特許第6348246号(P6348246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348246ポリエステル系合成繊維用処理剤及びポリエステル系合成繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6348246
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】ポリエステル系合成繊維用処理剤及びポリエステル系合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20180618BHJP
   D06M 11/71 20060101ALI20180618BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20180618BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20180618BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20180618BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20180618BHJP
【FI】
   D06M13/292
   D06M11/71
   D06M13/17
   D06M13/224
   D06M15/643
   D06M101:32
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-74869(P2018-74869)
(22)【出願日】2018年4月9日
【審査請求日】2018年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-81710(P2017-81710)
(32)【優先日】2017年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小室 利広
(72)【発明者】
【氏名】二宮 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕
(72)【発明者】
【氏名】福岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀章
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−63713(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/098845(WO,A1)
【文献】 特開2002−20971(JP,A)
【文献】 特開2002−30571(JP,A)
【文献】 特開昭53−103099(JP,A)
【文献】 特開2016−216858(JP,A)
【文献】 特開昭53−106897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00−16/00
19/00−23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の長鎖アルキルリン酸エステル塩を20〜88.99質量%、下記の短鎖アルキルリン酸エステル塩を1〜10質量%、下記の無機リン酸塩を0.01〜10質量%及び非イオン界面活性剤を10〜65質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤。
長鎖アルキルリン酸エステル塩:アルキル基の炭素数が16〜18のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩。
短鎖アルキルリン酸エステル塩:アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩。
無機リン酸塩:リン酸水素二金属塩及びリン酸三金属塩から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
更に下記のワックス及び下記の線状ポリオルガノシロキサンから選ばれるものを全体の12質量%未満の割合で含有する請求項1記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
ワックス:炭素数16〜22の脂肪族1価アルコールと炭素数6〜22の脂肪族モノカルボン酸とから得られるエステル化合物及びパラフィンワックスから選ばれる少なくとも一つであって、融点が50〜120℃のもの。
線状ポリオルガノシロキサン:30℃の動粘度が1×10−3〜100×10−3/sのもの。
【請求項3】
前記無機リン酸塩の含有割合が0.1〜5.0質量%である請求項1又は2記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記無機リン酸塩の含有割合が0.3〜3.0質量%である請求項1〜3のいずれか一つの項記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項5】
1質量%水溶液の20℃の表面張力が45mN/m未満のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの項記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とするポリエステル系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系合成繊維用処理剤及びかかるポリエステル系合成繊維用処理剤が付着したポリエステル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系合成繊維処理剤として、有機リン酸エステルアルカリ金属塩、特定のワックス又は線状ポリオルガノシロキサン、特定の非イオン界面活性剤を含有する処理剤(特許文献1)、有機リン酸エステルアルカリ金属塩、特定のワックス、特定の線状ポリオルガノシロキサン、特定の非イオン界面活性剤を含有する処理剤(特許文献2)、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩、特定の非イオン界面活性剤、リン酸金属塩を含有する処理剤(特許文献3)等が提案されている。
【0003】
また、特定のアルキルリン酸エステルカリウム塩と、特定のアルキルリン酸エステルカリウム塩と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル及びポリオキシアルキレン(アルキルフェニル)エーテルから選ばれる少なくとも1種とを含有して成る繊維処理剤(特許文献4)、特定のアルキルリン酸エステルカリウム塩と、アクリル樹脂とを特定の比率で含有する繊維処理剤(特許文献5)が開示されている。更に、リン酸類のアルカリ金属塩を重要成分として添加含有する合成繊維処理用油剤(特許文献6)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−020971号公報
【特許文献2】特開2002−030571号公報
【特許文献3】特許第5796922号公報
【特許文献4】特開2008−063713号公報
【特許文献5】国際公開第2009/098845号
【特許文献6】特開昭53−103099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に例示したように種々の繊維用処理剤が提案されている。しかしながら、高性能な処理剤として、市場では、紡糸工程での優れたトウの集束性、延伸工程での優れた延伸性を兼ね備え、更に、紡績工程での発生電気の抑制が可能であるポリエステル合成繊維、並びにその処理剤が切望されている。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、紡糸工程でのトウの優れた集束性および延伸工程での優れた延伸性を兼ね備え、且つ紡績工程での発生電気の抑制が可能なポリエステル系合成繊維用処理剤、並びにかかるポリエステル系合成繊維用処理剤が付着したポリエステル系合成繊維を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、特定の3成分と非イオン界面活性剤を特定の割合で含有して成るポリエステル系合成繊維用処理剤を用いることにより本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記の長鎖アルキルリン酸エステル塩を20〜88.99質量%、下記の短鎖アルキルリン酸エステル塩を1〜10質量%、下記の無機リン酸塩を0.01〜10質量%及び非イオン界面活性剤を10〜65質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤及びかかるポリエステル系合成繊維用処理剤が付着したポリエステル系合成繊維に係る。
【0009】
長鎖アルキルリン酸エステル塩:アルキル基の炭素数が16〜18のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩。
【0010】
短鎖アルキルリン酸エステル塩:アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩。
【0011】
無機リン酸塩:リン酸水素二金属塩及びリン酸三金属塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0012】
先ず、本発明に係るポリエステル系合成繊維用処理剤(以下、本発明の処理剤ともいう)について説明する。本発明の処理剤は、特定の3成分と非イオン界面活性剤を特定の割合で含有して成るポリエステル系合成繊維用処理剤である。
【0013】
本発明の処理剤に供する長鎖アルキルリン酸エステル塩としては、ヘキサデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、オクタデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、イソステアリルリン酸エステルアルカリ金属塩等の、アルキル基の炭素数が16〜18のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0014】
本発明の処理剤に供する短鎖アルキルリン酸エステル塩としては、ノルマルブチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、オクチルリン酸エステルアルカリ金属塩等のアルキル基の炭素数が4〜8のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩が挙げられる。こらのなかでもノルマルブチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩等のアルキル基の炭素数が4〜6の短鎖アルキルリン酸エステル塩が好ましい。
【0015】
本発明の処理剤に供する無機リン酸塩は、リン酸水素二金属塩及びリン酸三金属塩から選ばれる少なくとも一つであるが、なかでもリン酸水素二金属塩が好ましい。具体的にリン酸水素二金属塩としてはリン酸水素二カリウム塩、リン酸水素二ナトリウム塩等が挙げられ、リン酸三金属塩としてはリン酸三カリウム塩、リン酸三ナトリウム塩等が挙げられる。
【0016】
本発明の処理剤に供する非イオン界面活性剤としては、α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)、α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(n+m=10)、α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)、α−ノニルフェニル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)、α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)等が挙げられる。ここでnはオキシエチレン単位の数を意味し、n+mはオキシエチレン単位の数とオキシプロピレン単位の数の合計数を意味し、以降同様とする。
【0017】
本発明の処理剤は、前記の長鎖アルキルリン酸エステル塩を20〜88.99質量%、短鎖アルキルリン酸エステル塩を1〜10質量%、無機リン酸塩を0.01〜10質量%及び非イオン界面活性剤を10〜65質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものである。無機リン酸塩の含有割合は、より好ましくは0.1〜5.0質量%であり、更に好ましくは0.3〜3.0質量%である。
【0018】
本発明の処理剤は、更に下記のワックス及び下記の線状ポリオルガノシロキサンから選ばれるものを本発明の処理剤全体の12質量%未満の割合で含有することができる。
【0019】
ワックス:炭素数16〜22の脂肪族1価アルコールと炭素数6〜22の脂肪族モノカルボン酸とから得られるエステル化合物及びパラフィンワックスから選ばれる少なくとも一つであって、融点が50〜120℃のもの。
【0020】
線状ポリオルガノシロキサン:30℃の動粘度が1×10−3〜100×10−3/sのもの。
【0021】
具体的にワックスとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数16〜22の脂肪族1価アルコールと、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の炭素数6〜22の脂肪族モノカルボン酸とから得られるエステル化合物や、融点が65℃のパラフィンワックス等が挙げられる。また線状ポリオルガノシロキサンとしては、30℃の動粘度が10×10−3/sのポリジメチルシロキサン、30℃の動粘度が50×10−3/sのポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0022】
本発明の処理剤は、1質量%水溶液の表面張力が45mN/m未満のものが好ましい。表面張力は、イオン交換水を用いて調製した本発明の処理剤の1質量%水溶液を垂直板法表面張力測定装置に供して求めることができる。
【0023】
最後に、本発明に係るポリエステル系合成繊維(以下、本発明の合成繊維ともいう)について説明する。本発明の合成繊維は、本発明の処理剤が付着しているポリエステル系合成繊維である。
【0024】
ポリエステル系合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等が挙げられるが、なかでもポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。本発明の処理剤を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、本発明の処理剤を繊維に対し0.01〜0.5質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。また本発明の処理剤を付着させる工程は、紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれでもよいが、紡糸工程又は捲縮工程の前或いは後に付着させるのが好ましい。付着方法は、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等のいずれでもよいが、浸漬給油法、スプレー給油法又はローラー給油法が好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、紡糸工程でのトウの優れた集束性、および延伸工程での優れた延伸性を兼ね備え、且つ紡績工程での発生電気の抑制が可能なポリエステル系合成繊維用処理剤及びポリエステル系合成繊維を提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の処理剤の評価に用いた試験装置を一部縦断面で略示する全体図。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0028】
試験区分1(ポリエステル系合成繊維用処理剤の調製と表面張力の測定)
・実施例1
オクタデシルリン酸エステルカリウム塩(A−1)69.0部、ブチルリン酸エステルカリウム塩(A−4)5.0部、リン酸水素二カリウム塩(B−1)1.0部及びα−ドデシル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)/α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(n+m=10)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)=25/25/50(質量比)の混合物(C−1)25.0部を、80℃に加熱した所定量の半量のイオン交換水に撹拌下で加えて完全に溶解させた。溶解後、残りの半量のイオン交換水を一気に加えて均一になるまで撹拌し、合成繊維用処理剤の1%水性液を200g調製した。この水溶液のpHを測定したところ、9.0であった。調製した合成繊維用処理剤の1%水性液を垂直板法表面張力測定装置(協和界面科学社製の商品名KYOWA CBVP SURFACE TENSIONMETER)に供して、20℃における表面張力を測定するという操作を5回行い、かくして求めた5回の測定値の平均値(mN/m)を算出したところ、39.7mN/mであった。
【0029】
・実施例2〜15、参考例1及び比較例1〜13
実施例1と同様にして、表1に記載の内容で、実施例2〜15、参考例1及び比較例1〜13の合成繊維用処理剤の1%水溶液を各200g調製し、表面張力を測定して、平均値を算出した。実施例1も含め、各例の内容及び表面張力の平均値を表1にまとめて示した。尚、実施例2の水溶液のpHは8.4であり、また比較例9の水溶液のpHは10.5であった。
【0030】
【表1】
【0031】
表1において、
A−1:オクタデシルリン酸エステルカリウム塩
A−2:セチルリン酸エステルカリウム塩
A−3:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
A−4:ブチルリン酸エステルカリウム塩
A−5:ヘキシルリン酸エステルカリウム塩
A−6:ポリオキシエチレン(n=7)セチルリン酸エステルカリウム塩
B−1:リン酸水素二カリウム塩
B−2:リン酸三カリウム塩
B−3:リン酸水素二ナトリウム塩
C−1:α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)/α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(n+m=10)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)=25/25/50(質量比)の混合物
C−2:α−ノニルフェニル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(n=10)=70/30(質量比)の混合物
C−3:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル
C−4:ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル/ポリオキシエチレン(n=25)ラウリルエーテル/ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテル/ポリエチレングリコール(分子量1100)モノラウレート=55/10/20/15
C−5:ポリエチレングリコール(平均分子量400)モノラウレート
D−1:融点が60℃のパラフィンワックス
D−2:融点が61℃のステアリン酸ステアリル
E−1:30℃の粘度が10×10−3/sの線状ポリジメチルシロキサン
【0032】
試験区分2(ポリエステル系合成繊維用処理剤の評価)
試験区分1で調製した各例のポリエステル系合成繊維用処理剤について、次のようにトウ集束性、延伸性及び発生電気を評価し、結果を表2にまとめて示した。
【0033】
・トウ集束性の評価
トウ集束性は、ポリエステル系合成繊維用処理剤の動的表面張力を代用して次のように評価した。試験区分1で調製した各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の1%水溶液を20℃で一晩静置した後、動的表面張力測定装置(Chem−Dyne Reserch Corporation社製の商品名QC6000)を用いて、25℃で65%RHの雰囲気下に動的表面張力を5Bubble/秒の条件で測定し、トウ集束性を以下の基準で評価した。
【0034】
トウ集束性の評価基準
◎:動的表面張力が40mN/m未満
○:動的表面張力が40mN/m以上45mN/m未満
×:動的表面張力が45mN/m以上
【0035】
・延伸性の評価
図1に略示した試験装置を用いて、次のように延伸性を評価した。図1において、1は容器、2はポリエステル系合成繊維用処理剤の1%水溶液、3は円筒状の金属製摩擦体、3及び5はフリーローラー、6はポリエステルフィラメントである、各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の1%水溶液について、図1の状態で、ポリエステルフィラメント6を図1中の矢印方向へ50m/分の速度で引っ張り、このときのフリーローラー4の上流部及びフリーローラー5の下流部における張力T1及びT2を20℃の雰囲気下で測定して、T2/T1の比から、延伸性を以下の基準で評価した。
【0036】
延伸性の評価基準
◎:T2/T1=6.00未満
○:T2/T1=6.00以上6.30未満
×:T2/T1=6.30以上
【0037】
・発生電気の評価
試験区分1で調製した各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の1%水性液を更にイオン交換水で希釈し、ポリエステル系合成繊維用処理剤の0.5%水性液を調製した。調製したポリエステル系合成繊維用処理剤の0.5%水性液を製綿工程で得られた繊度1.3×10−4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、ポリエステル系合成繊維用処理剤としての付着量が0.15%となるようにスプレー給油法で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調湿して、ポリエステル系合成繊維用処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維を得た。このようにして得られた処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用い、25℃×40%RHの雰囲気下でフラットカード(豊和工業社製)に供し、紡出速度=140m/分の条件で通過させた。紡出されたカードウェブの発生電気を測定し、制電性を以下の基準で評価した。
【0038】
発生電気の評価基準
◎:発生電気量が0.1kV未満
○:発生電気量が0.1kV以上0.3kV未満
×:発生電気量が0.3kV以上0.6kV未満
××:発生電気量が0.6kV以上
【0039】
【表2】
【0040】
表1に対応する表2の結果からも明らかなように、本発明によれば、紡糸工程でのトウの優れた集束性、および延伸工程での優れた延伸性を兼ね備え、更に紡績工程での発生電気を十分抑制できるという優れた効果がある。
【符号の説明】
【0041】
1 容器
2 ポリエステル系合成繊維用処理剤の1%水溶液
3 円筒状の金属製摩擦体
4,5 フリーローラー
6 ポリエステルフィラメント
【要約】
【課題】紡糸工程でのトウの集束性を向上し、また延伸工程での延伸性を向上し、更に紡績工程での発生電気を十分抑制することができるポリエステル系合成繊維用処理剤及びかかるポリエステル系合成繊維用処理剤が付着したポリエステル系合成繊維を提供する。
【解決手段】ポリエステル系合成繊維用処理剤として、特定の長鎖アルキルリン酸エステル塩を20〜88.99質量%、特定の短鎖アルキルリン酸エステル塩を1〜10質量%、特定の無機リン酸塩を0.01〜10質量%及び非イオン界面活性剤を10〜65質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものを用いた。
【選択図】なし
図1