【実施例】
【0020】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0021】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0022】
上記車体2は、この車体2の左右各側壁の各前端部を構成して上下方向に延びる左右フロントピラー5と、車体2の幅方向に延び、上記左右フロントピラー5のそれぞれ上下方向の中途部に架設されるフロントカウル6と、上記左右フロントピラー5のそれぞれ上下方向の中途部から前方に向かって突設される左右エプロンメンバ7とを備え、これらフロントピラー5、フロントカウル6、およびエプロンメンバ7はそれぞれ板金製とされ、それぞれ車体2において剛性の大きい車体骨格部材8とされている。
【0023】
上記車体2は、その幅方向の中央部を基準としてほぼ左右対称形とされる。
【0024】
上記車体2の各側部において、上記フロントピラー5の下部およびエプロンメンバ7をその外側方から一体的に覆って車体2前下部の外側面を形成する樹脂製のフロントフェンダ12が設けられる。上記エプロンメンバ7の外側面に樹脂クリップ13により支持され、上記フロントフェンダ12を係止させてこのフロントフェンダ12を支持する樹脂製のフェンダブラケット14が設けられる。
【0025】
上記フロントフェンダ12は、上記フロントピラー5の下部、エプロンメンバ7、および上記フェンダブラケット14をその外側方から一体的に覆うフェンダ本体12aと、このフェンダ本体12aの上端縁部から車体2の内側方かつ下方に向かって一体的に延出する上端部12bとを有し、この上端部12bが上記フェンダブラケット14に係止される。そして、上記したように、フロントフェンダ12は、上記フロントピラー5の下部、エプロンメンバ7、および上記フェンダブラケット14をその外側方から覆うことにより、車体2前部の外観上の見栄えを向上させている。
【0026】
上記左右フロントピラー5の下部、フロントカウル6、左右エプロンメンバ7、および左右フロントフェンダ12で囲まれた空間は、車両1の走行駆動用の不図示のエンジンを収容し、上方に向かって開口するエンジンルーム17とされる。このエンジンルーム17の上端開口をその上方から開閉可能に閉じるフード18が設けられる。このフード18の前部が上方に向かって往、復回動可能となるよう、上記フード18の後端部を上記左右エプロンメンバ7に枢支させる左右枢支具19が設けられる。
【0027】
上記左右フロントピラー5およびフロントカウル6の後方における車体2内部が車室22とされる。上記左右フロントピラー5およびフロントカウル6で囲まれた空間は上記車室22の内外を連通させるウィンド開口23とされる。このウィンド開口23を閉じ、車体2前上部の前面を形成すると共に、車室22の前上部の前面を形成するウィンドガラス24が設けられる。
【0028】
上記フロントカウル6の上方域であって、上記フード18の後端縁部と上記ウィンドガラス24の前下端縁部との間には車体2の幅方向に長く延び、上方に向かって開く空間27が形成される。この空間27に位置し、この空間27の上端開口を閉じる樹脂製のカウルルーバ28が設けられる。このカウルルーバ28は、上記ウィンドガラス24の前下端縁部の前側に位置し、この前下端縁部に沿って車体2の幅方向に延びている。
【0029】
上記カウルルーバ28は、その長手方向の中途部の大部分を構成し、上記フロントカウル6上に支持されるルーバ本体29と、このルーバ本体29の長手方向の各端部に係止具30によりそれぞれ係脱可能に係止され、上記カウルルーバ28の長手方向の各端部を構成する左右側端部31とを有している。また、これら各側端部31は、上記ルーバ本体29の端部に上記係止具30により係止され、上記枢支具19の少なくとも一部分をその上方から覆う基部31aと、この基部31aの後端部から車体2の後方に向かって一体的に延出し、上記基部31aよりも左右の幅寸法が狭くて細長い延出端部31bとを有している。上記側端部31の基部31aは、上記フロントフェンダ12の上端部12bに他の係止具35により係止されて連結される。また、上記側端部31の延出端部31bは、上記フロントフェンダ12の上端部12bと共に上記フェンダブラケット14に係止されて支持される。
【0030】
特に
図4〜7を参照して、上記フェンダブラケット14の構造と、このフェンダブラケット14に対する上記フロントフェンダ12の上端部12bおよびカウルルーバ28の側端部31の各係止に係る構造とにつき、詳しく説明する。
【0031】
上記フェンダブラケット14は、車体2の幅方向で互いに対面する左右側板39,40と、これら左右側板39,40の各下端縁部同士を一体的に結合する底板41と、この底板41の外側面から車体2の外側方かつ下方に向かって一体的に延出し、その延出端部が上記クリップ13によりエプロンメンバ7に支持される支持アーム42とを有している。
【0032】
上記左右側板39,40の間に車体2の前後方向に延び、上方に向かって開く係止溝44が形成される。この係止溝44の全体にわたり、上記フロントフェンダ12の上端部12bが左右にがたつきなく嵌脱可能に嵌入される。
【0033】
左右側板39,40のうち、左側の側板39の前部がわに上記係止溝44内に向かって一体的に係止突起45,45が突設される。一方、上記フロントフェンダ12の上端部12bに前後一対の係止孔46,46が形成される。そして、これら各係止孔46に上記各係止突起45が弾性的に嵌脱可能に嵌入して、上記フェンダブラケット14に対し上記フロントフェンダ12の上端部12bが係脱可能に係止され、これにより、このフロントフェンダ12は上記フェンダブラケット14を介し車体骨格部材8であるエプロンメンバ7に支持される。
【0034】
上記左側の側板39の後部に右側の側板40から離れるよう凹み、上方に向かって開口する係止凹部48が形成される。この係止凹部48は上記係止溝44の一部を構成している。上記カウルルーバ28の側端部31の延出端部31bにおける外側端縁部に下方に向かって一体的に係止片49が突設され、この係止片49は上記係止凹部48に車体2の前後方向にがたつきなく嵌脱可能に嵌入される。この嵌入により、上記係止片49と共に側端部31は、上記フロントフェンダ12とフェンダブラケット14とに対し、車体2の前後方向で精度のよい位置決めがなされる。
【0035】
上記係止凹部48の内底面である左側の側板39から上記係止溝44内に向かって一体的に他の係止突起50が突設される。一方、上記係止片49に他の係止孔51が形成される。そして、この他の係止孔51に上記他の係止突起50が弾性的に嵌脱可能に嵌入することにより、上記フェンダブラケット14に対し上記フロントフェンダ12の上端部12bと共に上記カウルルーバ28の側端部31が係脱可能に係止され、これにより、このカウルルーバ28の側端部31は上記フェンダブラケット14を介し車体骨格部材8であるエプロンメンバ7に支持される。
【0036】
ここで、上記したように、フェンダブラケット14の係止溝44に対し、フロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31の係止片49とがそれぞれ嵌入されて係止された場合、これら12b,49が同時に上記フェンダブラケット14の係止溝44から離脱することは、これらフロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31の係止片49とのうち、いずれか一方の部材が他方の部材に当接することにより阻止されるようになっている。
【0037】
このため、上記フェンダブラケット14の係止溝44に対する上記フロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31の係止片49との各係止は、これら両方の係止が同時に不意に解除されることは防止されて上記各係止状態は、より確実に維持される。また、このことから、上記フェンダブラケット14の係止溝44に対し上記フロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31の係止片49とを嵌入させて係止させる場合、これらを同時に嵌入させて係止させることはできず、上記係止溝44に順次嵌入させて係止させることが要求される。
【0038】
上記構成によれば、車体骨格部材8に支持され、上記フロントフェンダ12の上端部12bを係止させてこのフロントフェンダ12の上端部12bを支持するフェンダブラケット14を設け、上記カウルルーバ28の側端部31を上記フェンダブラケット14に係止させて支持させている。
【0039】
このため、上記車体骨格部材8に支持されたフェンダブラケット14に対し、フロントフェンダ12の上端部12bが係止されて支持されると共にカウルルーバ28の側端部31が係止されて支持されることから、これらフロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31とがそれぞれ個別の支持部材に支持されることに比べて互いの建付け精度が向上する。よって、その分、車体2前部の外観上の見栄えが向上する。
【0040】
また、上記車体骨格部材8がわに対する上記フロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31の延出端部31bとのそれぞれの支持に上記フェンダブラケット14が共用されたため、上記したフロントフェンダ12の上端部12bとカウルルーバ28の側端部31の延出端部31bとのそれぞれの支持は簡単な構成で達成される。
【0041】
また、前記したように、上記カウルルーバ28の側端部31のうち、車体2の後方に向かって延出する延出端部31bを上記フェンダブラケット14に係止させている。
【0042】
ここで、上記カウルルーバ28の側端部31のうちの延出端部31bは、その構造上、剛性が低くなりがちな部分であって、大気側などの熱により変形しがちである。しかし、上記したように延出端部31bを上記フェンダブラケット14に係止させたため、この延出端部31bの変形は防止される。よって、この点でも、車体2前部の外観上の見栄えが向上する。
【0043】
また、上記したように、フェンダブラケット14にカウルルーバ28の側端部31のうちの延出端部31bを係止させ、もって、この延出端部31bの熱変形を防止するようにしているが、この側端部31の延出端部31bは剛性が低くなりがちな部分である。このため、仮に、車両1の前突時に跳ね上げられた物体が上記カウルルーバ28に衝突した際には、その衝撃力により上記側端部31は容易に変形して、上記衝撃力に基づくエネルギーが効果的に吸収される。よって、その分、上記衝撃力は効果的に緩和される。