(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348230
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】二重壁反応器での重質油の改質のための処理
(51)【国際特許分類】
C10G 31/08 20060101AFI20180618BHJP
C10G 31/06 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
C10G31/08
C10G31/06
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-528096(P2017-528096)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2018-500409(P2018-500409A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2015061536
(87)【国際公開番号】WO2016085749
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】14/554,209
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,キ−ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リー,チュ−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】アルアブドゥルハディ,アブドゥラ,ティー.
【審査官】
大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−307535(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/138208(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/066852(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0206007(US,A1)
【文献】
特開2006−232961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重壁反応器を用いて炭化水素改質反応中のコークス形成を低減するための処理であって、
熱伝達流を生成するために前記二重壁反応器の外殻側容積部に加熱供給水を供給するステップであって、前記二重壁反応器が、
外壁および内壁であって、これらの間に配置された前記外殻側容積部を画成している外壁および内壁、
前記内壁によって画された反応域容積部、
加熱要素であって、該加熱要素が、前記外壁に隣接しており、前記加熱要素が、高温戻り水を生成するために、前記熱伝達流が水の臨界温度を超えるように前記熱伝達流を加熱するよう構成されており、熱が、前記内壁を介して前記熱伝達流から前記反応域容積部に伝達され、前記高温戻り水が、前記外殻側容積部から出る加熱要素を備え、
その場合、前記熱伝達流が、水の臨界温度よりも高い温度にあり、水の臨界圧力よりも高い圧力にあるステップと、
前記二重壁反応器の前記外殻側容積部から出た前記高温戻り水をフィルタを介して供給するステップであって、前記フィルタが、濾過水流を形成するために微粒子を除去するように構成されているステップと、
混合流を生成するために混合器で前記濾過水流と加熱炭化水素原料とを混合するステップであって、前記加熱炭化水素供給原料が、水の臨界圧力よりも高い圧力および50℃よりも高い温度にあるステップと、
反応流の流れを形成するために、前記熱伝達流に対して向流の流れ構成にある、前記二重壁反応器の前記反応域容積部に前記混合流を供給するステップと、
反応器流出物を生成するために前記反応域容積部で前記反応流の流れを反応温度で反応させるステップであって、前記熱伝達流から前記反応域容積部に伝達される前記熱が、前記反応温度を水の臨界温度よりも高く維持するように機能可能であるステップと、
冷却流出物を生成するために反応器冷却器で前記反応器流出物を冷却するステップと、
減圧流出物を生成するために減圧器で前記冷却流出物を減圧するステップと、
気相生成物および液相生成物を生成するために相分離器で前記減圧流出物を分離するステップと、
分離水流および改質炭化水素流を生成するために生成物分離器で前記液相生成物を分離するステップと
を含む処理。
【請求項2】
前記二重壁反応器の上流で供給水と組み合わせるために前記分離水流を再利用するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
前記二重壁反応器が、
外殻側入口であって、前記加熱供給水を受け入れるように構成された外殻側入口と、
外殻側出口であって、前記高温戻り水として前記熱伝達流を排出するように構成された外殻側出口と、
反応入口であって、前記混合流を受け入れるように構成された反応入口と、
反応出口であって、前記反応器流出物として前記反応流の流れを排出するように構成された反応出口と
をさらに備え、
前記外殻側入口、前記外殻側出口、前記反応入口、および前記反応出口が、前記熱伝達流と前記反応流の流れとが向流する流れ構成を形成するように構成されている、請求項1または2に記載の処理。
【請求項4】
前記二重壁反応器が、
前記外壁から前記外殻側容積部へ延在するバッフルであって、前記加熱要素および前記外壁から前記熱伝達流への熱伝達を向上させるように構成されたバッフル
をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の処理。
【請求項5】
混合器予熱器に前記高温戻り水を供給するステップであって、前記混合器予熱器が、高温混合器供給物を生成するために前記高温戻り水の温度を上昇させるように構成されているステップ、および
前記濾過水流を形成するために前記フィルタに前記高温混合器供給物を供給するステップ
をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の処理。
【請求項6】
前記加熱供給水を水過熱器に供給するステップであって、前記水過熱器が、高温水供給物を生成するために前記加熱供給水の温度を上昇させるように構成されているステップ、および
前記二重壁反応器の前記外殻側容積部に前記高温水供給物を供給するステップ
をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の処理。
【請求項7】
前記反応器流出物を超臨界水反応器に供給するステップであって、前記超臨界水反応器が、前記反応器流出物中に存在する炭化水素を改質するように構成されており、前記超臨界水反応器の温度が、水の臨界温度よりも高く、前記超臨界水反応器の圧力が、水の臨界圧力よりも高いステップと、
生成物流を生成するために前記反応器流出物を反応させるステップと、
前記生成物流を前記反応器冷却器に供給するステップと
をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の処理。
【請求項8】
液体収率が、98体積%よりも大きい、請求項1〜7のいずれかに記載の処理。
【請求項9】
前記改質炭化水素流のアスファルテン、硫黄、および他の不純物の量が低減される、請求項1〜8のいずれかに記載の処理。
【請求項10】
前記二重壁反応器における前記反応流の流れの滞留時間が、10秒よりも長い、請求項1〜9のいずれかに記載の処理。
【請求項11】
コークス形成を低減して炭化水素を改質する超臨界水プラントであって、
炭化水素原料ポンプであって、加圧炭化水素原料を生成するために炭化水素原料を水の臨界圧力を超える圧力に加圧するように構成された炭化水素原料ポンプと、
前記炭化水素原料ポンプに流体接続された炭化水素原料加熱器であって、加熱炭化水素原料を生成するために前記加圧炭化水素原料を50℃よりも高い温度に加熱するように構成された炭化水素原料加熱器と、
供給水ポンプであって、加圧供給水を生成するために供給水を水の臨界圧力を超える圧力に加圧するように構成された供給水ポンプと、
前記供給水ポンプに流体接続された供給水加熱器であって、加熱供給水を生成するために前記加圧供給水を水の臨界温度を超える温度に加熱するように構成された供給水ポンプと、
改質反応によって前記炭化水素を改質するように構成された二重壁反応器であって、該二重壁反応器が、前記改質反応中のコークス形成を抑えるようにさらに構成されており、前記二重壁反応器が、
供給水加熱器に流体接続された外殻側入口であって、外殻側容積部で熱伝達流を形成するために前記加熱供給水を受け入れるように構成された外殻側入口、
外壁および内壁であって、これらの間に配置された、前記熱伝達流を受け入れるように構成された前記外殻側容積部を画成している外壁および内壁、
前記内壁によって画された反応域容積部、
前記外殻側容積部に流体接続された外殻側出口であって、高温戻り水を形成するために前記熱伝達流を排出するように構成された外殻側出口、
加熱要素であって、該加熱要素が、前記外壁に隣接しており、前記加熱要素が、前記熱伝達流が水の臨界温度を超えるように前記熱伝達流を加熱するよう構成されており、熱が、前記内壁を介して前記熱伝達流から前記反応域容積部に伝達される加熱要素
を備える二重壁反応器と、
前記外殻側出口に流体接続されたフィルタであって、濾過水流を形成するために前記高温戻り水から微粒子を除去するように構成されたフィルタと、
前記フィルタに流体接続された混合器であって、該混合器が、混合流を生成するために前記濾過水流と前記加熱炭化水素原料とを混合するように構成されており、前記混合流が、反応流の流れを形成するために、前記熱伝達流に対して向流の流れ構成にある、前記二重壁反応器の前記反応域容積部に供給され、前記反応域容積部が、反応器流出物を生成するために前記反応流の流れ中の前記炭化水素を改質するように機能可能である混合器と、
前記二重壁反応器に流体接続された反応器冷却器であって、冷却流出物を生成するために前記反応器流出物を水の臨界温度を下回る温度に冷却するように構成された反応器冷却器と、
前記反応器冷却器に流体接続された減圧器であって、減圧流出物を生成するために前記冷却流出物の圧力を水の臨界圧力を下回る圧力に減圧するように構成された減圧器と、
前記減圧器に流体接続された相分離器であって、前記減圧流出物を気相生成物と液相生成物とに分離するように構成された相分離器と、
前記相分離器に流体接続された生成物分離器であって、前記液相生成物を改質炭化水素流と分離水流とに分離するように構成された生成物分離器と
を備える超臨界水プラント。
【請求項12】
前記分離水流が、前記供給水ポンプの上流で前記供給水と組み合わされる、請求項11に記載の超臨界水プラント。
【請求項13】
前記二重壁反応器が、
反応入口であって、前記混合流を受け入れるように構成された反応入口、および
反応出口であって、前記反応器流出物として前記反応流の流れを排出するように構成された反応出口
をさらに備え、
前記外殻側入口、前記外殻側出口、前記反応入口、および前記反応出口が、前記熱伝達流と前記反応流の流れとが向流する流れ構成を形成するように構成されている、請求項11または12に記載の超臨界水プラント。
【請求項14】
前記二重壁反応器が、
前記外壁から前記外殻側容積部へ延在するバッフルであって、前記加熱要素および前記外壁から前記熱伝達流への熱伝達を向上させるように構成されたバッフル
をさらに備える、請求項11〜13のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【請求項15】
前記二重壁反応器に流体接続された混合器予熱器であって、該混合器予熱器が、高温混合器供給物を生成するために前記高温戻り水の温度を上昇させるように構成されており、前記高温混合器供給物が、前記濾過水流を形成するために前記フィルタに供給される混合器予熱器
をさらに備える、請求項11〜14のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【請求項16】
前記供給水加熱器に流体接続された水過熱器であって、該水過熱器が、高温水供給物を生成するために前記加熱供給水の温度を上昇させるように構成されており、前記高温水供給物が、前記二重壁反応器の前記外殻側容積部に供給される水過熱器
をさらに備える、請求項11〜15のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【請求項17】
前記二重壁反応器に流体接続された超臨界水反応器であって、該超臨界水反応器が、生成物流を生成するために前記反応器流出物中に存在する未反応の炭化水素を改質するように構成されており、前記超臨界水反応器の温度が、水の臨界温度よりも高く、前記超臨界水反応器の圧力が、水の臨界圧力よりも高く、前記生成物流が、前記反応器冷却器に供給される超臨界水反応器
をさらに備える、請求項11〜16のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【請求項18】
液体収率が、98体積%よりも大きい、請求項11〜17のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【請求項19】
前記改質炭化水素流のアスファルテン、硫黄、および他の不純物の量が低減される、請求項11〜18のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【請求項20】
前記二重壁反応器における前記反応流の流れの滞留時間が、10秒よりも長い、請求項11〜19のいずれかに記載の超臨界水プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質油の改質中のコークス形成を低減するための方法および装置に関する。より具体的には、本発明は、コークスの形成を低減するために超臨界水を用いて二重壁反応器で重質油を改質するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンおよびディーゼルの需要の増加は、ガソリンおよびディーゼルのプールに混合され得る軽質蒸留物および中間蒸留物のより多くの石油製品を必要とする。しかしながら、現在入手可能な炭化水素資源は、最も一般的には、所望の生成物を生成するために精製処理を必要とする原油ならびに他の重質留分および重質蒸留物を含む。
【0003】
従来の精製処理は、熱エネルギー、触媒、および水素の助けを借りて重質油を軽質蒸留物および中間蒸留物の生成物に改質する。代表的な従来の処理は、触媒水素化処理およびコーキング処理を含む。水素化分解などの触媒水素化処理は、硫黄などの不純物が最小限に抑えられたクリーンなガソリンおよびディーゼルの生成物を生成するが、高品質の生成物の生成には、莫大な量の水素が必要とされる。触媒および水素を用いないコーキング処理は、ガス、軽質蒸留物、および中間蒸留物に重質油を改質するために熱分解反応を利用するが、同時に固体コークスなどの経済性の低い副生成物を大量に生成する。
【0004】
重質油を改質する第3の選択肢は、超臨界水の使用である。誘電率が低いことが、超臨界水を有機化合物用の良溶媒にする。超臨界水は、酸化などの特定の化学反応および炭化水素の改質のための反応媒体として使用されている。超臨界水は、水素を水から炭化水素に移すことができることから、改質用の良好な反応媒体となる。したがって、水素ガスの莫大な供給は不要である。超臨界水は、炭化水素を希釈する希釈剤としての役割を果たす。熱分解などで、超臨界水を用いて重質油を改質する際、化学結合の破壊に起因して、ラジカルが生成される。ラジカル伝播の後には、分解、二量体化、およびオリゴマー化を含む分子の再配列が続く。しかしながら、熱分解のみの場合と異なり、超臨界水での改質反応は、ラジカルがオリゴマー化される可能性を減らす。これは、超臨界水が、ラジカルを制限する「かご」としての役割を果たすからである。ラジカル種は、かご効果(すなわち、1つ以上の水分子が、ラジカル種を取り囲み、これによりラジカル種の相互作用を阻害する状態)を通して超臨界水により安定化される。ラジカル種の安定化は、本発明において、ラジカル間縮合を阻害することにより、コークス生成の全体を低減するのに役立つと考えられる。例えば、コークス生成は、ラジカル間縮合の結果であり得る。
【0005】
コークス(すなわち、石油コークス)は、改質反応で形成される固体物質である。この固体物質は、液体生成物と共に反応器から出て行くが、一般的に、反応器および処理配管の内面上に層として残留し得る。有用にするために、コークスは、さらなる処理を必要とし、したがって、改質炭化水素よりも価値の低い副生成物であると考えられる。
【0006】
コーキングは、改質反応において重要な問題である。コーキングは、上昇した温度で増加する。コーキングが発生する程度は、予測困難だが、コークスの形成には、400℃を上回る温度で十分であることが知られている。より高温でコーキングが促進される理由の1つは、より高温でラジカル形成が促進されるからである。ラジカルが多くなると、分子縮合反応またはコークス形成を増加させるオリゴマー化反応が多くなる。
【0007】
ホットスポットは、改質反応器におけるコーキングに寄与する。ホットスポットは、反応器壁などの金属表面の局所的な加熱に起因して発生する。一般に、局所的な加熱は、火炎、電気加熱器、金属表面上の絶縁体の構造、または金属表面上の不規則な流体分布などの直接熱源の不規則なまたは不均一な分布によって生じる。金属表面上の不規則な流体分布の例は、管状反応器での処理流体の流れの停止である。したがって、炉または加熱器は、反応器壁の全体にわたって温度を均一に分布させるために設計されなければならない。1つの設計特徴は、より良好な熱分布を実現するために熱伝達材料で反応器の表面を被覆することであるが、このような熱伝達材料は、寿命が短く、交換費用が高いことが多い。第2の設計選択肢は、反応器を通る処理流体の高い空塔速度を確保することである。高い空塔速度は、温度分布を改善し得る。しかしながら、場合によっては、高い空塔速度のための設計は、反応管の長さ対直径比が高いことを必要とし、これは、反応管の材料重量に起因して反応器のコストを増大させる。どの設計も、ホットスポットの形成を防止するために、反応器の全体にわたる温度監視用の高感度の計測装置を備えなければならない。しかしながら、精密な設計および計測であっても、直接加熱システムにおけるホットスポットは不可避である。せいぜい可能なのは、反応器の設計によって、ホットスポットの数および強度を最小限に抑えることである。
【0008】
ホットスポットは、反応器内の流体を局所的に過度に加熱するため、コーキングに寄与する。過度の加熱により、反応器の内壁上で局所的なコークス形成が起こる。コークスが、内壁上に形成されると、ホットスポットのサイズおよび強度の両方が増大して、コークス形成が増加し得る。さらに、コークス形成は、反応器内の温度の正確な測定を妨げる。
【0009】
改質処理中のコークス形成は、改質処理の機能を制限する。改質中に形成されるコークスの低減は、液体炭化水素生成物の収率の増加をもたらすはずである。コークス形成は、石油が反応器内で費やし得る流れる長さ(run length)(または滞留時間)を制限する。滞留時間が短くなると、改質の効率が低下する。コークスは、処理ラインを詰まらせ、これにより処理ラインおよび反応器の圧力を上昇させる。圧力が、特定の点を超えると、コークスを除去し得るようにするために、処理全体を中断しなければならない。さもなければ、圧力上昇は、プラント設備の機械的不具合を引き起こす可能性がある。コークス形成は、精製処理の予定外の中断の一般的な原因の1つである。
【0010】
超臨界水は、純粋な熱処理と比較してコークス形成を低減する。しかしながら、超臨界水によるコーキング防止の程度は、重質油の種類に依存する。超臨界水であっても、分子(特に、重分子)が、その低溶解性に起因して超臨界水に容易に溶解しないことにより、アスファルテンなどのより大きな分子が、ラジカル媒介作用によってコークスに容易に変換され得ることから、コークス形成の防止に関して制限される。さらに、より高温の超臨界水は、重質油よりも密度が低く、その密度は、超臨界圧力において、温度上昇に応じてより急速に変化する。25MPaでは、400℃の水の密度は、166.54kg/m
3であり、450℃の水の密度は、108.98kg/m
3である。重質油および超臨界水の密度の相対差は、重分子が反応器の底または壁に沈殿する原因となり、このような分離した重分子は、コークス形成の前駆物質として働く。超臨界水反応器においても、重分子の凝集は、コークスの形成につながる可能性があり、コークスは、ホットスポットの形成につながる可能性がある。
【0011】
ホットスポットの形成を低減または防止する超臨界水処理は好適であろう。従来の超臨界水処理と比べてコークスの形成を低減し、動作安定性を高める超臨界水処理は好適であろう。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、超臨界水で炭化水素原料を改質するための処理および装置を提供し、改質処理は、具体的には、水熱触媒の使用または水素の外部供給の使用を排除する。
【0013】
本発明の第1の態様では、二重壁反応器を用いて炭化水素改質反応中のコークス形成を低減するための処理が提供される。本処理は、熱伝達流を生成するために二重壁反応器の外殻側容積部に加熱供給水を供給するステップを含む。二重壁反応器は、外壁および内壁であって、これらの間に配置された外殻側容積部を画成する外壁および内壁と、内壁によって画された反応域容積部と、外壁に隣接する加熱要素であって、該加熱要素が、高温戻り水を生成するために、熱伝達流が水の臨界温度を超えるように熱伝達流を加熱するよう構成されており、熱が、内壁を介して熱伝達流から反応域容積部に伝達され、高温戻り水が、外殻側容積部から出る加熱要素とを備え、その場合、熱伝達流は、水の臨界温度よりも高い温度にあり、水の臨界圧力よりも高い圧力にある。本処理は、二重壁反応器の外殻側容積部から出た高温戻り水をフィルタを介して供給するステップであって、フィルタが、濾過水流を形成するために微粒子を除去するように構成されているステップと、混合流を生成するために混合器で濾過水流と加熱炭化水素原料とを混合するステップであって、加熱炭化水素供給原料が、水の臨界圧力よりも高い圧力および50℃よりも高い温度にあるステップと、反応流の流れを形成するために、熱伝達流に対して向流の流れ構成にある、二重壁反応器の反応域容積部に混合流を供給するステップと、反応器流出物を生成するために反応域容積部で反応流の流れを反応温度で反応させるステップであって、熱伝達流から反応域容積部に伝達される熱が、反応温度を水の臨界温度よりも高く維持するように機能可能であるステップと、冷却流出物を生成するために反応器冷却器で反応器流出物を冷却するステップと、減圧流出物を生成するために減圧器で冷却流出物を減圧するステップと、気相生成物および液相生成物を生成するために相分離器で減圧流出物を分離するステップと、分離水流および改質炭化水素流を生成するために生成物分離器で液相生成物を分離するステップとをさらに含む。
【0014】
本発明の特定の態様において、本処理は、二重壁反応器の上流で供給水と組み合わせるために分離水流を再利用するステップをさらに含む。本発明の特定の態様において、二重壁反応器は、外殻側入口であって、加熱供給水を受け入れるように構成された外殻側入口と、外殻側出口であって、高温戻り水として熱伝達流を排出するように構成された外殻側出口と、反応入口であって、混合流を受け入れるように構成された反応入口と、反応出口であって、反応器流出物として反応流の流れを排出するように構成された反応出口とをさらに備え、外殻側入口、外殻側出口、反応入口、および反応出口は、熱伝達流と反応流の流れとが向流する流れ構成を形成するように構成される。本発明の特定の態様において、二重壁反応器は、外壁から外殻側容積部へ延在するバッフルであって、加熱要素および外壁から熱伝達流への熱伝達を向上させるように構成されたバッフルをさらに含む。本発明の特定の態様において、本処理は、混合器予熱器に高温戻り水を供給するステップであって、混合器予熱器が、高温混合器供給物を生成するために高温戻り水の温度を上昇させるように構成されているステップおよび濾過水流を形成するためにフィルタに高温混合器供給物を供給するステップをさらに含む。本発明の特定の態様において、本処理は、加熱供給水を水過熱器に供給するステップであって、水過熱器が、高温水供給物を生成するために加熱供給水の温度を上昇させるように構成されているステップおよび二重壁反応器の外殻側容積部に高温水供給物を供給するステップをさらに含む。本発明の特定の態様において、本処理は、反応器流出物を超臨界水反応器に供給するステップであって、超臨界水反応器が、反応器流出物中に存在する炭化水素を改質するように構成されており、超臨界水反応器の温度が、水の臨界温度よりも高く、超臨界水反応器の圧力が、水の臨界圧力よりも高いステップと、生成物流を生成するために反応器流出物を反応させるステップと、生成物流を反応器冷却器に供給するステップとをさらに含む。本発明の特定の態様において、液体収率は、98体積%よりも大きい。本発明の特定の態様において、改質炭化水素流のアスファルテン、硫黄、および他の不純物の量は低減される。本発明の特定の態様において、二重壁反応器における反応流の流れの滞留時間は、10秒よりも長い。
【0015】
本発明の第2の態様において、コークス形成を低減して炭化水素を改質する超臨界水プラントが提供される。超臨界水プラントは、炭化水素原料ポンプであって、加圧炭化水素原料を生成するために炭化水素原料を水の臨界圧力を超える圧力に加圧するように構成された炭化水素原料ポンプと、炭化水素原料ポンプに流体接続された炭化水素原料加熱器であって、加熱炭化水素原料を生成するために加圧炭化水素原料を50℃よりも高い温度に加熱するように構成された炭化水素原料加熱器と、供給水ポンプであって、加圧供給水を生成するために供給水を水の臨界圧力を超える圧力に加圧するように構成された供給水ポンプと、供給水ポンプに流体接続された供給水加熱器であって、加熱供給水を生成するために加圧供給水を水の臨界温度を超える温度に加熱するように構成された供給水ポンプと、改質反応によって炭化水素を改質するように構成された二重壁反応器であって、改質反応中のコークス形成を抑えるようにさらに構成された二重壁反応器とを含む。二重壁反応器は、供給水加熱器に流体接続された外殻側入口であって、外殻側容積部で熱伝達流を形成するために加熱供給水を受け入れるように構成された外殻側入口と、外壁および内壁であって、これらの間に配置された、熱伝達流を受け入れるように構成された外殻側容積部を画成している外壁および内壁と、内壁によって画された反応域容積部と、外殻側容積部に流体接続された外殻側出口であって、高温戻り水を形成するために熱伝達流を排出するように構成された外殻側出口と、加熱要素であって、該加熱要素が、外壁に隣接しており、加熱要素が、熱伝達流が水の臨界温度を超えるように熱伝達流を加熱するよう構成されており、熱が、内壁を介して熱伝達流から反応域容積部に伝達される加熱要素とを含む。超臨界水プラントは、外殻側出口に流体接続されたフィルタであって、濾過水流を形成するために高温戻り水から微粒子を除去するように構成されたフィルタと、フィルタに流体接続された混合器であって、該混合器が、混合流を生成するために濾過水流と加熱炭化水素原料とを混合するように構成されており、混合流が、反応流の流れを形成するために、熱伝達流に対して向流の流れ構成にある、二重壁反応器の反応域容積部に供給され、反応域容積部が、反応器流出物を生成するために反応流の流れ中の炭化水素を改質するように機能可能である混合器と、二重壁反応器に流体接続された反応器冷却器であって、冷却流出物を生成するために反応器流出物を水の臨界温度を下回る温度に冷却するように構成された反応器冷却器と、反応器冷却器に流体接続された減圧器であって、減圧流出物を生成するために冷却流出物の圧力を水の臨界圧力を下回る圧力に減圧するように構成された減圧器と、減圧器に流体接続された相分離器であって、減圧流出物を気相生成物と液相生成物とに分離するように構成された相分離器と、相分離器に流体接続された生成物分離器であって、液相生成物を改質炭化水素流と分離水流とに分離するように構成された生成物分離器とを含む。
【0016】
本発明の特定の態様において、分離水流は、供給水ポンプの上流で供給水と組み合わされる。本発明の特定の態様において、二重壁反応器は、反応入口であって、混合流を受け入れるように構成された反応入口および反応出口であって、反応器流出物として反応流の流れを排出するように構成された反応出口をさらに備え、外殻側入口、外殻側出口、反応入口、および反応出口は、熱伝達流と反応流の流れとが向流する流れ構成を形成するように構成されている。本発明の特定の態様において、二重壁反応器は、外壁から外殻側容積部へ延在するバッフルであって、加熱要素および外壁から熱伝達流への熱伝達を向上させるように構成されたバッフルをさらに含む。本発明の特定の態様において、超臨界水プラントは、二重壁反応器に流体接続された混合器予熱器であって、該混合器予熱器が、高温混合器供給物を生成するために高温戻り水の温度を上昇させるように構成されており、高温混合器供給物が、濾過水流を形成するためにフィルタに供給される混合器予熱器をさらに含む。本発明の特定の態様において、超臨界水プラントは、供給水加熱器に流体接続された水過熱器であって、該水過熱器が、高温水供給物を生成するために加熱供給水の温度を上昇させるように構成されており、高温水供給物が、二重壁反応器の外殻側容積部に供給される水過熱器をさらに含む。本発明の特定の態様において、超臨界水プラントは、二重壁反応器に流体接続された超臨界水反応器であって、該超臨界水反応器が、生成物流を生成するために反応器流出物中に存在する未反応の炭化水素を改質するように構成されており、超臨界水反応器の温度が、水の臨界温度よりも高く、超臨界水反応器の圧力が、水の臨界圧力よりも高く、生成物流が、反応器冷却器に供給される超臨界水反応器をさらに含む。本発明の特定の態様において、液体収率は、98体積%よりも大きい。本発明の特定の態様において、改質炭化水素流のアスファルテン、硫黄、および他の不純物の量は低減される。本発明の特定の態様において、二重壁反応器における反応流の流れの滞留時間は、10秒よりも長い。
【0017】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、特許請求の範囲、および添付図面に関してより良く理解されるようになる。しかしながら、図面は、本発明のいくつかの実施形態しか示しておらず、したがって、本発明の範囲の限定として考えられるべきではないことに留意されたい。なぜなら、本発明は、他の同様に有効な実施形態を認め得るからである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に従って炭化水素原料を改質する方法の一実施形態の処理図を提供する。
【0019】
【
図2】二重壁反応器の実施形態の平面図を提供する。
【0020】
【
図2a】二重壁反応器の実施形態の平面図を提供する。
【0021】
【
図3】本発明に従って炭化水素原料を改質する方法の一実施形態の処理図を提供する。
【0022】
【
図4】本発明に従って炭化水素原料を改質する方法の一実施形態の処理図を提供する。
【0023】
【
図5】本発明に従って炭化水素原料を改質する方法の一実施形態の処理図を提供する。
【0024】
【
図6】本発明に従って炭化水素原料を改質する方法の一実施形態の処理図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明は、例示の目的のために多くの具体的な詳細を含むが、当業者ならば、以下の詳細に対する多くの例、変形例、および変更例が本発明の範囲および精神の範囲内にあることを認めるであろうことが理解される。したがって、本明細書で説明され、添付図面において提供されている本発明の例示的な実施形態は、特許請求されている発明に関して一般性を失うことなく、また制限を課すことなく述べられている。実施形態の特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。
【0026】
図1を参照すると、二重壁反応器でのコークス形成を低減するための処理の実施形態が提供されている。炭化水素原料10は、加圧炭化水素原料12を生成するために炭化水素原料ポンプ104で加圧される。炭化水素原料10は、任意の炭化水素源からのものであってもよい。炭化水素原料10として使用される例示的な炭化水素源は、全範囲の原油、蒸留原油、残渣油、減圧残渣油、抜頭原油、原油の底留分、製油所からの生成物流、減圧軽油(vacuum gas oil)、蒸気分解処理からの生成物流、液化石炭、オイルサンドまたはタールサンドから回収された液体生成物、ビチューメン、オイルシェール、アスファルテン、およびバイオマス炭化水素などを含む。加圧炭化水素原料12の圧力は、約22.064MPaよりも大きく、あるいは、約22.1MPa〜約31.9MPaである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加圧炭化水素原料12の圧力は、25.0MPaである。水の臨界圧力は、22.064MPaである。
【0027】
加圧炭化水素原料12は、加熱炭化水素原料14を生成するために炭化水素原料加熱器106で加熱される。加熱炭化水素原料14の温度は、約10℃〜約300℃、あるいは約50℃〜250℃、あるいは約50℃〜200℃、あるいは約50℃〜150℃、あるいは約50℃〜約100℃、あるいは約100℃〜約200℃、あるいは約150℃〜約250℃、あるいは約200℃〜約300℃である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱炭化水素原料14の温度は、50℃よりも高い。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱炭化水素原料14の温度は、125℃である。炭化水素原料加熱器106は、加圧炭化水素原料12を加熱することが可能な任意の熱伝達ユニットであってもよい。炭化水素原料加熱器106として用いられ得る例示的な熱伝達ユニットは、天然ガス燃焼加熱器、熱交換器、および電気加熱器を含む。一部の実施形態において、加圧炭化水素原料12は、熱交換器における、別の処理流との相互交換作用で加熱される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭化水素原料加熱器106は、炭化水素原料加熱器106から出る加熱炭化水素原料14の圧力が水の臨界圧力を超えるように圧力降下を最小にするよう設計される。加熱炭化水素原料14は、混合器108に供給される。
【0028】
供給水20は、任意の水源であってもよい。少なくとも1つの実施形態において、供給水20は、約10.0μmho/cm未満の導電率を有する。導電率は、水中のイオン性化合物の濃度を測定する最も一般的な方法である。より高い導電率は、水中のイオン性化合物の存在が多いことを示す。塩化ナトリウムなどのイオン性化合物は、亜臨界条件で水に溶解しても、超臨界水条件下では沈殿し得る。供給水20として利用され得る例示的な水源は、脱塩水、蒸留水、ボイラー供給水、脱イオン水、および処理された再利用水を含む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、供給水20は、脱塩水である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、供給水20は、塩水の不在下にある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、供給水20は、分離水流60から再利用される水を含む。供給水20は、加圧供給水22を発生させるために供給水ポンプ100で加圧される。加圧供給水22の圧力は、約22.064MPaよりも大きく、あるいは約22.1MPa〜約31.9MPa、あるいは約22.9MPa〜約31.1MPaである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加圧供給水22の圧力は、25.0MPaである。水の臨界圧力は、22.064MPaである。
【0029】
加圧供給水22は、加熱供給水24を生成するために供給水加熱器102で加熱される。加熱供給水24の温度は、約374℃超、あるいは約374℃〜約600℃、あるいは400℃〜約550℃、あるいは約400℃〜約450℃、あるいは450℃〜約500℃、あるいは約500℃〜約550℃、あるいは約550℃〜約600℃である。水の最高温度は、二重壁反応器110の構成材料および供給水加熱器102に戻る関連配管を考慮して選択される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱供給水24の温度は、520℃である。水の臨界温度は、373.946℃である。供給水加熱器102は、加圧供給水22を加熱することが可能な任意の種類の熱伝達ユニットであってもよい。供給水加熱器102として用いられる例示的な熱伝達ユニットは、天然ガス燃焼加熱器、熱交換器、電気加熱器、または当技術分野で知られている任意の加熱器もしくは熱交換器を含む。本発明の一部の実施形態において、加圧供給水22は、熱交換器における、処理の別の処理流との相互交換作用で部分的に加熱される。加熱供給水24は、臨界温度および臨界圧力(すなわち、水の臨界点)を超えた超臨界水である。臨界温度および臨界圧力を超えると、水の液相および気相の境界が消失し、流体は、液体物質および気体物質の両方の特性を有する。超臨界水は、有機溶媒のような有機化合物を溶解することができ、気体のような優れた拡散性を有する。温度および圧力の調節は、超臨界水の特性をより液体状またはより気体状にする連続的な「調整(tuning)」を可能にする。超臨界水は、液相亜臨界水と比較して密度が低く極性が低いので、水で行われ得る化学反応の可能な範囲を大幅に拡大する。超臨界水は、超臨界境界に達したとき様々な予想外の特性を有する。超臨界水は、有機化合物への非常に高い溶解性を有し、ガスとの無限の混和性を有する。特定の実施形態において、超臨界水は、水蒸気改質反応および水ガスシフト反応によって水素ガスを生成し、これは、その後改質反応に利用可能である。
【0030】
加熱供給水24は、二重壁反応器110に供給される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110は、二重管熱交換器と特徴を共有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110は、流量を含む処理条件に基づいた仕様に設計される。二重壁反応器110については、
図2を参照して説明する。二重壁反応器110は、外壁210および内壁212を有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、外壁210および内壁212は、両端が開いた2つの同心の円筒から形成され、2つの同心の円筒は連結されない。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110は、外部加熱源を有する二重管型容器である。内壁212によって囲まれた容積部は、反応域容積部214を形作る。内壁212と外壁210との間の容積部は、外殻側容積部216を形作る。反応域容積部214は、1つの反応入口230および1つの反応出口232を有する。外殻側容積部216は、外殻側入口220および外殻側出口222を有する。加熱供給水24は、外殻側入口220を介して二重壁反応器110の外殻側容積部216に入り、熱伝達流30を形成する。
【0031】
外殻側容積部216と反応域容積部214との間での直接的な流体の交換に制限する二重壁反応器110の設計は、機械的不具合(継手、ノズル、ポートなどでの)のリスクを低減し、二重壁反応器110の製造を簡単にし、圧力および温度のより管理しやすい制御を可能にする。内壁212に沿った、反応域容積部214の温度制御は、本発明の利点である。
【0032】
加熱要素218は、外壁210に隣接する。加熱要素218は、任意の直接加熱源である。加熱要素218として使用される例示的な直接加熱源は、電気加熱器、ガス燃焼加熱器、液体燃焼加熱器、および石炭燃焼加熱器を含む。加熱要素218は、熱伝達流30に熱を伝達する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱要素218は、加熱供給水24の温度に対して熱伝達流30の温度を維持する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱要素218は、外壁210の全長または実質的に全長にわたって延在する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱要素218は、外壁210の全長未満にわたって延在する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱要素218は、外壁210の全周を包む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱要素218は、外壁210の外周の一部に隣接する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱要素218は、熱伝達流30の温度を加熱供給水24の温度よりも高く上昇させる。熱伝達流30の加熱は、暴走反応温度に寄与し得る酸化反応の不在下にある。熱は、外壁210から外殻側容積部216の熱伝達流30を通って内壁212に伝達され、内壁212を通って反応域容積部214に伝達される。内壁212と外壁210との間の容積、熱伝達流30の流量、および熱伝達流30の温度は、熱伝達媒体としての熱伝達流30の効率を向上させるために、外殻側容積部216を介する外壁210から内壁212への熱伝達要求を考慮して最適化される。熱伝達流30の速度は、目標反応温度の影響を受ける。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、熱伝達流30への熱伝達の効率は、外壁210に隣接し、かつ外殻側容積部216へ延在するバッフル240を取り付けることによって向上され得る。バッフル240は、熱伝達流30の流れにさらされる表面積を増大させ、熱伝達流30と相互作用するより大きな表面を形成することによって熱伝達流30への加熱要素218の熱伝達能力を増大させる。熱伝達流30の加熱の改善は、熱伝達流30から反応域容積部214への熱伝達の効率を向上させる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、バッフル240は、フィンである。
【0034】
二重壁反応器110は、反応器パラメータの最適化を考慮して設計される。反応器パラメータは、滞留時間、反応器の向き、流れの方向、反応容積、反応器の縦横比、および動作条件を含む。二重壁反応器110での滞留時間は、少なくとも5秒、あるいは少なくとも10秒、あるいは少なくとも15秒、あるいは少なくとも20秒、あるいは少なくとも30秒、およびあるいは少なくとも40秒である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110での滞留時間は、少なくとも10秒である。反応器の向きは、本明細書で使用される場合、反応器が地面に対してどの向きに配置されているかを意味する。例示的な反応器の向きは、垂直および水平を含む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110は、垂直の反応器の向きを有する。流れ方向は、混合流40の流れが、垂直な反応器の向きにおいて上向きの流れまたは下向きの流れのどちらかであることを意味する。上向きの流れの流れ方向において、二重壁反応器110の反応入口230は、二重壁反応器110の出口に比べて地面の高さの近くに配置され、混合流40は、反応入口230に供給される。下向きの流れの流れ方向において、反応入口230は、反応出口232に比べて地面の高さから遠くに配置される。反応容積は、反応域容積部214の全容積を意味する。反応容積は、所望の滞留時間、加熱供給水24の熱伝達効率、および反応器の縦横比を考慮して計算される。反応器の縦横比は、二重壁反応器110の長さと直径の比である。縦横比は、熱伝達能力、滞留時間、および流動様式において役割を果たす。動作条件は、反応器温度および反応器圧力を含む。反応器温度は、反応域容積部214の端部における流体の温度として規定される。
【0035】
再び
図1を参照すると、熱伝達流30は、高温戻り水32として二重壁反応器110の外殻側容積部216から出る。高温戻り水32の温度は、加熱供給水24の温度の10度以内、あるいは20度以内、あるいは30度以内、あるいは40度以内、およびあるいは50度以内である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、高温戻り水32の温度は、加熱供給水24の温度を上回る。本発明の少なくとも1つの実施形態において、高温戻り水32の温度は、加熱供給水24の温度を下回る。高温戻り水32は、反応域容積部214の反応物の1つとなる。
【0036】
高温戻り水32は、フィルタ124を通って流れ、濾過水流36を形成する。フィルタ124は、チャーを含む微粒子を除去し得る、当技術分野で知られている任意の種類のフィルタエレメントであってもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態において、フィルタ124は、金属ハウジングを有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、フィルタ124は、並列構成に配置された複数のフィルタエレメントを含む。濾過水流36は、混合流40を形成するために混合器108に供給される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、高温戻り水32は、フィルタ124の不在下にあり、高温戻り水32は、混合器108で加熱炭化水素原料14と直接混合される。
【0037】
濾過水流36および加熱炭化水素原料14は、二重壁反応器110の外部で混合される。二重壁反応器110は、反応物の混合を促進するように設計された特徴の不在下にある。二重壁反応器110での加熱炭化水素原料14と濾過水流36との混合は、二重壁反応器110における温度、圧力、および流量の制御を維持する能力を低下させ、二重壁反応器110を不安定な状態にする。二重壁反応器110の上流(二重壁反応器110の外部)で加熱炭化水素原料14と濾過水流36とを混合することにより、
図2に示されているように二重壁反応器110に入るときおよび反応流の流れ42として反応域容積部214を通って移動するときの混合流40のより均一な温度プロファイルが保証される。混合器108は、濾過水流36と加熱炭化水素原料14とを混合することが可能な任意の種類の混合装置であってもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合器108は、インライン混合器である。混合流40は、供給水20の体積流量(ν20)と炭化水素原料10の体積流量(ν10)の比によって表される水と炭化水素の比を有する。ν20とν10の比は、標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に約10:1〜約1:10の範囲にあり、あるいは標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に約5:1〜約1:5の範囲にあり、あるいは標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に4:1より低く、あるいは標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に3:1より低く、あるいは標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に2:1よりも低い。本発明の少なくとも1つの実施形態において、ν20とν10の比は、標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に1.4:1である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、ν20とν10の比は、標準的な周囲温度および圧力で測定した場合に2.5:1である。混合流40は、二重壁反応器110の反応域容積部214に供給される。本明細書で使用される場合、「標準的な周囲温度および圧力」は、25℃および0.1MPaを意味する。標準的な温度および圧力は、0℃および0.1MPaを意味する。標準的な周囲温度および圧力の方がより適切である。
【0038】
混合流40および加熱供給水24は、
図2に示されているように向流構成の二重壁反応器110に供給される。本明細書で使用される場合の向流構成は、流れの流れ方向を意味し、二重壁反応器110における流れが、1つの流れの供給位置が第2の流れの出口位置に隣接するようになっている互いに反対側の端部から容器に入ることを意味する。向流構成は、反応域容積部214の長さにわたって反応流の流れ42の均一なまたは実質的に均一な温度分布を維持する。反応流の流れ42は、熱伝達流30からの間接加熱によって内壁212を介して熱を受けて、反応流の流れ42を反応温度に維持する。反応流の流れ42は連続流である。熱伝達流30は連続流である。
【0039】
二重壁反応器110は、超臨界反応器である。二重壁反応器110は、外部から供給される水素ガスの不在下での炭化水素改質反応のための、反応域容積部214の反応媒体として超臨界水を用いる。二重壁反応器110は、外部から供給される酸化剤の不在下にある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110は、触媒の不存在下にある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水は、二重壁反応器110内の希釈剤としての役割を果たす。二重壁反応器110の構造は、反応域容積部214への間接加熱を行うことによってコークスの形成を低減する。内壁212で直接加熱が行われないことにより、内壁212における温度分布が均一になる。均一な温度分布は、内壁212におけるホットスポットの形成を低減または排除する。ホットスポットの低減は、反応域容積部214内部でのコークスの形成を低減する。発熱反応および吸熱反応は、それぞれ、発熱反応または吸熱反応に関連する局所的な加熱または冷却に起因して、反応温度を制御する能力に影響を及ぼす。特定の理論に縛られることなく、成分および/または温度の不均一な分布を有する炭化水素流体反応器はまた、発熱反応または吸熱反応に起因する不均一な局所温度を有すると考えられる。したがって、二重壁反応器110は、均一な温度分布を形成することによって発熱反応および/または吸熱反応を低減する。
【0040】
二重壁反応器110の反応域容積部214は、反応器流出物50を生成する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、反応器流出物50の温度は、二重壁反応器110の端部の配管(図示せず)での冷却に起因して反応器温度よりも低い。本発明の少なくとも1つの実施形態において、反応器流出物50の温度は、二重壁反応器110での間接加熱に起因して混合流40の温度よりも高い。反応器流出物50中の反応生成物は、炭化水素原料10の組成、ν20とν10の比、および二重壁反応器110の反応域容積部214の動作温度に起因する。
【0041】
反応器流出物50は、冷却流出物52を形成するために反応器冷却器112で冷却される。冷却流出物52は、約10℃〜約200℃、あるいは約30℃〜約120℃、あるいは約50℃〜約100℃の温度を有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却流出物52の温度は、60℃である。反応器冷却器112は、反応器流出物50を冷却することが可能な任意の熱伝達ユニットであってもよい。反応器冷却器112として用いられ得る例示的な熱伝達ユニットは、熱交換器、蒸気発生器、交差交換器(cross−exchanger)、または空気冷却器を含む。
図5に示す本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、反応器冷却器140は、反応器流出物50からの熱で加圧供給水22を加熱し、この処理で反応器流出物50を冷却する交差交換器である。当業者ならば、交差交換熱交換器が、システム内でエネルギー回収を行うために利用され得ることを理解するであろう。
【0042】
冷却流出物52の圧力は、減圧流出物54を生成するために減圧器114で減圧される。減圧流出物54の圧力は、約0.11MPa〜約2.2MPa、あるいは約0.05MPa〜約1.2MPa、あるいは約0.05MPa〜約1.0MPa、あるいは約0.11MPa〜約0.5MPaである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、減圧流出物54の圧力は、0.11MPaである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、減圧流出物54の圧力は、大気圧(101.3kPa)である。減圧器114は、冷却流出物52の圧力を低下させることが可能な任意の種類の減圧装置であってもよい。減圧器114としての使用に適した例示的な装置は、圧力制御弁およびキャピラリー型減圧装置を含む。減圧流出物54は、相分離器116に供給される。
【0043】
反応器流出物50、冷却流出物52、および減圧流出物54は、水、改質炭化水素、および他の炭化水素を含有する。減圧流出物54は、二酸化炭素などのガスをさらに含む。反応器流出物50、冷却流出物52、および減圧流出物54は、炭化水素原料10と比較して軽質炭化水素の含有量が高い。減圧流出物54中の炭化水素の沸点範囲は、炭化水素原料10中に存在する炭化水素の沸点範囲と比較して低い。炭化水素の沸点範囲が低いことは、重質留分炭化水素の含有量が低いことを示す。反応器流出物50、冷却流出物52、および減圧流出物54中に存在する水の質量分率は、二重壁反応器110の動作条件、供給水20の流量、および混合流40中の水と炭化水素の供給比に依存する。
【0044】
相分離器116は、減圧流出物54を気相生成物56と液相生成物58とに分離する。相分離器116は、気液分離器である。相分離器116として使用される例示的な分離器は、フラッシュドラム、フラッシュカラム、多段カラム、ストリッピング型カラムを含む。
【0045】
反応器冷却器112、減圧器114、および相分離器116の動作条件は、気相生成物56および液相生成物58に対して実行される処理ステップを考慮して調節される。反応器冷却器112、減圧器114、および相分離器116の動作条件は、気相生成物56および液相生成物58の総量および組成に影響を及ぼす。
【0046】
気相生成物56は、流れ中の成分を回収するさらなる処理のために送られてもよいし、あるいは、処理および処分のために送られてもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態において、気相生成物56は、メタン、エタン、エチレン、プロパン、およびプロピレンを含む軽質炭化水素ガスを含有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、気相生成物56は、燃料ガスとして使用されてもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態において、気相生成物56は、軽質炭化水素ガスおよび硫化水素を含有する。
【0047】
液相生成物58は、液相生成物58を改質炭化水素流62と分離水流60とに分離するために生成物分離器118に供給される。改質炭化水素流62は、炭化水素原料10と比較して不純物が低減されている。改質炭化水素流62は、さらなる処理のために送られてもよく、他の改質炭化水素と共にプールされてもよく、または改質炭化水素流に適した他の任意の役割で使用されてもよい。炭化水素原料10に対する改質炭化水素流62の液体収率は、95%よりも大きかった、あるいは98%よりも大きかった、あるいは98.5%よりも大きかった、あるいは99%よりも大きかった。本発明の少なくとも1つの実施形態において、液体収率は、98%よりも大きかった。液体収率は、炭化水素原料10の総重量で割られた改質炭化水素流62の総重量の百分率である。液体収率は、ガスおよび水の損失(この場合、炭化水素が水に溶解している)に起因して100%未満である。
【0048】
分離水流60は、さらなる処理のために送られてもよく、現場で貯蔵されてもよく、処分のために送られてもよく、または処理前に再利用されてもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態において、分離水流60は、供給水20と混合されるか、または供給水20として使用されて再利用される。分離水流60は、全有機炭素含有物を含有する。全有機炭素含有物は、直鎖アルカン、芳香族化合物、および他の炭化水素の形態である。芳香族炭化水素は、直鎖アルカンと比較して超臨界水へのより高い溶解性を有する。二重壁反応器110での超臨界水処理に再利用される分離水流60からの炭化水素の除去は、処理ラインを詰まらせ得る、炭化水素分解に起因するチャーの生成を回避するために重要である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、分離水流60は、20,000重量ppm未満、あるいは10,000重量ppm未満、あるいは5,000重量ppm未満、あるいは1,000重量未満の全有機炭素含有物を達成するために処理される。
【0049】
処理計測装置および分析器が、処理ユニットの加熱および圧力の制御を改善することによって改質炭化水素流62の組成を改善するためにシステムに追加されてもよい。
【0050】
図3を参照すると、本発明の実施形態が示されている。本明細書で説明した
図1を参照しながら、
図3に示す本発明の実施形態によると、高温戻り水32は、二重壁反応器110の外殻側容積部216から出て、高温混合器供給物34を生成するために混合器予熱器120に供給される。混合器予熱器120は、高温戻り水32を加熱することが可能な任意の種類の熱伝達ユニットであってもよい。混合器予熱器120として使用される例示的な熱伝達ユニットは、天然ガス燃焼加熱器、熱交換器、電気加熱器、または当技術分野で知られている任意の加熱器もしくは熱交換器を含む。高温混合器供給物34は、374℃を上回る温度、あるいは外殻側容積部216から出るときの高温戻り水32の温度を上回る温度、あるいは外殻側容積部216を出るときの高温戻り水32の温度と600℃との間の温度に加熱される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合器予熱器120は、高温戻り水32の温度を上昇させる。高温混合器供給物34は、混合流40を形成するために混合器108で加熱炭化水素原料14と混合される。
【0051】
図4を参照すると、本発明の実施形態が示されている。本明細書で説明した
図1を参照しながら、
図4に示す本発明の実施形態によると、加熱供給水24は、供給水加熱器102から出て、高温水供給物26を生成するために水過熱器122に導入される。水過熱器122は、加熱供給水24を加熱することが可能な任意の種類の熱伝達ユニットであってもよい。水過熱器122として使用される例示的な熱伝達ユニットは、天然ガス燃焼加熱器、熱交換器、電気加熱器、または当技術分野で知られている任意の加熱器もしくは熱交換器を含む。高温水供給物26は、374℃を上回る温度、あるいは供給水加熱器102から出るときの加熱供給水24の温度を上回る温度、あるいは供給水加熱器102から出るときの加熱供給水24の温度と600℃との間の温度に加熱される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、水過熱器122は、加熱供給水24の温度を上昇させる。供給水加熱器102および水過熱器122は、高温水供給物26を生成する効率的な加熱のためにバランスがとられてもよい。高温水供給物26は、二重壁反応器110の外殻側容積部216に供給される。
【0052】
図6を参照すると、本発明の実施形態が示されている。本明細書で説明した
図1を参照しながら、
図6に示す本発明の実施形態によると、加圧供給水22は、生成物流70との交差交換によって供給水交差交換器126で加熱される。加圧供給水22を加熱することにより、加熱供給水24が生成され、次に、加熱供給水24は、
図1を参照して説明したように二重壁反応器110の外殻側容積部216に供給される。反応器流出物50は、二重壁反応器110の下流の超臨界水反応器130に供給される。
【0053】
超臨界水反応器130は、超臨界反応器である。二重壁反応器110および超臨界水反応器130は、直列構成の2つの反応器である。直列構成の2つの反応器において、第1の反応器(二重壁反応器110)は、確実に、炭化水素と超臨界水とを混合し、改質反応を開始させる。第2の反応器(超臨界水反応器130)では、分解、脱硫、および異性化の反応を含む大部分の改質反応が起こる。第1の反応器で成分を確実に十分に混合することにより、第2の反応器でのホットスポットのすべてまたは実質的にすべてが解消される。ホットスポットの解消は、第2の反応器でのコークスの形成を完全にまたは実質的に完全に防止する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器130は、直接加熱源を有する単壁反応器である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、第2の反応器は、間接加熱で加熱される反応域を有する二重壁反応器である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110の反応器パラメータおよび超臨界水反応器130の反応器パラメータは同じである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110の反応器パラメータおよび超臨界水反応器130の反応器パラメータは異なる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、二重壁反応器110の反応器パラメータの少なくとも1つは、超臨界水反応器130と同じであり、二重壁反応器110の反応器パラメータの少なくとも1つは、超臨界水反応器130と異なる。超臨界水反応器130は、生成物流70を生成する。生成物流70は、供給水交差交換器126に供給される。生成物流70は、冷却流出物52を生成するために供給水交差交換器126で冷却される。
【実施例】
【0054】
(比較例)単壁反応器と本発明の二重壁反応器とを比較するために2つのシミュレーションを作成した。両方のシミュレーションにおいて、10バレル/日の速度の炭化水素原料を、25.0MPaの圧力に加圧し、125℃の温度に加熱した。
【0055】
単壁反応器のシミュレーションでは、炭化水素原料を、25.0MPaの圧力および460℃の温度の供給水と混合した。水流は、反応器の下流の液体分離器からの再利用水流であった。単壁反応器を、10Lの内容積を有する管状容器としてシミュレートした。液体収率は、95重量%であった。表1は、様々な流れの動作条件を含む。表2は、炭化水素原料および改質炭化水素流の特性を示している。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
二重壁反応器のシミュレーションでは、
図1を参照して説明したような実施形態をシミュレートした。供給水20を、25.0MPaの圧力に加圧し、450℃の温度に加熱し、次に、加熱供給水24として二重壁反応器110の外殻側容積部216に供給した。二重壁反応器110から出た高温戻り水32を、加熱炭化水素原料14と混合し、加熱供給水24に対して向流構成にある、二重壁反応器110の反応域容積部214に供給した。生成物分離器118から分離水流60の少なくとも一部を、供給水20として再利用した。高温戻り水32の温度は、二重壁反応器110の外壁210上の加熱要素218の故に480℃であった。シミュレーションでは、加熱要素218を、外部ガス燃焼加熱器としてシミュレートした。液体収率は、98重量%であった。動作条件は表3にある。流れの特性は表4にある。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
特定の理論に縛られることなく、単壁反応器と比較して二重壁反応器ではホットスポットが存在しないことによって、より低い反応器温度(単壁反応器の場合の450℃に対して二重壁反応器では430℃)であっても、液体収率が高くなり(単壁反応器の場合の95重量%に対して二重壁反応器では98重量%)、生成物はより高品質になった(アスファルテンの重量パーセントおよび硫黄の重量パーセントが低くなった)と考えられる。単壁反応器のシミュレーションにおけるホットスポットは、コークス形成を引き起こした、重分子間の縮合反応および気相生成物を生成した過剰な分解を誘発したと推測される。縮合反応は、縮合反応の生成物であるより重い分子内に硫黄および金属を取り込む。
【0062】
本発明を詳細に説明したが、本発明の原理および範囲から逸脱することなく、本発明に関して様々な改変、置換、および変更を行い得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその適切な法的均等物によって決定されるべきである。
【0063】
単数形「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈上明確な他の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0064】
「随意の」または「随意に」は、その後に記載された事象または状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。本説明は、事象または状況が起こる事例および事象または状況が起こらない事例を含む。
【0065】
範囲は、本明細書では、おおよそのある特定の値からおよび/またはおおよその別の特定の値までのものとして表される場合がある。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、前記範囲内のすべての組み合わせのものであると共に、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までのものであることを理解されたい。