【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例において使用した原料と、作製したフィルムの評価方法は次の通りである。
【0041】
<使用原料>
(保護層(A)、紫外線吸収層(B))
ポリフッ化ビニリデン系樹脂:「カイナーK720」(アルケマ株式会社製)結晶性ポリマーでフッ素含有量約59%、融点約170℃のポリフッ化ビニリデン系樹脂,MFR(条件:230℃、3.8kg加重)5〜29(g/10min)
ポリメタクリル酸エステル系樹脂:「ハイペットHBS000」(三菱レイヨン株式会社製)アクリル酸ブチル(n−BA)とメタクリル酸ブチル(BMA)のゴム成分を含むポリメタクリル酸エステル系樹脂。MFR(230℃,3.8kg加重)4〜7(g/10min)
紫外線吸収剤:トリアジン系紫外線吸収剤「TINUVIN 1577 ED」(BASF社製)、酸化亜鉛「DIF−H3」(堺化学株式会社製)
(接着層(C))
熱可塑性エラストマー:SEBS系エラストマー「タフテックH1221」(旭化成ケミカルズ株式会社製)密度0.89g/cm
3,MFR(条件:230℃、3.8kg加重)4.5(g/10min)
(基材層(D))
ポリオレフィン系樹脂:特殊LLDPE樹脂「NC566A」(日本ポリエチレン株式会社製)密度0.918g/cm
3,MFR(条件:230℃、3.8kg加重)3.8(g/10min)
(防滴層(E))
防滴剤:シリカ懸濁液「エクセルピュア」(中央自動車工業株式会社製)
【0042】
<評価方法>
(表面粗度)
表面処理を施し、防滴層(E)を形成する前の基材層(D)側の表面について、超深度形状測定顕微鏡「VK−8510」(キーエンス株式会社製)を用いて、対物レンズ×20倍及び測定の間隔0.5μmの測定条件にて、多層フィルムの長手方向に沿って基準長さ(L)=900μmの粗さ曲線Y=f(X)を測定し、その曲線からJIS B 0601に規定された計算式(前記(2)式)に基づき算術平均粗さRaを測定した。なお、測定は基材層(D)側表面上の任意箇所10点について行い、算術平均粗さRaはその平均値で表示した。
【0043】
(光学物性)
(全光線透過率)
作製した農業用フッ素含有多層フィルムを5cm角に切り出し、JIS K 7105に準拠して、日本電色工業株式会社製の「NDH2000」を用いて測定した。
【0044】
(ヘーズ)
作製した農業用フッ素含有多層フィルムを5cm角に切り出し、JIS K 7105に準拠して、日本電色工業株式会社製の「NDH2000」を用いて測定した。
【0045】
(紫外線透過率)
作製した農業用フッ素含有多層フィルムについて、日立分光光度計「U−3310」(日立ハイテクフィールディング株式会社製)を用いて波長340nmにおけるUV透過率を測定した。
【0046】
(耐候性)
(保護層(A)のβ晶比率)
「NICOLET380 FT−IR」(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)によって、作製した農業用フッ素含有多層フィルムの保護層(A)側表面の赤外線吸収スペクトルの測定を行った。赤外線吸収スペクトルにおけるポリフッ化ビニリデン樹脂のβ型結晶の特性吸収は波数840cm
−1にあり、α型結晶の特性吸収は波数765cm
−1に存在するため、β晶比率は、得られたスペクトルの各ピーク強度から以下の(1)式を用いてβ晶比率を算出した(Rinaldo Gregorio JR.and Marcelo Cestari「Effect of Crystallization Temperature on the Crystalline Phase Contact and Morphologyof Poly(vinylidene Fluoride) 」、Journal .32、(1994)859−870頁を参照)。
【数5】
【0047】
(UV照射試験後の色相ΔE)
UV照射試験を、「ダイプラ・メタルウェザー」(ダイプラ・ウェンテス株式会社製)を用いて行った。
作製した農業用フッ素含有多層フィルムについて、日本電色工業社製の測色色差計「ZE−2000」を使用して色差測定を行なった後、試験機に投入し、下記条件で耐久試験を実施した。
UV照射強度:132mW/cm
2
1サイクル:12時間(10時間照射、2時間暗黒シャワー)
湿度:51%
ブラックパネル温度:62℃
時間:240時間
照射面:保護層面
試験後、フィルムの色差測定を再び行ない、試験前後の耐黄変性の指標であるΔE値を算出した。
【0048】
(防滴性)
80℃の温水を循環させたウォーターバスの開閉部に作成した農業用フッ素含有多層フィルムを勾配15
oで展張し、3ヶ月後のフィルム外観を目視で観察して、下記の通り評価した。
優:水滴の付着がなく均一に水膜状に濡れている。
良:フィルム全体の25%未満の面積に水滴が付着している。
可:フィルム全体の25%以上75%未満の面積に水滴が付着している。
不可:フィルム全体の75%以上の面積に水滴が付着している。
【0049】
(防塵性)
屋外に作製した農業用フッ素含有多層フィルムを展張し、36ヶ月後のフィルム外観を目視で観察して、下記の通り評価した。
優:粉塵の付着がなく汚れがみられない。
良:フィルム全体の25%未満の面積が汚れている。
可:フィルム全体の25%以上75%未満の面積が汚れている。
不可:フィルム全体の75%以上の面積が汚れている。
【0050】
<実施例1>
前記のポリフッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)80質量部及びポリメタクリル酸エステル系樹脂(PMMA)20質量部をタンブラーにてブレンドして混合物とし、φ30mmの2軸押出機によって混練して、保護層(A)用のコンパウンドを得た。
また、前記のポリフッ化ビニリデン系樹脂20質量部及びポリメタクリル酸エステル系樹脂80質量部をトリアジン系紫外線吸収剤4質量部と共にタンブラーにてブレンドして混合物とし、φ30mmの2軸押出機によって混練して、保護層(B)用のコンパウンドを得た。
次に、それぞれ保護層(A)、紫外線吸収層(B)として前記のコンパウンド、接着層(C)として前記熱可塑性エラストマー(SEBS)、及び基材層(D)として前記ポリエチレン(PE)を用い、保護層(A)、紫外線吸収層(B)及び接着層(C)についてはそれぞれφ40mmの単軸押出機を、基材層(D)についてはφ65mmの単軸押出機を用いて、フィードブロック法により押出し、予め凹凸加工を施し、冷却温度を65℃に設定した金属冷却ロールで引き取ることにより保護層(A)、紫外線吸収層(B)、接着層(C)及び基材層(D)の順序で積層され、各層の厚み及び基材層(D)側の表面の表面粗度が表1に示す多層フィルムを得た。
次に基材層(D)の表面にコロナ処理を施した後、防滴層(E)として前記の防滴剤を塗布し、乾燥後の防滴層(E)の厚みが0.1μmの農業用フッ素含有多層フィルムを作製した。
作製した農業用フッ素含有多層フィルムの光学物性、耐候性、防滴性および防塵性を測定した結果を表1に示す。
【0051】
<実施例2>
凹凸加工の度合が異なる金属冷却ロールに変更し、表面粗度を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0052】
<実施例3>
表面処理方法を表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0053】
<実施例4〜7>
保護層(A)あるいは紫外線吸収層(B)の樹脂組成を表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表1及び表2に示す。
【0054】
<実施例8、9>
各層の膜厚を表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表2に示す。
【0055】
<実施例10>
紫外線吸収剤種をトリアジン系紫外線吸収剤に代えて、酸化亜鉛を3質量部添加した以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表2に示す。
【0056】
<実施例11>
冷却温度を45℃に設定した金属冷却ロールを用いた以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表2に示す。
【0057】
<比較例1>
基材層(D)の表面に表面処理を施し、防滴層(E)を形成しなかった以外は実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0058】
<比較例2、3>
凹凸加工の度合が異なる金属冷却ロールに変更し、表面粗度を表2に示すとおりとした以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0059】
<比較例4>
表面処理を施さなかった以外は、実施例1と同様に農業用フッ素含有多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0060】
<比較例5>
保護層及び紫外線吸収層の樹脂組成を表2に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0061】
<比較例6>
紫外線吸収層に紫外線吸収剤を含有させなかった以外は、実施例1と同様に多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】