特許第6348207号(P6348207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348207排気系のための熱電発電装置および熱電発電装置の接点部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348207
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】排気系のための熱電発電装置および熱電発電装置の接点部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/08 20060101AFI20180618BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20180618BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20180618BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20180618BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   H01L35/08
   F01N5/02 B
   F02G5/02 C
   H01L35/32 A
   H02N11/00 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-110862(P2017-110862)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2018-22881(P2018-22881A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年8月28日
(31)【優先権主張番号】10 2016 110 625.9
(32)【優先日】2016年6月9日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー、ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】フロベニウス、ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセ、マティアス
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−006619(JP,A)
【文献】 特開2000−352313(JP,A)
【文献】 特開2000−286469(JP,A)
【文献】 特開2013−110825(JP,A)
【文献】 特開2017−220492(JP,A)
【文献】 特表2004−526930(JP,A)
【文献】 特開2001−012240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/16
H01L 35/00−37/04
H02K 24/00−27/30
H02K 31/00−31/04
H02K 35/00−35/06
H02K 39/00
H02K 47/00−47/30
H02K 53/00
H02K 99/00
H02N 1/00− 1/12
H02N 3/00−99/00
F01N 1/00− 1/24
F01N 5/00− 5/04
F01N 13/00−99/00
F02G 1/00− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体を通過させるための入口(11)と出口(12)とを有する第1の流路(1)であって、該第1の流路(1)の該入口(11)と該出口(12)とが前記高温流体のための第1の流れ方向(10)を規定する第1の流路(1)と、
低温流体を通過させるための入口(21)と出口(22)とを有する第2の流路(2)であって、該第2の流路(2)の該入口(21)と該出口(22)とが前記低温流体のための第2の流れ方向(20)を規定する第2の流路(2)と、
前記第1の流路(1)と前記第2の流路(2)との間に配置され、前記第1の流れ方向(10)に沿って互いに隣接する複数の熱電対素子(3;31,32,33)と、
前記複数の熱電対素子(3;31,32,33)と前記第1の流路(1)の壁との間に配置され、個々の前記熱電対素子(3;31,32,33)に対応付けられた接点部分(41,42,43)を含む第1の接点部材(4)であって、該接点部分(41,42,43)がそれぞれに対応付けられた前記熱電対素子(3;31,32,33)と前記第1の流路(1)の壁との間に熱伝導結合を提供する、第1の接点部材(4)と、
前記複数の熱電対素子(3;31,32,33)と前記第2の流路(2)の壁との間に配置され、個々の前記熱電対素子(3;31,32,33)に対応付けられた接点部分(51,52,53)を含む第2の接点部材(5)であって、該接点部分(51,52,53)がそれぞれに対応付けられた前記熱電対素子(3;31,32,33)と前記第2の流路(2)の壁との間に熱伝導結合を提供する、第2の接点部材(5)と、を含み、
前記第1の流れ方向(10)に沿って第2の熱電対素子(32)の上流に位置する第1の熱電対素子(31)に対応付けられた前記第1および第2の接点部材(4,5)の接点部分(41,51)の熱抵抗の和が、前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた前記第1および第2の接点部材(4,5)の接点部分(42,52)の熱抵抗の和よりも大きく、
前記第1の接点部材(4)の前記接点部分(41,42,43)における異なる熱抵抗が、以下の手段のうちの1つもしくは複数に基づくものであり、該手段は、
前記第1の熱電対素子(31)と第1の流路(1)との間の接点部分(41)における前記第1の接点部材(4)の厚さが、前記第2の熱電対素子(32)と第1の流路(1)との間の接点部分(42)における前記第1の接点部材(4)の厚さよりも大きいこと、および/または、
前記第1の接点部材(4)の、高い熱伝導性を有する物質の含有量が、前記第1の熱電対素子(31)と第1の流路(1)との間の接点部分(41)において、前記第2の熱電対素子(32)と第1の流路(1)との間の接点部分(42)におけるよりも低いこと、および/または、
前記第1の熱電対素子(31)と第1の流路(1)との間の接点部分(41)における前記第1の接点部材(4)の有効断面積が、前記第2の熱電対素子(32)と第1の流路(1)との間の接点部分(42)における前記第1の接点部材(4)の有効断面積よりも小さいこと、および/または、
前記第1の接点部材(4)が前記接点部分(41)において前記第1の熱電対素子(31)に接触する表面の大きさが、前記第1の接点部材(4)が前記接点部分(42)において前記第2の熱電対素子(32)に接触する表面の大きさよりも小さいことであり、
前記第1の接点部材(4)が、少なくとも1つの接点部分(41,42)に、前記第1の流れ方向(10)に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部(46)を含む、熱電発電装置(7)。
【請求項2】
前記第2の接点部材(5)の前記接点部分(51,52,53)における異なる熱抵抗が、以下の手段のうちの1つもしくは複数に基づくものであり、該手段は、
前記第1の熱電対素子(31)と第2の流路(2)との間の接点部分(51)における前記第2の接点部材(5)の厚さが、前記第2の熱電対素子(32)と第2の流路(2)との間の接点部分(52)における前記第2の接点部材(5)の厚さと異なること、および/または、
前記第2の接点部材(5)の、高い熱伝導性を有する物質の含有量が、前記第1の熱電対素子(31)と第2の流路(2)との間の接点部分(51)と、前記第2の熱電対素子(32)と第2の流路(2)との間の接点部分(52)とで異なること、および/または、
前記第1の熱電対素子(31)と第2の流路(2)との間の接点部分(51)における前記第2の接点部材(5)の有効断面積が、前記第2の熱電対素子(32)と第2の流路(2)との間の接点部分(52)における前記第2の接点部材(5)の有効断面積と異なること、および/または、
前記第2の接点部材(5)が前記接点部分(51)において前記第1の熱電対素子(31)に接触する表面の大きさが、前記第2の接点部材(5)が前記接点部分(52)において前記第2の熱電対素子(32)に接触する表面の大きさと異なることである、請求項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項3】
高温流体を通過させるための入口(11)と出口(12)とを有する第1の流路(1)であって、該第1の流路(1)の該入口(11)と該出口(12)とが前記高温流体のための第1の流れ方向(10)を規定する第1の流路(1)と、
低温流体を通過させるための入口(21)と出口(22)とを有する第2の流路(2)であって、該第2の流路(2)の該入口(21)と該出口(22)とが前記低温流体のための第2の流れ方向(20)を規定する第2の流路(2)と、
前記第1の流路(1)と前記第2の流路(2)との間に配置され、前記第1の流れ方向(10)に沿って互いに隣接する複数の熱電対素子(3;31,32,33)と、
前記複数の熱電対素子(3;31,32,33)と前記第1の流路(1)の壁との間に配置され、個々の前記熱電対素子(3;31,32,33)に対応付けられた接点部分(41,42,43)を含む第1の接点部材(4)であって、該接点部分(41,42,43)がそれぞれに対応付けられた前記熱電対素子(3;31,32,33)と前記第1の流路(1)の壁との間に熱伝導結合を提供する、第1の接点部材(4)と、
前記複数の熱電対素子(3;31,32,33)と前記第2の流路(2)の壁との間に配置され、個々の前記熱電対素子(3;31,32,33)に対応付けられた接点部分(51,52,53)を含む第2の接点部材(5)であって、該接点部分(51,52,53)がそれぞれに対応付けられた前記熱電対素子(3;31,32,33)と前記第2の流路(2)の壁との間に熱伝導結合を提供する、第2の接点部材(5)と、を含み、
前記第1の流れ方向(10)に沿って第2の熱電対素子(32)の上流に位置する第1の熱電対素子(31)に対応付けられた前記第1および第2の接点部材(4,5)の接点部分(41,51)の熱抵抗の和が、前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた前記第1および第2の接点部材(4,5)の接点部分(42,52)の熱抵抗の和よりも大きく、
前記第2の接点部材(5)の前記接点部分(51,52,53)における異なる熱抵抗が、以下の手段のうちの1つもしくは複数に基づくものであり、該手段は、
前記第1の熱電対素子(31)と第2の流路(2)との間の接点部分(51)における前記第2の接点部材(5)の厚さが、前記第2の熱電対素子(32)と第2の流路(2)との間の接点部分(52)における前記第2の接点部材(5)の厚さと異なること、および/または、
前記第2の接点部材(5)の、高い熱伝導性を有する物質の含有量が、前記第1の熱電対素子(31)と第2の流路(2)との間の接点部分(51)と、前記第2の熱電対素子(32)と第2の流路(2)との間の接点部分(52)とで異なること、および/または、
前記第1の熱電対素子(31)と第2の流路(2)との間の接点部分(51)における前記第2の接点部材(5)の有効断面積が、前記第2の熱電対素子(32)と第2の流路(2)との間の接点部分(52)における前記第2の接点部材(5)の有効断面積と異なること、および/または、
前記第2の接点部材(5)が前記接点部分(51)において前記第1の熱電対素子(31)に接触する表面の大きさが、前記第2の接点部材(5)が前記接点部分(52)において前記第2の熱電対素子(32)に接触する表面の大きさと異なることであり、
前記第2の接点部材(5)が、少なくとも1つの接点部分(51,52)に、前記第2の流れ方向(20)に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部(56)を含む、熱電発電装置(7)。
【請求項4】
前記第1の接点部材(4)の前記接点部分(41,42,43)における異なる熱抵抗が、以下の手段のうちの1つもしくは複数に基づくものであり、該手段は、
前記第1の熱電対素子(31)と第1の流路(1)との間の接点部分(41)における前記第1の接点部材(4)の厚さが、前記第2の熱電対素子(32)と第1の流路(1)との間の接点部分(42)における前記第1の接点部材(4)の厚さよりも大きいこと、および/または、
前記第1の接点部材(4)の、高い熱伝導性を有する物質の含有量が、前記第1の熱電対素子(31)と第1の流路(1)との間の接点部分(41)において、前記第2の熱電対素子(32)と第1の流路(1)との間の接点部分(42)におけるよりも低いこと、および/または、
前記第1の熱電対素子(31)と第1の流路(1)との間の接点部分(41)における前記第1の接点部材(4)の有効断面積が、前記第2の熱電対素子(32)と第1の流路(1)との間の接点部分(42)における前記第1の接点部材(4)の有効断面積よりも小さいこと、および/または、
前記第1の接点部材(4)が前記接点部分(41)において前記第1の熱電対素子(31)に接触する表面の大きさが、前記第1の接点部材(4)が前記接点部分(42)において前記第2の熱電対素子(32)に接触する表面の大きさよりも小さいことである、請求項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項5】
前記第1および第2の接点部材(4,5)のうちの少なくとも一方が、前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(41,51)と前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(42,52)との間に、熱抵抗を隣接する接点部分(41,42;51,52)の平均熱抵抗に対して少なくとも5倍増大させた隔離領域(45,55)を含むか、または、
前記第1および第2の接点部材(4,5)のうちの少なくとも一方が、前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(41,51)と前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(42,52)との間に、熱抵抗を隣接する接点部分(41,42;51,52)の平均熱抵抗に対して少なくとも10倍増大させた隔離領域(45,55)を含む、請求項1、2、3、またはに記載の熱電発電装置(7)。
【請求項6】
記第2の接点部材(5)が、少なくとも1つの接点部分(51,52)に、前記第2の流れ方向(20)に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部(56)を含む、請求項1または2に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項7】
前記第1の接点部材(4)が、少なくとも1つの接点部分(41,42)に、前記第1の流れ方向(10)に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部(46)を含む、請求項3または4に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項8】
前記第1の接点部材(4)が、前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(41)と前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(42)との間に、前記第1の流れ方向(10)を横断する方向に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部(45)を含み、かつ/または、
前記第2の接点部材(5)が、前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(51)と前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(52)との間に、前記第2の流れ方向(20)を横断する方向に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部(55)を含む、請求項1からのうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項9】
前記第1の接点部材(4)の前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(41)における熱抵抗が、前記第1の接点部材(4)の前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(42)における熱抵抗よりも高い、請求項1からのうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項10】
前記第1の流れ方向(10)と前記第2の流れ方向(20)とが同じ向きである場合、前記第2の接点部材(5)の前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(51)における熱抵抗が、前記第2の接点部材(5)の前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(52)における熱抵抗よりも高く、
前記第1の流れ方向(10)と前記第2の流れ方向(20)とが反対向きである場合、前記第2の接点部材(5)の前記第1の熱電対素子(31)に対応付けられた接点部分(51)における熱抵抗が、前記第2の接点部材(5)の前記第2の熱電対素子(32)に対応付けられた接点部分(52)における熱抵抗よりも低い、請求項1からのうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項11】
前記第1の接点部材(4)が配置された前記第1の流路(1)の壁が、平滑で、冷却フィンを有しないか、もしくは、
前記第1の接点部材(4)が配置された前記第1の流路(1)の壁が、前記第1の流れ方向(10)に沿って均一に分布された冷却フィン(61)を有し、かつ/または、
前記第2の接点部材(5)が配置された前記第2の流路(2)の壁が、平滑で、冷却フィンを有しないか、もしくは、
前記第2の接点部材(5)が配置された前記第2の流路(2)の壁が、前記第2の流れ方向(20)に沿って均一に分布された冷却フィン(62)を有する、請求項1から10のうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項12】
前記第1の接点部材(4)が、全ての接点部分(41,42,43)をモノブロックの設計で提供し、かつ/または、
前記第2の接点部材(5)が、全ての接点部分(51,52,53)をモノブロックの設計で提供する、請求項1から11のうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項13】
前記複数の熱電対素子(31,32,33)が、前記第1の流路(1)と前記第2の流路(2)との間に単一層として配置された、請求項1から12のうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項14】
前記第1の熱電対素子(31)および前記第2の熱電対素子(32)の構造が同一であるか、または、
前記複数の熱電対素子(3;31,32,33)のうちの全ての熱電対素子(3;31,32,33)の構造が同一である、請求項1から13のうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項15】
前記第1の接点部材(4)が、黒鉛、シリコーンゴム、ポリイミド、アルミナ、マイカナイト、もしくはアクリルポリマーからなる熱伝導フィルムであり、かつ/または、
前記第2の接点部材(5)が、黒鉛、シリコーンゴム、ポリイミド、アルミナ、マイカナイト、もしくはアクリルポリマーからなる熱伝導フィルムである、請求項1から14のうちの一項に記載の熱電発電装置(7)。
【請求項16】
内燃機関によって駆動される車両のための排気系(8)であって、請求項1から15のうちの一項に記載の熱電発電装置(7)を含み、前記第1の流路(1)が、該排気系の排気ガス配管であるか、または、該排気系の排気ガス配管(81)に連結されるように構成されている、排気系(8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体(例えば、内燃機関によって駆動される車両の排気ガス)に含まれる熱エネルギーを少なくとも部分的に電気エネルギーに変換するように構成された熱電発電装置に関する。このようにすることで、高温流体に含まれる熱エネルギーが損失となるシステムの全体効率が改善される。車両の場合は、これにより、1キロメートル当たりの燃料消費量および排出物質が減少する。本発明は、さらに、このような熱電発電装置のための接点部材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電発電装置(TEG:thermoelectric generator)は、熱(より正確には、熱電発電装置を通過する熱流)を電気エネルギーに直接変換する。この点で、熱電発電装置は、熱電発電装置の低温側と高温側との間に搭載されて直列および/または並列に電気的に接続された複数の熱電対素子(しばしば「熱電モジュール」とも呼ばれる)(TEM)からなる。熱電対素子は、熱エネルギーから電気エネルギーへの実際の変換を行う。当該変換は、様々な効果(例えば、ゼーベック効果またはトムソン効果)に基づき得る。ある熱伝導性を低温側と高温側と各熱電対素子との間で得るために、熱電発電装置は、熱伝導性の高い材料からなる1つまたは複数の接点部材を含むことが多い。このような接点部材は、特に、凹凸をならすことで熱電対素子の全表面において熱伝導を可能にする働きがある。
【0003】
公知の熱電対素子が適度な効率を有する動作温度範囲は比較的狭い。この動作温度範囲内では、熱電対素子の効率は、低温側と高温側との間の温度差によって決まる。当該効率は、熱電対素子によって提供される(電気)電圧にとりわけ影響を及ぼす。一般的な熱電対素子は、基本的に、Bi2Te3、PbTe、SiGe、BiSb、またはFeSi2から成る。
【0004】
熱電発電装置を用いる際、損傷を受けやすい(特に、圧力による損傷を受けやすい)熱電対素子を、流体流(例えば、内燃機関によって駆動される車両の排気管)の中に、流体の背圧を増加させないか、またはわずかにしか増加させないようにしながら、使用可能な最大温度差が該熱電対素子の表面に加えられるように、組み込むことが重要である。これは、背圧が増加すると、流体の移送に必要なエネルギー(また、ひいては、内燃機関によって駆動される車両の燃料消費量)の増加にもつながるからである。最後に、可能であれば、熱電対素子をそれらが適度な効率を示す動作温度範囲で動作させることが望ましい。車両で使用する場合には、車両内または車両下方の空間が限られているため、これらの問題を解決することは困難でもある。
【0005】
内燃機関によって駆動される車両の排気系における熱電発電装置の使用が従来技術から知られている。例えば、欧州特許出願公開第1475532(A2)号明細書、特開平07−012009号公報、および国際公開第2009/138158(A1)号を参照されたい。
【0006】
国際公開第2009/138158(A1)号からは、使用される熱電発電装置の低温側を冷媒回路に連結することによって熱電発電装置を冷却することが知られている。さらに、国際公開第2009/138158(A1)号からは、使用される熱電発電装置の高温側においてフィンを用いて高熱の排気ガスからの熱吸収を増加させることが知られている。高熱の排気ガス流の上流領域における熱電対素子の熱伝導性を該高熱の排気ガス流の下流領域における熱電対素子よりも低くするために、使用するフィンの密度またはフィンの種類を、排気ガス流の流れ方向に沿って変化させなければならない。
【0007】
従来技術のシステムの短所は、高温流体の温度にばらつきがある場合に、高温流体の幅広い温度範囲の使用を可能にするために、多くの場合において、異なる動作温度範囲になるように構成されたいくつかの熱電発電装置が高温流体のためのバイパスと組み合わせて用いられる点である。しかしながら、バイパスは、複数の熱電発電装置が使用されるため、多くのスペースを必要とし、かつ高価である。
【0008】
さらに、従来技術のシステムの問題の1つは、多くの場合において、高温流体から熱エネルギーが取り出されるため、高温流体の流れ方向に沿って並列/直列に配置された熱電発電装置の熱電対素子が、異なる温度差に遭遇する点である。この結果、熱電対素子は、接続される電力変換装置(power electronic)の複雑な構成の原因となる異なる電気電圧を発生させる(そして、異なる出力を生じる)。
【0009】
また、従来技術のシステムには、高温流体の上流に位置する熱電発電装置の熱電対素子の熱的過負荷を防止しなければならないという問題がある。
【0010】
最後に、熱電発電装置の取付けは、複数の構成要素(熱電対素子および接点部材)のために、労力を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1475532号明細書
【特許文献2】特開平07−012009号公報
【特許文献3】国際公開第2009/138158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実施形態は、流体に含まれる熱エネルギーを電気エネルギーに変換するためのコンパクトな熱電発電装置であって、動作温度範囲が特に広く、かつ製造が容易な熱電発電装置を提供する。
【0013】
さらなる実施形態は、流体に含まれる熱エネルギーを電気エネルギーに変換するためのコンパクトな熱電発電装置であって、当該熱電発電装置を形成する全ての熱電対素子が実質的に同じ熱流を受け取る熱電発電装置を提供する。本明細書中、実質的に同じ熱流とは、個々の熱電対素子に伝えられる熱流のパワーの差が20%未満、特に、10%未満である熱流をいう。その結果として、各熱電対素子のパワーもほぼ同じである。
【0014】
さらなる実施形態は、流体に含まれる熱エネルギーを電気エネルギーに変換するためのコンパクトな熱電発電装置であって、高温流体の上流の熱電対素子が熱的に過負荷になることを防止する熱電発電装置を提供する。
【0015】
さらなる実施形態は、上記熱電発電装置に適し、かつ、設置にかかる手間を簡略化する接点部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
熱電発電装置の実施形態は、高温流体を通過させるための第1の流路と、低温流体を通過させるための第2の流路と、上記第1の流路と上記第2の流路との間に配置された複数の熱電対素子と、上記複数の熱電対素子と上記第1の流路の壁との間に位置する第1の接点部材と、上記複数の熱電対素子と上記第2の流路の壁との間に位置する第2の接点部材とを含む。上記第1の流路は、入口と出口とを含み、これにより上記高温流体のための第1の流れ方向を規定する。よって、上記高温流体は、第1の流路の入口を通って第1の流路に入り、出口を通って第1の流路から出ていく。したがって、上記第2の流路も、入口と出口とを含み、これにより上記低温流体のための第2の流れ方向を規定する。よって、上記低温流体は、第2の流路の入口を通って第2の流路に入り、出口を通って第2の流路から出ていく。上記複数の熱電対素子のうちのいくつかの熱電対素子は、上記第1の流路と上記第2の流路との間に、上記第1の流れ方向に沿って対をなして互いに隣接するように配置される(これにより、上記第1の流れ方向に沿う熱電対素子の直列配列が得られる)。隣接する熱電対素子は、互いに直接隣り合っていてもよく、離間されていてもよい。上記複数の熱電対素子と上記第1の流路の壁との間に配置された上記第1の接点部材は、個々の熱電対素子に対応付けられた接点部分であって、それぞれの熱電対素子と上記第1の流路の壁との間に熱伝導結合を提供する接点部分を含む。この熱伝導結合は、熱抵抗を有し、熱伝導を促進(比較的低い熱抵抗の場合)または阻害(比較的高い熱抵抗の場合)し得る。したがって、上記複数の熱電対素子と上記第2の流路の壁との間に配置された第2の接点部材も、個々の熱電対素子に対応付けられた接点部分であって、それぞれの熱電対素子と上記第2の流路の壁との間に熱伝導結合を提供する接点部分を含む。この熱伝導結合は、熱抵抗を有し、熱伝導を促進(比較的低い熱抵抗の場合)または阻害(比較的高い熱抵抗の場合)し得る。上記第1の流れ方向において第2の熱電対素子の上流(よって、上記高温流体の入口に近い方)に位置する第1の熱電対素子に対応付けられた上記第1および第2の接点部材の接点部分の熱抵抗の和は、第2の熱電対素子(上記高温流体の入口から遠い方に位置する)に対応付けられた上記第1および第2の接点部材の接点部分の熱抵抗の和よりも大きい。
【0017】
本明細書中、第1の流路を通る流体に関する「高温」という形容詞は、当該流体の温度が第2の流路を通る「低温」流体よりも高いことを意味する。
【0018】
さらに、本明細書中、「流路」という用語は、一般に、例えば管路のような、流体流を通過させるための本体(body)をいう。流体流を通過させる本体の断面は一定であることが好ましい。
【0019】
本明細書中、「熱電対素子(thermocouple element)」という用語は、熱を電気エネルギーに直接変換することを可能にする電気デバイスをいう。
【0020】
最後に、本明細書中、「熱抵抗」という用語は、各接点部材の各接点部分の熱伝達率と伝達面積の大きさとの積の逆数をいう。熱伝達率は、ある一定期間に各接点部分を通して伝達される熱量を測定することによって測定され得、一実施形態によると、対応付けられた熱電対素子が最も高い効率を示す各接点部分の前後における温度差に温度差が用いられる。あるいは、800℃(高温側)と300℃(低温側)との温度差が熱伝達率を測定するために用いられてもよい。
【0021】
上記の構成により、熱電発電装置は、従来技術に比べて、高温流体に関して、より高い温度で動作することが可能である。これは、上記第1の接点部材のそれぞれの熱電対素子に対応付けられた接点部分に相応に高い熱抵抗を故意に付与することによって、上記第1の流路の入口近傍に配置された熱電対素子の熱的過負荷を防止することができるからである。この結果、熱電発電装置の特に広い範囲の動作温度がバイパスを必要とすることなく達成されることにもなる。
【0022】
また、第1の流れ方向に沿って配置された熱電対素子に対応付けられた第1および第2の接点部材の接点部分の熱抵抗の和のそれぞれを、高温流体および低温流体の温度、流量、および熱容量に対して適切に調節することによって、上記第1の流路と上記第2の流路との間で上記第1の熱電対素子を通って伝達される熱量(熱流)と、上記第1の流路と上記第2の流路との間で上記第2の熱電対素子(および上記第1の流れ方向に沿って下流に(次に)配置された各熱電対素子)を通って伝達される熱量とが、確実にほぼ同じになり得る。このことは、第1の流れ方向に沿って順次配置された熱電対素子のそれぞれに、ほぼ同じ温度差を与えること、ひいては同じ効率範囲での動作を可能にする。この結果、ほぼ同一の出力が熱電対素子から得られることになる。そして、熱電対素子がほぼ同一の電気電圧も提供するため、接続される電力変換装置の構成が簡単化される。
【0023】
一実施形態によると、上記第1の接点部材の異なる熱抵抗は、上記第1の熱電対素子と上記第1の流路との間の接点部分における上記第1の接点部材の厚さが、上記第2の熱電対素子(および、任意に、上記第1の流れ方向に沿って下流に(次に)配置された各熱電対素子)と上記第1の流路との間の接点部分における上記第1の接点部材の厚さよりも大きいことによって達成される。しかしながら、これには、上記各熱電対素子と上記第1の流路との間の距離を異ならせることが必要である。そこで、上記第1の熱電対素子を、上記第1の流れ方向に沿って下流に配置された熱電対素子よりも、上記第1の流路の壁から遠くに位置させる。
【0024】
一実施形態によると、上記第1の接点部材の異なる熱抵抗は、上記第1の接点部材の、高い熱伝導性を有する物質の含有量が、上記第1の熱電対素子と上記第1の流路との間の接点部分において、上記第2の熱電対素子(および、任意に、上記第1の流れ方向に沿って下流に(次に)配置された各熱電対素子)と上記第1の流路との間の接点部分におけるよりも低いことによって、達成される。したがって、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第1の接点部材の材料組成は、上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第1の接点部材の材料組成とは異なる。上記第1の接点部材は、例えば、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分において、熱伝導性が比較的低い材料を、上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分におけるよりも高い含有量で備えていてもよい。
【0025】
一実施形態によると、上記第1の接点部材の異なる熱抵抗は、上記第1の熱電対素子と第1の流路との間の接点部分における上記第1の接点部材の有効断面積が、上記第2の熱電対素子(および、任意に、上記第1の流れ方向に沿って下流に(次に)配置された各熱電対素子)と第1の流路との間の上記第1の接点部材の有効断面積よりも小さいことによって達成される。ここで、一実施形態に係る上記第1の接点部材の有効断面積は、上記第1の流路の壁と上記対応付けられた熱電対素子との中間で測定される。有効断面積は、例えば、上記第1の接点部材のそれぞれの接点部分に空洞または凹部を形成することによって操作されてもよく、そのことにより、大体において、上記第1の接点部材の接点部分の密度が異なることにもなる。
【0026】
一実施形態によると、上記第1の接点部材の異なる熱抵抗は、上記第1の熱電対素子に接触する上記第1の接点部材の接点部分の表面の大きさが、上記第2の熱電対素子(または、任意に、上記第1の流れ方向に沿って下流に配置された各熱電対素子)に接触する上記第1の接点部材の接点部分の表面の大きさよりも小さいことによって達成される。例えば、上記第1の流路の壁と上記対応付けられた熱電対素子との間のそれぞれの接点部分において上記第1の接点部材を完全に貫通する凹部を、上記第1の接点部材の接点部分に設けてもよい。この場合、熱抵抗の調節は、上記第1の接点部材のそれぞれの接点部分における凹部の数および大きさによって達成されてもよい。
【0027】
実施形態によると、上記第2の接点部材の上記接点部分における異なる熱抵抗も、上記第1の接点部材に関して説明した手段のうちの1つまたは複数によって達成され得る。
【0028】
例えば、上記第1の熱電対素子と第2の流路との間の接点部分における上記第2の接点部材の厚さが、上記第2の熱電対素子と第2の流路との間の接点部分における上記第2の接点部材の厚さと異なっていてもよく、それにより、この場合においても、上記第1および第2の熱電対素子の上記第2の流路までの距離が異なることになる。あるいは、またはさらに、上記第2の接点部材が上記第1の熱電対素子と第2の流路との間の接点部分において備える高い熱伝導性を有する物質の含有量が、第2の熱電対素子と上記第2の流路との間の接点部分における高い熱伝導性を有する物質の含有量と異なっていてもよく、それにより、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第2の接点部材の材料組成は、前記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第2の接点部材の材料組成とは異なることになる。あるいは、またはさらに、上記第1の熱電対素子と記第2の流路との間の接点部分における上記第2の接点部材の有効断面積が、上記第2の熱電対素子と第2の流路との間の接点部分における上記第2の接点部材の有効断面積と異なっていてもよく、この場合においても、一実施形態に係る上記第2の接点部材の有効断面積は、上記第2の流路の壁と上記対応付けられた熱電対素子との中間で測定される。あるいは、またはさらに、上記第1の熱電対素子に接触する上記第2の接点部材の接点部分の表面の大きさが、上記第2の熱電対素子に接触する上記第2の接点部材の接点部分の表面の大きさと異なっていてもよい。この場合においても、上記第2の熱電対素子は、上記第1の流れ方向において上記第1の熱電対素子の下流に(次に)配置された各熱電対素子を象徴的に代表するものである。
【0029】
上記の手段は、容易に低コストで実施することができ、それぞれの熱抵抗の精密な調整を可能にする。
【0030】
一実施形態によると、上記第1および第2の接点部材のうちの少なくとも一方が、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分と上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分との間に、熱抵抗を平均熱抵抗に比較して少なくとも5倍、特に少なくとも10倍増大させた隔離領域を含む。
【0031】
一実施形態によると、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分と上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分との間の隔離領域(内)における接点部材の熱抵抗は、当該接点部材の隣接する接点部分の平均熱抵抗に比べて10000倍未満、特には1000倍未満、さらに特には100倍未満で増大される。このため、本実施形態においては以下の範囲が可能である。
【0032】
5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<10000倍の増大;5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<1000倍の増大;5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<100倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<10000倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<1000倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<100倍の増大。
【0033】
このことにより、それぞれの接点部材にわたり、流れ方向において互いに隣接する熱電対素子間の不所望な熱流を低減する、または防止さえもすることが可能になる。
【0034】
一実施形態によると、上記第1の接点部材は、少なくとも1つの接点部分に、上記第1の流れ方向に沿う向きに最大寸法を有する凹部を含む。一実施形態によると、該凹部は長穴である。一実施形態によると、上記第2の接点部材は、少なくとも1つの接点部分に、上記第2の流れ方向に沿う向きに最大寸法を有する凹部を含む。一実施形態によると、該凹部は長穴である。
【0035】
そうすることにより、それぞれの接点部材の接点部分を流れる熱流に、それぞれの流体の流れ方向に沿う向きの優先方向を与えることができる。このことは、それぞれの流体の流れ方向に沿う熱電対素子の表面に実質的に同じ高さの温度を与えるのに役立つ。これは、接点部材の内部においてそれぞれの流体の流れの方向に沿う熱伝導が抑制されない、または実質的に抑制されないからである。
【0036】
一実施形態によると、上記第1の接点部材は、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分と上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分との間に、最大寸法が上記第1の流れ方向を横断するように配置された少なくとも1つの凹部を含む。一実施形態によると、該凹部は長穴である。一実施形態によると、上記第2の接点部材は、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分と上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分との間に、最大寸法が上記第1の流れ方向を横断するように配置された少なくとも1つの凹部を含む。一実施形態によると、該凹部は長穴である。
【0037】
このことにより、それぞれの接点部材にわたり、それぞれの流体の流れ方向において互いに隣接する熱電対素子間の不所望な熱流をほぼ完全に防止することが可能になる。
【0038】
一実施形態によると、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第1の接点部材の熱抵抗は、上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第1の接点部材の熱抵抗よりも高い。
【0039】
このことにより、高温流体のための第1の流路の入口近傍に位置する熱電対素子の熱的過負荷が確実に防止される。
【0040】
一実施形態によると、上記第1の流れ方向と上記第2の流れ方向とが同じ向きである場合、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第2の接点部材の熱抵抗は、上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第2の接点部材の熱抵抗よりも高く、上記第1の流れ方向と上記第2の流れ方向とが反対向きである場合、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第2の接点部材の熱抵抗は、上記第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分における上記第2の接点部材の熱抵抗よりも低い。
【0041】
一実施形態によると、上記第1の接点部材が配置された上記第1の流路の壁は、平滑であり、冷却フィンを有しない。代替の実施形態によると、上記第1の接点部材が配置された上記第1の流路の壁は、上記第1の流れ方向に沿って均一に分布された冷却フィンを有する。一実施形態によると、上記第2の接点部材が配置された上記第2の流路の壁は、平滑であり、冷却フィンを有しない。代替の実施形態によると、上記第2の接点部材が配置された上記第2の流路の壁は、上記第2の流れ方向に沿って均一に分布された冷却フィンを有する。一実施形態によると、上記冷却フィンは、それぞれの流路の壁の、流体と接触し、それぞれの接点部材とは接触しない側に設けられる。このため、上記冷却フィンは、それぞれの流路の内部に設けられる。
【0042】
平滑な壁を有する流路を使用し、流路内部に配置される冷却フィンを省略することによって、流路を通過する流体の流れ抵抗の増加が回避され、ひいては、流れ損失による全体効率の低下が回避される。そうでない場合は、冷却フィンを設けることによって、熱伝導に利用可能な面積が増加する。そして、それぞれの流れ方向に沿う冷却フィンの均一な分布により、熱伝達に利用可能な面積は、それぞれの流路の延びる全範囲にわたって確実にほぼ同じとなる。そのうえ、流れ抵抗も、それぞれの流路の延びる全範囲にわたってほぼ同じとなる。
【0043】
一実施形態によると、全ての接点部分が上記第1の接点部材によってモノブロック(monobloc)の設計で提供される。一実施形態によると、全ての接点部分が上記第2の接点部材によってモノブロックの設計で提供される。
【0044】
接点部材とこれに対応する接点部分のモノブロックの設計により、熱電発電装置の組み立てが容易になる。これは、使用される部品の数が少なく抑えられるためである。さらに、モノブロックの設計により、接点部分の配列順序が固定された仕様が可能になる。
【0045】
一実施形態によると、上記複数の熱電対素子は、上記第1の流路と上記第2の流路との間に単一層として配置される。
【0046】
一実施形態によると、上記第1の熱電対素子および上記第2の熱電対素子(すなわち、上記第1の流れ方向に沿って互いに隣り合って配置された熱電対素子)が、対をなして、互いに構造が同一であるか、または、上記複数の熱電対素子のうちの全ての熱電対素子が、互いに構造が同一である。
【0047】
一実施形態によると、上記第1の接点部材は、黒鉛、シリコーンゴム、ポリイミド、アルミナ、マイカナイト、またはアクリルポリマーからなる熱伝導フィルムである。一実施形態によると、上記第2の接点部材は、黒鉛、シリコーンゴム、ポリイミド、アルミナ、マイカナイト、またはアクリルポリマーからなる熱伝導フィルムである。
【0048】
これらの材料に穴を導入することによって、熱抵抗が異なる接点部分を容易に設けることができる。
【0049】
上記熱電発電装置の実施形態にはバイパス導管がない。
【0050】
代替の熱電発電装置の実施形態は、流体を通過させるための入口と出口とを有する流路であって、該流路の該入口と該出口とが該流体のための流れ方向を規定する流路を含む。熱電発電装置は、上記流路の隣に上記流れ方向において互いに隣接して配置された複数の熱電対素子を含む。さらに、熱電発電装置は、上記複数の熱電対素子と上記流路の壁との間に位置する接点部材を含み、該接点部材は、それぞれが1つの熱電対素子に対応付けられた接点部分であって、それぞれに対応付けられた熱電対素子と上記流路の壁との間に熱伝導結合を提供する接点部分を含む。上記接点部材は、直接隣り合う熱電対素子に対応付けられた直接隣り合う接点部分の間に、当該直接隣り合う接点部分の熱抵抗を、上記接点部材の当該直接隣り合う接点部分の平均熱抵抗に比べて少なくとも5倍、特に、少なくとも10倍増大させた隔離領域を含む。
【0051】
一実施形態によると、直接隣り合う熱電対素子に対応付けられた直接隣り合う接点部分の間の隔離領域(内)における上記接点部材の熱抵抗は、上記接点部材の当該直接隣り合う接点部分の平均熱抵抗に比べて10000倍未満、特に、1000倍未満、さらには、特に100倍未満で増大される。このため、本実施形態においては以下の範囲が可能である。
【0052】
5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<10000倍の増大;5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<1000倍の増大;5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<100倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<10000倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<1000倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<100倍の増大。
【0053】
隔離領域を設けることにより、上記接点部材にわたり、隣接する熱電対素子間の熱流が低減または完全に防止され得る。さらに、モノブロックの接点部材を用いることにより、組み立ての手間が低減される。
【0054】
一実施形態によると、上記直接隣り合う熱電対素子は、異なる温度領域用に構成されたものである。このことにより、上記熱電対素子の熱的過負荷を避けることが可能になる。これは、上記接点部材にわたり、隣接する熱電対素子間の熱流をなくすことが可能だからである。
【0055】
一実施形態によると、上記接点部材は、上記第1の熱電対素子に対応付けられた接点部分と上記隣接する第2の熱電対素子に対応付けられた接点部分との間に、流れ方向を横断する方向に最大寸法を有する少なくとも1つの凹部を含む。一実施形態によると、該凹部は長穴である。
【0056】
このことにより、それぞれの接点部材にわたり、それぞれの流体の流れ方向において互いに隣接する熱電対素子間の不所望な熱流をほぼ完全に防止することが可能になる。
【0057】
内燃機関によって駆動される車両のための排気系の実施形態は、上記の熱電発電装置を含み、ここで、上記第1の流路は、該排気系の排気ガス配管であるか、または、該排気系の排気ガス配管に連結されるように構成される。
【0058】
熱電発電装置のための接点部材の実施形態は、複数の接点部分を含み、該複数の接点部分は、熱電発電装置の該複数の接点部分のそれぞれに対応付けられた隣り合う熱電対素子と流路の隣接した壁との間に熱伝導結合を提供するように構成されている。上記接点部材は、互いに隣接する熱電対素子に対応付けられた隣接する接点部分の間に、隔離領域を含み、当該隔離領域(内)における熱抵抗は、上記隣接する接点部分の平均熱抵抗に比べて少なくとも5倍、特には、少なくとも10倍増大されている。このことは、例えば、上記隔離領域において上記接点部材に異なる材料組成を用いてか、または、上記接点部材の上記隔離領域における密度もしくは材料厚さを上記隣接する接点部分におけるよりも少なくすることによって、実施され得る。あるいは、上記接点部材は、隣接する熱電対素子に対応付けられた隣接する接点部分の間に、隣接する接点部分間の分離線の方向に沿う方向に最大寸法を有する凹部(またはいくつかの凹部)を含み得る。該凹部は、例えば、長穴、または、ある線に沿って配置されたいくつかの(円形)穴であり得る。
【0059】
一実施形態によると、互いに隣接する熱電対素子に対応付けられた隣接する接点部分間の隔離領域(内)における上記接点部材の熱抵抗は、上記接点部材の当該隣接する接点部分の平均熱抵抗に比べて10000倍未満、特には1000倍未満、さらに特には100倍未満で増大される。このため、本実施形態においては以下の範囲が可能である。
【0060】
5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<10000倍の増大;5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<1000倍の増大;5倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<100倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<10000倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<1000倍の増大;10倍の増大≦隔離領域における熱抵抗<100倍の増大。
【0061】
このことにより、上記接点部材にわたり、隣接する熱電対素子間の熱流を低減または防止することが可能になる。
【0062】
一実施形態によると、上記接点部材は、平行な2つの長辺と平行な2つの短辺とを有する矩形の形状を有し、上記接点部材の上記短辺に平行な方向に最大寸法を有する凹部が、隣接する熱電対素子に対応付けられた隣接する接点部分の間に設けられる。
【0063】
一実施形態によると、上記接点部材は、全ての接点部分をモノブロックの設計で提供する。
【0064】
一実施形態によると、上記接点部材は、黒鉛、シリコーンゴム、ポリイミド、アルミナ、マイカナイト、またはアクリルポリマーからなる熱伝導フィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本発明のさらなる特徴は、以下の代表的な実施形態の説明ならびに請求項および図面から明らかになる。図面において、同等または類似の要素には、同等または類似の参照符号が割り当てられている。なお、本発明は、本明細書中に説明する代表的な実施形態の構成に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によって定められる。本発明に係る各実施形態は、特に、個々の特徴を以下に説明する例とは異なる数および組み合わせで実施し得る。下記の、代表的な実施形態の説明において、次の添付の図面を参照する。
図1図1Aは、第1の実施形態に係る熱電発電装置の概略斜視図である。図1Bは、図1Aの熱電発電装置の概略断面図である。図1Cは、図1Aの熱電発電装置において用いられる第1および第2の接点部材の概略平面図である。
図2図2Aは、第2の実施形態に係る熱電発電装置の概略斜視図である。図2Bは、図2Aの熱電発電装置の概略断面図である。
図3図3Aは、第3の実施形態に係る熱電発電装置の概略斜視図である。図3Bは、図3Aの熱電発電装置の概略断面図である。図3Cは、図3Aの熱電発電装置において用いられる第1および第2の接点要素の概略平面図である。
図4図4は、第4の実施形態に係る熱電発電装置の概略斜視図である。
図5図5は、第5の実施形態に係る熱電発電装置の概略斜視図である。
図6図6は、第5の実施形態に係る熱電発電装置を用いた排気系の概略図である。
図7図7Aは、第6の実施形態に係る熱電発電装置の斜視図である。図7Bは、図7Aの熱電発電装置の概略断面図である。図7Cは、図7Aの熱電発電装置において用いられる第1および第2の接点要素の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1A図1Cを参照して、熱電発電装置7ならびに対応する接点部材4および5の第1の実施形態を説明する。図1Bは、図1Aにおいて斜視図で示した熱電発電装置のA−A線に沿った断面を示し、図1Cは、図1Aおよび図1Bの熱電発電装置において用いられる第1の接点部材4および第2の接点部材5の平面図を示す。
【0067】
図1Aおよび図1Bに特に分かりやすく示されているように、熱電発電装置7は、各図中の最も上側に配置された第1の流路1と、各図中の最も下側に配置された第2の流路2とを含む。図示した実施形態において、流路1および2はどちらもステンレス鋼シートからなり、それぞれ一定の矩形断面を有する。
【0068】
図示した実施形態において、図1Bにおいて右側に位置する入口11を通って第1の流路1に入り、図1Bにおいて左側に位置する出口12を通って第1の流路1から出ていく800℃の高温の排気流は、上側の第1の流路1を矢印で示す流れ方向10に沿って通過する。図1Bにおいて左側に位置する入口21を通って第2の流路2に入り、図1Bにおいて右側に位置する出口22を通って第2の流路2から出ていく40℃の高温、よって比較的に低温の、空気流は、最も下側の第2の流路2を矢印で示す流れ方向20に沿って通過する。図示した実施形態において、第1の流れ方向10および第2の流れ方向20は、最も上側の第1の流路1内を通過させる高温の排気流と最も下側の流路2内を通過させる低温の空気流とが熱電発電装置7を向流として流れるように、明らかに反対の向きになっている。
【0069】
第1の流路1と第2の流路2との間には、構造が同一の3つの熱電対素子31、32、および33が、第1の流れ方向10および第2の流れ方向20に沿って単一層内で互いに隣接して一列に並んで配置されるように、平面3内に配置される。直接に隣接するそれぞれの熱電対素子31、32、および33の間には小さい隙間が存在する。第1の流路1の壁と上記平面3内に配置された熱電対素子31、32、および33との間の熱結合は、第1の接点部材4によって提供され、本実施形態においてはこの第1の接点部材4はマイカナイトからなる熱伝導フィルムである。上記平面3内に配置された熱電対素子31、32、および33と第2の流路2の壁との間の熱結合は、第2の接点部材5によって成立し、本実施形態においてはこの第2の接点部材5は黒鉛からなる熱伝導フィルムである。800℃の高熱の排気流と40℃の低温の空気流との間の温度差により、2つの流路1および2の間に第1の接点部材4と熱電対素子31、32、および33と第2の接点部材5とを通過する熱流が生じる。
【0070】
第1の接点部材4および第2の接点部材5は、第1の流れ方向10および第2の流れ方向20に沿って変化する熱抵抗を有する。
【0071】
図1Cの第1の接点部材4および第2の接点部材5の平面図において特に良く分かるように、第1の接点部材4を形成するマイカナイト製熱伝導フィルムは、第1の接点部材4をその深さ方向に完全に貫通し、第1の流れ方向10を横断する方向に最大寸法を有する2つの長穴45によって、3つの接点部分41、42、および43に分割される。長穴45として構成されたこれらの凹部は、第1の接点部材4の熱伝導性が隣接する接点部分41・42または42・43のそれぞれの間においてゼロに近くなることを保証する。第2の接点部材5を形成する黒鉛製熱伝導フィルムも、第2の流れ方向20に沿って間隔を置いて設けられた、第2の接点部材5をその深さ方向に完全に貫通する2つの長穴55によって、3つの接点部分51、52、および53に分割される。この場合も、長穴55として構成された凹部は、流れ方向20を横断する方向に最大寸法を有するような向きで設けられ、それにより、隣接する接点部分51・52または52・53のそれぞれの間の熱伝導をかなり防止する。
【0072】
第1の接点部材4および第2の接点部材5の各接点部分41、42、43、51、52、53は、1つの熱電対素子31、32、33に対応付けられている。第1の接点部材4および第2の接点部材5はそれぞれ、接点部分41、42、43、51、52、53のそれぞれにおいて異なる熱抵抗を有する。図示した実施形態において、このことは、第1の接点部材4を形成するマイカナイト製熱伝導フィルムの接点部分41および42が、長穴46として形成された異なる数の凹部を有することにより達成されている。長穴46は、接点部分41および42のそれぞれの内部において第1の流れ方向10に沿う熱伝導を容易にするために、第1の流れ方向10に沿う方向に最大寸法を有する。第1の接点部材4は、長穴46の数が最も多い接点部分41において最小有効断面積を有し、凹部のない接点部分43において最大有効断面積を有する。さらに、第1の接点要素4は、接点部分41において第1の熱電対素子31に接触する表面が最小であり、接点部分43において第3の熱電対素子33に接触する表面が最大である。
【0073】
したがって、第2の接点部材5を形成する黒鉛製熱伝導フィルムの接点部分52および53も、長穴56によって形成される異なる数の凹部を有する。この結果、ここでも、第2の接点部材5の有効断面積および第1の熱電対素子31に接触する表面の大きさは、接点部分51において最大であり、接点部分53において最小である。
【0074】
熱電対素子31、32、および33にそれぞれ対応付けられた第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分41・51、42・52、および43・53は、それぞれの熱抵抗に関して、第1の熱電対素子31に対応付けられた第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分41および51の熱抵抗の和が第2の熱電対素子32に対応付けられた第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分42および52の熱抵抗の和よりも大きく、第2の熱電対素子32に対応付けられた第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分42および52の熱抵抗の和が第3の熱電対素子33に対応づけられた第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分43および53の熱抵抗の和よりも大きくなるように、調整される。これにより、第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分41、42、43、51、52、53の熱抵抗の和は、第1の流れ方向10に沿って減少する。この調整は、第1の接点部材4および第2の接点部材5を作製する材料の選択と、接点部分41、42、52、53に形成される凹部の配置、大きさ、および数とによってなされる。第1の流れ方向10に沿って第1の流路1の入口11の最も近傍に位置する第1の熱電対素子31に比較的高い熱抵抗を故意に付与することによって、この第1の熱電対素子31は熱的過負荷から良好に保護される。
【0075】
さらに、第2の接点部材5の熱抵抗は、第1の熱電対素子41に対応付けられた接点部分51において、第2の熱電対素子32に対応付けられた第2の接点部分52の熱抵抗よりも低いため、第1の熱電対素子31と第2の流路2の壁との間の良好な熱伝導がさらに保証され、その結果、第1の熱電対素子31から伝達される熱量は、大体において、第2の熱電対素子32および第3の熱電対素子33によって伝達される熱量と等しくなるように調節され得る。
【0076】
図示した実施形態においては、第1の接点部材4の接点部分41、42、および43ならびに第2の接点部材5の接点部分51、52、および53がそれぞれモノブロックの設計で設けられているため、対応する接点部分41、42、43、51、52、53を備える接点部材4および5の組み立てが容易である。さらに、熱抵抗が異なる接点部分41、42、43、51、52、53の配置が固定されているため、組み立て時の失敗が防止される。
【0077】
図示した実施形態においては、両流路1および2の内壁が、熱電対素子31、32、33に対向する/接する側において平滑であり、よって冷却フィンを備えずに形成されているため、第1の流路1および第2の流路2の流体抵抗は非常に低くなっている。
【0078】
図1A図1Cに示した実施形態の第1の接点部材4および第2の接点部材5は異なる材料からなるものであるが、本発明はこれに限定されない。第1の接点部材4および第2の接点部材5は同じ材料からなるものであってもよい。
【0079】
図2Aおよび図2Bを参照して、本発明の第2の実施形態を以下に説明する。繰り返しを避けるために、ここでは、図1A図1Cを参照しながら説明した第1の実施形態との相違点のみを取り上げる。ここでも、図2Bは、熱電発電装置7を斜視図で示す図2AのA−A線に沿った断面図を示す。
【0080】
第2の実施形態に係る熱電発電装置7は、第2の実施形態に係る第1の接点部材4および第2の接点部材5のそれぞれが凹部を有さずに形成されている点で、上記第1の実施形態の熱電発電装置7と異なる。代わりに、第1の熱電対素子31に対応付けられた接点部材4の接点部分41と、第2の熱電対素子32に対応付けられた接点部材4の接点部分42と、第3の熱電対素子31に対応付けられた接点部材4の接点部分43とにおける異なる熱抵抗は、第1の接点部材4の厚さを第1の流れ方向10に沿って減少させることによって達成されている。このため、第1の接点部材4の厚さは、第1の流れ方向10の一番上流に位置する熱電対素子31に対応付けられた接点部分41において最大となり、第1の流れ方向10に沿って一番下流に位置する熱電対素子33に対応付けられた接点部分43において最小となる。それにもかかわらず第1の流路1と第2の流路2との間隔を確実に一定にするために、接点部分51、52、および53における第2の接点部材5の厚さは、第1の接点部材4の厚さと厳密な補完関係にある。
【0081】
この結果、第1の流れ方向10に沿って最も上流に位置する第1の熱電対素子31は、第1の流路1の壁から最も遠く、かつ、第2の流路2の壁に最も近くなり、第1の流れ方向10に沿って最も下流に位置する第3の熱電対素子33は、第1の流路1の壁に最も近く、かつ、第2の流路2の壁から最も遠くなっている。
【0082】
第1の接点部材4および第2の接点部材5の材料厚さを異ならせるために、図示した実施形態の接点部分4および5は、異なる量の磁器ビーズが添加され、第1の流路1および第2の流路2のそれぞれに印刷されたシリコーンゴムからなる。この実施形態においても、隣接する熱電対素子31・32および32・33は、対をなして、同一の構造である。この実施形態においても、熱電対素子31、32、および33に対応付けられた接点部分41・51、42・52、および43・53の熱抵抗の和は、第1の流れ方向10に沿って減少する。
【0083】
図3A図3Cを参照して、熱電発電装置7ならびに対応する接点部材4および5の第3の実施形態を以下に説明する。不必要な繰り返しを避けるために、上記各実施形態を参照し、相違点のみを詳細に取り上げる。
【0084】
図3Aから特に良く分かるように、図示した実施形態の第1の流路1および第2の流路2の壁はそれぞれ、熱電対素子31、32、33に対向する側に、第1の流れ方向10および第2の流れ方向20のそれぞれに沿って均一に分布された冷却フィン61および62を含む。この結果、熱伝達に利用可能な第1の流路1および第2の流路2の壁の面積は、より大きくなる。
【0085】
上記第1および第2の実施形態とは異なり、第3の実施形態においては第1の流れ方向10および第2の流れ方向20が同じ方向に向けられていることで、第1の流路1および第2の流路2が並流で動作可能となっている。
【0086】
それにより、第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分41および51は、第1の流れ方向10および第2の流れ方向20に沿って最も上流に位置する第1の熱電対素子31に対応付けられ、最も高い熱抵抗を有し、第1の接点部材4および第2の接点部材5の接点部分43および53は、最も下流に位置する第3の熱電対素子33に対応付けられ、最も低い熱抵抗を有する。
【0087】
図3Cからかなり良く分かるように、この実施形態においてはそれぞれアクリルポリマーからなる第1の接点部材4および第2の接点部材5の熱抵抗は、凹部46および56をそれぞれに形成することによって調節される。但し、ここで図示した実施形態においては、第1の実施形態のように凹部46および56の数によって熱抵抗を変化させるのではなく、それぞれの凹部46および56の大きさによって熱抵抗を変化させている。
【0088】
さらに、第3の実施形態において、第1の接点部材4の接点部分41、42、および43ならびに第2の接点部材5の接点部分51、52、および53は、第1の実施形態とは異なり、長穴によって分割されるのではなく、第1の接点部材4および第2の接点部材5の熱伝導性が低い物質の含有量を大幅に増加させた領域45および55によって分割されている。図示した実施形態において、この熱伝導性が低い物質はアルミナである。この結果、隣接する接点部分41・42間および42・43間、ならびに、51・52間および52・53間のそれぞれの領域45および55の熱抵抗は、図示した実施形態においては、それぞれの隣り合う接点部分の平均熱抵抗の11倍高い。
【0089】
あるいは、部分45および55において用いられる、熱抵抗を変化させるために材料組成を調節する技術が、第1の接点部材4の接点部分41、42、および43ならびに/または第2の接点部材5の接点部分51、52、および53の熱抵抗を調節するために用いられてもよい。
【0090】
図4を参照して、熱電発電装置7の第4の実施形態を以下に説明する。第1の実施形態との相違点のみを詳細に取り上げ、その他については第1の実施形態の説明を参照する。
【0091】
図4に示す第4の実施形態は、低温の空気流を通過させる2つの第2の流路2が設けられ、それらの間に高温の排気流を通過させる第1の流路1が配置されている点で、図1A図1Cに示す第1の実施形態とは異なる。第1の流路1とこれに隣接する各第2の流路2との間にそれぞれの熱電対素子3が配置され、第1の流路1と各熱電対素子3との間の熱伝導は、それぞれ、第1の接点層4によって提供される。熱電対素子3とこれに隣接する各第2の流路2との間の熱伝導は、第2の接点部材5によって提供される。図4に示した構成により、第1の流路1を通過させる高温の排気流のエネルギーを特に有効に利用することが可能になる。
【0092】
図5を参照して、熱電発電装置7の第5の実施形態を以下に説明する。第4の実施形態との相違点のみを取り上げ、その他については上記各実施形態の説明を参照する。
【0093】
図5に示す熱電発電装置7は、発電装置に向流ではなく直交流を通過させる点のみが、図4に示す熱電発電装置7と異なる。したがって、第1の流路1と2つの第2の流路2との間の単一層内に配置された各熱電対素子3は、いくつかの平行な列に配置される。
【0094】
図6を参照して、図5に示した実施形態に係る熱電発電装置7を用いる排気系8の一実施形態を以下に説明する。
【0095】
図6から明らかなように、エンジン制御装置91を有する内燃機関90が発生させた排気ガスは、第1の流路1の入口を介して熱電発電装置7に通される。第1の流路1の出口は、テールパイプ82で終端する排気ガス配管81によって排気系8に連結される。
【0096】
排気系8は、消音器またはエミッションコントロールシステム等をさらに含み得ることが理解される。便宜上、これらの構成要素は図示されていない。
【0097】
図7A図7Cを参照して、熱電発電装置7’の第6の実施形態を以下に説明する。繰り返しを避けるために、図1A図1Cを参照しながら説明した上記第1の実施形態との相違点のみを取り上げ、その他については上記の説明を参照する。
【0098】
第6の実施形態の熱電発電装置7’ならびに対応する接点部材4’および5’は、第1の接点部材4’および第2の接点部材5’のそれぞれが、熱電対素子31’、32’、および33’に対応付けられた接点部分41’、42’、43’、51’、52’、および53’において同じ熱伝導性を有する点で、第1の実施形態の熱電発電装置7ならびに対応する接点部材4および5と異なる。したがって、第1の接点部材4’および第2の接点部材5’は、それらの接点部分41’、42’、43’、51’、52’、および53’に長穴等を有しておらず、接点部材4’および5’を接点部分41’、42’、43’、51’、52’に分割し、隣接する熱電対素子31’と32’と33’の間で接点部材4’および5’にわたって熱伝導が生じることを防止する長穴45および55のみが設けられている。上記2つの接点部材4’および5’は、長穴45および55を除いては、材料および厚さが一定のマイカナイト製熱伝導フィルムからなる。
【0099】
これに対して、熱電対素子31’、32’、および33’は、この実施形態においては構造が同一ではなく、異なる温度範囲用に構成される。具体的には、第1の流れ方向10に沿って第1の流路1の入口11の最も近傍に位置する第1の熱電対素子31’は、第1の流路1における700℃から第2の流路2における200℃までの温度差において最も効率が高く、第1の流れ方向10に沿って下流に位置する第2の熱電対素子32’は、第1の流路1における650℃から第2の流路2における150℃までの温度差において最も効率が高い。
【0100】
したがって、異なる温度差への適合は、本実施形態においては、熱電対素子3’を対応して選択することによって達成される。接点部材4’および5’における長穴45および55は、接点部材4’および5’にわたって、隣接する熱電対素子3’間の熱流を防止する。さらに、接点部材4’および5’がモノブロックの設計であるため、熱電発電装置7’の簡単な組み立てが可能である。
【0101】
なお、熱電対素子と、対応する電力変換装置との電気配線の説明は、これらが本発明の機能性の理解には関係がないため、上記実施形態からは省略した。同じ理由で、上記2つの流路2を満たす低温の空気流の通路の詳細な説明は、図6では省略した。
【0102】
本発明の上記実施形態を単なる例として説明したが、以下の請求項において開示される発明の範囲および要旨から逸脱することなく、多くの変形、追加、および代替が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0103】
したがって、本発明に係る熱電発電装置は、原則的に、任意の流体に含まれる熱エネルギーを電気エネルギーに変換するのに適しており、内燃機関によって駆動される車両の排気ガスに含まれる熱エネルギーに限定されるわけではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7