特許第6348300号(P6348300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348300オレフィン重合に用いる予備重合触媒成分の製造方法および当該予備重合触媒成分を用いたオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348300
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】オレフィン重合に用いる予備重合触媒成分の製造方法および当該予備重合触媒成分を用いたオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/655 20060101AFI20180618BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C08F4/655
   C08F10/00 510
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-35180(P2014-35180)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-160858(P2015-160858A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭行
(72)【発明者】
【氏名】田村 直也
(72)【発明者】
【氏名】金子 英之
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−208717(JP,A)
【文献】 特開2000−327707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4,6−246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、以下の2つの工程を経て予備重合させることを特徴とする、オレフィン重合に用いる予備重合触媒成分(Sc)の製造方法。
(1)溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.001mmol/L以上1mmol/L以下の条件下、固体触媒成分(Sa)に、炭素数2以上のオレフィンを供給し、固体触媒成分(Sa)の重量に対して0.15倍以上10倍以下の量を予備重合させて予備重合触媒成分(Sb)を得る工程
(2)溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が10mmol/L以上の条件下、上記予備重合触媒成分(Sb)に、炭素数2以上のオレフィンを供給し予備重合させて予備重合触媒成分(Sc)を得る工程
【請求項2】
上記遷移金属錯体(A)が周期表第4族の遷移金属化合物を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の予備重合触媒成分(Sc)の製造方法。
【請求項3】
上記固体触媒成分(Sa)が有機アルミニウムオキシ化合物を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の予備重合触媒成分(Sc)の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の予備重合触媒成分(Sc)の存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合に用いる予備重合触媒成分媒の製造方法およびこれに用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、反応器内でのファウリングを抑制する予備重合触媒成分の製造方法およびこれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オレフィン(共)重合体を製造する触媒として、ジルコノセンなどの遷移金属錯体と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)などの助触媒成分とからなるオレフィン重合用触媒が知られており、中でも、スラリー重合あるいは気相重合を行う場合には、一般に、生成する重合体の粉体性状を良化させるため、遷移金属錯体や有機アルミニウムオキシ化合物をシリカゲルなどの固体状担体に担持させた固体触媒が用いられている(非特許文献1)。
【0003】
加えて、重合反応において反応器壁面に重合体が付着するファウリングや反応器内でのポリマー塊形成を抑制する方法として、固体触媒にオレフィンを予備重合させる方法(特許文献1)、反応系内に特定の化合物を添加する方法(特許文献2、3)、などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−152608号公報
【特許文献2】特開2000−327707号公報
【特許文献3】特開2012−117043号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem. Rev. 2005, 105, p.4073-4147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような固体触媒存在下にオレフィンを導入し、予備重合反応を行なうと、反応後の溶媒が濁り、反応器内でのファウリングが確認されることがあった。
ファウリングは反応器壁面からの除熱効率を低下させるため、反応温度の制御が難しくなり、また反応器の清掃による生産性の低下を招くことがある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、オレフィン(共)重合体の製造において、反応器内でのファウリングを防止できるオレフィン重合に用いる予備重合触媒成分の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
本発明者らは、上記状況を鑑み鋭意研究した結果、予備重合触媒成分の製造工程において、特定の製造方法をとることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は次の[1]〜[4]に関する。
[1]遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、以下の2つの工程を経て予備重合させることを特徴とする、オレフィン重合に用いる予備重合触媒成分(Sc)の製造方法。
(1)溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.001mmol/L以上1mmol/L以下の条件下、固体触媒成分(Sa)に、炭素数2以上のオレフィンを供給し、固体触媒成分(Sa)の重量に対して0.15倍以上10倍以下の量を予備重合させて予備重合触媒成分(Sb)を得る工程
(2)溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が10mmol/L以上の条件下、上記予備重合触媒成分(Sb)に、炭素数2以上のオレフィンを供給し予備重合させて予備重合触媒成分(Sc)を得る工程
[2]上記遷移金属錯体(A)が周期表第4族の遷移金属化合物を含んでなることを特徴とする[1]に記載の予備重合触媒成分(Sc)の製造方法。
[3]上記固体触媒成分(Sa)が有機アルミニウムオキシ化合物を含んでなることを特徴とする[1]または[2]に記載の予備重合触媒成分(Sc)の製造方法。
[4][1]〜[3]のいずれかの項に記載の予備重合触媒成分(Sc)の存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、オレフィン重合に用いる予備重合触媒成分の製造工程において反応器内でのファウリングを防止することができ、このような触媒成分を用いてオレフィン重合を行うと、安定してオレフィン重合を実施できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るオレフィン重合に用いる予備重合触媒成分の製造方法、および当該触媒成分を用いたオレフィン重合体の製造方法について具体的に説明する。
本発明において「重合」という語は、オレフィンの単独重合のみならず二種以上のオレフィンの共重合を包含した意で用いられることがあり、また「重合体」という語は単独重合体のみならず共重合体を包含した意で用いられることがある。
【0012】
以下に、まず本発明に係る予備重合触媒成分を形成する各成分について説明する。
本発明に係るオレフィン重合に用いる予備重合触媒成分の製造方法において、固体触媒成分(Sa)を構成する遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)は何ら限定されるものではないが、好適な例を以下に示す。
【0013】
<遷移金属錯体(A)>
本発明に係る固体触媒成分(Sa)を構成する遷移金属錯体(A)としては、下記一般式(I)で表されるメタロセン化合物が挙げられる。
【0014】
【化1】
(式中、Mは遷移金属元素であり、Lは遷移金属に配位する中性またはアニオン性配位子であり、xはLの個数を示し、遷移金属の原子価を満たす数であり、xが2以上のときは複数のLは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
一般式(I)中、Mとしては、周期律表第4〜10族から選ばれる遷移金属元素が挙げられ、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム等の周期律表第4族の遷移金属元素、バナジウム、およびタンタル等の周期律表第5族の遷移金属元素、クロム等の周期律表第6族の遷移金属元素、マンガン等の周期律表第7族の遷移金属元素、鉄等の周期律表第8族の遷移金属元素、コバルト等の周期律表第9族の遷移金属元素、ニッケルあるいはパラジウム等の周期律表第10族の遷移金属元素であり、好ましくは、周期表第4族の遷移金属であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムである。
xは遷移金属に配位する配位子Lの個数を示し、遷移金属の原子価を満たす数である。
【0016】
Lは遷移金属に配する中性またはアニオン性配位子であり、例えばシクロペンタジエニル骨格を有する配位子が挙げられる。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子Lとしては、例えばシクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などを例示することができる。配位子L中の水素原子は炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基などで置換されていてもよく、xが2以上の場合は配位子L同士が炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる2価の基で架橋されていてもよい。
【0017】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、遷移金属原子M と、B、C、N、O、P、S、ハロゲン、水素などの原子で、電荷の状態が中性またはアニオンの形式で結合する配位子が挙げられる。
【0018】
Bで結合している配位子の例としてはアルキルボラン、アリールボラン、アルキルボレート、アリールボレート、ボラベンゼンなどが挙げられる。
Cで結合している配位子の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;ベンジル基、ネオフィル基などのアラルキル基;共役ジエン化合物残基;π−アリールなどが挙げられる。
【0019】
Nで結合している配位子の例としては、アミノ、アミド、スルホンアミド、イミド、イミノアミジン、イミダゾール、アミデート、イミデートなどが挙げられる。
Oで結合している配位子の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基などのアリーロキシ基; p−トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基などのスルホナト基;カルボニル、エステル、カルボキシル、オキシム、ケトアルコキシなどが挙げられる。
【0020】
Pで結合している配位子の例としては、フォスフィン、フォスファイト、フォスフェートなどが挙げられる。
Sで結合している配位子の例としては、フルフィド、チオケトン、チオケトエステル、チオフェノキシド、チオカルボンキシル基、ジチオカルバメート基などが挙げられる。
【0021】
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
シクロペンタジエニル骨格以外の配位子を有する遷移金属錯体(A)として、特開2013−224408号公報、Chem. Rev. 2003, 103, 283-315などに例示されている遷移金属錯体を用いることもできる。
【0022】
このような一般式(I)で表される遷移金属錯体としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む化合物が好ましく用いられ、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0023】
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド、(メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジーp−トリルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(5−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2,4−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(5−メトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−シクロヘキシル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)シリレンビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)シリレンビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−アセナフトシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、などが挙げられる。
【0024】
以上示すように、本発明で好適に用いられる遷移金属錯体(A)の例を示したが、本発明に係る遷移金属錯体(A)は、上記に例示した化合物に限定されるものではない。
本発明に係る遷移金属錯体(A)としては1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
<固体状担体(S)>
次に、本発明に係る固体触媒成分(Sa)を構成する固体状担体(S)について説明する。
【0026】
本発明に係る固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、後述のような多孔質酸化物、無機塩化物などの無機ハロゲン化物が挙げられる。
【0027】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgO等を使用することができる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0028】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2 、Al(NO3)3 、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0029】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が通常50〜1200m2/g、好ましくは100〜1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3〜30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
【0030】
無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0031】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0032】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。
【0033】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4) 2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。
【0034】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cm3/g以上のものが好ましく、0.3〜5cm3/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20Å〜3×104Åの範囲について測定される。
【0035】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cm3/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、いずれも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0036】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。
【0037】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分け等の処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
有機化合物としては、粒径が1〜300μmの範囲にある顆粒状あるいは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜14のオレフィンを主成分とする(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレン、ジビニルベンゼンを主成分とする(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0039】
また上記の無機または有機の化合物と後述する成分(B)とを接触させたもの、ならびに、特開平11−140113号公報、特開2000−38410号公報、特開2000−95810号公報、国際公開WO2010/55652号パンフレットなどに記載された方法で、後述する成分(B)を不溶化させて得られる固体成分も、固体状担体(S)として用いることができる。
【0040】
成分(B)
本発明に係る固体触媒成分(Sa)は、上記遷移金属錯体(A)および上記固体状担体(S)に加え、必要に応じて、下記に記載の成分(B)をさらに用いることができる。
【0041】
本発明で用いることができる成分(B)は、下記(b−1)〜(b−3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(b−1)下記一般式(II)、(III)または(IV)で表される有機金属化合物、
dmAl(ORenpq・・・(II)
〔一般式(II)中、RdおよびReは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
aAlRf4・・・(III)
〔一般式(III)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Rfは炭素数が1〜15の炭化水素基を示す。〕
grbhst・・・(IV)
〔一般式(IV)中、RgおよびRhは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、MbはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
【0042】
(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(b−3)遷移金属錯体(A)と反応してイオン対を形成する化合物、
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0043】
上記一般式(II)において、RdおよびReは互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基であるが、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などであり、好ましくは、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基である。
【0044】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記一般式(III)において、Rfの炭化水素基としては、上記RdおよびReと同様の炭化水素基が例示される。
【0045】
上記一般式(IV)において、RgおよびRhは互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基としては、上記RdおよびReと同様の炭化水素基が例示される。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0046】
一般式(II)、(III)または(IV)で表される有機金属化合物(b−1)の中では、一般式(II)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
遷移金属錯体(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b−3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
【0049】
本発明においては、遷移金属錯体(A)に加えてアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)を助触媒成分として用いると、非常に高い重合活性を示す。したがって、有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)を成分(B)として用いることが好ましい。
【0050】
<予備重合触媒成分(Sc)の製造方法>
本発明に係るオレフィン重合に用いる予備重合触媒成分(Sc)は、前記遷移金属錯体(A)と前記固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、以下の2つの工程を経て予備重合させることにより製造することができる。
(1)溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.001mmol/L以上1mmol/L以下の条件下、固体触媒成分(Sa)に、炭素数2以上のオレフィンを供給し、固体触媒成分(Sa)の重量に対して0.15倍以上10倍以下の量を予備重合させて予備重合触媒成分(Sb)を得る工程〔第一工程〕
(2)溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が10mmol/L以上の条件下、上記予備重合触媒成分(Sb)に、炭素数2以上のオレフィンを供給し予備重合させて予備重合触媒成分(Sc)を得る工程〔第二工程〕
本発明の製造方法を採用することにより遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を用いて予備重合を実施する際、溶媒中のAl濃度と予備重合量を制御することにより、予備重合反応器内のファウリングが抑制される。
【0051】
固体触媒成分(Sa)
本発明の予備重合触媒成分(Sc)の製造方法の第一工程で用いる固体触媒成分(Sa)は、前記固体状担体(S)と、前記遷移金属錯体(A)とを不活性炭化水素中、−50℃以上200℃以下、好ましくは−20℃以上150℃以下の温度で接触させて得られる。接触時間は0.01〜48時間、好ましくは0.1〜24時間である。
【0052】
固体触媒成分(Sa)の調製に用いられる不活性炭化水素としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができる。
【0053】
遷移金属錯体(A)を2種以上用いる場合、固体状担体(S)との接触順序は任意であり、2種以上の遷移金属錯体(A)を任意の順序で接触させてもよく、または同時に接触させてもよい。
【0054】
固体触媒成分(Sa)を調製するに際して、遷移金属錯体(A)は、固体状担体(S)1g当たり、通常1マイクロモル〜1.0ミリモル、好ましくは3マイクロモル〜0.5ミリモルの量で用いられる。
【0055】
ここで、本発明に係る固体触媒成分(Sa)の調整においては、上記成分(B)を好適に併用することができ、その態様は何ら限定されるものではないが、好ましい態様の例を以下に示す。
【0056】
(i)固体状担体(S)と成分(B)を混合接触させ、次いで遷移金属錯体(A)を接触させて固体触媒成分(Sa)を調製する方法。
(ii)遷移金属錯体(A)と成分(B)を混合接触させ、次いで固体状担体(S)を接触させて固体触媒成分(Sa)を調製する方法。
【0057】
成分(B)と固体状担体(S)との接触は不活性炭化水素溶媒中で行うのが好ましく、不活性炭化水素溶媒としては、前記固体触媒成分(Sa)の調製に用いられる不活性炭化水素と同様のものが挙げられる。成分(B)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは0.1〜20時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−20〜120℃である。成分(B)と固体状担体(S)との接触モル比(成分(B)/固体状担体(S))は、通常0.1〜1000、特に好ましくは0.1〜100である。
【0058】
予備重合触媒成分(Sb)
本発明に係る予備重合触媒成分(Sb)は、予備重合触媒成分(Sc)の製造方法の第一工程で得られる予備重合触媒成分(Sb)である。
【0059】
本発明者らは、反応器内でファウリングを引き起こす要因として、予備重合後の溶媒中の遷移金属成分量に着目した。溶媒中の遷移金属成分(原子)量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求めることができる。
【0060】
溶媒中の遷移金属成分は予備重合時に系内に存在する有機アルミニウム化合物が固体触媒成分(Sa)と接触して、固体触媒成分(Sa)から遊離した遷移金属錯体(A)に由来すると考えられる。そして、この溶媒中の遷移金属成分が、固体状担体(S)に担持されていない状態で重合反応を行なうことで、微細かつ球形度の低い重合体が生じ、反応器壁への付着が促進されファウリングが生じると推測される。
【0061】
予備重合時の遷移金属成分の遊離を抑制するためには、遷移金属錯体(A)と有機アルミニウム化合物との接触を極力避けることが望ましい一方で、予備重合において、溶媒中の微量不純物による被毒ならびに帯電による触媒成分の静電付着(ファウリング)を防止するため、一般的に系内に一定量の有機アルミニウム化合物を添加することは避けられない。
【0062】
本発明者らは、特定の重合条件にて予備重合を2段階で行い、かつ1段階目の溶媒中の有機アルミニウム化合物の濃度と予備重合量を特定の範囲内とすることで、溶媒中への遷移金属錯体(A)の遊離を抑制でき、ひいては反応器内のファウリングを抑制できることを見出した。
【0063】
第一工程での予備重合触媒の調製に用いる溶媒は不活性炭化水素溶媒が好ましく、不活性炭化水素溶媒としては、固体触媒成分(Sa)を調製する際に用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0064】
本発明に係る有機アルミニウム化合物は何ら限定されるものではないが、好ましくは成分(b−1)の一般式(II)、(III)もしくは成分(b−2)が挙げられる。
有機アルミニウム化合物の濃度は、固体触媒成分(Sa)に由来する固体分を除き、0.001〜1mmol/L、好ましくは0.01〜1mmol/L、より好ましくは0.0〜0.8mmol/L、さらに好ましくは0.1〜0.7mmol/Lの範囲にある。
【0065】
第一工程において、有機アルミニウム化合物の濃度が低いと、溶媒中の微量不純物による被毒を受けやすくなり、濃度が高いと固体触媒成分(Sa)からの遷移金属成分の遊離が促進されるため、上記範囲が好ましい。
【0066】
第一工程において予備重合させる炭素数2以上のオレフィンの量は、固体触媒成分(Sa)重量に対して0.15倍以上10倍以下、好ましくは0.15倍以上5倍以下、さらに好ましくは0.20倍以上3倍以下の量である。炭素数2以上のオレフィンの予備重合量が少ないとその後の重合反応において固体触媒成分(Sa)からの遷移金属成分の遊離が促進され、予備重合量が多いと予備重合成分の帯電により、予備重合中に静電付着が起こりやすくなる虞がある。
【0067】
第一工程での予備重合温度は、通常−20〜80℃、好ましくは0〜50℃であり、また予備重合時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間程度である。
第一工程での予備重合時に用いられる炭素数2以上のオレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが例示される。
【0068】
また、環状オレフィンおよび芳香族ビニル化合物から選択される少なくとも1種を反応系に共存させて重合を進めることもできる。また、ジエンを併用することも可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ビニルシクロヘキサン等のその他の成分を共重合してもよい。炭素数2〜20のα−オレフィン100質量部に対して、他のモノマーは、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下の量で用いることができる。
【0069】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンが挙げられる。
【0070】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン;3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンが挙げられる。
【0071】
ジエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン等のα,ω−非共役ジエン;エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等の非共役ジエン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。
【0072】
第一工程での予備重合は回分式、半連続式、連続式いずれの方法においても実施することができ、また減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。予備重合系における固体触媒成分(Sa)の濃度は、固体触媒成分(Sa)/重合容積1リットル比で、通常1〜1000g/L、好ましくは5〜500g/Lである。
【0073】
このようにして調製した予備重合触媒(Sb)に対して、有機アルミニウム化合物を含む不活性炭化水素溶媒で洗浄を行ってもよい。不活性炭化水素溶媒中の有機アルミニウム化合物の下限濃度は0.1mmol/L以上、好ましくは0.15mmol/L以上、さらに好ましくは0.2mmol/L以上であり、上限濃度は、触媒性能が著しく変化しない限り実施可能であるが、経済性を考慮すれば、200mmol/L以下であることが好ましい。
【0074】
洗浄により、有機アルミニウム化合物がスカベンジャーとして働くだけでなく、遷移金属錯体(A)(及びその誘導体)への溶解性を増大させ、遊離しやすい遷移金属成分を、後の重合反応前にオレフィン非存在下で除去できるため好ましい。
【0075】
調製した予備重合触媒(Sb)は、そのまま第二工程に進んでもよいし、第一工程の懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させて第二工程に進んでもよいし、あるいは、乾燥させた後第二工程に進んでもよい。
【0076】
予備重合触媒成分(Sc)
本発明に係る予備重合触媒成分(Sc)は、予備重合触媒成分(Sc)の製造方法の第一工程で得られた予備重合触媒成分(Sb)を第二工程で処理して得られる予備重合触媒成分(Sc)である。
【0077】
本発明に係る予備重合触媒成分(Sc)は、前記第一工程で得られた予備重合触媒成分(Sb)に、有機アルミニウム化合物の濃度が10mmol/L以上の条件下、炭素数2以上のオレフィンを供給し予備重合させて得られる予備重合触媒成分(Sc)である。
【0078】
予備重合触媒成分(Sc)の調製に用いる溶媒は不活性炭化水素溶媒が好ましく、不活性炭化水素溶媒としては、固体触媒成分(Sa)を調製する際、あるいは第二工程で用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0079】
第二工程で用いる有機アルミニウム化合物は何ら限定されるものではないが、好ましくは成分(b−1)の一般式(II)、(III)もしくは成分(b−2)が挙げられる。
有機アルミニウム化合物の濃度は、予備重合触媒成分(Sb)に由来する固体分を除き10〜500mmol/L、好ましくは15〜250mmol/L、さらに好ましくは20〜200mmol/Lで存在することが好ましい。
【0080】
第二工程で予備重合させる炭素数2以上のオレフィンの量は何ら限定されるものではないが、固体触媒成分(Sa)の重量に対して0.10倍以上300倍以下、好ましくは0.5倍以上200倍以下、さらに好ましくは1倍以上200倍以下の量が好ましい。
【0081】
第二工程における予備重合温度ならびに予備重合時に用いられる炭素数2以上のオレフィン、実施方法ならびに洗浄方法については、上記予備重合触媒成分(Sb)を調製する際と同様のものが挙げられる。
【0082】
上記製造方法で得られた予備重合触媒成分(Sc)は、第二工程の懸濁液のままオレフィン重合に用いてもよいし、第二工程の懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させてオレフィン重合に用いてもよいし、また、乾燥させた後、オレフィン重合に用いてもよい。
【0083】
本発明に係る上記予備重合触媒成分(Sc)の製造において、本発明に係る上記予備重合触媒成分(Sc)を製造する工程前、工程中、あるいは工程後に下記の成分(G)を添加(と接触)させてもよい。
【0084】
成分(G)
本発明で所要により用いることができる成分(G)は、通常、界面活性剤と呼称されている化合物であり、具体的には、下記(g−1)〜(g−6)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
(g−1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g−2)高級脂肪族アミド、
(g−3)ポリアルキレンオキサイド、
(g−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g−5)アルキルジエタノールアミン、および
(g−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン。
【0085】
成分(G)は、触媒もしくは重合体の静電付着による重合器内でのファウリングを抑制する、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、オレフィン重合用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g−1)、(g−2)、(g−3)および(g−4)が好ましく、(g−1)および(g−2)が特に好ましい。(g−2)の具体例としては、高級脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
【0086】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明に係る前記予備重合触媒成分(Sc)は、炭素数2以上のオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン単独重合体、あるいはオレフィン共重合体の製造に用い得る。
【0087】
以下、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法について、オレフィン重合体の代表例であるエチレン系重合体の製造方法に関して説明する。
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法によって得られる好適なエチレン系重合体は、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数4のα−オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα-オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
【0088】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、オレフィンの重合は、溶液重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合に供給されうる液化オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を用いることもできる。
【0089】
重合条件は、遷移金属錯体(A)が、反応容積1リットル当たり、通常10-12〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになる量で用いられる。また、重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは30〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに反応条件の異なる2種以上の条件下で多段反応として行うこともできる。
【0090】
得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。特に水素は、触媒の重合活性を向上させる効果や、重合体の分子量を増加または低下させる効果が得られることがあり、好ましい添加物であるといえる。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001〜100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0091】
さらに重合系には、触媒もしくは重合体の静電付着による重合器内でのファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、上記成分(G)を共存させることができる。
本発明の製造方法で得られたオレフィン重合体に対しては、上記方法で合成した後に、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってよい。
【0092】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたオレフィン重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施される。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
固体触媒成分(Sa−1)の調製
内容積270リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア株式会社製:平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃で10時間乾燥)10kgを77リットルのトルエンに懸濁させた後0〜5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mmol/mL)19.4リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間接触させた後、約1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量115リットルのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:122.6g/L、Al濃度:0.62mol/Lであった。
【0094】
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、トルエン20mL、および上記で得られた固体状担体スラリー〔固体状担体(S)〕14.7mL(固体分=1.8g、Al=9.0mmol)を装入した。次いで、遷移金属錯体(A)として、ビス(1,3−n−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.065mmolのトルエン溶液を加え、系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、全量40ミリリットルの固体触媒成分(Sa−1)のスラリーを調製した。
洗浄後の溶媒の一部を採取し分析したところ、Al濃度は0.26mmol/Lであった。
【0095】
予備重合触媒成分(Sb−1)の調製
上記で得られた固体触媒成分スラリーを10℃まで冷却した後、系内の温度を10〜15℃に保持しながらエチレンを0.50L/hrの流量で供給し、エチレン吸収量が固体触媒成分重量に対して0.28倍となるまでエチレンを供給した。その後、エチレンの供給を停止し、予備重合触媒成分(Sb−1)のスラリーを得た。
【0096】
予備重合触媒成分(Sc−1)の調製
上記予備重合触媒成分(Sb−1)のスラリーを10℃に維持したまま、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)3.4mmolと1−ヘキセン0.49mLを加え、エチレンの供給を開始した。系内の温度を35℃に昇温した後、33〜37℃に調整しながら、エチレンを1.0L/hrの流量で、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−1)の重量に対して2.7倍となるまで供給した。その後、系内を窒素置換し静置したところ、上澄み液は透明であった。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.094mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−1)中のZrが5.8mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−1)調製後の反応器壁や撹拌翼への付着物は認められなかった。
【0097】
エチレン共重合体の重合
上記予備重合触媒成分(Sc−1)のスラリーの上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を40ミリリットルとした。次に、系内温度を35℃に昇温した後、成分(G)として、ケミスタット2500(三洋化成工業株式会社製)72mgを添加し、2時間接触させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。次に、内容積100mLのガラス製シュレンク管に上記ヘキサンスラリーを移し、減圧下25℃にてヘキサンを減圧留去させることで、上記予備重合触媒成分(Sc−1)と成分(G)を接触させてなる予備重合触媒成分(Sc−1G)7.3gを得た。
【0098】
充分に窒素置換した内容積1リットルのステンレス製オートクレーブにヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換した後、1−ヘキセン20ml、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)0.375mmolおよび上記で調製した予備重合触媒成分(Sc−1G)130mgを装入し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、エチレンを連続的に導入することにより全圧0.8MPaG、80℃の条件で90分間重合反応を行った。濾過によりポリマーを回収し、減圧下、80℃で一晩乾燥することにより、エチレン・1−ヘキセン共重合体99.2gを得た。得られた重合体のメルトフローレート(MFR)は0.17g/10分、密度は921kg/m3、嵩比重(AD)は400kg/m3であった。なお、メルトフローレートは、ASTMD1238−65Tに従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
【0099】
[比較例1]
予備重合触媒成分(Sb−比1)の調製
実施例1の予備重合触媒成分(Sb−1)の調製において、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−1)の重量に対して0.12倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例1と同様に行い、予備重合触媒成分(Sb−比1)のスラリーを得た。
【0100】
予備重合触媒成分(Sc−比1)の調製
実施例1の予備重合触媒成分(Sc−1)の調製において、予備重合触媒(Sb−1)に代えて予備重合触媒成分(Sb−比1)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0101】
エチレン供給後に系内を窒素置換し静置したところ、白色の非常に沈降の遅い成分が認められた。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.16mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−1)中のZrが10.1mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−比1)調製後の調製後の反応器壁や撹拌翼には多量のポリマー付着物が認められた。
【0102】
[実施例2]
固体触媒成分(Sa−2)の調製
内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン20mL、実施例1で得られた固体状担体スラリー14.7mL(固体分=1.8g、Al=9.0mmol)を装入した。次いで、遷移金属錯体(A)として、(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.006mmolのトルエン溶液、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.037mmolのトルエン溶液を加え、系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、全量40ミリリットルの固体触媒成分(Sa−2)スラリーを調製した。
洗浄後の溶媒の一部を採取し分析したところ、Al濃度は0.24mmol/Lであった。
【0103】
予備重合触媒成分(Sb−2)の調製
上記で得られた固体触媒成分(Sa−2)スラリーを40℃まで昇温した後、系内の温度を38〜42℃に保持しながらエチレンを1.0L/hrの流量で供給し、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して0.30倍となるまでエチレンを供給した。その後、エチレンの供給を停止し、予備重合触媒成分(Sb−2)のスラリーを得た。
【0104】
予備重合触媒成分(Sc−2)の調製
上記予備重合触媒成分(Sb−2)のスラリーを40℃に維持したまま、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBALH)を4.4mmolを添加し、エチレンの供給を開始した。系内の温度を38〜42℃に調整しながら、エチレンを1.0L/hrの流量で、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して2.7倍となるまで供給した。その後、系内を窒素置換し静置したところ、上澄みは黄色透明であった。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.052mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−2)中のZrが4.8mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−2)調製後の反応器壁や攪拌翼への付着物は認められなかった。
【0105】
エチレン共重合体の重合
上記予備重合触媒成分(Sc−2)のスラリーの上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を50ミリリットルとした。次に、系内温度を35℃に昇温した後、成分(G)として、エマルゲン108(花王株式会社製)45mgのヘキサン溶液を添加し、2時間接触させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。次に、内容積100mLのガラス製シュレンク管に上記ヘキサンスラリーを移し、減圧下25℃にてヘキサンを減圧留去させることで、上記予備重合触媒成分(Sc−2)と成分(G)を接触させてなる予備重合触媒成分(Sc−2G)7.3gを得た。
【0106】
充分に窒素置換した内容積1リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン500mLを装入し、系内をエチレン置換した後、1−ヘキセン3mL、トリイソブチルアルミニウム0.375mmolおよび上記で得られた予備重合触媒成分(Sc−2G)220mgを加え、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、エチレンを連続的に導入することにより全圧0.8MPaG、80℃の条件で90分間重合反応を行った。濾過によりポリマーを回収し、減圧下、80℃で10時間乾燥することにより、エチレン・1−ヘキセン共重合体72.7gを得た。得られた重合体のメルトフローレート(MFR)は0.24g/10分、密度は940kg/m3、嵩比重(AD)は410kg/m3であった。
【0107】
[実施例3]
予備重合触媒成分(Sb−3)の調製
実施例2の予備重合触媒成分(Sb−2)の調製において、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して0.67倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行い、予備重合触媒成分(Sb−3)のスラリーを得た。
【0108】
予備重合触媒(Sc−3)の調製
実施例2の予備重合触媒成分(Sc−2)の調製において、予備重合触媒(Sb−2)に代えて予備重合触媒成分(Sb−3)を用いたことと、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して2.3倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行った。
【0109】
エチレン供給後に系内を窒素置換し静置したところ、上澄みは透明であった。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.023mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−2)中のZrが2.1mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒(Sc−3)調製後の反応器壁や撹拌翼への付着物は認められなかった。
【0110】
[比較例2]
予備重合触媒(Sc−比2)の調製
実施例2の予備重合触媒成分(Sc−2)の調製において、予備重合触媒(Sb−2)に代えて固体触媒成分(Sa−2)を用いたことと、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して3.0倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行った。
【0111】
エチレン供給後に系内を窒素置換し静置したところ、白色の非常に沈降の遅い成分が認められた。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.13mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−2)中のZrが12.4mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−比2)調製後の反応器壁や撹拌翼には多量のポリマー付着物が認められた。
【0112】
[比較例3]
予備重合触媒(Sb−比3)の調製
実施例2の予備重合触媒成分(Sb−2)の調製において、エチレン吸収量が固体触媒成分成分(Sa−2)の重量に対して0.11倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行い、予備重合触媒成分(Sb−比3)のスラリーを得た。
【0113】
予備重合触媒(Sc−比3)の調製
実施例2の予備重合触媒成分(Sc−2)の調製において、予備重合触媒成分(Sb−2)に代えて予備重合触媒成分(Sb−比3)を用いたことと、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して2.9倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行った。
【0114】
エチレン供給後に系内を窒素置換し静置したところ、白色の非常に沈降の遅い成分が認められた。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.11mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−2)中のZrが10.5mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−比3)調製後の調製後の反応器壁や撹拌翼には多量のポリマー付着物が認められた。
【0115】
[実施例4]
予備重合触媒(Sb−4)の調製
実施例2と同様の方法で得られた固体触媒成分(Sa−2)のスラリーを40℃まで昇温した後、系内の温度を38〜42℃に保持しながらエチレンを1.0L/hrの流量で供給し、エチレン吸収量が固体触媒成分重量に対して0.25倍となったところで、エチレンの供給を停止し系内を窒素で置換した。次いで、ジイソブチルアルミニウムハイドライド4.4mmolを加え、38〜42℃に保持しながら30分接触させた。静置後、上澄み液25mLをデカンテーションにより除去し、ヘキサン25mLを加える洗浄操作を3回行ない、予備重合触媒成分(Sb−4)のスラリーを得た。
【0116】
予備重合触媒(Sc−4)の調製
実施例2の予備重合触媒成分(Sc−2)の調製において、予備重合触媒成分(Sb−2)に代えて予備重合触媒成分(Sb−4)を用いたことと、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−2)重量に対して2.7倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行った。
【0117】
エチレン供給後に系内を窒素置換し静置したところ、上澄みは透明であった。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.074mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−2)中のZrが6.8mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−4)調製後の反応器壁や撹拌翼への付着物は認められなかった。
【0118】
[実施例5]
固体触媒成分(Sa−5)の調製
内容積270Lの攪拌機付き反応器を用い、窒素雰囲気下、シリカゲル(AGCエスアイテック株式会社製:レーザー光回折散乱法の体積分布の累積50%粒径12μm、比表面積850m2/g、細孔容積0.9cm3/g、200℃で3時間乾燥)8.5kgを33Lのトルエンに懸濁させた後、この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で1.4mol/L)83リットルを30分間かけて滴下した。次いで、1.5時間かけて系内温度を115℃まで昇温して、引き続き115℃で4時間接触させた。その後、常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量150リットルの固体状担体のトルエンスラリーを調製した。
【0119】
得られたスラリー成分の一部を採取し分析したところ、固体分濃度は102.0g/L、Al濃度:0.73mol/Lであった。
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、トルエン40mL、および上記で得られた固体状担体スラリー9.8mL(固体分=1.0g、Al=7.2mmol)を装入した。次いで、遷移金属錯体(A)として、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.052mmolのトルエン溶液を加え、系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、全量50ミリリットルの固体触媒成分(Sa−5)スラリーを調製した。
洗浄後の溶媒の一部を採取し分析したところ、Al濃度は0.16mmol/Lであった。
【0120】
予備重合触媒(Sb−5)の調製
上記で得られた固体触媒成分(Sa−5)のスラリーに、系内の温度を20〜25℃に保持しながらエチレンを0.7L/hrの流量で供給し、エチレン吸収量が固体触媒成分重量に対して0.18倍となったところで、エチレンの供給を停止し系内を窒素で置換した。
【0121】
予備重合触媒(Sc−5)の調製
上記予備重合触媒成分(Sb−5)スラリーに、トリイソブチルアルミニウム2.0mmolとアデカプルロニックL−71(株式会社ADEKA製)10mgを加え、系内の温度を40℃に昇温した後、エチレンの供給を開始した。系内の温度を38〜42℃に調整しながら、エチレンを0.9L/hrの流量で、エチレン吸収量が固体触媒成分重量に対して2.8倍となるまで供給した。その後、系内を窒素置換し静置したところ、上澄み液は透明であった。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.035mmol/Lであった。これは固体触媒成分中のZrが3.5mol%溶出した量に相当する。
【0122】
予備重合触媒成分(Sc−5)調製後の反応器壁や撹拌翼への付着物は認められなかった。
上記予備重合触媒成分(Sc−5)のスラリーの上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を50ミリリットルとした。得られたスラリー成分の一部を採取し分析したところ、固体分濃度は20.2g/Lであった。
【0123】
エチレン単独重合体の重合
充分に窒素置換した内容積1リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン500mLを装入し、系内をエチレン置換した後、トリイソブチルアルミニウム0.375mmolおよび上記で得られた予備重合触媒成分(Sc−5)を固体分として12mgを加え、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、エチレンを連続的に導入することにより全圧0.8MPaG、80℃の条件で90分間重合反応を行った。濾過によりポリマーを回収し、減圧下、80℃で10時間乾燥することにより、エチレン単独重合体74.4gを得た。
【0124】
[比較例4]
予備重合触媒(Sc−比4)の調製
実施例5の予備重合触媒成分(Sc−5)の調製において、予備重合触媒(Sb−5)に代えて固体触媒成分(Sa−5)を用いたことと、エチレン吸収量が固体触媒成分(Sa−5)重量に対して3.0倍となるまでエチレンを供給した以外は実施例2と同様に行った。
【0125】
エチレン供給後に系内を窒素置換し静置したところ、白色の非常に沈降の遅い成分が認められた。溶媒の一部を採取し分析したところ、Zr濃度は0.072mmol/Lであった。これは固体触媒成分(Sa−5)中のZrが7.1mol%溶出した量に相当する。
予備重合触媒成分(Sc−比4)調製後の反応器壁や撹拌翼には多量のポリマー付着物が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のオレフィン重合に用いる予備重合触媒成分(Sc)の製造方法により得られる予備重合触媒成分(Sc)を用いてなるオレフィン重合体の製造方法は、予備重合時の反応器内でのファウリングを抑制でき、本発明の製造方法は工業的に極めて価値がある。