(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンにより、表面コイルにより受信された磁気共鳴信号とボディコイルにより受信された磁気共鳴信号とを取得する取得手段と、
前記ボディコイルによる磁気共鳴信号に基づいて、前記表面コイルによる磁気共鳴信号に対する位相補正係数を算出する算出手段と、
前記位相補正係数を用いて前記表面コイルによる磁気共鳴信号を補正する補正手段と、
前記補正された磁気共鳴信号に基づいて画像を再構成する再構成手段とを備えた磁気共鳴信号処理装置。
前記取得手段は、前記表面コイルによる磁気共鳴信号と前記ボディコイルによる磁気共鳴信号とを同時に受信する、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、実際には、複数のチャネルコイルの中で十分な信号を有していないチャネルコイルがあると、そのチャネルコイルに対する位相補正係数の精度が劣化し、最終的には再構成画像にゴースト(ghost)状のアーチファクト(artifact)を生じさせる。
【0006】
これに対する対応策としては、複数のチャネルコイルの中で受信信号のSN比(signal noise ratio)が最も高いチャネルコイルを一つ選択し、選択されたチャネルコイルで得られた信号に基づいて、各チャネルコイルごとに適用する位相補正係数を求める方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、単一のチャネルコイルでは感度が空間的に限定的であり、感度が低い箇所での受信信号は位相情報もあまり正しいとは言えない。そのため、他のチャネルコイルとは位相補正係数が大きく異なることがあり、それらのチャネルコイルにおいて位相補正が不十分になり、結果的に、再構成画像にアーチファクトを生じさせることがある。
【0008】
このような事情により、パラレルイメージング法を用いたEPIによる磁気共鳴撮影を行う場合において、受信信号に対してよりロバスト(robust)な位相補正を行って、再構成画像におけるアーチファクトを抑制することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点の発明は、
パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンにより、表面コイルにより受信された磁気共鳴信号とボディコイル(body coil)により受信された磁気共鳴信号とを取得する取得手段と、
前記ボディコイルによる磁気共鳴信号に基づいて、前記表面コイルによる磁気共鳴信号に対する位相補正係数を算出する算出手段と、
前記位相補正係数を用いて前記表面コイルによる磁気共鳴信号を補正する補正手段と、
前記補正された磁気共鳴信号に基づいて画像を再構成する再構成手段とを備えた磁気共鳴信号処理装置を提供する。
【0010】
第2の観点の発明は、
前記算出手段が、前記表面コイルによる磁気共鳴信号に基づいて、該表面コイルの各チャネルの信号に対する位相補正係数をそれぞれ算出し、
前記補正手段が、前記表面コイルのチャネルごとに、該チャネルの信号に対する位相補正係数と前記ボディコイルによる位相補正係数との差分が所定のしきい値以上であるときには、該チャネルの信号を前記ボディコイルによる位相補正係数を用いて補正し、前記差分が前記しきい値未満であるときには、該チャネルの信号を前記表面コイルによる位相補正係数を用いて補正する、上記第1の観点の磁気共鳴信号処理装置を提供する。
【0011】
第3の観点の発明は、
前記しきい値が、前記チャネルの信号に基づく位相補正係数の10%から50%の値である、上記第1の観点または第2の観点の磁気共鳴信号処理装置を提供する。
【0012】
第4の観点の発明は、
パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンにより、表面コイルとボディコイルとにより磁気共鳴信号を受信して取得する取得手段と、
前記ボディコイルによる磁気共鳴信号に基づいて、前記表面コイルによる磁気共鳴信号に対する位相補正係数を算出する算出手段と、
前記位相補正係数を用いて前記表面コイルによる磁気共鳴信号を補正する補正手段と、
前記補正された磁気共鳴信号に基づいて画像を再構成する再構成手段とを備えた磁気共鳴装置を提供する。
【0013】
第5の観点の発明は、
前記算出手段が、前記表面コイルの各チャネルの磁気共鳴信号に基づいて、該チャネルの信号に対する位相補正係数をそれぞれ算出し、
前記補正手段が、前記表面コイルのチャネルごとに、該チャネルの信号に対する位相補正係数と前記ボディコイルによる位相補正係数との差分が所定のしきい値以上であるときには、該チャネルの信号を前記ボディコイルによる位相補正係数を用いて補正し、前記差分が前記しきい値未満であるときには、該チャネルの信号を前記表面コイルによる位相補正係数を用いて補正する、上記第4の観点の磁気共鳴装置を提供する。
【0014】
第6の観点の発明は、
前記しきい値が、前記チャネルの信号に基づく位相補正係数の10%から50%の値である、上記第4の観点または第5の観点の磁気共鳴装置を提供する。
【0015】
第7の観点の発明は、
前記取得手段が、前記表面コイルによる磁気共鳴信号と前記ボディコイルによる磁気共鳴信号とを同時に受信する、上記第4の観点から第6の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴装置を提供する。
【0016】
第8の観点の発明は、
コンピュータ(computer)に、上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴信号処理装置として機能させるためのプログラム(program)を提供する。
【発明の効果】
【0017】
上記観点の発明によれば、パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンによる磁気共鳴撮影を行う場合において、感度がより安定しているボディコイルによる信号を用いて位相補正を行うので、よりロバストな位相補正を行って、再構成画像におけるアーチファクトを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
本実施形態は、パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンを行う磁気共鳴イメージング装置(magnetic resonance imaging system)である。本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体の撮影部位に配された表面コイルの各チャネルコイルの受信信号を位相補正する際に、ボディコイルの受信信号に基づく位相補正係数を適用する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を概略的に示す図である。
【0021】
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、静磁場コイル部11、勾配コイル(gradient coil)部12、ボディコイル部13、表面コイル部14、静磁場駆動部21、勾配駆動部22、RF駆動部23、データ(data)収集部24、被検体搬送部25、制御部30、記憶部31、操作部32、画像再構成部33及び表示部34を有している。
【0022】
静磁場コイル部11は、例えば超電導コイルであり、電流の供給を受けて静磁場を発生させ、静磁場空間を生成する。
【0023】
勾配コイル部12は、電流の供給を受けて、スライス(slice)軸方向、位相エンコード(phase encode)方向、および周波数エンコード(frequency encode)方向の3軸方向に勾配磁場を独立に発生させる。なお、ここでは、周波数エンコード方向、位相エンコード方向、およびスライス軸方向は、それぞれ、
図1に示すx方向、y方向、およびz方向と対応している。
【0024】
ボディコイル部13は、電流の供給を受けて、静磁場空間内の被検体40の原子核スピン(spin)を励起するための高周波磁場すなわちRFパルス(Radio Frequency pulse)を発生させる。また、ボディコイル部13は、被検体40からの磁気共鳴信号を受信する。
【0025】
表面コイル部14は、被検体40の撮影部位の表面に設置され、撮影部位からの磁気共鳴信号を受信する。表面コイル部14は、複数のチャネルコイルにより構成されている。チャネルコイルの数すなわちチャネル数は、例えば2〜10程度である。なお、表面コイルは、フェーズドアレイコイル(phased-array coil)、サーフェスコイル(surface coil)などとも言われ、チャネルコイルは、コイルエレメント(coil element)とも言われる。
【0026】
静磁場駆動部21は、制御部30からの制御信号を基に静磁場コイル部11を駆動して、静磁場を発生させる。
【0027】
勾配駆動部22は、制御部30からの制御信号を基に勾配コイル部12を駆動して、静磁場空間内に勾配磁場を発生させる。
【0028】
RF駆動部23は、制御部30からの制御信号を基にボディコイル部13を駆動して、静磁場空間内に高周波磁場を発生させる。
【0029】
データ収集部24は、ボディコイル部13及び表面コイル部14が受信した磁気共鳴信号を位相検波し、AD(Analog-Digital)変換して、その磁気共鳴信号のデータを生成する。生成された磁気共鳴信号のデータは、記憶部31に出力される。
【0030】
被検体搬送部25は、制御部30からの制御信号を基に、被検体40を静磁場空間の内外に搬送する。
【0031】
制御部30は、操作部32からの操作信号を基に、決められたパルスシーケンス(pulse sequence)を実施するよう、静磁場駆動部21、勾配駆動部22、RF駆動部23、データ収集部24、被検体搬送部25の各部に制御信号を送って制御する。
【0032】
記憶部31は、データ収集部24により収集されたMR信号のデータや、画像再構成部33により画像再構成処理して得られた画像データ等を記憶する。
【0033】
画像再構成部33は、制御部30からの制御により、記憶部31から磁気共鳴信号のデータを読み出し、そのデータに対して画像再構成処理を行って画像データを生成する。画像データは、記憶部31に出力される。
【0034】
表示部34は、操作部32の操作に必要な情報や、画像データが表す画像などを表示する。
【0035】
制御部30、記憶部31、画像再構成部33は、例えばコンピュータ(computer)により構成される。
【0036】
なお、ボディコイル部13と表面コイル部14とは、ハードウェア(hardware)的なデカップリング(decoupling)の措置が施されている。例えば、データ収集部24においてそれぞれのコイルに接続されたプリアンプ(pre-AMP、不図示)のインピーダンス(impedance)は、極力低くなるように設計されている。
【0037】
ここで、本実施形態における表面コイル部14の受信信号に対する位相補正の方法について説明する。
【0038】
通常、パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンを行う場合には、表面コイル部14の各チャネルコイルにより受信した磁気共鳴信号に対して、それぞれ位相補正を行う必要がある。また、各チャネルコイルの受信信号に対する位相補正処理は、そのチャネルコイルに対して求められた位相補正係数を用いて行われる。すべてのチャネルコイルで十分な受信信号が得られる場合には、チャネルコイルごとに、そのチャネルコイルの受信信号に基づいて位相補正係数を算出して適用することが、最も優れた画質を生み出すことになると考えられている。
【0039】
ここで、
図2に、表面コイル部14のある単一のチャネルコイルとボディコイル部13とによる受信信号のマグニチュード情報及び位相情報を表す図を示す。この図において、MC及びPCは、受信信号のSN比が最も高いチャネルコイルによる受信信号のマグニチュード情報及び位相情報をそれぞれ表しており、FOV内の各位置に対応する受信信号のマグニチュード及び位相を濃淡の違いで表したものである。また、MB及びPBは、ボディコイルによる受信信号のマグニュード情報及び位相情報をそれぞれ表しており、FOV内の各位置に対応する受信信号のマグニチュード及び位相を濃淡の違いで表したものである。
【0040】
一般的に、表面コイルのチャネルコイルは、概して感度が高く、その受信信号のSN比も高くなることが多い。しかし、
図2中のMC及びPCが示すように、チャネルコイルの高感度領域はFOV内において限定的であり、低感度領域での位相情報は曖昧である。そのため、ある特定のチャネルコイルの受信信号だけSN比が極端に低くなるような場合もある。受信信号のSN比が極端に低いと、算出される位相補正係数に多くのエラー成分を含み、適正範囲内での位相補正ができないことがある。そして、わずか1つでもチャネルコイルの受信信号に対する位相補正が適正でなくなると、再構成される画像においてゴースト状のアーチファクトが現れる。
【0041】
一方、ボディコイルは、概して感度があまり高くなく、その受信信号のSN比もチャネルコイルと比較して高くないことが多い。しかし、
図2中のMB及びPBが示すように、ボディコイルの感度は空間的にほぼ均一であり、FOV内のほぼすべての領域で安定したSN比の磁気共鳴信号を得ることができる。位相情報は全体的に曖昧さが小さい。
【0042】
そこで、本実施形態では、各チャネルコイルに対する位相補正係数を、そのチャネルコイルの受信信号ではなく、ボディコイル部13の受信信号に基づいて算出する。そして、算出された位相補正係数をそれぞれのチャネルコイルの受信信号に適用して位相補正する。本実施形態の方法によれば、すべてのチャネルコイルに対して最適な位相補正係数を求めることは難しいかもしれないが、適正範囲を外れた位相補正係数が算出される可能性を極力減らすことができる。その結果、よりロバストな位相補正を行って、再構成画像におけるゴースト状のアーチファクトの発生を抑制することが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態の方法では、表面コイル部14による受信とは別に、ボディコイル部13による受信を行う必要があるが、ボディコイル部13と表面コイル部14の両コイル部による同時受信を行えば、撮影時間の増大を避けることができる。
【0044】
図3は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1を機能的に表した機能ブロック(block)図である。磁気共鳴イメージング装置1は、信号取得部51、位相補正係数算出部52、位相補正処理部53及び画像再構成部54を含んでいる。なお、これら51〜54の各部は、それぞれ、発明における取得手段、算出手段、補正手段及び再構成手段の一例である。
【0045】
信号取得部51は、パラレルイメージング法を用いたEPIスキャンにより、k空間(k-space)における位相エンコード方向に広がる複数ビューについて、表面コイル部14から磁気共鳴信号を受信して取得する。また、信号取得部51は、同撮影法により、上記複数ビューについて、ボディコイル部13から磁気共鳴信号を受信して取得する。
【0046】
位相補正係数算出部52は、ボディコイル部13にて取得された磁気共鳴信号を基に、表面コイル部14のチャネルコイルごとに、そのチャネルコイルに対応する位相補正係数を算出する。なお、位相補正係数は、例えば、0次の係数,1次の係数,…など、求めるオーダによって、1または複数の係数により構成される。
【0047】
位相補正処理部53は、算出されたチャネルコイルごとの位相補正係数を、そのチャネルコイルの受信信号にそれぞれ適用して、これら受信信号の位相補正処理を行う。
【0048】
画像再構成部54は、位相補正処理が行われた各チャネルコイルの受信信号に対してフーリエ変換(逆フーリエ変換)を行って、画像を再構成する。
【0049】
以下、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1における撮影処理の流れについて説明する。
【0050】
図4は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1における撮影処理のフロー(flow)図である。なお、ここでは、便宜上、被検体40における所定の1枚のスライス領域を撮影し、そのスライスの画像を再構成する場合を想定する。
【0051】
ステップ(step)S1では、操作者が、表面コイル部14を被検体40に設置する。そして、信号取得部51が、操作者からの指令に応答して、所定のスライス領域SRに対してパラレルイメージング法を用いたEPIスキャンを行い、その磁気共鳴信号をボディコイル部13と表面コイル部14とで受信して取得する。なお、スキャンは、ボディコイル部13による受信と表面コイル部14による受信とで別々に分けて行ってもよいが、スキャンを共通化して、ボディコイル部13による受信と表面コイル部14による受信とを同時的に行うようにしてもよい。このようにすれば、撮影時間を短縮化できる。
【0052】
これにより、ボディコイル部13の受信信号Bと、表面コイル部14の各チャネルコイルE1〜Enの受信信号S
E1,S
E2,…,S
Enと、が得られる。
【0053】
ステップS2では、位相補正係数算出部52が、ボディコイル部13による受信信号Bを基に、表面コイル部14の各チャネルコイルの受信信号に対する位相補正係数を算出する。
【0054】
ステップS3では、位相補正処理部53が、各チャネルコイルの受信信号S
E1,S
E2,…,S
Enに対して、そのチャネルコイルに対して算出された位相補正係数を適用して、位相補正処理を行う。
【0055】
ステップS4では、画像再構成部54が、位相補正処理済みの各チャネルコイルの受信信号S
E1′,S
E2′,…,S
En′を基に画像を再構成する。
【0056】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について説明する。
【0057】
上述したように、一般的に、表面コイル部14を構成するチャネルコイルの場合、最高感度は高く、感度の高い部分で受信される磁気共鳴信号のSN比は高くなるが、感度分布が限定的であるため、SN比の安定性は低い。一方、ボディコイル部13の場合、感度は全体的に低めで、受信される磁気共鳴信号のSN比は低くなるが、感度分布がほぼ均一であるため、SN比の安定性は高い。そのため、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数は、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数と比較して、最高精度は高いが、安定性に欠け、十分な受信信号が得られない場合には精度が極端に劣化するという性質を持つ。一方、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数は、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数と比較して、最高精度は低いが、安定性がよく、精度が極端には落ちないという性質を持つ。
【0058】
本実施形態では、両コイルの性質のよい部分をそれぞれ活かすべく、以下のような処理を行う。表面コイル部14のチャネルコイルごとに、ボディコイル部13の受信信号に基づいて位相補正係数を算出するとともに、そのチャネルコイルの受信信号に基づいて位相補正係数を算出する。チャネルコイルごとに、そのチャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数と、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数との差異を調べる。その差異が一定レベル(level)以上であるときには、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数は、誤差が大きいとみなし、そのチャネルコイルの受信信号に対しては、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数を採用する。一方、その差異が一定レベル未満であるときには、誤差が小さいとみなし、そのチャネルコイルの受信信号に対しては、そのチャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数を採用する。そのため、本実施形態の方法は、よりロバストな位相補正を可能にすると言える。
【0059】
以下、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1′における撮影処理の流れについて説明する。
【0060】
図5は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1′における撮影処理のフロー図である。
【0061】
ステップT1では、信号取得部51が、操作者からの指令に応答して、所定のスライス領域SRに対してパラレルイメージング法を用いたEPIスキャンを行い、その磁気共鳴信号をボディコイル部13と表面コイル部14とで受信して取得する。
【0062】
ステップT2では、位相補正処理部53が、処理対象となるチャネルコイルを選択する。
【0063】
ステップT3では、位相補正係数算出部52が、処理対象のチャネルコイルについて、そのチャネルコイルに対する位相補正係数を、ボディコイル部13による受信信号Bに基づいて算出する。
【0064】
ステップT4では、位相補正係数算出部52が、処理対象のチャネルコイルについて、そのチャネルコイルの受信信号に対する位相補正係数を、そのチャネルコイルの受信信号に基づいて算出する。
【0065】
ステップT5では、位相補正処理部53が、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数とチャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数との差分が所定のしきい値以上であるか否かを判定する。この判定において、差分がしきい値以上であると判定されたときには、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数のエラー成分が、許容範囲外であるとみなし、ステップT6に進む。一方、差分がしきい値未満であると判定されたときには、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数のエラー成分が、許容範囲内であるとみなし、ステップT7に進む。なお、しきい値は、例えば、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数の10%〜50%の値を考えることができ、一つの目安として、例えば、20%〜40%の値を想定することができる。本例では、しきい値は30%程度とする。
【0066】
ステップT6では、位相補正処理部53が、処理対象のチャネルコイルの受信信号に対して、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数を適用して位相補正を行う。その後、ステップT8に進む。
【0067】
ステップT7では、位相補正処理部53が、処理対象のチャネルコイルの受信信号に対して、そのチャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数を適用して位相補正処理を行う。
【0068】
ステップT8では、位相補正処理部53が、処理対象として次のチャネルコイルがあるか否かを判定する。あると判定された場合には、ステップT2に戻り、新たなチャネルコイルを処理対象に選択する。ないと判定された場合には、ステップT9に進む。
【0069】
ステップT9では、位相補正処理済みの各チャネルコイルの受信信号に基づいて画像を再構成する。
【0070】
図6に、本提案法による位相補正の結果例を示す。
図6中の上
図Uは、表面コイル部14におけるSN比が最も高いチャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数を用いて位相補正処理を行った場合の再構成画像である。また、
図6中の下
図Dは、ボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数を用いて位相補正処理を行った場合の再構成画像である。
【0071】
上
図Uでは、左下側にゴースト状のアーチファクトが顕著に現れている。一方、下
図Dでは、そのアーチファクトの発生が程よく抑えられているのが分かる。
【0072】
以上、本実施形態によれば、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数の信頼度が高いと判断される場合には、精度が高い傾向にある当該位相補正係数をそのチャネルコイルの受信信号に対する位相補正処理に適用し、チャネルコイルの受信信号に基づく位相補正係数の信頼度が低いと判断される場合には、より無難なボディコイル部13の受信信号に基づく位相補正係数をそのチャネルコイルの受信信号に対する位相補正処理に適用する。これにより、更にロバストな位相補正を行うことができ、再構成画像におけるゴースト状のアーチファクトの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
なお、発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
【0074】
なお、上記の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置であるが、上述したようなMR信号の処理を行うMR信号処理装置や、コンピュータをこのようなMR信号処理装置として機能させるためのプログラムもまた、発明の一実施形態である。