において、異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体試料は、異なる使用段階で同じ媒体を構成する。
【0018】
いくつかの実施形態において、媒体は、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体およびIVIGからなる群から選択される試料から抗A抗体または抗B抗体を除去することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、上清中のIgM−A抗体またはIgM−B抗体の濃度は、280nmの吸光度を用いて測定される。
【0020】
酸性条件またはアルカリ性条件へのアフィニティークロマトグラフィー媒体の曝露後、固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含有するアフィニティークロマトグラフィー媒体の品質を査定するための方法も本明細書において提供され、該方法は、(a)固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドのいずれかを有するクロマトグラフィー媒体を用意するステップ;(b)血液型A抗原リガンド媒体の場合において精製されたIgM−A抗体に対して、または血液型B抗原リガンド媒体の場合において精製されたIgM−B抗体に対して媒体の結合能力を測定するステップ;(c)少なくとも5時間、酸性条件またはアルカリ性条件に媒体を曝露するステップ;および(d)血液型A抗原リガンド媒体の場合において精製されたIgM−A抗体に対して、または血液型B抗原リガンド媒体の場合において精製されたIgM−B抗体に対して媒体の結合能力を測定するステップを含み、ここで、ステップ(b)と比べてステップ(d)における媒体の結合能力の低下は、媒体の品質が酸性条件またはアルカリ性条件への曝露後に低下したことを示す。
【0021】
本明細書に記載される実施形態は、媒体が血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうかを決定するためにも使用することができ、この場合、該方法は、(a)媒体が血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうかが未知である媒体を用意するステップ;(b)精製されたモノクローナルIgM−A抗体に対して、および別に精製されたモノクローナルIgM−B抗体に対して未知の媒体の結合能力を測定するステップ;(c)精製されたモノクローナルIgM−A抗体および精製されたモノクローナルIgM−B抗体に対する未知の媒体の能力を比較するステップを含み、ここで、未知の媒体が、モノクローナルIgM−B抗体に対する結合能力と比較して、モノクローナルIgM−A抗体に対してより高い結合能力を有する場合、血液型A抗原リガンドを含むものと決定され、未知の媒体が、モノクローナルIgM−A抗体に対する結合能力と比較して、モノクローナルIgM−B抗体に対してより高い結合能力を有する場合、血液型B抗原リガンドを含むものと決定される。
【0022】
いくつかの実施形態において、未知の媒体は、モノクローナルIgM−A抗体に対して結合能力を有し、モノクローナルIgM−B抗体について結合能力を有しない場合に、血液型A抗原リガンドを含むものと決定される。反対に、未知の媒体は、モノクローナルIgM−B抗体に対して結合能力を有し、モノクローナルIgM−A抗体について結合能力を有しない場合に、血液型B抗原リガンドを含むものと決定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】抗A抗原抗体に結合する代表的なオリゴ糖リガンドを示す図である。
図2】抗B抗原抗体に結合する代表的なオリゴ糖を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最近、幾人かの血液ドナー、時として数千以上の血液ドナーから得られた、プールされた血漿から抽出された濃縮多価IgG抗体からなる静脈内免疫グロブリン(IVIG)から抗Aおよび抗B IgGを除去するための合成免疫吸着クロマトグラフィー媒体の用途における関心が高まっている。血漿からIgGを精製するプロセス中に、より大きい抗A IgM抗体および抗B IgM抗体は、典型的には、分画によってより小さいIgG抗体から分離され得る。しかしながら、いくらかの割合の抗A抗体および抗B抗体は、一般的に、分画によってのみでは他のIgG抗体から分別することができないIgG形態である。したがって、IVIG治療用濃縮物は、典型的には、高濃度の抗A IgG抗体および抗B IgG抗体とともにIVIG投与を防止するために、抗A IgG抗体および抗B IgG抗体の濃度を監視する凝集アッセイを用いてスクリーニングされる。しかしながら、この予防措置にもかかわらず、死に至る可能性がある溶血反応は、血液型A、B、またはABを有するそれらのレシピエントに対して生じることがなおも知られている(「Strategies to address hemolytic complications of immune globulin infusions」、FDA Center for Biologics Evaluation and Research Public Workshop Washington,D.C.、1月、28−29頁、2014年の写し)。
【0025】
通例、凝集アッセイは、限定された耐用年数を有し、細胞表面上の抗原密度が一般的にロットごとに変化する生きた赤血球の使用に依存している。凝集はまた連続希釈を必要とし、細胞凝集の定性的評価(視覚的または顕微鏡観察)に依存している。抗A抗体および抗B抗体の濃度を決定するためのより正確な方法はフローサイトメトリーを採用する。しかしながら、フローサイトメトリー法はまた、生きた赤血球を使用し、凝集アッセイと比較して非常に複雑であり、時間がかかる。抗A抗体および抗B抗体の濃度を測定するために、ELISAアッセイも報告されているが、しかしながら、この技術は、相対的に複雑な多段階の手順と特殊化された抗原試薬を必要とする。
【0026】
上記で検討したように、抗A抗体または抗B抗体に結合するリガンドを含有するクロマトグラフィー免疫吸着媒体は、血液由来製剤、例えば、血漿およびIVIGからこのような抗体の除去に有効であると考えられる。しかしながら、現在、媒体の再現性および信頼性を査定するために、このような媒体の資質を見極め、検証するために使用することができる利用可能な優れた方法がない。
【0027】
媒体が、製造規格およびその耐用年数を通じて品質要件を満たしていることを確実にするために、血液型抗原リガンドクロマトグラフィー媒体のバッチ間の品質を評価することは重要である。さらに、使用、洗浄および消毒後、意図された不純物を除去する能力を保持していることを確認するために、使用、洗浄および消毒中ならびに使用、洗浄および消毒後にこのような媒体を評価することもまた重要である。意図された標的分子に結合する血液型抗原リガンド媒体の能力は、通常、血液型抗原リガンド媒体との接触前後で、血液由来製剤中のポリクローナル血液型抗原抗体の濃度の低下を測定することによって直接評価されている。
【0028】
本明細書の実施例から明らかなように、精製されたIgMモノクローナル抗体に対する抗A抗原リガンド媒体および抗B抗原リガンド媒体の能力は、場合に応じて、IVIG原料から血液型A抗体または血液型B抗体を除去する媒体の能力と相関する。この知見は、IgG分子とIgM分子のタイプとサイズ間で固有の相違に起因して、むしろ予想外であった。換言すると、IgMは五量体構造を有し、五量体構造を有するIgM分子に対する媒体の結合能力は、単量体構造を有するIgG分子を除去するその媒体の能力と相関するとは期待されなかった。さらに、明細書に記載される実施例から明らかなように、マウスIgM抗体に対する媒体の結合能力は、試料、例えばIVIG原料から、すなわち、全く異なる種からある割合のヒトIgG分子を除去する媒体の能力を予測するが、これについてもまた期待されなかった。
【0029】
精製された分子(例えば、この場合にはIgM)に対する、血液型抗原リガンドを含有する媒体の能力を測定することは、時間がかかり、さらには再現するのが困難である血液製剤から血液型抗原抗体の除去を測定することに大部分依存していた、従来報告されている方法と比較していくつかの利点を有する。対照的に、本明細書に記載される実施形態は、当該技術分野において公知の従来の方法に比べて、より効率的に再現性よく行うことができる、精製された分子に対する結合能力の測定に依存する。
【0030】
具体的には、本明細書に記載される方法は、一貫した濃度のモノクローナル抗体が各々の能力測定について調製され得るため、より容易に再現性がよいだけでなく、本明細書に記載される方法は、いかなる特殊な装置(例えば、フローサイトメトリー)を必要とせず、いかなる特殊な血液型抗原試薬(例えば、ELISAに基づくアッセイ)も必要としない。
【0031】
本明細書に開示される実施形態がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記載される。
【0032】
I.定義
用語「結合能力」とは、カラムに装填され、所定の条件の下で実行される、所定量の媒体に結合する分子の量を意味する。本明細書に記載されるクロマトグラフィー媒体の結合能力はクロマトグラフィー媒体が設定された流量で媒体の体積あたり結合することができる抗A抗体または抗B抗体の量である。
【0033】
本明細書に記載される実施形態において、精製されたIgMモノクローナル抗体は、抗A抗体または抗B抗体を除去するのに適したクロマトグラフィー媒体の結合能力を評価するために使用される;このような結合能力は、抗A抗体または抗B抗体を除去するこのような媒体の能力と相関する。換言すると、IgMに対するクロマトグラフィー媒体の結合能力は、場合に応じて、抗A抗体または抗B抗体を除去する媒体の有効性を決定する指標として使用することができる。結合能力は、静的結合能力または動的結合能力として測定することができる。
【0034】
媒体(例えば、クロマトグラフィー媒体)の「静的結合能力」なる用語は、使用される媒体の体積で割った、媒体によって結合されたタンパク質の量として定義される。クロマトグラフィー媒体の静的結合能力を測定するための例示的な方法は以下の通りである。既知濃度のタンパク質溶液にクロマトグラフィー媒体を接触させた後、クロマトグラフィー媒体へのタンパク質の結合を促進させるために、媒体とともに溶液をインキュベートさせる。インキュベーション時間を(例えば、5分から72時間)変化させることができ、当業者によって、例えば、上清中のタンパク質の濃度変化が測定できなくなるまで、定期的に上清中のタンパク質の濃度を測定することによって(例えば、280nmで吸光度を測定することによって)容易に決定され得る。クロマトグラフィー媒体に結合したタンパク質と溶液中のタンパク質の間が平衡に達すると、再度、タンパク質溶液の濃度を上清において測定する。次に、静的結合能力は、使用される媒体の体積で割った、タンパク質の初期量(インキュベーション前)−上清中のタンパク質の量(インキュベーション後)によって測定される。
【0035】
特定のクロマトグラフィー媒体の静的結合能力は、一般的に、1つ以上の以下の因子、例えば、タンパク質の濃度、使用されるクロマトグラフィー媒体の量、溶液中の他の成分(塩、有機分子、緩衝液)の濃度、溶液pH、および導電率を含むタンパク質溶液の組成によって影響される。タンパク質溶液の温度によっても影響され得る。これらの変数の全ては、一般的に、2つの異なるクロマトグラフィー媒体間の静的結合能力の比較を可能にするために一定に保持される。用語「静的結合能力」はまた、「飽和結合能力」または「最大結合能力」と呼ばれることがある。
【0036】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、精製されたモノクローナルIgM抗体に対する、血液型A抗原リガンドを含有する媒体または血液型B抗原リガンドを含有する媒体の静的結合能力は、場合に応じて、試料(例えば、IVIG原料)から抗A抗体または抗B抗体を除去する能力を予測または査定する指標として使用される。2種の異なるバッチの媒体または経時的に同じバッチまたは異なる供給源からのバッチの静的結合能力を比較することは、媒体の品質について情報を提供するため、特に有用である。換言すると、精製されたIgM抗体に対する結合能力は、場合に応じて、抗A抗体または抗B抗体を除去する能力と相関するため、結合能力は、異なるバッチの媒体または経時的に同じ媒体または異なる供給源からの媒体の性能を評価し、比較するために使用することができる。したがって、本明細書に記載される方法を用いて、当業者または当該技術分野のエンドユーザーは、媒体のバッチが、同じタイプの媒体の別のバッチと比較して、または経時的に、特に反復洗浄および消毒後に、その性能(すなわち、抗A抗体または抗B抗体を除去する能力)の喪失を示すかどうかを容易に決定することができる。さらに、精製されたIgMに対する静的結合能力の測定はまた、開発中の媒体を最適化するためにも使用することができる。
【0037】
一般的に、静的結合能力を以下のように計算することができうる。体積VRの媒体試料は、既知濃度C1と既知体積VMの精製されたモノクローナルIgM抗体(血液型A抗原リガンド媒体の場合においてはIgM−Aおよび血液型B抗原リガンド媒体の場合においてはIgM−B)の溶液とともにインキュベートされる;上清を得て、IgM抗体C2の濃度を上清中で測定する;次に、静的結合能力を以下の式を用いて計算する。
【0038】
【数3】
【0039】
用語「動的結合能力」は、クロマトグラフィーカラムから出たタンパク質溶液の濃度が特定の濃度、典型的には、開始濃度の所定の割合に達した時点で、フロー条件下でクロマトグラフィーカラムにより結合されたタンパク質の量として定義される。実際には、これは、開始濃度の約10%になる傾向がある。次に、タンパク質のこの集団は、クロマトグラフィーカラムにおいて媒体の体積で除される。
【0040】
特定のクロマトグラフィー媒体の動的結合能力は、一般的に、1つ以上の以下の因子、例えば、タンパク質の濃度、溶液中の他の成分(塩、有機分子、緩衝液)の濃度、溶液pH、および導電率を含む、タンパク質溶液の組成によって影響される。動的結合能力は、カラムが充填される温度により、およびタンパク質溶液がカラムに充填される流量により影響され得る。クロマトグラフィーカラムへのタンパク質溶液の流量の減少は、測定される動的結合能力を増加させる。逆に、クロマトグラフィーカラムへのタンパク質溶液の流量の増加は、測定される動的結合容量を減少させる。クロマトグラフィー媒体の動的能力は、物質移動の全体的な速度によって制限されるため、動的結合能力は、静的結合能力を超えてはならない。
【0041】
用語「上清」は、沈降されたクロマトグラフィー媒体上にある液体として定義される。上清溶液は、スラリー中のクロマトグラフィー媒体を容器またはカラムの底に沈降させることによって得ることができる。沈降プロセスは、クロマトグラフィー媒体のスラリーを遠心分離に供することによって、または振動によって促進することができる。次に、上清溶液は、ピペット、シリンジまたはポンプにより別の容器に移すことによってクロマトグラフィー媒体から分離することができる。さらに、上清はまた、メンブレンまたは多孔性材料を介してクロマトグラフィー媒体のスラリーを濾過させることによっても得ることができる。
【0042】
用語「試料」は、本明細書に記載されるように、クロマトグラフィー媒体に結合されることが意図される、少なくとも1つの標的タンパク質(例えば、この場合は抗A抗体または抗B抗体)を含有する溶液と定義される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、抗体または免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、血液型A抗原抗体(すなわち、抗A抗体)である。他の実施形態において、免疫グロブリンは、血液型B抗原抗体(すなわち、抗B抗体)である。試料の例としては、限定されないが、血液、血漿、血漿誘導体、血液製剤、静脈内免疫グロブリン原料(IVIG)が挙げられる。
【0043】
用語「IgG」、「免疫グロブリン」、「Ig」または「抗体」(本明細書において互換的に使用される。)とは、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる基本的な4つのポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味し、これらの鎖は、抗原に特異的に結合する能力を有する、例えば、鎖間のジスルフィド結合によって安定化される。用語「単一鎖免疫グロブリン」または「単一鎖抗体」(本明細書において互換的に使用される。)とは、重鎖および軽鎖からなる2つのポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味し、これらの鎖は、抗原に特異的に結合する能力を有する、例えば、鎖間のペプチドリンカーによって安定化される。用語「ドメイン」とは、例えば、βプリーツシートおよび/または鎖間ジスルフィド結合によって、安定化されるペプチドループを含む(例えば、3から4つのペプチドループを含む。)重鎖または軽鎖ポリペプチドの球状領域を意味する。ドメインは、本明細書において、「定常」ドメインの場合は多様なクラスのメンバーのドメイン内の配列の変動の相対的欠如に基づき、または「可変」ドメインの場合には多様なクラスのメンバーのドメイン内の有意の変動に基づき、「定常」または「可変」とさらに称される。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、多くの場合、抗体またはポリペプチド「領域」として当該技術分野において互換的に称される。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと互換的に称される。抗体重鎖の「定常」ドメインは「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと互換的に称される。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと互換的に称される。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと互換的に称される。
【0044】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、単量体または多量体形態で存在してもよい。
【0045】
用語「IgM」または「免疫グロブリンM」とは、本明細書で使用されるとき、五量体構造を有する抗体を意味し、例えば、血清中に見出されるIgM抗体である。約970kDaの分子量を有するIgM抗体は、単量体構造であって約150kDaの分子量を有するIgGよりもかなり大きい。2つの抗原結合部位を有するIgG抗体とは異なり、IgM抗体は10個の抗原結合部位を有する。IgM抗体は、レシピエントが不適合性ドナーから輸血を受けた場合の赤血球の凝集に主に関与する。例えば、血液型がAであり、抗B IgM抗体を有する者は、血液型Bドナーから輸血時に凝集を経験する。大きなIgM抗体は、一般的に、分別により血漿中のより小さなIgG抗体から分離することができる。
【0046】
用語「クロマトグラフィー」とは、本明細書で使用するとき、試料中の分子(例えば、この場合は抗A抗体および/または抗B抗体)を他の分子から分離しまたは除去する動的分離技術を意味する。典型的には、クロマトグラフィー法において、移動相(液体または気体)は、固定相(通常は固体)媒体(例えば、クロマトグラフィー媒体)を介して分離されまたは除去されるべき分子を含有する試料を移動させる。固定相に対してのパーティションまたはアフィニティーの違いは、試料の他の成分から分子を分離する。
【0047】
用語「アフィニティークロマトグラフィー」とは、本明細書で使用するとき、分離または除去されるべき分子(例えば、抗A抗体および/または抗B抗体)が、分離または除去されるべき分子と特異的に相互作用する別の分子(例えば、固相支持体に固定化された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンド)との相互作用により単離されるというクロマトグラフィーの様式を意味する。アフィニティークロマトグラフィーにおいて使用される媒体は、アフィニティークロマトグラフィー媒体と呼ばれる。
【0048】
用語「媒体」または「クロマトグラフィー媒体」は、本明細書において互換的に使用され、固相支持体に固定化された血液型A抗原リガンドおよび/または血液型B抗原リガンドを有する固相支持体を意味する。
【0049】
本明細書に記載される方法は、2015年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/215,401号に記載されるクロマトグラフィー媒体を含む、抗A抗体および/または抗B抗体の除去に適した任意のクロマトグラフィー媒体の品質を査定するために使用することができる。
【0050】
本明細書に記載される実施形態において、精製されたIgM溶液は、固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の結合能力を評価するために使用される。換言すると、精製されたIgMモノクローナル抗体は、抗A抗体または抗B抗体を除去するのに適したクロマトグラフィー媒体の品質を調べるためのモデル分子として用いられる。
【0051】
用語「抗A」または「抗A抗体」とは、Aの血液型またはABの血液型を有する個体において細胞の表面に見出される血液型A抗原に結合する抗体を意味する。したがって、血液由来の試料(例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料)においてこのような抗体を除去することが望ましい。
【0052】
用語「抗B」または「抗B抗体」とは、Bの血液型またはABの血液型を有する個体において細胞の表面に見出される血液型B抗原に結合する抗体を意味する。したがって、血液由来の試料(例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料)においてこのような抗体を除去することが望ましい。
【0053】
用語「媒体の品質」とは、本明細書で使用するとき、試料(例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料)から望ましくない実体(例えば、抗A抗体または抗B抗体)を選択的に除去するクロマトグラフィー媒体の能力を意味する。本明細書で提供される方法は、精製されたIgMモノクローナル抗体に対する媒体の結合能力を測定することにより、異なる媒体(例えば、異なるバッチの同じタイプの媒体または異なる供給源由来の同じタイプの媒体または開発中もしくは製造プロセス中に得られた媒体試料またはプロトタイプ)の相対的な品質を評価および/または監視するのに特に有用である。換言すると、精製されたモノクローナルIgM抗体に対する異なる媒体または媒体試料の相対的な結合能力は、抗A抗体または抗B抗体を選択的に除去する媒体の能力(すなわち、該媒体または媒体試料の相対的な品質)を示す。したがって、特定のIgM分子に対する媒体の結合能力は、同じ媒体の他のバッチ、または経時的に、例えば、製造、使用、洗浄および消毒中に同じバッチの品質と比較して、媒体の全体的な品質を見分けるために使用することができる。
【0054】
したがって、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたIgM−A抗体に対してより低い結合能力を有する抗A抗体を除去するように設計されたあるバッチの媒体は、試料からより低い割合の抗A抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより貧弱な品質のものである。反対に、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたIgM−A抗体に対してより高い結合能力を有する抗A抗体を除去するように設計されたあるバッチの媒体は、試料からより高い割合の抗A抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより良好な品質のものである。同様に、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたIgM−B抗体に対してより低い結合能力を有するあるバッチの媒体は、試料からより低い割合の抗B抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより貧弱な品質のものである。反対に、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたIgM−B抗体に対してより高い結合能力を有するあるバッチの媒体は、試料からより高い割合の抗B抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより良好な品質のものである。
【0055】
一般的に、媒体が試料から所望の割合の抗A抗体または抗B抗体を除去する能力を保持していることを確実にするために、クロマトグラフィー媒体の品質をその耐用年数中に監視することが必要である。例えば、クロマトグラフィー媒体の品質は、反復使用後、例えば、過酷な洗浄および/または消毒条件への曝露後に悪影響を受ける場合があり、試料から特定の割合の抗A抗体または抗B抗体を除去する能力が低下する。抗A抗体または抗B抗体を除去するように設計されたあるバッチの媒体の品質は、媒体が反復して使用されまたは過酷な洗浄および/もしくは消毒条件に曝露される前後で、それぞれ、精製されたIgM−A抗体またはIgM−B抗体に対する媒体の結合能力を測定することにより監視され得る。精製されたIgM−AまたはIgM−Bに対する媒体の結合能力が以前の測定と比較して低下している場合、その媒体が、この時点で、より低い割合の抗A抗体または抗B抗体を除去することを示す。
【0056】
したがって、本明細書に記載される方法は、経時的に抗Aまたは抗B除去についてクロマトグラフィー媒体の品質を査定し、ならびに媒体の2つの別個のバッチの品質を比較するのに有用である。
【0057】
さらに、本明細書に記載される方法はまた、製造または開発中の媒体を最適化するためにも使用することができる。換言すると、プロトタイプ媒体は、場合に応じて、単に、精製されたIgM抗体に対するその結合能力を決定することによって、抗A抗体または抗B抗体を除去する能力について評価され得て、該媒体は、必要に応じて、精製されたIgM抗体に対するその結合能力に基づいてさらに改善または最適化され得る。例えば、プロトタイプ媒体が作製されると、その媒体の品質は、さらなる最適化または修飾を必要とするかどうかを決定するために、本明細書に記載される方法を用いて査定することができる。このように、媒体を種々に繰り返すことにより開発中に品質について容易に評価することができ、媒体の最終バージョンがもたらされる。
【0058】
さらに、本明細書に記載される方法はまた、血液型A抗原リガンド媒体と血液型B抗原リガンド媒体の間を区別するのにも有用である。オペレータまたはエンドユーザーは、製造中に、さらには使用する場合に2つの媒体の特定を間違え易く、これは、2つのタイプの媒体が、多くの場合、同じ場所で製造され、さらには保存され、目視検査の際に実質的に同じように見えるためである。本明細書に記載される方法は、これらの2つのタイプの媒体間を、すなわち、媒体が抗A抗体または抗B抗体に結合するかどうかが未知である場合に、区別するための方法を提供する。例えば、未知の媒体の特定(すなわち、血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうか)は、精製されたモノクローナル抗A IgMおよび精製された抗B IgMに対する能力と、精製されたモノクローナル抗A IgMおよび精製されたモノクローナル抗B IgMに対する全ての可能な既知の媒体の能力を比較することによって確立され得る。したがって、血液型A抗原リガンドを含有する媒体は、精製されたIgM−A抗体に対して顕著な結合能力を示し、または精製されたIgM−B抗体に対して顕著に低いもしくは無視できる程度の結合能力を示すことが期待された。同様に、血液型B抗原リガンドを含有する媒体は、精製されたIgM−B抗体に対して顕著な結合能力を示し、または精製されたIgM−A抗体に対して顕著に低いもしくは無視できる程度の結合能力を示すことが期待される。
【0059】
いくつかの実施形態において、IgM−AまたはIgM−Bに対する未知の媒体の結合能力を、IgM−AまたはIgM−Bに対する同じタイプの既知の媒体(例えば、異なるバッチ由来)の結合能力と比較して、血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうかを決定することができる。
【0060】
II.例示的な血液型抗原媒体
本明細書に記載される方法は、血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体のいずれかと結合する異なる媒体の相対的な品質を査定するのに有用である。
【0061】
現在市販されている可能性があり、またはかつて市販されていた媒体の例としては、例えば、Glycorex Transplantation AB(Solvegatan 41、223 70 Lund、Sweden)によって提供されるGlycosorn ABO AカラムおよびBカラム;Dextra Laboratories Ltd(Science and Technology Centre、Earley Gate、Whiteknights Road、Reading、RG6 6BZ、United Kingdom)によって提供される血液型A三糖セファロース−4B−AFF201、血液型A三糖セファロース−FF−AFF101、血液型B三糖セファロース−4B−AFF202、および血液型B三糖セファロース−FF−AFF102;Chembiomed Ltd(Edmonton、Alberta、Canada)によって提供されるSynsorb AおよびB媒体;およびLectinity Holding、Inc.(Moscow、Russia)によって提供されるAllotran AおよびB媒体が挙げられる。一般的に、任意の媒体を本明細書に記載される方法を用いて評価することができ、媒体は固相支持体に直接的にまたは間接的に(リンカーもしくはスペーサーを介して)付着された血液型A抗原または血液型B抗原のエピトープに対応するリガンド(典型的には、オリゴ糖ベースのリガンド)を含む。例示的な媒体はまた、本出願と同日に出願された同時係属中の仮特許出願第P15/178号(2015年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/215401号)に見出すことができる。例示的なオリゴ糖ベースのリガンドを以下に示す。
【0062】
現在市販されている可能性があり、またはかつて市販されていた媒体の例としては、例えば、Glycorex Transplantation AB(Solvegatan 41、223 70 Lund、Sweden)によって提供されるGlycosorn ABO AカラムおよびBカラム;Dextra Laboratories Ltd(Science and Technology Centre、Earley Gate、Whiteknights Road、Reading、RG6 6BZ、United Kingdom)によって提供される血液型A三糖セファロース−4B−AFF201、血液型A三糖セファロース−FF−AFF101、血液型B三糖セファロース−4B−AFF202、および血液型B三糖セファロース−FF−AFF102;Chembiomed Ltd(Edmonton、Alberta、Canada)によって提供されるSynsorb AおよびB媒体;およびLectinity Holding、Inc.(Moscow、Russia)によって提供されるAllotran AおよびB媒体が挙げられる。一般的に、任意の媒体を本明細書に記載される方法を用いて評価することができ、媒体は固相支持体に直接的にまたは間接的に(リンカーもしくはスペーサーを介して)付着された血液型A抗原または血液型B抗原のエピトープに対応するリガンド(典型的には、オリゴ糖ベースのリガンド)を含む。例示的な媒体はまた、本出願と同日に出願された同時係属中の仮特許出願第P15/178号に見出すことができる。例示的なオリゴ糖ベースのリガンドを以下に示す。
【0063】
構造において使用される略語は、以下のように定義される:Gal=D−ガラクトース;Fuc=L−フコース;GalNAc=N−アセチル−D−ガラクトサミン;GlcNAc=N−アセチル−D−グルコサミン;R=リガンドから固相支持体までの連結であるが、リガンド構造上の他の位置での連結もまた使用されてもよい。
【0064】
血液型A抗原リガンドの例としては、限定されないが、以下の構造を有する分子が含まれる:三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ−R)、1型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GlcNAcβ1−R)、2型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,4GlcNAcβ1−R)、3型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcα1−R)、および4型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcβ1−R)。
【0065】
血液型B抗原リガンドの例としては、以下の構造を有する分子が含まれる:三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ−R)、1型三糖抗原B(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GlcNAcβ1−R)、2型三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ1,4GlcNAcβ1−R)、3型三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcα1−R)、および4型三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcβ1−R)。
【0066】
上述したリガンドの1つ以上は、適した固相支持体に付着されてもよく、それにより、血液型A抗原抗体および/または血液型B抗原抗体の除去に適したクロマトグラフィー媒体をもたらす。
【0067】
固相支持体の例としては、限定されないが、アルミナ、シリカ、セライト、セラミックス、金属酸化物、多孔質ガラス、孔制御ガラス、炭水化物ポリマー、多糖、アガロース、セファロース、セファデックス、デキストラン、セルロース、デンプン、キチン、ゼオライト、合成ポリマー、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸無水物、メンブレン、中空糸および繊維が挙げられる。いくつかの実施形態において、固相支持体は、ポリマーの固相支持体であり、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む。特定の実施形態において、固相支持体は、ポリビニルエーテル系固相支持体である。いくつかの実施形態において、固相支持体は、ビーズ形態(例えば、ポリビニルエーテル系ビーズ)である。
【0068】
固相支持体へのリガンドの付着を容易にするために、無数の官能基を使用することが可能である。このような官能基の非限定的な例としては、アミン、チオール、フラン、マレイミド、エポキシ、アルデヒド、アルケン、アルキン、アジド、アズラクトン、カルボキシル、活性化エステル、トリアジン、および塩化スルホニルが挙げられる。特定の実施形態において、アミン基を官能基として使用する。
【0069】
固相支持体は、支持体に適したリガンドまたは複数のリガンドの固定化を促進するために、上記の官能基の1つ以上を含むように修飾および/または活性化されてもよい。特定の実施形態において、カルボキシル基およびアルデヒド基が官能基として用いられる。
【0070】
III.結合能力を測定するためのアッセイ
本明細書に記載される方法は、試料、例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料中の血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体に結合するまたは結合することが期待される、(例えば、製造プロセス中もしくは製造プロセス後または使用後に)媒体の相対な品質を査定するのに有用である。本明細書に記載される方法は、経時的にまたは2つの異なるバッチの媒体もしくは異なる供給源からの媒体を比較するときのいずれかで、媒体の相対的な品質を査定するために、精製されたモノクローナルIgM−A抗体分子またはIgM−B抗体分子に対する媒体の結合能力の測定に、少なくとも部分的に依存する。したがって、本明細書に記載される方法は、異なるバッチの同じタイプの媒体間または使用の耐用年数全体で同じバッチの媒体間またはさらには異なる供給源の媒体間を区別するために使用され得る。
【0071】
一般的に、特定の分子(例えば、IgM抗体)に対する媒体の結合能力を以下のように測定することができる。該分子を含有する試料を、適切な条件下で、媒体への分子の結合を促進するのに適した期間、適した媒体と接触させる。その後、媒体に結合している分子は、残りの試料溶液から分離され、残りの試料溶液中の分子の濃度(すなわち、非結合分子の濃度)が測定される。溶液中の分子の濃度は、当該技術分野において公知のいくつかの異なる方法によって決定することができる。例えば、溶液の吸光度は、特定の波長で測定することができ、分子の濃度は、その波長で分子(例えば、タンパク質)の吸光係数と組み合わせで計算することができる。蛍光、UV、またはラマン吸収は、タンパク質濃度を決定するために測定することができる。さらに、溶液中の分子の濃度はまた、分析用クロマトグラフィーによっても決定することができる。次に、検出の強度は、分子の濃度に対して相関させられる。
【0072】
本明細書に記載される実施形態において、精製されたモノクローナルIgMに対する血液型Aリガンド媒体または血液型Bリガンド媒体の結合能力を測定し、次に、これは、場合に応じて、抗A抗体または抗B抗体の実際の除去に対してその媒体がどのように行い得るのかを示す。
【0073】
実施形態は、限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例証される。本出願全体で引用されている全ての参考文献、特許および公開された特許出願、ならびに図面を参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0074】
[実施例1]血液型A抗原三糖リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の合成
これは、血液型A抗原リガンド媒体を製造するために使用することができる例示的な方法である。血液型A抗原三糖(TriA)リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体は、独自のポリビニルエーテル系ビーズ(すなわち、本明細書で使用される固相支持体)上にTriAリガンドを固定化することにより合成された。TriAリガンドの具体的な構造を図1に示す。TriAリガンドには、この場合、ベースビーズ上に固定化するために使用されるアミン基を有するリンカーも含まれる。ビーズは、リガンド上でアミン基と反応させることができる反応性基、例えば、エポキシ基、カルボキシル基またはアルデヒド基を含むように活性化される。次に、TriAリガンドは、第一級アミン(−NH2)基とのカップリング反応によりビーズ上に固定化される。
【0075】
[実施例2]血液型B抗原三糖リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の合成
別の実験において、血液型B抗原リガンド媒体を以下のように作製した。血液型B抗原三糖(TriB)リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体は、独自のポリビニルエーテル系ビーズ(すなわち、本明細書で使用される固相支持体)上にTriBリガンドを固定化することにより合成された。TriBリガンドの具体的な構造を図2に示す。TriAリガンドには、この場合、ベースビーズ上に固定化するために使用されるアミン基を有するリンカーも含まれる。上記のTriAリガンドの場合のように、ビーズは、例えば、エポキシ基、カルボキシル基またはアルデヒド基のような、リガンド上でアミン基と反応させることができる反応性基を含むように活性化される。次に、TriBリガンドは、第一級アミン(−NH2)基とのカップリング反応によりビーズ上に固定化される。
【0076】
[実施例3]マウスモノクローナルIgM−A抗体の精製
本明細書に記載される実施形態において、精製されたモノクローナルIgM抗体は、抗A抗体または抗B抗体に結合するクロマトグラフィー媒体の品質を査定するためのモデル分子として使用される。この実施例は、モノクローナルIgM−A抗体を精製するプロセスを記載するが、他のプロセスも使用してもよく、またはこのような抗体は商業的に入手可能である。
【0077】
10mM PBS緩衝液(製品番号:JH−1L−BK、EMD Millipore、Billerica、MA、USA)中で透析された、クローンBIRMA−1(Vox Sang.、1991年、61巻:53−58頁)から産生された抗A IgMを含有する市販の清澄化された細胞培養原料から血液型A抗原マウスモノクローナルIgM抗体(抗A)を精製した。実施例1に記載されるように、抗A細胞培養原料を0.22μmのメンブレンを通して濾過し、媒体に付着された血液型A抗原三糖(TriA)リガンドを有する媒体において結合/溶出クロマトグラフィーするように供された。
【0078】
直径10mmのカラムにTri−Aリガンド媒体を64mmに装填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(305.58cm/時、4.0mL/分で10カラム容積(CV))を用いて平衡化し、その後、10mMのPBS中(40CV、229.18cm/時、3.0mL/分)に抗Aを含有する清澄化された細胞培養原料を充填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(5CV、305.58cm/時、4.0ml/分)、続いて、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0ml/分)中の0.5M塩化ナトリウムで洗浄した。次に、pH2.7の0.1Mグリシン(9CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムから抗A IgM抗体を溶出させた。その後、さらに実施する前に、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムを洗浄し、0.5M水酸化ナトリウム(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)でストリップ処理した。
【0079】
1mLの2.0Mトリス塩基を45mLの抗A IgM溶出液に添加し、その溶液のpHを6から7に上昇させた。その後、溶出液を透析チューブ(Standard RC Dialysis Trial Kits、Spectra/Por(登録商標)1−3、3.5K MWCO、54mm FLAT WIDTH、シリアル番号:132725、Spectrum Laboratories、Inc.Rancho Dominguez、CA、90220 USA)を用いて10mMのPBS中で透析した。10mMのPBS中で透析後、モノクローナル抗A IgM抗体の得られた溶液は、IgM抗体のアミノ酸組成に基づいて測定すると、280nmで1.50の吸光係数に基づいて、約1.1mg/mLの濃度を有することが判明した。
【0080】
[実施例4]モノクローナルマウスIgM−B抗体の精製
10mM PBS緩衝液(製品番号:JH−1L−BK、EMD Millipore、Billerica、MA、USA)中で透析された、クローンLB−2から産生された抗B IgMを含有する市販の清澄化された細胞培養から血液型B抗原マウスモノクローナルIgM抗体(抗B)を精製した。実施例2に記載されるように、抗B細胞培養原料を、0.22μmのメンブレンを通して濾過し、媒体に付着された血液型抗原三糖(TriB)リガンドを有する媒体において結合/溶出クロマトグラフィーするように供された。
【0081】
直径10mmのカラムにTri−Bリガンド媒体を64mmに装填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(305.58cm/時、4.0mL/分で10CV)を用いて平衡化し、その後、10mMのPBS中(40CV、229.18cm/時、3.0mL/分)にモノクローナル抗Bを含有する清澄化された細胞培養原料を充填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(5CV、305.58cm/時、4.0ml/分)、続いて、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0ml/分)中の0.5M塩化ナトリウムで洗浄した。次に、pH2.7の0.1Mグリシン(9CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムから抗B抗体を溶出させた。その後、さらに実施する前に、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムを洗浄し、0.5M水酸化ナトリウム(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)でストリップ処理した。
【0082】
1mLの2.0Mトリス塩基を45mLの抗B溶出液に添加し、その溶液のpHを6から7に上昇させた。溶出液を透析チューブ(Standard RC Dialysis Trial Kits、Spectra/Por(登録商標)1−3、3.5K MWCO、54mm FLAT WIDTH、シリアル番号:132725、Spectrum Laboratories,Inc.Rancho Dominguez、CA、90220 USA)を用いて10mMのPBS中で透析した。10mMのPBS中で透析後、モノクローナル抗BマウスIgMの得られた溶液は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて測定すると、280nmで1.44の吸光係数に基づいて、約1.3mg/mLの濃度を有していた。
【0083】
[実施例5]媒体の品質の1つの基準としての精製されたマウスモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖リガンドクロマトグラフィー媒体の結合能力
この実施例は、精製されたモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体の結合能力が、例えば、製造中および製造後、クロマトグラフィー媒体のバッチごとの品質における変化を評価するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。
【0084】
TriAリガンドの濃度を、この場合にはポリビニルエーテル系ベースビーズである固体支持体とのカップリング反応中に変化させた。ベースビーズは、媒体製造プロセス中に予測される変化のタイプをシミュレートする、様々な量のTriAリガンドを有することが予測された。
【0085】
使用されるリガンドの濃度は、次の順番であった:TriA媒体#1<TriA媒体#2<TriA媒体#3。IgM能力は、TriA媒体#1に対して最小であり、次にTriA媒体#2であり、TriA媒体#3に対して最大であることが予測された。
【0086】
この実験において、抗A IgMに対する3つのTriAリガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の静的結合能力を測定した。この値は、IVIG原料Gammanorm 16.5%(165mg/mL、20×20mL、製造番号:00 357 340、Octapharma AG)からの抗A IgG抗体除去の割合と比較された。
【0087】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。その後、10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加され、次に、10mM PBS緩衝液中の1mg/mLの抗A IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLが添加された。管を4時間、室温で回転させた。その後、微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗A IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。抗A IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.50の吸光係数に基づいて計算された。
【0088】
別の実験において、代表的なIVIG原料における血液型A抗原ポリクローナルIgG抗体(抗A)レベルは、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。A型の赤血球は、代表的なIVIG原料とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、実施例1において合成された血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、原料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0089】
次に、抗IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、同じ条件下、同じ媒体を用いたIVIG原料からの抗A抗体の除去率と比較された。
【0090】
以下の表1に要約するように、この実験は、抗A IgMモノクローナル抗体に対する様々なTriAリガンド媒体の静的結合能力のバッチごとの変化が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗体A IgG除去率におけるバッチごとの変化と相関することを実証する。モノクローナル抗A IgMに対するより高い能力を有するTriAリガンド媒体は、IVIG原料からより多くの抗A IgG抗体を除去することを見出した。モノクローナル抗A IgMに対するより低い静的結合能力を有するTriAリガンド媒体は、IVIG原料からより少ない抗A IgG抗体を除去することも見出した。
【0091】
この結果は、2つの分子のタイプおよび供給源における差異により期待されなかった。すなわち、IgMはモノクローナルであり、より大きな五量体構造を有し、さらにマウス起源である。一方、IVIG原料から除去されるIgGはポリクローナルであり、より小さな単量体構造を有し、さらにヒト起源である。この結果に基づくと、抗A IgMモノクローナル抗体に対するTriAリガンド媒体の静的結合能力は、例えば、媒体の製造中および製造後に、試料からある割合の抗A抗体を除去するまたは除去することが期待される媒体のバッチごとの品質における変化を評価する指標として使用することができると結論付けることができる。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例6]媒体の品質の1つの基準としての精製されたマウスモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖リガンド媒体の結合能力
これは、精製されたモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の結合能力が、例えば、製造中および製造後、媒体のバッチごとの品質における変化を評価するために使用され得ることを実証する代表的な実施例である。
【0094】
TriBリガンドの濃度は、この場合にはポリビニルエーテル系ビーズである固体支持体とのカップリング反応中に変化させた。したがって、ビーズは、媒体製造プロセス中に予想される変化のタイプをシミュレートする、様々な量のTriBリガンドを有することが予想された。
【0095】
使用されるリガンドの濃度は、次の順番であった:TriB媒体#1<TriB媒体#2<TriB媒体#3。したがって、IgM能力は、TriB媒体#1に対して最小であり、次にTriB媒体#2であり、TriA媒体#3に対して最大であることが予測された。
【0096】
この実験において、抗B抗体に対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定し、この値は、IVIG原料Gammanorm 16.5%(165mg/mL、20×20mL、製造番号:00 357 340、Octapharma AG)からの抗B IgG抗体除去の割合と比較される。
【0097】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。10mM PBS緩衝液中のポリビニルエーテル系ビーズの10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、10mM PBS緩衝液中の1mg/mLの抗B IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLが全ての管に添加された。管を4時間、室温で回転させた。次に、微小遠心管を遠心分離に供し、続いて、上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、濾液の吸光度を280nmで測定した。各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗B IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。
【0098】
抗B IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.44の吸光係数に基づいて計算された。その後、抗B IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、静的結合条件下で、IVIG原料から抗B IgG抗体の除去率と比較された。
【0099】
代表的なIVIG原料における血液型B抗原ポリクローナルIgG抗体(抗B)レベルは、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。B型赤血球は、代表的なIVIG原料とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、実施例2において合成された血液型B三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、原料における抗BポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0100】
以下の表2に要約するように、この実験は、抗B IgMモノクローナル抗体に対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力のバッチごとの変化が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗体B IgG除去率におけるバッチ間の変化と相関することを実証する。モノクローナル抗B IgMに対するより高い能力を有するTriBリガンド媒体は、IVIG原料からより多くの抗B IgG抗体を除去することを見出した。モノクローナル抗B IgMに対するより低い静的結合能力を有するTriBリガンド媒体は、IVIG原料からより少ない抗B IgG抗体を除去することも見出した。
【0101】
このデータは、精製された抗B IgMモノクローナル抗体に対するTriBリガンド媒体の静的結合能力を用いて、例えば、製造前および製造後に、媒体の品質におけるバッチごとの変化を査定することができるという予期しない知見を実証する。
【0102】
【表2】
【0103】
[実施例7]苛性洗浄条件への曝露後に媒体の品質を監視する手段として、精製されたマウスモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖リガンド媒体の結合能力
これは、精製されたマウスモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体の能力が、過酷な苛性洗浄条件への曝露後の媒体の品質を監視するための有用な方法であることを実証する代表的な実施例である。
【0104】
1.0M水酸化ナトリウム溶液は、0時間、50時間、または150時間で、TriAリガンド媒体の充填カラム(5.0mL、1.0cm径および6.4cm長)全体に0.5mL/分で流された。次に、媒体は、カラムを出る溶液のpHが約pH7になるまで、10mM PBSを用いて中和された。その後、抗A IgMモノクローナル抗体に対する3つのTriAリガンド媒体の静的結合能力を測定し、同じ媒体を用いたIVIG原料からの抗A IgGの除去率と比較した。
【0105】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、10mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗A IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLを各管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗A IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。
【0106】
抗A IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.50の吸光係数に基づいて計算された。次に、抗A IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、同じ媒体を用いた静的結合条件下でのIVIG原料から除去された抗A IgG抗体の割合と比較された。
【0107】
代表的なIVIG原料における血液型A抗原ポリクローナルIgG抗体濃度は、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。A型赤血球は、IgG濃縮物とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、試料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0108】
以下の表3に要約するように、この実験は、モノクローナル抗A IgMに対する様々なTriAリガンド媒体の静的結合能力の相対的な差異が、IVIG原料からの抗体A IgG除去率における相対的差異と相関することを実証する。TriAリガンド媒体が苛性洗浄条件に長く曝露されるにつれ、その静的結合能力は、モノクローナル抗A IgMに対して低くなり、抗A IgG抗体は、IVIG原料からの除去は少なくなることが観察された。
【0109】
したがって、モノクローナル抗A IgMに対するTriAリガンド媒体の静的結合能力は、苛性条件への曝露後にこの種の媒体の品質を監視するために使用することができる。
【0110】
【表3】
【0111】
[実施例8]苛性洗浄条件への曝露後に媒体の品質を監視する手段として、精製されたマウスモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖リガンド媒体の結合能力
これは、精製されたマウスモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の能力が、過酷な苛性洗浄条件への曝露後の媒体の品質を監視するための有用な方法であることを実証する代表的な実施例である。
【0112】
1.0M水酸化ナトリウム溶液は、0時間、50時間、または150時間で、TriBリガンド媒体の充填カラム(5.0mL、1.0cm径および6.4cm長)全体に0.5mL/分で流された。次に、媒体は、カラムを出る溶液のpHが約pH7になるまで、カラムに10mM PBSを流すことによって中和された。その後、モノクローナル抗B IgMに対する3つのTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定し、同じ媒体を用いたIVIG原料からの抗B IgGの除去率と比較した。
【0113】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの50mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、10mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗B IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLを各管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗B IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。抗B IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.44の吸光係数に基づいて計算された。次に、抗B IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、IVIG原料からの抗B IgG抗体の除去率と比較された。
【0114】
代表的なIVIG原料における血液型B抗原ポリクローナルIgG抗体濃度は、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。B型赤血球は、IgG濃縮物とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、試料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0115】
以下の表4に要約するように、この実験は、精製されたモノクローナル抗B IgM抗体に対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力の相対的な差異が、IVIG原料からの抗体B IgG除去率における相対的差異と相関することを実証する。TriBリガンド媒体が苛性洗浄条件に曝露される時間の長さは、モノクローナル抗B IgMに対する静的結合能力と、静的結合条件下でIVIG原料から除去された抗B IgG抗体の量に大きくは影響を及ぼさないことが見出された。データは、モノクローナル抗B IgMに対するTriBリガンド媒体の静的結合能力が、この種の媒体の品質を監視するために使用することができるという予期せぬ結果を示す。
【0116】
【表4】
【0117】
[実施例9]それぞれ精製されたマウスモノクローナル抗体IgM−AおよびIgM−Bに対する静的結合能力を測定することによる血液型A抗原三糖リガンド媒体と血液型B抗原三糖リガンド媒体間の区別
これは、それぞれマウスモノクローナル抗体IgM−AおよびIgM−Bに対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体と血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の相対的な静的結合能力が、これらの2種の媒体間で区別するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。
【0118】
これらの2種の媒体間を容易に区別する能力は有用であり、その理由は、その2種の媒体が、典型的には、血液および血漿製剤から抗A抗体および抗B抗体を除去するために一緒に使用され、容易に混合することができるからである。区別は、モノクローナル抗A IgMとモノクローナル抗B IgMの両方に対するTriAリガンド媒体およびTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定することによって実証された。
【0119】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの50mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの50mM PBS緩衝液が充填された。50mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、50mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗A IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLまたは50mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗B IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLを各管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。次に、微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、その後、濾液の吸光度を280nmで測定した。280nmでの各々の試料の吸光度を用いて、抗A IgMモノクローナル抗体および抗B IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。抗A IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.50の吸光係数に基づいて計算された。抗B IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.44の吸光係数に基づいて計算された。
【0120】
以下の表5に要約するように、この実験は、抗A抗体に結合することができる媒体または抗B抗体に結合することができる媒体の同一性を抗A IgMモノクローナル抗体と抗B IgMモノクローナル抗体の両方に対する媒体の結合能力を測定することによって区別し得ることを実証する。
【0121】
TriAリガンド媒体は、抗A IgMモノクローナル抗体に対して顕著な結合能力を有し、一方、抗B IgMモノクローナル抗体に対しては非常に低い結合能力を有することが観察された。対照的に、TriBリガンド媒体は、抗B IgMモノクローナル抗体に対して顕著な結合能力を有し、一方、抗A IgMモノクローナルに対しては非常に低い結合能力を有することが観察された。このように、A抗原リガンド媒体とB抗原リガンド媒体は、特に、このような媒体試料の同一性が未知である場合には、容易に分別され得る。
【0122】
【表5】
【0123】
[実施例10]精製されたIgM−Aモノクローナル抗体またはIgM−Bモノクローナル抗体に対する結合能力に基づく媒体の混合物の生成および相対的な品質の査定
本明細書において見られるように、精製されたモノクローナルIgM−A抗体またはIgM−B抗体への血液型A抗原媒体または血液型B抗原媒体の相対的な結合能力は、このような媒体が、実際にどのように試料(例えば、血液、血液製剤、血漿またはIVIG)から血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体の除去を行い得るのかについて査定または予測する良好な指標である。
【0124】
精製されたモノクローナルIgM−Aに対する血液型A抗原媒体の相対的な結合能力および精製されたIgM−B抗体に対する血液型B抗原媒体の相対的な結合能力は、正しい比率の両媒体の混合物を生成するために使用することができ、次に、両媒体は、1回のクロマトグラフィーステップにおいて、試料から血液型A抗原抗体と血液型B抗原抗体の両方を除去するために使用することができる。
【0125】
これは、一般的に、血液型A抗原抗体および血液型B抗原抗体の量が試料ごとに変化する傾向があるため、特に有用である。したがって、1つの試料からこのような抗体を除去するために十分に機能し得る媒体の混合物は、別の試料の場合にも同様に機能しない場合がある。
【0126】
本明細書に記載される方法は、単に、試料中の抗A抗体および抗B抗体の量を知ることにより、その試料に対して十分に機能する媒体の混合物を設計するために使用することができる。
【0127】
例えば、精製されたモノクローナルIgM抗体に対する媒体の結合能力は、試料からの抗A抗体または抗B抗体の除去率と相関するため、試料中の抗A抗体および抗B抗体のレベルまたは量がわかると、媒体の混合物または媒体は、それぞれのIgM分子に対する結合能力に基づいて、試料から所望量の抗A抗体および/または抗B抗体を除去するのに適切である、血液型A抗原媒体と血液型B抗原媒体の比率を有するように設計することができる。
【0128】
本明細書に記載される方法はまた、血液型A抗原リガンドを有する媒体と血液型B抗原リガンドを有する媒体で構成される媒体の混合物の相対的な品質を決定するために使用することができる。
【0129】
本明細書は、参照により本明細書に組み込む、本明細書中で引用される参考文献の教示を考慮することによって最も完全に理解される。本明細書中の実施形態は、実施形態の例証を提供するものであり、範囲を限定するものと解釈すべきでない。当業者(熟練者)は、他の多くの実施形態が本明細書に包含されることを容易に認識する。全ての刊行物および参考資料を、参照によりその全体を組み込む。参照により組み込む材料が本明細書と矛盾するまたは相反する範囲まで、本明細書は任意のこのような材料に取って代わる。本明細書の任意の文献の引用は、このような文献が先行技術であると認めるものではない。
【0130】
特記しない限り、成分量、細胞培養、処理条件などを表している、特許請求の範囲を含んだ本明細書中で使用される全ての数字は、すべての場合に用語「約」により修飾されているものと解釈すべきである。したがって、反対のことを特記しない限り、数値パラメーターは、近似値であり、本明細書に開示される実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変動することができる。特記しない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連のあらゆる要素を指すと解釈すべきである。当業者は、通常の実験を超えない実験を使用して、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【0131】
本明細書に開示されている実施形態の多数の修飾および変更は、当業者に明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなしに行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例としてのみ提供され、いかなる方法でも限定するものでない。明細書および実施例は、以下の特許請求の範囲によって示される開示の真の範囲および精神とともに、単なる例示としてみなされることが意図される。
図1
図2