(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フランジ(711)より下に、前記液体(102,702)の加熱により発生される蒸気の排出を可能にするための少なくとも1つの開口部(713)が配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記説明および前記図面の両方を、例示のためのものに過ぎず、従って包括的ではないとみなす。本発明を、その他のおよび異なる実施形態に従って実行することができる。
【0015】
本発明は、十分な技術的および科学的知識、すなわち、蒸発、沸騰、マランゴニ効果、メニスカス、および、毛管現象、摩擦、並びに、液体と固体との間の付着、そして、もちろん、物理学、流体力学、熱力学、および基礎化学に関する知識により理解されよう。これらの知識は、以下の詳細な説明において公知のものとする。
【0016】
図1は、物質(図示せず)がその中に存在する液体102の塊(mass)を収容している容器101を示す。この容器は、円筒状で対称形であり、具体的には、蓋付きポットの外観を有する。液体102を加熱するように適合された加熱手段103が設けられている。この図において、加熱手段103は、容器101の底部(詳細には、平坦な底部である)に隣接し、中央に配置され、例えば、電気抵抗器により構成されうる。加熱手段103は、容器101の底部を加熱し、そして、伝導により、液体102を加熱する。周知のように、この加熱は、液体102の蒸発を生じさせ、そして、温度が十分に上昇すると、液体102を沸騰させる。容器101の上部はドーム状であり、開口部105を有し、この開口部105から発生器の蒸気を加熱により排出できる。2つのダクト104Aおよび104Bが設けられており(詳細には、一方が加熱手段103の右側にあり、他方が左側にある)、液体を容器101内に導入する(例えば、プロセスの開始時に容器を満たし、プロセス中に、蒸発した液体の全部または一部を置換する)ように適合されている。ダクトの個数、ダクトの位置、および向きが、この図に示したものと異なっていてもよい。例えば、加熱手段103の中央に1つだけ、鉛直方向の中央ダクトを設けてもよい。しかし、2つ以上のダクトがある場合には対称的に配置することが有利である。この図は、凹状のメニスカス(その寸法は、この図において意図的に拡大されている)を示し、メニスカスは、容器101の内部に、所定の高さにて、側壁全体に(従って、容器101の周壁に)形成されている。中央ゾーン106(詳細には、円形である)において、液体102の自由面(上部に位置する)は、完全に平坦である。周囲ゾーン107(詳細には、円形クラウンである)において、液体102の自由面(上部に位置し、且つ、メニスカスを含む)は上方に湾曲している。この周囲ゾーン107の幅は、例えば、数ミリメートルと考えてよい。上部自由面より下の、中央ゾーン106の液体の薄層(
図1に、水平方向の点線により概略的に示されている)は、その他の物質を含まないと考えてよい。この図は、容器101の下部中央ゾーンから容器101の上部周囲ゾーン(ここにメニスカスが存在する)への液相中の物質の流れと、液体102の上部自由面から開口部105への気相中の物質の流れとを概略的に示す。以下により詳細に説明するように、周囲ゾーン107における自由面から、すなわち、メニスカスから、中央領域106よりも多くの蒸発が生じる。
【0017】
図1に示されている装置は、本発明による、液体中に存在する物質を制御するための方法を提供するために用いられうる。
【0018】
本発明によれば、液体(この中にその他の物質が存在する)が、液体の認識可能な蒸発を生じさせるための温度および圧力状態にされ、そして、少なくとも1つの固体面が、その一部が前記液体の内部に、別の一部が前記液体の外部に配置され、これにより、この固体面上に、1つ(または1つ以上)の認識可能な液体のメニスカスを確立させる。
図1の特定の例において、固体面は、容器101の側壁の、鉛直な内面により構成されている。しかし、この内面が斜めであってもよい。
【0019】
開口部105から排出される蒸気中に、液体中に存在する、1つの、もしくは幾つかの、または全ての物質が、特に「豊富」(“rich”)か、または特に「少ない」(“poor”)ことを保証するために、適切な方策を用いうる。従って、液体は、これらの物質の含有が「少なくなる」(impoverished)、または「多くなる」(“enriches”)こととなる。さらなる液体を容器内に任意に加えることにより、状態が変わることは明らかである。
【0020】
本発明において、「認識可能な蒸発」(“appreciable evaporation”)とは、処理容器に収容されている液体の5%〜25%、好ましくは10%〜20%が1時間に蒸発することを意味し、あるいは、例えば、液体の温度(例えば、平均温度)に関して言及するならば、この温度が液体の沸騰温度よりも60℃低い温度よりも高いことを保証し、好ましくは、この温度が液体の沸騰温度よりも40℃低い温度よりも高いことを保証し、より好ましくは、この温度が液体の沸騰温度よりも20℃低い温度よりも高いことを保証する。
【0021】
本発明において、「認識可能なメニスカス」(“appreciable meniscus”)とは、例えば、液体が固体面付近に、最低でも2mm、好ましくは、少なくとも4mm、より好ましくは、少なくとも6mm上昇することを意味する。
図2において、この上昇は、高さB1と高さA1との差に対応している。
図3において、この上昇は、高さB2と高さA2との差に対応している。
【0022】
物質を制御する方法の基本的な(恐らく最も重要な)要素の1つは、1つのメニスカスの(あるいは、2つ以上存在する場合には複数のメニスカスの)形状、および/または、寸法、および/または、伸長、および/または、位置、および/または、温度を制御し、これにより、メニスカスを通る液体の蒸発を制御することである。メニスカスは、凹状または凸状であってよく、また、ほぼアーチ状であってよい。メニスカスは、その高さが多少高くてよい。メニスカスは、その長さが多少長くてよい。メニスカスは、固定的でも、あるいは移動可能であってもよく、処理装置の部品に対して様々に配置され得る。メニスカスは、多少高温でもよい。もちろん、多くの実施可能性があることが理解されよう。
【0023】
この要素は、凹状メニスカスの場合の本発明の発明者の観察に由来する。すなわち、メニスカスのゾーンにて強い蒸発が生じること、蒸発が、その蒸発が生じる場所に存在する物質のエントレインメントを生じさせること、メニスカスゾーンにおいて、液体中に存在する物質の、より高度の濃縮が生じること、そして、液体中に存在する物質が固体面に堆積し易く、この堆積が、様々なパラメータ(物質の濃度、液体のタイプ、物質のタイプ、固体面の材料のタイプを含む)に依存する(もちろん、温度も堆積に影響を与える)ことである。凸状のメニスカスの場合、状況は異なる。
【0024】
本文中に用いられている、「メニスカスの形状、寸法、伸長、位置、温度の制御」とは、これらの大きさを低減し、もしくは、一定状態を維持し、または増大することを目的とした作用を意味し、これらは、本「技術」分野において用語「制御」に与えられている公知の広範な意味に従う。従って、本文中に用いられる「〜の制御」とは、これらの大きさの単なる確認を意味するものでも、単なる測定を意味するものでもない。
【0025】
本発明の発明者の別の重要な観察は、メニスカス(凹状)が存在する場所である自由(湾曲)面からの蒸発(単位面積あたり)が非常に大きく、メニスカスが存在しない場所である自由(平坦)面からの蒸発(単位面積あたり)と比較することが適切であること、および、液体の自由な平坦面(薄い上部層)において、液体が非常に純粋であることである。従って、幾分異なる考慮すべき内容を有する少なくとも2つの蒸発がある。実際、これらの2つの蒸発とは大きく異なる第3の蒸発もある。この第3の蒸発は、突然で間欠的という点で異なり、すなわち、液体内での蒸気泡の形成と、これらの泡の、液体の自由面への上昇とから生じる。
【0026】
最近の研究に基づいて、(凹状)メニスカスの領域が3つのサブ領域に分割されることを述べておくべきである。これらは、固有の(intrinsic)メニスカスの下部サブ領域と、その上の、薄い蒸発膜を有するサブ領域と、そしてさらにその上の、固体の非蒸発面により吸収される薄膜を有するサブ領域とである。メニスカスを示す場合、最上部のサブ領域は、通常無視される。
【0027】
先に述べたように、様々な可能な制御のなかに、液体中に存在する物質をメニスカスにおいて固体面上に堆積させる制御がある。これは、物質の1つ(またはそれよりも多く)に関してより効率的に達成されることができ、これは、これらの物質が、非常に小さい、もしくは小さい、または中程度の寸法の粒子の形態で、固体状態で存在する場合である(大きく重い固体粒子は、必然的に降下し易い)。液体および物質は、一般に、処理プロセスのまさに主題であるため、この制御は、固体面の材料および固体面の特性(固体面がどのように製造されるかにも依存する)の選択により行われる。この特性は、詳細には、液体中に存在する物質の1つ(またはそれよりも多く)をしっかりと保持して「接着堆積物」(“adhering deposit”)を生じさせる能力である。例えば、本発明によるプロセスが、非常に特定的な物質または物質群を制御することのみを目的する場合もある。
【0028】
図1の装置の例のように、メニスカスを形成するために使われる固体面が液体を収容している容器の外周壁の内面に対応することが可能である。しかし、複数のメニスカス、および/または、容器の周囲を超えて延在するメニスカスを形成することが必要な場合もある。また、固体面として用いられるべき材料が容器の製造に適さない場合もある。このような場合、例えば、固体面は、少なくとも液体の自由面にて、容器壁部の面とは別個である。
【0029】
図4および
図5(両方の図において、メニスカスは寸法が故意に拡大されている)に示されているように、固体面は移動可能であってよい。
図4において、固体面408は、取り外されうる(具体的には、上方に引っ張られる)層を有する。
図5において、固体面508は、鉛直方向(矢印V)にも(具体的には、繰り返し上下に)、水平方向(矢印H)にも(繰り返し左右に、具体的には、容器501の外周壁付近で)移動できる。
【0030】
固体面は、液体内に繰り返し挿入され、また、液体から引き出されうる。
【0031】
これは、例えば、回転運動により行われうる。固体面が、液体の面に平行な軸を有して配置された円である場合、この円が回転すると、液体と接触する面の連続的な交換が行われる。
【0032】
移動可能な固体面を、材料の堆積に作用するために加熱できる。
【0033】
移動可能な固体面を、液体内に再挿入する前にクリーニング(物質の堆積を除去する)できる。
【0034】
固体面を、液体を収容している容器の外周壁に近づけ、また、外周壁から遠ざけることを繰り返すことができる(これは、固体面508および容器501の外周壁に関して
図5の矢印Hにより示されている)。こうして、メニスカスは、さらに曲がって、面および壁部の、より上部を濡らす。この場合もまた、固体面および/または外周壁を、材料の堆積に影響を与えるように加熱できる。この場合もまた、固体面および/または外周壁を、繰り返しクリーニングできる。
【0035】
1つまたは複数のメニスカスを形成するために用いられる固体面は、取り外し可能であってよい。例えば、固体面を、1つ/複数の物質の堆積が所定のレベルまたは厚さを超えた場合に取り外せる。この取り外しは、全体的または部分的であってよく、例えば、固体面の外層(すなわち、液体に、詳細にはメニスカスのゾーンに接触している層)のみであってよい。
図4は、容器401の外周壁に隣接している、複数の薄層から構成された固体面408を示しており、これらの複数の層は、互いに隣接し、且つ、これらの層間でスライドできる。従って、1つ/複数の物質の堆積が所定のレベルまたは厚さを超えた場合に、最も外側の層(すなわち、液体に、詳細にはメニスカスのゾーンに接触している層)を取り外す、具体的には、上方に引っ張ることができ、そして、新しい層が、液体402との接触を保つ。
【0036】
先に述べたように、複数の固体面を、それらの一部が液体の内部に、一部が液体の外部にあるように配置することが可能であり、これにより、液体の複数のメニスカスが固体面上に確立される。これらの固体面が、必須ではないが典型的に剛性であることが明確であろう。メニスカスの挙動が、メニスカスが凹状であるか凸状であるかにより異なり、また、メニスカスの構造が、液体に、および、液体と気体との間の境界ゾーンにおける固体面の材料に依存することに留意されたい。
【0037】
固体面のクリーニング(必要な、もしくは有用な、または、望ましい場合にはいつでも)を、様々な方法で実行できる。
【0038】
固体面から、この面上に堆積した物質を、スライディングにより除去できる。このスライディングは、固体面に隣接した1以上の部材を用いて行うことができ、これらの部材を、移動手段を用いて(特には、磁力を用いて)移動させることができる。このスライディングは、フローティング、および、液体の自由面上で自由に移動可能な部材を用いて行うことができる。
【0039】
あるいは、例えば、固体面から、この面上に堆積した物質を超音波により除去することもできる。
【0040】
メニスカス領域にて生じる現象は、メニスカスを形成するために用いられる固体面の温度により影響を受ける。従って、制御方法の使用に応じて、このメニスカス領域を加熱または冷却することが有用であり得る。この温度に影響を与える最も直接的な方法は、固体面の温度を制御する方法である。これに関しては
図2を参照されたい。
図2は、容器201の側壁の一部に隣接したメニスカス209を詳細に示している。この制御は、固体面が容器の壁部に対応している場合に特に重要である。実際、(
図1に示したように)液体の蒸発を得るために容器を加熱する場合、この熱の一部が、伝導によりメニスカス領域に伝達される。
【0041】
図2において、容器201の壁部の温度を制御するための特別な方策はなく、メニスカス209は、所定の形状および所定の伸長を有し、すなわち、メニスカスは、高さA1(容器内の液体の高さとみなす)にて開始し、そして、高さB1にて(ほぼ)終端となっている。
【0042】
図3において、容器301の壁部の外側に、手段310が配置されている。手段310は、壁部自体を冷却し、これにより、隣接するメニスカス309を冷却する。メニスカス309が異なる形状および異なる伸長を有することが観察される。すなわち、メニスカスは、高さA2(容器内の液体の高さとみなす)にて開始し、そして、高さB1よりも高い高さB2にて(ほぼ)終端となっている。こうして、固体面は、濡れた状態に維持され、これにより、固体面に堆積された固体粒子が固体面から離脱して蒸気により取り込まれる可能性を低減する。さらに、メニスカスが低温の場合、蒸発は低減され、蒸気泡がメニスカス内に形成される可能性がさらに低減される。
図3において、手段310が、高さA2および高さB2と完全に位置合わせされていることが明確であろう。しかし、これは必須ではない。むしろ、手段310は、高さA2よりもわずかに下に延在し、且つ、高さB2よりもわずかに上に延在すべきである。さらに、手段310に関し、容器内の液体の高さを考慮すべきである(液体高さが処理期間中に一定でない場合)。
【0043】
図3に示した方法の代わりに、メニスカスの位置での容器壁部の温度に影響を与える多くの方法がある。例えば、単に、容器壁部の厚さを薄くすることも効果がある。様々な可能な方法を、2つのカテゴリに分類できる。一方は、壁に関連付けた、または壁と統合的な能動的な解決方法であり、メニスカスと水平方向に位置合わせされたゾーン、あるいは、メニスカスよりも僅かに低い、および/または、僅かに高いゾーンに熱を導入し、または、これらのゾーンから熱を除去する方法である。もう一方は、壁に関連付けた、または、壁と統合的な受動的な解決方法であり、熱流を壁に沿って促進または妨害する方法である。容器の壁部の温度が、メニスカスのゾーンに向かう液体の対流運動による熱の導入、および、メニスカスのゾーンにおける蒸発による熱の吸収によっても影響を受けることに留意されたい。
【0044】
また、壁の地点ごとに異なる非常に正確な温度制御を行うことも可能である。
【0045】
液体中に存在する物質の制御を、容器内の液体の高さを制御することによっても行うことができる。実際、固体面上のどのような堆積も、濡れて安定した状態を保っている限り、発生したばかりの蒸気によるエントレインメントを大幅に促進することはない。従って、容器内の液体の高さを一定に維持し、これにより、小さい、または非常に小さい固体粒子の、固体面からの離脱を制限することは非常に有利である。また、容器内の液体の高さを、容器が満たされるまで、恐らくゆっくりと増大させることも可能である。このために、容器の底部における圧力を測定することにより液体の高さを記録することが(厳密に必要ではなくても)有利であり、従って、記録は連続的且つ正確である。液体は温度に応じて蒸発するため、液体の高さの低減(上記の理由による)を防止するために、液体を容器内に導入することが考えられる。好ましくは、この導入は、液体の表面領域を(流入により生じる乱気流または渦により)乱さないように容器の底部にてゆっくりと、容器中央で、または、容器周囲の、特には、メニスカスが存在していない場所で行われる。
【0046】
先に述べたように、液体を、その蒸発を生じさせるために加熱するべきである。
【0047】
第1の可能性は、液体をその沸点まで加熱することである。従って、蒸発は非常に強力である。しかし、蒸気の泡が大きすぎないこと、すなわち、沸騰が激しすぎないことを保証すべきである。
【0048】
蒸気の泡を防止(または、いずれの場合においても大幅に制限)するために、液体をその沸点よりも低い温度、例えば、液体の沸点の70%〜99%の範囲の温度(摂氏温度で示す)まで、または、より有利には、液体の沸点の80%〜90%の範囲の温度(摂氏温度で示す)まで加熱できる。
【0049】
液体の温度に関するこれらの観察において、熱源が集中していると(
図1の場合のように)、熱源付近の液体がかなり熱くなる場合があり、従って、液体が平均的には液体の沸点よりも低温であっても(ほんのわずかでも)蒸気泡を生じる場合があることに留意すべきである。
【0050】
まさにこの理由により(いずれの蒸気泡に関しても)、熱源が中央領域にあり、従って、幾らかの蒸気泡を有する熱い液体の対流運動が、容器の(あるいは、メニスカスを形成するように適合された固体面の)外周壁まで上昇せず、また、メニスカスに到達せずに、固体物質の粒子を容器の外周壁(あるいは、メニスカスを形成するように適合された固体面)上の堆積物から引き離す危険性がないことが有利である。これらの堆積物が多少付着性であり(これは特に、壁部の材料および特性に依存する)、また、ほぼコンパクトであり得る(これは特に、堆積物を形成している物質に依存する)ことを考慮すべきである。この同じ理由により(いずれの蒸気泡に関しても)、容器の外周壁(鉛直方向または斜め)を、壁部自体が対流運動および蒸気泡の源となるリスクを防止するために冷却することが有利である。
【0051】
蒸気泡に関し、蒸気泡の形成ステップにおいて、形成ゾーンにおける液体中に存在するいずれの物質も、泡に組み込まれて、泡自体により上方に引っ張られることを考慮すべきである。しかし、組み込まれた物質は、泡の上方経路に沿って消失する傾向があり、また、この経路が十分に長い場合、泡は、その他の物質がほとんど含まれない液体の自由面に到達する。これらの考察は、蒸気泡が、泡と壁部内面との相互作用の可能性によって、容器壁に沿って、または容器壁の底部に形成される場合には、一般に適用されない。
【0052】
メニスカスの制御に加え、またはそれに代わる方法として、本発明は、液体の、前記メニスカスを通る蒸発による流れの制御を提供することができる。本発明の発明者の観察によれば、この流れに、典型的に、液体自体よりも物質が多く含まれている(rich)。
【0053】
この蒸気流を、凝縮して液体自体に戻しうる。例えば、
図7において、容器701の壁部は、その内部に、液体702の凹状メニスカスにて、この凹状メニスカスよりも上に、(好ましくは)下方に曲げられたフランジ711を有する。フランジよりも上に、有利には、フランジ711を冷却するように適合された冷却手段712を冷却できる(これらの手段は、容器701の壁部も、下向きおよび上向きの両方向に間接的に冷却する)。蒸気がメニスカスから上方に上昇すると、蒸気は、低温のフランジ711により保持され、フランジ711は蒸気を凝縮して、これより下にある液体に戻す。
【0054】
あるいは、蒸気の流れを容器から排除できる。例えば、
図7において、フランジ711のすぐ下に、排除ダクトに接続されうる開口部713がある。排除後、蒸気を、容器701から離して凝縮できる(例えば冷却により)。
【0055】
図7の方法において、蒸気の一部が凝縮され、一部が容器701から排除されることに留意されたい。
【0056】
当業者には明らかであるように、フランジの形状および寸法が、
図7に示したものと異なっていてもよい。フランジは、容器の内部に向かって、好ましくは、少なくとも5mm、より好ましくは、少なくとも10mm、より好ましくは、少なくとも15mm突出する。
【0057】
当業者には明らかであるように、冷却手段(存在するならば)は、非常に小さい寸法の、ゼロ寸法でもあり得るフランジに関連付けられ得る。具体的には、容器701の形状および上部延在部がフランジとして機能し得る。冷却手段の機能は、メニスカスから発生する蒸気の凝縮を促進することである。
【0058】
部材711に等しいかまたは類似のフランジを、「スカート」(“skirt”)、特には、「冷却スカート」(“COOLED SKIRT”)と定義できる。このスカートは、メニスカス付近、すなわち、メニスカスを発生する固体面付近に配置される。複数のスカートを、各々を各メニスカスに対して設けてもよい。スカートは、移動可能であってもよく、従って、容器内の液体の高さの移動(上昇または降下)に対応し得る。
【0059】
メニスカスから発生する蒸気は、スカートにより、液体の平面から発生する蒸気、および、上昇する蒸気泡から発生する蒸気から分離した状態に維持されうる。従って、これらの3つの発生源を、蒸気含有量に基づいて区別できる。
【0060】
メニスカスの制御に加え、または、それに代わる方法として、本発明は、メニスカスの自由面以外の液体の自由(上部)面から除去されるべき液体の薄層を提供できる(本発明の発明者の観察によれば、この薄層は非常に純粋で物質を含まない)。
【0061】
この除去は、例えば、認識可能な蒸発を生じさせるように放射加熱手段により液体を加熱することにより、そして、これらの加熱手段を、液体の自由(上部)面を照射し、且つ、メニスカスは照射しないするように配置することにより行われうる。
【0062】
あるいは、この除去は、例えば、機械的手段によっても行われうる。具体的には、液体の高さを、液体自体を収容している容器の外周壁の縁よりもわずかに高い高さに維持することにより行われうる。
【0063】
メニスカスの制御に加え、または、それに代わる方法として、本発明は、メニスカスより上で濡れた状態の、特には、濡れた状態に維持される、メニスカスを形成するために用いられる固体面を提供できる。こうして、この固体面上に堆積する固体粒子が固体面から離脱して蒸気により取り込まれる可能性が低減される。
【0064】
図6において、濡れた面は、液体602を収容している容器601の外周壁である。具体的には、固体面上で液体の下向き流615が提供される。液体流615は開口部614から放出される。もちろん、開口部は、固体面の長さに沿って配置された複数の開口部である。
【0065】
代替的に、固体面上への液体の噴霧を提供できる。
【0066】
上記の例示した方法を組み合わせることができる。
【0067】
物質を含む液体を、第1のステップ、および、これに続く第2のステップにて処理できる。第1のステップにおいて、前記物質の1以上が、少なくとも部分的に凝集する。第2のステップにおいて、少なくとも部分的に凝集された物質を有する液体が蒸発する。上記の例示した方法の1以上を第2のステップにて用いることができる。こうして、凝集された物質は、蒸気流に取り込まれる可能性が非常に低くなる。実際、凝集がかなりの程度であれば、粒子は容器底部に留まるであろう。
【0068】
本発明は、固体物質の場合に特に有用である。
【0069】
液体物質が、固体物質と完全に類似であるように挙動し得ることに留意されたい。実際、液体中の液体物質が、「エマルジョン」(“emulsion”)、すなわち、不均一分散、または、「コロイド溶液」(“colloidal solution”)、すなわち「微小不均一」(“microheterogeneous”)分散を生じる場合がある。このような場合、液滴は固体粒子に類似している。また、物質が固体状態であるかまたは液体状態であるかは、物質の融点、および、物質が分散している液体の温度に依存する。液体の沸点が、液体中に分散している物質の融点よりも低いことは非常に多い。しかし、本発明は、この条件が満たされていない場合においても有用である。
【0070】
さらに、均一溶液中の液体物質の場合、メニスカスの領域での物質の高濃縮現象、および、液体の湾曲自由(上部)面(メニスカスが存在する場所)を有する領域と、液体の平坦自由(上部)面(メニスカスが存在しない場所)を有する領域とで蒸発が異なる現象がある。
【0071】
本発明は、液体中に存在し得るガス状物質には適用されない。
【0072】
先に述べたように、液体中に存在する物質を制御するための、先に記載し且つ例示した方法は、様々な用途を有するが、基本的には2つの用途、すなわち、
‐物質の分離、
‐物質の反応、を有する。
【0073】
液体中に存在する少なくとも1つの物質を分離する方法は、概して、
‐液体の少なくとも1つのメニスカスの確立と、
‐液体の、メニスカスの自由面を通る蒸発の制御と、を提供し、これにより、メニスカスの自由面を通る物質の制御された流れが生成される。
【0074】
さらに、メニスカスにおいて、その一部が液体の内部に、一部が液体の外部に配置された少なくとも1つの固体面上への物質の堆積を制御でき、これにより、メニスカスの自由面を通る物質の制御された流れが生成される。
【0075】
本発明をどのように実行および使用するかにより、液体からの物質の分離を、物質の含有量が低減された液体、または、物質の含有量が低減された蒸気を発生することにより行われうること強調しておく。すなわち、蒸気の一部においては物質のエントレインメントを促進でき、蒸気の一部においては物質のエントレインメントを抑制できる。
【0076】
この物質は、具体的には、固体物質、すなわち、非常に小さい、もしくは小さい、または中程度の寸法の固体粒子の形態である。
【0077】
液体中に存在する少なくとも2つの物質間の反応(特には、化学反応)を促進するための方法は、概して、
‐液体の少なくとも1つのメニスカスの確立と、
‐液体の、メニスカスの自由面を通る蒸発の制御と、を提供し、これにより、2つの物質の、メニスカスの体積に向かう制御された流れが生成される。
【0078】
従って、小さい空間(すなわち、メニスカスにより画成される体積)において試薬濃度が増大され、従って、試薬の反応を高めることが可能になる。
【0079】
さらに、メニスカスにおいて、その一部が液体の内部に、一部が液体の外部に配置された少なくとも1つの固体面上への2つの物質の堆積を制御することができ、これにより、2つの物質の、固体面に向かう制御された流れが生成される。
【0080】
これらの物質は、具体的には2つの固体物質であり、すなわち、非常に小さい、もしくは小さい、または中程度の寸法の固体粒子の形態である。
【0081】
本文中に記載した技術的教示を用いて、液体の蒸発を制御することにより、蒸気中に存在する物質、および、液体中に存在する物質の発生を制御することも可能であることを指摘しておく。このうちの実際的な用途の1つは、高温(例えば沸点)の液体を収容している容器から発生する臭気の抑制である。これは、食品を調理するための鍋などの場合である。実際、臭気感覚は、嗅覚系の受容器官に達するガスに分解された、何らかの臭気物質により生じる。
【0082】
完全を期すために、本文中に記載した技術的教示の多くを、分散相が液体ではなくプラズマである場合にも用いうることを明記しておく。
【0083】
上記の方法および装置は、明確な産業上の利用可能性を有する。
【0084】
例えば、
図1に示したような(本願にて権利請求する)装置を
図7に示した装置と共に参照すると、容器101に収容されている液体102が加熱された場合、上部開口部105から排出される蒸気は、液体中に存在する添加物(additional substances)をほとんど含まない。実際、この蒸気は、液体102の自由面の中央ゾーンの蒸発から発生し、この蒸発により、多量の液体(蒸気の形態)とわずかな添加物とが発生する。一方、メニスカスが存在する周囲ゾーン107から発生する蒸気(この蒸気から、認識可能な量の添加物も発生する)はフランジ711により遮られて、手段712を通って再凝結され、または、開口部713を通って排出される。このようにして、添加物からの液体の分離と、容器上部からの純粋である排出流とが得られる。