特許第6348199号(P6348199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一工業製薬株式会社の特許一覧

特許6348199化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6348199
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 15/05 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   C08B15/05
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-47639(P2017-47639)
(22)【出願日】2017年3月13日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】北野 結花
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賀之
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/031444(WO,A1)
【文献】 特開昭55−142795(JP,A)
【文献】 特開2001−278901(JP,A)
【文献】 特表2013−529265(JP,A)
【文献】 特開平05−321147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
D21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のセルロース繊維集合体と下記一般式(1)で表される基を有するシリル化剤とを溶媒として極性有機溶媒を用いて反応させ、シート化処理を行い、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得る、化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法。
【化1】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、一部又は全ての水素原子がハロゲン原子に置換されてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
【請求項2】
前記シート状のセルロース繊維集合体に含まれるセルロース繊維に対し、セルロース繊維形状を保ったまま、当該セルロース繊維の構成要素であるセルロース微細繊維の表面を前記シリル化剤で化学修飾する、請求項1に記載の化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法。
【請求項3】
反応前の前記シート状のセルロース繊維集合体の嵩密度が1〜100kg/mである、請求項1又は2に記載の化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法。
【請求項4】
前記シート状のセルロース繊維集合体に対し、シリル化剤による反応の前処理として予備解繊及び/又は予備粉砕を行わない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法。
【請求項5】
化学修飾セルロース繊維集合体の構成要素である化学修飾セルロース微細繊維が、セルロースI型結晶を有しその結晶化度が40%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維は、食品、化粧品、機能紙、樹脂補強材等の工業原料として用いられる。また、セルロース繊維表面を化学修飾した化学修飾セルロース繊維は有機溶媒中への分散が容易となるため、工業原料としての適用範囲が広がり有望視されている。特に、化学修飾されるとともに微細化処理された化学修飾セルロース微細繊維は補強性・透明性に優れるため、多岐用途に適用可能である。
【0003】
化学修飾セルロース微細繊維を得る方法としては、あらかじめ微細解繊したセルロースナノファイバー表面に反応性官能基を有する化合物を反応させて、化学変性セルロースナノファイバー分散液を得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。また、別の手法として、イオン液体と非プロトン性溶媒であらかじめ微細解繊したセルロースナノファイバーに対しアセチル化処理した後、軽度の解繊処理をすることで化学修飾セルロースナノファイバー分散液を得る製造方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2で開示されている従来技術では、微細化処理した上で化学修飾を行っておりエネルギー的に負荷が大きい。つまり、セルロース繊維は解繊処理に多大なエネルギーを要するため、解繊処理してから化学修飾を行うとプロセスが煩雑になり高コストになってしまう。また、セルロースナノファイバー分散液は数%の固形分量で粘性が高くなってしまうため、セルロース原料の仕込量に制限がでてしまい、生産性に乏しい。さらに、高粘性の分散液は洗浄工程、脱溶媒工程に多大な時間を要してしまうため効率性及び生産性において満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2013/133436A1
【特許文献2】特開2010−104768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化学修飾セルロース繊維集合体を効率的かつ高い生産性で工業的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法は、シート状のセルロース繊維集合体と下記一般式(1)で表される基を有するシリル化剤とを溶媒として極性有機溶媒を用いて反応させ、シート化処理を行い、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得るものである。
【0008】
【化1】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、一部又は全ての水素原子がハロゲン原子に置換されてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、効率的かつ高い生産性で、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体を製造することができるので、工業的に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法について詳細に説明する。
【0011】
[セルロース繊維集合体]
本実施形態では、原料にシート状のセルロース繊維集合体を用いる。ここで、シート状には、膜状のように比較的薄いものから板状のように比較的厚いものも含まれる。シート状のセルロース繊維集合体の厚みは、特に限定しないが、0.01〜100mmであることが好ましく、0.1〜10mmでもよい。
【0012】
セルロース繊維集合体を構成するセルロース原料の具体例としては、植物(例えば木材、綿、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌)、微生物産生物等を起源とするものが知られているが、本実施形態ではそのいずれも使用できる。これらの中で、植物由来パルプが好ましい原材料として挙げられる。
【0013】
前記パルプとしては、植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してパルプ化することで得られる、ケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)が好ましいものとして挙げられる。
【0014】
また、セルロース原料としては、本実施形態の目的を阻害しない範囲内で化学修飾されていてもよく、即ち、化学変性パルプを用いてもよい。例えば、セルロース繊維表面に存在する一部あるいは大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステルを含むエステル化されたもの、メチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテルを含むエーテル化されたもの、またTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシルの略称)酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったものを含むことができる。
【0015】
本実施形態に使用されるセルロース原料としては、セルロースI型結晶を有しその結晶化度が40%以上であるものを用いてもよい。セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロース原料のセルロースI型結晶化度の値は、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上であり、80%以上でもよい。セルロースI型結晶化度の上限は、特に限定されないが、例えば、98%以下でもよく、95%以下でもよく、90%以下でもよい。
【0016】
本実施形態において、シリル化反応に供するセルロース繊維集合体はシート状であり、その嵩密度は1〜100kg/mであることが好ましい。このように嵩密度が大きいものを用いてシリル化反応を行うため、嵩高さが低減されて仕込み時の操作性が向上する。また、原料仕込み量を多くすることができるので処理能力が向上する。また、嵩密度が1〜100kg/mであることにより、シリル化剤と溶媒を混合した薬液に容易に浸漬するため、セルロース繊維に対し均一に薬液を浸透させることができる。シート状のセルロース繊維集合体の嵩密度はより好ましくは1〜50kg/mであり、更に好ましくは5〜30kg/mである。
【0017】
本実施形態において、シリル化反応に供するシート状のセルロース繊維集合体の大きさは、特に限定されず、表裏一方面の面積が1〜2.5×10cmでもよく、1〜2.5×10cmでもよい。例えば、後述する裁断処理により矩形状に裁断する場合、1〜500cm角でもよく、1〜50cm角でもよく、1〜5cm角でもよい。
【0018】
[シリル化剤]
本実施形態では、反応性官能基を有する化合物として、下記一般式(1)で表される基を有するシリル化剤を用いる。
【0019】
【化2】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、一部又は全ての水素原子がハロゲン原子に置換されてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。すなわち、R、R及びRは、炭素数1〜10の炭化水素基、又は、その一部又は全ての水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基であり、同一であってもよく、異なっていてもよい。より好ましくは、R、R及びRは、それぞれ独立に、一部又は全ての水素原子がハロゲンに置換されてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を示し、更に好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、又はハロフェニル基を示し、更に好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ハロメチル基、又はハロフェニル基を示す。前記ハロアルキル基としては、1つ又は2つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたアルキル基が挙げられる。前記ハロフェニル基としては、1つ又は2つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたフェニル基が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0020】
シリル化剤は、下記一般式(2)で表すことができる。
【0021】
【化3】
式(2)中、R、R及びRは式(1)のR、R及びRと同じであり、Xは脱離基を示す。脱離基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、1−イミダゾリル基、アセトアミド基、−N(CH)−CO−CH、−N(CH)−CO−CFH、−N(CH)−CO−CF、−NH−SiR、−O−C(CH)=N−SiR、−O−C(CF)=N−SiRなどが挙げられる(R、R及びRは式(1)のR、R及びRと同じ)。
【0022】
シリル化剤の具体例としては、トリメチルシリル化剤、ジメチルアルキルシリル化剤、ハロメチルジメチルシリル化剤、及び、ペンタフルオロフェニルジメチルシリル化剤からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、セルロース微細繊維間を広げる観点から、トリメチルシリル化剤、及び、ジメチルアルキルシリル化剤からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
トリメチルシリル化剤の具体例としては、特に限定されないが、トリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)、N−トリメチルシリルイミダゾール(TMSI)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−トリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルフルオロアセトアミド、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミンなどが挙げられる。
【0024】
ジメチルアルキルシリル化剤の具体例としては、1−(ジメチルイソプロピルシリル)イミダゾール、1−(tert−ブチルジメチルシリル)イミダゾール、1−(ジメチルエチルシリル)イミダゾール、N−(tert−ブチルジメチルシリル)−N−メチルトリフルオロアセトアミドが挙げられる。ここで、ジメチルアルキルシリル化剤における「アルキル」の炭素数は2〜8が好ましく、より好ましくは2〜6である。
【0025】
ハロメチルジメチルシリル化剤の具体例としては、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、クロロ(クロロメチル)ジメチルシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン(BMDMCS)などが挙げられる。
【0026】
ペンタフルオロフェニルジメチルシリル化剤の具体例としては、ペンタフルオロフェニルジメチルシリルジエチルアミン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシランなどが挙げられる。
【0027】
以上列挙した具体例のシリル化剤は、いずれか1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法]
本実施形態においては、上記のシート状のセルロース繊維集合体とシリル化剤とを反応させてシート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得る。
【0029】
[前処理]
上記シート状のセルロース繊維集合体に対しては、シリル化剤による反応に先立ち、前処理として、必要に応じて裁断処理を行ってもよい。裁断処理とは、シート状のセルロース原料を所定の大きさのシート状に裁断する処理である。この裁断処理を予め行うことにより、仕込みをより効率的に行うことができる。
【0030】
裁断処理方法としては、例えば、ペーパーカッター、シュレッダー、ロータリーカッター等を使用する方法が挙げられる。
【0031】
本実施形態では、シート状のセルロース繊維集合体に対し、シリル化剤による反応の前処理として予備解繊及び/又は予備粉砕を行わないことが好ましい。すなわち、セルロース繊維形状を損なうような前処理は行わないことが好ましい。本実施形態によれば、予備解繊や予備粉砕を行わなくても、シリル化処理することにより容易に解繊可能な化学修飾セルロース繊維集合体が得られる。そのため、予備解繊や予備粉砕を省略することで、工程負荷を低減することができる。また、予備解繊や予備粉砕せずにシリル化処理するため、シリル化処理におけるセルロース繊維分散液の粘性を低減して、効率性及び生産性を向上することができる。
【0032】
[シリル化処理]
シート状のセルロース繊維集合体とシリル化剤との反応(即ち、シリル化反応)は、シリル化剤を含む薬液にシート状のセルロース繊維集合体を浸漬することにより行うことができる。
【0033】
本実施形態では、シート状のセルロース繊維集合体に含まれるセルロース繊維に対し、セルロース繊維形状を保ったまま、当該セルロース繊維の構成要素であるセルロース微細繊維の表面をシリル化剤で化学修飾することが好ましい。すなわち、セルロース繊維は、セルロース微細繊維(セルロースナノファイバーとも称される)を構成要素として、これが束になったものである。本実施形態では、かかるセルロース微細繊維の束であるセルロース繊維の形状を保持したまま(即ち、解繊することなく)、セルロース微細繊維の表面をシリル化剤で化学修飾することが好ましい。このようにセルロース繊維を解繊しない状態でシリル化処理するため、セルロース繊維分散液の粘性上昇を抑えて、効率性及び生産性を向上することができる。
【0034】
本実施形態では、シート状のセルロース繊維集合体を、当該シート状の形態を保持したままシリル化処理し、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得ることが好ましい。すなわち、本実施形態では、シート状のセルロース繊維重合体を、スラリー状にすることなく、薬液に浸漬してシリル化処理する。シート状の形態を保持したままシリル化することにより、効率性及び生産性を向上することができる。なお、シリル化処理前のシート状の形態と、化学修飾セルロース繊維集合体のシート状の形態とは、同一でもよく、異なっていてもよい。すなわち、シリル化処理前のシート状の形態をそのまま保持した化学修飾セルロース繊維集合体を得てもよい。また、例えば、前処理としての裁断処理により小さなシート片としてシリル化処理した場合に、後述するシート化処理において、複数のシート片をプレスにより合体させて1枚のシート状に形成してもよい。
【0035】
シリル化剤の使用量は、セルロース繊維集合体に含まれるセルロース繊維への置換基の導入量を考慮して適宜調整することができる。シリル化剤は、例えば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり、好ましくは0.001〜50モル、より好ましは0.01〜10モルで使用することができる。
【0036】
シリル化反応を行う薬液は、シリル化剤と溶媒を混合してなるものであり、更に触媒を添加してもよく、添加しなくてもよい。触媒としては、特に限定されないが、例えば、塩化水素、クロロトリメチルシラン、硫化水素、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫化アンモニウム、ピリジンなどが挙げられる。酸性触媒を用いる場合、反応促進とセルロース重合度保持の観点から、弱塩基性触媒を併用してもよい。
【0037】
触媒の使用量は、特に限定されないが、たとえば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり0.001〜10モルが好ましく、0.005〜2.5モルがより好ましく、0.01〜2.0モルが更に好ましい。
【0038】
触媒は、高濃度のものをそのまま用いてもよく、或いは、事前に溶媒で希釈して用いてもよい。また、特に限定するものではないが、塩基性触媒の添加方法は、一括添加、分割添加、連続的添加、又はこれらの組合せで行うことができる。
【0039】
薬液に使用する溶媒について、その種類は特に限定されないが、例えば、無極性有機溶媒や極性有機溶媒を用いることができる。無極性有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン、四塩化炭素などが挙げられる。極性有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジンなどが挙げられる。上記の有機溶媒の中では、セルロース繊維集合体の膨潤を促進する観点から、極性有機溶媒がより好ましい。また、反応性および膨潤度の高さから、非プロトン性有機溶媒、たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジンなどがさらに好ましい。なお、上記有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、たとえば、セルロース繊維集合体の溶媒含有量(即ち、セルロース繊維集合体の乾燥質量に対する溶媒の質量の比率)が10質量%以上、好ましくは10〜10000質量%、より好ましくは20〜5000質量%、更に好ましくは50〜2000質量%で使用される。溶媒量が少ないほど、洗浄工程の利便性が向上する。
【0041】
[後処理]
シリル化反応の終了後に、洗浄、脱溶媒、シート化処理などの後処理を行ってもよく、これにより、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、洗浄に先立ち、必要に応じて、シリル化反応の反応停止作用を有する化合物を添加して反応を停止する工程を設けてもよい。反応の停止は、化学修飾セルロース繊維を含む薬液中にシリル化剤と反応しやすい物質を投入すればよく、その物質の種類は特に限定されない。また、エタノール等のアルコールを投入することによってシリル化反応を終了させてもよい。
【0043】
洗浄工程は、反応停止の目的、及び/又は、シリル化剤残渣、残留触媒、溶媒などの除去の目的で行う工程であり、湿潤状態の化学修飾セルロース繊維を洗浄する。この時、洗浄条件は特に限定されないが、有機溶媒を用いて、反応終了後の化学修飾セルロース繊維を洗浄するのが好ましい。場合によっては、試薬除去効率を高める観点から、シリル化反応後のシート状の化学修飾セルロース繊維集合体を、洗浄工程のみスラリー状にし、後のシート化処理工程でシート状に戻してもよい。
【0044】
脱溶媒工程は、シリカ反応時の溶媒や洗浄溶媒を除去する工程であるが、完全に除去する必要はない。脱溶媒の方法は、特に限定されないが、遠心沈降法、濾過などが使用できる。また、シート化処理工程において湿潤した化学修飾セルロース繊維をプレスすることにより、シート化処理と脱溶媒を同時に行ってもよい。
【0045】
シート化処理は、例えば、湿紙状態の化学修飾セルロース繊維(すなわち、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体が膨潤した状態のもの)をプレスすることで実施することができる。湿潤状態の化学修飾セルロース繊維をプレスする方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールプレス、加圧プレスなどを用いることができる。
【0046】
ここで、有機溶媒を完全に除去せず、シートを有機溶媒で湿潤状態にしておくことが好ましい。シート状の化学修飾セルロース繊維集合体の有機溶媒含有量(即ち、化学修飾セルロース繊維集合体の乾燥質量に対する有機溶媒の質量の比率)は1〜500質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜100質量%であり、更に好ましくは10〜50質量%である。
【0047】
[化学修飾セルロース繊維集合体]
本実施形態により得られるシート状の化学修飾セルロース繊維集合体においては、セルロース中の水酸基の水素が上記一般式(1)で表されるシリル基によって置換されており、すなわち、セルロース繊維にシリル基が導入されている。シリル基は、セルロース繊維を構成するセルロース微細繊維の表面に導入されており、セルロース繊維の表面に存在するセルロース微細繊維だけでなく、セルロース繊維の内部に存在するセルロース微細繊維についても、それらセルロース微細繊維の表面にシリル基が導入されていることが好ましい。
【0048】
シート状の化学修飾セルロース繊維集合体の厚みは、特に限定しないが、0.01〜100mmであることが好ましく、0.1〜10mmでもよい。
【0049】
シート状の化学修飾セルロース繊維集合体において、化学修飾セルロース繊維の繊維幅(平均幅)は、特に限定されないが、例えば1〜100μmでもよく、5〜80μmでもよく、10〜50μmでもよい。ここで、繊維幅は、光学顕微鏡観察で50本の化学修飾セルロース繊維の繊維幅を測定し平均値を算出することにより求められる。
【0050】
化学修飾セルロース繊維集合体の構成要素である化学修飾セルロース微細繊維は、セルロースI型結晶を有しその結晶化度が40%以上であることが好ましい。結晶化度が40%以上であることにより、セルロース結晶構造に由来する特性を発現できる。該結晶化度の値は50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。該結晶化度の上限は、特に限定されないが、例えば、98%以下でもよく、95%以下でもよく、90%以下でもよい。
【0051】
シート状の化学修飾セルロース繊維集合体において、セルロース中の水酸基の水素が一般式(1)で表されるシリル基で置換されている程度である置換度(DS)は、特に限定されないが、0.10〜0.70であることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.60である。
【0052】
本実施形態で得られたシート状の化学修飾セルロース繊維集合体は、有機溶媒へ分散させることができ、有機溶媒中に化学修飾セルロース繊維が分散した化学修飾セルロース繊維分散体を得ることができる。攪拌装置は、特に限定されないが、スターラー、ブレンダー、ホモミキサーなどが挙げられる。化学修飾セルロース繊維分散体の濃度(スラリー濃度)は、攪拌可能であれば特に限定されないが、0.1〜5質量%が好ましい。
【0053】
また、該化学修飾セルロース繊維分散体に対して解繊処理を行うことで、容易に化学修飾セルロース微細繊維分散体を得ることができる。解繊処理としては、化学修飾セルロース繊維を機械的に解繊するものであれば、特に限定されず、例えば、リファイナー、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル(例えば、ロッキングミル、ボールミルなど)、グラインダー、二軸混錬機(二軸押出機)、石臼、振動ミル等を用いて処理する方法が挙げられる。
【0054】
解繊後の化学修飾セルロース微細繊維の繊維幅(平均幅)としては、特に限定されず、例えば、4〜200nmでもよく、4〜100nmでもよい。ここで、繊維幅は、光学顕微鏡観察で50本の化学修飾セルロース微細繊維の繊維幅を測定し平均値を算出することにより求められる。
【0055】
本実施形態に係るシート状の化学修飾セルロース繊維集合体の用途は特に限定されず、例えば、食品、化粧品、機能紙、樹脂補強材等の工業原料として用いることができる。
【0056】
本実施形態によれば、シート状のセルロース繊維集合体を用い、これをシリル化剤と反応させることにより、繊維形状を保持したまま化学修飾セルロース繊維集合体を得ることができるため、効率的かつ高い生産性で、シート状の化学修飾セルロース繊維集合体を製造することができる。また、得られた化学修飾セルロース繊維集合体は、有機溶媒に容易に分散させることができ、また解繊処理により容易に微細化することができるため、ユーザーで解繊処理を行うことも可能である。そのため、シート状でユーザーに供給することを可能にして流通コストを抑えることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
各実施例及び各比較例における測定・評価方法は以下の通りである。
【0059】
(1)セルロースI型結晶化度
セルロース原料および化学修飾セルロース繊維集合体のX線回折強度をX線回折法にて測定し、その測定結果からSegal法を用いて下記式により算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100
式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。また、サンプルのX線回折強度の測定を、株式会社リガク製の「RINT2200」を用いて以下の条件にて実施した:
X線源:Cu/Kα−radiation
管電圧:40Kv
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5〜35°
X線のスキャンスピード:10°/min
【0060】
(2)セルロース繊維集合体の嵩密度
シート状のセルロース繊維集合体を5cm角四方に切り出したものを5サンプル用意し、厚みおよび質量を測定し平均値を算出した。セルロース繊維集合体の質量をその外容積で除した値を嵩密度とした。
【0061】
(3)化学修飾セルロース繊維集合体の同定
化学修飾セルロース繊維集合体において導入基の同定は、フーリエ赤外分光光度計(FT−IR、ATR法)で行った。
【0062】
(4)化学修飾セルロース繊維集合体の置換度(DS)の算出
化学修飾セルロース繊維集合体の置換度は、脱溶媒処理後における未乾燥の化学修飾セルロース繊維集合体のシートを脱シリル化処理した後、生成したシリル化合物をガスクロマトグラフィーで定量することで算出した。詳細には、スクリュー管にアセトン(10mL)、フェノール(480mg)、及び、炭酸カリウム(510mg)を入れて攪拌した後、化学修飾セルロース繊維集合体[A](400mg)を投入し室温中1日間攪拌を行った。繊維が凝集したことを確認した後、赤外分光光度計で脱シリル化の進行を確認した。その後、得られた脱シリル化処理パルプ[B]の重量を計測し、下記計算式から置換度(DS)を算出した。なお、脱シリル化処理パルプ[B]の物質量は、脱シリル化処理されたパルプのグルコースユニット当たりのモル数(=パルプ質量/162)である。
【0063】
DS={(Aの重量−Bの重量)/(シリル化剤の分子量)}/(Bの物質量)
【0064】
(5)化学修飾セルロース繊維集合体の繊維幅測定
シート状の化学修飾セルロース繊維集合体において、化学修飾セルロース繊維の繊維幅の測定は光学顕微鏡観察で行い、50本の繊維を測定し平均値を算出した。
【0065】
(6)化学修飾セルロース繊維集合体の繊維形状評価
シート状の化学修飾セルロース繊維集合体において、化学修飾セルロース繊維の形状評価は、光学顕微鏡観察で行い、下記の基準で評価した。
○:繊維形状を保持しており、繊維の二次壁中層(S2層)が膨潤している。
△:繊維形状を保持しているが、繊維の二次壁中層(S2層)の膨潤は観察できない。
×:繊維形状が保持されず、繊維が溶解または短繊維化している。
【0066】
(7)セルロース微細繊維表面への置換基導入の評価
エタノールによる洗浄後の化学修飾セルロース繊維分散液を微細繊維化処理し、溶液の透明性を測定することで評価した。洗浄後の化学修飾セルロース繊維分散液を固形分濃度0.5質量%になるようN―メチルピロリドンで希釈し、微細化処理として高圧ホモジナイザー(H11、三和エンジニアリング社製)を用いて圧力100MPaで1回処理を行い、得られた分散液について紫外可視分光光度計(UV−Vis)にて透明性を評価し、下記の基準で評価した。透明性が高いほど置換基であるシリル基がセルロース微細繊維表面に十分に導入されており、微細繊維化処理による解繊効果に優れることを意味する。
◎:660nmにおける透過率が80%以上
○:660nmにおける透過率が70%以上80%未満
△:660nmにおける透過率が70%未満
×:微細化処理されず、繊維が沈降し、固液分離している。
【0067】
(8)化学修飾セルロース繊維集合体の溶媒分散性評価
脱溶媒処理後における未乾燥の化学修飾セルロース繊維集合体のシート(固形分:100mg)を50mL容バイアル管(スクリュー管:No.7、株式会社マルエム製)に投入した。そこにエタノールまたは酢酸エチルまたはヘキサン50mLを投入し、攪拌を行った(固形分率:0.2質量%)。それから一晩静置した後、繊維状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:繊維が溶媒中で分散している。
△:繊維が溶媒中で膨潤している。
×:繊維が溶媒中で凝集している。
【0068】
(9)化学修飾セルロース繊維集合体の分散度評価
上記(8)と同様の手順でエタノール分散液を調製した。一晩静置した後、エタノール中における繊維分散度を下記式により算出した。式中の「繊維の保有体積」とは、エタノール分散液において繊維が分散している部分の体積である。繊維分散度が低いほど、繊維の回収がし易く、洗浄及び脱溶媒処理の作業性にも優れることを意味する。
【0069】
繊維分散度(%)=(繊維の保有体積/分散液全体の体積)×100
繊維分散度を踏まえた上で洗浄工程における作業性を以下のように評価した。
○:繊維分散度が30%未満(洗浄工程における作業性が良い)
×:繊維分散度が30%以上(洗浄工程における作業性が悪い)
【0070】
[実施例1]
セパラブルフラスコにN−メチルピロリドン(NMP)30mL、ピリジン8.9g、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)4.5gを投入し、0℃の冷媒でフラスコを冷却しながら5分間攪拌を行った。さらにクロロトリメチルシラン(TMCS)0.2gを少量ずつ滴下した後5分間攪拌を行った。その後、セルロース原料であるシート状のセルロース繊維集合体として、一辺10mmにカットしたシート状の針葉樹パルプ(NBKP、厚み:1mm、嵩密度:10kg/m、セルロースI型結晶化度:85%)3.0gを投入し、シート状のまま25℃で2時間反応させた後、エタノールを投入し反応を停止した。ここで、シリル化剤であるHMDSの使用量は、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり3モルとした。また、触媒であるTMCS及びピリジンの使用量は、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たりそれぞれ0.1モル及び6モルとした。
【0071】
得られたシート状の化学修飾セルロース繊維集合体をエタノールで2〜3回洗浄した後、加圧プレス(室温、0.2MPa)で加圧することで脱溶媒処理および乾燥を行い、厚み2mmのシート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得た。
【0072】
[実施例2〜15、比較例1〜2]
実施例1において、セルロース原料の種類、シリル化剤の種類および仕込量、触媒の種類および仕込量、溶媒の種類および仕込量、反応温度を、表1〜3に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして反応、洗浄、脱溶媒処理を行った。
【0073】
表中の略称は以下の通りである。
・BSA:N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド
・TMSI:N−トリメチルシリルイミダゾール
・TFA:トリフルオロ酢酸
・DMF:ジメチルホルムアミド
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・BMDMCS:ブロモメチルジメチルクロロシラン
・TEMPO酸化処理NBKP:特開2011−116865号公報に記載の実施例1における酸化反応工程及び精製工程と同様の手順で調製
・CNF:セルロースナノファイバー(NBKP由来、平均繊維径:20nm)
【0074】
得られた化学修飾セルロース繊維集合体について、導入基の同定、置換度及び結晶化度の算出、繊維幅の測定、繊維形状の評価、微細繊維表面への置換基導入の評価、化学修飾セルロース繊維集合体の溶媒分散性の評価、及び、化学修飾セルロース繊維集合体の分散度評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
結果は表1〜3に示す通りである。比較例1では、シリル化剤を使用していないため、セルロース繊維は化学修飾されておらず、有機溶媒への分散性に劣っており、また微細化処理による解繊が不十分で繊維分散液の透明性にも劣っていた。比較例2では、セルロース繊維を事前解繊したCNFを用いてシリル化しており、分散度評価において繊維分散度が100%であり、すなわち、エタノールの全体に繊維が分散していた。これは、分散液の全体に繊維間の三次元ネットワークが形成されていることを意味し、繊維がエタノールを抱くことにより粘性が高くなっており、そのため、繊維を回収しにくく、洗浄及び脱溶媒処理の作業性に劣っていた。
【0078】
これに対し、実施例1〜15では、短時間の反応でありながら、セルロース繊維形状を保持したままセルロース微細繊維表面にシリル基を導入することができた。また、解繊せずに化学修飾するため、分散度評価において繊維分散度が低く、そのため、ろ液性が高く、粘性の低いものであり、洗浄及び脱溶媒処理の作業性に優れていた。従って、効率的かつ高い生産性で化学修飾セルロース繊維集合体を得ることができた。また、得られた化学修飾セルロース繊維集合体は有機溶媒への分散性に優れており、また微細化処理により容易にセルロース微細繊維に解繊されており、得られた微細繊維分散液の透明性に優れていた。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
【課題】化学修飾セルロース繊維集合体を効率的かつ高い生産性で工業的に有利に製造する。
【解決手段】実施形態に係る化学修飾セルロース繊維集合体の製造方法は、シート状のセルロース繊維集合体と一般式(1)で表される基を有するシリル化剤とを反応させてシート状の化学修飾セルロース繊維集合体を得るものである。
【化1】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、一部又は全ての水素原子がハロゲン原子に置換されてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
【選択図】なし