【実施例】
【0045】
[試験評価1]
(改質前処理)
以下の改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を作製した。それぞれの構成を表1にも示す。
【0046】
<実施例1>
厚さ12mmのスギ無垢材(心材部)を温度23℃及び湿度50%の条件下において恒量に達するまで養生した。
【0047】
まず、養生したスギ無垢材の木表側の表面を粒度#30のサンドペーパーで研削して微小な微細凹部を形成した(第1工程)。
【0048】
次いで、微細凹部を形成したスギ無垢材の表面に水を噴霧して塗布量が16g/尺
2となるように水打ちした(第2工程)。
【0049】
続いて、水打ちしたスギ無垢材を、圧縮率が16%となるように10mmの厚みにクリアランスを設定したロールプレス機の一対の金属ロール間に0.5m/minの搬送速度で1回通して圧縮した(第3工程)。この圧縮量は、第1工程で形成したスギ無垢材の表面の微細凹部の深さよりも十分に大きいものであった。
【0050】
そして、圧縮したスギ無垢材を80℃に設定した乾燥機に投入し、水打ち前の質量になるまで乾燥させた(第4工程)。
【0051】
得られた改質前のスギ無垢材の試験片を実施例1とした。
【0052】
<比較例1-1>
第1〜第4工程を行わなかった厚さ12mmの改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を比較例1-1とした。
【0053】
<比較例1-2>
第1工程、第2工程、及び第4工程を行わず、第3工程の圧縮のみを行った改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を比較例1-2とした。
【0054】
<比較例1-3>
第2〜第4工程を行わず、第1工程の研削による表面の微細凹部形成のみを行った改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を比較例1-3とした。
【0055】
<比較例1-4>
第1工程を行わず、第2〜第4工程の水打ち、圧縮、及び乾燥を行った改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を比較例1-4とした。
【0056】
【表1】
【0057】
(試験評価方法)
試験片の樹脂浸透性を試験評価した。
【0058】
具体的には、試験片を温度23℃及び湿度50%の条件下において1日養生した後、試験片の厚さよりも0.6mm小さいクリアランスに設定したロール状塗工機により、木表側の表面に液状の紫外線硬化型のアクリル樹脂を塗工した。アクリル樹脂の塗工は、試験片の質量が変化しなくなるまで繰り返し行った。
【0059】
次いで、アクリル樹脂を塗工した試験片をUV照射機に通してアクリル樹脂を完全に硬化させた。
【0060】
そして、アクリル樹脂が硬化した後の試験片を切断し、その断面をトルイジンブルー溶液で染色して木質部分と樹脂部分とを塗り分け、顕微鏡観察により樹脂浸透性能としてアクリル樹脂の浸透距離を測定した。
【0061】
(試験評価結果)
図3は、アクリル樹脂の浸透距離の試験結果を示す。
【0062】
図3によれば、研削による表面の微細凹部形成によっても樹脂浸透性は向上するものの、それに水打ち及び圧縮を組み合わせることにより、更に飛躍的に樹脂浸透性が向上することが分かる。
【0063】
[試験評価2]
(改質前処理)
以下の改質前のスギ無垢材(辺材部)の試験片を作製した。それぞれの構成を表2にも示す。
【0064】
<実施例2>
厚さ9mmのスギ無垢材(辺材部)を温度23℃及び湿度50%の条件下において恒量に達するまで養生した。
【0065】
まず、養生したスギ無垢材の木表側の表面をショットブラストにより研削して微小な微細凹部を形成した(第1工程)。
【0066】
次いで、微細凹部を形成したスギ無垢材の表面に水を噴霧して塗布量が26g/尺
2となるように水打ちした(第2工程)。
【0067】
続いて、水打ちしたスギ無垢材を、圧縮率が16%となるように7.6mmのクリアランスを設定したロールプレス機の一対の金属ロール間に0.5m/minの搬送速度で1回通して圧縮した(第3工程)。この圧縮量は、第1工程で形成したスギ無垢材の表面の微細凹部の深さよりも十分に大きいものであった。
【0068】
そして、圧縮したスギ無垢材を80℃に設定した乾燥機に投入し、水打ち前の質量になるまで乾燥させた(第4工程)。
【0069】
得られた改質前のスギ無垢材の試験片を実施例2とした。
【0070】
<比較例2>
第3工程を行わず、第1、第2、及び第4工程の研削による表面の微細凹部形成、水打ち、及び乾燥を行った改質前のスギ無垢材(辺材部)の試験片を比較例2とした。
【0071】
【表2】
【0072】
(試験評価方法)
試験評価1と同様の方法で試験片の樹脂浸透性を試験評価した。
【0073】
(試験評価結果)
図4は、アクリル樹脂の浸透距離の試験結果を示す。
【0074】
図4によれば、ショットブラストによる表面の微細凹部形成によっても、サンドペーパーによる研削の場合と同様、樹脂浸透性の向上効果が得られることが分かる。
【0075】
[試験評価3]
以下の改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を作製した。それぞれの構成を表3にも示す。
【0076】
<実施例3-1>
厚さ9mmのスギ無垢材(心材部)を温度23℃及び湿度50%の条件下において恒量に達するまで養生した。
【0077】
まず、養生したスギ無垢材の木表側の表面を粒度#30のサンドペーパーで研削して微小な微細凹部を形成した(第1工程)。
【0078】
次いで、微細凹部を形成したスギ無垢材の表面に水を噴霧して塗布量が16g/尺
2となるように水打ちした(第2工程)。
【0079】
続いて、水打ちしたスギ無垢材を、圧縮率が16%となるように7.6mmのクリアランスを設定したロールプレス機の一対の金属ロール間に0.5m/minの搬送速度で1回通して圧縮した(第3工程)。この圧縮量は、第1工程で形成したスギ無垢材の表面の微細凹部の深さよりも十分に大きいものであった。
【0080】
そして、圧縮したスギ無垢材を80℃に設定した乾燥機に投入し、水打ち前の質量になるまで乾燥させた(第4工程)。
【0081】
得られた改質前のスギ無垢材の試験片を実施例3-1とした。
【0082】
<実施例3-2>
第2工程における水打ちに濃度1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(アルカリ水溶液)を用いた以外は実施例3と同様にして得られた改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を実施例3-2とした。
【0083】
<実施例3-3>
第2工程における水打ちに濃度1質量%の界面活性剤水溶液を用いた以外は実施例3と同様にして得られた改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を実施例3-3とした。
【0084】
<比較例3>
第1〜第4工程を行わなかった厚さ9mmの改質前のスギ無垢材(心材部)の試験片を比較例3とした。
【0085】
【表3】
【0086】
(試験評価方法)
試験評価1と同様の方法で試験片の樹脂浸透性を試験評価した。
【0087】
また、試験片の水浸透性を試験評価した。
【0088】
具体的には、試験片を50mm×70mmに切り出し、木裏側の面をアルミニウムテープで被覆した後、四周の木口面をエポキシ樹脂で被覆封止した。
【0089】
次いで、試験片を20℃に調温した恒温水槽中に3分間浸漬した。
【0090】
そして、水浸透性能として、浸漬前後の質量変化を試験片の表面の面積で除することにより単位面積当たりの吸水量を算出した。
【0091】
(試験評価結果)
図5(a)は、アクリル樹脂の浸透距離の試験結果を示す。また、
図5(b)は、水の吸水量の試験結果を示す。
【0092】
図5(a)によれば、水打ちに炭酸ナトリウム水溶液のようなアルカリ水溶液や界面活性剤水溶液を用いても樹脂浸透性の向上効果が得られることが分かる。
【0093】
また、
図5(a)及び(b)によれば、水打ちに用いる液の種類によって樹脂浸透性及び水浸透性の相違が認められる。従って、浸透させる薬剤等の性状によって水打ちに用いる液体の種類を変えることが好ましいと考えられる。
【0094】
[試験評価4]
以下の改質前の複合材の試験片を作製した。それぞれの構成を表4にも示す。
【0095】
<実施例4>
厚さ2mmのスギのロータリー単板(心材部)と厚さ2.7mmのMDFとを水性ビニルウレタン樹脂接着剤で接合した複合材を温度23℃及び湿度50%の条件下において恒量に達するまで養生した。
【0096】
まず、養生した複合材のロータリー単板側の表面を粒度#30のサンドペーパーで研削して微小な微細凹部を形成した(第1工程)。
【0097】
次いで、微細凹部を形成した複合材の表面に水を噴霧して塗布量が16g/尺
2となるように水打ちした(第2工程)。
【0098】
続いて、水打ちした複合材を、ロータリー単板の圧縮率が16%となるように4.4mmのクリアランスを設定したロールプレス機の一対の金属ロール間に0.5m/minの搬送速度で1回通して圧縮した(第3工程)。この圧縮量は、第1工程で形成した複合材の表面の微細凹部の深さよりも十分に大きいものであった。
【0099】
そして、圧縮した複合材を80℃に設定した乾燥機に投入し、水打ち前の質量になるまで乾燥させた(第4工程)。
【0100】
得られた改質前の複合材の試験片を実施例4とした。
【0101】
<比較例4-1>
第1〜第4工程を行わなかった厚さ2mmのスギのロータリー単板(心材部)と厚さ2.7mmのMDFとを水性ビニルウレタン樹脂接着剤で接合した改質前の複合材の試験片を比較例4-1とした。
【0102】
<比較例4-2>
第3工程を行わず、第1、第2、及び第4工程の研削による表面の微細凹部形成、水打ち、及び乾燥を行った厚さ2mmのスギのロータリー単板(心材部)と厚さ2.7mmのMDFとを水性ビニルウレタン樹脂接着剤で接合した改質前の複合材の試験片を比較例4-2とした。
【0103】
<比較例4-3>
第2及び第4工程を行わず、第1及び第3工程の研削による表面の微細凹部形成及び圧縮を行った厚さ2mmのスギのロータリー単板(心材部)と厚さ2.7mmのMDFとを水性ビニルウレタン樹脂接着剤で接合した改質前の複合材の試験片を比較例4-3とした。
【0104】
【表4】
【0105】
(試験評価方法)
試験片の樹脂浸透性を試験評価した。
【0106】
具体的には、試験片の木裏側の面をアルミニウムテープで被覆した後、四周の木口面をエポキシ樹脂で被覆封止し、この試験片を温度23℃及び湿度50%の条件下において1日養生した後、試験片の厚さよりも0.6mm小さいクリアランスに設定したロール状塗工機により、ロータリー単板側の表面に液状の紫外線硬化型のアクリル樹脂を塗工した。アクリル樹脂の塗工は、試験片の質量が変化しなくなるまで繰り返し行った。
【0107】
次いで、アクリル樹脂を塗工した試験片をUV照射機に通してアクリル樹脂を完全に硬化させた。
【0108】
そして、アクリル樹脂が硬化した後の試験片を切断し、その断面をトルイジンブルー溶液で染色して木質部分と樹脂部分とを塗り分け、顕微鏡観察により樹脂浸透性能としてアクリル樹脂の浸透距離を測定した。
【0109】
(試験評価結果)
図6は、アクリル樹脂の浸透距離の試験結果を示す。
【0110】
図6によれば、複合材においても樹脂浸透性の向上効果が得られることが分かる。従って、改質木材の厚さを任意に設定することができる。
【0111】
また、
図6によれば、表面の微細凹部形成及び圧縮に加え、水打ち及び乾燥が必須であることが分かる。