特許第6348229号(P6348229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348229ヒドロキシ−トリグリセリドの合成方法、および疾患の予防および処置のためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348229
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】ヒドロキシ−トリグリセリドの合成方法、および疾患の予防および処置のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/732 20060101AFI20180618BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180618BHJP
   A61K 31/231 20060101ALI20180618BHJP
   A61K 31/232 20060101ALI20180618BHJP
   C07C 67/31 20060101ALI20180618BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20180618BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C07C69/732 ZCSP
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P25/00
   A61P9/12
   A61P9/10 101
   A61P9/00
   A61P9/06
   A61P3/06
   A61P3/04
   A61P3/10
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P25/14
   A61P25/24
   A61P25/22
   A61P25/04
   A61P25/18
   A61P25/20
   A61P29/00
   A61P29/00 101
   A61P19/02
   A61K31/231
   A61K31/232
   C07C67/31
   A23L33/115
   A23D9/00 516
【請求項の数】15
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-518439(P2017-518439)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公表番号】特表2017-536339(P2017-536339A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015074321
(87)【国際公開番号】WO2016062746
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年7月28日
(31)【優先権主張番号】14189696.9
(32)【優先日】2014年10月21日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517115994
【氏名又は名称】ユニバーシタット デ レス イレス バレアレス
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】エスクリバ ルイス,パブロ ビセンテ
(72)【発明者】
【氏名】ブスケツ シャウベ,ザビエル
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103897284(CN,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00261812(EP,A1)
【文献】 特開2009−096720(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02774910(EP,A1)
【文献】 特表2005−527479(JP,A)
【文献】 特表2010−511510(JP,A)
【文献】 特表2012−520344(JP,A)
【文献】 国際公開第03/094625(WO,A1)
【文献】 米国特許第06537787(US,B1)
【文献】 Junichi OZAKI,On the Nutritive Value of Synthetic Fats Containing Oxy-Fatty Acids,PROCEEDINGS OF THE IMPERIAL ACADEMY,1926年,vol.2,p.341-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/732
C11C 3/00
A61K 31/23
A61P 3/04
A61P 3/06
A61P 3/10
A61P 9/12
A61P 25/28
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、メソメリー化合物、あるいは幾何異性体であって、
【化1】
式中、R1、R2およびR3が、各々および独立して、式IIの5から22のいずれかの炭素原子の脂肪族鎖を含み、
【化2】
式中、
aは、1から6のいずれかの整数であり、
bは、1から6のいずれかの整数であり、および、
cは、0、3および6から選択される整数である、
式1の化合物。
【請求項2】
式中、前記炭化水素部分R1、R2およびR3が、各々および独立して、5から20のいずれかの炭素原子を有する脂肪族鎖を含む、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
式中、前記炭化水素部分R1、R2およびR3が、各々および独立して、16から20のいずれかの炭素原子を有する脂肪族鎖を含む、請求項1または2に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
式中、
aは、1から6のいずれかの整数であり、
bは、2から6のいずれかの整数であり、および、
cは、0および3から選択される整数である、
請求項1から3のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項5】
式中、R1、R2およびR3が、各々および独立して、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、および CH−(CH=CH−CH−CHから選択される、
請求項1または2に記載の式Iの化合物。
【請求項6】
式中、R1、R2およびR3が、各々および独立して、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、およびCH−(CH=CH−CH−CHから選択される、請求項1から5のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の式Iの化合物の生成のための方法であって、当該方法は、
A)式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸の形成であって、
【化3】
式中、Rが、請求項1で規定されるR1、R2およびR3から選択され、またPGがアルコール保護基であり;
式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸が、2−ヒドロキシ脂肪酸または2−ヒドロキシ脂肪酸のナトリウム塩由来である、式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸の形成、
B)式IVのトリグリセリドの形成であって、
【化4】
式中、R1、R2およびR3が、請求項1で規定されるR1、R2およびR3であり、またPGはアルコール保護基であり;
式IVのトリグリセリドが、グリセロールと式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸の少なくとも1つとの反応によって得られる、式IVのトリグリセリドの形成、および、
C)前工程において得られた、式IVのトリグリセリドの脱保護を含む、
方法。
【請求項8】
癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性疾患から選択される少なくとも一つの疾患の予防および/または処置のための製剤の製造における、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、メソメリー化合物、あるいは幾何異性体の使用であって、
【化5】
式中、R1、R2およびR3が、5から22のいずれかの炭素原子、および0から6のいずれかの二重結合を有する脂肪族鎖を、各々および独立して含む炭化水素部分である、
式Iの化合物の使用。
【請求項9】
式中、前記炭化水素部分R1、R2およびR3が、各々および独立して、式IIの5から22のいずれかの炭素原子の脂肪族鎖を含み、
【化6】
式中、
aは、1から6のいずれかの整数であり、
bは、0から6のいずれかの整数であり、および、
cは、0から6のいずれかの整数である、
請求項8に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項10】
式中、R1、R2およびR3が、各々および独立して、(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、およびCH−(CH=CH−CH−CHから選択される、請求項8に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項11】
)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫および/または他の脳腫瘍、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌、神経内分泌癌、中皮腫、男性および/または女性生殖腺腫瘍、頭頸部癌、腎臓腫瘍および/または黒色腫から、順に選択される癌;
b)高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、心臓発作、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および/または他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、および/またはメタボリック症候群から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または、
c)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脊髄損傷、成人ポリグルコサン身体疾患、うつ病、不安神経症、疼痛、統合失調症、不眠症から、順に選択された神経性疾患、
d)ブドウ膜炎、リウマチ、関節炎、関節症、および/または老化
から選択される少なくとも一つの疾患の予防および/または処置のための製剤の製造における、式Iの化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、メソメリー化合物、あるいは幾何異性体の使用であって、
【化7】
式中、R1、R2およびR3が、5から22のいずれかの炭素原子、および0から6のいずれかの二重結合を有する脂肪族鎖を、各々および独立して含む炭化水素部分である、
式Iの化合物の使用。
【請求項12】
少なくとも1つの疾患が、
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌および/または神経内分泌癌から、順に選択される癌;
b)高血圧症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満症、および/または糖尿病から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または、
c)アルツハイマー病、および/または成人ポリグルコサン身体疾患から、順に選択された神経性疾患、
から選択される、請求項11に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項13】
医薬組成物および/または栄養補助組成物であって、前記医薬組成物および/または栄養補助組成物が、
a)請求項1から6のいずれかに記載の式Iの少なくとも1つの化合物、および
b)少なくとも1つの賦形剤を含む、
医薬組成物および/または栄養補助組成物。
【請求項14】
医薬組成物および/または栄養補助組成物が、請求項1から6のいずれかに記載の式Iの少なくとも2つの異なる化合物を含む、請求項13に記載の医薬組成物および/または栄養補助組成物。
【請求項15】
請求項13または14に記載の医薬組成物および/または栄養補助組成物の調製のための方法であって、前記方法が、
a)請求項1から6のいずれかに記載の式Iの少なくとも1つの化合物、および
b)少なくとも1つの賦形剤、
を混合する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物、前記化合物を生成する方法および少なくとも1つの疾患の予防および/または処置において使用される薬剤の調製のための前記化合物の使用に関し、当該少なくとも1つの疾患は、例えば、前記脂質のレベル、組成または構造の変更のような、細胞膜の脂質あるいは血液または血漿を循環している脂質の変更(いくつかの起源の)に基づく。病的状態の回復を引き起こす、膜脂質構造および組成物の調整についても同様である。更に、本発明は、少なくとも1つの疾患の予防および/または処置において使用される化合物に関する。
【0002】
同時に、本発明は、前記化合物を含む医薬組成物および/または栄養補助組成物および、その調製のための方法に関する。最後に、本発明は、治療上有効な量の前記化合物または前記医薬組成物および/または栄養補助組成物の患者への投与を含む、ヒトおよび動物における少なくとも1つの疾患の予防および/または治療処置のための方法に関する。
【0003】
したがって、本発明は広範囲に応用できるので、一般的に栄養学、医学および薬学の分野に包含され得る。
【背景技術】
【0004】
油は、ヒトの食事において重要な栄養素である。それらの大多数において、油は、1つのアシル部分に結合(水素ラジカルの代わりに)した1つの酸素を各炭素原子上で運ぶ、1つのグリセロール分子によって形成されたトリグリセリドであり、当該トリグリセリドの各分子は、グリセロールの3つのヒドロキシル部分の各1つと、脂肪酸の1つのカルボキシル部分とのエステル化を結果的に生じさせる、3つの等価または異なるアシル部分を運ぶ。
【0005】
ヒトのエネルギー必要量の10%から約80%は、一般的に脂肪および、とりわけ油によって占められる (Prentice、1998)。異なる疫学的調査は、特定の種類の油は、ヒトの健康に有益な効果を有し、一方でその他の油が、健康に負の効果を有していることを実証した(Flickinger and Huth 、2004; West et al.、2005; Hunter et al.、2010; Lawrence、2013; Michas et al.、2014)。特に、長鎖トランスモノ不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸における豊富な油(例えばヤシ油)は、代謝および心血管の健康に対する負の効果を有している(Stender and Dyerberg、2004)。対照的に、モノ不飽和脂肪酸における豊富な油(例えばオリーブオイル)、またはポリ不飽和脂肪酸における豊富な油(例えば魚油)は、健康において正の効果を有する(Sanchez−Quesada et al.、2013; Grosso et al.、2013; Berge et al.、2014; Mayneris−Perxachs et al、2014; Michas et al.、2014; McDonald et al.、2014; Whayne、2014; Gultekinet al.,2014)。より具体的には、これらの研究および他の研究で、ω−9脂肪酸が豊富なオリーブオイル、および/またはω−3脂肪酸が豊富な魚の長期摂取が、血圧を下げ、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、肥満症、炎症、疼痛、アルツハイマー病および他の神経変性のプロセス、癌、脂質異常症、および他の病理学的障害を予防することが観察された(Feart et al.、2013;Shah、2013;Kovisto et al.、2014および前記引用文献を参照)。一般的に、トリグリセリドが豊富な油の摂取(これらの油中のトリグリセリド含有量は90%を超える)は、ヒトの健康に対する有用で重要な予防効果を有しているが、疾患の処置のためのそれらの薬理活性は、一般的に非常に限定されている。例えば、オリーブオイルも魚油も一旦腫瘍ができるとその効果が低下するため、癌を治療するためには処方されない。これらの正の効果の分子基盤は、脂質の循環を調整するそれらの能力および細胞膜の組成物および構造を起源とする(Escriba et al.、2008)。しかしながら、油が細胞燃料として使用されることを考慮すると、それらの治療効果は関係なく、そして、それらの効果は異なる疾患の処置ではなくむしろ予防に限定される。
【0006】
細胞膜は、細胞の本体およびそれらに含有された細胞小器官を画定する構造である。生物学的プロセスの大半が生じる膜またはそれら周辺で、それらの脂質は構造上の役割を有するだけでなく、重要なプロセスの活性も調整する。膜の脂質組成物が摂取した脂質の大部分に依存し、その脂質が標的細胞に到着するまで血漿を通って循環することを考慮すると、不飽和または飽和の非常に短い鎖の脂肪酸が豊富なトリグリセリドの摂取は、膜の血漿脂質プロフィールおよび脂質組成を調整する(Escriba et al.、2003)。したがって、脂肪摂取は部分的に膜の脂質内容を調製し、および前に述べたように、このことは細胞機能に関係し、それゆえ、健康に関係する。例えば、膜の脂質組成物の調整は、GまたはPKCタンパク質のような細胞生理機能の制御に関わる重要なタンパク質の局在化または機能に、影響を及ぼす(Escriba et al.、1995; 1997; Yang et al; 2005; Martinez et al.、2005)。これらの研究および他の研究は、重要な細胞機能の制御に対する脂質が持つ重要性を実証する。実際、多数のヒトの疾患、例えば、中でも特に、癌、心血管の病状、神経変性のプロセス、肥満症、代謝異常、炎症、感染症および自己免疫疾患は、生体膜内に存在する脂質のレベルまたは組成の変更に関係しており、そのうえ、このことは前記疾患を回復させるために使用され得る膜脂質の組成および構造を調整する他の脂肪酸を用いる処置によって示される有益な効果も証明している(Escriba 2006)。
【0007】
過去数年に実施された異なる研究は、膜脂質が今まで与えられてきたものより、はるかに重要な役割を果たすことを示す(Escriba et al.、2008)。前記重要性の1つの例は、可変的な温度の川に住む魚に関連し、それらの脂質は、気温が20℃(夏)から4℃(冬)に降下する時、著しい変化(膜脂質の組成および種類の変化)を受ける(Buda et al.、1994)。これらの研究は、外部要因または病態生理学的プロセスに関係なく、膜脂質における変化が正確に細胞機能を維持するために、調製された様式で細胞機能において一連の改変を生じさせることを実証している。可変的な温度の水域に住む魚の場合には、膜脂質の調整は非常に多様な性質の細胞型においてそれらの機能を維持させる。このような理由で、膜脂質が複数のシグナル伝達機構の優れたおよび乏しい機能、および同じ動物の異なる臓器および組織の種々様々な細胞における他の細胞機能を判定することが可能であると言えた。
したがって、膜の組成および構造の変更は、多数の病状の病因に関連し、また、多くの場合では、判定された疾患の兆候が膜と相互作用する判定されたタンパク質に影響を与える、または膜と相互作用する他のタンパク質のシグナルの配列で発見されるその他と、これらの変更との組み合わせに起因する。
【0008】
したがって、本発明が寄与することの1つは、膜の組成または血漿脂質プロフィールを調整できる化合物を提供すること、かつ調整された組成または血漿脂質プロフィールの永続性がさらに拡張されることである。また、本発明が他に寄与することは、判定された病状のプロセス(またはいくつかの病状のプロセス)の発生を予防すること、および/または細胞膜に対する影響に基づいてそれらが発生した時点で回復させることの最終結果を用いて、効果的かつ安全に特定の細胞機能を改変することができる化合物の提供から成る。本発明が他に寄与することは、疾患の予防および/または処置のために化合物を提供することから成り、当該疾患の一般的な病因は血漿脂質プロフィールの変更(脂質の循環レベル、脂質代謝または組成物の変更)および細胞膜に位置する脂質の構造および/または機能の変更、または細胞膜内に存在する前記脂質の変更の結果として起こる細胞シグナル伝達の変更した調整を有する変更に基づく。具体的には、本発明によって解決される1つの問題は、心血管/代謝疾患(例えば高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、心臓発作、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、メタボリック症候群など)、癌(肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫および他の脳腫瘍、膵臓癌、肝臓癌、中皮腫、男性および女性生殖腺腫瘍、頭頸部癌、腎臓腫瘍、黒色腫など)、および神経性/炎症性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脊髄損傷、成人ポリグルコサン身体疾患(adult polyglucosan body disease, APBD)、うつ病、不安神経症、不眠症、疼痛、統合失調症、一般的な炎症およびブドウ膜炎、リウマチ、関節炎に由来する炎症プロセス、関節症、老化を含む局所炎症など)の予防および処置のための化合物を提供することから成る。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式Iの化合物に関し、
【0010】
【化1】
式中、R1、R2およびR3は、5から22の炭素原子、および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を、各々および独立して含む炭化水素部分であり、当該化合物は、式Iから考えられ得る、全ての鏡像異性体、ジアステレオ異性体、メソメリー化合物および幾何異性体(E/Z isomers)から選択される。
【0011】
本発明は、本明細書に開示されるような式Iの化合物を生成する方法に関し、当該方法は以下の3つの主工程:
A)式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸の形成であって
【0012】
【化2】
式中、Rは、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を含む炭化水素部分であり、またPGはアルコール保護基であり、当該式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸が、2−ヒドロキシ脂肪酸または2−ヒドロキシ脂肪酸のナトリウム塩由来である、式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸の形成、
B)式IVのトリグリセリドの形成であって
【0013】
【化3】
式中、R1、R2およびR3は、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を、各々および独立して含む炭化水素部分であり、PGは上記の通り定義され、当該式IVのトリグリセリドが、グリセロールと式IIIの少なくとも1つの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸との反応により得られる、式IVのトリグリセリドの形成、および、
C)式IVのトリグリセリドの脱保護を含む。
さらに、本発明は、以下から選択される少なくとも1つの疾患の予防および/または処置において使用するための、本明細書に記載される、式Iの化合物に関する:癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患。同様に、本発明は、以下から選択される少なくとも一つの疾患の予防および/または処置において使用される薬剤の調製のための、独立したまたは少なくとも1つの他の化合物と組み合わせた、本明細書に開示される、式Iの少なくとも1つの化合物の使用に関する:癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患。
【0014】
加えて、本発明は、
a)本文書で開示されるような、式Iの少なくとも1つの化合物;および、
b)少なくとも1つの賦形剤を含む、医薬組成物および/または栄養補助組成物に関する。同様に、本発明はまた、本文書で開示されるような、式Iの少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つの賦形剤を混合することを含む、前記医薬組成物および/または栄養補助組成物を調製する方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、本明細書に開示されるような、治療上有効な量の患者への投与を含む、式Iの少なくとも1つの化合物、または本文書で開示されるような、少なくとも1つの医薬組成物および/または栄養補助組成物の、ヒトと動物における少なくとも1つの疾患の予防および/または処置のための方法に関する。本発明の1つの最後の実施形態は、癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患の中から選択される少なくとも1つの疾患を有する患者の予防および/または処置のための方法であり、当該少なくとも1つの疾患は以下から選択され、
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌および/または神経内分泌癌から、順に選択される癌、
b)高血圧症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満症、および/または糖尿病から、順に選択される代謝/心血管疾患、および/または、
c)アルツハイマー病および/または成人ポリグルコサン身体疾患から、順に選択される神経性/炎症性疾患から選択され、
当該方法は、治療上有効な量または服用量の式Iの少なくとも1つの化合物または、少なくとも式Iの1つの化合物を含む少なくとも1つの医薬組成物および/または栄養補助組成物の、前記患者への投与を含み、
【0016】
【化4】
式中、R1、R2およびR3は、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を各々および独立して含む、炭化水素部分であり、好ましくは、式中、R1、R2およびR3は、−(CH−CH [TGM0]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM1]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM2]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [TGM3A]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGMG]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM4]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [TGM5]、および−CH−(CH=CH−CH−CH [TGM6]から選ばれ、そしてR1=R2=R3である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】表1に定義されたヒドロキシ−トリグリセリドの合成の一般的方法:A、2−ヒドロキシ脂肪酸(2−OHFA)のエステル化、脂肪酸誘導体を得るためのOHの保護およびエステルの加水分解、式中、R、R1、R2およびR3が、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を、各々および独立して含む炭化水素部分であり、およびOPGが、(i)脂肪酸のカルボン酸部分のアルファ炭素、およびii)アルコール保護基(PG)と結合する酸素原子(O)を包含し、好ましくは本明細書に記載されたように定義される式III;B、対応するトリグリセリドを提供するための、式IIIの脂肪酸誘導体とグリセロールとの反応(式IV);C、2−ヒドロキシ脂肪酸のトリグリセリド(式I)を得るための、式IVのトリグリセリドの脱保護。
図2】インビトロでのヒト肺癌細胞(A549)の増殖に対する1、ヒドロキシ−トリグリセリドA.TGM1;B.TGM2;C.TGM4;D.TGM6の抗腫瘍効果:図2は、TGM1、TGM2、TGM4およびTGM6分子によってもたらされた、腫瘍細胞増殖の阻害を、濃度(枠内に示される)とインキュベーション時間(0から72時間)とに応じた、処置しない細胞の数を%と表した縦座標(Y)軸に、細胞数を示す。
図3】ヒト肺癌(A549)の動物モデルにおける、腫瘍の最終的な体積(mm3)として測定した、天然のトリグリセリド、トリオレインTOに対する本発明のヒドロキシ−トリグリセリド TGM0、TGM1、TGM2、TGM3A、TGM3G、TGM4、TGM5、およびTGM6の抗腫瘍効果。
図4】処置を始める前(基底)、および9日後に収縮期血圧として測定した、(自然発症性高血圧ラット種、SHRの)自然発症性高血圧ラットにおける、血圧に対するTGM1(400mg/kg、12hごと、経口)の効果。
図5】処置を始める前(基底)、および9日後に血漿グルコースとして測定した、(自然発症性高血圧ラット種、SHRの)自然発症性高血圧ラットにおける、グルコースレベルに対するTGM1(400mg/kg、12時間ごと、経口)の効果。
図6】下記条件における、パルミトイル−オレオイルホスファチジルエタノールアミンのX線回折(小角、SAXS)研究によって測定された、膜構造に対するヒドロキシ−トリグリセリドの効果であり、条件とは、A.欠如下;または5mol%のB.TGM1;C.TGM2;D.TGM4;あるいはE.TGM6の存在下であり、当該脂質層の間隔[d、(nm)]は、温度(℃)に応じて測定される:Lα=液体ラメラフェーズ(liquid lamellar phase);Lβ=固形ラメラフェーズ(solid lamellar phase);Lβ+Lα=固体ラメラから液体ラメラへの遷移;Lα+HII=ラメラから六方晶への遷移;HII=逆六方晶フェーズ(hexagonal inverse phase)。
図7】アルツハイマー病に対するTGM6の効果。A.試験の3週目の間、若いラット(young、生後3か月)と老化したラット(aged、生後10か月)の両方において、ビヒクル(ビヒクル=水)またはヒドロキシ−トリグリセリドTGM6を用いて処置した(50mg/kg dayを3か月間、経口)、健康なラット(WT、野性型)およびアルツハイマー病を有するラット[Tg、ヒト家族性アルツハイマー病(タグ)において発現する5つの変異を有する遺伝子組換えラット]を用いて、放射状迷路(迷路内で機器の8つのアームのうち4つに餌を配置した)における試験完了する際に犯されたエラーのパーセンテージ;B.ガラスパイプ内において、20秒間で底部から15cmあたりに位置づけられた印の上まで位置する印まで登り切った動物のパーセンテージとして、および年齢(日数)とに応じた走地性試験において測定された、認知パラメータおよびヒトアルツハイマー病遺伝子を有するDrosophila melanogasterにおける、老化に対するTGM6の効果。
図8】細胞内小胞と膜におけるTGM1の蓄積。0μM、150μMおよび300μMの濃度を用い、2および24時間目で細胞膜における浸透を測定した。図は、広範囲の原子核マーキングを青で示し、およびトリグリセリドの位置を示す小さなドットを赤で示す。青で印された核(大きな中央の染色)により近いTGM1による赤のマーキングは、細胞内膜および細胞内小胞に対応し、核から遠く離れた赤いマーキングは細胞膜内のその存在に対応する。
図9】天然のトリグリセリド、トリオレイン、およびヒドロキシ−トリグリセリド、TGM1の分解。図は、分単位時間(X軸)での、(特定のパーセンテージで表した)2つの化合物における、リポプロテインリパーゼによって引き起こされた天然のトリグリセリド(トリオレイン)または合成のトリグリセリド(TGM1)の分解を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は新規の分子実体、ヒドロキシ−トリグリセリドに関する。本発明のヒドロキシ−トリグリセリド(我々は、トリグリセリド模倣物ゆえに、本発明のTGMとも呼ぶ)は、式Iの化合物であり:
【0019】
【化5】
式中、R1、R2、およびR3は、炭化水素部分である。前記炭化水素部分は、各々および独立して、脂肪族鎖を含む。前記脂肪族鎖は、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を含む。したがって、R1、R2およびR3のそれぞれ1つは、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する炭化水素鎖から成る、同じまたは異なる炭化水素部分であり得る。本発明の式Iの化合物の好ましい実施形態では、前記炭化水素部分R1、R2およびR3は、各々および独立して、式IIの5から22の炭素原子の脂肪族鎖を含み:
【0020】
【化6】
式中、
aは、1から6の間の整数であり、
bは、0から6の間の整数であり、
および、cは、0から6の間の整数である。
【0021】
本発明の式Iの化合物の他の好ましい実施形態では、R1、R2およびR3は、炭化水素部分であり、当該炭化水素部分において、各々および独立して、5から20の炭素原子または10から22の炭素原子、より好ましくは、12から20の炭素原子、さらによりは、6から20の炭素原子を含む脂肪族鎖によって構成される。
【0022】
同様に、本発明の式Iの化合物の他の好ましい実施形態では、前記炭化水素部分R1、R2およびR3は、各々および独立して、式IIの脂肪族鎖を含み、式中、aは1から6の間の整数であり、bは1から6の間の整数であり、およびcは0、3、および6から選択される整数であり;より好ましくは、式中、aは1から6の間の整数であり、bは2から6の間の整数であり、およびcは0、3、および6から選択される整数であり;さらにより好ましくは、式中、aは1から6の間の整数であり、bは2から6の間の整数であり、およびcは0および3から選択される整数である。本発明の式Iの化合物の他の実施形態では、前記炭化水素部分R1、R2およびR3は、各々および独立して、式IIの脂肪族鎖を含み、式中、aは1および2から選択される整数であり、bは4から6の間の整数であり、およびcは0および3から選択される整数である。
【0023】
したがって、1つの好ましい実施形態では、本発明は式Iの化合物に関し、式中、R1、R2およびR3は、炭化水素部分であり、当該炭化水素部分は、各々および独立して、式IIの12から22の炭素原子の脂肪族鎖から成り、式中、
aは1から6の間の整数であり、
bは1から6の間の整数であり、
およびcは0、3、および6から選択される整数である。
【0024】
他の好ましい実施形態では、本発明は、式Iの化合物に関し、式中、R1、R2およびRは、炭化水素部分であり、当該炭化水素部分は、各々および独立して、式IIの16から20の炭素原子の脂肪族鎖から成り、式中、
aは1から6の間の整数であり、
bは1から6の間の整数であり、
およびcは0および3から選択される整数である。
【0025】
他の好ましい実施形態では、本発明は、式Iの化合物に関し、式中、R1、R2およびR3は、炭化水素部分であり、当該炭化水素部分は、各々および独立して、式IIの16から20の炭素原子の脂肪族鎖から成り、式中、
aは1から2の間の整数であり、
bは4から6の間の整数であり、
およびcは0および3から選択される整数である。
【0026】
本発明の式Iの化合物の他の好ましい実施形態では、R1、R2およびR3は、各々および独立して、(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、およびCH−(CH=CH−CH−CHから選ばれ、より好ましくは、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH、(CH−(CH=CH−CH−CHおよびCH−(CH=CH−CH−CHから選択される。
【0027】
本発明は、アシル部分の二重結合の数に基づいて記載された、式Iの異なるTGMを分類する。したがって、全ての炭化水素部分R1、R2およびR3が、同数の二重結合を有する場合、そのTGMをTGMXと呼び、当該Xは、アシル部分の二重結合の数を表わす。この意味で、二重結合を有さず全ての炭化水素部分R1、R2およびR3を有する1つのTGMはTGM0となり、全ての炭化水素部分に1つの二重結合を有するものはTGM1となり、全ての炭化水素部分に2つの二重結合を有するものはTGM2となり、同じように続くだろう。また、異なる数の二重結合を有する炭化水素部分の組み合わせは、TGMが持つことができる異なる鎖の数および種類(しかし位置ではない)を言及するために、2つまたは3つの数を使用して表し得る。例えば、1つの二重結合を有する2つのアシル部分、および4つの二重結合を有する1つのアシル部分を持つTGMは、TGM114になるだろう。同様に、1つの二重結合を有する1つのアシル部分、4つの二重結合を有する他のアシル、および6つの二重結合を有する第3番の炭化水素部分を持つTGMは、TGM146になるだろう。各鎖の数は、合成方法において使用されるそれぞれの2−ヒドロキシ脂肪酸の化学量,特に比率、に比例する。このように、この命名法が各鎖の位置(R1、R2、R3)に関しての情報を提供しないならば、TGM114は、TGM141およびTGM411も包含する。TGMが2つの異なるアシル部分しか持たない、およびその化学量が1:1でなければならない場合、そのTGMは、TGMXY形式で2つの数を用いて記号化され、当該XおよびYは、各アシル部分の二重結合の数を表わす(例えばTGM12)。同様に、炭化水素部分R1、R2およびR3が1:1:1の化学量を持つ、および少なくともアシル部分の1つが他と違う場合、そのTGMは、X、YおよびZが、各アシル部分の二重結合の数を表わすTGMXYZ形式で言及される。この意味で、ラジカルR1、R2とR3は、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合の、同じまたは異なる炭化水素分子によって構成され得ること、および、膜内で循環する分子の能力を考慮すると、炭化水素部分が1つの位置(例えば、R1)または他の位置(例えばR3)にあるか否かは無関係であるということが、指摘されるだろう。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、ラジカルR1、R2およびR3を表1に記載された炭化水素部分に置き換え得る。したがって、R1=R2=R3である本発明の式Iの化合物のこの好ましい実施形態では、式中、R1、R2およびR3は、−(CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシヘプタノイル)グリセロール, TGM0]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−オクタデック−9’−エノイル)グリセロール, TGM1]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−オクタデック−9’,12’−ジエノイル)グリセロール, TGM2]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−オクタデック−9’,12’,15’−トリエノイル)グリセロール, TGM3A]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−オクタデック−6’,9’,12’−トリエノイル)グリセロール, TGM3G]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−エイコサ−5’,8’,11’,14’−テトラエノイル)グリセロール, TGM4]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−エイコサ−5’,8’,11’,14’,17’−ペンタノイル)グリセロール, TGM5]、および−CH−(CH=CH−CH−CH [1,2,3−トリ(2’−ヒドロキシ−ドコサ−4’,7’,10’,13’,16’,19’−ヘキサノイル)グリセロール, TGM6]の間で選択される。したがって、この実施形態では、本発明の式Iの化合物は、式IIの化合物から選択される、炭化水素部分R1、R2およびR3を有し、式中、aは4であり、bは0であり、およびcは0であり(TGM0)、aは6であり、bは1であり、およびcは6であり(TGM1)、aは6であり、bは2であり、およびcは3であり(TGM2)、aは6であり、bは3であり、およびcは0であり(TGM3A)、aは3であり、bは3であり、およびcは3であり(TGM3G)、aは2であり、bは4であり、およびcは3であり(TGM4)、aは2であり、bは5であり、およびcは0であり(TGM5)、およびaは1であり、bは6であり、およびcは0(TGM6)である。R1=R2=R3である本発明の式Iの化合物の1つの好ましい実施形態では、式中、R1、R2およびR3は好ましくは、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM1]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM2]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [TGM3A]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM3G]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM4]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [TGM5]、および−CH−(CH=CH−CH−CH [TGM6]から選択され、または、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM2]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [TGM3A]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM3G]、−(CH−(CH=CH−CH−(CH−CH [TGM4]、−(CH−(CH=CH−CH−CH [TGM5]、および−CH−(CH=CH−CH−CH [TGM6]から選択される。
【0029】
【表1】
【0030】
一例として、および本発明の分子の1つの完全構造を用いて、上に示した式Iにおいて、R1、R2およびR3の代わりに表1で示された分子を用いることで、TGM1は特徴付けられるだろう。したがって、TGM1の完全な構造は以下のようになるだろう。
【0031】
【化7】
【0032】
また、本発明の式Iの化合物は、前記化合物の全ての立体異性体を含む。言い換えれば、本発明の化合物は、分子間で同じ結合を有する式Iと同じ分子式および結合した原子の配列を持つ全ての異性体を含むが、しかしそれは、水酸基が結合する3つの炭素のそれぞれ1つに、前記化合物が立体中心を含み、そして任意に少なくとも1つの二重結合を含むという事実ゆえ、空間におけるそれらの原子の3次元配向は異なる。したがって、本発明の式Iの化合物は、式Iに基づき考えられる全ての鏡像異性体、ジアステレオ異性体、メソメリー化合物および幾何異性体も含む。好ましくは、本発明の化合物のサンプルおいて、本発明の各化合物が持つ3つのヒドロキシ−アシル部分のそれぞれ1つも、同様に、異性体(R)および(S)になり得る。本発明は、上記される一般的な方法(図1参照)のような、式Iの化合物の生成のための方法(合成の方法)にも関する。前記方法は、以下のような、3つの主工程:
A)式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸の形成、
【0033】
【化8】
式中、Rは、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を含む炭化水素部分であり、またPGはアルコール保護基であり、式IIIの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸は、2−ヒドロキシ脂肪酸または2−ヒドロキシ脂肪酸のナトリウム塩由来である(図1のA参照);
B)式IVのトリグリセリドの形成
【0034】
【化9】
式中、R1、R2およびR3は、5から22の炭素原子および0から6の間の二重結合を有する脂肪族鎖を、各々および独立して含む炭化水素部分であり、PGは上記通り定義され、式IVのトリグリセリドは、グリセロールと式IIIの少なくとも1つの2−ヒドロキシ保護された脂肪酸との反応により得られる(図1のB参照);および、
C)式IVのトリグリセリドの脱保護(図1のC参照)を含む。
1つの好ましい実施形態では、OPGは(i)脂肪酸のカルボン酸部分のアルファ炭素、および(ii)アルコール保護基(PG)に結合する酸素原子(O)を含み、当該OPGは、好ましくは、シリルエーテル部分、アルキルエーテル部分、アルコキシメチルエーテル部分、メチルチオメチルエーテル部分、アルキルエステル部分、メトキシアルキルエステル部分、ハロアルキルエステル部分、ベンジルエステル部分、オキソアルキルエステル部分、炭酸エステル部分またはアセタール部分から選択される。工程A)は、以下の第一工程;i)2−ヒドロキシ脂肪酸のナトリウム塩から、2−ヒドロキシ脂肪酸を形成する工程、および以下の3工程;ii)2−ヒドロキシ脂肪酸に対応するエステルを得るために、好ましくは、アルコール用いて2−ヒドロキシ脂肪酸の酸部分をエステル化する工程;iii)2−OPG脂肪酸のエステルを得るために、2−ヒドロキシ脂肪酸エステルの位置2でヒドロキシル部分を保護する工程;および、iv)2−OPG脂肪酸を得るために、2−OPG脂肪酸のエステルを加水分解する工程を、任意に含み、式中、OPGは、(i)脂肪酸のカルボン酸部分、または脂肪酸のカルボン酸のエステル部分のアルファ炭素、および(ii)1つのアルコール保護基(PG)に結合する1つの酸素原子(O)を含み、当該OPGは、好ましくは、シリルエーテル部分、アルキルエーテル部分、アルコキシメチルエーテル部分、メチルチオメチルエーテル部分、アルキルエステル部分、メトキシアルキルエステル部分、ハロアルキルエステル部分、ベンジルエステル部分、オキソアルキルエステル部分、炭酸エステル部分またはアセタール部分から選択される。代替的に、工程A)は、2−OPG脂肪酸を得るために、脂肪酸のアルファ炭素または脂肪酸のナトリウム塩を反応させる工程である。別の代替案として、工程A)は、第一工程;i)脂肪酸のナトリウム塩から脂肪酸を形成する工程、および以下の3工程;ii)脂肪酸の対応するエステルを得るために、脂肪酸の酸部分をエステル化する工程;iii)2−OPG脂肪酸のエステルを得るために、脂肪酸エステルのアルファ炭素を反応させる工程;および、iv)2−OPG脂肪酸を得るために、2−OPG脂肪酸のエステルを加水分解する工程を、任意に含み、当該工程iii)は、a)2−ヒドロキシ脂肪酸のエステルを得るために、2−OPG脂肪酸のエステルの2−OPG部分を加水分解する工程および、b)2−OPG脂肪酸の他のエステルを得るために、2−ヒドロキシ脂肪酸のエステルの位置2でヒドロキシル部分を保護する工程を、任意に含む。別の代替案として、工程A)は、第一工程、i)脂肪酸のナトリウム塩から脂肪酸を形成する工程、および以下の4工程;ii)脂肪酸の対応するエステルを得るために、脂肪酸の酸部分をエステル化する工程;iii)2−ヒドロキシ脂肪酸のエステルを得るために、脂肪酸エステルのアルファ炭素を加水分解する工程;iv)2−OPG脂肪酸のエステルを得るために、2−ヒドロキシ脂肪酸のエステルの位置2でヒドロキシル部分を保護する工程;および、v)2−OPG脂肪酸を得るために、2−OPG脂肪酸のエステルを加水分解する工程を任意に含み、式中、OPG部分は、上に言及したように定義される。
【0035】
式Iの化合物の生成のための方法(合成の方法)の代替実施形態では、前記方法は、第一工程i)脂肪酸のナトリウム塩から脂肪酸を形成する工程、および以下の3工程;A1)グリセロールと前記脂肪酸との反応により、トリ(アシル)グリセロールを形成する工程;B2)トリ(2−ヒドロキシ保護されたアシル)グリセロールを得るために、脂肪酸の各部分のアルファ炭素を反応させる工程;および、C)トリ(2−ヒドロキシ−アシル)グリセロールを得るために、脱保護をする工程(図1のC参照)も、任意に含む。1つの好ましい実施形態では、前記方法は、第一工程i)脂肪酸のナトリウム塩から脂肪酸を形成する工程を含み、および以下の3工程;A2)グリセロールと前記脂肪酸との反応により、トリ(アシル)グリセロールを形成する工程;B2)トリ(2−ヒドロキシ−アシル)グリセロールを得るために、脂肪酸の各部分のアルファ炭素を加水分解する工程も、任意に含む。前記実施形態では、工程A1)およびA2)は、好ましくは、グリセロールと少なくとも1種類以上3種類以下の2−ヒドロキシ保護された脂肪酸との反応を含む。
【0036】
本発明では、さらに、特定の疾患の発現を予防するため、または一旦それらが発現した際に回復させるために、どのようにヒドロキシ−トリグリセリドが成功裡に使用され得るか証明される。具体的には、本発明は、血漿脂質プロフィールまたは膜脂質の構造あるいは機能の変更に対して、好ましくは、病因により合併された少なくとも1つの疾患または病状の処置および/または予防において、食品および/または薬剤として使用される、上記に従う式Iの化合物に関する。前記一般的病因によって合併された、および本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの使用によって予防または処置された、前記疾患または病状は、癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患である。
【0037】
したがって、本発明は、以下から選択される少なくとも1つの疾患の予防および/または処置において使用される、上記された式Iの化合物に関する:癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患。同様に、本発明はまた、以下から選択される少なくとも一つの疾患の予防および/または処置において使用される薬剤の調製のための、独立したまたは少なくとも1つの他の化合物と組み合わせた、上記に従う式Iの少なくとも1つの化合物の使用に関する:癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患。式Iの少なくとも1つの化合物の前記使用は、独立し得るか、または少なくとも1つの他の化合物と組み合わせられ得る。
【0038】
前記一般的病因によって合併された、および本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの使用により予防または処置された、前記疾患または病状は、好ましくは、例えば、
・ 心血管/代謝疾患:高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、心臓発作、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、メタボリック症候群など、
・ 癌:肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫および他の脳腫瘍、膵臓癌、肝臓癌、中皮腫、男性および女性生殖腺腫瘍、頭頸部癌、腎臓腫瘍、黒色腫など、
・ 神経性/神経変性疾患:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脊髄損傷、成人ポリグルコサン身体疾患(APBD)、うつ病、不安神経症、不眠症、疼痛、統合失調症、一般的な炎症、ブドウ膜炎、リウマチ、関節炎に由来する炎症プロセス、関節症、老化を含む局所炎症など、である。
【0039】
したがって、上記した式Iの化合物の、および/または上記した式Iの化合物の使用において、1つの好ましい実施形態では、以下の少なくとも1つの疾患は以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫および/または他の脳腫瘍、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌、神経内分泌癌、中皮腫、男性および/または女性生殖腺腫瘍、頭頸部癌、腎臓腫瘍および/または黒色腫から、順に選択される癌;
b)高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、心臓発作、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および/または他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、および/またはメタボリック症候群から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または、
c)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脊髄損傷、成人ポリグルコサン身体疾患、うつ病、不安神経症、疼痛、統合失調症、不眠症、一般的な炎症、および/またはブドウ膜炎、リウマチ、関節炎に由来する炎症プロセス、関節症、および/または老化を含む局所炎症から、順に選択される神経性/炎症性疾患。
【0040】
上記した式Iの化合物の、および/または上記した式Iの化合物の使用の、より好まれる1つの実施形態では、少なくとも1つの疾患は、以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌および/または神経内分泌癌から、順に選択される癌;
b)高血圧症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満症、および/または糖尿病から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または
c)アルツハイマー病、および/または成人ポリグルコサン身体疾患から、順に選択される神経性/炎症性疾患。
【0041】
したがって、本発明は、心血管疾患および肥満症、癌、神経変性疾患、精神疾患、および代謝疾患の予防および処置のための、ヒトおよび動物における薬剤として、独立してまたは他の化合物と組み合わせて使用される、同じであり得るまたは異なり得る、および5から22の間の炭素原子かつ0から6の間の二重結合を有する炭化水素部分持つ、ラジカルR1、R2およびR3を有する式Iの化合物に関する。
【0042】
同時に、1つの特に好ましい実施形態では、本発明は、式Iの化合物に関し、式中、R1、R2およびR3は、炭化水素部分であり、当該炭化水素部分は、各々および独立して、式IIの16から22の間の1つの炭素原子の脂肪族鎖から成り、式中、
aは1から6の間の整数であり、
bは1から6の間の整数であり、および
cは0、3、および6から選択される整数であり、
式Iの化合物は、少なくとも1つの疾患の予防および/または処置に使用され、当該疾患は、以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫、膵臓癌、肝臓癌、肺癌、子宮頸癌および/または神経内分泌癌から、順に選択される癌;
b)高血圧症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満症、および/または糖尿病から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または
c)アルツハイマー病、および/または成人ポリグルコサン身体疾患から、順に選択される神経性/炎症性疾患。
【0043】
本発明のヒドロキシ−トリグリセリドが提供する広範囲の治療応用は、細胞内の膜において実行される、および細胞内の膜により実行されるプロセスの正しい活性を可能にする膜に、これらの脂質が特定の構造特性を与えることを、一般的な方法で、推測することを可能にする。言い換えれば、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、疾患の予防および/または処置のために効果的に使用され得、当該疾患の病因は、生体膜の脂質のレベル、組成、構成あるいは分子または超分子の特性の他の種類の変更のいずれかに関係し、または生体膜内に存在する前記脂質の前記変更の結果として起こる、細胞シグナル伝達の変更した調整に関係する。同様に、これらのヒドロキシ−トリグリセリドの効果は、血漿脂質の循環レベルまたは脂質代謝に関連する。要約すると、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、有益な方法(予防または治癒する)において、身体脂質に関する変更を調整することができる。
【0044】
本発明のヒドロキシ−トリグリセリドが提供する広範囲の治療応用(実施例2から4、および図2から5と7を参照)は、様々な現象により正当化される。まず第1に、健康に対する正または負の効果を持ち得る、天然のトリグリセリドを有する油およびバターの摂取は、多数の要因によって明示される。例えば、オリーブオイル(高含有量のモノ不飽和アシル部分を有するトリグリセリドが豊富な)の摂取は心血管の健康対する有効な影響を有し(Escriba et al.、2003)、肥満症を防ぎ(Penalvo et al.、2012)、脂質異常症を防ぎ(Kimura et al.、2013)、糖尿病の進行を予防し(Perona et al.、2007)、癌の発生率を縮小させる(Barone et al.、2014)。判定された種類の天然のトリグリセリド(水酸化していない)を摂取した場合、後者は生物の全体にわたって分配され、全臓器の細胞膜の脂質種の調整を引き起こす。この理由で、特定の天然オイルおよび本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの両方は全細胞に浸透し、細胞膜へと吸収され、様々な種類の病状に対する有効な効果がもたらされる(図8参照)。
【0045】
第2に、判定された生理学的または病理学的プロセス(変温性の魚における冷水への順応など)の結果として生成される脂質のレベルの変化は、生物の細胞の全てに実質的に影響を与える(Buda et al.、1994)。この結果は、生物の全ての細胞において脂質の調製された効果があること、および、脂質における改変が正または負の効果であっても、同方向においてすべての細胞を調整することを示す。最終的には、トリグリセリドはエネルギーを生成するために貯蔵または分解され得る。実際、これらの分子は例外的な細胞燃料を構成し、これは未変性油の直接の使用が、健康に対する適度な影響を持つことを意味する。この意味で、リポプロテインリパーゼのような様々な酵素が、トリグリセリドを代謝し、β酸化によって代謝される脂肪酸を遊離することができる。しかしながら、本発明において生じるような構造変更(ヒドロキシ)によるそれらの分解の遮断は、血清および膜の両方における長期的な方法での、これらの分子の永続を可能にし、したがって、それらの治療作用を可能にする(図8および9参照)。また、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの分解(遅い:図9参照)が生じさせるアシル部分は、β酸化によって代謝することはできないが、はるかに遅いプロセスであるα酸化によって代謝することができる (Foulon et al.、2005)。この理由で、本発明において使用されるヒドロキシ−トリグリセリドは、観測可能な副次的効果を伴わずに、一般的に健康のための、および上に示した病状の予防および処置のための広範囲の有効な効果を生み出す。したがって、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、それらの代謝を遅くするために、生物内に存在する時間を増大させ、および、それにより、治療効果を増大させるために、天然のトリグリセリドに関する改質を示す。実験的な方法で、このより遅い代謝を確認することが可能であった(図9)。
【0046】
本発明のヒドロキシ−トリグリセリドによって提供された広範囲の治療応用は、これらの脂質が膜において実行される、および膜により実行されるプロセスの正しい活性を可能にする特定の構造特性を膜に与えることを、一般的な方法において、推測することを可能にする。実際に、これらの分子の作用の機構(生体膜の組成および構造の調整に基づく)は、ヒトの病状(ほとんどの場合タンパク質との、または核酸との相互作用に基づく)を処置するために使用される薬剤のほとんどの機構とは異なる。この理由で、ヒドロキシ−トリグリセリドは、本発明の化合物の1つが少なくとも他の分子(有効成分および/または賦形剤)と共に使用される併用療法において使用され、化合物のたった1つによる単独療法よりもはるかにより効果的であることが分かった。
【0047】
本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは独立して投与され得る、あるいは賦形剤と組み合わされる医薬組成物または栄養補助組成物へ製剤され得る。したがって、本発明は、a)請求項1から8のいずれかによる、式Iの少なくとも1つの化合物;および、b)少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物および/または栄養補助組成物に関する。同時に、a)上記される少なくとも1つの式Iの化合物、およびb)少なくとも1つの賦形剤を混合する工程を含む、本発明は上に記載したような、医薬組成物および/または栄養補助組成物の調合のための方法に関する。
【0048】
前記賦形剤は、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、甘味料、香味料、着色剤、担体、酸化防止剤、コンパクタ―、安定剤など、およびそれらの組み合わせから選択され得る。同様に、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、他の有効成分と組み合わせて、医薬組成物または栄養補助組成物の一部分を形成することができる。1つの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物および/または栄養補助組成物は、本明細書に記載された、式Iの少なくとも2つの異なる化合物を含む。本発明の目的のために、用語「栄養補助組成物(nutraceutical)」は、食事中に定期的に摂取される化合物、またはその捕完物として、および、この場合、病因が細胞膜脂質における変更に関連する疾患を予防または回復させる働きをする化合物として定義される。
【0049】
最後に、本発明は、ヒトおよび動物の少なくとも1つの疾患の予防および/または治療処置のための方法に関し、当該疾患の一般的な病因が、細胞膜に位置するまたは血漿内を循環している脂質の構造的および/または機能的変更と関係し、当該方法が、上に記載されたような、本発明の式Iの少なくとも1つの化合物の治療上有効な量の患者への投与を含む。加えて、本発明は、ヒトと動物における少なくとも1つの疾患の予防および/または治療処置のための方法に関し、当該方法は、治療上有効な量の、上に記載されるような本発明の式Iの少なくとも1つの化合物、または、上に記載されるような医薬組成物および/または栄養補助組成物の、患者への投与を含む。本方法の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの疾患は、癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患から選択され、より好ましくは、前記疾患は、以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫および/または他の脳腫瘍、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌、神経内分泌癌、中皮腫、男性および/または女性生殖腺腫瘍、頭頸部癌、腎臓腫瘍および/または黒色腫から、順に選択される癌;
b)高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、心臓発作、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および/または他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、および/またはメタボリック症候群から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または
c)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脊髄損傷、成人ポリグルコサン身体疾患、うつ病、不安神経症、疼痛、統合失調症、不眠症、一般的な炎症、および/またはブドウ膜炎、リウマチ、関節炎に由来する炎症プロセス、関節症、および/または老化を含む局所炎症から、順に選択される神経性/炎症性疾患。1つのさらにいっそう好ましい実施形態では、前記疾患は以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌および/または神経内分泌癌から、順に選択される癌;
b)高血圧症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満症、および/または糖尿病から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または、
c)アルツハイマー病、および/または成人ポリグルコサン身体疾患から、順に選択される神経性/炎症性疾患。
【0050】
本発明の目的のために、「治療上有効な量」は、副次的有害作用を示さずに疾患を回復させる、または予防する量を意味すると理解され、もし副次的有害作用が生じた場合に、薬学的事象における規制当局により定義された基準に基づいて仮定できる量を意味すると理解される(基本的には、生じた恩恵は引き起こされた損害より大きい;例えば、吐き気の発症が深刻な予後を有する癌患者において想定できるだろう)。
【0051】
本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの投与は、上に示した形体または他の種類の薬学的に許容可能な形体など、例えば、腸の(消化器系を通して)、口の(丸剤、カプセル剤、粒剤、乳剤、錠剤またはシロップ剤を用いて)、直腸の(坐剤または浣腸剤を用いて)、局部の(クリーム剤または貼付剤を用いて)、吸入の、非経口的な注入の、静脈注射、筋肉内注射または皮下注射などの経路を経て実行し得る。本発明に記載された油もまた、栄養補助的または医薬的量において、明白な副次的影響を伴わずに、口の、腹腔内の、静脈内の、皮下の、局部の形体で、投与されることが可能である。
【0052】
別に留意することとして、本発明のヒドロキシ−トリグリセリド、および他の有効成分で構成された組成物は、上で引用された症状の予防および処置において有効である。言い換えれば、上記による、治療上有効な量の、式Iの少なくとも1つの化合物または少なくとも1つの医薬組成物および/または栄養補助組成物の患者への投与を含む、ヒトと動物における少なくとも1つの疾患の予防および/または治療処置のための方法の、1つの好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの疾患は、癌、代謝/心血管疾患、および/または神経性/炎症性疾患から選択される。より好ましくは、前記少なくとも1つの疾患は、以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫および/または他の脳腫瘍、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌、神経内分泌癌、中皮腫、男性および/または女性生殖腺腫瘍、頭頸部癌、腎臓腫瘍および/または黒色腫から、順に選択される癌;
b)高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、心臓発作、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および/または他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、および/またはメタボリック症候群から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または
c)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脊髄損傷、成人ポリグルコサン身体疾患、うつ病、不安神経症、疼痛、統合失調症、不眠症、一般的な炎症、および/またはブドウ膜炎、リウマチ、関節炎に由来する炎症プロセス、関節症、および/または老化を含む局所炎症から、順に選択される神経性/炎症性疾患。
【0053】
より好まれる1つの実施形態では、前記少なくとも1つの疾患は以下から選択される:
a)肺癌、乳癌、前立腺癌、白血病、神経膠腫、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌および/または神経内分泌癌から、順に選択される癌;
b)高血圧症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満症、および/または糖尿病から、順に選択される代謝/心血管疾患;および/または
c)アルツハイマー病、および/または成人ポリグルコサン身体疾患から、順に選択される神経性/炎症性疾患。
【実施例】
【0054】
実施例1:2−ヒドロキシ−トリグリセリドTGM1の形成によって例証される、2−ヒドロキシ−トリグリセリドの合成方法
A.MOM保護基を有するアルファ炭素の水酸基において保護される、2−ヒドロキシ−オクタデカン酸の形成(2−メトキシメチルオキソーオクタデカン酸、図1のAにおける式III、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、およびOPG=−OCHOCH)。
i)酸の形成
2ーヒドロキシ−オクタデカン酸のナトリウム塩、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)および3Mの塩酸(HCl)を、機械的撹拌機能を有する反応器に投入する。それを透明な液体が得られるまで撹拌する。透明な溶解液が得られたなら撹拌を止め、その相を分離する。有機層を減圧濃縮して、粗製の2−ヒドロキシ−オクタデカン酸を得る(99%の収率)。
ii)エステル化
粗製の2−ヒドロキシ−オクタデカン酸[図1のAにおける2−OHFA、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体]を、メタノール溶液(H2SO4硫酸中のMeOH)中に投入し、60℃に加熱する。炭酸ナトリウム(NaCO)を用いて中和することにより、その反応を止める。得られた粗製の生成物を、MTBEを用いて抽出し、減圧濃縮し、そして2−ヒドロキシ−オクタデカン酸のメチルエステルを得る(96%の収率)。
iii)OH保護
2−ヒドロキシ−オクタデカン酸のメチルエステルを反応器に投入し、トルエン中に溶解する。クロロメチルメチルエーテル(CMME)およびp−トルエンスルホン酸(pTSA)を溶解液に加える。反応液を60分間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を用いて中和する。2−メトキシメチルオキシ−オクタデカン酸のメチルエステルを得る。
iv)加水分解
2−メトキシメチルオキシ−オクタデカン酸のメチルエステルを反応器に投入し、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解する。ヒドロキシ−カリウム(KOH)水溶液を、この溶液に加える。溶液を1時間かけて40°Cまで加熱する。反応を、HCl(3M)を用いて止め、抽出し、その後その有機層を減圧濃縮する。2−メトキシメチルオキシ−オクタデカン酸を得る[図1のAにおける式III、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、およびOPG=−OCHOCH](99%の収率)。
【0055】
B.トリ(2−メトキシメチルオキシ−オクタデセノイル)グリセロールの形成[図1のBにおける式IV、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、およびOPG=−OCHOCH]。
滴下漏斗および温度計を有する反応器、および不活性雰囲気下(Nを用いて)において、2−メトキシメチルオキシ−オクタデカン酸[図1のAにおける式III、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、そしてOPG=−OCHOCH]をグリセロールおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)に加える。それをジクロロメタン(CHCl)中ですべて溶解し、そして5℃まで冷やす。溶液が冷え切った時に、滴下漏斗を使用して、CHClにN,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の溶液を加える。反応溶液を2−3日間、還流(40℃)で加熱した。反応溶液をセライトベッド上で濾過し、固形物を、CHClを用いて2回洗浄する。濾過液を飽和NaHCO、飽和NHCl、飽和NaClを用いて洗浄する。有機層を硫酸マグネシウムMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮する。約69%のトリグリセリドートリ(2−メトキシメチルオキシ−オクタデセノイル)グリセロールを含有する粗製の生成物を得る[図1のBにおける式IV、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、およびOPG=−OCHOCH]。粗製の生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、90%の純度の化合物を得る。
【0056】
C.トリ(2−ヒドロキシ−オクタデセノイル)グリセロールを得るための脱保護[図1のCにおける式I、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体]。
トリグリセリド−トリ(2−メトキシメチルオキシーオクタデセノイル)グリセロール[図1のBにおける式IV、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、およびOPG=−OCHOCH]を、アセトン中および水中に溶解し、そしてピリジニウム−パラ−トルエンスルホナート(ppt)を加える。それを、12時間還流で加熱する。反応を止め、アセトンを蒸発させ、MTBEとHOを用いて抽出する。有機層を水で3回洗浄する。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮する。ヒドロキシ−トリグリセリド、トリ(2−ヒドロキシ−オクタデセノイル)グリセロールを得る[図1のCにおける式I、式中、R=−(CH−CH=CH−(CH−CHのcis異性体、=TGM1、表1参照](90%の純度)。プロセスの全収率は70%である。同様の手順を、上記される他のアシルラジカルを含む他の2−ヒドロキシ脂肪酸のナトリウム塩を用いて使用し、表1に記載される異なるTGMを得た。
【0057】
実施例2:癌の予防および/または処置における、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの使用
本発明のヒドロキシ−トリグリセリドが、腫瘍プロセスの予防および処置において応用できるかどうかを調査するために、次の2つのモデルを使用した:インビトロおよびインビボ。
【0058】
A)インビトロモデル
一方で、異なる種類の癌のヒト細胞を使用した。空気中において、ウシ胎児血清(10%)および他のサプリメントを有する培養培地RPMI1640またはDMEMにおいて、および本発明のトリグリセリドの存在下または欠如下において、72時間の間に異なる濃度で、5%COおよび37℃で、その細胞をインキュベートした。本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、ヒト腫瘍細胞の増殖に対する高い効果を有すが、非腫瘍細胞(ヒト線維芽細胞、MRC5)の増殖に対しては高い効果を有さないことが観察することができた。このように、本発明の分子は、肺癌、脳神経膠腫、神経芽細胞腫(中枢神経系)、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病(リンパ腫と骨髄腫)、子宮頸癌、結腸癌および肝臓癌の増殖を止める効果を示したが、非腫瘍細胞(MRC5)に対する著しい活性を示さなかった(図2および表2)。
【0059】
【表2】
特に図2は、濃度およびインキュベーション時間に依存して、分子(A)TGM1、(B)TGM2、(C)TGM4および(D)TGM6によって生成された、ヒト肺癌細胞(A549)の増殖の阻害を示す。類似の実験を、異なる種類の腫瘍細胞のために本発明のTGMの残り部分を用いて実施した(表2参照)。前記表2は、様々な種類の癌の細胞増殖に対する、ヒドロキシ−トリグリセリドのおのおの1つのIC50値を示す。IC50値は、腫瘍細胞の数を半分に減少させる濃度である。表から理解できるように、ヒドロキシ−トリグリセリド(TGM)は強い力で腫瘍細胞の増殖を阻害することが可能である。対照的に、トリオレイン(オリーブオイルの主要なトリグリセリド)のような天然のトリグリセリドは、腫瘍細胞の増殖を阻害するには低い力を有するか、または阻害するには無力である。
【0060】
これらの結果は、オリーブオイルおよび他の天然オイルが、特定の種類の腫瘍の進行に対する予防効果を有するが、一旦癌が発症したならば治療効果を欠くという事実を明らかにする。対照的に、ヒドロキシ−トリグリセリドは、これらおよび以下にさらに示される他の結果によって実証されるように、高い抗腫瘍効果を有する。天然のトリグリセリド(トリオレイン)、およびヒドロキシ−トリグリセリドの両方の場合において、正常な非腫瘍細胞(MRC−5細胞)の増殖に対して関係する阻害効果は観察されない。これらのデータは、薬剤投与においてこれらの分子のすべてが毒性を持たないことを正当化する。
【0061】
B)インビボモデル
別に留意することとして、インビボでのヒドロキシ−トリグリセリドの抗腫瘍効果を確認するために、ヒト非小球性肺癌細胞を注射により注入(動物当たり5×10cellsのA549)した免疫阻害性のヌードラット{[Crl:Nu(Ico)−Fox1]Nu/Nu}を用いた。一旦腫瘍が見えるようになった、ヒト腫瘍細胞注入の10日後に、初めてその腫瘍の大きさを測定した。その時点でビヒクル(水:対照)を用いて、または400mg/kgのトリオレイン(TO)(経口、1日に1度)および上に示した異なるヒドロキシ−トリグリセリド(表1)を用いてその動物を処置し、そして28日間の間、腫瘍体積をモニタリングした。図3は、デジタルバーニヤキャリパーゲージを用いて測定した、腫瘍の最終的な体積(mm)を示す。腫瘍の体積を以下の方程式を用いて計算した。
【0062】
【数1】
式中、vはその腫瘍の体積、wはその幅、およびlはその長さである。全ての群における動物の数は8であった。図3から理解されるように、天然のトリグリセリド、トリオレインにより生じた腫瘍増殖阻害はそれほど大きくなかったが、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの抗腫瘍効果は非常に顕著で優位なものであった(P<0.01)。全ての場合において、本発明の分子がその動物を殺すことなく腫瘍の体積を縮小することが観察でき、このことは、それらが癌の処置に有効であることを実証している。腫瘍の著しい縮小を引き起こすことに加えて、それらの分子は非腫瘍細胞または試験動物で中毒作用を生じさせないため、経口投与され、薬剤投与において毒性を持たない。図2図3、および表2に掲示された結果は、ヒドロキシ−トリグリセリドが栄養補助的および医薬的アプローチによって、異なる種類の癌の処置および予防に有効であることを明確に示す。
【0063】
実施例3:代謝および心血管の病状の予防および/または処置における、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの使用
代謝および心血管の病状は密接に関係している。我々の社会を特徴づける栄養過剰は、肥満および過剰体重の問題を引き起こすだけではない。それは、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、脳卒中、動脈硬化症、発作などの発症にも関係する。これらの病状はすべて早死にの危険性を増大させ、またさらには死の原因ともなり得る。この意味で、特定の天然オイルはこの種の病状に対する特定の効果を示すが、それらの能力には限界がある。対照的に、本発明の分子はこの種の病状の進行に対する重要な効果がある。代謝および心血管の病状の予防および処置のための本発明の化合物の効果の研究を可能にするために、高血圧ラットを使用した(SHR種、自然発症性高血圧ラット)。これらのラットは肥満症、高血圧症、脂質異常症(高コレステロール血症と高トリグリセリド血症)、糖尿病、メタボリック症候群および他の関連する健康問題を示す。
【0064】
A)血圧に対する本発明の化合物の効果
約300グラムのSHR種(自然発症性高血圧ラット)の高血圧ラットを、TGM1を用いて9日間(400mg/kg、12時間ごと、経口)処置した。処置を始める前(基底)および9日後に収縮期血圧を測定した。代謝の病状/心血管の病状を有するこれらの動物において、このTGM1用いた処置は、約25mmHgの血圧降下を引き起こしたが、600mg/kgのTGM1を用いた14日間の処置は、TGM1に関しては37mmHg、およびTGM6に関しては52mmHgまで収縮期血圧のより大きな降下さえ引き起こした(図4および表3)。この血圧降下作用は、本発明の分子が心血管の病状の予防および処置の高い可能性を有していること、および栄養補助的および医薬的レベルにおいて、高血圧症の予防および処置に使用され得ることを明確に示している。
【0065】
【表3】
【0066】
B)グルコースレベルに対する本発明の化合物の効果
同時に、SHRラットにおける高レベルの血糖症を制御する、したがって、糖尿病を予防または治癒するための、ヒドロキシ−トリグリセリドの効果の研究を行った。約300グラムの高血圧ラット(SHR)を、TGM1を用いて9日間の間(400mg/kg、12時間ごと、経口)処置した。処置を始める前(基底)および9日後に、血漿グルコースを測定した。全ての場合において、12時間の断食させた続けたラットで血漿測定を実行した。このように、9日の処置後の血液中のグルコースレベルは、本発明の分子に対して25%まで減少した(図5および表4)。
【0067】
【表4】
【0068】
したがって、SHRラットは正常なラットによって示された値よりも高い血糖レベルを有し、またこの糖尿状態は本発明において記載されるTGMにより、調整することができる。これらの結果は、本発明のTGMが血糖指数を調整できること、および血液中のグルコースの高い値を標準化することができることを明確に実証している。これによりこれらの結果は、ヒドロキシ−トリグリセリドが栄養補助的および医薬的アプローチによって、糖尿病の予防および処置に有効であることを実証する。
【0069】
C)コレステロールおよび脂質のレベルに対する、本発明の化合物の効果
また、脂質異常症の予防および処置のためのヒドロキシ−トリグリセリドの効果を研究するために、SHRラットを使用した。一方で、異なる経口投与および異なる期間で実施された処置は、試験動物において総コレステロールおよびその分画の血漿レベルの減少を引き起こした(表5および表6)。これらの減少は顕著で著しく、血漿値におけるコレステロールは代謝/心血管疾患を有さない動物において見られる値まで回復した。これらの結果は、本発明の分子が高コレステロール血症の予防および処置に有用であることを示している。
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
同様に、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドを用いた経口処置は、SHRラットの血漿におけるトリグリセリドのレベルを減少させた(表7)。これらの結果は、本発明の分子が高トリグリセリド血症の予防および処置に対して有用であることを実証している。また、上に示したコレステロールのレベル対するヒドロキシ−トリグリセリドの効果に加えて、これらの結果は、本発明の分子が一般的に脂質異常症の予防および処置に対して有用になり得ることを示している。
【0073】
【表7】
【0074】
D)体重に対する本発明の化合物の効果
最後に、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは2週間の経口処置後に、SHRラットの体重の減少を引き起こした(表8)。これらの結果は、本発明の分子が肥満および過剰体重の予防および処置に有用であることを実証している。
【0075】
【表8】
【0076】
メタボリック症候群は、肥満症、高血圧症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、糖尿病などを含む、様々な代謝の病態および心血管の病態の併発により特徴付けられる疾患である(Kaur、2014)。現在、薬剤は、通常、患者が示すおのおの1つの症状に対して適用されるため、メタボリック症候群の処置の可能性は限定されている。体重、高血圧、グルコースレベル、コレステロールおよびトリグリセリドを減少させる本発明のヒドロキシ−トリグリセリドによって示された効果は、本発明の分子がメタボリック症候群の予防および処置に非常に価値のある手段になり得ることを実証する。
【0077】
SHRラットおよび他の種類のラットにおいて発症する一連の健康問題は、代謝および心血管の病状が関係していることを実証している。現在は各症状が、別々に治療されるため、代謝および心血管の病状を有する患者は、肝臓の健康を危険にさらし得る数多くの薬剤を受け取る。ヒドロキシ−トリグリセリドは、研究されたすべての心血管および代謝の異常に対する効果を示した。この理由で、例えば、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脳卒中、発作、不整脈、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、他の脂質異常症、肥満症、糖尿病、メタボリック症候群などのような、代謝性および心血管性の病気を医薬的および栄養補助的アプローチにより予防し処置するために、本発明の分子が有効であると結論を下すことが可能である。
【0078】
実施例4:神経変性疾患の予防および/または処置における、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの使用
神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、異なる種類の痴呆、異なる種類の硬化症、成人ポリグルコサン身体疾患(APBD)、神経障害性疼痛、脊髄損傷、老化などの様々な種類の障害を含む。多数の神経系疾患は炎症を引き起こす傾向があり、また、反対に、炎症は様々な種類の神経学的問題、主として疼痛を引き起こす。アルツハイマー病のような特定の神経変性疾患が炎症プロセスを引き起こすという事実は周知であり、この疾患は、炎症プロセスにより部分的に引き起こされることを実証している(Krstic and Knuesel、2013;Liu and Chan、2014)。神経変性のプロセスのほとんどの場合では、膜脂質のレベルの変更が発見された(Mielke and Lyketsos、2010)。本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、ニューロンの膜における脂質バランスを取り戻し、および、これによりこれらの病状の予防および処置に寄与する。
【0079】
A)グリコーゲン分岐酵素1(GBE1)の活性に対する本発明の化合物の効果
本発明の分子が、グリコーゲン分岐酵素1(GBE1)の活性、および膜へのその結合を調整することができるということが観察可能であった(表9)。この酵素に対する変更は、APBDとして知られる神経変性のプロセスを引き起こす(Kakhlon et al.、2013)。この酵素(Y329S)の位置329におけるチロシンの改質が、GBE1の活性の低下を引き起こすことが説明されている。これは、細胞活性を妨げるグルコース集合体を形成して沈殿する、グリコーゲンのより少ない分岐を生じさせる(Kakhlon et al.、2013)。これは、特定の臓器の機能における障害、運動障害、および場合によっては、認知低下を引き起こす。我々は、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドがネイティブGBE1(野性型、wt)とY329S変異体の膜への結合を調整可能であること、および、通常の状態では非常に低いY329S形体の活性を増大させることが可能であると確証することができた(表9)。この理由で、本発明の分子はポリグルコサン身体疾患(APBD)の予防および処置に有効である。
【0080】
【表9】
【0081】
B)ラットのアルツハイマー病における本発明の化合物の効果。
アルツハイマー病は患者の認知力低下を引き起こし、生活の質が徐々に失われる神経変性疾患である。この疾患には高い社会的および病床的コストがかかり、また同様な疾患に間接的に影響を与える。その発生率は60歳の時点から4−5年ごとに2倍になり、80歳を超える人々の約3分の1に影響を与えている。アルツハイマー病を有する患者の脳には、ホスファチジルエタノールアミンおよび不飽和脂肪酸のレベルに影響を与えるであろう脂質の変更あることが観察されている(Guan et al.、1999)。また、神経変性のプロセスは、ニューロンの死を加速するであろう、脳における炎症プロセスに関連する(Hoozemans et al.、2011)。
【0082】
アルツハイマー病を研究するために、ヒトにおいてよく生じるアルツハイマー病に現れる5つの突然変異体を用いて、遺伝子組換えラットモデルを使用した(Tagとして記号化し、Tgと略した)。このアルツハイマー病のモデルは非常に深刻であり、動物は生後2か月で既に認知障害を示す。この実験を実施するために、若いラット(生後3か月の)および老いたラット(生後10か月の)の両方を、本発明のヒドロキシ−トリグリセリド(50mg/kg day、経口)を用いて3か月間、使用および処置した。そのラットには、空腹になるように低カロリー食を与え、機器の8つのアーム(非対称的な)のうち4つに餌が置かれた放射状迷路における試験を行い、その試験を完了するまでに犯されたエラーの数を定量した。試験の第1週のラットによって犯されたエラーの数を、100%であると見なした。
【0083】
この意味で、ヒドロキシ−トリグリセリドを用いた処置は、ニューロンの膜の脂質の標準化を可能にし、神経炎症(老人斑の発現に関連する)を減少させ、ヒトにおいてよく生じるアルツハイマー病の5つの特有な突然変異体の存在によって引き起こされた、ヒトアルツハイマー病を有する遺伝子組換えラットの認知パラメータの回復を引き起こす。これらの動物において、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドは、初期のアルツハイマー病を有する若い動物、および進行した病態を有する老いたラットの両方の認知パラメータの改善をもたらした(図7および表10)。例えば、若いラットおよび老いたラットにおいて、TGM6が試験の認知結果をどのように著しく改善したのかだけでなく、時間にわたる試験の遂行の改善(100%未満のエラーの数の減少)さえもどのようにもたらしたのか、図7のAから理解することができる。同様に、TGMの残りが認知試験の達成における著しい改善をもたらし、このことが、これらの分子のうちのいくつかを用いる認知回復が全体的であったことを意味し、健康な動物の認知値と同様な値(100%)が記されている。
【0084】
【表10】
対照動物を、ビヒクル(生理食塩水)を用いて、および他の動物を50mg/kgの示された化合物(経口)を用いて、毎日処置した。
【0085】
C)アルツハイマー病遺伝子を有するDrosophila melanogasterの認知パラメータおよび生存日数に対する本発明の化合物の効果。
認知パラメータおよび老化に対するTGMの効果を調査するために、ヒトアルツハイマー病に対応する遺伝子変更を有するDrosophila melanogasterのハエにおける、アルツハイマー病の他のモデルを使用した。使用したハエは、UAS−Aβ human−Tau 2N4R (stock 33771) のハエと、elav−GAL4c155(stock 8760)のハエとの異種交配から生まれた第一世代であった。アルツハイマー病の典型的な2つのタンパク質を過剰発現させるこのモデルは、これらの動物の命は約1か月であり、また彼らの生涯にわたって化合物の予防効果を確認するために前記化合物を幼虫の餌に加えることができるため非常に重宝し、上記されたモデルに相補的なものである。また、これによって老化に対する効果を確認することができ、およびこれらの動物の寿命の予測値もまた確認することができる(時間に対する生存日数)。
【0086】
この意味で、ヒトアルツハイマー病(F1)を有するハエは、健常対照である「Oregon」ハエ種と比較してより大きい認知低下を示す。本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの効果を評価するために、TGMのそれぞれ1つ(100μM)をこれらの動物により消費される餌に加えた。クライミングの走地性試験において同じ有益な効果を観察し得た(図7のBおよび表11)。この試験では、ビヒクルまたはTGMの1つを用いて処置した25匹のハエにおいて、行動性運動活性を調査した。この研究において、空気が入り得るようにスポンジを用いて閉じられた開口部を有する、ガラスシリンダー内にそのハエを導入した。テーブル上で強力な風を与えることにより筒の地面(底)にハエを吹き付け、20秒間それらの行動の時間を記録(Timed)した。この時間が経過すると、底から15cmの印を通過した(超えた)ハエの数を数えた(走地性試験)。通常、90%を超える健康な若いハエは、20秒以内にラインを通過した。しかしながら、老化の症状またはアルツハイマー病を有すると、正常なハエと比較して行動性運動活性(線を超えたハエの割合)は低下した。この文脈において、本発明のヒドロキシ−トリグリセリドを用いる処置は、アルツハイマー病に関するこの認知低下を回避し、これによって、疾患のハエの認知能力は健康なハエの認知能力と同様になった。特に、TGM6を用いた処置は認知パラメータの回復を引き起こし、これによってクライミング試験の結果は正常なハエにおける観察された結果とは、実際には判別不可能となった(図7のB)。ハエにおける認知パラメータに対する有効な効果も、他のTGMによって示された(表11)。実際、アルツハイマー病を有する対照群では、生後23日の時点でラインを超えたハエはいなかった。この意味で、異なるヒドロキシ−トリグリセリドは、アルツハイマー病を有するハエの50パーセントを超える命が、36日まで達する認知の値の増加とともに、走地性試験値における顕著な増加を引き起こした(表11)。
【0087】
【表11】
【0088】
これらの結果は、本発明の化合物が、一般的に老化、および特にアルツハイマー病の負の効果の予防および処置に効果的であることを実証している。別に留意することとして、アルツハイマー病を有するDrosophila melanogasterのハエの生存日数は、平均で28日であった。本発明のヒドロキシ−トリグリセリドによる処置は、平均寿命において45日までの増加、言い換えれば、対照動物の50%より大きい増加を生じさせた。これらの結果は、本発明の分子が生理的および病理学的老化の処置に有効であると考えられることから、神経変性のプロセスの減少が動物の平均寿命における顕著な増加を生じさせることを実証している。したがって、これらの結果は、本発明の化合物が、一般的に神経学的問題および特にアルツハイマー病の予防および処置に有効であることを実証している。
【0089】
実施例5:膜構造に対する本発明のヒドロキシ−トリグリセリドの効果
この実験は、TGMを持たない、または5mol%のTGM1、TGM2、TGM4またはTGM6の欠如下または存在下で、パルミトイル−オレオイルホスファチジルエタノールアミンのX線回折学的TGM(小角、SAXS)を有する、膜の生物物理学的特性を示す(図6)。理解され得るように、TGMの存在が、ノンラメラ傾向の増加を順に示すラメラから六方晶(L−a−HII)への遷移温度の値の減少から明らかになる、横方向の表面張力の非常に重要な減少を引き起こす(表12)。この構造が細胞シグナル伝達に必要な特定の膜タンパク質の固定を可能にするので、この効果は膜の機能性に対する重要な影響を有している。この理由で、TGMは、種々様々な疾患に関係して失われる細胞シグナルの増殖を可能にするため、細胞シグナル伝達に対する有益な影響を有することが言える。膜の構造に対して示されるこの効果は、オリーブオイルまたは魚油などの特定の油が、癌、心血管/代謝疾患、および神経性/神経変性疾患などの様々な疾患の予防にとって重要で有益な特性を有する理由を部分的に説明する。図6および表12は、各場合において小さな差異を有するが、全てのTGMが似た効果をどのように有するのかを明確に示している。固体−液体の遷移(Tm)およびラメラから六方晶への遷移(T)における効果を、1mol%の示されたTGMのそれぞれ1つの欠如下(POPE対照)または存在下でX線回折法によって、パルミトイル−オレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)の膜において測定した。
【0090】
【表12】
【0091】
したがって、本発明において、一般的な病因が細胞膜に位置する脂質の構造および/または機能の変更はもちろんのこと、血漿脂質プロフィールの変更にも基づく疾患の予防および/または処置において成功裡に使用された、ヒドロキシ−トリグリセリドの効果が実証された。その結果として、生体膜の構造および機能に対する干渉は、本発明において包含された分子の全てによって判定された病理学的プロセスを予防および/または回復させる最終結果を用いて、特定の細胞機能を効果的に修正することができる。
<引用文献>
【0092】
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図1
図2-1】
図2-2】
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図6-2】
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図9