特許第6348368号(P6348368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348368
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】対象検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/136 20170101AFI20180618BHJP
【FI】
   G06T7/136
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-164407(P2014-164407)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-40674(P2016-40674A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 叶秋
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 正則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】村井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】氏家 秀紀
【審査官】 村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−149018(JP,A)
【文献】 特開2012−084012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 − 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像において所定の対象が現れている対象領域を検出する対象検出装置であって、
前記入力画像内に設定される注目領域に前記対象が存在する尤もらしさを表す指標値を前記入力画像内の各所にて抽出される特徴量を用いて算出するための指標値算出関数を予め記憶している記憶部と、
前記入力画像内の複数の位置に前記注目領域を設定し、当該注目領域における前記指標値を前記指標値算出関数により算出する指標値算出部と、
前記注目領域のうち前記指標値が予め定められた第一閾値以上であるものを候補領域として抽出すると共に、当該候補領域相互についての予め定められた重複関係を満たす複数の前記候補領域からなる領域グループを生成する領域グループ生成部と、
前記領域グループのうち、帰属する前記候補領域の個数が予め定められた個数閾値以下であり且つ帰属する全ての前記候補領域の前記指標値が前記第一閾値よりも高く定めた第二閾値以下であるものを削除する領域グループ削除部と、
前記領域グループ削除部によって削除されなかった前記領域グループそれぞれから前記対象領域を決定する対象領域決定部と、
を備えたことを特徴とする対象検出装置。
【請求項2】
前記領域グループに帰属する前記候補領域の前記個数が前記個数閾値以下である場合における前記第二閾値は当該個数に応じて設定され、当該第二閾値の各設定値は、当該設定値に対応する前記個数が多いほど小さい値であること、を特徴とする請求項1に記載の対象検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力画像から所定の対象が現れた対象領域を検出する対象検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラなどで撮影した入力画像から人物領域などを検出するために識別器等による探索処理が行われる。入力画像における対象の位置や大きさは一般に未知であるため、この探索処理では、入力画像内の各位置に窓領域を設定し、窓領域における画像を識別器等に入力する。そして、識別器等から出力されるスコアが閾値を超える窓領域を対象の候補領域として抽出する。
【0003】
このとき1つの対象に対して、真の対象の位置及び大きさを有する候補領域が抽出されるだけでなく、その近傍や内側においても位置及び/または大きさの異なる複数の候補領域が抽出される。そのため、重複を有する候補領域を、1つの対象に対して抽出された複数の候補領域であるとしてグループ化し、領域グループごとにスコアが最大の候補領域を対象の領域として選別することが行われている。
【0004】
ここで、領域グループは背景のみが写った領域(以下、背景領域)でも抽出されることがある。そこで従来、重複して抽出された候補領域の数を求め、求めた数が閾値を下回る候補領域を削除していた。これは、背景領域では重複して抽出される候補領域の数が少ない傾向を利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−160640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、背景領域であっても比較的多くの候補領域が重複して抽出されることがあり、また、対象が写った領域であっても対象の姿勢変動などの影響によって重複して抽出される候補領域の数が比較的少なくなる場合がある。
【0007】
そのため、従来技術のように重複数だけに着目し、重複数が閾値を下回る領域グループを削除すると、対象を含む領域グループを誤って削除してしまうおそれがあった。或いは、重複数の閾値を高めに設定してしまうと対象領域の領域グループを検出し損ねるおそれがあった。
【0008】
また、真の対象を表す候補領域であっても対象の姿勢変化などによってスコアが低めとなる場合があり、単純に候補領域を抽出する閾値を引き上げて背景領域での領域グループの抽出を抑制しようとすると対象を検出し損ねる問題があった。
【0009】
このように従来技術は対象の領域グループと背景の領域グループとを好適に弁別できないことが比較的起こりやすいという問題を有していた。
【0010】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、対象の検出し損ねを防止しつつ、背景領域にて対象の誤検出を防止し、入力画像から精度よく対象を検出可能な対象検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る対象検出装置は、入力画像において所定の対象が現れている対象領域を検出するものであって、 前記入力画像内に設定される注目領域に前記対象が存在する尤もらしさを表す指標値を前記入力画像内の各所にて抽出される特徴量を用いて算出するための指標値算出関数を予め記憶している記憶部と、前記入力画像内の複数の位置に前記注目領域を設定し、当該注目領域における前記指標値を前記指標値算出関数により算出する指標値算出部と、前記注目領域のうち前記指標値が予め定められた第一閾値以上であるものを候補領域として抽出すると共に、当該候補領域相互についての予め定められた重複関係を満たす複数の前記候補領域からなる領域グループを生成する領域グループ生成部と、前記領域グループのうち、帰属する前記候補領域の個数が予め定められた個数閾値以下であり且つ帰属する前記候補領域の前記指標値が前記第一閾値よりも高く定めた第二閾値以下であるものを削除する領域グループ削除部と、前記領域グループ削除部によって削除されなかった前記領域グループそれぞれから前記対象領域を決定する対象領域決定部と、を備える。
【0012】
本発明に係る対象検出装置においては、前記領域グループに帰属する前記候補領域の前記個数が前記個数閾値以下である場合における前記第二閾値は当該個数に応じて設定され、当該第二閾値の各設定値は、当該設定値に対応する前記個数が多いほど小さい値とするのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対象の検出し損ねを防止しつつ背景の誤検出を的確に減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る人物検出装置の概略のブロック構成図である。
図2】入力画像及び縮小画像の例を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る人物検出装置の概略の動作を示すフロー図である。
図4】領域グループ生成部の概略の処理フロー図である。
図5】領域グループ生成部により抽出された候補領域に対する後続処理を説明する模式的な画像である。
図6】領域グループ削除部の概略の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る対象検出装置は、画像中に映った人物を検出の対象とする人物検出装置1である。
【0016】
[構成例]
図1は、実施形態に係る人物検出装置1の概略のブロック構成図である。人物検出装置1は、画像入力部2、制御部3、記憶部4及び出力部5を含んで構成される。画像入力部2、記憶部4及び出力部5は制御部3と接続される。
【0017】
画像入力部2は例えば、監視カメラなどの撮像装置、又は映像を記録したデジタルビデオレコーダーなどの記録装置であり、画像を制御部3へ出力する。以下、画像入力部2から制御部3に入力される画像を入力画像と称する。
【0018】
制御部3はCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置を用いて構成される。制御部3は、画像入力部2からの入力画像を処理して人の存在有無を判定し、その判定結果等を出力部5へ出力する処理を行う。そのために、制御部3は、記憶部4からプログラムを読み出して実行し、画像縮小部30、特徴量抽出部31、指標値算出部32、領域グループ生成部33、領域グループ削除部34及び対象領域決定部35として機能する。
【0019】
画像縮小部30は、入力画像に撮像されている人物のサイズが様々であることに対応して、予め設定された複数段階の倍率で入力画像を縮小する。これにより画像内にて人物を検出するために設定する窓領域の大きさは変えずに、様々なサイズの人物領域を検出することが可能となる。例えば、画像縮小部30は入力画像を予め定めた最小幅または高さになるまで決まった間隔で順次縮小し、縮小画像を生成する。縮小倍率は、例えば縦横のサイズが半分になるまでの間に10段階に設定される。例えば、図2(a)に示す画像100が原サイズの入力画像であり、図2(b),(c)に示す画像110,120は画像100を縮小した入力画像の例である。
【0020】
特徴量抽出部31は、原サイズの入力画像及び縮小した入力画像のそれぞれを予め定めたブロックサイズに区切り、各ブロックの画像から特徴量を抽出する。特徴量として、ヒストグラム・オブ・オリエンティッド・グラディエント(Histograms of Oriented Gradients:HOG)特徴量、局所二値パターン(Local Binary Pattern:LBP)特徴量、Haar-like特徴量などの従来知られた特徴量を単独で、又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0021】
指標値算出部32は、原サイズの入力画像及び縮小した入力画像内の各位置に人物を検出するための枠として、予め定めた人の大きさの窓領域(注目領域)を設定し、当該窓領域に対象が存在する尤もらしさを表す多値の指標値であるスコアを、入力画像内の各所にて抽出された特徴量と予め学習した指標値算出関数により算出する。例えば、指標値算出部32は、各窓領域内の特徴量を指標値算出関数に入力して当該窓領域に対するスコアを算出する、または、人物の腕部等が窓領域からはみ出す姿勢変動を考慮して窓領域内及び窓領域周辺の所定範囲の特徴量を指標値算出関数に入力して当該窓領域に対するスコアを算出する。
【0022】
なお、図2では画像100,110,120に設定される矩形の窓領域101の例を点線で示している。指標値算出部32は窓領域101を少しずつずらしながら繰り返し設定し、画像全体を走査する。例えば、窓領域101の走査は画像の左上から水平方向の走査が開始される。水平方向の走査は垂直方向の位置を少しずつずらしつつ繰り返される。
【0023】
指標値算出関数は本実施形態では、検出対象である「人」と「人」以外とを識別する識別器である。識別器は「人」が映っている多数の画像と、「人」が映っていない多数の画像とを用いて予め学習され、後述する指標値算出関数格納部40に格納されている。指標値算出部32は識別器に窓領域の位置に応じて特徴量を与えることでスコアを算出する。指標値算出部32は、窓領域の矩形情報(入力画像における位置、幅及び高さ)とそのスコアを、後述する指標値格納部41に格納する。例えば、入力画像における窓領域の位置として窓領域をなす矩形の左上の座標が格納される。
【0024】
領域グループ生成部33は、指標値格納部41から、スコアが予め定めた第一閾値T以上である窓領域を候補領域として抽出すると共に、当該候補領域相互についての予め定められた重複関係を満たす複数の領域からなる領域グループを生成する。具体的には、領域グループ生成部33は、所定以上の重複を有する候補領域同士に同じラベル番号を割り当てることによって領域グループの情報を生成する。また、その際にスコアの高い候補領域を優先的にグループの核とする。詳細は動作の説明にて後述する。領域グループ生成部33で割り当てた各候補領域のラベル番号は、矩形情報及びスコアと共に、後述する領域グループ格納部42に格納される。
【0025】
領域グループ削除部34は、領域グループ格納部42に格納されている領域グループのうち、削除条件に合致するものを領域グループ格納部42から削除する。ここで、実験的に、人物の領域を含む領域グループは、人物の領域が含まれない領域グループよりも候補領域数が多く、且つ、姿勢変動、オクルージョン等が原因で仮に候補領域数が少なくなった場合でも、候補領域のスコアは人物の領域が含まれない領域グループの候補領域のスコアよりも高い傾向があることがわかった。そこで、削除条件は、領域グループが次の2つの要件(R1),(R2)をいずれも満たしていることとする。
【0026】
(R1)領域グループに帰属する候補領域の個数が予め定めた個数閾値M以下であること。
【0027】
(R2)領域グループに帰属する全ての候補領域のスコアが第一閾値Tよりも高く定めた第二閾値T以下であること。
【0028】
個数閾値Mは、指標値算出関数の性能、第一閾値の設定、縮小率の設定などに依存して実験的・経験的に決定するものであって、例えば、実験データにおいて人物を含まない領域グループごとに候補領域の個数を求め、これらのグループから求めた個数の最大値を閾値Mに設定することができる。つまり、個数閾値Mは、人物を含まないグループのうち最も個数が多い領域グループに基づいて定めた閾値であるので、人物を含まない可能性がある領域グループと確実に人物を含む領域グループとの境界となる閾値と推定することができる。
【0029】
第一閾値Tは、事前の実験に基づいて設定することができ、真の人物領域を検出し損ねない程度に低めの値に設定される。例えば、第一閾値Tは実験データにおける真の人物領域に対して算出されたスコアの最小値とすることができる。第二閾値Tも事前の実験を基づいて設定することができる。第二閾値Tは第一閾値Tよりも高い値であるが、領域グループ削除部34による第二閾値Tに関する要件(R2)の適用の有無が問題となるのは、領域グループが要件(R1)を満たす場合に限定される。そこで例えば、実験データにおいて帰属する候補領域の個数がM個以下であり真の人物領域を含む領域グループごとに最大スコアを求め、これらのグループから求めた最大スコアのうちの最小値を第二閾値Tとすることができる。
【0030】
第二閾値Tは人物を含む領域グループのうち最もスコアが低い領域グループに基づいて定めた閾値であるので、これを人物を含む領域グループと人物を含まない領域グループとの境界となる閾値と推定することができる。
【0031】
対象領域決定部35は領域グループ格納部42に格納されている領域グループから最終的な人物領域を求める。対象領域決定部35は、領域グループ削除部34で残された領域グループごとに1つの人物領域を定め、当該人物領域の領域情報をスコアと共に対象領域格納部43に格納する。例えば、対象領域決定部35は、最終的な人物領域として、各領域グループの中でスコアが最大になる候補領域を1つ選択する。或いは、対象領域決定部35は、領域グループごとに当該領域グループを構成する候補領域を平均して最終的な人物領域を算出する。当該平均を求める際、スコアで重み付けをしてもよい。
【0032】
制御部3は,入力画像から最終的な人物領域が1つでも検出された場合は、その情報を出力部5に出力する。
【0033】
記憶部4はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶装置であり、制御部3で使用されるプログラムやデータを記憶する。記憶部4はこれらプログラム、データを制御部3との間で入出力する。記憶部4は指標値算出関数格納部40、指標値格納部41、領域グループ格納部42及び対象領域格納部43としての機能を有する。
【0034】
指標値算出関数格納部40は、入力画像内に設定される窓領域に対象が存在する尤もらしさを表す指標値であるスコアを、入力画像内の各ブロックにて抽出される特徴量を用いて算出するための指標値算出関数、及び第一閾値Tを予め記憶している。指標値算出関数は既に述べたように識別器であり、具体的には予め収集した人の学習用画像と人以外の学習用画像にサポートベクターマシーン(Support Vector Machine:SVM)を適用して求めた識別器のパラメータが指標値算出関数格納部40に格納される。学習アルゴリズムとして線形SVMを用いた場合、識別器のパラメータは学習用画像から生成した重みベクトルである。この重みベクトルは、特徴量の各要素に対する重みである。重みベクトルは、当該重みベクトルと学習用画像から抽出された特徴量との内積が0より大きい場合は人、0以下の場合は人以外と識別されるように学習において調整され、入力画像の特徴量と重みベクトルとの内積の値がスコアを表す。よって、人と人以外のスコアを識別する閾値は原理上は0であり、通常、第一閾値Tは0に設定される。しかし本実施形態では前述したように、人を人以外であると識別する誤りを減じるために、第一閾値Tを0よりも小さな値に設定しておく。
【0035】
識別器の学習アルゴリズムにはSVMの他、アダブースト(AdaBoost)法など、従来知られた各種のものを用いることができる。
【0036】
また、識別器の代わりにパターンマッチング器を用いることもでき、その場合、スコアは人の学習用画像から抽出した特徴量の平均パターンと入力画像の特徴量との距離の逆数などとなり、指標値算出関数は当該スコアを出力値とし入力画像の特徴量を入力値とする関数とすることができる。
【0037】
指標値格納部41は、指標値算出部32で算出された各窓領域の情報を格納する。窓領域の情報は当該窓領域の矩形情報(入力画像における矩形の位置及び寸法)とスコアを対応付けた情報である。
【0038】
領域グループ格納部42は、領域グループ生成部33で生成された各領域グループの情報を格納する。領域グループの情報は、領域グループのラベル番号(識別符号)と領域グループに帰属する候補領域の数と各候補領域の情報とを対応付けた情報である。候補領域の情報は、矩形情報(入力画像における矩形の位置及び寸法)とスコアである。格納された領域グループの情報のうち削除条件に合致したものは領域グループ削除部34により削除される。
【0039】
対象領域格納部43は、対象領域決定部35により最終的に人物がいると判定された人物領域の情報を格納する。人物領域の情報は、候補領域の情報と同様、入力画像における人物領域の矩形情報(矩形の位置、及び寸法)とスコアとを対応付けた情報である。
【0040】
出力部5は対象領域決定部35の結果を受けて、ディスプレイなどの外部表示装置に入力画像と共に異常発生の旨を表示し、または、異常信号をセンタ装置へ送出するといった警報出力を行う。
【0041】
[動作例]
次に人物検出装置1の動作を説明する。図3は人物検出装置1の概略の動作を示すフロー図である。制御部3は画像入力部2から画像を入力されると(ステップS10)、画像縮小部30により、入力画像を複数の倍率それぞれで縮小して縮小画像を作成する(ステップS20)。例えば、図2に示したように、入力画像100から縮小画像110,120が生成される。
【0042】
特徴量抽出部31は入力画像及び複数の縮小画像それぞれについて、画像内の各所において特徴量を抽出する(ステップS30)。
【0043】
指標値算出部32は、特徴量抽出部31で抽出された特徴量と指標値算出関数格納部40に格納されている識別器とにより画像内の各所に設定する窓領域に対応したスコアを算出し指標値格納部41に格納する(ステップS40)。
【0044】
領域グループ生成部33は、指標値算出部32で算出されたスコアに基づき人物の候補領域を抽出し、重複する複数の候補領域からなる領域グループを生成して領域グループ格納部42に格納する(ステップS50)。
【0045】
図4は領域グループ生成部33の概略の処理フロー図である。図4を用いて領域グループ生成部33の動作について説明する。
【0046】
領域グループ生成部33は指標値格納部41を参照し、スコアが第一閾値T以上である窓領域を候補領域として抽出する(ステップS500)。
【0047】
図2では、候補領域の例を窓領域101に応じた大きさの実線の矩形で示している。画像100では左側の小さな(遠くの)人物像の辺りに候補領域102a,102bが抽出されている。また、画像110では中央のバス停標識の辺りに候補領域112a,112bが検出され、画像120では右側の大きな(近くの)人物像の辺りに候補領域122a〜122dが抽出されている。なお、図2に示すように、人物などの1つの像に対し、重複した複数の候補領域が抽出され得る。
【0048】
図5は領域グループ生成部33により抽出された候補領域に対する後続処理を説明する模式的な画像である。なお、図5の画像は図2に示したものと同じ内容が映っており、図5(a)の画像130は、画像100,110,120の候補領域を1つの画像上にまとめて表示したものである。画像130は入力画像100と等倍のサイズであり、画像100の候補領域102a,102bはそのままの倍率で画像130上の候補領域131a,131bとなる。一方、縮小画像における候補領域112a,112b,122a〜122dそれぞれは入力画像100の倍率に正規化された候補領域132a,132b,133a〜133dとなる。
【0049】
領域グループ生成部33は抽出した候補領域をスコアの降順に並べ替え(ステップS501)、全候補領域についてラベル情報をラベル番号が未割当であることを示す状態に設定する(ステップS502)。
【0050】
領域グループ生成部33は、ラベル番号を0から順次、インクリメントして設定する。そこで、現在のラベル番号を初期値0に設定する(ステップS503)。
【0051】
領域グループ生成部33はラベル番号が未割当の候補領域があるかどうかチェックする(ステップS504)。未割当の候補領域がある場合は(ステップS504にて「YES」の場合)、未割当の候補領域の中からスコアが最大になるもの(候補領域Aとする)を選択し(ステップS505)、現在のラベル番号を付与する(ステップS506)。
【0052】
そして候補領域Aを比較の基準として、ラベル未割当の候補領域を1つずつ比較相手として繰り返されるループ処理(S507〜S511)が行われる。当該ループ処理では比較相手として選択されていない候補領域を順次選択し(ステップS507)、比較相手として選択された候補領域Bと、候補領域Aとの重複度を計算し(ステップS508)、重複度が予め定められたグループ判定閾値より大きいか否かを判定する(ステップS509)。
【0053】
重複度は、例えば、(入力画像中での候補領域Aと候補領域Bとの共通領域の面積) / (入力画像中での候補領域A及び候補領域Bの面積のうち小さい方)で計算される。また、(入力画像中での候補領域Aと候補領域Bとの共通領域の面積) / (入力画像中での候補領域Aと候補領域Bとの和領域の面積)で重複度を計算することもできる。例えば、グループ判定閾値は0.5に設定することができる。
【0054】
重複度がグループ判定閾値より大きい場合は(ステップS509にて「YES」の場合)、候補領域Bに候補領域Aと同じラベル番号を付与し(ステップS510)、当該候補領域Bについての処理を終えステップS507に戻る。一方、重複度がグループ判定閾値以下の場合は(ステップS509にて「NO」の場合)、候補領域Bはラベル番号を未割当の状態のままとして当該候補領域Bについての処理を終えステップS507に戻る。
【0055】
或る候補領域Aについて未割当の候補領域すべてとの比較が終了した場合、つまりステップS507で未処理の候補領域が存在せず選択できなかった場合(ステップS511にて「NO」の場合)、現在のラベル番号をインクリメントし(ステップS512)、ステップS504に戻り、新たな候補領域Aを選択してステップS505〜S512の処理を繰り返す。
【0056】
一方、候補領域に対してラベル番号の付与がすべて終了した場合、つまり未割当の候補領域が無い場合は、(ステップS504で「NO」の場合)、同じラベルを付与された候補領域同士を領域グループとして領域グループ格納部42に格納して(ステップS513)、グループ生成処理を終了し図3のステップS60に処理を移行する。
【0057】
なお、上述のように、スコアが高い候補領域を優先してグループの核に設定することにより、近接する複数の人物に係る候補領域が1つのグループとなることを回避することが期待できる。
【0058】
領域グループ生成部33の処理の結果、例えば、図5(a)の画像130における候補領域133a〜133dがラベル番号“0”のグループとなり、候補領域131a,131bがラベル番号“1”のグループとなり、候補領域132a,132bがラベル番号“2”のグループとなる。
【0059】
なお、候補領域の重心と寸法をパラメータとするクラスタリングによっても重複度に基づくグループ生成を行うことができる。
【0060】
領域グループ削除部34は、領域グループ格納部42に格納された領域グループのうち、上述した削除条件、すなわち要件(R1)及び(R2)に合致するものを領域グループ格納部42から削除する(ステップS60)。図6は領域グループ削除部34の概略の処理フロー図である。図6を用いて領域グループ削除部34の動作について説明する。
【0061】
領域グループ削除部34は領域グループ格納部42に格納されている領域グループを1つずつ処理対象として選択してステップS601〜S603の処理を行い(ステップS600にて「YES」の場合)、未処理の領域グループがなくなるとグループ削除処理を終了し図3のステップS70に処理を移行する(ステップS600にて「NO」の場合)。
【0062】
領域グループ削除部34は処理対象の領域グループについて、例えばまず要件(R1)を満たすか否か、つまり当該グループに帰属する候補領域の個数が予め定められた個数閾値M以下か否かを判定する(ステップS601)。個数閾値M以下の場合は(ステップS601にて「YES」の場合)、さらにスコアに関する要件(R2)を満たすか否か、すなわち領域グループに帰属する全ての候補領域のスコアが第二閾値T以下か否か判定する(ステップS602)。なお、第二閾値Tは既に述べたように、候補領域を抽出するための第一閾値Tよりも高く定められた閾値である。
【0063】
ステップS602にてスコアが第二閾値T以下の場合は(ステップS602にて「YES」の場合)、当該領域グループは削除条件である要件(R1)及び(R2)を満たすので、領域グループ削除部34は当該領域グループを領域グループ格納部42より削除する(ステップS603)。
【0064】
一方、要件(R1)を満たさない場合(ステップS601にて「NO」の場合)、及び要件(R2)を満たさない場合(ステップS602にて「NO」の場合)は、領域グループ削除部34は当該領域グループを削除せず、ステップS600に戻り、次の領域グループを処理対象とする。
【0065】
図5(b)の画像140は画像130に対する領域グループ削除部34の処理結果を示しており、例えば、個数閾値Mを2として、以下にその処理と効果を説明する。
【0066】
候補領域133a〜133dからなる領域グループ“0”は候補領域の数が4であるので要件(R1)を満たさず、よって削除されない。このように十分に多い候補領域が抽出される典型的な人物領域グループは、グループを構成する候補領域のスコアと第二閾値Tとの関係によらず適切に残すことができる。
【0067】
一方、人物に起因する候補領域131a,131bからなる領域グループ“1”は、候補領域の数が2であり要件(R1)を満たし、背景に起因する候補領域132a,132bからなる領域グループ“2”もまた候補領域の数が2であり要件(R1)を満たす。従来技術のように要件(R1)のみで削除条件を構成すると、背景に起因する領域グループ“2”は削除できるものの、人物に起因する領域グループ“1”までも削除されてしまう。
【0068】
しかし、要件(R2)を削除条件に含んだ本発明を適用することにより、これらを適切に弁別できる。すなわち、人物に起因する領域グループ“1”においては好適に真の人物領域を捉える位置にある候補領域131aのスコアが第二閾値Tを超えるため要件(R2)を満たさず、よって削除されない。他方、領域グループ“2”においては各候補領域132a,132bが背景に起因するためスコアが第二閾値T以下となり要件(R2)を満たし、よって削除される。
【0069】
上述した領域グループ削除部34の処理が終わると、対象領域決定部35は最終的な人物領域を求めて対象領域格納部43に格納する(図3のステップS70)。
【0070】
図5(c)の画像150は画像140に対する対象領域決定部35の処理例を示しており、領域グループ“0”,“1”それぞれから、スコアが最大となる候補領域133a,131aが人物領域として選択されている。
【0071】
ステップS70にて人物領域の算出後、画像中に人物が1人でもいた場合(ステップS80にて「YES」の場合)、例えば、出力部5は検出された人物領域の情報と当該人物領域が検出された入力画像とを含めた異常信号をセンタ装置に送出する(ステップS90)。
【0072】
以上、実施形態を用いて説明した本発明では、領域グループに含まれる候補領域の個数と候補領域のスコアとを併用することで、人物領域の最終的な検出結果の精度を向上させる。具体的には、領域グループに含まれる候補領域の個数を第一の指標として、個数が閾値Mを下回ることを領域グループの削除条件の1つの要件(R1)とする。さらに、候補領域を見つけたときのスコアの閾値Tよりも高く定めた閾値Tを第二の指標として、候補領域のスコアがいずれも第二の指標を下回ることを領域グループの削除条件の他の1つの要件(R2)とする。これら要件(R1)及び(R2)を両方満たす領域グループを削除することで、対象の検出し損ねを防止しつつ背景の誤検出を的確に減じ、最終的な検出結果の精度を向上させることができる。
【0073】
[他の実施形態]
以下、本発明の他の実施形態について上記実施形態との相違点のみを説明する。上記実施形態において領域グループ削除部34は1つの第二閾値Tを用いた削除条件に基づいて背景に起因する領域グループを削除したが、別の実施形態として、要件(R2)における第二閾値Tを、領域グループに含まれる候補領域の個数mに応じて変化させる構成とすることができる。例えば、要件(R2)において、個数閾値M以下の候補領域の個数mに対して第二閾値Tが複数段階に設定される。
【0074】
具体的には、個数閾値M以下の候補領域の個数mに対して設定される複数の第二閾値Tの設定値は、個数mが多いほど小さく定められる。例えば、個数mについて個数閾値M以下の範囲を上から順に区間b、区間b、区間bの3つに区切り、区間bの第二閾値Tの設定値をρ(b)と表すと、T<ρ(b)<ρ(b)<ρ(b)を満たすように設定される。ちなみに、各区間に含まれる個数mの値は1つでも複数でもよい。
【0075】
領域グループ削除部34は要件(R1)を満たす領域グループに対して、当該領域グループに帰属する候補領域の個数mに応じた第二閾値Tにて要件(R2)を満たすか否かを判定する。すなわち、第二閾値Tは個数mが多いときほど低くなるように定められ、領域グループ削除部34は領域グループについて、個数mが予め定められた閾値M以下である場合に、帰属する全ての候補領域のスコアが個数mに応じた定められた第二閾値T以下であるものを背景に起因する領域グループとして削除する。
【0076】
帰属する候補領域の個数mが多いほど対象領域を含む領域グループである確度が高いため、帰属する候補領域の個数mが多い領域グループほど第二閾値Tを低くでき、これによって対象領域の検出し損ねを防止する効果を高めることができる。他方、帰属する候補領域の個数mが少ない領域グループほど高い第二閾値Tが適用されるので、背景領域の誤検出も適確に防止できる。
【0077】
なお、上記実施形態においては検出対象を人の全身としたが、人の顔や上半身など特定の部位を検出対象としてもよく、車輌や標識など各種の物体を検出対象としてもよく、また、表情や姿勢など各種の状態を検出対象としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 人物検出装置、2 画像入力部、3 制御部、4 記憶部、5 出力部、30 画像縮小部、31 特徴量抽出部、32 指標値算出部、33 領域グループ生成部、34 領域グループ削除部、35 対象領域決定部、40 指標値算出関数格納部、41 指標値格納部、42 領域グループ格納部、43 対象領域格納部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6