【実施例】
【0042】
D. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を明らかにするために含まれる。以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するために発明者により発見された技術であり、よって、その実施の好ましい形態を構成すると考えられることが、当業者に理解されるはずである。しかしながら、当業者は本開示に照らし合わせて、多くの変更が、開示された特定の態様において行われ、発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果をさらに得ることができることを理解するはずである。具体的には、実施例1および2は、EffCaMgCitの独特の組成および溶解性を示す実験室的研究である。実施例3、4、および5は、EffCaMgCitにより与えられるカルシウム補助剤による心保護に関し、実施例6、7、および8は、PPI処置中のEffCaMgCitの値に関する。
【0043】
実施例1
水酸化マグネシウムの代わりのクエン酸マグネシウムの使用による、およびクエン酸の追加によるEffCaMgCitの溶解性の増強
単位用量を2分以内に8オンス(oz)分量の水に完全に溶解した。3種類の発泡性クエン酸カルシウムマグネシウムの調製物を、400 mgのカルシウムを送達する単位用量で試験した。調製物は全て、400 mg(20 meq)のカルシウムを含有する炭酸カルシウムを含有した。調製物Aは122 mg(10 meq)のマグネシウムを送達する水酸化マグネシウムを使用した。それは、40 meqのクエン酸を含有し、10 meqのわずかな過剰シトレート(=40 meqシトレートから20 meq Ca+10 meq Mgを引く)および40 meqの総可溶性シトレートを送達する(表2)。
【0044】
(表2)調製物A:単位用量の内容
【0045】
溶解性および味覚試験は主な発明者および彼の4人の同僚により盲検的に行われた。調製物Aは、8 ozの水に添加されると発泡を伴う懸濁物になった。20分で、発泡はほとんど残っていないものの、調製物は依然として濁っていた。清澄になるのに30分かかった。味は、後味はないが風味がなかった。
【0046】
調製物Bもまた、水酸化マグネシウムを含有したが、より多量のクエン酸を含み、単位用量あたり20 meqの過剰クエン酸(=50 meqシトレートから20 meqカルシウム+10 meqマグネシウムを引く)、および50 meqの総可溶性シトレートを生じさせた(表3)。8 ozの水に加えると、この調製物は調製物Aよりも優れた発泡性を有した。それは10分で依然として濁っていた。それは約25分で清澄になった。それはわずかに酸っぱかった。5人のうち3人が調製物Aよりこの調製物の味を好んだ。よって、より多量のクエン酸(より多くの過剰シトレート)が、溶解時間を短縮させ、味を改善した。
【0047】
(表3)調製物B:単位用量の内容
【0048】
調製物C(EffCaMgCitの一態様)では、水酸化マグネシウムをクエン酸マグネシウムと取り替えた(表4)。調製物Bと同様に、単位用量あたり20 meqのより高い過剰クエン酸(50 meqの同じ総可溶性シトレートを有する)を用いた。この調製物は活発な発泡を伴う溶液になった。1分で、それはわずかに濁っているだけであった。2分で、それは完全に清澄になった。その味は、調製物Bのものと類似していた。
【0049】
(表4)調製物C:単位用量の内容
【0050】
結論として、クエン酸カルシウムマグネシウムの溶解性は、水酸化マグネシウムよりもむしろクエン酸マグネシウムを用いることにより、および中程度の過剰クエン酸により増強された。
【0051】
EffCaMgCit(調製物C)の独特の組成上の特徴は、Ca/シトレートモル比 0.6、20 meqの過剰シトレートまたは遊離シトレート、および50 meqの総可溶性シトレートである。この混加物はまた、単位用量あたり有効かつ安全な量のカルシウム(400 mg)およびマグネシウム(122 mg)も送達する。水酸化マグネシウムの代わりにクエン酸マグネシウムの使用と組み合わせた、十分な過剰シトレートおよび総可溶性シトレートは、満足の行く味と共に組成物の速溶解性を可能にする。
【0052】
実施例2
EffCaMgCitと他の代表的なカルシウム調製物との、Ca/シトレートモル比および過剰シトレートの比較
他の代表的なカルシウム調製物の分析によって、それらのCa/シトレートモル比はEffCaMgCit(調製物C)より高く、
かつ過剰シトレートはそれより低いことが明らかになった。表1(上記)は、EffCaMgCitの組成および特性をカルシウム強化オレンジジュースおよび発泡性クエン酸カルシウム(CaCit、フランスで販売)のものと比較する。400 mgのカルシウムを含有する単位用量はまた、EffCaMgCitからは適度な量のマグネシウム(122 mg)、およびCa強化オレンジジュースからは(亜臨床的に有効な)少量(34 mg)のマグネシウムも送達し、CaCitからはマグネシウムは全く送達されない。よって、EffCaMgCitのみが、真のCa-Mg調製物としての資格を有する。Ca強化オレンジジュースは予め可溶化され、一方、他の2つは発泡性調製物である。水中に置かれると、EffCaMgCitは急速に(2分以内に)溶解されるが、CaCitはよりゆっくりと溶解される。EffCaMgCitは、0.6という最も低いCa/シトレートモル比および単位用量あたり20 meqという最も高い過剰シトレートを有する。Ca強化オレンジジュースは、0.85というわずかに高いCa/シトレートモル比を有しているが、1 meqというはるかに低い過剰シトレートを有する。CaCitは、1.25というはるかに高いCa/シトレートモル比および4 meqというはるかに低い過剰シトレートを有する。Ca強化オレンジジュースは、1回の負荷あたり15 meqという中程度に高いカリウム含有量を有し、そのためにカルシウム補助剤は処方薬としてFDAからの認可を必要とする。
【0053】
「液体」クエン酸カルシウムマグネシウムとして挙げた6種類の製剤を通販により購入し、それらの組成を分析した(表1)。組成は400 mgのカルシウムを送達する単位用量に補正された。マグネシウム含有量は、140〜334 mgと様々であった。1種類の調製物(総合治療剤)は、シトレートを含有しておらず、Ca/シトレートモル比 無限大値および過剰シトレート ゼロを生じさせる。残りの5種類の製剤は、中程度のシトレート含有量を有し、EffCaMgCitのものよりわずかに高いCa/シトレートモル比を与える(0.6に対して0.70〜0.79)。しかしながら、過剰シトレートは、これらの製剤ではEffCaMgCitよりはるかに低い(20 meqに対して5〜9 meq)。6種類の製剤は全て、不溶性または難溶性で発泡性を有さないエマルジョンであった。
【0054】
5種類の市販のカルシウム補助剤(錠剤)の組成を表1において400 mgのカルシウムを送達する単位用量で比較した。Citracal+Mgを除いて、いずれもマグネシウムを含有していなかった。2種類のCitracal調製物はシトレートを含有し、Ca/シトレートモル比 1.5を生じさせたが、過剰シトレートはゼロであった。炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、および酢酸カルシウムの錠剤は、シトレートを全く含有しておらず、無限大値のCa/シトレート比を与えた。いずれも発泡性製剤ではなかった。クエン酸カルシウムおよび酢酸カルシウムは、中程度の溶解性を有しているが、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムは水には難溶性であった(Pak, 1989)。
【0055】
結論として、EffCaMgCit(調製物C)は、(0.6という)より低いCa/シトレートモル比
および(20 meqという)より多くの過剰クエン酸の両方を有するために、代表的なカルシウム調製物の中でも独特である。これらの特性は、通常の調製物と比べてEffCaMgCitの優れた溶解性を確実なものにする。EffCaMgCitは、ただ1つの調製物において最適量の可溶性のカルシウム、マグネシウム、およびシトレートを提供するという点で独特である。
【0056】
実施例3
EffCaMgCitの単回経口負荷後の血清シトレート濃度の増加
この心保護プロトコールでは、血清シトレート濃度に対するEffCaMgCitの作用をミルクおよびプラセボのものと比較し、EffCaMgCitがミルクまたはプラセボよりも優れたクエン酸反応を付与するという仮説を試験した。12人の健常な成人女性は、EffCaMgCit、ミルク、またはプラセボの単回経口投与前におよび該投与後6時間に血清シトレートを測定する、クロスオーバー単回投与生体利用率試験を完了した。EffCaMgCitは、400 mg(20 meq)のカルシウム、122(10 meq)mgのマグネシウム、および50 meqのシトレートを含有した。ミルクは、400 mgのカルシウム、40 mg(3.3 meq)のマグネシウム、および8.4 meqのシトレートを含有した。プラセボは、カルシウム、マグネシウム、またはシトレートを欠いた。試験負荷と試験負荷との間に少なくとも1週間の「休薬期間」があった。
【0057】
各生体利用率試験において、試験負荷は、一晩絶食後に午前8時に標準的な朝食と共に与えられた。試験負荷前に、および経口試験投与後1時間おきに6時間にわたって静脈血試料を得た。血清試料をシトレートについて測定した。ベースラインからの血清シトレートの上昇は、腸管シトレート吸収の評価基準を与えた。
【0058】
図1は、経口試験負荷後の血清シトレートの変化を図示する。血清シトレートは、EffCaMgCit負荷後最初の1時間に急速に上昇しピークに到達し、それは残りの5時間にわたってベースラインを上回ったままである。血清シトレートは、ミルクの摂取後最初の3時間にわたってミルクの摂取後緩やかに上昇した(EffCaMgCit後の上昇の約2分の1)。血清シトレートは、プラセボ後最初の1時間にのみ増加した。シトレート吸収の定量的評価基準である、血清シトレートのベースラインからの曲線下面積の変化(ΔAUC)は、ANOVAによる3フェーズ間で有意に異なっていた(p=0.05)。EffCaMgCitのΔAUCは、ミルク(p=0.05)またはプラセボ(p=0.02)より有意に高かった。よって、EffCaMgCitは、標準的なカルシウムに富む食物であるミルクよりも優れたシトレート生体利用率およびクエン酸反応を付与する。
【0059】
シトレートは、血清中のカルシウムと共に可溶性複合体を形成し、著名なものはCaCit
-およびCaCitPO
44-(カルシウムホスホクエン酸)である。
図1に記載したEffCaMgCitの単回経口負荷後の血清シトレートから、JESSプログラムは、公知の結合定数を用いることによりクエン酸カルシウム複合体をコンピュータで計算した。表5は、EffCaMgCitの単回経口投与前のおよび該投与後1時間おきに6時間にわたる、血清中の全てのクエン酸カルシウム複合体(CaCit複合体)の合計を示す。ベースラインからの変化(ΔCaCit複合体)も示す。
【0060】
(表5)クエン酸Ca複合体
【0061】
表5および
図1に示すように、血清シトレートは、EffCaMgCitの単回経口投与後最初の1時間に顕著に上昇し、残りの5時間にわたってベースラインより高いままであった。この上昇に応じて、総可溶性カルシウムシトレート複合体も同時に増加した。
【0062】
血清限外濾過性カルシウム(serum ultrafiltrable calcium)は、複合型カルシウムおよびイオン化カルシウムの合計である。したがって、EffCaMgCit負荷に対するクエン酸反応由来の総クエン酸カルシウム複合体の前記増加により、イオン化カルシウム画分が減少する。よって、EffCaMgCitに由来する血清シトレートの上昇は、カルシウム負荷に由来するイオン化カルシウム画分の増加を鈍らせる。心毒性の原因であると推定されるのは、総カルシウムよりむしろイオン化血清カルシウムであることから、血清シトレートの上昇は心保護的である可能性が高い。
【0063】
EffCaMgCitはまた、血清マグネシウム濃度も増大させる。PPIプロトコールによる実施例7および
図5に記載のように、EffCaMgCitは、生体利用可能なマグネシウムもたらし、それは、単回経口負荷後のベースラインからの血清マグネシウム濃度の累積増加から測定された。
【0064】
実施例4
EffCaMgCitによる血清中のCPP形成の低下
実施例3と同じ心保護プロトコールにおいて、血清試料をカルシプロテイン粒子について分析した(M. Kuro-oの研究室において)。これまでに分析した10人の対象由来の試料では、血清CPP濃度は、ミルクの経口負荷後6時間にわたってベースラインから中程度に上昇した(
図2)。しかしながら、EffCaMgCit負荷後、血清CPPは、2および3時間でベースラインよりわずかに高かったが、4〜6時間ではそうではなかった。ミルクのベースラインからの血清CPPの増加(Δ曲線下面積またはΔAUC)はプラセボのものの約5倍であったが、EffCaMgCitのΔAUCはプラセボのもののたった1.5倍であった。少ない集合数(n=10)にも関わらず、ΔCPPの差異は、ミルクとプラセボの間(p=0.12)およびEffCaMgCitとミルクの間(p=0.17)でわずかに有意差が認められた。ミルクを摂取した10人の対象のうち7人は、少なくとも1回20 μg/mlを超える血清CPP値を有し、一方、EffCaMgCitを服用した2人の対象のみがそうであった。よって、血管石灰化を惹起しうる因子であるCPPは、ミルク後よりEffCaMgCit後の血清で形成される可能性が低い。
【0065】
実施例5
EffCaMgCitによる副甲状腺抑制
実施例3と同じ心保護プロトコールにおいて、血清試料を経口試験負荷前におよび該負荷後6時間にわたってPTHを測定した。ベースラインからの血清PTHの減少は副甲状腺抑制の評価基準を与えた。
図3は、ベースラインからの血清PTHの変化率(Δ血清PTH)を示し、ここで、負の値は副甲状腺抑制を示した。EffCaMgCit負荷後、血清PTHは1時間で低下し、5時間抑制されたままだった。ミルク負荷後、血清PTHは負荷後1時間でEffCaMgCit負荷によるものと同程度に低下し;ミルクによるこの低下は、その後5時間 はEffCaMgCitによるものほど著しくはなかった。プラセボ後のΔ血清PTHには実質的な変化はなかった。曲線上面積(ΔAOC)の変化率は、試験負荷後6時間にわたるベースライン値から実験値への累積減少率として定義され(Heller, 2000)、ここで、ΔAOCの負の値は全体的な副甲状腺抑制を表す。血清PTHのΔAOCは、EffCaMgCitで−118%、ミルクで−82%、プラセボで+7%であった。ΔAOCは、EffCaMgCitとプラセボの間(p=0.001)およびミルクとプラセボの間(p=0.02)で有意に異なっていた。ΔAOCの差異は、ANOVAによりフェーズ間で有意に異なっていた(p=0.0001)。よって、EffCaMgCitは、ミルクより相対的に優れた副甲状腺抑制を生じた。
【0066】
実施例6
プロトンポンプ阻害物質療法の前および後の、炭酸カルシウムよりも優れたEffCaMgCitのカルシウム生体利用率
このPPIプロトコールでは、カルシウムおよびマグネシウムの生体利用率をEffCaMgCitと炭酸カルシウムの間で比較し、胃酸分泌がオメプラゾール(一般的なPPI薬物)療法により阻害されている場合であっても、EffCaMgCitは適切なカルシウムおよびマグネシウム生体利用率を付与し、一方で炭酸カルシウムではそうではないという仮説を試験した。この仮説は、炭酸カルシウムの溶解性が胃液のpHに依存する(Pak, 1989)一方で、EffCaMgCitが摂取前に予め可溶化されるという知見、およびEffCaMgCitがマグネシウムを含有するが炭酸カルシウムはそうではないという知見に基づいている。
【0067】
11人の成人の男性または女性は、クロスオーバー無作為化デザインの4フェーズの試験を完了した。オメプラゾール(20 mg)またはプラセボを1日2回1週間服用した後、各対象は、EffCaMgCitまたは炭酸カルシウムによる単回投与生体利用率試験を受けた。4フェーズは、オメプラゾール時のEffCaMgCit、オメプラゾール時の炭酸カルシウム、プラセボ時のEffCaMgCit、およびプラセボ時の炭酸カルシウムであった。EffCaMgCit負荷は、400 mg(20 meq)のカルシウム、122 mg(10 meq)のマグネシウム、および50 meqのシトレートを送達した。炭酸カルシウム負荷は、400 mgのカルシウムを与えたが、マグネシウムまたはシトレートは与えなかった。試験負荷前に、および該負荷後1時間毎に6時間にわたって、静脈血試料をカルシウム、マグネシウム、およびPTH用に得た。限られた数の対象は、決定的な統計的差異の表示を妨げる。しかしながら、
図4〜6に示されるように識別可能な傾向が開示された。
【0068】
試験負荷後6時間にわたるベースラインからの血清カルシウムの変化から、曲線上面積の変化(ΔAUC)を腸管カルシウム吸収の評価基準として算出した(Heller, 2000)。(オメプラゾールの代わりに)プラセボを1週間服用した後、EffCaMgCit負荷後の血清カルシウムのΔAUCは炭酸カルシウム由来のものよりわずかに高かった(
図4)。オメプラゾール療法の際は、EffCaMgCit負荷後の血清カルシウムのΔAUCは、プラセボ負荷(オメプラゾール無し)後に得られる値から16%非有意に減少した。しかしながら、炭酸カルシウム負荷由来の血清カルシウムのΔAUCは、プラセボと比較してオメプラゾールによって64%実質的に減少した。
【0069】
このように、EffCaMgCitからのカルシウム生体利用率は、おそらく可溶性カルシウムの送達のため、胃酸分泌の阻害による影響を受けなかった。これに対して、炭酸カルシウムからのカルシウム生体利用率は、PPI処置により低下し、胃酸分泌による炭酸カルシウムの溶解度に依存することが証明された。
【0070】
実施例7
PPI療法中のEffCaMgCitによる生体利用可能なマグネシウムの提供
実施例6と同じPPIプロトコールにより、生体利用可能なマグネシウムの評価基準である血清マグネシウムのΔAUCを、EffCaMgCitまたは炭酸カルシウムの単回経口負荷後6時間にわたるベースラインからの血清マグネシウム濃度の変化により算出した。プラセボ(オメプラゾール無し)時に、EffCaMgCit後の血清マグネシウムのΔAUCは大幅なものであり、0.38 mg/dLの累積増加および0.13 mg/dLのピーク増加であった(
図5)。オメプラゾール時に、EffCaMgCit後の血清マグネシウムのΔAUCは、プラセボより大きく変化しなかった。しかしながら、炭酸カルシウム後の血清マグネシウムのΔAUCは、プラセボとオメプラゾールの両方で無視できるほどわずかであった。オメプラゾール処置時の2つの塩の間のΔAUCの差異は有意差が認められた(p=0.03)。
【0071】
このように、EffCaMgCitは、可溶性マグネシウムの送達のため、胃酸分泌が阻害されている場合でさえも生体利用可能なマグネシウムを提供する。これに対して、炭酸カルシウムは、マグネシウムを含有していないことから、生体利用可能なマグネシウムを提供しない。
【0072】
実施例8
PPI療法中のEffCaMgCitによる副甲状腺抑制
実施例6と同じPPIプロトコールにおいて、プラセボ(オメプラゾール無し)またはオメプラゾール療法中のEffCaMgCitと炭酸カルシウムの間で副甲状腺抑制を比較した。曲線上面積の変化(ΔAOC)を、EffCaMgCitまたは炭酸カルシウムの単回経口投与後6時間にわたるベースラインから実験値への血清PTHの累積減少率から得た(Heller, 2000)。負の値のΔAOCは、ベースラインからの血清PTHの累積低下、または副甲状腺抑制を示した。
【0073】
EffCaMgCit負荷後、血清PTHのΔAOCは、プラセボ(−105%)およびオメプラゾール(−146%)後いずれも負の値であり;その差に有意差は認められなかった(
図6)。炭酸カルシウム負荷後、血清PTHのΔAOCもプラセボおよびオメプラゾール処置中のいずれも負の値であった。プラセボとオメプラゾールの両方とも、ΔAOCは炭酸カルシウム後よりEffCaMgCit後の方がより負の値が大きく;オメプラゾール処理時の2つの塩の間でのΔAOCの差異は有意差が認められた(p=0.003)。フェーズ間のΔAOCの差異はANOVAにより有意差が認められた(p=0.02)。血清PTHの変化は概して、血清カルシウムのものと反対向きであった。
【0074】
このように、EffCaMgCitは、胃酸分泌の阻害後ですら副甲状腺機能を抑制し;EffCaMgCitのこの作用は炭酸カルシウムのものよりも優れていた。
【0075】
本明細書において開示および特許請求される全ての組成物および/または方法は、本開示に照らし合わせて過度な実験なく作製および実行できる。本発明の組成物および方法が一部の態様に関して記載されているが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本組成物および本方法に、ならびに本発明に記載の方法の段階においてまたは該段階の順序において、変形を加えることができることは当業者には明らかである。より具体的には、化学的かつ生理学的に関連するある特定の作用物質は、本明細書に記載の作用物質と置き換えられてもよく、同様のまたは類似の結果が達成されうることはあきらかである。当業者に明らかなそのような類似する代替物および変更形態は全て、添付の特許請求の範囲により定義される発明の精神、範囲および概念の範囲内にあるものと見なされる。
【0076】
参照文献
以下の参照文献は、本明細書に記載の事項への例示的な手順の補足またはその他の詳細な補足を提供する範囲において、参照により本明細書に特に組み入れられる。