【実施例】
【0074】
[実施例1]血液型A抗原三糖リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の合成
これは、血液型A抗原リガンド媒体を製造するために使用することができる例示的な方法である。血液型A抗原三糖(TriA)リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体は、独自のポリビニルエーテル系ビーズ(すなわち、本明細書で使用される固相支持体)上にTriAリガンドを固定化することにより合成された。TriAリガンドの具体的な構造を
図1に示す。TriAリガンドには、この場合、ベースビーズ上に固定化するために使用されるアミン基を有するリンカーも含まれる。ビーズは、リガンド上でアミン基と反応させることができる反応性基、例えば、エポキシ基、カルボキシル基またはアルデヒド基を含むように活性化される。次に、TriAリガンドは、第一級アミン(−NH2)基とのカップリング反応によりビーズ上に固定化される。
【0075】
[実施例2]血液型B抗原三糖リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の合成
別の実験において、血液型B抗原リガンド媒体を以下のように作製した。血液型B抗原三糖(TriB)リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体は、独自のポリビニルエーテル系ビーズ(すなわち、本明細書で使用される固相支持体)上にTriBリガンドを固定化することにより合成された。TriBリガンドの具体的な構造を
図2に示す。TriAリガンドには、この場合、ベースビーズ上に固定化するために使用されるアミン基を有するリンカーも含まれる。上記のTriAリガンドの場合のように、ビーズは、例えば、エポキシ基、カルボキシル基またはアルデヒド基のような、リガンド上でアミン基と反応させることができる反応性基を含むように活性化される。次に、TriBリガンドは、第一級アミン(−NH2)基とのカップリング反応によりビーズ上に固定化される。
【0076】
[実施例3]マウスモノクローナルIgM−A抗体の精製
本明細書に記載される実施形態において、精製されたモノクローナルIgM抗体は、抗A抗体または抗B抗体に結合するクロマトグラフィー媒体の品質を査定するためのモデル分子として使用される。この実施例は、モノクローナルIgM−A抗体を精製するプロセスを記載するが、他のプロセスも使用してもよく、またはこのような抗体は商業的に入手可能である。
【0077】
10mM PBS緩衝液(製品番号:JH−1L−BK、EMD Millipore、Billerica、MA、USA)中で透析された、クローンBIRMA−1(Vox Sang.、1991年、61巻:53−58頁)から産生された抗A IgMを含有する市販の清澄化された細胞培養原料から血液型A抗原マウスモノクローナルIgM抗体(抗A)を精製した。実施例1に記載されるように、抗A細胞培養原料を0.22μmのメンブレンを通して濾過し、媒体に付着された血液型A抗原三糖(TriA)リガンドを有する媒体において結合/溶出クロマトグラフィーするように供された。
【0078】
直径10mmのカラムにTri−Aリガンド媒体を64mmに装填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(305.58cm/時、4.0mL/分で10カラム容積(CV))を用いて平衡化し、その後、10mMのPBS中(40CV、229.18cm/時、3.0mL/分)に抗Aを含有する清澄化された細胞培養原料を充填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(5CV、305.58cm/時、4.0ml/分)、続いて、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0ml/分)中の0.5M塩化ナトリウムで洗浄した。次に、pH2.7の0.1Mグリシン(9CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムから抗A IgM抗体を溶出させた。その後、さらに実施する前に、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムを洗浄し、0.5M水酸化ナトリウム(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)でストリップ処理した。
【0079】
1mLの2.0Mトリス塩基を45mLの抗A IgM溶出液に添加し、その溶液のpHを6から7に上昇させた。その後、溶出液を透析チューブ(Standard RC Dialysis Trial Kits、Spectra/Por(登録商標)1−3、3.5K MWCO、54mm FLAT WIDTH、シリアル番号:132725、Spectrum Laboratories、Inc.Rancho Dominguez、CA、90220 USA)を用いて10mMのPBS中で透析した。10mMのPBS中で透析後、モノクローナル抗A IgM抗体の得られた溶液は、IgM抗体のアミノ酸組成に基づいて測定すると、280nmで1.50の吸光係数に基づいて、約1.1mg/mLの濃度を有することが判明した。
【0080】
[実施例4]モノクローナルマウスIgM−B抗体の精製
10mM PBS緩衝液(製品番号:JH−1L−BK、EMD Millipore、Billerica、MA、USA)中で透析された、クローンLB−2から産生された抗B IgMを含有する市販の清澄化された細胞培養から血液型B抗原マウスモノクローナルIgM抗体(抗B)を精製した。実施例2に記載されるように、抗B細胞培養原料を、0.22μmのメンブレンを通して濾過し、媒体に付着された血液型抗原三糖(TriB)リガンドを有する媒体において結合/溶出クロマトグラフィーするように供された。
【0081】
直径10mmのカラムにTri−Bリガンド媒体を64mmに装填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(305.58cm/時、4.0mL/分で10CV)を用いて平衡化し、その後、10mMのPBS中(40CV、229.18cm/時、3.0mL/分)にモノクローナル抗Bを含有する清澄化された細胞培養原料を充填した。カラムを10mMのPBS緩衝液(5CV、305.58cm/時、4.0ml/分)、続いて、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0ml/分)中の0.5M塩化ナトリウムで洗浄した。次に、pH2.7の0.1Mグリシン(9CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムから抗B抗体を溶出させた。その後、さらに実施する前に、10mMのPBS緩衝液(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)を用いてカラムを洗浄し、0.5M水酸化ナトリウム(10CV、305.58cm/時、4.0mL/分)でストリップ処理した。
【0082】
1mLの2.0Mトリス塩基を45mLの抗B溶出液に添加し、その溶液のpHを6から7に上昇させた。溶出液を透析チューブ(Standard RC Dialysis Trial Kits、Spectra/Por(登録商標)1−3、3.5K MWCO、54mm FLAT WIDTH、シリアル番号:132725、Spectrum Laboratories,Inc.Rancho Dominguez、CA、90220 USA)を用いて10mMのPBS中で透析した。10mMのPBS中で透析後、モノクローナル抗BマウスIgMの得られた溶液は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて測定すると、280nmで1.44の吸光係数に基づいて、約1.3mg/mLの濃度を有していた。
【0083】
[実施例5]媒体の品質の1つの基準としての精製されたマウスモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖リガンドクロマトグラフィー媒体の結合能力
この実施例は、精製されたモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体の結合能力が、例えば、製造中および製造後、クロマトグラフィー媒体のバッチごとの品質における変化を評価するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。
【0084】
TriAリガンドの濃度を、この場合にはポリビニルエーテル系ベースビーズである固体支持体とのカップリング反応中に変化させた。ベースビーズは、媒体製造プロセス中に予測される変化のタイプをシミュレートする、様々な量のTriAリガンドを有することが予測された。
【0085】
使用されるリガンドの濃度は、次の順番であった:TriA媒体#1<TriA媒体#2<TriA媒体#3。IgM能力は、TriA媒体#1に対して最小であり、次にTriA媒体#2であり、TriA媒体#3に対して最大であることが予測された。
【0086】
この実験において、抗A IgMに対する3つのTriAリガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の静的結合能力を測定した。この値は、IVIG原料Gammanorm 16.5%(165mg/mL、20×20mL、製造番号:00 357 340、Octapharma AG)からの抗A IgG抗体除去の割合と比較された。
【0087】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。その後、10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加され、次に、10mM PBS緩衝液中の1mg/mLの抗A IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLが添加された。管を4時間、室温で回転させた。その後、微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗A IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。抗A IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.50の吸光係数に基づいて計算された。
【0088】
別の実験において、代表的なIVIG原料における血液型A抗原ポリクローナルIgG抗体(抗A)レベルは、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。A型の赤血球は、代表的なIVIG原料とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、実施例1において合成された血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、原料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0089】
次に、抗IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、同じ条件下、同じ媒体を用いたIVIG原料からの抗A抗体の除去率と比較された。
【0090】
以下の表1に要約するように、この実験は、抗A IgMモノクローナル抗体に対する様々なTriAリガンド媒体の静的結合能力のバッチごとの変化が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗体A IgG除去率におけるバッチごとの変化と相関することを実証する。モノクローナル抗A IgMに対するより高い能力を有するTriAリガンド媒体は、IVIG原料からより多くの抗A IgG抗体を除去することを見出した。モノクローナル抗A IgMに対するより低い静的結合能力を有するTriAリガンド媒体は、IVIG原料からより少ない抗A IgG抗体を除去することも見出した。
【0091】
この結果は、2つの分子のタイプおよび供給源における差異により期待されなかった。すなわち、IgMはモノクローナルであり、より大きな五量体構造を有し、さらにマウス起源である。一方、IVIG原料から除去されるIgGはポリクローナルであり、より小さな単量体構造を有し、さらにヒト起源である。この結果に基づくと、抗A IgMモノクローナル抗体に対するTriAリガンド媒体の静的結合能力は、例えば、媒体の製造中および製造後に、試料からある割合の抗A抗体を除去するまたは除去することが期待される媒体のバッチごとの品質における変化を評価する指標として使用することができると結論付けることができる。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例6]媒体の品質の1つの基準としての精製されたマウスモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖リガンド媒体の結合能力
これは、精製されたモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の結合能力が、例えば、製造中および製造後、媒体のバッチごとの品質における変化を評価するために使用され得ることを実証する代表的な実施例である。
【0094】
TriBリガンドの濃度は、この場合にはポリビニルエーテル系ビーズである固体支持体とのカップリング反応中に変化させた。したがって、ビーズは、媒体製造プロセス中に予想される変化のタイプをシミュレートする、様々な量のTriBリガンドを有することが予想された。
【0095】
使用されるリガンドの濃度は、次の順番であった:TriB媒体#1<TriB媒体#2<TriB媒体#3。したがって、IgM能力は、TriB媒体#1に対して最小であり、次にTriB媒体#2であり、TriA媒体#3に対して最大であることが予測された。
【0096】
この実験において、抗B抗体に対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定し、この値は、IVIG原料Gammanorm 16.5%(165mg/mL、20×20mL、製造番号:00 357 340、Octapharma AG)からの抗B IgG抗体除去の割合と比較される。
【0097】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。10mM PBS緩衝液中のポリビニルエーテル系ビーズの10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、10mM PBS緩衝液中の1mg/mLの抗B IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLが全ての管に添加された。管を4時間、室温で回転させた。次に、微小遠心管を遠心分離に供し、続いて、上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、濾液の吸光度を280nmで測定した。各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗B IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。
【0098】
抗B IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.44の吸光係数に基づいて計算された。その後、抗B IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、静的結合条件下で、IVIG原料から抗B IgG抗体の除去率と比較された。
【0099】
代表的なIVIG原料における血液型B抗原ポリクローナルIgG抗体(抗B)レベルは、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。B型赤血球は、代表的なIVIG原料とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、実施例2において合成された血液型B三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、原料における抗BポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0100】
以下の表2に要約するように、この実験は、抗B IgMモノクローナル抗体に対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力のバッチごとの変化が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗体B IgG除去率におけるバッチ間の変化と相関することを実証する。モノクローナル抗B IgMに対するより高い能力を有するTriBリガンド媒体は、IVIG原料からより多くの抗B IgG抗体を除去することを見出した。モノクローナル抗B IgMに対するより低い静的結合能力を有するTriBリガンド媒体は、IVIG原料からより少ない抗B IgG抗体を除去することも見出した。
【0101】
このデータは、精製された抗B IgMモノクローナル抗体に対するTriBリガンド媒体の静的結合能力を用いて、例えば、製造前および製造後に、媒体の品質におけるバッチごとの変化を査定することができるという予期しない知見を実証する。
【0102】
【表2】
【0103】
[実施例7]苛性洗浄条件への曝露後に媒体の品質を監視する手段として、精製されたマウスモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖リガンド媒体の結合能力
これは、精製されたマウスモノクローナルIgM−A抗体に対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体の能力が、過酷な苛性洗浄条件への曝露後の媒体の品質を監視するための有用な方法であることを実証する代表的な実施例である。
【0104】
1.0M水酸化ナトリウム溶液は、0時間、50時間、または150時間で、TriAリガンド媒体の充填カラム(5.0mL、1.0cm径および6.4cm長)全体に0.5mL/分で流された。次に、媒体は、カラムを出る溶液のpHが約pH7になるまで、10mM PBSを用いて中和された。その後、抗A IgMモノクローナル抗体に対する3つのTriAリガンド媒体の静的結合能力を測定し、同じ媒体を用いたIVIG原料からの抗A IgGの除去率と比較した。
【0105】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、10mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗A IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLを各管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗A IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。
【0106】
抗A IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.50の吸光係数に基づいて計算された。次に、抗A IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、同じ媒体を用いた静的結合条件下でのIVIG原料から除去された抗A IgG抗体の割合と比較された。
【0107】
代表的なIVIG原料における血液型A抗原ポリクローナルIgG抗体濃度は、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。A型赤血球は、IgG濃縮物とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、試料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0108】
以下の表3に要約するように、この実験は、モノクローナル抗A IgMに対する様々なTriAリガンド媒体の静的結合能力の相対的な差異が、IVIG原料からの抗体A IgG除去率における相対的差異と相関することを実証する。TriAリガンド媒体が苛性洗浄条件に長く曝露されるにつれ、その静的結合能力は、モノクローナル抗A IgMに対して低くなり、抗A IgG抗体は、IVIG原料からの除去は少なくなることが観察された。
【0109】
したがって、モノクローナル抗A IgMに対するTriAリガンド媒体の静的結合能力は、苛性条件への曝露後にこの種の媒体の品質を監視するために使用することができる。
【0110】
【表3】
【0111】
[実施例8]苛性洗浄条件への曝露後に媒体の品質を監視する手段として、精製されたマウスモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖リガンド媒体の結合能力
これは、精製されたマウスモノクローナルIgM−B抗体に対する血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の能力が、過酷な苛性洗浄条件への曝露後の媒体の品質を監視するための有用な方法であることを実証する代表的な実施例である。
【0112】
1.0M水酸化ナトリウム溶液は、0時間、50時間、または150時間で、TriBリガンド媒体の充填カラム(5.0mL、1.0cm径および6.4cm長)全体に0.5mL/分で流された。次に、媒体は、カラムを出る溶液のpHが約pH7になるまで、カラムに10mM PBSを流すことによって中和された。その後、モノクローナル抗B IgMに対する3つのTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定し、同じ媒体を用いたIVIG原料からの抗B IgGの除去率と比較した。
【0113】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの50mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、10mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗B IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLを各管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、抗B IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。抗B IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.44の吸光係数に基づいて計算された。次に、抗B IgMモノクローナル抗体の静的結合能力は、IVIG原料からの抗B IgG抗体の除去率と比較された。
【0114】
代表的なIVIG原料における血液型B抗原ポリクローナルIgG抗体濃度は、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。B型赤血球は、IgG濃縮物とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、試料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0115】
以下の表4に要約するように、この実験は、精製されたモノクローナル抗B IgM抗体に対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力の相対的な差異が、IVIG原料からの抗体B IgG除去率における相対的差異と相関することを実証する。TriBリガンド媒体が苛性洗浄条件に曝露される時間の長さは、モノクローナル抗B IgMに対する静的結合能力と、静的結合条件下でIVIG原料から除去された抗B IgG抗体の量に大きくは影響を及ぼさないことが見出された。データは、モノクローナル抗B IgMに対するTriBリガンド媒体の静的結合能力が、この種の媒体の品質を監視するために使用することができるという予期せぬ結果を示す。
【0116】
【表4】
【0117】
[実施例9]それぞれ精製されたマウスモノクローナル抗体IgM−AおよびIgM−Bに対する静的結合能力を測定することによる血液型A抗原三糖リガンド媒体と血液型B抗原三糖リガンド媒体間の区別
これは、それぞれマウスモノクローナル抗体IgM−AおよびIgM−Bに対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体と血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の相対的な静的結合能力が、これらの2種の媒体間で区別するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。
【0118】
これらの2種の媒体間を容易に区別する能力は有用であり、その理由は、その2種の媒体が、典型的には、血液および血漿製剤から抗A抗体および抗B抗体を除去するために一緒に使用され、容易に混合することができるからである。区別は、モノクローナル抗A IgMとモノクローナル抗B IgMの両方に対するTriAリガンド媒体およびTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定することによって実証された。
【0119】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの50mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの50mM PBS緩衝液が充填された。50mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加された。その後、50mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗A IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLまたは50mM PBS緩衝液中の1.0mg/mLの抗B IgMモノクローナル抗体溶液の1.0mLを各管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。次に、微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、その後、濾液の吸光度を280nmで測定した。280nmでの各々の試料の吸光度を用いて、抗A IgMモノクローナル抗体および抗B IgMモノクローナル抗体に対する媒体の静的結合能力を計算した。抗A IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.50の吸光係数に基づいて計算された。抗B IgMの静的結合能力は、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて推定される280nmで1.44の吸光係数に基づいて計算された。
【0120】
以下の表5に要約するように、この実験は、抗A抗体に結合することができる媒体または抗B抗体に結合することができる媒体の同一性を抗A IgMモノクローナル抗体と抗B IgMモノクローナル抗体の両方に対する媒体の結合能力を測定することによって区別し得ることを実証する。
【0121】
TriAリガンド媒体は、抗A IgMモノクローナル抗体に対して顕著な結合能力を有し、一方、抗B IgMモノクローナル抗体に対しては非常に低い結合能力を有することが観察された。対照的に、TriBリガンド媒体は、抗B IgMモノクローナル抗体に対して顕著な結合能力を有し、一方、抗A IgMモノクローナルに対しては非常に低い結合能力を有することが観察された。このように、A抗原リガンド媒体とB抗原リガンド媒体は、特に、このような媒体試料の同一性が未知である場合には、容易に分別され得る。
【0122】
【表5】
【0123】
[実施例10]精製されたIgM−Aモノクローナル抗体またはIgM−Bモノクローナル抗体に対する結合能力に基づく媒体の混合物の生成および相対的な品質の査定
本明細書において見られるように、精製されたモノクローナルIgM−A抗体またはIgM−B抗体への血液型A抗原媒体または血液型B抗原媒体の相対的な結合能力は、このような媒体が、実際にどのように試料(例えば、血液、血液製剤、血漿またはIVIG)から血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体の除去を行い得るのかについて査定または予測する良好な指標である。
【0124】
精製されたモノクローナルIgM−Aに対する血液型A抗原媒体の相対的な結合能力および精製されたIgM−B抗体に対する血液型B抗原媒体の相対的な結合能力は、正しい比率の両媒体の混合物を生成するために使用することができ、次に、両媒体は、1回のクロマトグラフィーステップにおいて、試料から血液型A抗原抗体と血液型B抗原抗体の両方を除去するために使用することができる。
【0125】
これは、一般的に、血液型A抗原抗体および血液型B抗原抗体の量が試料ごとに変化する傾向があるため、特に有用である。したがって、1つの試料からこのような抗体を除去するために十分に機能し得る媒体の混合物は、別の試料の場合にも同様に機能しない場合がある。
【0126】
本明細書に記載される方法は、単に、試料中の抗A抗体および抗B抗体の量を知ることにより、その試料に対して十分に機能する媒体の混合物を設計するために使用することができる。
【0127】
例えば、精製されたモノクローナルIgM抗体に対する媒体の結合能力は、試料からの抗A抗体または抗B抗体の除去率と相関するため、試料中の抗A抗体および抗B抗体のレベルまたは量がわかると、媒体の混合物または媒体は、それぞれのIgM分子に対する結合能力に基づいて、試料から所望量の抗A抗体および/または抗B抗体を除去するのに適切である、血液型A抗原媒体と血液型B抗原媒体の比率を有するように設計することができる。
【0128】
本明細書に記載される方法はまた、血液型A抗原リガンドを有する媒体と血液型B抗原リガンドを有する媒体で構成される媒体の混合物の相対的な品質を決定するために使用することができる。
【0129】
本明細書は、参照により本明細書に組み込む、本明細書中で引用される参考文献の教示を考慮することによって最も完全に理解される。本明細書中の実施形態は、実施形態の例証を提供するものであり、範囲を限定するものと解釈すべきでない。当業者(熟練者)は、他の多くの実施形態が本明細書に包含されることを容易に認識する。全ての刊行物および参考資料を、参照によりその全体を組み込む。参照により組み込む材料が本明細書と矛盾するまたは相反する範囲まで、本明細書は任意のこのような材料に取って代わる。本明細書の任意の文献の引用は、このような文献が先行技術であると認めるものではない。
【0130】
特記しない限り、成分量、細胞培養、処理条件などを表している、特許請求の範囲を含んだ本明細書中で使用される全ての数字は、すべての場合に用語「約」により修飾されているものと解釈すべきである。したがって、反対のことを特記しない限り、数値パラメーターは、近似値であり、本明細書に開示される実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変動することができる。特記しない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連のあらゆる要素を指すと解釈すべきである。当業者は、通常の実験を超えない実験を使用して、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【0131】
本明細書に開示されている実施形態の多数の修飾および変更は、当業者に明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなしに行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例としてのみ提供され、いかなる方法でも限定するものでない。明細書および実施例は、以下の特許請求の範囲によって示される開示の真の範囲および精神とともに、単なる例示としてみなされることが意図される。