特許第6348296号(P6348296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348296
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】セグメント搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   E21D11/40 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-30421(P2014-30421)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155602(P2015-155602A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】額 周平
(72)【発明者】
【氏名】酒井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】折出 健一
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196443(JP,A)
【文献】 特開平09−256797(JP,A)
【文献】 特開2001−182498(JP,A)
【文献】 特開平10−325300(JP,A)
【文献】 実開平07−012599(JP,U)
【文献】 特開平11−182199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00〜 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の作業デッキに装備されるセグメント搬送装置であって、
セグメントを載置支持可能なセグメント受台と、
前記セグメント受台を、セグメントをエレクタに受け渡す受渡し位置と、この受渡し位置から後方へ所定距離揺動させ且つセグメント搬送手段からセグメントを受け取る受取り位置とに前後揺動可能に支持する揺動支持機構とを備え、
前記揺動支持機構は、その上端部が作業デッキに回動可能に連結され、
前記揺動支持機構が前後方向に回動することで前記セグメント受台が前後方向に揺動するように構成されたことを特徴とするセグメント搬送装置。
【請求項2】
前記揺動支持機構は、セグメント受台の左右両端部に連結された左右1対のアームと、これらアームの上端部が夫々連結され且つ前記作業デッキに固定された左右1対の支持フレームとを有することを特徴とする請求項1記載のセグメント搬送装置。
【請求項3】
前記アームの各々は前後方向に所定間隔空けて平行に配置した前後1対のアーム部材からなり、各アーム部材の上端部は前記支持フレームに左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結され、各アーム部材の下端部はセグメント受台に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結されたことを特徴とする請求項2に記載のセグメント搬送装置。
【請求項4】
前記セグメント受台の左右両端部が左右1対の平行リンク機構で前後揺動可能に支持されたことを特徴とする請求項3に記載のセグメント搬送装置。
【請求項5】
前記左右1対の平行リンク機構を介してセグメント受台を揺動駆動する為の左右1対の油圧シリンダを設けたことを特徴とする請求項4に記載のセグメント搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の作業デッキに装備されるセグメント搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機には、トンネルの内面をセグメントにより覆工するエレクタが装備され、このエレクタによりセグメントを組み立てるセグメント組立位置にセグメントを搬送するセグメント搬送装置が、シールド掘進機内のエレクタの後方付近に設けられる。
【0003】
このセグメント搬送装置には、一般に、台車方式とトロリ方式の2つの方式がある。
台車方式では、後方台車の付近からセグメント組立位置まで覆工済みのセグメント底部近傍に走行用レールが設置され、この走行用レール上を走行する台車によりセグメントを搬送する。トロリ方式では、後方台車の付近からセグメント組立位置までトンネル内の空間中段部にレールが設置され、このレールに吊り下げた移送台にセグメントを載置して搬送する。 尚、台車方式には、覆工済みのセグメントの底部上を自走する自走台車によりセグメントを搬送する方式もある。
【0004】
ここで、シールド掘進機内のエレクタの後側付近においては、多数の太い油圧ホース類が後方へ延び、エレクタの後側近傍位置にはセグメントの形状を保持する形状保持装置が設置され、シールド掘進機内の空間中段部には排土手段や排泥手段が後方上りの傾斜状に配設され、また、セグメント組立等に関わる作業者の足場としての作業デッキもあるため、スペースの余裕がなく、機器や装置類の設置の自由度が著しく制約されている。
【0005】
特許文献1には、走行用レールを用いたセグメント搬送装置が開示されている。このセグメント搬送装置においては、覆工済みセグメントの底部近傍にレールを設置し、レールの先端側に前方下りの傾斜部分を形成し、走行用レールに沿って移動する移動車を設け、この移動車の昇降可能なセグメント支持部にセグメントを載置して走行用レールに沿って前方移動させ、レールの傾斜部分を利用してセグメントとセグメント支持部を底部近傍まで下降させてエレクタに受け渡す。
【0006】
特許文献2には、ホイストレールを用いたセグメント搬送装置が開示されている。このセグメント搬送装置においては、後方台車からセグメント組立位置までトンネル内の空間中段部に左右1対(2条)のホイストレールを設置し、これらホイストレールに吊持した状態で自走可能なセグメント移送装置を設け、立坑側から後方台車の下側まで敷設されたレール上を走行するセグメント搬送台車によりセグメントを搬入し、このセグメント搬送台車上のセグメントをセグメント移送装置のフォーク部分に掬い上げ、上記のセグメント移送装置によりホイストレールに沿ってセグメント組立位置まで搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−317500号公報
【特許文献2】特開平9−256797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の台車方式のセグメント搬送技術や特許文献1のセグメント搬送装置では、覆工済のセグメントの底部近傍に、長い走行用レールを設置しなければならないこと、セグメント形状保持装置等と干渉する場合には走行用レールを設置できないこと、シールド掘進機が一定距離前進する毎に走行用レールを前方へ移設しなければならないこと等の問題がある。
【0009】
従来のトロリ方式のセグメント搬送技術や特許文献2のセグメント搬送装置では、セグメント組立位置から後方台車までホイストレールを設置する必要があること、シールド掘進機内の空間中段部にホイストレール設置用スペースを取るためスペース的に不利であること、ホイストレールが排土装置等と干渉する場合にはホイストレールを設置できないこと、等の問題がある。
【0010】
レール上又はセグメント上を自走する自走台車によるセグメント搬送技術の場合、トンネルに勾配があり、しかもトンネルの勾配が大きくなると、自走台車がレール又はセグメントに対してスリップするため、搬送不可能になる場合がある。
【0011】
本発明の目的は、作業デッキに設置可能なセグメント搬送装置を提供すること、レールを必要としない簡単な構造で僅かなスペースに設置可能なセグメント搬送装置を提供すること、曲進時や勾配付きトンネルでも何ら支障なくセグメントを搬送可能なセグメント搬送装置を提供すること等である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のセグメント搬送装置は、シールド掘進機の作業デッキに装備されるセグメント搬送装置であって、セグメントを載置支持可能なセグメント受台と、前記セグメント受台を、セグメントをエレクタに受け渡す受渡し位置と、この受渡し位置から後方へ所定距離揺動させ且つセグメント搬送手段からセグメントを受け取る受取り位置とに前後揺動可能に支持する揺動支持機構とを備え、前記揺動支持機構は、その上端部が作業デッキに回動可能に連結され、前記揺動支持機構が前後方向に回動することで前記セグメント受台が前後方向に揺動するように構成されたことを特徴としている。
【0013】
請求項2のセグメント搬送装置は、請求項1の発明において、前記揺動支持機構は、セグメント受台の左右両端部に連結された左右1対のアームと、これらアームの上端部が夫々連結され且つ作業デッキに固定された左右1対の支持フレームとを有することを特徴としている。
【0014】
請求項3のセグメント搬送装置は、請求項2の発明において、前記アームの各々は前後方向に所定間隔空けて平行に配置した前後1対のアーム部材からなり、各アーム部材の上端部は前記支持フレームに左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結され、各アーム部材の下端部はセグメント受台に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結されたことを特徴としている。
【0015】
請求項4のセグメント搬送装置は、請求項3の発明において、前記1対のアーム部材を含む平行リンク機構が構成され、前記セグメント受台の左右両端部が左右1対の平行リンク機構で前後揺動可能に支持されたことを特徴としている。
【0016】
請求項5のセグメント搬送装置は、請求項4の発明において、前記左右1対の平行リンク機構を介してセグメント受台を揺動駆動する為の左右1対の油圧シリンダを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、セグメント受台と、このセグメント受台をセグメントを受け取る受取り位置と、セグメントを受け渡す受渡し位置とに前後揺動可能に支持する揺動支持機構とを有するため、レールを省略した簡単な小型の構造でスペース的にも有利なセグメント搬送装置が得られる。
【0018】
しかも、このセグメント搬送装置は作業デッキに装備されるため、シールド掘進機の前進移動に追従して移動するため、シールド掘進機の前進移動に応じて移設する必要がないだけでなく、曲進時にも直進時と同様にセグメントの搬送が可能である。
【0019】
請求項2の発明によれば、揺動支持機構は、左右1対のアームと、左右1対の支持フレームとを有するため、セグメント受台の左右両端部を支持することができ、セグメント搬送の安定性に優れる。
【0020】
請求項3の発明によれば、各アームは、前後方向に所定間隔空けて平行に配置した前後1対のアーム部材からなり、アーム部材の上端部は支持フレームに左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結され、アーム部材の下端部はセグメント受台に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結されているため、セグメント受台は姿勢を保持した状態で、前後揺動可能になる。
【0021】
請求項4の発明によれば、前記1対のアーム部材を含む平行リンク機構が構成され、セグメント受台の左右両端部が左右1対の平行リンク機構で前後揺動可能に支持されているため、揺動中に姿勢変化がなく、セグメント受台が左右方向へズレ動くこともないので、セグメントを安定的に搬送できる。また、トンネルに上り勾配や下り勾配がある場合にも、セグメントを搬送可能である。
【0022】
請求項5の発明によれば、前記左右1対の平行リンク機構を介してセグメント受台を揺動駆動する為の左右1対の油圧シリンダを設けたので、駆動手段を簡単化し、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例に係るシールド掘進機の概略側面図である。
図2】前記シールド掘進機の後胴とその内部に装備したシールドジャッキ、作業デッキ、エレクタ、セグメント搬送装置等の断面図である。
図3図2に示すセグメント搬送装置の要部の拡大図である。
図4図2のIV−IV線断面図である。
図5】セグメント受台を受取り位置にした状態の図2相当図である。
図6】セグメント受台を受渡し位置にした状態の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態について、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例は、矩形断面のトンネルを掘削するシールド掘進機に本発明のセグメント搬送装置を適用した場合の一例であり、このセグメント搬送装置について、図1図6に基づいて説明する。尚、以下の説明において、トンネル掘進方向を前方、この前方に向って左右方向を左右方向として説明する。
【0026】
図1図2に示すように、シールド掘進機1は、前胴2aと後胴2bを含む胴部材2と、この胴部材2の前端側に装備されたカッターヘッド3と、カッターヘッド3の後側且つ前胴2aの前端部分の内側のカッターチャンバー4と、複数のシールドジャッキ5と、前胴2a内に装備された種々の機器(複数の中折れジャッキ、複数のカッター駆動モータを含むカッター旋回駆動機構、掘削した土砂や岩石片を排出する排土手段又は排泥手段等々)と、後胴2bの前端部の内面に沿うように固定された環状ウェブ6と、この環状ウェブ6に装備された支柱フレーム7と、この支柱フレーム7の中段部から後方へ延びる作業デッキ8などを備えている。
【0027】
更に、上記シールド掘進機1は、環状ウェブ6の後方近傍に配設された旋回リング9であって複数のローラにより回転自在に支持された旋回リング9と、この旋回リング9を回転駆動する回転駆動手段(図示略)と、旋回リング9に装備されたエレクタ10であってトンネルTの内面にセグメントSを覆工するエレクタ10と、このエレクタ10の後側近傍において1リング分のセグメントSの内周面を枠状体11aを介して押圧することでセグメントSの形状を保持する形状保持装置11等を備えている。このシールド掘進機1は、矩形断面のトンネルTを掘削するもので、カッターヘッド3は矩形断面のトンネル掘削用の特殊構造のものであり、胴部材2は断面矩形(但し、4つの角部に丸みがある)のものである。
【0028】
次に、立坑からセグメント搬送手段(図示略)で搬送されて搬入されたセグメントSをセグメント搬送手段から受け取ってエレクタ10に受け渡すセグメント搬送装置20について説明する。尚、前記のセグメント搬送手段としては、例えば、図5に示すように、左右1対のトロリレール13に吊持されて走行する移送台車13aでセグメントSを吊持して搬送する搬送手段が採用されている。但し、トンネルT内の底部セグメントS上を走行する走行台車にセグメントSを載置して搬送する搬送手段又はその他の搬送手段が採用される場合もある。
【0029】
図2図4に示すように、このセグメント搬送装置20は、エレクタ10の後側付近において作業デッキ8に装備され、セグメント搬送手段からセグメントSを受け取り、そのセグメントを前方へ所定距離揺動にて移送してエレクタ10に受け渡すものである。
【0030】
このセグメント搬送装置20は、セグメントSを載置支持可能なセグメント受台30と、このセグメント受台30を、エレクタ10にセグメントSを受け渡す受渡し位置P1と、この受渡し位置P1から後方へ所定距離揺動させた受取り位置P2であってセグメント搬送手段からセグメントSを受け取る受取り位置P2とに前後揺動可能に支持する揺動支持機構40とを備えている。
【0031】
前記セグメント受台30は、セグメントSの左右幅とセグメントSの前後幅以上の前後幅を有する平面視矩形で且つ所定の強度・剛性を有する台版状のもので、図4に示すセグメントSの長手方向(周方向)を左右方向に向けた状態で、それらセグメントSを載置可能なものである。
【0032】
揺動支持機構40は、セグメント受台30の左右両端部に連結された左右1対のアーム41と、これらアーム41の上端部が夫々連結される左右1対の支持フレーム43であって作業デッキ8に固定された左右1対の支持フレーム43とを有する。
左右1対の支持フレーム43は、セグメント受台30の左右両端部に対応する左右方向位置において、作業デッキ8の下面に前後方向向きに配設されて作業デッキ8に固定されている。
【0033】
前記各アーム41は前後方向に所定間隔空けて平行に配置した前後1対のアーム部材42からなり、各アーム部材42の上端部は支持フレーム43に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結され、各アーム部材42の下端部はセグメント受台30に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結されている。
【0034】
アーム部材42は、角パイプを素材として立て向きの「へ」字状に構成されている。アーム部材42の上部側約1/3部分と残部側約2/3部分との境界部に後方に凸となる屈曲部42aが形状され、それら両者間の開角が例えば約110〜140°の範囲に入る角度に設定されている。このような屈曲部42aを設ける理由については後述する。但し、前記屈曲部42aは省略し、アーム部材42はストレートの部材で構成してもよく、角パイプ以外の素材で構成してもよい。
【0035】
前記支持フレーム43は、その前端部分の下面部に固定されたボックス状の連結部材43aを有し、各アーム部材42の上端部に固着された筒部材44と、この筒部材44に挿通させた左右方向向きの水平な支持ピン45とが設けられ、支持ピン45の両端部を連結部材43aで支持することで、各アーム部材42の上端部が連結部材43に回動自在に連結されている。尚、アーム部材42と筒部材44との連結を補強する補強リブ46も設けられている。また、アーム部材42の上端部を連結部材43aに連結する機構は、前記に限るものではなく、左右方向向きの水平な回転軸心回りに回動可能に連結する種々の連結機構を採用可能である。
【0036】
左側の1対のアーム部材42の各々において、アーム部材42の下端部に固着された連結片47と、この連結片47に挿通させた左右方向向きの水平な支持ピン48を介して、アーム部材42の下端部がセグメント受台30の左端部に回動自在に連結されている。右側の1対のアーム部材42の各々において、アーム部材42の下端部に固着された連結片47と、この連結片47に挿通させた左右方向向きの水平な支持ピン48を介して、アーム部材42の下端部がセグメント受台30の右端部に回動自在に連結されている。
【0037】
こうして、セグメント受台30の左右両側に、1対のアーム部材42を含む平行リンク機構40Aが夫々構成され、セグメント受台30の左右両端部が左右1対の平行リンク機構40Aで前後揺動可能に支持されている。そして、これら左右1対の平行リンク機構40Aを介してセグメント受台30を前後に揺動駆動する為の左右1対の油圧シリンダ50が設けられている。尚、形状保持装置11の枠状体11aのうちの、セグメント受台30に対応する部分の上下幅をその他の部分の上下幅よりも幾分小さく構成して、セグメント受台30と枠状体11aと干渉が生じないようにし、セグメント受台30は枠状体11aよりも上側の空間を揺動移動するようになっている。
【0038】
各油圧シリンダ50のシリンダ本体51の上端部の連結金具は、対応する左側又は右側の支持フレーム43の後端部の下端部に固着されたブラケット43bに左右方向向きの水平な支持ピン51aを介して回動可能に連結され、この油圧シリンダ50のピストンロッド52の先端部(下端部)の連結金具は、対応する左側又は右側の且つ後側のアーム部材42の屈曲部42aに固着されたブラケット42bに左右方向向きの水平な支持ピン51bを介して回動可能に連結されている。油圧シリンダ50は前方下りの傾斜姿勢(水平面に対する傾斜角は例えば40〜45°)に配設されている。
【0039】
尚、図4には、エレクタ10の腕部材10aであって油圧シリンダ10bで屈伸される腕部材10aと、この腕部材10aの先端部に装備されたセグメント把持機構10cも図示されている。また、排土手段のスクリューコンベア12又は排泥手段の排泥管12が、作業デッキ8の前部付近の空間を後方上り傾斜状に配設されている。
【0040】
次に、以上説明したセグメント搬送装置20の作用、効果について、図2図5図6に基づいて説明する。セグメント受台30は左右1対の平行リンク機構40Aで前後揺動自在に支持され、図2に鎖線で図示のようにエレクタ10にセグメントSを受け渡す受渡し位置P1と、この受渡し位置P1から後方へ所定距離離隔した受取り位置P2であって、図2図5に実線で示すようにセグメント搬送手段からセグメントSを受け取る受取り位置P2とに亙って、前後揺動にて位置切換え自在になっている。
【0041】
セグメント受台30にセグメントSを受け取る際には、図5に示すように、左右の油圧シリンダ50のピストンロッド52を収縮状態にして左右1対の平行リンク機構40Aを後方へ揺動させて、セグメント受台30を受取り位置P2に位置させた状態で、セグメント搬送手段からセグメント受台30にセグメントSを受け取る。
【0042】
次に、左右の油圧シリンダ50のピストンロッド52を伸長させてセグメント受台30を前方へ揺動させて受渡し位置P1に切換えた状態において、エレクタ10のセグメント把持機構10cをセグメントSに接近させてセグメントSを把持し、エレクタ10によりセグメントSを組み付け位置へ移動させて組み付ける。
【0043】
このセグメント搬送装置20によれば、セグメント受台30と、このセグメント受台30を受取り位置P2と受渡し位置P1とに前後揺動自在に支持する揺動支持機構40とを有するため、レールを省略した簡単な小型の構造でスペース的にも有利なセグメント搬送装置20が得られる。
【0044】
しかも、このセグメント搬送装置20は作業デッキ8に装備され、シールド掘進機1の前進移動に追従して移動するため、シールド掘進機1の前進移動に応じて移設する必要がないだけでなく、左右方向への曲進時にも直進時と同様にセグメントSの搬送が可能である。揺動支持機構40は、左右1対のアーム41と、左右1対の支持フレーム43とを有するため、セグメント受台30の左右両端部を支持することができ、セグメント搬送の安定性に優れる。
【0045】
各アーム41は、前後に所定間隔空けて平行に配置した前後1対のアーム部材42からなり、アーム部材42の上端部は支持フレーム43に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結され、アーム部材42の下端部はセグメント受台30に左右方向向きの水平軸心回りに回動自在に連結されているため、セグメント受台30は水平姿勢を保持した状態で、前後揺動可能になっている。
【0046】
前記1対のアーム部材42を含む平行リンク機構40Aが構成され、セグメント受台30の左右両端部が左右1対の平行リンク機構40Aで前後揺動可能に支持されているため、揺動中に姿勢変化がなく、セグメント受台30が左右方向へズレ動くこともないので、セグメントSを安定的に搬送できる。また、トンネルTに上り勾配や下り勾配がある場合にも、セグメントSを搬送可能である。但し、この場合、セグメント受台30は作業デッキ8と平行姿勢を維持する。
【0047】
前記左右1対の平行リンク機構40Aを介してセグメント受台30を揺動駆動する為の左右1対の油圧シリンダ50を設けたので、駆動手段を簡単化し、小型化し、作動高速化を図ることができる。アーム部材42に後方へ凸となる屈曲部42aを形成したため、セグメント受台30を受渡し位置P1に位置させた際に、エレクタ10のセグメント把持機構10cとアーム部材42とが干渉しにくくなる。しかも、1対のアーム部材42の下端部をセグメント受台30の後半側部分に連結したため、セグメント把持機構10cとアーム部材42とが一層干渉しにくくなる。
【0048】
しかも、前記の屈曲部42aに油圧シリンダ50のピストンロッド52の先端部を連結したので、水平面に対する油圧シリンダ50の傾斜角を小さくし、油圧シリンダ50によりアーム部材42を駆動する前後方向駆動力を大きくできるから、油圧シリンダ50の小型化を図ることができる。
【0049】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)前記セグメント搬送装置20は、円形断面のトンネルやその他の断面形状のトンネルを掘削するシールド掘進機にも同様に適用することができる。
【0050】
2)前記支持フレーム43を作業デッキ8とは別部材で構成したが、作業デッキ8を構成する部材を兼用して支持フレーム43を構成してもよい。
3)アーム部材42の屈曲部42aを設ける代わりに、アーム部材42に湾曲部を設けてもよい。
【0051】
4)前記実施例では、形状保持装置11の枠状体11aのうちの、セグメント受台30に対応する部分の上下幅をその他の部分の上下幅よりも小さく構成しているが、次のように変更してもよい。アーム部材42の長さを短くし且つアーム部材42の前後揺動角を大きくすることで、セグメント受台30の前後揺動の移動距離を確保し、形状保持装置11の枠状体11aは全周に亙って同じ上下幅のものに構成する。
【0052】
5)その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記実施例に部分的な変更を付加した形態で本発明を実施可能であり、本発明はそれらも包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
シールド掘進機1のエレクタ10の後側付近においてセグメント搬送手段から受け取ったセグメントSをエレクタ10に受け渡し可能なセグメント搬送装置20を提供する。
【符号の説明】
【0054】
1 シールド掘進機
8 作業デッキ
P1 受渡し位置
P2 受取り位置
20 セグメント搬送装置
30 セグメント受台
40 揺動支持機構
40A 平行リンク機構
41 アーム
42 アーム部材
43 支持フレーム
50 油圧シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6