(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348277
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】分配包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20180618BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20180618BHJP
B65D 77/30 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
B65D81/32 U
B65D77/20 L
B65D77/30 A
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-248184(P2013-248184)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105121(P2015-105121A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】513108064
【氏名又は名称】楠瀬 清隆
(74)【代理人】
【識別番号】100078145
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 修
(74)【代理人】
【識別番号】100086564
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 聖孝
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 清隆
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−091508(JP,A)
【文献】
特開平08−310558(JP,A)
【文献】
特開2001−335071(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/143403(WO,A1)
【文献】
米国特許第04724982(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
B65D 77/20
B65D 77/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した複数の収納空間を有するバッグと、
前記バッグの開口部を塞ぐように前記バッグと接合される蓋板と、
を具備し、前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の端面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記突部の先端側端面に錐状突出し部が連設され、両側の前記錐状突出し部の先端部が互いに突合わされて当接部を形成し、
前記両側の突部の先端側の端面がそれぞれ対応する突部の背面側に向って傾斜する傾斜面であって、両側の前記傾斜面によって断面V字状の凹部が前記蓋板の外表面上において前記折曲げ線に沿って形成され、該V字状の凹部内に突出するように両側の傾斜面上に前記錐状突出し部が突設され、しかも前記断面V字状の凹部の底部が折曲げ位置であって、
前記蓋板を前記折曲げ線を中心として前記バッグが挟着されるように折曲げると、それぞれの吐出位置で前記両側の突部の先端の前記錐状突出し部が前記当接部を構成する当接点のところから破断されて前記蓋板に前記バッグの各収納空間に対応する吐出口が形成されて内容物が吐出される分配包装体。
【請求項2】
前記蓋板がポリプロピレン、もしくはポリプロピレンを主体とする多層体である請求項1に記載の分配包装体。
【請求項3】
前記蓋板の厚さが0.1〜2.0mmの範囲内である請求項1に記載の分配包装体。
【請求項4】
前記蓋板上において前記錐状突出し部の当接点が前記折曲げ線に対して外方に偏倚し、前記折曲げ線を中心として前記蓋板を折曲げると前記当接点のところで両側の錐状突出し部が離間する方向に引張られて前記当接点のところから破断される請求項1に記載の分配包装体。
【請求項5】
前記蓋板の折曲げ位置に沿って2つあるいは3つ以上の吐出口が形成されるとともに、前記バッグの各収納空間が対応する前記吐出口と連通する請求項1に記載の分配包装体。
【請求項6】
前記バッグが隔壁によるか複数のバッグによって複数の収納空間を形成する請求項5に記載の分配包装体。
【請求項7】
前記突部が断面が半円である請求項1に記載の分配包装体。
【請求項8】
前記半円の突部の前端部の両側にすぼめ部が形成される請求項7に記載の分配包装体。
【請求項9】
前記突部が断面が三角形である請求項1に記載の分配包装体。
【請求項10】
前記突部の頂部が円弧状になっている請求項9に記載の分配包装体。
【請求項11】
前記突部が断面が台形状である請求項1に記載の分配包装体。
【請求項12】
前記錐状突出し部が直線状の稜線で両側の三角形の板状部が交わり、三角形の吐出口を形成する請求項1に記載の分配包装体。
【請求項13】
前記錐状突出し部が傾斜するか平坦な三角形の上面に両側の三角形の板状部が連なり、三角形の吐出口を形成する請求項1に記載の分配包装体。
【請求項14】
前記錐状突出し部が三角形の上面に両側の板状部が連なり、該板状部の根元側が円弧状の輪郭で前記突部の傾斜面に交わり、三角形の吐出口を形成する請求項1に記載の分配包装体。
【請求項15】
前記錐状突出し部が三角形の上面または直線状の稜線で両側の側面が連なり、上部が三角形で下部が四角形で全体として五角形の吐出口を形成する請求項1に記載の分配包装体。
【請求項16】
前記両側の側面の根元側が円弧状の輪郭で前記突部の傾斜面に交わる請求項15に記載の分配包装体。
【請求項17】
前記両側の側板の根元側であって円弧状の輪郭の上部に上方突部が形成される請求項16に記載の分配包装体。
【請求項18】
前記上部の三角形の両側の斜辺が内側に凹むように湾曲している請求項15に記載の分配包装体。
【請求項19】
前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の傾斜面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記両側の突部の形状が互いに相違する請求項1に記載の分配包装体。
【請求項20】
前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の傾斜面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記折曲げ線に沿って隣接する両側の突部の形状が互いに相違する請求項1に記載の分配包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分配包装体に係り、とくに柔軟なバッグを蓋板と接合し、蓋板の折曲げ位置を中心として折曲げるとこの折曲げ位置に沿って複数の吐出口が形成され、これらの吐出口を通して複数種類の内容物を吐出するようにした分配包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開平11−301746号公報や、特開2001−180761号公報、特開2001−328095号公報等によって、分配包装体が提案されている。これらの分配包装体は、硬質の蓋板と、柔軟なバッグとの組合わせであって、バッグの上部開口の周縁部を蓋板の周縁部に接合するように構成されており、バッグを挟着するように蓋板を中央の折曲げ位置を中心として折曲げると、折曲げ位置に吐出口が形成されてこの吐出口を通して内容物が吐出されるように構成されている。このような分配包装体は、バッグ内に充填される内容物、例えば調味料、添加物、ドレッシング、その他各種の食品を、1回分の容量を充填して使用することができるために、大きな容器に入っている食品に比べて衛生的であり、取扱が便利である。従って給食や外食産業等において広く用いられる傾向にある。
【0003】
このような分配包装体は、主要な材質として、その蓋板がポリスチレンであって内側にポリエチレンのバッグを接合した構造が採用されている。そして吐出口を形成する蓋板の折曲げ位置にハーフカットの切れ目を入れるようにしており、蓋板をそのハーフカットが形成されている折曲げ位置を中心として折曲げると吐出口が開口して形成されるようになっている。ところが、従来の分配包装体においては、折曲げる際に外側のポリスチレンのハーフカットが形成されている部分は破断されるものの、その蓋板の内側に接合されているポリエチレンは破断することなく延伸し、これによって吐出口が形成されず、内容物が吐出されない不具合が予見される。また上記蓋板のポリスチレンの部分のハーフカットによって、使用する前に、物流に供するために移動中あるいは保管中に上記ハーフカットの部分が破断し、これによって内容物が流出してしまう事故が発生し易かった。すなわち吐出口が正しく破断して形成されなかったり、あるいはまたハーフカットによって蓋板の長辺方向を亀裂が横断する状態になり、事故の発生が予見される。また蓋板にハーフカットの切込みを形成していることから、蓋板の厚さを薄くすることができなかった。
【0004】
このような分配包装体に関する問題点は、ツインタイプと称されるような、2種類の内容物をそれぞれ対応する吐出口から同時に吐出できるようにした分配包装体においても同様である。ツインタイプの分配包装体は、蓋板の折曲げ線に沿ってその2箇所にそれぞれ破断開口部が形成されるようになっており、しかもこのような破断開口部から成る吐出口に対応するように、バッグが隔壁によって2分割されるか、蓋板に2種類のバッグを接合した構造となっている。蓋板を折曲げ位置で折曲げると、それぞれの空間に入っている内容物が対応する吐出口から吐出されるようになる。このようなツインタイプの分配包装体において、破断が正しく行われ、円滑に吐出口から内容物が吐出されなければならなかったのに、従来のツインタイプの分配包装体においては、必ずしもこのような円滑な吐出動作が期待できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−301746号公報
【特許文献2】特開2001−180761号公報
【特許文献3】特開2001−32809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、蓋板を積層構造の材料から構成するとともに、内容物を注出するために折曲げ位置で折曲げた場合に、必ず複数の吐出口が折曲げ位置に沿って形成されるようにした分配包装体を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、保管中や運搬中に、蓋板の吐出口が形成される位置が破断し、不測に内容物が流出することがないようにした分配包装体を提供することである。
【0008】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の主要な発明は、互いに独立した複数の収納空間を有するバッグと、
前記バッグの開口部を塞ぐように前記バッグと接合される蓋板と、
を具備し、前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の端面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記突部の先端側端面に錐状突出し部が連設され、両側の前記錐状突出し部の先端部が互いに突合わされて当接部を形成し、
前記両側の突部の先端側の端面がそれぞれ対応する突部の背面側に向って傾斜する傾斜面であって、両側の前記傾斜面によって断面V字状の凹部が前記蓋板の外表面上において前記折曲げ線に沿って形成され、該V字状の凹部内に突出するように両側の傾斜面上に前記錐状突出し部が突設され、しかも前記断面V字状の凹部の底部が折曲げ位置であって、
前記蓋板を前記折曲げ線を中心として前記バッグが挟着されるように折曲げると、それぞれの吐出位置で前記両側の突部の先端の前記錐状突出し部が前記
当接部を構成する当接点のところから破断されて前記蓋板に前記バッグの各収納空間に対応する吐出口が形成されて内容物が吐出される分配包装体に関するものである。
【0010】
ここで、前記蓋板がポリプロピレン、もしくはポリプロピレンを主体とする多層体であってよい。また前記蓋板の厚さが0.1〜2.0mmの範囲内であってよい。
【0011】
また、前記蓋板上において前記錐状突出し部の当接点が前記折曲げ線に対して外方に偏倚し、前記折曲げ線を中心として前記蓋板を折曲げると前記当接点のところで両側の錐状突出し部が離間する方向に引張られて前記当接点のところから破断されてよい。また前記蓋板の折曲げ位置に沿って2つあるいは3つ以上の吐出口が形成されるとともに、前記バッグの各収納空間が対応する前記吐出口と連通してよい。また前記バッグが隔壁によるか複数のバッグによって複数の収納空間を形成してよい。
【0012】
また、前記突部が断面が半円であってよい。ま前記半円の突部の前端部の両側にすぼめ部が形成されてよい。また前記突部が断面が三角形であってよい。また前記突部の頂部が円弧状になっていてよい。また前記突部が断面が台形状であってよい。
【0013】
また、前記錐状突出し部が直線状の稜線で両側の三角形の板状部が交わり、三角形の吐出口を形成してよい。また前記錐状突出し部が傾斜するか平坦な三角形の上面に両側の三角形の板状部が連なり、三角形の吐出口を形成してよい。また前記錐状突出し部が三角形の上面に両側の板状部が連なり、該板状部の根元側が円弧状の輪郭で前記突部の傾斜面に交わり、三角形の吐出口を形成してよい。また前記錐状突出し部が三角形の上面または直線状の稜線で両側の側面が連なり、上部が三角形で下部が四角形で全体として五角形の吐出口を形成してよい。また前記両側の側面の根元側が円弧状の輪郭で前記突部の傾斜面に交わるようにしてよい。また前記両側の側板の根元側であって円弧状の輪郭の上部に上方突部が形成されてよい。また前記上部の三角形の両側の斜辺が内側に凹むように湾曲していてよい
また、前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の傾斜面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記両側の突部の形状が互いに相違してよい。また前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の傾斜面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記折曲げ線に沿って隣接する両側の突部の形状が互いに相違してよい。
【発明の効果】
【0014】
本願の主要な発明は、互いに独立した複数の収納空間を有するバッグと、前記バッグの開口部を塞ぐように前記バッグと接合される蓋板と、を具備し、前記蓋板の所定の折曲げ線に沿って配置される複数の吐出位置には、その両側にそれぞれ先端側の端面が互いに対向するように前記折曲げ線よりも外側に突出して突部が形成されるとともに、前記突部の先端側端面に錐状突出し部が連設され、両側の前記錐状突出し部の先端部が互いに突合わされて当接部を形成し、前記蓋板を前記折曲げ線を中心として前記バッグが挟着されるように折曲げると、それぞれの吐出位置で前記両側の突部の先端の前記錐状突出し部が前記当接点のところから破断されて前記蓋板に前記バッグの各収納空間に対応する吐出口が形成されて内容物が吐出されるようにしたものである。
【0015】
従ってこのような分配包装体によると、バッグが内側に押潰されるように挟着して蓋板を折曲げ線を中心として折曲げると、この蓋板のそれぞれの吐出位置において両側の突部の先端の錐状突出し部が当接点のところから破断されることになり、蓋板にはバッグの各収納空間に対応する吐出口が形成され、内容物が吐出される。とくに当接点が折曲げ線に対して蓋板の外側に偏倚しているために、蓋板を折曲げ線を中心に折曲げると、当接点で応力の集中が起こって破断され、これによって確実な開口動作が達成され、確実に吐出口が形成される。しかもこのような構造は、蓋板に予めハーフカットの切込みを入れておく必要がなくなるために、不測に蓋板の吐出位置が破断して開口が形成され、内容物が漏出されることがない。また蓋板の内側に補助フィルムを接合しておいても、補助フィルムが蓋板と一緒に破断されるようになるために、開封ミスが発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一の実施の形態の分配包装体の外観斜視図である。
【
図3】同分配包装体の長さ方向に沿う断面図である。
【
図6】錐状突出し部による開封の原理を示す要部縦断面図である。
【
図7】別の実施の形態の分配包装体の外観斜視図である。
【
図10】同蓋板の突部の先端部の錐状突出し部の構造を示す正面図である。
【
図11】蓋板の突部および錐状突出し部の構造を示す側面図である。
【
図16】同突部の錐状突出し部の構造を示す正面図である。
【
図19】同突部の先端側の錐状突出し部の正面図である。
【
図27】別の錐状突出し部の構成を示す斜視図である。
【
図28】同錐状突出し部の正面の構造を示す正面図である。
【
図30】別の錐状突出し部の構成を示す斜視図である。
【
図33】別の錐状突出し部の構成を示す斜視図である。
【
図51】別の実施の形態の分配包装体の外観斜視図である。
【
図53】同分配包装体の錐状突出し部の要部斜視図である。
【
図56】別の実施の形態の分配包装体の外観斜視図である。
【
図58】同分配包装体の折曲げ線に沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。
図1〜
図4は、第1の実施の形態の分配包装体を示している。この包装体は、蓋板10とバッグ11とから構成される。蓋板10は、例えばポリプロピレン/EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を含むシーラント層/ポリプロピレンの三層構造を成しており、厚さが0.1〜2.0mmの範囲内、より好ましくは0.3〜0.4mmの比較的硬質の材料によって成形されたものである。なお蓋板10は、PP単体、PPを主体とする多層体(EVOH等のバリア層や接着剤層等を含んだものであってよい。)の材料であってもよい。これに対してバッグ11は、例えばポリプロピレンとEVOHとの積層構造体を成し、中に内容物を充填する容器になっている。そしてバッグ11の外周側であって上部開口の周縁部は蓋板10の下縁の周縁部に接合されて内容物が充填された状態でシールされている。なおバッグ11の材料としては、PP、PP/EVOH/PP、PP/PE/EVOH/PE等の構成であってもよい。
【0018】
本実施の形態の分配包装体は、内部の空間が2分割されるとともに、それぞれの空間に応じて吐出口が形成され、複数種類の内容物が吐出される分配包装体である。このような分配包装体の内部に充填される物質の組合わせを例示すると、トマトケチャップ/マスタード、バルサミコ/オリーブオイル、ジャム/マーガリン、マヨネーズ/ソース、マヨネーズ/ドレッシング、はつみつ/レモン、しょうゆ/わさび、たれ/からし、タルタルソース/レモン、しゃぶたれ/ゆず、カスタード/いちごソース等である。
【0019】
蓋板10の上面には、互いに対向するようにその左右にそれぞれ一対ずつの突部14が形成されている。突部14は断面が半円形であって、背面側に向って緩やかな斜面18を備えるとともに、斜面18のほぼ中央部に円弧状リブ21が形成されている。なお長さ方向の両端にはそれぞれ三角形の突部22が形成されるようになっている。このような構造によって、蓋板10は所定の剛性を備えている。
【0020】
次にとくに破断部の構造について説明すると、
図2および
図3において鎖線で示す折曲げ位置25に対して突部14の前端面が傾斜面26から構成されている。すなわち突部14はその前端部が斜めに傾斜し、両側の傾斜面26の間にV字状の凹部が形成されている。そして両側の傾斜面26には互いに対向するように錐状突出し部27あるいはくちばし状突出し部が形成されている。これらの錐状突出し部27は、それらの先端部が互いに当接部28(
図9〜
図11参照)で当接し、これらの当接部28が応力集中点を構成している。
【0021】
このような互いに突当てられた一対の錐状突出し部27によって、吐出口29を形成するようになっている。しかも蓋板10の下面のバッグ11は、隔壁12によって内部が2つの空間に区画されており、2つの空間にはそれぞれ別々に内容物が充填されるようになっており、しかもそれぞれの空間が一対の吐出口29と連通するようになっている。
【0022】
このような分配包装体の開封は、
図3に示す分配包装体を上下逆様にし、この後に
図5に示すように折曲げ位置25を中心として蓋板10の両端部を上方に折曲がるようにするとともに、蓋板10の折曲げ部分によってその内側にバッグ11を挟着する。バッグ11は内容物を充填してあるものの、柔軟な材料から構成されているために、折曲げ位置25を中心として蓋板10を折曲げると、バッグ11が押潰される。そして同時に上記蓋板10の折曲げによって、両側の錐状突出し部27の先端側の当接部28に応力が集中し、この当接部28が破断して吐出口29を形成する。従って蓋板10を両側から互いに近接するように押すと、バッグ11内の内容物60が吐出口29を通して押出されて吐出動作が行われる。ここでバッグ11の隔壁12によって区画された2つの空間の内容物60は、それぞれ対応する吐出口29から吐出される。
【0023】
図6はとくに錐状突出し部27による開封の動作を示すものであって、
図6Aに示すように、二層構造の場合には、折曲げ位置25に対して外側であって上方に偏倚している両側の錐状突出し部27に対して、蓋板10の折曲げ時に互いに離間する方向の力が働き、当接部28の部分が破断されて吐出口29が形成される。すなわち表面層51の内側に内層52を備える場合には、表面層51と内層52とが一緒になって錐状突出し部27の部分で離間するように破断される。蓋板10の構造が
図6Bに示すように3層であって、表面層51と内層52と最内層53から構成される場合には、これら3つの層51、52、53の積層体から成る錐状突出し部27が当接部28のところで一緒に破断されて吐出口29が形成される。
【0024】
図6Cは従来のこの種の分配包装体を示しており、表面層56には予めハーフカット58が形成されるとともに、表面層56の内側に内層57を備えていた。蓋板10を折曲げると、表面層56は破断されて開口が形成されるものの、内層57が内側に偏倚するように移動し、これによって開封ミスが起こる欠点があった。本願においては、錐状突出し部27は、突部14の傾斜面26と交わり、突部14の上面へつながる形状を構成している。そのことから、該形状のつながり方向および流れは、開封の方向と一致しており、さらに傾斜面26から上面へつながる形状が折込んだ形状をなしている。従って
図6Bに示すように、表面層51と最内層53とを同一の割れることが可能な樹脂にすることによって、同時にそれらの2層が破断する。これによって柔らかく薄い内層52も破断されるようになる。
【0025】
次に全体の構成の別の形態を
図7および
図8によって説明する。この実施の形態は、折曲げ位置25の両側に位置する突部14の形状が同一ではなく、一方が長く他方が短くなっている。そして両側に偏倚される突部14については、それらの両端形状が逆になっている。また短い方の突部14の端部には別の突部22が配置されている。これらの突部22は蓋板10の剛性を高めるためのものである。そしてこのような構成においても、蓋板10を折曲げ位置25を中心として折曲げることによって、両側にそれぞれ吐出口29が形成され、これらの吐出口29から隔壁12によって区画された2つの空間の中に充填されている内容物がそれぞれ吐出されるようになる。
【0026】
次に蓋板10の上面に形成される突部14の形態について説明する。
図9〜
図11は、断面形状が半円形の突部14を示している。そして突部14には、その背面側の部分に緩やかな斜面18が形成されている。そして緩やかな斜面18の背面側が平坦面19に構成され、この平坦面19に凹溝20が形成される。そして緩やかな斜面18には円弧状リブ21が形成される。
【0027】
突部14の前端側にはくちばし状に錐状突出し部27が形成されている。この錐状突出し部27の先端部が当接部28を構成しており、蓋板10を折曲げ線25を中心に折曲げると、当接部28の下側に吐出口29が開口する。
【0028】
次に
図12〜
図14によって別の突部14の構成を説明する。この突部14の特徴は、その前端側であって両側の部分にすぼめ部41が形成されていることである。すぼめ部41は、突部14のとくに前端側の部分の変形を防止し、剛性を高めるようにしている。突部14が柔らかくて変形し易いと、蓋板10を折曲げる際に確実な破断動作が期待できない。これに対してすぼめ部41を形成すると、突部14の剛性が向上するようになり、より完全な開封動作が達成される。
【0029】
次に
図15〜
図17によって、別の突部14について説明する。この突部14は、その断面形状がほぼ三角形であって、頂面側が円弧状の断面形状を成している。なおそれ以外の構成、とくに前端側の傾斜面26に形成される錐状突出し部27の構成は、
図9〜
図11に示す構成と同様である。
【0030】
図18〜
図20に示す突部14は、その断面形状が三角形になっており、上面が直線状の稜線によって構成されている。なおそれ以外の構成は、
図15〜
図17に示す突部14と同様である。
【0031】
次に
図21〜
図23に示す突部14について説明する。この突部14は、その断面形状が台形状を成しており、背面側に向って緩やかな斜面18が形成され、しかもその上に円弧状リブ21が形成されている。またさらに背面側は平坦面19に構成され、この平坦面19には凹溝20が形成されている。なお前端側の傾斜面26に形成される錐状突出し部27は、上記
図9〜
図11に示す錐状突出し部27と同様である。
【0032】
次に錐状突出し部27の各種の形状について以下に説明する。
【0033】
図24は三角形の吐出口29が形成される錐状突出し部27であって、両側の三角形の傾斜面34が直線状をなす稜線によって交差し、しかも稜線は前端が低くなるように斜めになっている。そして両側の稜線が当接部28のところで当接している。この当接部28が折曲げ位置25に対して蓋板10の外方に偏倚しており、蓋板10を折曲げ線25に沿って折曲げると、両側の錐状突出し部27の当接部28に応力が集中して破断され、吐出口29が形成される。
【0034】
図27〜
図29に示す構成は、同じく三角形の傾斜面の吐出口29が形成されるものであって、錐状突出し部27の両側の三角形の板状部は、上面に位置する三角形の平坦面35と交わるようになっている。そして両側の三角形の頂点と上面の三角形の平坦面35の頂点が互いに当接部28のところで交わり、ここが応力集中点になる。従って折曲げ線25を中心として蓋板10を折曲げると、応力集中点を構成する当接部28のところで破断し、吐出口29が形成される。このような構成は、
図24〜
図26の形状による錐状突出し部27の沈込みの変形を回避することを目的としている。このように平坦な三角形35が頂面になると、錐状突出し部27の変形強度がさらに改善され、蓋板10をゆっくり折曲げても、錐状突出し部27に変形が起こり難くなる。
【0035】
図30〜
図32は、同じく三角形の傾斜面の吐出口29が形成されるものであって、錐状突出し部27の両側の三角形の板状部が、上面に位置する三角形の傾斜面34と交わるようになっている。そして両側の三角形の頂点と上面の三角形の板状部34の頂点が互いに当接部28のところで交わり、ここが応力集中点になる。従って折曲げ線25を中心として蓋板10を折曲げると、応力集中点を構成する当接部28のところで破断し、吐出口29が形成される。
【0036】
このように上面に傾斜した三角形34を配置した錐状突出し部27にすると、破断し易さが改善され、蓋板10を折曲げて吐出口29を開口させる際に、蓋板10をゆっくり折曲げても、確実に開封動作が行なわれる。すなわち錐状突出し部27の両側の三角形が
図24〜
図26のように直線状の稜線で交わる構成の場合には、錐状突出し部27が沈み込み易くなるために、ゆっくりと開くのには適していない。これに対して
図30〜
図32に示す構成は、蓋板10をゆっくり折曲げても、確実に開封動作が達成される利点をもたらす。
【0037】
次に
図33〜
図35の構成について説明する。この構成は、錐状突出し部27の両側の板状部の根元側の部分を円弧状にし、突部14の前端部の傾斜面26に円弧状に交わるようにしたものである。このように錐状突出し部27の根元側を円弧状にすることによって、錐状突出し部27が根元側の3次元曲面から開口29側の平面形状へと徐変し、変形歪を吸収し易い形状になって、歪が生じ難くなる。従って、蓋板10を折曲げるときに、錐状突出し部27が変形することなく、当接部28において応力の集中が起こり、当接部28が破断して吐出口29が確実に形成される。
【0038】
図36〜
図38は、突部14の傾斜面26に形成される錐状突出し部27の構造をさらに改善し、錐状突出し部27を全体して円弧状面から構成するとともに、上面には前端側が下降した三角形の傾斜面34を連設している。そしてこのような錐状突出し部27の当接部28のところで破断を行なったときに形成される吐出口29が、
図37に示すように五角形になっており、上側の部分が三角形であって下側の部分が四角形であり、これら2つの形状を組合わせた五角形の吐出口29が形成されるようにしている。このような構成は、良好な開封性が得られる。すなわち吐出口29が三角形の場合には、破断開始時点においては容器の折畳み角度が大きく、開口するように錐状突出し部27を引張る力が吐出口29側に十分伝達されるとともに、引張り力も大きい。ところが折畳みが進行して折畳み角度が小さくなると、折る力が吐出口29側に伝わり難くなり、引張ろうとする力が小さくなる。これは引張る力が容器の長手方向の両端に向うのに対して、吐出口29はそれと90度異なる方向へ破断が進行していくことによる。そこでここでは吐出口29を途中から容器の折曲げ方向と同一として良好な開封性を可能にしている。
【0039】
図39〜
図41に示す錐状突出し部27は、全体がほぼ円弧状をなす曲面によって構成されるとともに、錐状突出し部の先端側の上端に短い稜線が形成され、この稜線は円弧面に徐変している。そして錐状突出し部27はそのほぼ全周において曲線で傾斜面26に交わっている。すなわちこの構成は、
図36〜
図38の錐状突出し部27にさらに改善を加えたものである。
図36〜
図38の場合は、錐状突出し部27の上面の三角形34が傾斜面26と線で交わる構成にしている。そのために蓋板10を折曲げると、傾斜面26と破断開始点28とをつなぐ形状が三角形34であるため、錐状突出し部27の上面の三角形34と傾斜面26とが線で交わるようになり、この三角形34の部分と円弧状の傾斜面26との交わり位置で歪が生じ易い。そこで
図39〜
図41においては、錐状突出し部27の上面の三角形34を1本の稜線に置換えることで、錐状突出し部27の上部の稜線と傾斜面26との交わり形状を点接続に変更することができるから、傾斜面26において円弧で変形歪を吸収するという効果を得ている。
【0040】
次に別の実施の形態を
図42〜
図44によって説明する。この実施の形態は、
図39〜
図41の実施の形態にさらに改良を加えたものである。ここでは、ほぼ円弧状をなす錐状突出し部27であって、傾斜面26と接する部分が円弧状に構成された錐状突出し部27としている。そして両側の錐状突出し部の壁面が、前方に向って下方に傾いている稜線で交差するようになっており、この稜線の先端側が当接部28になっている。すなわち破断開始点となる応力集中点28から傾斜面26に向って稜線が立上がっており、このような構成は、とくに当接部28における応力集中が効果的に行なわれ、小さな力を加えるだけでより確実に吐出口29が形成され、良好な開封性が得られる。
【0041】
次に
図45〜
図47によってさらに別の錐状突出し部の構成について説明する。この錐状突出し部は、その上面が直線状をなす稜線から構成されるとともに、稜線の傾斜面26側の部分に上方突部42を構成している。このような上方突部42を形成した錐状突出し部27は、蓋板10を折曲げる際に傾斜面26の上方に引上げられるようになり、これによって破断開始点28への応力集中が高まり、破断し易さが改善された。従って当接部28における開封のための応力の集中がさらに確実に行なわれるようになる。
【0042】
次に
図48〜
図50によってさらに別の錐状突出し部27について説明する。この錐状突出し部27は、全体としてはほぼ円弧状をなし、根元側の部分が円弧面によって傾斜面26に接している。そしてとくに応力集中点を構成する当接部28の部分から下方に向って開口される吐出口29は、上側の部分がほぼ三角形であって下側の部分が四角形の形状をなすとともに、上側の三角形の両辺が内側へ凹んだ形状成している。このような構造によっても、錐状突出し部27の吐出口29の破断面の端面において、破断開始点である当接部28は、その他の端面より肉厚が厚く形成されていたが、逆R状に凹ますことによって、概ね他の端面と比べて均一に成形できるようになり、さらに破断開始点である当接部28の破断し易さが向上している。従って蓋板10を折曲げる際における当接部28での応力の集中の効果がさらに改善される。
【0043】
次にさらに別の実施の形態を
図51〜
図55によって説明する。この実施の形態は、とくに
図51、
図52に示すように、蓋板10上に配置される突部14が、折曲げ位置25の両側で互いに異なっている。これは、隔壁12の両側の部分の2つの収納空間の形状をそれぞれL字状に配置することによって、粘度の高い内容物であっても充填することが可能になる。すなわち
図1、
図2に示す構造の場合には、2分割された内部の空間は細長い形状をしているために、粘度が高い内容物を充填する際に複数の充填ノズルが必要となる恐れがある。ところがペースト状物質を含む液体は、放射状に拡がる性質があるために、内部空間をL字型ポケットとし、内容物の収納部の長さを短縮化して、単一のノズルによる充填の可能性を拡大している。
【0044】
また
図53〜
図55に示すように、折曲げ線25に沿って配置され、一対の吐出口29をそれぞれ形成する互いに両側に隣接する突部14の形状も異なっている。すなわち
図53において右側の一方の突部14は、背面側に長く延びており、とくに
図51、
図52に示すように、後側に緩やかな傾斜面18および平坦面19を備えている。これに対して
図53において左側であって隣接する他方の突部14は、円弧状にずんぐりしており、長さ方向の寸法が小さくなっている。このように背面方向の寸法が小さくなると、天面が薄くなって強度のバランスが崩れる可能性があるために、とくに短い突部14については、背面側の部分を円弧状にするとともに、さらにこの突部14の上端を
図54に示すように、長さ方向と直交する幅方向の断面の頂部を小さな円弧形状から構成し、このような円弧が両側の比較的大きな円弧と連続する曲線によって連結される構造としている。これによって、互いに両側に隣接し、かつ突部14の形状が異なっても、それぞれの吐出口29から円滑に内容物が吐出されることになる。
【0045】
図56〜
図59は、さらに別の実施の形態を示している。この実施の形態の特徴は、折曲げ線25に沿って、その両側にそれぞれ配設される突部14の形状に若干の変更を加えたものである。すなわちこれらの突部14は、その折曲げ線25から見た形状が、
図58に示すように、突部14の長さ方向と直交する幅方向においてほぼ半円形の形状を成している。しかもこのような半円形の断面形状を有する突部14の傾斜面26側の前端側の部分にすぼめ部41をそれぞれ形成した形状となっている。
【0046】
このような構成によると、とくに突部14の形状を平凡な半円形状としながら、しかも高い剛性を付与することが可能になり、これによって突部14の変形を防止し、円滑な吐出を可能にすることになる。
【0047】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における蓋板10の寸法、あるいはまたバッグ11の容量等については各種の変更が可能である。またこのような容器によって充填される物質については、各種の物質に広く適用可能であって、特定の食品等に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、1回の使用量に対応する量の2種類の内容物を充填して供給するように用いられる分配包装体として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 蓋板
11 バッグ
12 隔壁
14 突部
18 緩やかな斜面
19 平坦面
20 凹溝
21 円弧状リブ
22 突部
25 折曲げ位置(折曲げ線)
26 傾斜面
27 錐状突出し部(くちばし状突出し部)
28 当接部(応力集中点)
29 吐出口
34 三角形の傾斜面
35 三角形の平坦面
41 すぼめ部
42 上方突部
51 表面層
52 内層
53 最内層
56 表面層
57 内層
58 ハーフカット
60 内容物