【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様は、以下の通りである。
〔1〕下記のA,B,Cを含む、端末モニターに表示された作業対象の所定位置に作業支援情報を正確に表示させるシステム。
A:作業対象に係る作業を支援する情報を示すAR画像データ、及び前記作業対象に係る静止画像を半透明化した半透明静止画像データに、作業対象を一意に識別可能とするユニーク識別情報が対応している画像データテーブルを記憶するテーブル記憶部。
B:端末からの信号に基づいて、前記ユニーク識別情報に対応する作業対象に係るAR画像データ又は前記作業対象に係る半透明静止画像データを前記テーブル記憶部より抽出し、前記端末に返信する通信制御部。
C:撮像手段と、タッチ操作が可能で、前記撮像手段で撮影している現実空間のリアルタイム画像を表示可能なモニター画面と、前記半透明静止画像又はAR画像を前記リアルタイム画像に重合させて表示する重合表示手段と、少なくとも前記リアルタイム画像に重合させる画像データとして前記半透明静止画像から前記AR画像データへの切換えを実行するタッチ入力画面を、前記モニター画面に表示する入力画面表示手段と、
を備えた端末。
〔2〕さらに、前記リアルタイム画像中の作業対象のマーカーに表示された前記ユニーク識別情報を読み取るユニーク識別情報読取手段と、前記ユニーク識別情報読取手段によって読み取られたユニーク識別情報の前記制御部への送信を実行するタッチ入力画面を、前記モニター画面に表示する入力画面表示手段を備えた〔1〕のシステム。
〔3〕構成Aのテーブル記憶部及び構成Bの通信制御部が構成Cの端末に内蔵されている〔1〕又は〔2〕のシステム。
【0010】
〔4〕タッチ操作が可能で、撮像手段で撮影している現実空間のリアルタイム画像を表示可能なモニター画面を備えた端末を用いて、前記モニター画面に表示されたリアルタイム画像中の当該作業対象の所定の位置に作業支援情報を正確に表示させる作業支援情報表示方法であって、当該作業対象に係る作業を支援する情報を示すAR画像データ、及び当該作業対象に係る静止画像を半透明化した半透明静止画像データに、作業対象を一意に識別可能とするユニーク識別情報を対応させた画像データテーブルを、予めテーブル記憶部に記憶しておくステップと、タッチ入力画像の操作により、作業対象の前記半透明静止画像を前記テーブル記憶部から抽出し、抽出した半透明静止画像を、撮像手段で撮影している現実空間のリアルタイム画像と重合して、前記作業支援情報表示端末のモニターに表示させるステップと、前記作業対象の半透明静止画像に作業支援情報表示端末の撮像手段の方向及び位置を変えて、モニター上のリアルタイム画像を前記半透明静止画像に一致させるステップと、リアルタイム画像が前記半透明静止画像と一致した状態で、モニター上のタッチ入力画像の操作により、前記半透明静止画像と同じユニーク識別情報に対応するAR画像を前記半透明静止画像に換えて前記モニターに表示されているリアルタイム画像に重合させて表示せるステップ、からなる作業支援情報表示方法。
【0011】
作業対象に係る設備の作業手順を、AR技術を利用して本発明の端末に表示させるには、予め作業対象のAR作業支援情報
であるAR画像と作業対象の半透明静止画像を作成しておく必要がある。
【0012】
AR作業支援情報とは、例えば、作業対象ごとに各作業場所における作業手順を示す各画像に対し、予め作成したシナリオ、例えば、表示順序、コメントや注意事項などの付加情報を関連付けしたAR
画像情報である。この作業対象ごとのAR
画像情報に作業対象を一意的に識別可能とするユニーク識別情報を対応させたテーブルを作成してデータベースとし、テーブル記憶部に保存する。
また、作業対象ごとに作業場所(作業視点)を案内する画像や前記半透明静止画像も前記ユニーク識別情報と対応させたテーブルとして前記テーブル記憶部に保存しておく。
【0013】
前記AR
画像を、作業対象の施設の特定場所のリアルタイム画像に表示させる場合の位置情報は、前記半透明静止画像を基準として設定される。これにより、リアルタイム画像が半透明静止画像と一致したときの位置をセットし、半透明静止画像に代えてAR
画像をモニター上のリアルタイム画像に重畳して表示すれば、リアルタイム画像の所定位置に正確にAR情報が表示される。
【0014】
作業の開始時に、端末に作業対象のメニュー画面を表示させ、作業者が作業を行うべき作業対象を前記メニュー画面から選択してタッチ入力することにより、当該作業対象に対応するユニーク識別情報を通信制御部に送信する。通信制御部は、受信した前記ユニーク識別情報に対応する作業対象の半透明静止画像を前記テーブル記憶部より抽出し、前記端末に返信する。このとき受信したユニーク識別情報に関連するAR作業支援情報
であるAR画像データも抽出し、端末の制御部の一時メモリに保存するようにしてもよい。
【0015】
前記端末は、重合表示手段を備え、前記撮像手段によって撮影している現実空間のリアルタイム画像を前記モニターに表示するとともに、前記重合表示手段により、通信制御部から送信されてきた前記半透明静止画像を、前記リアルタイム画像に重合させて表示する。
【0016】
このとき、作業対象の場所情報もモニター画面に表示させれば、作業者は、この場所情報に基づいて、作業対象の設置場所に確実に行き着くことができ、設置場所では、モニターに表示された作業対象の前記半透明静止画像を基に、現実の作業対象の位置を確認することができる。
【0017】
このように静止画像は半透明で、端末に表示された施設のリアルタイム画像に重畳して表示されるので、作業者は、端末に表示される作業対象の半透明の静止画像とリアルタイム画像が一致するよう端末の撮像方向をあるいは撮影位置を調整し、リアルタイム画像とAR画像が一致したところで、半透明の静止画像を前記作業支援情報のAR画像に切り換える。
【0018】
リアルタイム画像と半透明静止画像との一致の判定は、作業者が目視によって行い、リアルタイム画像と半透明静止画像とが一致した場合、作業者がモニター上に作成したタッチ入力画面を操作することによって、半透明静止画像からAR
画像への切換えが実行される。
【0019】
前記半透明静止画像を撮影した場所にマークを付しておき、作業者はマークが付された場所から作業対象を撮影すれば、リアルタイム画像と半透明静止画像とを容易に一致させることができる。
【0020】
作業者によるタッチ入力画面の操作によって、半透明静止画像からAR
画像への切換え指令信号が前記通信制御部に送信される。前記指令信号を受信した通信制御部は、作業の開始時に作業者によって選択された作業対象に対応するユニーク識別情報に基づき、前記テーブル記憶部からAR作業支援情報
であるAR画像データを抽出し、一括または順次、端末に返信する。また、前記AR作業支援情報が予め端末の一次記憶部に記憶されている場合には、前記指令信号により、AR
画像は一次記憶部から直接モニターに表示させることができる。
【0021】
さらに、予め作業対象の施設の近傍に前記ユニーク識別情報を表示したマーカーを設置しておけば、作業者による前記タッチ入力操作により、このユニーク識別情報が表示されたマーカーの画像も得られるので、得られた画像から端末が内蔵するユニーク識別情報読取手段によりユニーク識別情報を読取り、作業者が作業の開始時に選択した作業対象が、現実の作業対象か否かを確認することができる。このような構成を採用することにより、同型の作業対象が存在する場合などで作業対象を取り違えた場合でも、間違いを未然に正すことができる。なお、マーカーとしては、QRコードやバーコードが利用できる。
【0022】
また、作業対象に内在する構成部材の作業を行う場合にも、本発明のシステム及び作業支援情報表示方法が適用できる。例えば、作業支援情報により、作業対象に内在する構成部材の作業を行うため、当該構成部材のカバーを開いたり、当該構成部材を作業対象から引き出すなどの作業を作業者が行う場合、端末のモニターに、予め前記作業後の半透明画像、すなわち、カバーが開いた状態、若しくは構成部材を引き出した状態の半透明静止画像を表示させ、作業者の作業ガイドとして利用したり、あるいは、作業者が作業を行った後に、前記作業後の半透明画像を表示させれば、作業者が行った作業が確実に行われたか否かを確認することができる。いずれの場合も、最終的にリアルタイム画像と前記作業後の半透明静止画像が一致することを確認して、作業者が端末のモニター画面を操作することにより、前記半透明画像に代えて作業対象に内在する前記構成部材の作業支援情報AR画面を表示させる。
もし、リアルタイム画像と前記作業後の半透明静止画像が一致しない場合は、必要に応じ、前工程の作業支援情報AR画面に戻り、作業をやり直せばよい。
【0023】
さらに、作業対象に内在する構成部材の作業を行うため、前記構成部材を作業対象から取り出す必要がある場合にも、取り出された構成部材の半透明静止画像を端末のモニターに表示させ、リアルタイムの構成部材の画像と前記半透明の静止画像とが一致するように端末の撮像手段の撮影方向、あるいは取り出された構成部材を動かし、両者が一致した時点で、端末のモニター上の操作により、前記前記半透明の静止画像をAR画像に切り換えることにより、前記構成部材の必要な個所に作業支援情報を正確に表示させることができる。
【0024】
前記作業後の半透明画像を端末のモニターに表示させる場合、作業者が端末モニター上のタッチ操作で行ってもよいが、作業者が作業を行った後に表示させるのであれば、作業後に露出する構成部材の表面にマーカーを付しておき、端末でこのマーカーの情報を、ユニーク識別情報読取手段により読取り、読み取ったユニーク識別情報に基づき、自動的に端末のモニターに表示させることもできる。
【0025】
なお、本発明において「リアルタイム画像と半透明静止画像との一致」とは、半透明静止画像をAR
画像に切り換えたときに、当該AR
画像が、モニター上のリアルタイム画像の所定の位置に表示され、作業の誤認を生じさせない限度で「一致」していることをいう。
【0026】
上記テーブル記憶部と通信制御部を独立して設置する場合には、作業者が操作する端末、前記テーブル記憶部、及び通信制御部は、各々インターネット接続されている必要があるが、前記テーブル記憶部と通信制御部を端末に内蔵させておけば、インターネット環境の整っていない作業現場でも、本発明を実施することができる。