特許第6348196号(P6348196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6348196眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム
<>
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000002
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000003
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000004
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000005
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000006
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000007
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000008
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000009
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000010
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000011
  • 特許6348196-眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348196
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/107 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   A61B3/10 K
【請求項の数】28
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-25710(P2017-25710)
(22)【出願日】2017年2月15日
(62)【分割の表示】特願2014-511841(P2014-511841)の分割
【原出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2017-80599(P2017-80599A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】102011102355.4
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バブリッツ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ、ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ビューレン、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ベルクナー、ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー、ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】フックス、リコ
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−500056(JP,A)
【文献】 特表平04−505411(JP,A)
【文献】 特開2004−033379(JP,A)
【文献】 特開平01−191801(JP,A)
【文献】 米国特許第05405659(US,A)
【文献】 特開昭60−256432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステムであって、
角膜を照明するためのフレネル構造を有するエレメントと、
照明光線路中に配置された照明ユニットと、
検出光線路中に配置された画像記録ユニットと、
制御および評価ユニットと、
眼の角膜に異なる角度で前記照明ユニットの光を結像する半径の異なるリング状の構造と、2つの方向に視準化された多数の部分波を生成するファセットとを含むフレネルアキシコンレンズ(1)とを備え、
該画像記録ユニット(7)は、結像システム(7.1)と画像センサ(7.2)とを含み、かつ距離に依存しないテレセントリックな画像検出を行うように構成されて、検出画像中にリング状の連鎖点が得られることを特徴とするシステム。
【請求項2】
半径の異なるリング状の前記構造は、ファセット角の異なるファセット(1.3)の形態で前記フレネルアキシコンレンズ(1)の表側および裏側(1.1、1.2)のうちの少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)をリング状の平面波により全面で照明するための光学エレメントと、前記照明ユニットと前記フレネルアキシコンレンズ(1)との間に配置され、照明光線路と検出光線路とを分離するための光学エレメントとを備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)のファセット(1.3)のファセット角は、光の偏向が、偏角の小さい場合には光屈折の原理に基づき、偏角が大きい場合には光反射と光屈折の組み合わせに基づくように計算されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記フレネルアキシコンレンズのファセット(1.3)のファセット角は、光の偏向が、偏角の大きい場合には全てのゾーンに対して共通の面における光反射の原理に基づくように計算されており、そのために該フレネルアキシコンレンズ(1)は付加的なミラー面(1.5)を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記照明ユニットは1つの光源(2)を有し、該光源に直径の可変な絞り(2.1)が前置されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記照明ユニットは、発光面積の大きさの異なる複数の光源(2)を有し、該光源は交互に使用することができることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)をリング状の平面波により全面で照明するための前記光学エレメントは、コリメータレンズ(3)であることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の裏側は、コリメータレンズ(3)を省略できるように構成されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
コリメータレンズ(3)の焦点距離に対する光源(2)の発光面積の比は、1:20から1:1000、とりわけ1:100から1:250の間の値を有することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
照明光線路と検出光線路とを分離するための前記光学エレメントは、部分反射性およびダイクロイックのうちの一つの面を有する平面プレート(4)またはプリズム(4)であることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項12】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の裏側は、照明光線路と検出光線路とを分離するための前記光学エレメントを省略できるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項13】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の裏側は、照明光線路と検出光線路とを分離するための前記光学エレメントも、コリメータレンズ(3)も省略できるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項14】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の表側(1.1)のファセットは、結像誤差を補正すること、および照明光を視準化することのうちの少なくとも一つのために非球面作用を有するように構成されていることを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
テレセントリックな画像検出のために設けられた前記フレネルアキシコンレンズ(1)の中央ゾーン(1.4)は、ホールまたは平面として構成されていることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
テレセントリックな画像検出のために設けられた前記フレネルアキシコンレンズ(1)の中央ゾーン(1.4)は、前記画像記録ユニット(7)の結像システム(7.1)を省略できるように構成されていることを特徴とする請求項1から15までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
角膜(5.1)に入射する光束の幅は、眼(5)の可及的に大きな自由調整領域が前記システムの前方で達成できるように構成されていることを特徴とする請求項1から16までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
自由調整領域はゾーンに対して、該ゾーンの影効果が検出され、評価され、眼の前方での前記システムの自動ないし半自動位置決めに対する制御信号として利用されるように異なって構成されていることを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の光学的に作用する面は、散乱作用を有していないことを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)は、回転対称に構成されていないことを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の光学的にアクティブな2つの面の一方は、非回転対称の構造を付加的に有することを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の光学的にアクティブな2つの面の一方は、回折格子の形態の回折構造を付加的に有し、該回折格子のグリッドラインは半径方向に延在し、該回折格子のグリッドベクトルは各個所においてアジマス方向に延在することを特徴とする請求項1から21までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
付加的に設けられた回折格子は、局所的に異なる周波数を有することができることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
フレネルアキシコンレンズ(1)の光学的にアクティブな2つの面の一方は、半径方向に延在する正弦波状の構造を付加的に有することを特徴とする請求項1から23までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記正弦波状の構造の変調深度は数μmから数100μmの間であり、前記正弦波状の構造の波長は0.1mmから20mmの間、好ましくは約2mmであることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記フレネルアキシコンレンズ(1)の光学的にアクティブな2つの面の一方は、互いに隣接する多数の平面ファセットの形態の構造を付加的に有することを特徴とする請求項1から25までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
ファセット構造の変調深度は数μmから数100μmの間であり、前記ファセット構造の波長は0.1mmから20mmの間、好ましくは約2mmであることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記互いに隣接する多数の平面ファセットは、自由形状面として構成されていることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の角膜の表面形状を、空間的に分布されたパターン、とりわけプラチド円板に類似するリングパターンの鏡像を評価することにより決定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラチド円板とは、規則的間隔を有する複数の円の形態にある既知のパターンを形成し、眼に結像される被照明円板である。診断は、角膜の表面上の円の反射を観察することに基づいて行われ、角膜表面上には円が同様に規則的に結像されることになる。
【0003】
ここでは角膜表面上に、同心のプラチドリングの対称反射が観察されるべきである。これに対してリングの非対称の形状が発見されると、これは角膜表面が基準表面から偏差していることの示唆である。角膜表面の不規則性は、例えば乱視の場合に観察されるが、しかし角膜が機械的または科学的に損傷している場合にも観察される。
【0004】
概念「角膜曲率測定」とは、眼の角膜の形状および形態を測定することであると理解される。角膜曲率計(ケラトメータとも)により、角膜の曲率半径が中央および周辺部で検出される。測定された半径は、例えばコンタクトレンズを適合するための基礎である。角膜曲率測定の特別の形態はトポグラフィである。ここでは特別な方法により、角膜の中央および周辺部の曲率半径が測定され、数学的に評価される。
【0005】
ヒトの眼の角膜の表面測定は、角膜が透明であり、可視光が有意義な程度に後方散乱されないため困難であることが判明している。
角膜は眼の最前部分であり、前方に向かって湾曲した特殊な幾何形状を有する。角膜前面のこの幾何学的形状を全体として検出するために、トポグラフィを用いる。ここで前面形状は変化することがあり、非常に重要で一般的に最もよく知られているものの2つは、球面(円錐形の)角膜と乱視(湾曲した)角膜である。
【0006】
40ジオプターを超える屈折率により、角膜は眼に入射する光の屈折に対する重要なファクタである。ここで角膜の屈折率は、主に角膜表面の形状、とりわけその湾曲に依存する。角膜表面の形状の決定は、とりわけ以下の使用分野で非常に重要である:
・乱視の低減に関連する白内障手術、
・コンタクトレンズ適合、
・円錐角膜の識別、
・乱視の角膜的決定、
・屈折矯正手術、そして
・適切な眼鏡の適合、
である。
【0007】
外科的適用では眼の角膜の表面形状を、外科的介入の前後で決定することが重要である。なぜなら表面形状は、角膜の非正常形状または異常形状の識別に適するからである。
いわゆるケラトメータまたはケラトグラフを用いた角膜表面形状の測定方法は、従来技術から長い間公知である。角膜に結像されたプラチド円板の同心リングが角膜の涙液膜により反射され、カメラにより記録され、評価される。角膜の湾曲に依存して、カメラによって検知された反射リングパターンが歪む。この反射信号から湾曲を検出するためには、リングの歪みを既知の形状と比較しなければならない。この既知の形状は通常、半径7.8mmの球として選択されている。この種の解決手段は、例えば特許文献1に記載されている。
【0008】
トポグラフィで同心リングを形成するために使用されるプラチド円板は、この場合、必ずしも平坦な円板である必要はない。この種の平坦なプラチド円板は従来技術で十分に公知であり、例えば特許文献2および特許文献3に記載されている。とりわけロート状のプラチド円板(特許文献4、特許文献5)または球面湾曲したプラチド円板(特許文献6)も普及している。
【0009】
特許文献7には、ディスク状のフレネルシリンダレンズに基づく角膜形状測定のための解決手段が記載されている。リング構造を眼に投影するために、フレネルシリンダレンズの各リングが個別にリング状にリングシリンダレンズによって照明される。ディスク状の構造により、一方では実現可能なリングの数が制限され、他方ではリング数の増大とともにこの形式の照明を実現するのが困難になる。
【0010】
特許文献8および特許文献9には、スリット照明ユニットにより補充された角膜曲率計(ケラトメータとも)のための解決手段が記載されている。眼の角膜の表面曲率を測定するためにプラチドリングシステムが結像される一方、スリット照明ユニットにより眼の断層画像が形成され、これらの断層画像から眼の角膜の厚さを決定することができる。この結合の結果として、角膜−厚さ−プロフィールを求めることができる。
【0011】
確かにこの方法は、角膜表面形状を測定するためにただ1つの記録しか必要としないという利点を有し、この記録は空間解像度が高い場合には多量のデータ点を含む。ただ1つの記録しか必要ないことにより、眼の運動が測定の精度に影響しない。この種の解決手段の第1の欠点は、カメラにより記録された画像が、眼の写像、とりわけ眼の虹彩と、角膜前方の涙液膜に投影されたプラチドリングの反射像とを重ね合わせとして含んでいることである。
【0012】
しかし眼の表面トポグラフィを正確に決定するためには、評価アルゴリズムがプラチドリングを申し分なく識別しなければならない。ここでは、重ね合わされた虹彩構造がプラチドリングの識別を妨害するという問題が発生し得る。なぜなら、場合により、瞳縁部をリングと取り違えることがあるからである。
【0013】
市販で入手できるトポグラフィシステムは、真のプラチドリングを眼の前方の短い距離で角膜に投影し、ここからプライドリングが反射され、カメラにより検出される。角膜の復元は、投影され、かつ角膜から反射されたプラチドリングの入射角と出射角の角度評価に基づく。ここでは、既知の基準試験体のリング位置に対する角膜上のリング位置の偏差が、角膜復元に対する基礎として用いられる。この種の解決手段の第2の欠点は、測定精度が角度関係に、したがって測定距離に強く依存していることである。
【0014】
正しい測定距離を決定ないしはコントロールするために、種々の方法が使用される。例えば測定を、正しい動作距離に達した時に自動的にトリガすることができる。このことは、1つには、光スイッチ、接点または付加的な測定システムを用いて距離ないしは位置を決定し、場合により補正するようにして、各測定前に誤差のある距離を補正することによって行うことができる。
【0015】
例えばこれに関して特許文献10と特許文献11が挙げられる。そこに記載された解決手段は、プラチド円板に基づくトポグラフィである。正しい測定距離をコントロールするために、両者の解決手段は点光源を有し、この点光源の光が角膜に投影され、そこから反射され、CCDカメラに点画像として結像される。キャプチャ領域内の点画像の位置が、プライド円板と眼との間の距離に関する情報を提供する。正確な位置決めのために、プラチド円板は、距離が最適になるまで移動される。それから初めて測定が開始される。
【0016】
特許文献12および特許文献13に記載された解決手段では、それぞれ頭部の側方で左右に配置された2つの付加的なカメラを介して正しい測定距離がコントロールないし補正される。ここでは、側方に配置された2つのカメラと、光軸上に配置されたメインカメラとが角膜の測定のために互いに固定して配置されている。側方に配置されたカメラにより記録された画像に依存してシステム全体が、測定すべき眼ないしはその角膜を基準にして最適の測定位置が達成されるように位置決めされる。
【0017】
しかしもう1つには、最適でない距離で行われた測定を相応に補正することもできる。これは、所定の補正アルゴリズムを、例えば画像評価により最適でない測定距離が確定された場合に対して適用することにより行う。適切な補正アルゴリズムによって、「誤差のある」測定結果を補正することができる。
【0018】
世界的に広く使用されるカール・ツァイス・メディテック社の角膜トポグラフィシステムは、ATLAS(登録商標)と呼ばれ、この種の補正アルゴリズムを有する。高性能でユーザフレンドリーなソフトウエアプラットフォームによってATLASシステム(登録商標)は、いずれの検査の際にも事実上どんなオペレータに対しても、正確で、信頼性があり、再現可能な結果を提供する。
【0019】
特許権付与されたいわゆるコーン・オブ・フォーカス(Cone−of−Focus)(登録商標)配向システムによって、ATLAS(登録商標)では、測定すべき角膜が測定システムに対して正しく配向されることが保証される。このことは、同様に特許権付与されたプラチド円板と関連したコーン・オブ・フォーカス(登録商標)による三角測量に基づいて行われる。
【0020】
この方法は、検査すべき眼のほとんどに対しては、すなわち角膜の湾曲が「正常な」眼に対しては正確で、信頼性があり、再現可能な結果を提供するが、角膜が「異常に」湾曲している場合には、時たま問題が発生する。この種の「異常に」湾曲した角膜は、例えば円錐角膜のような前から存在する病気が原因であり得る。
【0021】
正確な角度関係を決定するためには、プラチドリングの光線が反射される被検眼の位置から機器までの距離が既知でなければならない。したがって本来は、光軸上における測定機器から眼までの距離が既知でなければならないだけでなく、さらにすでに角膜の正確な形状も本来、既知でなければならない。しかし、角膜の形状はこれから測定すべきものである。この問題の解決手段として反復アルゴリズムを使用することができ、この反復アルゴリズムは測定結果へのこの問題の影響を最小にする。しかし、このアルゴリズムによって、全てのリングの測定不確定性が誤差伝搬によって結合される。したがって、測定結果はデータ品質によっては不正確である。健康な角膜形状を有する患者では、この問題は非常に高い測定品質により制圧することができるが、とりわけ、病的に変形した角膜では非常に大きな測定偏差が発生し得る。
【0022】
1μm未満の範囲で正確かつ高精度に配向することは、いずれの検査においても高精度測定に対する前提である。画像分析システム、スマートキャプチャ(SmartCapture(登録商標))により、毎秒15までのデジタル画像が配向中に分析され、最高品質の画像が自動的に選択される。
【0023】
ヒトの眼の角膜を正確に検査し、測定するというアイデアはすでに非常に古い。例えば最初の古典的ケラトメータは、すでに1856年にH.フォンヘルムホルツによって開発された。これにより実行可能な測定方法は、現在、まだ普及している測定方法に対応した。しかしながらヘルムホルツのケラトメータは、非常に取り扱いにくいものであった。
【0024】
さらに驚くことには、リットマンがまったく距離に依存しないケラトメータを開発したのは1950年になって初めてである。距離に依存しないケラトメータでは、画像鮮鋭度の調整が観察者の遠近調節と視力によって影響を受けず、これにより、距離に依存する機器の大きな欠点が一掃された。
【0025】
リットマン型ケラトメータでは、可視テスト符号が投影され、これがレンズを介して無限大で角膜に結像される。これにより測定時の距離依存性は、光学的観察システムとして用いられるカメラの被写界深度にだけ依存し、テスト符号の距離には依存しない。画像検出時の距離非依存性は、テレセントリックな光線路によって解消される。これにより測定精度が眼と機器との間の距離に関連にして実質的に減感され、これにより測定結果には非常に再現性がある。とりわけ測定誤差と読み出し誤差の数が低減され、測定過程を促進することができた。
【0026】
しかしながら、欠点として、リットマン型ケラトメータでは測定点の数が少ないことが判明している。リットマン型ケラトメータでは2から8の測定点しか形成されないが、プラチド円板に基づくトポグラフィでは測定点の数が数千である。
【0027】
完全に距離に依存しない技術的解決手段は、例えば6つの個別の視準化光源により角膜が所定の角度の下で照明されるケラトメータにより提供される。この種の方法の格別の利点は、角膜の湾曲を高精度かつ量的に測定できることである。例えばショートコヒーレント法に基づくカール・ツァイス・メディテック株式会社のIOLMaster(登録商標)は、この解決原理による光学的測定機器である。
【0028】
この方法での欠点は、角膜が少数の点でしか測定されず、とりわけ角膜においては湾曲と乱視以外の別の表面変形を有する測定誤差の原因となり得ることである。そのような例外的事例に対しては、測定点がプラチド円板と同じように多数であることが有利であろう。しかし、各測定点に対して結像光学系を備える別個の光源が必要であるから、技術的コストが対応して上昇する。
【0029】
特許文献14には、照明が絞りによって実現され、この絞りの細いリング状かつ同心の複数開口部が光学系を介して測定すべき眼に結像される方法が示されている。検出は、前に紹介した全ての方法と同じように、リングシステムの中心を通してテレセントリックに補正された光学系により光軸に沿って行われる。照明の距離非依存性は、眼が「リング状で平坦な」複数の光波によって照明されることにより達成される。したがって、リング絞りの眼への結像を実現する光学系は、リング絞りに生じる焦点距離に対応する主平面とは、リング絞りからも眼の角膜からも同じ距離で離れている。この方法の欠点は、結像光学系に対する比較的大きな技術的コストである。なぜなら所要の高い測定精度を達成し、発生する球面誤差を補償できるようにするためには、複数のレンズを使用しなければならないからである。さらなる欠点は光効率の小さいことである。なぜなら比較的細いリング絞り幅が必要だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第4685140号明細書
【特許文献2】米国特許第5110200号明細書
【特許文献3】米国特許第5194882号明細書
【特許文献4】米国特許第5684562号明細書
【特許文献5】米国特許第6116738号明細書
【特許文献6】米国特許第5864383号明細書
【特許文献7】米国特許第4660946号明細書
【特許文献8】米国特許第6575573号明細書
【特許文献9】米国特許第6692126号明細書
【特許文献10】米国特許第6048065号明細書
【特許文献11】米国特許第6070981号明細書
【特許文献12】欧州特許第0843529号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第1138254号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第1572779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の基礎とする課題は、十分に距離に依存しない測定を大きな測定範囲で、非球面性が強くても可能とし、そのために多数の測定点を形成する、眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステムを開発することである。ここで照明に対しては、比較的高い光効率を有し、格段に簡単でしたがって安価に製造することのできる技術的構成を使用するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この基礎とする課題は、プラチド円板に類似するリングを形成するエレメントと、照明光線路内に配置された照明ユニットと、検出光線路内に配置された画像記録ユニットと、制御および評価ユニットとから構成される、眼の角膜のトポグラフィを決定するためのシステムにおいて、プラチド円板に類似するエレメントが半径の異なるリング状の構造を備えるフレネルアキシコンレンズとして構成されており、前記照明ユニットと前記フレネルアキシコンレンズとの間に、当該フレネルアキシコンレンズを平面波により全面で照明するための光学エレメントと照明光線路および検出光線路を分離するための光学エレメントとが配置されており、結像システムおよび画像センサから成る画像記録ユニットが距離に依存しないテレセントリックな画像検出を行うように構成されているシステムによって解決される。
【0033】
本発明によればこの課題は、独立請求項の特徴によって解決される。好ましい改善形態および実施形態は従属請求項の対象である。
提案されたシステムは、反射体のトポグラフィを決定するのに適する。しかしこのシステムはとりわけ眼の角膜のトポグラフィを決定するために用いられる。
【0034】
本発明を以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ファセットを表側と裏側に有する本発明のフレネルアキシコンレンズの基本図。
図2】付加的なミラー面を有する本発明のフレネルアキシコンレンズの基本図。
図3】フレネルアキシコンレンズ、コリメータレンズおよびビームスプリッタを有する本発明のシステムの基本図。
図4】フレネルアキシコンレンズとビームスプリッタを有する本発明のシステムの基本図。
図5】検出光線路が偏向される本発明のシステムの基本図。
図6】フレネルアキシコンレンズとコリメータレンズを有する本発明のシステムの基本図。
図7】フレネルアキシコンレンズが付加的な視準化および光線路分離作用を有する本発明のシステムの基本図。
図8】フレネルアキシコンレンズに画像検出の結像光学系が組み込まれた本発明のシステムの基本図。
図9】表側がファセットを、裏側が非球面形状を有する本発明のフレネルアキシコンレンズの好ましい実施形態を示す図。
図10】表側のファセットと裏側の非球面形状の他に、全てのゾーンに共通の外側ファセットを有する本発明のフレネルアキシコンレンズの好ましい別の実施形態を示す図。
図11図10による実施形態のための照明および検出のための好ましい光線案内を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
全ての図面に対して、表側として角膜に向いた側のエレメントの面が示されている。角膜がともに図示されていなくても、表側は常に左に示される。
眼の角膜のトポグラフィを決定するための本発明のシステムは、プラチド円板に類似するリングを形成するためのエレメントと、照明光線路内に配置された照明ユニットと、検出光線路内に配置された画像記録ユニットと、制御および評価ユニットとから構成される。ここでプラチド円板に類似するリングを形成するためのエレメントは、半径の異なるリング状の構造を備えるフレネルアキシコンレンズである。さらに照明ユニットとフレネルアキシコンとの間には、平面波によりフレネルアキシコンを全面で照明するための光学エレメントと、照明ビーム路と検出ビーム路とを分離するための光学エレメントとが配置されている。さらに結像システムと画像センサから成る画像記録ユニットは、距離に依存しないでテレセントリックな画像検出を行うよう構成されている。
【0037】
有利な実施形態の第1の群は、リング形成のためのエレメントとして用いられるフレネルアキシコンレンズに関するものである。ここでは半径の異なるリング状の構造をファセットの形で、フレネルアキシコンレンズの表側および裏側のうちの少なくとも一方上に配置することができる。
【0038】
図1は、ファセットを表側と裏側に有する本発明のフレネルアキシコンレンズの基本図である。
ここでは、フレネルアキシコンレンズ1の表側1.1にも裏側1.2にもファセット1.3が設けられており、ファセットは照明光源の光を種々異なる角度の下で角膜に向ける。さらにフレネルアキシコンレンズ1は平面または切欠部として構成された中央ゾーン1.4を有し、この中央ゾーンは距離に依存しないテレセントリックな画像検出のために設けられている。
【0039】
ファセットを表側と裏側に配置することにより、例えばリング状構造の数、したがって測定点の数が格段に増加される。ここで半径の異なるリング状構造は異なるファセット角を有し、これにより、光が種々異なる角度で眼の角膜の方向に偏向される。
【0040】
光の偏向は原理的に屈折、回折または反射に基づくことができるが、回折の原理を適用することは通常、放棄される。
これは、回転対称の格子構造における光回折は重大な欠点と結び付いているからである。回折による偏向角度は、使用される光線の波長によりスケーリングされる。したがってこのような場合、正確な測定値を得るためには光源のスペクトル帯域幅を1nm以下に制限しなければならない。これは、狭帯の光源に関して技術的に面倒となるばかりであるが、例えばレーザまたは付加的なフィルタエレメントによって達成することができる。
【0041】
したがって、所要の精度を推定する際には、以下のことを考慮すべきである。角膜の湾曲を<0.1dptの所望の精度により測定することによる角膜の屈折作用の決定は、角膜の全屈折率が40〜50dptの場合、約1/500に相当する。したがって光源は、例えば波長が800nmの場合、2nm以下の帯域幅、好ましくは1nm以下の帯域幅を有しなければならない。加えて平均波長が約±0.5nmを超えて変化してはならない。光源に対してこの条件を達成するためには、このような狭帯域を提供する典型的な半導体レーザ光源を約1Kに温度調整しなければならないが、このことは付加的な技術コストを意味することとなる。
【0042】
したがって、フレネルアキシコンレンズのファセット角は、偏角が小さい場合には光の偏向が好ましくは光屈折の原理に基づき、偏角が大きい場合には光反射の原理と一部では光屈折との組み合わせに基づくように計算される。
【0043】
特に有利な構成では、フレネルアキシコンレンズのファセット角は、偏角が大きい場合には光の偏向が光反射の原理に基づくように計算され、そのために、フレネルアキシコンレンズは付加的なミラー面を有する。
【0044】
図2は、このために付加的なミラー面(円錐)を有する本発明のフレネルアキシコンレンズの基本図を示す。
フレネルアキシコンレンズは、表側1.1だけに設けられたファセット1.3に加えて、共通のミラー面として用いられる外側ファセット1.5を有する。距離に依存しないテレセントリックな画像検出のために、中央ゾーン1.4はここでも平面または切欠部として構成されている。
【0045】
外部ゾーンの光は、全ての外部ゾーンに対して共通の、外部ファセットの形態にあるミラー面における全反射によって大部分が偏向され、フレネルアキシコンレンズの表側にあるファセットによって最終的に光線偏向される。この種のエレメントにより、大きな入射角を有する外部ゾーンに対して有利な関係を達成することができる。
【0046】
有利な実施形態の第2の群は照明ユニットに関連する。照明ユニットは、好ましくは少なくとも1つの光源、とりわけLED、レーザまたは光ファイバ出力端から形成される。この構造は光効率が非常に良いので、他の形式の非点光源、例えばハロゲンランプおよびフラッシュランプも使用することができる。しかし正確な測定結果を達成できるようにするためには、これらの光源を付加的なフィルタによって50nm以下のスペクトル幅に制限すべきである。なぜなら屈折角も物質の拡散を介して屈折率に依存するからである。
【0047】
ここでは例えば約1mmの発光面積を有する光源の光を、直径100〜1000μmの円形絞りによって付加的に絞ることができる。
有利な一実施形態では、光源の発光面積が可変である。これは例えば、直径が可変の絞りを前置することにより、または発光面積の大きさの異なる複数の光源を交互に使用することにより達成できる。
【0048】
このことの利点は、提示され眼に結像されるリングの幅を変化できることである。このことは例えば、角膜が強く変形されている場合に、接触しない非常に細いリングを使用すべきであり、これにより問題のない評価を可能にする場合に必要である。この場合、幅広のリングは接触することがあり、または重なることさえあり、それにより評価が困難になるか、またはまったく不可能になる。
【0049】
照明ユニットとフレネルアキシコンレンズとの間には、平面波によりフレネルアキシコンレンズを全面で照明するための光学エレメントと、照明光線路と検出光線路とを分離するための光学エレメントとが配置されている。ここで2つの光学エレメントは、テレセントリックな画像検出のために設けられたフレネルアキシコンレンズの中央ゾーンの照明が阻止されるように構成され、ないしは配置される。
【0050】
有利な一実施形態に対応して、平面波によりフレネルアキシコンレンズを全面で照明するために光学エレメントはコリメータレンズである。このために図3は、コリメータレンズとビームスプリッタとを有する本発明のシステムの基本を示す。
【0051】
LED2から放射された光は、コリメータレンズ3により平行化され、部分反射性で面平行なプレート4の形態のビームスプリッタによりフレネルアキシコンレンズ1の方向に偏向される。ここでは任意選択で、LED2の前に(破線で示した)絞り2.1を、照明野を制限するために配置することができる。面平行なプレート4の部分反射性は、プレートの中心が反射部を有しておらず、したがって、フレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4の照明が回避されるように構成することができる。これに対して、中央ゾーンが部分反射性であれば、カメラ画像中にリングシステムの他に角膜の頂点上の反射点が観察され、この反射点を有利には評価に利用することができる。しかし、このことは同時に、検出光線路の光が部分反射層によって減衰され、ひいては光効率が低下するという欠点と結び付いている。この理由から、偏向エレメントの中央領域の部分反射性を、達成すべき測定特性に適合することができる。異なる角度を有するフレネルアキシコンレンズ1のリング状のファセット1.3を介して、LED2の光は異なる角度の下で眼5の角膜5.1に向けられる。眼5の角膜5.1に投影されるリング構造は、テレセントリックな光線路6に沿って、平面または切欠部として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4を通って反射され、画像記録ユニット7により記録され、評価のために(図示しない)制御および評価ユニットにさらに伝送される。そのために画像記録ユニット7は、結像光学系7.1と画像センサ7.2とを有する。
【0052】
特に有利な一実施形態では、通常はフレネルアキシコンレンズの全面照明のための光学エレメントとして使用されるコリメータレンズを、このフレネルアキシコンレンズの裏側が相応に構成されている場合には省略することができる。このために図4は、1つのビームスプリッタだけを有する本発明のシステムの第2の実施形態の基本を示す。
【0053】
LED2から放射された光は、ここで部分反射性の面平行なプレート4の形態にあるビームスプリッタにより、フレネルアキシコンレンズ1の方向に偏向される。コリメータレンズ3’として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の裏側は、全面照明のために光を平行化し、これにより別個の光学エレメントを省略することができる。面平行なプレート4の部分反射性は、ここでも、プレート中央が反射部を有していないように構成することができ、これにより、フレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4の照明が回避される。LED2の光を異なる角度の下で眼5の角膜5.1上に結像することも、画像記録することも、前に説明したのと同じように行われる。
【0054】
照明光線路と検出光線路とを分離するための光学エレメントとして、好ましくは平面プレートまたはプリズムを使用することができ、これらは部分反射性およびダイクロイックのうちの少なくとも一つの面を有することができる。
【0055】
ここで機能的には、照明光線路または検出光線路のどちらが光学エレメントを介して偏向されるかは任意である。しかしながら、ここでは検出光線路を偏向するのがより有利である。なぜなら、そのために必要な平面プレートまたはプリズムの形態の光学エレメントの寸法をより小さくすることができるからである。そのために図5は、検出光線路が偏向される本発明のシステムの基本を示す。
【0056】
図5によれば、LED2から放射された光はコリメータレンズ3により平行化され、フレネルアキシコンレンズ1の方向に導かれる。種々異なる角度を有するフレネルアキシコンレンズ1のファセット1.3を介して、LED2の光は異なる角度の下で眼5の角膜5.1に向けられる。眼5の角膜5.1上に投影されたリング構造は、テレセントリックな光線路6に沿って、平面または切欠部として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4を通って反射され、面平行なプレート8により偏向され、画像記録ユニット7上に結像される。面平行なプレート8をフレネルアキシコンレンズ1の前に配置することにより、その中央ゾーン1.4の照明が回避される。
【0057】
この構成でも、光学エレメントの数が低減される変形例が考えられる。フレネルアキシコンレンズの裏側が相応に構成されている場合には、照明光線路と検出光線路とを分離するための光学エレメントを省略することができる。このために図6は、コリメータレンズしか有していない本発明のシステムの基本を示す。
【0058】
LED2から放射され、コリメータレンズ3により平行化された光は、フレネルアキシコンレンズ1の方向に照射される。ここでコリメータレンズ3の中心は部分反射部を有することができ、この部分反射部はフレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4が照明されるのを阻止する。プリズム4’として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の裏側1.2は、照明光線路と検出光線路とを分離し、これにより、そのための別個の光学エレメントを省略することができる。ここでも、LED2の光を異なる角度の下で眼5の角膜5.1上に結像することも、画像記録することも前に説明したのと同じように行われる。
【0059】
特に有利な一変形実施形態では、フレネルアキシコンレンズの裏側が相応に構成されている場合には、照明光線路と検出光線路との分離のためと、全面照明のための別個の光学エレメントを省略することができる。このために図7は、フレネルアキシコンレンズの裏側が視準化作用と光線路分離作用とを有するように構成された当該フレネルアキシコンレンズを有する本発明のシステムの基本を示す。
【0060】
LED2から放射された光は、フレネルアキシコンレンズ1の方向に照射される。楔形レンズ9’として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の裏側1.2は、照明光線路と検出光線路との分離も、フレネルアキシコンレンズ1の全面照明も行う。したがってこれらの目的のための別個の光学エレメントを省略することができる。
【0061】
ここで、楔形レンズとして構成されたフレネルアキシコンレンズ1の裏側1.2は、湾曲したリング状のプリズム形状を有し、このプリズム形状は、フレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4の照明を阻止するために相応の反射性またはダイクロイックな部分面を有する。LED2の光を異なる角度の下で眼5の角膜5.1上に結像することも、画像記録することも公知のように行われる。
【0062】
別の有利な一変形実施形態では、ファセットがフレネルアキシコンレンズの表側上で、このファセットが結像誤差を補正するために非球面作用を有するように構成されている。これにより、色誤差、歪み等の結像誤差を補正することができる。
【0063】
有利な実施形態の第3の群は、通常は結像光学系と画像センサとから成る画像記録ユニットに関するものである。テレセントリックな画像検出のために、フレネルアキシコンレンズの中央ゾーンは、ホールまたは平面として構成されている。
【0064】
しかし、フレネルアキシコンレンズの中央ゾーンが光学機能を有していても有利であり得る。ここで、中央ゾーンは、例えばフィルタとして構成することができるが、結像光学系として構成することもできる。このために、図8は、フレネルアキシコンレンズに画像検出の結像光学系が組み込まれている本発明のシステムの基本を示す。
【0065】
図8により示された解決手段によれば、LED2から放射された光は、楔形レンズ9’として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の裏側1.2に直接照射される。LED2の光は、異なる角度の下で眼5の角膜5.1上に結像され、ここからテレセントリックな光線路6に沿って画像記録ユニット7の画像センサ7.2に反射される。フレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4は、結像光学系7.1’として構成されているので、別個の結像光学系を省略することができる。
【0066】
画像センサ7.2により記録された、眼5の角膜5.1から反射されたリング構造の結像は、すでに述べたように評価のために(図示しない)制御および評価ユニットにさらに伝送される。
【0067】
図9は、特に有利な一変形実施形態を示す。ここに図示されたフレネルアキシコンレンズ1は、その表側1.1がファセット1.3を有し、その裏側1.2が非球面形状を有するように構成されており、加えて、フレネルアキシコンレンズ1は湾曲した全体形状ないしは円錐形の全体形状を有する。ここで、光源から照射された光波の視準化は裏側1.2の非球面により行われ、リング状の平面波の偏向はフレネルアキシコンレンズ1の表側1.1に形成されたファセット1.3により行われる。外部ゾーン11の光は、とりわけフレネルアキシコンレンズ1の屈折を介してではなく、フレネルアキシコンレンズ1のそれぞれの2つのファセット1.3における全反射と屈折の組み合わせにより偏向される。
【0068】
図10は、特に有利な別の一変形実施形態を示す。ここに図示されたフレネルアキシコンレンズ1は図9の構造の変形であり、外部ゾーン11の光は、全ての外部ゾーンに対して共通の外側ファセット1.5における全反射により大部分が偏向され、フレネルアキシコンレンズ1の表側にある各ファセット1.3によって最終的な光線偏向が達成されることを特徴とする。フレネルアキシコンレンズ1のこの形状は、角膜への大きな入射角を有する外部ゾーンに対して有利な関係が可能であるという利点を有する。
【0069】
図11は、図10の実施形態に対する照明と検出のための好ましい光線案内を示す。LED2から放射された光は、フレネルアキシコンレンズ1の方向に照射される。コリメータレンズ3’として構成された裏側1.2は、フレネルアキシコンレンズ1の全面照明のための光の平行化を行い、したがってこの目的のための別個の光学エレメントを省略することができる。外部ゾーンの光束10と11は、全てのゾーンに対して共通の外側ファセット1.5における全反射により大部分が偏向され、そしてフレネルアキシコンレンズ1の表側にあるそれぞれのファセット1.3により最終的に偏向され、角膜5.1上に結像される。これとは異なり、内部ゾーンの光束12と13はそれぞれのファセット1.3だけにより偏向される。眼5の角膜5.1上に投影されたリング構造は光線束16として、平面または切欠部として構成されたフレネルアキシコンレンズ1の中央ゾーン1.4を通して反射され、第1の面平行なプレート8.1から結像光学系7.1を介して画像センサ7.2の方向に偏向される。第2の面平行なプレート8.2は結像光学系7.1内に配置されている。検出光線路を2回偏向することにより、非常にコンパクトな構成が達成される。
【0070】
フレネルアキシコンレンズはさらなる変形実施形態では、光源に対する視準化作用も、角膜の方向への光線偏向のための偏向作用も片側だけで、例えばフレネルアキシコンレンズの表側だけで実現されるように構成することができる。
【0071】
本発明の解決手段によれば、眼の角膜の表面形状を決定するためのシステムが提供され、このシステムはプラチド円板とテレセントリックな画像検出を行う画像記録ユニットとに基づくものであり、簡単で安価の構造の下で高い光効率を有し、それでもなお十分に距離に依存しない角膜トポグラフィの測定を可能にする。
【0072】
プラチド円板に類似するエレメントを使用することにより多数の測定点が形成される。このことは必然的に、角膜のトポグラフィの決定精度を向上させる。
したがって眼の角膜の表面形状を決定するために提案されたシステムは、プラチド円板に基づくトポグラフィの利点(多数の測定点)と、リットマン型ケラトメータの利点(距離に依存しない測定)とを組み合わせる。このことは、プラチド円板を、半径の異なるリング構造を備えるフレネルアキシコンレンズとして構成することによって達成することができる。これらのリング構造は、個々の光源の光を種々異なる角度で眼の角膜の方向に結像する。
【0073】
眼の角膜のトポグラフィを決定するための本発明のシステムの特別の利点はとりわけ、リング構造の提案された画像形成が、どのような吸収もなしに、すなわち光形成と光案内だけによって行われることであり、ただ1つの光源しか必要ないことである。
【0074】
提案されたシステムは、とりわけ眼の角膜のトポグラフィを決定するために設けられているが、あらゆる反射体のトポグラフィを決定するために使用することができる。
プラチド円板に基づくトポグラフィは、機器から眼までのあらゆる距離に対して典型的なリングを備える信号を提供する。とりわけ距離依存性により測定誤差が発生しても、この測定誤差は理想焦点/調整点までの距離によりスケーリングされる。
【0075】
ここに示した距離に依存しないシステムでは、リットマン型のケラトメータと同じように、理想調整点までの距離偏差が比較的大きい場合に対しては影効果が生じ、カメラ画像にリングが観察されないという効果が観察される。調整点に再び接近するとリングが観察され、そこから距離に依存せずに非常に正確な測定値を計算することができる。
【0076】
影効果が発生しない領域は、リング状の「平坦な」光線束の幅と、対応するゾーンの平均角度に実質的に依存する。したがって好ましくは、ゾーンの幅は可及的に大きな自由調整領域に互いに依存せずに最適化され、これにより、静止していない眼においても頑強な測定を行うことができる。したがって、例えば図9と10による外部ゾーンは、内部よりも格段に幅広に実施される。特定の測定機器に対しては、測定すべきリングの数が低減される時には、格段に頑強な調整を可能にすることが必要になる場合もある。この理由から、幅の数は比較的少数であるが、しかし、その代わりに格段に大きな幅を有するエレメントを実現するのが有利であり得る。例えば3つのリング/ゾーンしか有していないエレメントが考えられる。
【0077】
さらに図示の構造の各々は、所定のゾーン数の場合に特定の調整感度を達成できるようにスケーリングすることができる。
さらに種々のゾーンの調整領域を異なる値にも調整し、カメラ画像中の影にならないゾーンの数と番号を利用して、眼の前の機器の位置決めを自動的に、ないしは半自動的に実現することが可能である。例えばカメラ画像中に観察可能な最大のゾーン数と最小のゾーン数を制御信号として、軸方向調整駆動のために使用することができる。
【0078】
フレネルアキシコンレンズの回転対称の格子構造により、とりわけ調整領域も縮小され、そのため静止していない患者、および眼の非球面偏差が例えば15dptと非常に強い患者を測定することができない。
【0079】
回転対称の格子構造により、円錐形の光波が眼に照射され、この光波は光軸を通る各断面において視準化され、平坦である。まさに断面において平坦なこの光波により本方法の距離非依存性が達成される。なぜなら光束内の全ての光線が角膜への同じ入射角を有するからである。しかし光波の回転対称の円錐形状により、眼が側方に偏心している場合には、光が角膜において検出光学系に到達しない方向に反射される。これにより検出画像に影が生じ、この影により測定がまったく実現できなくなるか、または測定が距離に依存し、そのため不正確になる。同様の影は角膜形状の非球面性が強い場合に発生し、このような角膜形状は局所的な偏心のように作用する。
【0080】
この問題は本発明では、フレネルエレメントにおいて光波を、この光波が光軸を通る各断面においては平坦なままであるが、アジマス方向ではもはや完全な円錐形にはフォーカシングされないように変形することによって解決される。このことは、回転対称性をフレネルディスクに付与することによってのみ達成可能である。
【0081】
このことは好ましくは、フレネルアキシコンレンズの光学的にアクティブな2つの面の一方が付加的に非回転対称の構造を有することによって実現される。これは前に説明したフレネルアキシコンレンズの全ての変形実施形態に対して当てはまる。
【0082】
第1の実施形態では、フレネルアキシコンレンズの光学的にアクティブな2つの面の一方が、回折格子の形態の回折構造を付加的に有し、この回折格子のグリッドラインは半径方向に延在し、この回折格子のグリッドベクトルは各個所でアジマス方向に延在する。ここで特に有利な実施形態では、局所的に異なる周波数を有する回折格子が使用される。
【0083】
第2の実施形態では、フレネルアキシコンレンズの光学的にアクティブな2つの面の一方が、半径方向に延在する正弦波状の構造を付加的に有する。ここで正弦波状構造の変調深度は数μmから数100μmの間であり、その波長は0.1mmから20mmの間である。特に好ましくは波長は約2mmである。
【0084】
この第2の実施形態の重要な特徴は、アジマス構造によって部分波が光軸を通る各断面において完全に視準化されたままであり、一方この部分波はこれに対して垂直の面では光軸に対して円錐形にフォーカシングされないことである。ここで光波は、例えば真の点と仮想点へ、光軸より格段に前方または後方でフォーカシングすることができ(およびデフォーカスすることも)、完全に視準化することもできる。
【0085】
第3の実施形態では、フレネルアキシコンレンズの光学的にアクティブな2つの面の一方が、互いに隣接する多数の平面ファセットの形態の構造を有する。ここでも正弦波状の構造の変調深度は数μmから数100μmの間であり、その波長は0.1mmから20mmの間である。特に好ましくは波長は約2mmである。
【0086】
この実施形態では、フレネルアキシコンレンズにより、「円錐形」の平面波ではなく、1つのファセットごとに両空間方向に視準化された多数の部分波が形成される。この光波により眼の角膜を照明し、テレセントリックな検出光学系により検出すると、検出画像中にリング状の連鎖点が得られる。この実施形態の重要な特徴は、両方向に完全に視準化された非常に多数の部分波がこの構造によって形成されることである。
【0087】
ファセット構造のさらなる重要な利点は、非球面性の強い面も測定できることであり、このことは例えば15dptのオーダの非常に強い円柱誤差を測定できる可能性を提供する。さらに、この頑強な測定は、例えば不均一性または涙液膜の引き裂きの場合に発生する強い局所的な形状偏差の判定も可能にする。
【0088】
ファセット構造の第3の重要な利点は、点連鎖形状の検出パターンによって可能になる。このパターンにより、従来技術のプラチド円板から知られる検出リングが変調され、検出画像における円の直径の他に各スポットの角座標も決定することができる。これらのデータにより、「傾斜した」光線およびこれによりプラチド円板に基づく「スキューレイエラー(skew ray error)」として知られるトポグラフィでの誤差も補正することができる。
【0089】
これにより、トポグラフィックな測定値を、経線に沿ってトポグラフィに結合できるだけでなく、点連鎖に沿ってアジマスにも結合できる。これにより、トポグラフィの精度を、強く非球面に変形した測定試料でも特に格段に向上することができる。
【0090】
したがって、非球面性の強い角膜において非常に頑強な測定が達成できるようにエレメントを構成したい場合、技術的に簡単に実現される実施形態1または2を使用することになる。付加的に「スキューレイエラー」を補正したい場合、技術的に面倒な実施形態3に用いなければならない。
【0091】
例えば図9による構造が実現される場合、エレメントの外側ゾーンでの光偏向は全反射と屈折の組み合わせを介して達成される。この場合に両横断方向に多数の平面部分波を形成するためには、光線偏向に寄与する両方の面を、回転対称ではなく互いに接する平面ファセットとして構成しなければならない。しかし、このような構成部材の製造は技術的に非常に面倒である。光偏向の大部分は全反射により形成されるから、この場合は屈折面を回転対称に構成し、両方向に多数の平面部分波がディスクから放射されるように全反射性の面をファセットにより最適化することができる。この場合、全反射性の面は、互いに接する平面ファセットからではなく、互いに接する自由形状面から統合される。
【0092】
したがって、眼の角膜の表面形状を決定するための提案されたシステムは、プラチド円板に基づくトポグラフィの利点(多数の測定点)と、リットマン型ケラトメータの利点(距離に依存しない測定)とを組み合わせるだけでなく、とりわけ十分に距離に依存しない測定を比較的大きな測定領域において、非球面性が強い場合でも可能にする。
【0093】
前記3つ全ての実施形態は、付加的な構造がない場合よりも偏心が約10倍強い場合に初めて影効果が発生するという利点を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11