【実施例】
【0040】
以下に、本発明の一実施例である配筋用スペーサについて、
図1乃至
図7に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本実施例である配筋用スペーサの使用態様図であり、
図2は、本実施例の配筋用スペーサにおける鉄筋載置部の屈曲の状態を示す平面図であり、
図3は、本実施例の配筋用スペーサを示す斜め上方から視た斜視図であり、
図4は、本実施例の配筋用スペーサを示す斜め下方から視た斜視図であり、
図5は、粗骨材を包接する仮想球体と鉄筋支持脚部との相互関係を示す説明図であり、
図6は、本発明の配筋用スペーサにおける錐状突起部を示す拡大斜視図であり、
図7は、本発明の配筋用スペーサが水平方向に変位する様子を段階的に示す側面図である。
【0041】
本発明の一実施例である配筋用スペーサ100は、
図1に示すように、下型枠で囲まれた施工平坦面Gに複数の配筋用スペーサ100をほぼ等間隔に配置し、さらに鉄筋載置部110上に多数の鉄筋からなる鉄筋格子を載置することにより、スラブ施工するために粗骨材CAを含むコンクリートを打設する際に、かぶり厚さCを確保して鉄筋としての鉄筋格子BMを敷設することに用いるものである。
【0042】
具体的に、本実施例の配筋用スペーサ100は、樹脂製品であって、V字状に屈曲形成された鉄筋載置部110と、この鉄筋載置部110から施工平坦面Gに向けて垂設した複数の鉄筋支持脚部120とを備えている。
そして、上述した鉄筋載置部110は、
図2に示すように、施工平坦面Gに沿った帯板状であって、屈曲角αが約60度に形成され、これにより、鉄筋格子BMの載置による転倒を防止している。
また、この鉄筋載置部110の最大長さLは、約330mmに形成され鉄筋格子BMの網目寸法Sの2倍より大きく、これにより、複数の鉄筋を直接支持し、脱落を発生せない。
【0043】
図3および
図4に示すように、本実施例の配筋用スペーサ100は、上述した鉄筋載置部110の側縁部位から施工平坦面Gに向けてそれぞれ垂設した左右一対の側縁リブ111と左右一対の側縁リブ111の相互間に並行して施工平坦面Gに向けて垂設した中央リブ112とを備えている。
これにより、帯板状の鉄筋載置部110の曲げに対する強度が大きく、鉄筋格子BMの荷重による鉄筋載置部110の変形量が小さくなっている。
さらに、帯板状の鉄筋載置部110には、そのほぼ全面にわたって、鉄筋載置部110の上下に貫通した複数の長方形状の脱気孔113を有し、配筋用スペーサ100の下に水平方向からコンクリートが流入した際に鉄筋載置部110の直下に取り残された空気が、複数の脱気孔113から上方に抜ける。
なお、脱気孔113の形状は、鉄筋載置部110の屈曲部位では屈曲角αに対応した台形状となっている。
【0044】
一方、上述した鉄筋支持脚部120は、側縁リブ111から延設した左右一対となる側縁脚部121と中央リブ112から延設した中央脚部122とで構成されている。
これにより、
図5に示すように、鉄筋載置部110で受けた鉄筋の荷重が施工平坦面Gに向けて垂設した側縁脚部121と中央脚部122に垂直にかかるため、鉄筋支持脚部120が変形せず所定のかぶり厚さCを確実に確保している。
【0045】
本実施例では、
図4に示すように、鉄筋載置部110の両端部位および屈曲部位を含む部位に合計5対の側縁脚部121を設けるとともに4本の中央脚部122を設けている。
【0046】
また、上述した鉄筋支持脚部120を構成する側縁脚部121および中央脚部122は、それぞれ施工平坦面Gに向けて先細状に形成されて逆三角形板状となっており、特に、鉄筋載置部110の屈曲部位に垂設する側縁脚部121が、他の部位に垂設する側縁脚部121よりも細く形成されている。
これにより、コンクリート中の粗骨材CAが屈曲部位に垂設する脚部間にまでいっそう確実に充填される。
【0047】
そして、側縁脚部121は、側縁脚部補強リブ121aを備えており、対向する側縁脚部121同士が側縁脚部補強リブ121aで連結されている。
そして、側縁脚部補強リブ121aの下部にU字状等の切り欠き部が設けられている。
これにより、コンクリートが、この切り欠き部を通過して側縁脚部補強リブ121aの反対側に流入し、コンクリートが配筋用スペーサ100下の鉄筋支持脚部120の相互間に確実に充填される。
【0048】
さらに、本実施例の配筋用スペーサ100の鉄筋載置部110では、側縁脚部補強リブ121aと並行で側縁リブ111および中央リブ112に直交する複数のリブをさらに施工平坦面Gに向けて垂設しており、鉄筋載置部110の短手方向の曲げに対する強度を増している。
そして、上述した中央脚部122は、その両側に逆三角形板状の中央脚部補強リブ122aを備え、底面視で十字の断面を有しており、鉄筋支持脚部120の強度を増している。
さらに、側縁脚部121と中央脚部122とは、粗骨材を包接する仮想球体FQが側縁脚部121と中央脚部122との間隙を通過するように配置されている。
これにより、コンクリート中の粗骨材CAがどのような形状であっても、鉄筋支持脚部120の相互間に確実に充填される。
なお、本実施例において、コンクリートに含まれる粗骨材CAの最大寸法は、20mmであるから、仮想球体FQの直径は、20mmとなる。
【0049】
さらに、粗骨材を包接する仮想球体FQが、隣接する側縁脚部121の間隙を横に2つ並んで通過できるように、側縁脚部121が配置されている。
そして、粗骨材CAが、鉄筋支持脚部120の相互間に効率的に充填され、さらに、側縁脚部121と中央脚部122とが、鉄筋載置部110の長手方向に沿って交互に配置されている。
その結果、側縁脚部121間を通って鉄筋載置部110の下に流入した粗骨材CAが中央脚部122にぶつかってその流入方向を変え、鉄筋支持脚部120の相互間に効率的かつ確実に充填される。
【0050】
つぎに、本実施例の配筋用スペーサ100が、最も特徴部分として
図6に示すように、鉄筋載置部110から鉄筋格子BMに向けて突出する錐状突起部130について、以下にその詳細構造を説明する。
【0051】
すなわち、
図6に示すように、この錐状突起部130は、側縁脚部121および中央脚部122から構成される鉄筋支持脚部120の垂設部位を除く鉄筋載置部110の載置面部位に設けられ、帯板状の鉄筋載置部110の長手方向および幅方向に沿って形成された下降傾斜面131を有している。
これにより、
図7に示すように、鉄筋格子BMを鉄筋載置部110上に載置した際の鉄筋の被支持部位が、錐状突起部130上にあるとき(
図7(A)参照)、鉄筋格子BMを移動させることなく、配筋後の鉄筋からの荷重負荷に起因して錐状突起部130の下降傾斜面131に生じた押圧力が、この押圧力の作用する錐状突起部130を介して、鉄筋載置部110を鉄筋格子BMに対して相対的に水平方向へ変移させる(
図7(B)、
図7(C)参照)。
その結果、鉄筋格子BMを移動させることなく、配筋後の鉄筋からの荷重負荷に起因して錐状突起部130の下降傾斜面131に生じた押圧力が、この押圧力の作用する錐状突起部130を介して、錐状突起部130と一体に連動する鉄筋載置部110を鉄筋格子BMに対して相対的に水平方向へ変位させるため、鉄筋載置部110が鉄筋格子BMに対して相対的に位置合わせする、所謂、セルフアライメント機能を発揮する。
【0052】
以下、さらに
図1および
図7を参照して、本実施例の配筋用スペーサ100を使用して、スラブ施工する際の手順を説明する。
【0053】
本実施例の配筋用スペーサ100を使用してスラブ施工するには、まず、施工範囲の施工平坦面Gに、本実施例の配筋用スペーサ100を概ね一定スパンで複数配置する。
スパンは、縦方向および横方向のいずれも鉄筋格子BMの網目寸法Sの約3倍としている。
ここで、縦方向とは、鉄筋格子BMを構成する鉄筋のうち、下側にあって、本実施例の配筋用スペーサ100に直接触れる鉄筋の長手方向を指し、横方向とは、鉄筋格子BMを構成する多数の鉄筋のうち、上側にある鉄筋の長手方向を指す。
本実施例の配筋用スペーサ100が鉄筋を支持する位置で確保するかぶり厚さCは、約30mmである。
【0054】
次に、本実施例の配筋用スペーサ100の鉄筋載置部110上に、網目寸法Sが150mmの鉄筋格子BMを載置し、施工平坦面Gと鉄筋格子BMとが水平になるよう配設する。
そして、帯板状に形成された鉄筋載置部110が、鉄筋を面で支えて鉄筋の被支持部位に発生する応力を分散させるので、従来のような棒状の載置部で鉄筋格子BMを支持する場合に比べて鉄筋格子BMの変形が小さい。
【0055】
次に、施工平坦面Gの上にレディミクストコンクリートを打設する。
この時、上述したように、施工平坦面Gに向けて先細状に形成された逆三角形板状の鉄筋支持脚部120によって、屈曲部位を含む鉄筋支持脚部120の相互間に粗骨材CAを含むコンクリートが確実に充填される。
【0056】
以上に説明したように、本実施例の配筋用スペーサ100によれば、鉄筋に向けて鉄筋載置部110から突出する錐状突起部130が、鉄筋載置部110と一体に形成されていることにより、錐状突起部130が、配筋後の鉄筋格子BMから鉄筋載置部110へ負荷される荷重を受け止めても、この受け止めた荷重により錐状突起部130に作用する押圧力で鉄筋載置部110を配筋後の鉄筋格子BMに対して相対的に水平方向へ変移させるため、鉄筋載置部が配筋後の鉄筋格子BMに対して不充分な支持位置に配置されていたとしても、鉄筋載置部110と一体に形成された錐状突起部130が、配筋後の鉄筋格子BMに対して充分に支持できるように配筋後の鉄筋格子BMに対して鉄筋載置部110を相対的に位置決め調整する、所謂、セルフアライメント機能を発揮し、その結果、配筋後の鉄筋格子BMまたは鉄筋載置部110を人手で位置合わせしたり、相互の配置状態を微調整したりする余計な手間を省くことができる。
【0057】
そして、本実施例の配筋用スペーサ100に設けた錐状突起部130が、鉄筋支持脚部120の垂設部位を除く鉄筋載置部110の載置面部位に設けられていることにより、鉄筋支持脚部120が垂設されていない鉄筋載置部110の載置面部位を肉盛りして補強することができるとともに、鉄筋支持脚部120が垂設されていない鉄筋載置部110の載置面部位で荷重負荷が生じた場合であっても、錐状突起部130が、鉄筋支持脚部120が垂設された鉄筋載置部110の載置面部位に配筋後の鉄筋を変移させるために、鉄筋支持脚部120が垂設されていない鉄筋載置部110の載置面部位における破断破壊を未然に防止することができる。
【0058】
そして、鉄筋載置部110が、施工平坦面Gに沿った帯板状に形成されていることにより、配筋後の鉄筋格子BMに上から力が加わった場合に生じがちな鉄筋格子BMの変形を抑制するとともに鉄筋格子BMを安定して支持して、コンクリート打設時にコンクリートの均一なかぶり厚さCを確保することができるなど、その効果は甚大である。