(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カソードが前記監視電圧の印加端に接続されてアノードが前記接地端に接続されたショットキーバリアダイオードをさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の放電回路。
前記比較部、前記タイマ部、前記制御部、及び、前記放電部は、前記DC/DC変換回路の制御主体となる半導体装置に集積化されていることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ブロック図>
図1は、本発明の適用対象となる電源装置1の構成を概念的に示すブロック図である。本構成例の電源装置1は、交流入力電圧Viを直流出力電圧Voに変換するAC/DCコンバータであり、Xコンデンサ11と、フィルタ回路12と、整流平滑回路13と、DC/DC変換回路14と、放電回路15と、を有する。
【0023】
Xコンデンサ11は、交流入力電圧Viが印加される第1入力端子(ライン端子)T11と第2入力端子(ニュートラル端子)T12との間に接続されており、交流入力電圧Viに重畳するディファレンシャルモードノイズ(またはノーマルモードノイズとも呼ばれる)を低減する。Xコンデンサ11としては、比較的容量の大きいフィルムコンデンサなどが一般的に用いられる。なお、Xコンデンサ11は、フィルタ回路12の前段側のみに設けてもよいし、フィルタ回路12の前段側と後段側にそれぞれ設けてもよい。
【0024】
フィルタ回路12は、交流入力電圧Viからコモンモードノイズを除去する。
【0025】
整流平滑回路13は、Xコンデンサ11とフィルタ回路12によってノイズが除去された交流入力電圧Viを整流/平滑して直流電圧Vdcを生成する。
【0026】
DC/DC変換回路14は、直流電圧Vdcから所望の直流出力電圧Voを生成し、第1出力端子T13と第2出力端子T14との間に出力する。
【0027】
放電回路15は、入力遮断時(例えば、電源装置1の電源プラグが壁面コンセントから引き抜かれて交流入力電圧Viの供給が停止したとき)に、XコンデンサCXの残留電荷を放電する回路ブロックであり、分圧部15aと、ハイパスフィルタ部15bと、比較部15cと、タイマ部15dと、制御部15eと、放電部15fと、を含む。
【0028】
分圧部15aは、交流入力電圧Viを分圧して分圧電圧Vdを生成する。
【0029】
ハイパスフィルタ部15bは、分圧電圧Vdの高周波成分(半波整流ないしは全波整流されたACリップル成分)を通過させて監視電圧Vmを生成する。なお、電源装置1が日本国内で使用される場合、ハイパスフィルタ部15bのカットオフ周波数Fcは、100Hz(商用交流周波数50Hzの2倍に相当)よりも低く設定しておけばよい。
【0030】
比較部15cは、監視電圧Vmと閾値電圧Vthを比較して比較信号Scを生成する。例えば、比較信号Scは、監視電圧Vmが閾値電圧Vthよりも高いときにハイレベルとなり、監視電圧Vmが閾値電圧Vthよりも低いときにローレベルとなる。
【0031】
タイマ部15dは、比較信号Scがマスク期間Tmに亘って同一の論理レベルに維持されたか否かを示すタイマ信号Sdを生成する。例えば、タイマ信号Sdは、比較信号Scがマスク期間Tmに亘ってローレベルに維持されたとき(すなわち、監視電圧Vmが閾値電圧Vthを下回る状態がマスク期間Tmに亘って継続したとき)にハイレベルとなる。
【0032】
制御部15eは、タイマ信号Sdに応じて放電制御信号Syを生成する。例えば、制御部15eは、タイマ信号Sdがハイレベルに立ち上がったときにXコンデンサ11の放電を開始するべく放電制御信号Syの論理レベルを切り替える。
【0033】
放電部15fは、放電制御信号Syに応じてXコンデンサ11を放電する。
【0034】
上記したように、本構成例の放電回路15は、交流入力電圧Viの分圧電圧VdのDCレベルを直接監視するのではなく、ハイパスフィルタ部15bを介して生成される監視電圧Vm(ACリップル)のDCレベルを監視して、Xコンデンサ11の放電制御を行う。
【0035】
このような構成とすることにより、交流入力電圧Viの供給が途絶えて分圧電圧VdのACリップルがなくなると、監視電圧VmのDCレベルが急速に低下する。従って、タイマ部15dによるマスク期間Tmの起算点が早まるので、Xコンデンサ11の放電を遅滞なく開始することが可能となる。以下では、より具体的なアプリケーションを例示して、詳細な説明を行う。
【0036】
<アプリケーション図>
図2は、電源装置1の一構成例を示すアプリケーション図である。本構成例の電源装置1は、一次回路系1p(GND1系)と二次回路系1s(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ、商用交流電源PWから供給される交流入力電圧Viを直流出力電圧Voに変換して負荷Zに供給する絶縁型のAC/DCコンバータであり、半導体装置100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(コモンモードフィルタFLT、ダイオードブリッジDB、トランスTR、Nチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタN1、フォトカプラPC、抵抗R1〜R5、コンデンサC1〜C6、及び、ダイオードD1〜D5)と、を有する。
【0037】
コンデンサC1は、
図1のXコンデンサ11に相当する素子であり、交流入力電圧Viが印加される2入力端子間に接続されている。
【0038】
コモンモードフィルタFLTは、
図1のフィルタ回路12に相当する素子であり、コンデンサC1と同じく、交流入力電圧Viが印加される2入力端子間に接続されている。コモンモードフィルタFLTは、環状コア(フェライトコアやアモルファスコア)と、これに同方向で巻き回された2本のコイルを含む。コモンモードノイズ電流は、上記2本のコイルを同一方向に流れるので、環状コアの内部に発生する磁束が互いに強め合う。その結果、コモンモードフィルタFLTは、コモンモードノイズ電流に対して大きなインピーダンスを示すので、コモンモードノイズ電流の通過が阻止される。
【0039】
ダイオードブリッジDBとコンデンサC2は、
図1の整流平滑回路13を形成する。ダイオードブリッジDBは、XコンデンサC1とコモンモードフィルタFLTによってノイズが除去された交流入力電圧Viを全波整流して直流電圧Vdcを生成する。コンデンサC2は、直流電圧Vdcの印加端と接地端GND1との間に接続されており、直流電圧Vdcを平滑化する。
【0040】
半導体装置100、トランスTR、トランジスタN1、フォトカプラPC、抵抗R1及びR2、コンデンサC3及びC4、並びに、ダイオードD1〜D4は、いずれも、
図1のDC/DC変換回路14を形成する。
【0041】
半導体装置100は、トランスTRの駆動主体(延いてはDC/DC変換回路14の制御主体)となるスイッチング制御ICであり、トランジスタN1のスイッチング制御を実現するための回路要素のほかに、
図1の放電回路15を形成する回路要素の一部(比較部15c、タイマ部15d、制御部15e、及び、放電部15f)が集積化されている。また、半導体装置100は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1〜T7を有する。なお、
図2では、外部端子T1(OUTピン)、外部端子T2(CSピン)、外部端子T3(VCCピン)、外部端子T4(VHピン)、外部端子T5(ACMONIピン)、外部端子T6(GNDピン)、及び、外部端子T7(FBピン)の7本を描写したが、これら以外の外部端子(例えば
図7のノンコネクトピン)を設けても構わない。なお、半導体装置100の内部構成については、後ほど改めて詳述する。
【0042】
トランスTRは、一次回路系1pと二次回路系1sとの間を電気的に絶縁しつつ互いに逆極性で磁気結合された一次巻線L1(巻数Np)と二次巻線L2(巻数Ns)を含む。一次巻線L1の第1端は、直流電圧Vdcの印加端に接続されている。一次巻線L1の第2端は、トランジスタN1と抵抗R1を介して一次回路系1pの接地端GND1に接続されている。二次巻線L2の第1端は、ダイオードD1のアノードに接続されている。ダイオードD1のカソードは、直流出力電圧Voの印加端(負荷Zの電源入力端)に接続されている。二次巻線L2の第2端は、二次回路系1sの接地端GND2に接続されている。なお、巻数Np及びNsについては、所望の直流出力電圧Voが得られるように任意に調整すればよい。例えば、巻数Npが多いほど又は巻数Nsが少ないほど直流出力電圧Voは低くなり、逆に、巻数Npが少ないほど又は巻数Nsが多いほど直流出力電圧Voは高くなる。また、トランスTRは、一次巻線L1及び二次巻線L2に加えて補助巻線L3を含む。補助巻線L3は、半導体装置100の電源電圧Vccを生成する際に利用される。
【0043】
トランジスタN1は、直流電圧Vdcの印加端から一次巻線L1を介して接地端GND1に至る電流経路をゲート信号G1に応じて導通/遮断することにより、一次巻線L1に流れる一次電流Ipをオン/オフするスイッチ素子である。接続関係について述べると、トランジスタN1のドレインは、一次巻線L1の第2端に接続されている。トランジスタN1のソース及びバックゲートは、抵抗R1を介して接地端GND1に接続されている。トランジスタN1のゲートは、半導体装置100の外部端子T1(ゲート信号G1の印加端)に接続されている。トランジスタN1は、ゲート信号G1がハイレベルであるときにオンとなり、ゲート信号G1がローレベルであるときにオフとなる。
【0044】
抵抗R1は、トランジスタN1と接地端GND1との間に接続されており、一次電流Ipに応じたセンス電圧Vcsを生成するセンス抵抗である。なお、トランジスタN1と抵抗R1との接続ノード(センス電圧Vcsの印加端)は、半導体装置100の外部端子T2に接続されている。
【0045】
ダイオードD1及びD2と抵抗R2は、ダイオードブリッジDBよりも前段から電力供給を受けて起動電圧VHを生成し、これを半導体装置100の外部端子T4に印加する起動電圧生成部を形成する。接続関係について述べると、ダイオードD1及びD2のアノードは、それぞれ、コモンモードフィルタFLTの第1出力端と第2出力端に接続されている。なお、ダイオードD1及びD2のアノードは、それぞれ、コモンモードフィルタFLTの第1入力端と第2入力端に接続しても構わない。ダイオードD1及びD2のカソードは、いずれも抵抗R2の第1端に接続されている。抵抗R2の第2端は、半導体装置100の外部端子T4に接続されている。
【0046】
ダイオードD3とコンデンサC3は、補助巻線L3の誘起電圧Vsから半導体装置100の電源電圧Vccを生成し、これを半導体装置100の外部端子T3に印加する電源電圧生成部を形成する。接続関係について述べると、ダイオードD3のアノードは、補助巻線L3の第1端に接続されている。ダイオードD3のカソードは、コンデンサC3の第1端と半導体装置100の外部端子T3に接続されている。補助巻線L3の第2端とコンデンサC3の第2端は、いずれも接地端GND1に接続されている。なお、一次巻線L1と補助巻線L3との巻線比については、半導体装置100の動作に必要な電源電圧Vccを鑑みて適宜設定すればよい。
【0047】
ダイオードD4とコンデンサC4は、二次巻線L2に生じる誘起電圧を整流及び平滑して直流出力電圧Voを生成する出力整流平滑部を形成する。接続関係について述べると、ダイオードD4のアノードは、二次巻線L2の第1端に接続されている。ダイオードD4のカソードとコンデンサC4の第1端は、いずれも直流出力電圧Voの印加端に接続されている。コンデンサC4の第2端は、接地端GND2に接続されている。
【0048】
フォトカプラPCは、一次回路系1p(GND1系)と二次回路系1s(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ、直流出力電圧Voに応じた帰還電圧Vfbを生成し、これを半導体装置100の外部端子T7に印加する。なお、帰還電圧Vfbは、直流出力電圧Voが高いほど高くなり、直流出力電圧Voが低いほど低くなる。
【0049】
抵抗R3及びR4は、
図1の分圧部15aを形成する。接続関係について述べると、抵抗R3の第1端は、交流入力電圧Viの印加端に接続されている。抵抗R3の第2端と抵抗R4の第1端は、いずれも分圧電圧Vdの出力端に接続されている。抵抗R4の第2端は、接地端GND1に接続されている。なお、抵抗R3の抵抗値が低いほど効率が悪くなるので、高効率化を実現するためには抵抗R3の抵抗値をできるだけ高く設定することが望ましい。ただし、抵抗R3の抵抗値を高く設定し過ぎると、抵抗R3に流れる電流が減少してコンデンサC5に供給される電荷が足りなくなり、監視電圧Vmの振幅が閾値電圧Vthを超えなくなる。従って、抵抗R3の抵抗値は、両者のバランスを考慮して設定することが望ましい。また、AC的に見た場合、抵抗R3の第2端には、抵抗R4と抵抗R5とが並列に接続された状態となっている。ここで、抵抗R5の抵抗値は、抵抗R4の抵抗値よりも低くなるので、監視電圧Vmの振幅を決定する際には、抵抗R4よりも抵抗R5が支配的となる。従って、抵抗R4の抵抗値をある程度高く設定しても問題はない。
【0050】
コンデンサC5及び抵抗R5は、
図1のハイパスフィルタ部15bを形成する。接続関係について述べると、コンデンサC5の第1端は、分圧電圧Vdの印加端(抵抗R3と抵抗R4との接続ノード)に接続されている。コンデンサC5の第2端と抵抗R5の第1端との接続ノード(監視電圧Vmの出力端に相当)は、半導体装置100の外部端子T5に接続されている。抵抗R5の第2端は、接地端GND1に接続されている。なお、抵抗R5は、半導体装置100に内蔵することも可能である。
【0051】
監視電圧Vmを生成するためには、分圧電圧VdのACリップル(100Hzまたは120Hz)を減衰させずに通過させる必要がある。従って、コンデンサC5の容量値と抵抗R5の抵抗値は、ハイパスフィルタ部15bのカットオフ周波数Fc(=1/(2π×C5×RX5))が100Hz(商用交流周波数50Hzの2倍に相当)よりも低くなるように設定すべきである。ただし、コンデンサC5の容量値が小さいほど、ハイパスフィルタ部15bのインピーダンスが高くなり、監視電圧Vmが減衰する。従って、コンデンサC5の容量値は、ある程度大きい値に設定することが望ましい。
【0052】
このように、監視電圧Vm(ACリップル)のDCレベルを半導体装置100で監視する構成とすることにより、半導体装置100は、監視電圧VmのDCレベルが低下したことを遅滞なく検出してコンデンサC1の放電を開始することが可能となる。なお、コンデンサC1の残留電荷は、抵抗R5を介する経路でも放電される。従って、抵抗R5の抵抗値が小さいほど、入力遮断時における監視電圧Vmの低下速度が大きくなり、延いては、半導体装置100によるコンデンサC1の放電開始が早まる。
【0053】
コンデンサC6は、外部端子T5(監視電圧Vmの印加端)と接地端GND1との間に接続されたノイズ除去コンデンサである。外部端子T5は、コンデンサC5と容量結合するので、ハイインピーダンスとなる。そのため、ノイズによる誤動作を防ぐためには、外部端子T5と接地端GND1との間にコンデンサC6を接続することが望ましい。なお、コンデンサC6は、半導体装置100に内蔵することも可能である。
【0054】
ダイオードD5は、カソードが外部端子T5(監視電圧Vmの印加端)に接続されてアノードが接地端GND1に接続されたショットキーバリアダイオードである。監視電圧Vmは負電位に振れるので、監視電圧Vmをそのまま半導体装置100に入力すると、半導体装置100が誤動作するおそれがある。そのため、半導体装置100の誤動作を防ぐためには、外部端子T5と接地端GND1との間にダイオードD5を接続することが望ましい。なお、監視電圧Vmが負電位とならないようにするためには、
図9で示したように、整流ダイオードDaを設けることも考えられる。ただし、交流入力電圧Viの印加端に直接接続される整流ダイオードDaには高耐圧が求められるのに対して、半導体装置100の外部端子T5に接続されるダイオードD5としては低耐圧素子を用いることができる。従って、ダイオードD5を用いる構成の方がコストダウンや特性ばらつき低減を図る上で有利となる。なお、ダイオードD5は、半導体装置100に内蔵することも可能である。
【0055】
<半導体装置>
図3は、半導体装置100の一構成例を示すブロック図である。本構成例の半導体装置100は、起動回路101と、制御回路102と、RSフリップフロップ103と、駆動回路104と、クランプ回路105と、発振回路106と、スロープ補償回路107と、加算回路108と、比較回路109〜112と、タイマ回路113と、放電回路114とを集積化して成る。なお、半導体装置100には、上記以外の回路ブロック(過電圧保護回路、過熱保護回路、及び、ソフトスタート回路など)が集積化されていてもよい。
【0056】
起動回路101は、電源装置1の起動時や電源電圧Vccの低下時に、外部端子T4に印加される起動電圧VHを用いて電源電圧Vccを充電する。なお、起動回路101による電源電圧Vccの充電動作は、制御回路102からの充電制御信号Sxによって制御されるが、その詳細については後述する。
【0057】
制御回路102は、半導体装置100の動作を統括的に制御する主体である。その動作例を挙げると、制御回路102は、PWM[pulse width modulation]信号S1に応じてオン信号S2とオフ信号S3を生成することにより、所望の直流出力電圧Voを得るためのDC/DC制御(トランジスタN1のオン/オフ制御)を行う。なお、制御回路102は、比較信号Scに応じて監視電圧Vmの上昇を検出したときにDC/DC制御を開始する一方、タイマ信号Sdに応じて監視電圧Vmの低下継続を検出したときに上記のDC/DC制御を停止する機能(いわゆるブラウンアウト機能)も備えている。なお、ブラウンアウト機能を使用しない場合には、比較回路112の閾値電圧Vthよりも高い電圧を外部端子T5に固定印加しておけばよい。また、制御回路102は、比較信号Sa及びSbに応じて電源電圧Vccの充放電制御を行うように、充電制御信号Sxと放電制御信号Syを生成する。ただし、電源電圧Vccの放電動作については、タイマ信号Sdがハイレベルとなったときに許可される。すなわち、制御回路102は、
図1の制御部15eに相当する機能を備えている。また、制御回路102は、外部端子T2がオープン状態となったときにDC/DC制御を停止する機能も備えている。
【0058】
RSフリップフロップ103は、セット端(S)に入力されるオン信号S2と、リセット端(R)に入力されるオフ信号S3に応じて、出力端(Q)から出力される駆動信号S4の論理レベルを切り替える。より具体的に述べると、RSフリップフロップ103は、オン信号S2の立上りエッジで駆動信号S4をハイレベルにセットし、オフ信号S3の立上りエッジで駆動信号S4をローレベルにリセットする。
【0059】
駆動回路104は、駆動信号S4に応じたゲート信号G1を生成して外部端子T1に出力する。ゲート信号G1は、駆動信号S4がハイレベルであるときにハイレベルとなり、駆動信号S4がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0060】
クランプ回路105は、外部端子T3に印加される電源電圧Vccを所定値(例えば、12.5V)にクランプすることにより、駆動回路104に供給される駆動電圧Vdrv(ゲート信号G1のハイレベル電圧に相当)を生成する。クランプ回路105を有する構成であれば、電源電圧Vccの異常上昇によるトランジスタN1のゲート破壊を防止することが可能となる。
【0061】
発振回路106は、所定周波数の発振電圧Voscを生成する。
【0062】
スロープ補償回路107は、外部端子T2に印加されるセンス電圧Vcsに応じたスロープ補償電圧Vscpを生成する。
【0063】
加算回路108は、発振電圧Voscとスロープ補償電圧Vscpとを足し合わせて、三角波形(または鋸波形)のスロープ電圧Vslpを生成する。
【0064】
比較回路109は、非反転入力端(+)に印加されるスロープ電圧Vslpと、外部端子T7から反転入力端(−)に印加される帰還電圧Vfbとを比較してPWM信号S1を生成する。PWM信号S1は、スロープ電圧Vslpが帰還電圧Vfbよりも高いときにハイレベルとなり、スロープ電圧Vslpが帰還電圧Vfbよりも低いときにローレベルとなる。すなわち、PWM信号S1のオンデューティ(一周期に占めるハイレベル期間の割合)は、帰還電圧Vfbが低いほど高くなり、帰還電圧Vfbが高いほど低くなる。
【0065】
比較回路110は、外部端子T3から非反転入力端(+)に印加される電源電圧Vccと、反転入力端(−)に印加されるUVLO[under voltage locked out]検出用の閾値電圧Vth1を比較して比較信号Saを生成する。なお、閾値電圧Vth1は、高低2値のヒステリシスを持っており、比較信号Saの論理レベルが切り替わる毎に、上側閾値Vth1Hと下側閾値Vth1L(ただしVth1L<Vth1H)の一方に切り替わる。
【0066】
具体的に述べると、比較信号Saがローレベルであるときには、閾値電圧Vth1が上側閾値Vth1Hに設定される。従って、電源電圧Vccが上側閾値Vth1Hを上回らない限り、比較信号Saはローレベルに維持される。この間、制御回路102によるDC/DC制御は禁止状態となる。一方、電源電圧Vccが上側閾値Vth1Hを上回ると、比較信号Saがハイレベルに立ち上がり、閾値電圧Vth1が下側閾値Vth1Lに切り替わる。従って、これ以後は、電源電圧Vccが下側閾値Vth1Lを下回らない限り、比較信号Saはハイレベルに維持される。この間、制御回路102によるDC/DC制御は許可状態となる。
【0067】
比較回路111は、外部端子T3から非反転入力端(+)に印加される電源電圧Vccと、反転入力端(−)に印加される充放電切替用の閾値電圧Vth2とを比較して比較信号Sbを生成する。なお、閾値電圧Vth2は、高低2値のヒステリシスを持っており、比較信号Sbの論理レベルが切り替わる毎に、上側閾値Vth2Hと下側閾値Vth2L(ただしVth1L<Vth2L<Vth2H<Vth1H)の一方に切り替わる。
【0068】
具体的に述べると、比較信号Sbがローレベルであるときには、閾値電圧Vth2が上側閾値Vth2Hに設定される。従って、電源電圧Vccが上側閾値Vth2Hを上回らない限り、比較信号Sbはローレベルに維持される。一方、電源電圧Vccが上側閾値Vth2Hを上回ると、比較信号Sbがハイレベルに立ち上がり、閾値電圧Vth2が下側閾値Vth2Lに切り替わる。従って、これ以後は、電源電圧Vccが下側閾値Vth2Lを下回らない限り、比較信号Sbはハイレベルに維持される。なお、比較信号Sbに応じた電源電圧Vccの充放電制御については後述する。
【0069】
比較回路112は、
図1の比較部15cに相当する回路要素であり、外部端子T5から非反転入力端(+)に印加される監視電圧Vmと反転入力端(−)に印加されるACモニタ用の閾値電圧Vthとを比較して比較信号Scを生成する。なお、閾値電圧Vthは、高低2値のヒステリシスを持っており、比較信号Scの論理レベルが切り替わる毎に、上側閾値VthHと下側閾値VthL(ただしVthL<VthH)の一方に切り替わる。
【0070】
より具体的に述べると、比較信号Scがローレベルであるときには、閾値電圧Vthが上側閾値VthHに設定される。従って、監視電圧Vmが上側閾値VthHを上回らない限り、比較信号Scはローレベルに維持される。一方、監視電圧Vmが上側閾値VthHを上回ると、比較信号Scがハイレベルに立ち上がり、閾値電圧Vthが下側閾値VthLに切り替わる。従って、これ以後は、監視電圧Vmが下側閾値VthLを下回らない限り、比較信号Scはハイレベルに維持される。
【0071】
タイマ回路113は、
図1のタイマ部15dに相当する回路要素であり、比較信号Scがマスク期間Tm(例えば256ms)に亘ってローレベルに維持されたときに、タイマ信号Sdをハイレベルに立ち上げる。なお、タイマ回路113としては、比較信号Scがハイレベルであるときにカウント動作がリセットされるカウンタを用いることができる。
【0072】
放電回路114は、
図1の放電部15fに相当する回路要素であり、交流入力電圧Viの供給が遮断されたときに電源電圧Vccを接地端GND1に放電する。なお、放電回路114による電源電圧Vccの放電動作は、制御回路102からの放電制御信号Syによって制御されるが、その詳細については後述する。
【0073】
<DC/DC動作>
図2及び
図3を参照しながら、半導体装置100を主体とするDC/DC動作について説明する。オン信号S2にパルスが生成されると、ゲート信号G1がハイレベルとなり、トランジスタN1がオンとなる。トランジスタN1のオン期間中には、直流電圧Vdcの印加端から一次巻線L1、トランジスタN1、及び、抵抗R1を介して接地端GND1に向けた一次電流Ipが流れるので、一次巻線L1に電気エネルギが蓄えられる。
【0074】
その後、オフ信号S3にパルスが生成されると、ゲート信号G1がローレベルとなり、トランジスタN1がオフとなる。トランジスタN1のオフ期間中には、一次巻線L1と磁気結合された二次巻線L2に誘起電圧が発生し、二次巻線L2からダイオードD4を介して接地端GND2に向けた二次電流Isが流れる。このとき、負荷Zには、二次巻線L2の誘起電圧を半波整流した直流出力電圧Voが供給される。
【0075】
以降も、PWM信号S1に応じてオン信号S2及びオフ信号S3のパルスが生成されることにより、基本的に上記と同様のスイッチング制御動作が繰り返される。
【0076】
このように、本構成例の電源装置1によれば、一次回路系1pと二次回路系1sとの間を電気的に絶縁しつつ、交流入力電圧Viから直流出力電圧Voを生成して負荷Zに供給することができる。なお、本構成例の電源装置1で採用されたフライバック方式は、平滑インダクタを必要とするフォワード方式と比べて部品点数が少ないので、低コスト化にも有利であると言える。ただし、DC/DC変換回路の構成はこれに限定されるものではなく、トランスTRを用いない非絶縁型としてもよい。
【0077】
<入力遮断検出動作>
図4は、入力遮断検出動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、監視電圧Vm、比較信号Sc、及び、タイマ信号Sdが描写されている。先に述べたように、比較信号Scは、監視電圧Vmが上側閾値VthHを上回ったときにハイレベルとなり、下側閾値VthLを下回ったときにローレベルとなる。
【0078】
ここで、交流入力電圧Viの瞬停(瞬間的な停電状態)が生じると、本図中のポイント(X)で示したように、比較信号Scのパルス抜け(本図中の細破線を参照)が生じてしまい、比較信号Scが通常時よりも長くローレベルに維持される。ただし、交流入力電圧Viの瞬停が速やかに解消し、マスク期間Tmが経過する前に比較信号Scがハイレベルに立ち上がれば、タイマ信号Sdはローレベルに維持されたままとなる。従って、交流入力電圧Viの瞬停程度であれば、不必要にコンデンサC1を放電してしまうことがない。
【0079】
一方、電源装置1の電源プラグが壁面から引き抜かれて、交流入力電圧Viの供給が遮断されると、本図中のポイント(Y)で示したように、監視電圧VmのDCレベルが急速に低下して閾値電圧VthLを下回り、以後、監視電圧Vmは、接地電圧GND1に張り付いたままとなる。その結果、比較信号Scがローレベルに立ち下がってからマスク期間Tmが経過した時点で、タイマ信号Sdがハイレベルに立ち上がり、半導体装置100によるコンデンサC1の放電動作が開始される。
【0080】
仮に、
図9(B)欄の従来構成を採用していた場合には、本図中の太破線で示したように、ポイント(Y)で交流入力電圧Viの供給が遮断された後も、監視電圧Vmがなかなか下側閾値VthLを下回らず、タイマ期間Tmのカウント開始タイミング(延いてはコンデンサC1の放電開始タイミング)が遅延時間Tdだけ遅れてしまう。これに対して、
図2の本構成例を採用した場合には、ポイント(Y)において、監視電圧VmのDCレベルが急速に低下するので、コンデンサC1の放電動作を遅滞なく開始することができる。
【0081】
<電源電圧Vccの充放電動作>
図5は、電源電圧Vccの充放電動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、タイマ信号Sd、電源電圧Vcc、比較信号Sa及びSb、充電制御信号Sx、及び、放電制御信号Syが描写されている。
【0082】
時刻t1以前には、タイマ信号Sdがローレベルに維持されている。このとき、制御回路102は、放電制御信号Syを放電オフ時の論理レベルとしており、放電回路114による電源電圧Vccの放電動作は停止されている。また、時刻t1以前には、電源電圧Vccが上側閾値Vth1Hを上回っており、比較信号Sa及びSbはいずれもハイレベルに維持されている。このとき、制御回路102は、充電制御信号Sxを充電オフ時の論理レベルとしており、起動回路101による電源電圧Vccの充電動作は停止されている。
【0083】
時刻t1において、タイマ信号Sdがハイレベルに立ち上がると、制御回路102は、放電制御信号Syを放電オン時の論理レベルとして、放電回路114による電源電圧Vccの放電動作(キャパシタC3の放電動作)を開始させる。その結果、時刻t1から電源電圧Vccは下降に転じる。ただし、時刻t2以前には、電源電圧Vccが下側閾値Vth2Lを上回っているので、比較信号Sa及びSbはいずれもハイレベルに維持されている。従って、制御回路102は、充電制御信号Sxを充電オフ時の論理レベルに維持しており、起動回路101による電源電圧Vccの充電動作は停止されたままとなっている。
【0084】
時刻t2において、電源電圧Vccが下側閾値Vth2Lを下回り、比較信号Sbがローレベルに立ち下がると、制御回路102は、放電制御信号Syを放電オフ時の論理レベルとして、放電回路114による電源電圧Vccの放電動作を停止する一方、充電制御信号Sxを充電オン時の論理レベルとして、起動回路101による電源電圧Vccの充電動作(キャパシタC1からキャパシタC3への電荷転送動作に相当)を開始させる。その結果、時刻t2から電源電圧Vccは上昇に転じる。ただし、時刻t3以前には、電源電圧Vccが上側閾値Vth2Hを下回っているので、比較信号Sbはローレベルに維持されている。一方、電源電圧Vccは、下側閾値Vth1Lを下回る前に上昇に転じるので、比較信号Saがローレベルに立ち下がることはなく、延いては、半導体装置1がUVLO動作によってシャットダウンされることもない。
【0085】
時刻t3において、電源電圧Vccが上側閾値Vth2Hを上回り、比較信号Sbがハイレベルに立ち上がると、制御回路102は、再び、放電制御信号Syを放電オン時の論理レベルとして、放電回路114による電源電圧Vccの放電動作を再開する一方、充電制御信号Sxを充電オフ時の論理レベルとして、起動回路101による電源電圧Vccの充電動作を停止させる。その結果、時刻t3から電源電圧Vccは再び下降に転じる。
【0086】
時刻t4以降も、制御部102は、放電回路114による電源電圧Vccの放電動作と起動回路101による電源電圧Vccの充電動作とを繰り返すことによって、コンデンサC1の残留電荷を放電する。
【0087】
図6は、入力遮断時における交流入力電圧Vi(入力遮断後についてはコンデンサC1の両端間電圧(残留電荷)がこれに相当)と監視電圧Vmの挙動を示す波形図である。なお、本図(A)欄では、交流入力電圧Viが最も負電位側に振れている状態で入力遮断が生じたときの放電挙動が示されている。一方、本図(B)欄では、入力電圧Viが最も正電位側に振れている状態で入力遮断が生じたときの放電挙動が示されている。
【0088】
本図で示したように、入力遮断後には、先に説明した電源電圧Vccの充放電が繰り返されることにより、コンデンサC1の両端間電圧が階段状に低下していくことが分かる。なお、本図(A)欄の放電挙動では、コンデンサC1の両端間電圧が500msで37%低下しており、本図(B)欄の放電挙動では、コンデンサC1の両端間電圧が550msで37%低下している。この評価結果は、種々の放電規格(IEC60950−1、IEC60065、または、電気用品安全法(別表第8))を十分に満足する結果である。
【0089】
<放電補助抵抗>
図7は、放電補助抵抗Rvccの挿入例を示すアプリケーション図である。半導体装置100に集積化された放電回路114では、素子サイズなどの制約上、その放電能力に上限がある。そのため、コンデンサC1が大容量である場合、放電回路114だけではコンデンサC1の放電規格を満足できない場合もあり得る。
【0090】
そのような場合には、半導体装置100の外部端子(VCCピン)T3と外部端子(GNDピン)T6との間に放電補助抵抗Rvccを外付けすることが有効である。このような放電補助抵抗Rvccを設けることにより、電源電圧Vccをより速やかに放電することができる。先の
図5を参照して具体的に説明すると、放電補助抵抗Rvccの外付けにより、電源電圧Vccの放電時間(時刻t1〜t2、時刻t3〜t4、時刻t5〜t6)を各々短縮することができる。従って、コンデンサC1が大容量であっても放電規格を満足することが可能となる。なお、電源電圧Vccは、交流入力電圧Viに比べて十分に低いので、放電抵抗Rdchg(
図9(A)欄を参照)を用いた従来構成と異なり、放電補助抵抗Rvccによる電力損失はさほど大きくならない。
【0091】
<ACアダプタへの適用>
図8は、ACアダプタXの外観図である。本図で示すように、これまでに説明してきた電源装置1が組み込まれたACアダプタXであれば、壁面コンセントから電源プラグが引き抜かれたときに、Xコンデンサの残留電荷を迅速に放電することができるので、種々の放電規格(IEC60950−1、IEC60065、または、電気用品安全法(別表第8))をいずれも満足することが可能となる。
【0092】
ただし、電源装置1の適用対象はACアダプタXに限定されるものではなく、商用交流電源から直接的に電力供給を受ける様々な電子機器(テレビ、パソコン、プリンタなど)に広く適用することが可能であることは言うまでもない。
【0093】
<その他の変形例>
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。