特許第6348243号(P6348243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6348243
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】スパッタリング用パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20180618BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20180618BHJP
   H01L 21/363 20060101ALI20180618BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C23C14/34
   H01L21/203
   H01L21/363
   H05B33/10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-30974(P2018-30974)
(22)【出願日】2018年2月23日
【審査請求日】2018年2月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518064101
【氏名又は名称】有限会社エイチ・エス・エレクトリック
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関本 英雄
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−269642(JP,A)
【文献】 特開2014−225556(JP,A)
【文献】 特開2007−116881(JP,A)
【文献】 特表2005−526184(JP,A)
【文献】 特開平7−197258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
H01L 21/203
H01L 21/363
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング装置のターゲット電極に接続されるターゲット側接続端子と、
前記スパッタリング装置の基板電極に接続される基板側接続端子と、
共通の交流電源から値の異なる直流電圧を生成し、相互に並列接続されて、前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間に接続される3以上の直流電源と、
各直流電源の各出力端子と前記ターゲット側接続端子との間に介在する複数のパルス生成スイッチと、
前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間を短絡させる短絡スイッチと、
制御サイクルにおける前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフパターンを、前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチが同時にオンになることを禁止しつつ、設定可能とし、設定されたオンオフパターンに従って前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフを制御する制御部とを備えることを特徴とするスパッタリング用パルス電源装置。
【請求項2】
スパッタリング装置のターゲット電極に接続されるターゲット側接続端子と、
前記スパッタリング装置の基板電極に接続される基板側接続端子と、
共通の交流電源から値の異なる直流電圧を生成し、相互に直列に接続されて、前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間の直列回路を構成する3以上の直流電源と、
各直流電源ごとに設けられ、前記直列回路への各直流電源の組み込み及び前記直列回路からの各直流電源の離脱を切り替える複数のパルス生成スイッチと、
前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間を短絡させる短絡スイッチと、
制御サイクルにおける前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフパターンを、前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチが同時にオンになることを許容しつつ、設定可能とし、設定されたオンオフパターンに従って前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフを制御する制御部とを備えることを特徴とするスパッタリング用パルス電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスパッタリング用パルス電源装置において、
前記3以上の直流電源には、負の直流電圧を生成する2以上の直流電源と、正の直流電圧を生成する少なくとも1つの直流電源とが含まれていることを特徴とするスパッタリング用パルス電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスパッタリング用パルス電源装置において、
前記制御部は、前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間の極性を反転させるときは、反転に先立ち、前記短絡スイッチをオンにすることを特徴とするスパッタリング用パルス電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスパッタリング用パルス電源装置において、
前記制御部は、前記制御サイクルにおける各パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフの切替時刻を設定可能になっていることを特徴とするスパッタリング用パルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜を行うスパッタリング装置の電源として使用されるパルス電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置における成膜生成方法として、HiPIMS(High Power Impulse Magnetron Sputtering)等の高電力パルススパッタによる成膜生成方法が知られている。
【0003】
一方、成膜製品の製造に先立って、基板(「母材」ともいう。)とターゲットとの間にどのようなパルスを供給した時に、適切な成膜を形成できるかを試験する必要がある。
【0004】
特許文献1は、スパッタリング用パルス電源装置が出力する各種のパルスパターンを開示している。しかしながら、特許文献1は、そのような各種のパルスパターンを出力するスパッタリング用パルス電源装置の具体的構成を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−269642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスパッタリング用パルス電源装置は、所定の直流電圧を生成する直流電源からパルス電圧及びパルス幅が固定されているパルスしか出力できないものになっている。
【0007】
本発明の目的は、種々のパルスパターンで高電力パルスを出力することができるスパッタリング用パルス電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスパッタリング用パルス電源装置は、
スパッタリング装置のターゲット電極に接続されるターゲット側接続端子と、
前記スパッタリング装置の基板電極に接続される基板側接続端子と、
共通の交流電源から値の異なる直流電圧を生成し、相互に並列接続されて、前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間に接続される3以上の直流電源と、
各直流電源の各出力端子と前記ターゲット側接続端子との間に介在する複数のパルス生成スイッチと、
前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間を短絡させる短絡スイッチと、
制御サイクルにおける前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフパターンを、前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチが同時にオンになることを禁止しつつ、設定可能とし、設定されたオンオフパターンに従って前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、共通の交流電源から値の異なる直流電圧を生成する3以上の直流電源が、相互に並列接続されて、ターゲット側接続端子と基板側接続端子との間に接続される。また、パルス生成スイッチが各直流電源ごとに設けられるとともに、短絡スイッチが設けられる。そして、制御部は、パルス生成スイッチ及び短絡スイッチのオンオフパターンを、パルス生成スイッチ及び短絡スイッチが同時にオンになることを禁止しつつ、設定可能とし、設定されたオンオフパターンに従ってパルス生成スイッチ及び短絡スイッチのオンオフを制御する。これにより、本発明のスパッタリング用パルス電源装置は、種々のパルスパターンで高電力パルスを出力することができる。
【0010】
本発明の別のスパッタリング用パルス電源装置は、
スパッタリング装置のターゲット電極に接続されるターゲット側接続端子と、
前記スパッタリング装置の基板電極に接続される基板側接続端子と、
共通の交流電源から値の異なる直流電圧を生成し、相互に直列に接続されて、前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間の直列回路を構成する3以上の直流電源と、
各直流電源ごとに設けられ、前記直列回路への各直流電源の組み込み及び前記直列回路からの各直流電源の離脱を切り替える複数のパルス生成スイッチと、
前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間を短絡させる短絡スイッチと、
制御サイクルにおける前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフパターンを、前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチが同時にオンになることを許容しつつ、設定可能とし、設定されたオンオフパターンに従って前記パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、共通の交流電源から値の異なる直流電圧を生成する3以上の直流電源が、相互に直列に接続されて、ターゲット側接続端子と基板側接続端子との間で直列回路を構成する。また、各パルス生成スイッチが、直列回路への各直流電源の組み込み及び直列回路からの各直流電源の離脱を切り替える。そして、制御部は、パルス生成スイッチ及び短絡スイッチのオンオフパターンをパルス生成スイッチ及び短絡スイッチが同時にオンになることを許容しつつ、設定可能とし、設定されたオンオフパターンに従ってパルス生成スイッチ及び短絡スイッチのオンオフを制御する。これにより、本発明のスパッタリング用パルス電源装置は、種々のパルスパターンで高電力パルスを出力することができる。
【0012】
本発明のスパッタリング用パルス電源装置において、前記3以上の直流電源には、負の直流電圧を生成する2以上の直流電源と、正の直流電圧を生成する少なくとも1つの直流電源とが含まれていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、スパッタリング用パルス電源装置は、負の直流電圧を生成する2以上の直流電源と共に、正の直流電圧を生成する少なくとも1つの直流電源を備える。これにより、スパッタリング装置に出力する高電力パルスのパルスパターンを一層改善することができる。
【0014】
本発明のスパッタリング用パルス電源装置において、前記制御部は、前記ターゲット側接続端子と前記基板側接続端子との間の極性を反転させるときは、反転に先立ち、前記短絡スイッチをオンにすることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ターゲット側接続端子と基板側接続端子との間の極性を反転する場合、間に短絡スイッチによる短絡期間が挿入される。該短絡期間は、反転前の直流電源と反転後の直流電源との緩衝期間及びオンオフ切替期間として作用するので、切替を円滑化することができる。
【0016】
本発明のスパッタリング用パルス電源装置において、前記制御部は、前記制御サイクルにおける各パルス生成スイッチ及び前記短絡スイッチのオンオフの切替時刻を設定可能になっていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、制御サイクルにおける各パルス生成スイッチ及び短絡スイッチのオンオフの切替時刻が設定される。これにより、制御サイクルにおけるパルス生成スイッチ及び短絡スイッチのオンオフパターンを円滑に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の構成図。
図2】第1実施形態のスパッタリング用パルス電源装置が出力するパルスパターンの一例を示す図。
図3】第2実施形態の構成図。
図4】第2実施形態のスパッタリング用パルス電源装置が出力するパルスパターンの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態としてのスパッタリング用パルス電源装置1aの構成図である。スパッタリング用パルス電源装置1a及び図3で後述するスパッタリング用パルス電源装置1bは、適切な成膜を生成するための高電圧のパルスパターンを試験するスパッタリング装置100への電源として使用される。
【0020】
スパッタリング用パルス電源装置1aは、三相交流電源5と、3つの直流電源10a〜10cとを備える。直流電源10a〜10cは、相互に並列接続され、共通の三相交流電源5からそれぞれ異なる直流電圧Vao〜直流電圧Vcoを生成する。
【0021】
直流電源10a〜10cは、生成する直流電圧Vao〜直流電圧Vcoが異なるものの、ハードウェアの構成は同一となっている。したがって、直流電源10aの構成のみを説明し、直流電源10b,10cについては、構成の説明を省略する。なお、直流電源10b,10cの構成要素において直流電源10aの構成要素と対応する構成要素は、直流電源10aの構成要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0022】
直流電源10aは、その構成自体は周知である。直流電源10aは、三相全波整流回路13と、コンデンサ14とを含む。三相全波整流回路13は、三相交流電源5の三相交流電圧を直流電圧Vaiに変換する。コンデンサ14は、直流電圧Vaiを安定化する。
【0023】
DC−DCコンバータ17は、直流電圧Vaiを直流電圧Vaoに変換する。直流電源10a〜10cにおける値を例示すると、次のとおりである。直流電圧Vai,Vbi,Vciは、共に280Vである。Vaoは1000V、直流電圧Vboは500V、直流電圧Vcoは1000Vである。
【0024】
直流電源10aは、正の直流電圧を生成する直流電源として、直流電圧Vaoの負側がアース(0V)に接続されている。直流電源10b,10cは、負の直流電圧を生成する直流電源として、直流電圧Vbo,Vcoの正側がアースに接続されている。
【0025】
直流電源10a〜10cは、正負一対の出力端子を有する。図1では、アースに接続されていない方の出力端子(電圧≠0V)を出力端子20a〜20cとして示している。
【0026】
出力端子20a〜20cは、それぞれピーク電流検出器27a〜27cを経て共通の保護回路30へ接続されている。保護回路30は、相互に並列に接続された抵抗31及びスイッチ32を備える。短絡スイッチ36は、保護回路30の入力側の端子とアースとの間に介在して、オン時では、両者間を短絡させる。
【0027】
バイアス電源39は、その具体的な構成は直流電源10aと同一であり、バイアス電圧Vuoの値が直流電圧Vao,Vbo,Vcoの値と相違している。バイアス電源39は、バイアス電圧Vuoをバイアスパルス生成スイッチ40の一端に出力する。バイアスパルス生成スイッチ40の他端は、後述のバイアス端子55に接続されている。
【0028】
保護器45は、ピーク電流検出器27a〜27cからそれらが検出したピーク電圧を入力される。そして、いずれのピーク電圧も閾値未満であるときは、保護回路30のスイッチ32をオンに維持する。すなわち、抵抗31の両端を短絡させる。一方、ピーク電流検出器27a〜27cの検出したピーク電流のいずれかが閾値以上であるときは、保護回路30のスイッチ32をオフにして、電流を抵抗31に流す。これにより、スパッタリング用パルス電源装置1aからスパッタリング装置100に過大電流が供給されることが阻止される。
【0029】
スパッタリング用パルス電源装置1aのユーザは、スパッタリング用パルス電源装置1aの作動開始に先立ち、制御部49に予め所定の設定値を設定することができるようになっている。ユーザが設定した設定値は、制御部49の制御プログラムが実行時に参照し、該制御プログラムは、設定値に対応するオンオフパターンでパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフを切り替える。設定値の具体例は、図2のパルスパターンを参照して後述する。
【0030】
スパッタリング装置100は、説明の便宜上、図1においてスパッタリング用パルス電源装置1a内に組み込まれて図示されている。現実には、スパッタリング用パルス電源装置1aは、スパッタリング装置100に外部接続され、スパッタリング用パルス電源装置1aとスパッタリング装置100とは、配線で接続されているのみで、適宜分離できるようになっている。
【0031】
スパッタリング装置100は、スパッタリング装置として構成自体は周知である。なお、このスパッタリング装置100は、成膜試験機として使用されるものであり、成膜製品の製造に使用するものとは別のものである。
【0032】
スパッタリング装置100は、真空室101内に、ターゲット電極102、基板電極103及びバイアス電極104を備える。ターゲット電極102は、真空室101内においてターゲットに接続される。基板電極103及びバイアス電極104は、成膜試験の実施時には、真空室101内において基板(図示せず)に接続される。
【0033】
スパッタリング用パルス電源装置1aは、全体の出力端子としてターゲット側接続端子53、基板側接続端子54及びバイアス端子55を備えている。スパッタリング用パルス電源装置1aのターゲット側接続端子53、基板側接続端子54及びバイアス端子55は、それぞれターゲット電極102、基板電極103及びバイアス電極104に接続される。
【0034】
図2は、スパッタリング用パルス電源装置1aと接続されたスパッタリング装置100のターゲット電極102の電圧波形を示している。スパッタリング装置100の基板電極103は、スパッタリング用パルス電源装置1aの基板側接続端子54に接続されているとともに、アース電位としての0Vに維持されている。したがって、スパッタリング装置100のターゲット電極102の電位としての電圧は、スパッタリング用パルス電源装置1aのターゲット側接続端子53の出力電圧Vsに一致する。
【0035】
スパッタリング用パルス電源装置1aは、設定されたプログラムに従って各制御サイクル(制御周期)のパルス生成スイッチ24a〜24c、短絡スイッチ36及びバイアスパルス生成スイッチ40のオンオフを切り替えて、出力電圧Vsを制御する。
【0036】
スパッタリング用パルス電源装置1aは、バイアスパルス生成スイッチ40のオンオフの切替も実施するが、説明の簡単化のために、スパッタリング用パルス電源装置1aがスパッタリング装置100にバイアス電圧を供給しない場合について説明する。なお、その場合、バイアスパルス生成スイッチ40はオフに維持され、スパッタリング用パルス電源装置1aは、各制御サイクルにおいてパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフを制御プログラムに従って切り替える。
【0037】
制御サイクルにおけるスパッタリング用パルス電源装置1aによるパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフの切替態様は、制御サイクルのオンオフパターンに対応し、かつスパッタリング用パルス電源装置1aがスパッタリング装置100に出力するパルスパターンに対応する。
【0038】
スパッタリング用パルス電源装置1aのユーザは、スパッタリング装置100における成膜試験において、最適なパルスパターンを見出すために、所定の条件付きで制御サイクルにおけるパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフパターンを任意に設定可能になっている。
【0039】
本発明の第1実施形態としてのスパッタリング用パルス電源装置1aにおける所定の条件とは、オンオフパターンは、制御サイクルの任意の時点で、パルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36が同時にオンになることを禁止するという条件である。換言すると、制御サイクルの任意の時点では、パルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のうちオンになるのは、1つだけである。
【0040】
図2において、パルス生成スイッチ24aは、時刻t2−時刻t3の期間と、時刻t6−時刻t7の期間とでオンになり、パルスPaを生成する。パルス生成スイッチ24bは、時刻t4−時刻t5の期間と、時刻t8−時刻t9の期間とでオンになり、パルスPbを生成する。パルス生成スイッチ24cは、時刻t0−時刻t1の期間にオンになり、パルスPcを生成する。その他の期間としての時刻t0−時刻t1の期間と、時刻t3−時刻t4の期間と、時刻t5−時刻t6の期間と、時刻t7−時刻t8の期間と、時刻t9以降の期間とは、すなわち出力電圧Vsが0Vである期間は、短絡スイッチ36がオンにされている期間である。
【0041】
なお、時刻t0〜時刻t9は、制御周期Tc内のオンオフの切替時刻として制御周期Tcの開始時刻を時刻t0として、該時刻t0からの経過時間でも表すことができる。その場合、経過時間換算の時刻t0は、0となる。
【0042】
スパッタリング用パルス電源装置1aでは、制御周期Tcの長さと共に、制御周期Tc内の任意の時刻でのパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオン又はオフを設定することができる。これにより、制御サイクルにおけるパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフ切替としてのオンオフパターンを任意に設定することができる。制御サイクルのオンオフパターンは、制御サイクルのパルスパターンを意味する。スパッタリング用パルス電源装置1aの作動期間では、制御プログラムは、ユーザの設定値を参照して、パルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフの切替を実施する。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態としてのスパッタリング用パルス電源装置1bの構成図である。スパッタリング用パルス電源装置1bにおいて、スパッタリング用パルス電源装置1aの要素と同一の要素は、スパッタリング用パルス電源装置1aの要素に付けた符号と同一の符号を付けて、説明は省略する。
【0044】
直流電源10a〜10cは、直流電圧Vao〜直流電圧Vcoの正側及び負側の出力端子の対として出力端子60a,61aの対、出力端子60b,61bの対、及び出力端子60c,61cの対を備える。
【0045】
ピーク電流検出器67は、スパッタリング用パルス電源装置1aのピーク電流検出器27a〜27cに置き換わるものである。ピーク電流検出器67は、保護回路30とパルス生成スイッチ64aとの間に介在している。保護器45は、ピーク電流検出器67が検出したピーク電流に基づいて保護回路30のスイッチ32のオンオフを制御する。ピーク電流が閾値以上になったとき、スイッチ32はオンからオフに切り替えられて、電流は抵抗31を流れる。この結果、電流は低下し、スパッタリング用パルス電源装置1bからスパッタリング装置100に過大電流が供給されることが防止される。
【0046】
スパッタリング用パルス電源装置1bは、スパッタリング用パルス電源装置1aのパルス生成スイッチ24a〜24cに代えてパルス生成スイッチ64a〜64cを備える。パルス生成スイッチ64a〜64cは、それぞれ直流電源10a〜10cに対応付けられている。
【0047】
接続線63aは、出力端子61aとパルス生成スイッチ64bとを接続する。接続線63bは、出力端子60aとパルス生成スイッチ64cとを接続する。接続線63cは、出力端子60cと基板側接続端子54とを接続する。
【0048】
パルス生成スイッチ64aは、ピーク電流検出器67を出力端子60a,61aのいずれかに接続する。パルス生成スイッチ64bは、接続線63aを出力端子60b,61bのいずれかに接続する。パルス生成スイッチ64cは、接続線63bを出力端子60c,61cのいずれかに接続する。
【0049】
直流電源10a〜10cは、接続線63a〜接続線63cにより相互に直列に接続されて、直列回路(以下、「主直列回路」という。)を構成する。パルス生成スイッチ64a〜64cは、それぞれ主直列回路への直流電源10a〜10cの組み込み及び主直列回路からの直流電源10a〜10cの離脱を切り替える。
【0050】
パルス生成スイッチ64a〜64cは、直流電源10a〜10cを主直列回路から離脱させるときは、直流電源10a〜10cをバイパスする側の出力端子61a,60b,60cを選択する。パルス生成スイッチ64a〜64cは、直流電源10a〜10cを主直列回路に組み込むときは、直流電源10a〜10cを経由する側の出力端子60a,61b,61cを選択する。
【0051】
スパッタリング用パルス電源装置1bの作用について説明する。パルス生成スイッチ64a〜64cは、電源10a〜10cにそれぞれ対応して設けられている。パルス生成つスイッチ64a〜64cは、電源10a〜10c側の接点とバイパス側(接続線63a〜63c側)の接点とを有している。電源10a〜10c側の接点が接続されたときは、電源10a〜10cのうち接続された電源がターゲット側接続端子53−基板側接続端子54間の直列回路に組み込まれる。この結果、該接続された電源の直流電圧Vao,−Vbo,Vcoがターゲット側接続端子53の出力電圧Vsに重畳される。
【0052】
これに対し、スイッチ64a〜64cにおいて接続線63a〜63c側の接点が接続されたときは、電源10a〜10cは、該接続により直列回路から離脱し、電源10a〜10cのうち離脱した電源の直流電圧Vao,−Vbo,Vcoがターゲット側接続端子53の出力電圧Vsにおける重畳の成分から除外される。こうして、スイッチ64a〜64cのオンオフの組合わせにより電源10a〜10cの直流電圧Vao,−Vbo,Vcoを任意に重畳した出力電圧Vsを出力することができる。
【0053】
図4は、スパッタリング用パルス電源装置1bと接続されたスパッタリング装置100のターゲット電極102の電圧波形を示している。図2との相違点についてのみ説明する。
【0054】
スパッタリング用パルス電源装置1bのユーザは、スパッタリング装置100における成膜製造試験において、最適なパルスパターンを見出すために、制御サイクルにおけるパルス生成スイッチ64a〜64c及び短絡スイッチ36のオンオフパターンを任意に設定可能になっている。
【0055】
本発明の第1実施形態としてのスパッタリング用パルス電源装置1aでは、制御サイクルにおけるパルス生成スイッチ64a〜64c及び短絡スイッチ36のオンオフパターンを任意に設定する場合において所定の条件があった。これに対して、本発明の第2実施形態としてのスパッタリング用パルス電源装置1bでは、条件が緩和されている。すなわち、ユーザは、制御部49に対し、制御サイクルの任意の時点で、パルス生成スイッチ64a〜64cのうちの2以上がオンになることを許容して、オンオフパターンを設定することができる。
【0056】
ただし、パルス生成スイッチ64a〜64cの少なくとも1つと短絡スイッチ36とが同一時点で同時にオンになることは禁止される。同時にオンになると、直流電源10a〜10cのいずれかと短絡スイッチ36とによりループ回路が形成されてしまうからである。
【0057】
図4において、パルス生成スイッチ64aは、時刻t3−時刻t5の期間にオンになっている。パルス生成スイッチ64bは、時刻t0−時刻t4の期間にオンになっている。パルス生成スイッチ64cは、時刻t1−時刻t2の期間と、時刻t6−時刻t7の期間にオンになっている。時刻t5−時刻t6の期間と、時刻t7以降の期間とは、すなわち、出力電圧Vsが0Vになっている期間は、短絡スイッチ36がオンにされる期間である。
【0058】
この結果、時刻t1−時刻t2の期間の出力電圧Vsは、パルスPbとパルスPcとを重畳したパルスとしてのパルスPb+パルスPcの電圧となる。時刻t3−時刻t4の期間の出力電圧Vsは、パルスPaとパルスPbとを重畳したパルスとしてのパルスPa+パルスPbの電圧となる。
【0059】
(変形例)
実施形態のスパッタリング用パルス電源装置1a,1bは、直流電源10a〜10cの3つの直流電源を備えている。これに対し、本発明では、直流電源の個数は4以上の複数であってもよい。
【0060】
実施形態のスパッタリング用パルス電源装置1a,1bは、直流電源10a〜10cに共通の三相交流電源5を装備している。本発明が備える共通の交流電源は、単相交流電源であってもよい。
【0061】
実施形態のスパッタリング用パルス電源装置1a,1bでは、負の直流電圧を生成する直流電源として直流電源10b,10cの2つが、また、正の直流電圧を生成する直流電源として直流電源10aの1つが、それぞれ装備される。本発明では、負の直流電圧を生成する直流電源として2以上の直流電源が、また、正の直流電圧を生成する直流電源として少なくとも1つの直流電源が備えられれば、それぞれ2,1以外の別の個数にしてもよい。
【0062】
実施形態のスパッタリング用パルス電源装置1a,1bでは、の極性が反転するときは、反転時に短絡スイッチ36のオン期間を設けて、出力電圧Vs=0Vにしている。本発明のスパッタリング用パルス電源装置は、極性の反転ごとの短絡スイッチのオン期間を省略することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b・・・スパッタリング用パルス電源装置、5・・・三相交流電源(交流電源)、10a〜10c・・・直流電源、20a〜20c・・・出力端子、24a〜24c,64a〜64c・・・パルス生成スイッチ、36・・・短絡スイッチ、39・・・バイアス電源、49・・・制御部、53・・・ターゲット側接続端子、54・・・基板側接続端子、55・・・バイアス端子、100・・・スパッタリング装置、102・・・ターゲット電極、103・・・基板電極、104・・・バイアス電極。
【要約】
【課題】スパッタリング装置に種々のパルスパターンでパルス電圧を出力できるパルス電源装置を提供する。
【解決手段】スパッタリング用パルス電源装置1aは、三相交流電源5から値の異なる直流電圧を生成し、相互に並列接続されて、ターゲット側接続端子53−基板側接続端子54間に接続される直流電源10a〜10cと、直流電源10a〜10c−ターゲット側接続端子53間に介在するパルス生成スイッチ24a〜24cと、ターゲット側接続端子53−基板側接続端子54間に介在する短絡スイッチ36と、制御部49とを備える。制御部49は、制御サイクルについて設定されたオンオフパターンに従ってパルス生成スイッチ24a〜24c及び短絡スイッチ36のオンオフを制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4