(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連動駅に設置され構内作業計画を作成可能なコンピュータ端末と、前記コンピュータ端末と通信可能であり列車運行に関するダイヤ情報を保有する中央装置とを備える運転整理支援システムにおいて、
前記コンピュータ端末は、
通信部と、
前記連動駅の構内作業計画に関する入換ダイヤと、前記連動駅に隣接する他の連動駅の構内作業計画に関する他の入換ダイヤとを統合するダイヤマージ部と、
統合された前記入換ダイヤのダイヤスジを表示する表示装置とを備え、
前記中央装置は、前記コンピュータ端末で作成された前記構内作業計画の前記ダイヤ情報に対する合理性をチェックする合理性チェック部を備え、
前記合理性チェック部は、統合された前記入換ダイヤと、前記ダイヤ情報とを比較して合理性をチェックする運転整理支援システム。
前記中央装置は、計画ダイヤに対して列車運行の遅延を考慮した予測ダイヤを作成する際に、前記構内作業計画を反映させて前記予測ダイヤを作成する予測ダイヤ作成部を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の運転整理支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る運転整理支援システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る運転整理支援システム100の構成図を示す。
【0012】
運転整理支援システム100は、コンピュータ端末1と、自動進路制御装置2と、中央装置3とを備え、それらは互いにネットワーク4を介して互いに通信可能に接続されている。コンピュータ端末1および自動進路制御装置2は、例えば、電車区および/または旅客駅を含む各連動駅に対して1台ずつ設けられており、各連動駅のコンピュータ端末1および自動進路制御装置2が、中央装置3に対しネットワーク4を介して互いに通信可能に接続されている。
【0013】
コンピュータ端末1には、表示装置101と、キーボード102、およびマウス103からなる入力装置が接続されている。コンピュータ端末1の内部構成については、後述する。
【0014】
コンピュータ端末1を操作する操作者は、表示装置101に描画されるダイヤスジや文字ベースの画面をキーボード102およびマウス103を用いて、構内作業計画に関する入換ダイヤの作成等の運転整理入力操作を行う。なお、連動駅において、旅客駅と隣接する連動駅が電車区の場合がある。このような駅の場合、旅客駅から電車区に移動する列車、電車区から旅客駅に移動する列車が存在し、この列車を入出区列車と呼ぶ。また、列車をホームから引上線に移動させることを引上、引上線からホームに列車を移動させることを据付と呼ぶ。これらの引上、据付、入出区列車のダイヤを入換ダイヤと呼んでいる。
【0015】
自動進路制御装置2は、ダイヤ情報を記憶するダイヤ情報記憶部201と、ダイヤ情報を送受信するダイヤ送受信部202とを備える。また、自動進路制御装置2は、ダイヤ情報記憶部201に記憶されたダイヤ情報に従い、転てつ器や信号機を制御するための信号を出力する。そして、コンピュータ端末1において運転整理入力等が行われた場合、自動進路制御装置2は、ダイヤ送受信部202において運転整理入力等に関する情報を受信し、ダイヤ情報記憶部201に記憶されているダイヤ情報を書き換え、変更する。また、自動進路制御装置2は、受信した運転整理入力等に関する情報をダイヤ送受信部202によりコンピュータ端末1に送信する。
【0016】
中央装置3は、自動進路制御装置2の上位装置にあたり、自動進路制御装置2の状態監視や計画ダイヤ(列車ダイヤ)の合理性チェック等を行う機能を持ち、列車の運行を制御する。また、中央装置3には、複数のコンピュータ端末1および複数の自動進路制御装置2とネットワーク4を介して接続される。また、中央装置3は、情報送受信部301と、ダイヤ情報記憶部302と、合理性チェック部303とを備える。また、中央装置3から、各駅のコンピュータ端末1および自動進路制御装置2に対して運転整理入力を行うことが可能である。
【0017】
情報送受信部301は、自動進路制御装置2から構内作業計画(入換ダイヤ)等の情報を送受信する。ダイヤ情報記憶部302は、計画ダイヤ(列車ダイヤ)および予測ダイヤの情報、および、複数の自動進路制御装置2から受信した複数の入換ダイヤ情報を記憶する。計画ダイヤとは、予定している列車運行(予定到着時刻および予定出発時刻)のダイヤのことである。予測ダイヤとは、計画ダイヤに対して列車運行の遅延を考慮した列車の到着予想時刻および出発予想時刻を持つダイヤのことである。複数の入換ダイヤ情報は、中央装置3に接続された複数のコンピュータ端末1から対応する自動進路制御装置2を介して中央装置3に送信される。合理性チェック部303は、自動進路制御装置2から送信される構内作業計画の合理性チェックを行う機能を有する。
【0018】
次に、コンピュータ端末1の内部構成に関して
図1、2を参照して詳しく説明する。
【0019】
図1に示すように、コンピュータ端末1は、ダイヤ情報を記憶するダイヤ情報記憶部104と、制御部105と、画像表示部106とを備える。
【0020】
図2に示すように、制御部105は、設備データ記憶部107と、表示演算部109と、警告監視部110と、ダイヤ処理部111と、ダイヤマージ部112と、通信部113とを備える。
【0021】
設備データ記憶部107は、転てつ機および信号機等の情報、駅の本線、電留線、引上線等に関する情報を記憶する。
【0022】
表示演算部109は、受け取った情報に基づき描画演算処理を行い、演算結果を画像表示部106に出力する。
【0023】
警告監視部110は、エラー通知を通信部113を介して受け付け、描画部114に対し警告を表示するよう指示を出す。
【0024】
ダイヤ処理部111は、マウス103およびキーボード102による入力に基づき構内作業計画(入換ダイヤ)の情報を作成する。
【0025】
ダイヤマージ部112は、コンピュータ端末1が設置された連動駅の入換ダイヤと、他の連動駅の入換ダイヤとを統合する。
【0026】
通信部113は、ネットワーク4を介して、自動進路制御装置2と、中央装置3との間での情報の通信を行う。
【0027】
画面表示部106は、描画部114と、入力受付部115とを備える。描画部114は、制御部105からの指示に基づき、表示装置101の画面に対し画像を表示する。入力受付部115は、マウス103およびキーボード102による入力を受け付ける。
【0028】
コンピュータ端末1は、上記の構成により表示装置101の画面にダイヤスジを表示させ、マウス103などのポインティングデバイスにより直接ダイヤスジ表示面上の列車を指定し、その列車に対する変更入力がマウス103による操作や、メニュー操作、キーボード102操作により与えられるように構成されている。なお、このようなコンピュータ端末については、例えば特開平8−244615号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0029】
次に、本実施形態における構内作業計画の合理性チェック処理について
図3、4を参照して説明する。
【0030】
図3は、構内作業計画(入換ダイヤ)が表示された表示装置101の画面120を示す図である。
図4は、構内作業計画の合理性チェック処理のフローチャートを示す。
【0031】
コンピュータ端末1の入力受付部115は、マウス103およびキーボード102による構内作業計画(入換ダイヤ)の入力を受け付ける(S501)。例えば、操作者により、表示画面120に
図3に示したような入換ダイヤが作成される。入力受付部115は、入換ダイヤが作成された際の入力された情報をダイヤ処理部111に出力し、ダイヤ処理部111は、受け取った入力情報に基づき入換ダイヤの情報を作成する(S502)。
【0032】
ダイヤ処理部111は、作成した入換ダイヤの情報を、通信部113を介して自動進路制御装置2へ送信する(S503)。
【0033】
自動進路制御装置2は、ダイヤ送受信部202で受け取った入換ダイヤの情報を中央装置3に転送する(S504)。
【0034】
入換ダイヤの情報は、中央装置3の情報送受信部301で受信され、合理性チェック部303において、受信した入換ダイヤの情報と、ダイヤ情報記憶部302に記憶されたダイヤ情報とを比較し、合理性チェックを行う(S505)。合理性チェック部303は、例えば、構内作業計画の作業時刻と、計画ダイヤおよび予測ダイヤとを比較し、構内作業計画が実行可能か否か、および、作成された構内作業を実施することにより、列車運行に影響があるか否かを判断する。
【0035】
合理性チェックの結果が正常であった場合には、中央装置3は、情報送受信部301から自動進路制御装置2に対し、入換ダイヤの情報を送信する(S506)。また、当該入換ダイヤは、ダイヤ情報記憶部302に記憶される。
【0036】
自動進路制御装置2は、中央装置3が送信した入換ダイヤの情報をダイヤ送受信部202で受信し、ダイヤ情報記憶部201に記憶された入換ダイヤを書き換え、変更する(S507)。さらに、自動進路制御装置2は、中央装置3が送信した入換ダイヤの情報をダイヤ送受信202よりコンピュータ端末1に送信する(S507)。
【0037】
コンピュータ端末1は、通信部113で入換ダイヤを受信し、ダイヤ処理部111を介して、ダイヤ情報記憶部108に記憶されている入換ダイヤを書き換え、変更する(S508)。さらに、ダイヤ処理部111は、ダイヤ情報記憶部108に記憶された入換ダイヤを表示演算部109に送り、表示演算部109が入換ダイヤに基づき、ダイヤスジの描画演算を行う。その結果を描画部114に渡し、表示装置101に表示されている画面を更新し、ダイヤスジを表示する(S508)。この後、合理性チェック処理は終了する。
【0038】
一方、合理性チェックの結果がエラーであった場合には、中央装置3は、自動進路制御装置2に対し、エラー通知(エラー信号)を送信し、自動進路制御装置2は、中央装置3が送信したエラー通知をダイヤ送受信202よりコンピュータ端末1に送信する(S509)。合理性チェックの結果がエラーである場合とは、例えば、構内作業計画が実行可能でなかったり、駅間を跨いで行われる構内作業計画が実行可能でない場合をいう。
【0039】
コンピュータ端末1は、通信部113よりエラー通知を受信する。エラー通知は、通信部113から警告監視部110に送られ、警告監視部110は表示演算部109に対し警告を表示するように指示を出す。表示演算部109は、警告描画演算を行い、その結果を描画部114に渡し、表示装置101の表示画面120を更新し、
図5、6に示すような警告メッセージ116、117を表示する(S510)。この後、合理性チェック処理は終了する。
【0040】
この結果、コンピュータ端末1で入力された入換ダイヤの合理性チェックを行うことが可能となる。よって、効率よく合理性チェックを行うことができ、構内作業計画の問題点が見逃されるのを防止することができる。また、中央装置3では、列車運行の遅延を考慮することで構内作業による遅延の拡大を事前に知ることができ、構内作業計画の変更にスムーズに対応できるようになる。
【0041】
また、合理性チェックが否定された場合には、エラー表示を行うことにより、操作者に構内作業計画の見直しを促すことができ、構内作業により計画ダイヤおよび予測ダイヤに遅延が発生するのを防止することができる。
【0042】
また、中央装置1は、各駅の構内作業計画を保有することができるので、ダイヤが乱れた場合に、各駅の構内作業計画が参照可能となることで、予定されている構内作業計画を考慮した上で運転整理を行うことができ、従来よりも効率的に運転整理入力を行うことが可能となる。
【0043】
次に、複数の入換ダイヤを統合する処理について説明する。
【0044】
図7は、複数の入換ダイヤの統合処理のフローチャートを示す。
図8は、駅(連動駅)Aの旅客駅と、駅(連動駅)Bの電車区とが互いに隣接し、駅Aのコンピュータ端末1Aの駅Bのコンピュータ端末1Bとが互いに通信可能な状態を示す図である。なお、
図7においては、駅Aの入換ダイヤと駅Bの入換ダイヤとを統合する処理について説明する。
【0045】
例えば、駅Aのコンピュータ端末1Aの操作者が、駅Aの入換ダイヤと駅Bの入換ダイヤとを統合したい場合に、統合する入換ダイヤとして駅Bを選択し、統合開始ボタン等を押した場合に、当該統合処理が開始される。
【0046】
コンピュータ端末1Aは、コンピュータ端末1Bに接続された自動進路制御装置2に対し、駅Bの入換ダイヤ(ダイヤ情報)のリクエストを送信し、自動進路制御装置2から駅Bの入換ダイヤを通信部113により受信する(S601)。
【0047】
ダイヤマージン部112は、駅Aの入換ダイヤと、駅Bの入換ダイヤとを統合する(S602)。
【0048】
ダイヤ処理部111は、統合した入換ダイヤをダイヤ情報記憶部108に記憶(書き換え、変更)し、統合した入換ダイヤを表示演算部109に送る(S603)。
【0049】
表示演算部109は、統合した入換ダイヤに基づき、ダイヤスジの描画演算を行う(S604)。その結果を描画部106に渡し、表示装置101に表示されている画面を更新し、ダイヤスジを表示する(S605)。
【0050】
この結果、
図3に示すように、駅Aのコンピュータ端末1Aに、駅Aの入換ダイヤに加え、駅Bの入換ダイヤも表示することができる。
【0051】
入換ダイヤは、自駅から隣接する電車区に進出、または隣接する電車区から自駅に進入してくる場合、対象となる列車の入換ダイヤは進出側、進入側の双方で入換ダイヤを作成する必要があり、駅跨ぎの入換ダイヤの整合性チェックはそれぞれの駅に所属する駅員が、コンピュータ端末1A、1Bを使用して確認している。
【0052】
また、ダイヤが乱れた際、本線の旅客列車を予定されていた行路ではなく、途中駅で運休や折り返し運転する運転整理を行う場合がある。運転整理によって運休となった列車を隣接する電車区に入区させる場合、電車区と同じ情報を設定する必要があるが、コンピュータ端末1A、1Bが別々であり、離れた場所に設置されているため、電話やファックス等を使用し、隣接する電車区の駅員と連絡を取っている。そのため、駅跨ぎの部分の整合性チェックが煩雑である。しかし、上記のように相互に関連する2つの駅の入換ダイヤを一つの画面に表示させることにより、駅跨ぎ部分の整合性チェックを容易に行うことが可能となる。
【0053】
次に、中央装置3において、構内作業計画を考慮した予測ダイヤの作成について説明する。本実施形態では、中央装置3の図示せぬ予測ダイヤ作成部は、コンピュータ端末1から受信した構内作業計画を考慮して予測ダイヤを作成する。
【0054】
図9は、構内作業計画を考慮しない予測ダイヤスジと、構内作業計画を考慮した予測ダイヤスジとを比較した図を示す。
【0055】
図9の左側の従来の予測ダイヤスジでは、中央装置3は、各駅の構内作業計画を受信していないため、構内作業計画が存在する予測ダイヤの演算は、構内作業時間として一定時間加算していた。これに対し、
図9の右側の本実施形態の予測ダイヤスジでは、中央装置3は、コンピュータ端末1から受信した構内作業計画を考慮して作成している。よって、中央装置3において、従来よりも精度の高い予測ダイヤの作成が可能となる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0057】
例えば、合理性チェックの判断は中央装置3で行ったが、コンピュータ端末1または自動進路制御装置2で行っても良い。この場合、自動進路制御装置2は、中央装置3から予測ダイヤの情報を受信する。コンピュータ端末1は、自動進路制御装置2から通信部113より計画ダイヤおよび予測ダイヤの情報を受信する。警告監視部110は、作成された構内作業計画(入換ダイヤ)の情報と計画ダイヤおよび予測ダイヤとを比較し、合理性チェックを行う。警告監視部110は、構内作業計画が予定通り実施できないと判断した場合、表示演算部109に警告を表示するように指示を出す。描画部114は表示装置101に警告メッセージ116、117を表示するように画面を更新する。
【0058】
また、自動進路制御装置2において、中央装置3から計画ダイヤおよび予測ダイヤを受信し、コンピュータ端末1から作成された構内作業計画(入換ダイヤ)の情報を受信し、合理性チェックを行っても良い。
【0059】
また、上記の実施形態では、コンピュータ端末1と中央装置3との間でのデータのやり取りは自動進路制御装置2を介して行っていたが、自動進路制御装置2を介さず直接データのやり取りをしても良い。
【0060】
また、複数の入換ダイヤを統合する処理では、2つの入換ダイヤを統合する処理について説明したが、3つ以上の駅の入換ダイヤを統合しても良い。