【文献】
Zhui Tua, et al.,Preparation and characterization of novel IgG affinity resin coupling anti-Fc camelid single-domain antibodies,Journal of Chromatography B,米国,2015年 3月 1日,Pages 26-31,URL,http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1570023215000161
【文献】
D.Muller-Schulte,et al.,Comparative affinity chromatography studies using novel grafted polyamide and poly(vinyl alcohol)media,Journal of Chromatography,米国,1991年 1月 1日,539,Pages 307-314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固相支持体が、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む多孔質または非多孔質ポリマーの固相支持体である、請求項1に記載の方法。
固相支持体が、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む多孔質または非多孔質のポリマーの固相支持体である、請求項2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最近、幾人かの血液ドナー、時として数千以上の血液ドナーから得られた、プールされた血漿から抽出された濃縮多価IgG抗体からなる静脈内免疫グロブリン(IVIG)から抗Aおよび抗B IgGを除去するための合成免疫吸着クロマトグラフィー媒体の用途における関心が高まっている。血漿からIgGを精製するプロセス中に、より大きい抗A IgM抗体および抗B IgM抗体は、典型的には、分画によってより小さいIgG抗体から分離され得る。しかしながら、いくらかの割合の抗A抗体および抗B抗体は、一般的に、分画によってのみでは他のIgG抗体から分別することができないIgG形態である。したがって、IVIG治療用濃縮物は、典型的には、高濃度の抗A IgG抗体および抗B IgG抗体とともにIVIG投与を防止するために、抗A IgG抗体および抗B IgG抗体の濃度を監視する凝集アッセイを用いてスクリーニングされる。しかしながら、この予防措置にもかかわらず、死に至る可能性がある溶血反応は、血液型A、B、またはABを有するそれらのレシピエントに対して生じることがなおも知られている(「Strategies to address hemolytic complications of immune globulin infusions」、FDA Center for Biologics Evaluation and Research Public Workshop Washington,D.C.、1月、28−29頁,2014年の写し)。
【0024】
通例、凝集アッセイは、限定された耐用年数を有し、細胞表面上の抗原密度が一般的にロットごとに変化する生きた赤血球の使用に依存している。凝集はまた連続希釈を必要とし、細胞凝集の定性的評価(視覚的または顕微鏡観察)に依存している。抗A抗体および抗B抗体の濃度を決定するためのより正確な方法はフローサイトメトリーを採用する。しかしながら、フローサイトメトリー法はまた、生きた赤血球を使用し、凝集アッセイと比較して非常に複雑であり、時間がかかる。抗A抗体および抗B抗体の濃度を測定するために、ELISAアッセイも報告されているが、しかしながら、この技術は、相対的に複雑な多段階の手順と特殊化された抗原試薬を必要とする。
【0025】
上記で検討したように、抗A抗体または抗B抗体に結合するリガンドを含有するクロマトグラフィー免疫吸着媒体は、血液由来製剤、例えば、血漿およびIVIGからこのような抗体の除去に有効であると考えられる。しかしながら、現在、媒体の再現性および信頼性を査定するために、このような媒体資質を見極め、検証するために使用することができる利用可能な優れた方法がない。
【0026】
媒体が、製造規格およびその耐用年数を通じて品質要件を満たしていることを確実にするために、血液型抗原リガンドクロマトグラフィー媒体のバッチ間の品質を評価することは本質的に重要である。さらに、使用、洗浄および消毒後、意図された不純物を除去する能力を保持していることを確認するために、使用、洗浄および消毒中ならびに使用、洗浄および消毒後にこのような媒体を評価することもまた重要である。意図された標的分子に結合する血液型抗原リガンド媒体の能力は、通常、血液型抗原リガンド媒体との接触前後で、血液由来製剤中のポリクローナル血液型抗原抗体の濃度の低下を測定することによって直接評価されている。
【0027】
本明細書の実施例から明らかなように、ある種の精製されたレクチンに対する抗A抗原リガンド媒体および抗B抗原リガンド媒体の能力は、場合に応じて、試料(例えば、IVIG原料)から抗A抗体または抗B抗体を除去するこのような媒体の能力と相関する。
【0028】
精製された分子(例えば、この場合には精製されたレクチン)に対する、血液型抗原リガンドを含有する媒体の能力を測定することは、時間がかかり、さらには再現するのが困難である血液製剤から血液型抗原抗体の除去を測定することに大部分依存していた、従来報告されている方法と比較していくつかの利点を有する。対照的に、本明細書に記載される実施形態は、当該技術分野において公知の従来法に比べて、より効率的に再現性よく行うことができる、精製された分子に対する結合能力の測定に依存する。
【0029】
本明細書に記載される実施形態は、当該技術分野において公知の従来法に比べて、より効率的におよび再現的に行うことができる、血液型抗原リガンド媒体の品質を評価するための新規な方法に関する。本明細書に記載される方法は、当該技術分野において公知の従来法に比べていくつかの利点を有する。例えば、本明細書に記載される方法は、最も一般的に使用される凝集に基づくアッセイと比較して、より効率的であり、簡便であり、容易に再現性が得られるだけでなく、本明細書に記載される方法は、いかなる特殊な装置(例えば、フローサイトメトリー)を必要とせず、いかなる特殊な血液型抗原試薬(例えば、ELISAに基づくアッセイ)も必要としない。
【0030】
本明細書の実施例から明らかなように、精製されたレクチンに対する抗A抗原リガンド媒体および抗B抗原リガンド媒体の能力は、場合に応じて、IVIG原料から血液型A抗体または血液型B抗体を除去する媒体の能力と相関する。本明細書において提供される方法は、精製されたレクチンに対するこのような媒体の結合能力の測定に依存し、当該技術分野において公知の既存の方法よりも、実行するのが簡単であり、より時間がかからず、非常に信頼性が高く、再現性がある。
【0031】
精製されたレクチンに対する血液型抗原媒体の結合能力の測定は、既存の方法と比べていくつかの利点を有する。例えば、ロット間に多数の変動を示す傾向がある生きた赤血球、さらに凝集のオペレーターの主観的観察による凝集と比較して、精製されたレクチンの使用は、誤差を大いに低減または排除し、さらには一貫した結果を与える。
【0032】
レクチンは、細胞を凝集させることができる天然に存在する炭水化物結合タンパク質である。レクチンは、ヒトの血液型に対して特異性を示し、生理的条件下で悪性細胞の優先的な凝集を引き起こすことが知られている。現在まで、約400個のレクチンが同定され、植物および動物供給源から抽出されている。[Sharon,N.,およびLis,H.,Lectins,第2版;Springer Publications,The Netherlands,2007年]。
【0033】
グリフォニア・シンプリシフォリア(GS−I)、グリフォニア・シンプリシフォリア−イソレクチンB4(GSI−B4)、およびヘリックス・ポマチア(HP)由来のレクチンなどのいくつかのレクチンは、血液型抗原に対して結合特異性を示すことが以前に報告されている。[Matsui,T.ら、Biochim.et.Biophys.Acta,1525巻,2001年,50−57頁]。
【0034】
表1は、レクチン、それらの供給源、および血液型抗原に対する特異性を要約する。
【0036】
いくつかのレクチンは、血液型特異的なものとして同定され、非常に少数のものが市販されている。例えば、市販のHPレクチンおよびGSI−B4レクチンは、それぞれ、血液型A抗原および血液型B抗原に対する結合特異性を有することが報告されている。対照的に、GS−Iレクチンは、血液型抗原AとBの両方に対して結合特異性を示すことが報告されている。これらのレクチンは単量体IgG抗体と大体同じサイズ(約150kDa)であり、単量体IgG抗体に類似した物質移動性を示すことが期待される;しかしながら、それらは、全体的な構造および組成において非常に異なっている。
【0037】
レクチンおよびIgG分子のタイプおよび供給源における固有の相違にも関わらず、ある種の精製されたレクチンに対する血液型A抗原および血液型B抗原の静的結合能力は、試料、例えば、IVIG原料から抗A抗体および抗B抗体を除去するそれらの能力と相関することが、本明細書においてみられる。IVIG原料からの抗A抗体および抗B抗体の除去率は、それぞれHPレクチンおよびGSI−B4レクチンに対して最も高い結合能力を有するそれらの媒体に対して最大であることが見出された。特に、レクチンに対する媒体の静的結合能力を測定することは、IVIG原料中の抗A抗体および抗B抗体の濃度の低下を測定するために典型的に使用されるフローサイトメトリープロセスよりも非常に迅速であり、複雑ではない。
【0038】
本明細書に開示される実施形態がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記載される。
【0039】
I.定義
用語「結合能力」とは、カラムに充填された、定義された体積の媒体に結合し、定義された条件下で駆動する分子の量を指す。本明細書に記載されるクロマトグラフィー媒体の結合能力は、クロマトグラフィー媒体が設定された流量で媒体の体積あたりに結合することができる抗A抗体または抗B抗体の量である。
【0040】
本明細書に記載される実施形態において、精製されたレクチンは、抗A抗体または抗B抗体を除去するのに適したクロマトグラフィー媒体の結合能力を評価するために使用され;このような結合能力は、抗A抗体または抗B抗体を除去するこのような媒体の能力と相関する。換言すると、特定の精製されたレクチンに対するクロマトグラフィー媒体の結合能力は、本明細書に記載されるように、場合に応じて、抗A抗体または抗B抗体を除去する媒体の有効性を決定するための指標として使用することができる。結合能力は、静的結合能力または動的結合能力として測定することができる。特定の実施形態において、ある種の精製されたレクチンに対する媒体の静的な結合能力は、本明細書において測定される。
【0041】
媒体(例えば、クロマトグラフィー媒体)の「静的結合能力」なる用語は、使用される媒体の体積で割った、媒体によって結合されたタンパク質の量として定義される。クロマトグラフィー媒体の静的結合能力を測定するための例示的な方法は以下の通りである。既知濃度のタンパク質溶液にクロマトグラフィー媒体を接触させた後、クロマトグラフィー媒体へのタンパク質の結合を促進させるために、媒体とともに溶液をインキュベートさせる。インキュベーション時間を(例えば、5分から72時間)変化させることができ、当業者によって、例えば、上清中のたんぱく質の濃度変化が測定できなくなるまで、定期的に上清中のタンパク質の濃度を測定することによって(例えば、280nmで吸光度を測定することによって)容易に決定され得る。クロマトグラフィー媒体に結合したタンパク質と溶液中のタンパク質の間が平衡に達すると、再度、タンパク質溶液の濃度を上清において測定する。次に、静的結合能力は、使用される媒体の体積で割った、タンパク質の初期量(インキュベーション前)−上清中のタンパク質の量(インキュベーション後)によって測定される。
【0042】
特定のクロマトグラフィー媒体の静的結合能力は、一般的に、1つ以上の以下の因子、例えば、タンパク質の濃度、使用されるクロマトグラフィー媒体の量、溶液中の他の成分(塩、有機分子、緩衝液)の濃度、溶液pH、および導電率を含むタンパク質溶液の組成によって影響される。タンパク質溶液の温度によっても影響され得る。これらの変数の全ては、一般的に、2つの異なるクロマトグラフィー媒体間の静的結合能力の比較を可能にするために一定に保持される。用語「静的結合能力」はまた、「飽和結合能力」または「最大結合能力」と呼ばれることがある。
【0043】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、精製されたレクチン分子に対する、血液型A抗原リガンドを含有する媒体または血液型B抗原リガンドを含有する媒体の静的結合能力は、場合に応じて、試料(例えば、IVIG原料)から抗A抗体または抗B抗体を除去する能力を予測または査定する指標として使用される。2つの異なるバッチの媒体または経時的に同じ媒体または異なる供給源からの媒体の静的結合能力を比較することは、媒体の品質について情報を提供するため、特に有用である。換言すると、精製されたレクチン分子(血液型A抗原リガンド媒体の場合においてはHPレクチンまたは血液型B抗原リガンド媒体の場合においてはGSI−B4レクチン)に対する結合能力は、場合に応じて、抗A抗体または抗B抗体を除去する能力と相関するため、結合能力は、異なるバッチの媒体または経時的に同じ媒体または異なる供給源からの媒体の性能を評価し、比較するために使用することができる。したがって、本明細書に記載される方法を用いて、当業者または当該技術分野のエンドユーザーは、媒体のバッチが、同じタイプの媒体の別のバッチと比較して、または経時的に、特に反復洗浄および消毒後に、その性能(すなわち、抗A抗体または抗B抗体を除去する能力)の喪失を示すかどうかを容易に決定することができる。さらに、精製されたレクチンに対する静的結合能力の測定はまた、開発中の媒体を最適化するために使用することができる。
【0044】
一般的に、静的結合能力を以下のように計算することができうる。体積VRの媒体試料は、既知濃度C1と既知体積VMの精製されたレクチン(血液型A抗原リガンド媒体の場合においてはHPレクチンおよび血液型B抗原リガンド媒体の場合においてはGSI−B4レクチン)の溶液とともにインキュベートされる;上清を得て、レクチン(HPまたはGSI−B4)C2の濃度を上清中で測定する;次に、静的結合能力を以下の式を用いて計算する。
【0046】
用語「動的結合能力」は、クロマトグラフィーカラムから出たタンパク質溶液の濃度が特定の濃度、典型的には、開始濃度の所定の割合に達した時点で、フロー条件下でクロマトグラフィーカラムにより結合されたタンパク質の量として定義される。実際には、これは、開始濃度の約10%になる傾向がある。次に、タンパク質のこの集団は、クロマトグラフィーカラムにおいて媒体の体積で除される。
【0047】
特定のクロマトグラフィー媒体の動的結合能力は、一般的に、1つ以上の以下の因子、例えば、タンパク質の濃度、溶液中の他の成分(塩、有機分子、緩衝液)の濃度、溶液pH、および導電率を含む、タンパク質溶液の組成によって影響される。動的結合能力は、カラムが充填される温度により、およびタンパク質溶液がカラムに充填される流量により影響され得る。クロマトグラフィーカラムへのタンパク質溶液の流量の減少は、測定される動的結合能力を増加させる。逆に、クロマトグラフィーカラムへのタンパク質溶液の流量の増加は、測定される動的結合容量を減少させる。クロマトグラフィー媒体の動的能力は、物質移動の全体的な速度によって制限されるため、動的結合能力は、静的結合能力を超えてはならない。
【0048】
用語「上清」は、沈降されたクロマトグラフィー媒体上にある液体として定義される。上清溶液は、スラリー中のクロマトグラフィー媒体を容器またはカラムの底に沈降させることによって得ることができる。沈降プロセスは、クロマトグラフィー媒体のスラリーを遠心分離に供することによって、または振動によって促進することができる。次に、ピペット、シリンジ、またはポンプを介して上清液を別の容器に移すことにより、クロマトグラフィー媒体から分離することができる。さらに、上清はまた、メンブレンまたは多孔性材料を介してクロマトグラフィー媒体のスラリーを濾過させることによって得ることができる。
【0049】
用語「試料」は、本明細書に記載されるように、クロマトグラフィー媒体に結合されることが意図される、少なくとも1つの標的タンパク質(例えば、この場合は抗A抗体または抗B抗体)を含有する溶液と定義される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、抗体または免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、血液型A抗原抗体(すなわち、抗A抗体)である。他の実施形態において、免疫グロブリンは、血液型B抗原抗体(すなわち、抗B抗体)である。試料の例としては、限定されないが、血液、血漿、血漿誘導体、血液製剤、静脈内免疫グロブリン原料(IVIG)が挙げられる。
【0050】
用語「IgG」、「免疫グロブリン」、「Ig」または「抗体」(本明細書において互換的に使用される。)とは、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる基本的な4つのポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味し、これらの鎖は、抗原に特異的に結合する能力を有する、例えば、鎖間のジスルフィド結合によって安定化される。用語「単一鎖免疫グロブリン」または「単一鎖抗体」(本明細書において互換的に使用される。)とは、重鎖および軽鎖からなる2つのポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味し、これらの鎖は、抗原に特異的に結合する能力を有する、例えば、鎖間のペプチドリンカーによって安定化される。用語「ドメイン」とは、例えば、βプリーツシートおよび/または鎖間ジスルフィド結合によって、安定化されるペプチドループを含む(例えば、3から4つのペプチドループを含む。)重鎖または軽鎖ポリペプチドの球状領域を意味する。ドメインは、本明細書において、「定常」ドメインの場合は多様なクラスのメンバーのドメイン内の配列の変動の相対的欠如に基づき、または「可変」ドメインの場合には多様なクラスのメンバーのドメイン内の有意の変動に基づき、「定常」または「可変」とさらに称される。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、多くの場合、抗体またはポリペプチド「領域」として当該技術分野において互換的に称される。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと互換的に称される。抗体重鎖の「定常」ドメインは「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと互換的に称される。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと互換的に称される。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと互換的に称される。
【0051】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、単量体または多量体形態で存在してもよい。
【0052】
用語「クロマトグラフィー」とは、本明細書で使用するとき、試料中の分子(例えば、この場合は抗A抗体および/または抗B抗体)を他の分子から分離しまたは除去する動的分離技術を意味する。典型的には、クロマトグラフィー法において、移動相(液体または気体)は、固定相(通常は固体)媒体(例えば、クロマトグラフィー媒体)を介して分離されまたは除去されるべき分子を含有する試料を移動させる。固定相に対してのパーティションまたはアフィニティーの違いは、試料の他の成分から分子を分離する。
【0053】
用語「アフィニティークロマトグラフィー」とは、本明細書で使用するとき、分離または除去されるべき分子(例えば、抗A抗体および/または抗B抗体)が、分離または除去されるべき分子と特異的に相互作用する別の分子(例えば、固相支持体に固定化された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンド)との相互作用により単離されるというクロマトグラフィーの様式を意味する。アフィニティークロマトグラフィーにおいて使用される媒体は、アフィニティークロマトグラフィー媒体と呼ばれる。
【0054】
用語「媒体」または「クロマトグラフィー媒体」は、本明細書において互換的に使用され、固相支持体に固定化された血液型A抗原リガンドおよび/または血液型B抗原リガンドを有する固相支持体を意味する。
【0055】
本明細書に記載される方法は、2015年9月8日に出願された米国仮特許出願
第62/215,401号に記載されるクロマトグラフィー媒体を含む、抗A抗体および/または抗B抗体の除去に適した任意のクロマトグラフィー媒体の品質を査定するために使用することができる。
【0056】
本明細書に記載される実施形態において、精製されたレクチン溶液は、固相支持体に付着された血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むクロマトグラフィー媒体の結合能力を評価するために使用される。換言すると、特定の精製されたレクチン分子は、抗A抗体または抗B抗体を除去するのに適したクロマトグラフィー媒体の品質を調べるためのモデル分子として用いられる。
【0057】
用語「抗A」または「抗A抗体」とは、Aの血液型またはABの血液型を有する個体において細胞の表面に見出される血液型A抗原に結合する抗体を意味する。したがって、血液由来の試料(例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料)においてこのような抗体を除去することが望ましい。
【0058】
用語「抗B」または「抗B抗体」とは、Bの血液型またはABの血液型を有する個体において細胞の表面に見出される血液型B抗原に結合する抗体を意味する。したがって、血液由来の試料(例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料)においてこのような抗体を除去することが望ましい。
【0059】
用語「媒体の品質」とは、本明細書で使用するとき、試料(例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料)から望ましくない実体(例えば、抗A抗体または抗B抗体)を選択的に除去するクロマトグラフィー媒体の能力を意味する。本明細書で提供される方法は、特定の精製されたレクチン分子に対する媒体の結合能力を測定することにより、異なる媒体(例えば、異なるバッチの同じタイプの媒体または異なる供給源由来の同じタイプの媒体または開発中もしくは製造プロセス中に得られた媒体試料またはプロトタイプ)の相対的な品質を評価および/または監視するのに特に有用である。換言すると、精製されたレクチン(すなわち、血液型A抗原リガンドを含有する媒体の場合においてはHPレクチンおよび血液型B抗原リガンドを含有する媒体の場合においてはGSI−B4レクチン)に対する異なるバッチの同じタイプの媒体または異なる供給源から得られた媒体の相対的な結合能力は、抗A抗体または抗B抗体を選択的に除去する媒体の能力(すなわち、該媒体または媒体試料の相対的な品質)を示す。したがって、特定の精製されたレクチン分子に対する媒体の結合能力は、同じ媒体の他のバッチ、または経時的に、例えば、製造、使用、洗浄および消毒中に同じ媒体の品質と比較して、媒体の全体的な品質を見分けるために使用することができる。
【0060】
したがって、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたHPレクチンに対してより低い結合能力を有する抗A抗体を除去するように設計されたあるバッチの媒体は、試料からより低い割合の抗A抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより貧弱な品質のものである。反対に、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたHPレクチンに対してより高い結合能力を有する抗A抗体を除去するように設計されたあるバッチの媒体は、試料からより高い割合の抗A抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより良好な品質のものである。同様に、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたGSI−B4レクチンに対してより低い結合能力を有するあるバッチの媒体は、試料からより低い割合の抗B抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチと比較してより貧弱な品質のものである。反対に、以前に製造されたバッチの同じタイプの媒体よりも、精製されたGSI−B4レクチンに対してより高い結合能力を有する媒体は、試料からより高い割合の抗B抗体を除去することが期待されるため、以前のバッチよりも良好な品質のものである。
【0061】
一般的に、媒体が試料から所望の割合の抗A抗体または抗B抗体を除去する能力を保持していることを確実にするために、クロマトグラフィー媒体の品質をその耐用年数中に監視することが必要である。例えば、クロマトグラフィー媒体の品質は、反復使用後、例えば、過酷な洗浄および/または消毒条件への曝露後に悪影響を受ける場合があり、試料から所望の割合の抗A抗体または抗B抗体を除去する能力が低下する。抗A抗体または抗B抗体を除去するように設計されたあるバッチの媒体の品質は、媒体が反復して使用されまたは過酷な洗浄および/もしくは消毒条件に曝露される前後で、それぞれ、精製されたレクチン、HPおよびGSI−B4に対する媒体の結合能力を測定することにより監視され得る。精製されたレクチンに対する媒体の結合能力が以前の測定と比較して低下している場合、その媒体が、この時点で、より低い割合の抗A抗体または抗B抗体を除去することを示す。
【0062】
したがって、本明細書に記載される方法は、経時的に抗Aまたは抗B除去についてクロマトグラフィー媒体の品質を査定し、ならびに媒体の2つの別個のバッチの品質を比較するのに有用である。
【0063】
さらに、本明細書に記載される方法はまた、製造または開発中の媒体を最適化するために使用することができる。換言すると、プロトタイプ媒体は、場合に応じて、単に、精製されたレクチンに対するその結合能力を決定することによって、抗A抗体または抗B抗体を除去する能力について評価され得て、該媒体は、必要に応じて、精製されたレクチンに対するその結合能力に基づいてさらに改善または最適化され得る。例えば、プロトタイプ媒体が作製されると、その媒体の品質は、さらなる最適化または修飾を必要とするかどうかを決定するために、本明細書に記載される方法を用いて査定することができる。このように、媒体を種々に繰り返すことにより開発中に品質について容易に評価することができ、媒体の最終バージョンがもたらされる。
【0064】
さらに、本明細書に記載される方法はまた、血液型A抗原リガンド媒体と血液型B抗原リガンド媒体の間を区別するのに有用である。オペレーターまたはエンドユーザーは、製造中に、さらには使用する場合に2つの媒体の特定を間違え易く、これは、2つのタイプの媒体が、多くの場合、同じ場所で製造され、さらには保存され、目視検査の際に実質的に同じように見えるためである。本明細書に記載される方法は、これらの2つのタイプの媒体間を、すなわち、媒体が抗A抗体または抗B抗体に結合するかどうかが未知である場合に、区別するための方法を提供する。例えば、未知の媒体の結合能力(すなわち、血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうか)は、精製されたHPレクチンに対して、および別に精製されたGSI−B4レクチンに対して評価され得る。血液型A抗原リガンドを有する未知の媒体は、精製されたモノクローナルHPレクチンに対して顕著な結合能力を有し、精製されたGSI−B4レクチンに対して相対的に低いまたは無視できる程度の結合能力を有する。血液型B抗原を有する未知の媒体は、精製されたGSI−B4レクチンに対して顕著な結合能力を有し、精製されたHPレクチンに対して相対的に低いまたは無視できる程度の結合能力を有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、HPレクチンまたはGSI−B4レクチンに対する未知の媒体の結合能力を、レクチン(例えば、異なるバッチから)に対する同じタイプの既知の媒体の結合能力と比較して、血液型A抗原リガンドまたは血液型B抗原リガンドを含むかどうかを決定することができる。
【0066】
II.例示的な血液型抗原媒体
本明細書に記載される方法は、血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体のいずれかと結合する媒体の品質を査定するのに有用である。
【0067】
本明細書中に記載される方法は、血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体に結合することが知られている、任意の市販の媒体または開発された媒体を評価するために使用されてもよい。さらに、本明細書に記載される方法はまた、媒体が血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体に結合するかどうかが未知である事象において、媒体のタイプ間を区別するために使用することができる。
【0068】
現在市販されている可能性があり、またはかつて市販されていた媒体の例としては、例えば、Glycorex Transplantation AB(Soelvegatan 41、223 70 Lund、Sweden)によって提供されるGlycosorn ABO AカラムおよびBカラム;Dextra Laboratories Ltd(Science and Technology Centre、Earley Gate、Whiteknights Road、Reading、RG6 6BZ、United Kingdom)によって提供される血液型A三糖セファロース−4B−AFF201、血液型A三糖セファロース−FF−AFF101、血液型B三糖セファロース−4B−AFF202、および血液型B三糖セファロース−FF−AFF102;Chembiomed Ltd(Edmonton、Alberta、Canada)によって提供されるSynsorb AおよびB媒体;およびLectinity Holding、Inc.(Moscow、Russia)によって提供されるAllotran AおよびB媒体が挙げられる。
【0069】
一般的に、任意の媒体は、本明細書に記載される方法を用いて評価することができ、媒体は、固相支持体に直接的にまたは間接的に(リンカーもしくはスペーサーを介して)付着された血液型A抗原または血液型B抗原のエピトープに対応するリガンド(典型的には、オリゴ糖ベースのリガンド)を含む。例示的な媒体はまた、本出願と同日に出願された同時係属中の仮特許出願第P15/178号
(2015年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/215401号)に見出すことができる。
【0070】
例示的なオリゴ糖系リガンドを以下に示す。構造において使用される略語は、以下のように定義される:Gal=D−ガラクトース;Fuc=L−フコース;GalNAc=N−アセチル−D−ガラクトサミン;GlcNAc=N−アセチル−D−グルコサミン;R=リガンドから固相支持体までの連結であるが、リガンド構造上の他の位置での連結もまた使用されてもよい。
【0071】
血液型A抗原リガンドの例としては、限定されないが、以下の構造を有する分子が含まれる:三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ−R)、1型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GlcNAcβ1−R)、2型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,4GlcNAcβ1−R)、3型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcα1−R)、および4型三糖抗原A(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcβ1−R)。
【0072】
血液型B抗原リガンドの例としては、以下の構造を有する分子が含まれる:三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ−R)、1型三糖抗原B(GalNAcα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GlcNAcβ1−R)、2型三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ1,4GlcNAcβ1−R)、3型三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcα1−R)、および4型三糖抗原B(Galα1,3[Fucα1,2]Galβ1,3GalNAcβ1−R)。
【0073】
上述したリガンドの1つ以上は、適切な固相支持体に付着されてもよく、それにより、血液型A抗原抗体および/または血液型B抗原抗体の除去に適したクロマトグラフィー媒体をもたらす。
【0074】
固相支持体の例としては、限定されないが、アルミナ、シリカ、セライト、セラミックス、金属酸化物、多孔質ガラス、孔制御ガラス、炭水化物ポリマー、多糖、アガロース、セファロース、セファデックス、デキストラン、セルロース、デンプン、キチン、ゼオライト、合成ポリマー、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸無水物、メンブレン、中空糸および繊維が挙げられる。いくつかの実施形態において、固相支持体は、ポリマーの固相支持体であり、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む。特定の実施形態において、固相支持体は、ポリビニルエーテル系固相支持体である。いくつかの実施形態において、固相支持体は、ビーズ形態(例えば、ポリビニルエーテル系ビーズ)である。
【0075】
固相支持体へのリガンドの付着を容易にするために、無数の官能基を使用することが可能である。このような官能基の非限定的な例としては、アミン、チオール、フラン、マレイミド、エポキシ、アルデヒド、アルケン、アルキン、アジド、アズラクトン、カルボキシル、活性化エステル、トリアジン、および塩化スルホニルが挙げられる。特定の実施形態において、アミン基を官能基として使用する。
【0076】
固相支持体はまた、リガンドへの適切なリガンドまたは複数のリガンドの固定化を促進する、上記の1つ以上の官能基を含むように修飾されおよび/または活性化され得る。特定の実施形態において、カルボキシル基およびアルデヒド基が官能基として用いられる。
【0077】
III.結合能力を測定するためのアッセイ
本明細書に記載される方法は、試料、例えば、血液、血液製剤、血漿、血漿誘導体またはIVIG原料中の血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体に結合するまたは結合することが期待される、(例えば、製造プロセス中もしくは製造プロセス後または使用後に)媒体の相対的な品質を査定するのに有用である。本明細書に記載される方法は、経時的にまたは2つの異なるバッチの媒体もしくは異なる供給源からの媒体を比較するときのいずれかで、媒体の相対的な品質を査定するために、精製されたレクチン分子に対する媒体の結合能力の測定に、少なくとも部分的に依存する。したがって、本明細書に記載される方法は、異なるバッチの同じタイプの媒体間または使用の耐用年数全体で同じバッチの媒体間またはさらには異なる供給源の媒体間を区別するために使用され得る。一般的に、特定の分子(例えば、レクチン)に対する媒体の結合能力を以下のように測定することができる。該分子を含有する溶液を、適切な条件下で、媒体への分子の結合を促進するのに適した期間、適した媒体と接触させる。その後、媒体に結合している分子は、残りの試料溶液から分離され、残りの試料溶液中の分子の濃度(すなわち、非結合分子の濃度)が測定される。溶液中の分子の濃度は、当該技術分野において公知のいくつかの異なる方法によって決定することができる。例えば、溶液の吸光度は、特定の波長で測定することができ、分子の濃度は、その波長で分子(例えば、タンパク質)の吸光係数と組み合わせで計算することができる。蛍光、UV、またはラマン吸収は、タンパク質濃度を決定するために測定することができる。さらに、溶液中の分子の濃度はまた、分析用クロマトグラフィーによって決定することができる。次に、検出の強度は、分子の濃度に対して相関させられる。
【0078】
本明細書に記載される実施形態において、精製されたHPレクチンまたはGSI−B4レクチンに対する血液型Aリガンド媒体または血液型Bリガンド媒体の結合能力をそれぞれ測定し、次に、これは、場合に応じて、抗A抗体または抗B抗体の実際の除去に対してその媒体がどのように実行し得るのかを示す。
【0079】
実施形態は、限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例証される。本出願全体で引用されている全ての参考文献、特許および公開された特許出願、ならびに図面を参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0080】
[実施例1]血液型A抗原三糖リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の合成
これは、血液型A抗原リガンド媒体を製造するために使用することができる例示的な方法である。血液型A抗原三糖(TriA)リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体は、独自のポリビニルエーテル系ビーズ(すなわち、本明細書で使用される固相支持体)にTriAリガンドを固定化することにより合成された。TriAリガンドの具体的な構造を
図1に示す。TriAリガンドには、この場合、ベースビーズ上に固定化するために使用されるアミン基を有するリンカーも含まれる。ビーズは、リガンド上でアミン基と反応させることができる反応性基、例えば、エポキシ基、カルボキシル基またはアルデヒド基を含むように活性化される。次に、TriAリガンドは、第一級アミン(−NH2)基とのカップリング反応によりビーズ上に固定化される。
【0081】
[実施例2]血液型B抗原三糖リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体の合成
別の実験において、血液型B抗原リガンド媒体を以下のように作製した。血液型B抗原三糖(TriB)リガンドを含有するクロマトグラフィー媒体は、独自のポリビニルエーテル系ビーズ(すなわち、本明細書で使用される固相支持体)にTriBリガンドを固定化することにより合成された。TriBリガンドの具体的な構造を
図2に示す。TriBリガンドには、この場合、ビーズ上に固定化するために使用されるアミン基を有するリンカーも含まれる。上記のTriAリガンドの場合のように、ビーズは、リガンド上でアミン基と反応させることができる反応性基、例えば、エポキシ基、カルボキシル基またはアルデヒド基を含むように活性化される。次に、TriBリガンドは、第一級アミン(−NH2)基とのカップリング反応によりベースビーズ上に固定化される。
【0082】
[実施例3]媒体の品質の指標としてヘリックス・ポマチア(HP)レクチンに対する血液型A抗原三糖リガンド媒体の能力
この実施例は、精製されたHPレクチン(Sigma Aldrich、Cat#L3382)に対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体の能力が、例えば、製造中および製造後、媒体の品質を評価するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。TriAリガンドの濃度を、固体支持体とのカップリング反応中に変化させた。したがって、媒体は、媒体製造プロセス中に生じ得る変化のタイプをシミュレートする、様々な量のTriAリガンドを有する必要がある。その後、HPレクチンに対する様々なTriAリガンド媒体の静的結合能力を測定した。この値は、IVIG原料からの抗A IgG抗体の除去率と比較された。
【0083】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLの10mM PBS緩衝液または対照については0.50mLの10mM PBS緩衝液が充填された。その後、10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μl媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加され、次に、PBS緩衝液中の1mg/mLのHPレクチン溶液の0.6mLが添加された。さらに0.4mlのPBSを全ての管に添加した。管を4時間、室温で回転させた。その後、微小遠心管を遠心分離に供し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、HPレクチンに対する媒体の静的結合能力を計算した。HPレクチンの静的結合能力は、静的結合条件下、IVIG原料からの抗A IgG抗体の除去率と比較された。
【0084】
IgG除去の測定に関して、代表的なIVIG原料における血液型A抗原ポリクローナルIgG抗体(抗A)レベルは、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。A型の赤血球は、代表的なIVIG原料とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgG(Alexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、部品番号:109−546−088、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA)を用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、実施例1において合成された血液型A三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、原料における抗AポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0085】
製造中におよびさらにはバッチ間で典型的に観察される媒体の能力の変化をシミュレートするために、試料は、合成ステップにおいて三糖リガンド充填量を変化させることによって合成された。表2に列挙された試料のリガンド充填量は、以下の順番であった:媒体#1<媒体#2<媒体#3。固相支持体だけを対照として使用し、この場合には、ポリエーテル系ビーズであった。以下の表2に要約するように、この実験は、HPレクチンに対する様々なTriAリガンド媒体の静的結合能力が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗A抗体の除去率と相関することを実証する。HPレクチンに対するより高い能力を有するTriAリガンド媒体は、IVIG原料からより多くの抗A IgG抗体を除去することを見出した。HPレクチンに対するより低い静的結合能力を有するTriAリガンド媒体は、IVIG原料からより少ない抗A IgG抗体を除去することも見出した。
【0086】
2つの分子、例えば、IgGおよびHPレクチンは非常に異なるタイプの分子であるため、HPレクチンに対するTriAリガンド媒体の静的結合能力は、抗A IgG抗体の除去率と相関することを見出すことは、幾分予想されなかった。
【0087】
【表2】
【0088】
[実施例4]媒体の品質の指標としてのグリフォニア・シンプリシフォリア−イソレクチンB4(GSI−B4)レクチンに対する血液型B抗原三糖リガンド媒体の結合能力
この実施例は、GSI−B4レクチン(Sigma Aldrich、Cat#L3019)に対する血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の能力が、例えば、製造中および製造後、媒体の品質を評価するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。TriBリガンドの濃度は、製造中に見られる変化をシミュレートするために、固相支持体とのカップリング反応中に変化させた。GSI−B4レクチンに対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定し、IVIG原料からの抗B IgG抗体の除去率と比較した。2つの値が相関することが判明した場合、GSI−B4レクチンに対するTriBリガンド媒体の能力の測定は、IVIG原料から抗B IgG抗体を除去する媒体の能力を評価するために使用することができる。その後、TriB媒体の品質に対する製造規格は、GSI−B4レクチンに対する媒体の能力に基づいて確立され得る。
【0089】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLのPBS緩衝液または対照については0.50mLのPBS緩衝液が充填された。その後、10mM PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μL媒体体積)は、対照を除いて、微小遠心管に添加され、次に、PBS緩衝液中の1mg/mLのGSI−B4レクチン溶液の0.6mLが添加された。さらに0.4mlのPBSが全ての管に添加された。管を16時間、室温で回転させた。その後、微小遠心管を遠心分離機に配置し、次に、上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、GSI−B4レクチンに対する媒体の静的結合能力を計算した。GSI−B4レクチンの静的結合能力は、静的結合条件下、IVIG原料からの抗B IgG抗体を除去するために同じ媒体を用いた場合に得られた除去率と比較された。
【0090】
IgG除去の測定に関して、代表的なIVIG原料における血液型B抗原ポリクローナルIgG抗体(抗B)レベルは、確立されたフローサイトメトリー法(Christensson,M.ら、Transfusion、1996年、36巻、500−505頁)によって決定された。B型の赤血球は、代表的なIVIG原料とともに所定時間インキュベートされ、過剰に洗浄された。次に、上述したように、細胞は、蛍光標識された抗ヒトIgGを用いて染色され、フローサイトメトリー(Guava 5HT、EMD Millipore)に供された。正味の平均蛍光強度(MFI)値を用いて、実施例2において合成された血液型B三糖抗原リガンド媒体との接触前後に、原料における抗BポリクローナルIgG濃度を比較した。
【0091】
抗B IgG抗体を除去する媒体の能力の変化をシミュレートするために、試料は、合成ステップにおいて三糖リガンド充填量を変化させることによって合成された。表3に列挙された試料のリガンド充填量は、以下の順番であった:媒体#4<媒体#5<媒体#6。固相支持体だけを対照として使用し、この場合には、ポリエーテル系ビーズであった。以下の表3に要約するように、この実験は、GSI−B4レクチンに対する様々なTriBリガンド媒体の静的結合能力が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗B IgG抗体の除去率と相関することを実証する。GSI−B4レクチンに対するより高い能力を有するTriBリガンド媒体は、IVIG原料からより多くの抗B IgG抗体を除去することを見出した。GSI−B4レクチンに対するより低い静的結合能力を有するTriBリガンド媒体は、IVIG原料からより少ない抗B IgG抗体を除去することも見出した。
【0092】
2つの分子、例えば、IgGおよびGSI−B4レクチンは非常に異なるタイプの分子であるため、GSI−B4レクチンに対するTriBリガンド媒体の静的結合能力は、抗B IgG抗体の除去率と相関することを見出すことは、幾分予想されなかった。
【0093】
【表3】
【0094】
[実施例5]HPレクチンおよびGSI−B4レクチンに対する媒体の相対的な能力を測定することによる血液型A抗原三糖リガンド媒体と血液型B抗原三糖リガンド媒体の間を区別する方法
この実施例は、HPレクチンおよびGSI−B4レクチンに対する血液型A抗原三糖(TriA)リガンド媒体および血液型B抗原三糖(TriB)リガンド媒体の相対的な能力は、これらのタイプの媒体間を区別するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。
【0095】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLのPBS緩衝液または対照については0.50mLのPBS緩衝液が充填された。その後、PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μL媒体体積)は、対照溶液を除いて、微小遠心管に添加された。PBS緩衝液中の1.0mg/mLのHPレクチン溶液の0.6mLとPBS緩衝液中の1.0mg/mLのGSI−B4レクチン溶液の0.6mLが全ての管に添加された。さらに0.4mlのPBS緩衝液を遠心管に添加した。次に、管をHPレクチンおよびGSI−B4レクチンのそれぞれについて、4時間および16時間、室温で回転させた。微小遠心管を遠心分離機に配置し、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを用いて遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、次に、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、HPレクチンおよびGSI−B4レクチンに対する媒体の静的結合能力を計算した。
【0096】
以下の表4に要約するように、この実験は、HPレクチンとGSI−B4レクチンの両方に対する媒体の相対的な結合能力が、これらのタイプの媒体間を区別するために使用することができることを実証する。具体的には、TriAリガンド媒体は、HPレクチンに対して顕著な結合能力を有し、一方、GSI−B4レクチンに対してはほとんど無視できる程度の結合能力を有することが見出された。反対に、TriBリガンド媒体は、GSI−B4レクチンに対して顕著な結合能力を有し、一方、HPレクチンに対してはほとんど無視できる程度の結合能力を有した。したがって、媒体試料の同定が未知であり、抗A抗体または抗B抗体の除去に適しているかどうかが未知である場合において、HPレクチンおよびGSI−B4レクチンに対する媒体試料の結合能力は、本明細書に記載されるように測定され、それにより、抗A抗体または抗B抗体の除去に適しているかどうかを決定することがきる。
【0097】
【表4】
【0098】
[実施例6]媒体の品質の指標としてのグリフォニア・シンプリシフォリア(GS−I)レクチンに対する血液型A抗原三糖リガンド媒体および血液型B抗原三糖リガンド媒体の能力
この実施例は、GS−Iレクチン(Sigma Aldrich、L2380)に対する血液型A抗原三糖および血液型B抗原三糖(TriAおよびTriB)リガンド媒体の能力が、例えば、製造中および製造後、媒体の品質を評価するために使用することができることを実証する代表的な実施例である。GS−Iに対する様々なTriAリガンド媒体およびTriBリガンド媒体の静的結合能力を測定する。次に、この値は、IVIG原料からの抗A IgG抗体および抗B IgG抗体の除去率と比較される。2つの値が相関することが見出される場合、GS−Iレクチンに対するTriAリガンド媒体とTriBリガンド媒体の能力の測定は、IVIG原料から抗A IgG抗体および抗B IgG抗体を除去する媒体の能力を評価するために使用することができる。その後、TriA媒体およびTriB媒体の品質に対する製造規格は、GS−Iレクチンに対する媒体の結合能力に基づいて確立され得る。
【0099】
1セットの2.0mL微小遠心管には、0.35mLのPBS緩衝液または対照については0.50mLのPBS緩衝液が充填された。その後、PBS緩衝液中の媒体の10%懸濁液の0.15mL(15μG媒体体積)は、対照溶液を除いて、微小遠心管に添加された。PBS緩衝液中の1.0mg/mLのGS−Iレクチン溶液の0.6mLが全ての管に添加され、さらに0.4mlのPBSが全ての管に添加された。管を16時間、室温で回転させた。その後、微小遠心管を遠心分離機に配置し、次に、得られた上清を、0.22ミクロンメンブレンを介して遠心濾過装置に移した。装置を遠心分離に供し、濾液の吸光度を280nmで測定した。その後、各々の試料溶液の吸光度を用いて、GS−Iレクチンに対する媒体の静的結合能力を計算した。GS−Iレクチンの静的結合能力は、静的結合条件下、IVIG原料からの抗A抗体および抗B抗体の除去率と比較された。
【0100】
以下の表5に要約するように、この実験は、GS−Iレクチンに対する様々なTriAリガンド媒体およびTriBリガンド媒体の静的結合能力が、静的結合条件下でIVIG原料からの抗A IgG抗体および抗B IgG抗体の除去率と相関することを実証する。GS−Iレクチンに対する有意な結合能力を有するTriAリガンド媒体およびTriBリガンド媒体は、それぞれ、IVIG原料から有意な量の抗A IgG抗体および抗B IgG抗体を除去することも見出した。
【0101】
【表5】
【0102】
[実施例7]HP−1レクチンおよびGSI−B4レクチンの結合能力に基づく媒体の混合物の生成
本明細書で見られるように、精製されたHP−1レクチンおよびGSI−B4レクチンに対する血液型A抗原媒体または血液型B抗原媒体の結合能力は、それぞれ、どの程度の媒体が、試料(例えば、血液、血液製剤、血漿またはIVIG原料)からの血液型A抗原抗体または血液型B抗原抗体の除去に対して実際に実施し得るかを査定または予測するための良好な指標である。
【0103】
レクチンに対する結合能力測定は、適切な比率のこのような媒体の混合物を生成させるために使用されてもよく、次に、これは、1つのクロマトグラフィーステップにおいて試料から血液型A抗原抗体と血液型B抗原抗体の両方を除去するために使用することができる。
【0104】
これは、一般的に、血液型A抗原抗体および血液型B抗原抗体の量が試料ごとに変化する傾向があるため、特に有用である。したがって、ある試料からこのような抗体の除去について十分に機能し得る媒体の混合物は、別の試料の場合にも同様に機能しない可能性がある。
【0105】
本明細書に記載される方法は、その試料中の抗A抗体および抗B抗体の量を単に知ることによって、試料について十分に機能する媒体の混合物を設計するために使用することができる。
【0106】
例えば、HPレクチンおよびGSI−B4レクチンに対する媒体の結合能力は、それぞれ、試料から抗A抗体または抗B抗体の除去と相関するため、試料中の抗A抗体および抗B抗体のレベルまたは量が判ると、媒体の混合物は、試料から所望量の抗A抗体および/または抗B抗体を除去するのに適した血液型A抗原媒体と血液型B抗原媒体の比率を有するように設計され得る。
【0107】
本明細書は、参照により本明細書に組み込む、本明細書中で引用される参考文献の教示を考慮することによって最も完全に理解される。本明細書中の実施形態は、実施形態の例証を提供するものであり、範囲を限定するものと解釈すべきでない。当業者(熟練者)は、他の多くの実施形態が本明細書に包含されることを容易に認識する。全ての刊行物および参考資料を、参照によりその全体を組み込む。参照により組み込む材料が本明細書と矛盾するまたは相反する範囲まで、本明細書は任意のこのような材料に取って代わる。本明細書の任意の文献の引用は、このような文献が先行技術であると認めるものではない。
【0108】
特記しない限り、成分量、細胞培養、処理条件などを表している、特許請求の範囲を含んだ本明細書中で使用される全ての数字は、全ての場合に用語「約」により修飾されているものと解釈すべきである。したがって、反対のことを特記しない限り、数値パラメーターは、近似値であり、本明細書に開示される実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変動することができる。特記しない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連のあらゆる要素を指すと解釈すべきである。当業者は、通常の実験を超えない実験を使用して、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【0109】
本明細書に開示されている実施形態の多数の修飾および変更は、当業者に明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなしに行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例としてのみ提供され、いかなる方法でも限定するものでない。明細書および実施例は、以下の特許請求の範囲によって示される開示の真の範囲および精神とともに、単なる例示としてみなされることが意図される。