特許第6348501号(P6348501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348501
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】超低密度肺粉剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20180618BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20180618BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180618BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20180618BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   A61K9/14
   A61K47/24
   A61K47/26
   A61K31/198
   A61K9/72
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-541917(P2015-541917)
(86)(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公表番号】特表2015-536989(P2015-536989A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013069107
(87)【国際公開番号】WO2014074797
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】61/884,436
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/679,245
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/884,319
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/884,315
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/945,160
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/724,781
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515108912
【氏名又は名称】サイヴィタス セラピューティックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リップ,マイケル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】バティッキー,リチャード,ピー.
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−507218(JP,A)
【文献】 特表2002−511399(JP,A)
【文献】 特表2006−510622(JP,A)
【文献】 特表2005−508853(JP,A)
【文献】 特表2004−509141(JP,A)
【文献】 特表2004−503482(JP,A)
【文献】 特表2005−511628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00 − 9/72
A61K 47/00 − 47/69
A61K 31/198
CAplus/MEDLINE/EMBASE(STN)
BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レボドパの粒子を含む肺送達のための薬学的組成物であって、
前記レボドパの粒子が、
約8μm〜約12μmの幾何学的サイズと、
約0.025g/cm〜約0.050g/cmのタップ密度と、
1.90〜2.90重量%の含水量と
を有する薬学的組成物。
【請求項2】
前記粒子がリン脂質を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記粒子が塩を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記粒子が界面活性剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記粒子が重合体を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記粒子が糖を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記粒子が約10m/gより大きい外表面積を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記粒子が約15m/gより大きい外表面積を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記粒子が約20m/gより大きい外表面積を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記粒子が約10m/g〜約50m/gの外表面積を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記粒子が約2.5μm〜5μmの空気動力学径を有する、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の薬学組成物を含む、コンパートメント。
【請求項13】
請求項12のコンパートメントを備える、吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許仮出願第61/724,781号(2012年11月9日出願);米国特許仮出願第61/884,319号;米国特許仮出願第61/884,315号;米国特許仮出願第61/884,436号(すべて、2013年9月30日出願)の利益を主張する。本出願は、米国特許出願第13/679,245号(2012年11月16日出願。現在、米国特許第8,545,878号)の一部継続、および米国特許出願第13/945,160号(2013年7月18日出願)の一部継続である。上記出願の全教示は、参照により本明細書中で援用される。
【背景技術】
【0002】
肺経路により大用量の薬剤を送達することは、非常に難しい。乾燥粉剤吸入器は、高用量の薬剤の送達において利点を提供する。乾燥粉剤処方物では、高パーセンテージの薬剤および低パーセンテージの賦形剤を有する処方物の選択は、高用量の薬剤を送達するのに役立ち得るが、しかしこのような粉剤を製造し、使用することはしばしば困難であり得る。高吸込み可能粒子として吸入器から放出されながら、高用量の粉剤が送達コンパートメント中に詰め込まれる超低密度肺乾燥粉剤を、出願人等は見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、医薬剤を含有し、約5μmより大きい幾何学的サイズおよび約0.075g/cm未満のタップ密度を有する粒子を含む肺送達のための薬学的組成物を提供する。本発明は、患者の気道への本発明の薬学的組成物の送達方法も提供する。一実施形態では、薬学的組成物は、パーキンソン病に罹患している患者の気道への肺送達のためのレボドパからなる粒子を含む。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の詳細な説明
一実施形態において、本発明は、医薬剤を含有し、約5ミクロン(μm)より大きい中央値幾何学的サイズおよび約0.075g/cm未満のタップ密度を有する粒子を含む肺送達のための薬学的組成物である。本発明の一態様において、タップ密度は約0.02〜0.075g/cmである。本発明の別の態様では、タップ密度は約0.02〜0.05g/cmである。本発明のさらなる態様では、タップ密度は約0.03〜0.06g/cmである。本発明の一態様では、タップ密度は約0.03〜0.04g/cmである。本発明の別の態様では、中央値幾何学的サイズは、約5μm〜30μm、5μm〜10μm、7μm〜15μmまたは7μm〜12μmである。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、以下の:
患者にコンパートメントおよび吸入器中で粉剤を提供するステップ(ここで、前記粉剤は医薬剤の粒子を含む);
患者の呼吸作動により粉剤を分散するステップ;
患者の呼吸器系に前記粒子を送達するステップ
を包含する患者の肺系への医薬剤の送達方法であって、粉剤の分散時に、患者の呼吸器系に送達される粒子が、前記コンパートメント中に含有される粒子より小さい中央値幾何学的直径を有する方法である。
【0006】
本発明の一態様では、粉剤は、約0.75g/cm未満、約0.02〜0.075g/cmまたは約0.025〜0.055g/cmのタップ密度を有する。
【0007】
本発明の一態様において、吸入器は乾燥粉剤吸入器である。種々の吸入器、例えばエアロライザー、ディスカス、フレックスヘイラー、ハンディヘイラー、ヘオヘイラー、プレスエアー、ロタヘイラー、ターボヘイラーおよびツイストヘイラーが用いられ得る。用いられ得るその他の乾燥粉剤吸入器は、米国特許第6,766,799号、米国特許第7,278,425号および米国特許第8,496,002号(これらの記載内容は各々、底に記載された吸入装置に関連した開示に関して、参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0008】
本発明の一態様では、コンパートメントはカプセルまたはブリスターパックである。本発明の一態様では、吸入器は、約0.05〜約0.25、約0.15〜約0.25、0.05〜約0.15、0.2〜約0.25または約0.2の抵抗を有する。本明細書中で言及されるような抵抗は、cmHO/(リットル/分)の平方根で測定される。
【0009】
本発明の別の態様では、前記コンパートメント中の粉剤は、約5μmより大きい、約5μm〜約30μmの、約5μm〜約15μmの、または約7μm〜約12μmの中央値幾何学的径を有する。具体的一実施形態では、前記コンパートメント中の粒子は、10〜12μmの中央値幾何学的径を有し、患者の気道に送達される粒子は、8〜9μmの中央値幾何学的径を有する。別の実施形態では、患者の気道に送達される粒子は、前記コンパートメント中の粒子より5%〜20%小さい、5%〜10%小さい、または8%〜15%小さい中央値幾何学的径を有する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、約5μmより大きい幾何学的サイズおよび約0.075g/cm未満のタップ密度を有するレボドパの粒子を含む肺送達のための薬学的組成物である。本発明の一態様では、粒子はリン脂質を含む。本発明の別の態様では、粒子は塩を含む。本発明のさらに別の態様では、粒子は界面活性剤または重合体を含む。
【0011】
一実施形態において、本発明の粒子は、約10m/gより大きい外表面積を有する。別の実施形態では、外表面積は、15m/gより大きいか、20m/gより大きいか、または約10m/g〜約50m/gである。
【0012】
具体的一実施形態では、本発明は、約8μm〜約12μmの幾何学的サイズ、および約0.025g/cm〜約0.050g/cmのタップ密度を有するレボドパの粒子を含む肺送達のための薬学的組成物である。この具体的発明は、いくつかの場合、約2.5μm〜5μmの空気動力学径を有する粒子、約10m/g〜約50m/gの外表面積を有し、さらに塩およびリン脂質を含む粒子により特性化され得る。非常に具体的な一実施形態では、本発明は、レボドパ、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよび塩化ナトリウムの粒子を含む肺送達のための薬学的組成物であって、この場合、前記粒子は、約8μm〜約12μmの幾何学的サイズおよび約0.025g/cm〜約0.050g/cmのタップ密度を有する。さらに具体的な一実施形態では、本発明は、レボドパ、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および塩化ナトリウムの粒子を含む肺送達のための薬学的組成物であって、この場合、前記粒子は、約8μm〜約12μmの幾何学的サイズおよび約0.025g/cm〜約0.050g/cmのタップ密度、約2.5μm〜5μmの空気動力学径、および約10〜約50m/gの外表面積を有する。
【0013】
吸入粉剤は、付加的賦形剤を含有し得る。賦形剤の例としては、塩、例えば塩化ナトリウム(NaCl)、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよび塩化カリウム、ならびにリン脂質、例えばジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、二飽和ホスファチジルコリン(DSPC)が挙げられる。一実施形態では、薬学的組成物は、粉剤中の乾燥固体の%により測定して、90%レボドパ、8%ジパルミトイルホスファチジルコリンおよび2%塩化ナトリウムを含む粉剤を含有する。一実施形態では、薬学的組成物は、90:8:2の乾燥重量比のレボドパ:DPPC:NaClを有する吸入粉剤を含有する。別の実施形態では、カプセルは、90:5:5の乾燥重量比のレボドパ:DPPC:NaClを有する吸入可能粉剤を含有する。
【0014】
カスケードインパクターを用いる重量分析は、浮遊粒子のサイズ分布を測定する方法である。アンダーセン型カスケードインパクター(ACI)は、空気動力学サイズを基礎にしてエアロゾルを9つの異なる分画に分離し得る8段階インパクターである。各段階のサイズカットオフは、ACIが操作される流量によって決まる。好ましくは、ACIは60L/分に較正される。一実施形態では、2段階急縮小ACIが粒子最適化のために用いられる。2段階急縮小ACIは、8段階ACIののうちの段階0、2およびFからなり、2つの別個の粉剤分画の収集を可能にする。各段階で、エアロゾル流はノズルを通過して、表面に突き当たる。十分大きい慣性を有するエアロゾル流中の粒子は、平板に衝突する。平板に衝突するのに十分な慣性を有さないより小型粒子は、エアロゾル流中に留まって、次の段階に運ばれることになる。
【0015】
ACIは較正され、したがって第一段階で収集される粉剤の分画は「微細粒子分画」または「FPF」として本明細書中で言及される。FPFは、5.6μm未満の空気動力学径を有する粒子のパーセンテージに対応する。ACIの第一段階を通過し、収集フィルター上に沈着される粉剤の分画は、「FPF(3.4)」として言及される。これは、3.4μm未満の空気動力学径を有する粒子のパーセンテージに対応する。
【0016】
FPF分画は、患者の肺に沈着される粉剤の分画と相関することが実証されているが、一方、FPF(3.4)は、患者の深部肺に到達する粉剤の分画と相関することが実証されている。本発明によれば、カプセル中に含有される公称用量(すなわち、5.6 μm未満の空気動力学径を有するカプセル中に含有される粉剤中の粒子のパーセンテージ)の吸入可能粉剤のFPFは、約40%以上である。一実施形態では、カプセル中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量のFPFは、約50%、60%または70%または80%または90%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量の約50%〜約60%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量の約55%〜約65%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量の約50%〜約70%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量の約57%〜約62%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量の約50%〜約69%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含有される吸入可能粉剤の公称粉剤用量の約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%または65%である。
【0017】
本明細書中で用いる場合、「公称粉剤用量」という用語は、カプセル中に保持される粉剤の総量である。本明細書中で用いる場合、「公称薬剤用量」という用語は、公称粉剤用量中に含有される薬剤(例えばレボドパ)の総量である。公称粉剤用量は、粉剤中の薬剤の負荷パーセントにより公称薬剤用量と関連づけられる。
【0018】
一実施形態では、公称粉剤用量は乾燥重量で25〜50mgである。さらなる実施形態では、公称粉剤用量は乾燥重量で25〜40mgである。さらなる一実施形態では、公称粉剤用量は、乾燥重量で30〜35mgまたは32〜38mgである。
【0019】
浮遊粒子のサイズ分布を測定するための別の方法は、多段階液体インピンジャー(MSLI)である。多段階液体インピンジャー(MSLI)は、アンダーソンカスケードインパクター(ACI)と同一原理で操作するが、しかし8段階の代わりに、MSLIは5段階である。さらに、固体平板からなる各段階の代わりに、各MSLI段階は、メタノール湿潤ガラスフリットからなる。湿潤段階は、ACIを用いて起こり得る弾みおよび再飛散を防止するために用いられる。MSLIは、粉剤の流量依存性の指標を提供するために用いられる。これは、30、60および90L/分でMSLIを操作し、段階1および収集フィルターで収集される粉剤の分画を測定することにより成し遂げられ得る。各段階における分画が異なる流量の全てで相対的に一定のままである場合には、粉剤はほぼ流量非依存性であるとみなされる。
【0020】
一実施形態では、本発明の吸入可能粉剤は、約0.075g/cm未満のタップ密度を有する。例えば粒子は、0.02g/cm〜0.075g/cm、0.02g/cm〜0.05g/cm、0.03g/cm〜0.06g/cm、0.03g/cm〜0.04g/cmまたは約0.05g/cm未満のタップ密度、あるいは約0.04g/cm未満のタップ密度、約0.03g/cm未満のタップ密度を有する。タップ密度は、当業者に既知の計器、例えばデュアルプラットフォーム・マイクロプロセッサ制御式タップ密度試験装置(Vankel,N.C.)またはGEOPYC(商標)計器(Micrometrics Instrument Corp.,Norcross,GA,30093)を用いて測定され得る。タップ密度は、エンベロープ質量密度の標準測定値である。タップ密度は、USP Bulk Density and Tapped Density, United States Pharmacopia Convention,Rockville,Md.,10thSupplement,4950−4951,1999.の方法を用いて決定され得る。低タップ密度に寄与し得る特徴としては、不規則な表面の肌理および多孔性構造が挙げられる。等方性粒子のエンベロープ質量密度は、それが取り囲まれ得る最小球エンベロープ容積で粒子の質量を割ったものと定義される。本発明の一実施形態では、粒子は約0.4g/cm未満のエンベロープ質量密度を有する。
【0021】
本発明の吸入可能粉剤は、好ましい粒子サイズ、例えば少なくとも約1ミクロン(μm)の容積中央値幾何学的径(VMGD)を有する。一実施形態では、VMGDは5μmより大きい。他の実施形態では、VMGDは約5μm〜30μm、約5μm〜10μm、約7μm〜15μmおよび約7μm〜12μmである。噴霧乾燥粒子の直径、例えばVMGDは、レーザー回析計器(例えば、Helos(Sympatec,Princeton,N.J.製))を用いて測定され得る。粒子直径を測定するためのその他の計器は、当該技術分野で周知である。試料中の粒子の直径は、粒子組成および合成方法といったような因子によって多岐に亘る。試料中の粒子のサイズの分布は、気道内の標的部位への最適沈着を可能にするよう選択され得る。
【0022】
本発明の吸入可能粉剤の粒子は、好ましくは、約1μm〜約5μm、または約1μm〜約5μmに包含される任意の部分範囲の、本明細書中では「空気動力学径」としても言及される「質量中央値空気動力学径」(MMAD)を有する。例えば、MMADは約1μm〜約3μmであるか、またはMMADは約3μm〜約5μmである。一実施形態では、MMADは1.5μm〜2.5μmである。実験的には、空気動力学径は、重力沈降法を用いて決定され得るが、この方法は、全部の粉剤粒子が一定距離を沈降する時間を用いて、粒子の空気動力学径を直接的に推測する。質量中央値空気動力学径(MMAD)を測定するための間接的方法は、多段階液体インピンジャー(MSLI)である。空気動力学径daerは、以下の方程式から算定され得る:
【数1】
(式中、dは幾何学的径、例えばMMGDであり、そしてρは粉剤密度である)。
【0023】
本発明のカプセル中に用いるための粉剤は、典型的には噴霧乾燥により生成される。いくつかの場合、噴霧乾燥は極度乾燥粒子を生じ、これは不良取扱い特性を有し、密にカプセル中に圧縮するのが困難であり得る。特定水分レベルを有する窒素源が、乾燥粉剤の上を、横断して、または通って放出されて、乾燥粉剤に特定の含水量を付加し得る。このような水分は、粉剤の所望の作用密度を提供し得る。本発明による噴霧乾燥法は、本明細書中の実施例に、そして米国特許第6,848,197号及び第8,197,845号(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0024】
例えば上記のようにレボドパを含む吸入可能粉剤は、吸入器に用いるのに適したカプセルを充填するために用いられる。「カプセル材料」という用語は、本明細書中で用いる場合、吸入のためのカプセルの外殻が作られる材料を指す。一実施形態では、本発明によるカプセル材料は、ゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサンおよび合成プラスチックの中から選択される。
【0025】
ゼラチンがカプセル材料として用いられる場合、本発明による例は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG 3350、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、PEO−PPOブロックコポリマー、そしてその他のポリアルコールおよびポリエーテルの中から選択され得る。セルロース誘導体がカプセル材料として用いられる場合、本発明による例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース選択され得る。合成プラスチックがカプセル材料として用いられる場合、本発明による例は、ポリエチレン、ポリカルボネート、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートから選択され得る。一実施形態では、カプセル材料は、二酸化チタンをさらに含む。好ましい一実施形態では、カプセルはHPMCおよび二酸化チタンを含む。一実施形態では、カプセルはカラギーナンを含む。さらなる一実施形態では、カプセルは、塩化カリウムを含む。さらなる実施形態では、カプセルは、HPMC、カラギーナン、塩化カリウムおよび二酸化チタンを含む。一実施形態では、カプセルサイズは、000、00、0、1または2から選択される。具体的一実施形態では、カプセルサイズは00である。
【0026】
具体的一実施形態では、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。別の具体的実施形態では、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース・サイズ00カプセルである。具体的一実施形態では、カプセル材料はHPMCおよび二酸化チタンを含み、カプセルサイズは00である。
【0027】
一実施形態では、00カプセルは、乾燥重量で15〜50グラムのレボドパを含有する。別の実施形態では、00カプセルは、乾燥重量で20〜40グラムのレボドパを含有する。別の実施形態では、00カプセルは、乾燥重量で25〜35グラムのレボドパを含有する。別の実施形態では、00カプセルは、乾燥重量で約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40グラムのレボドパを含有する。
【0028】
本発明の一態様において、粉剤は、カプセルからの高分散を可能にするために、低静電帯電を有する。
【0029】
本発明のカプセルは、例えばパーキンソン病に罹患した、そしてレボドパによる処置を必要とする患者にレボドパを含む乾燥粉剤組成物を送達するための乾燥粉剤吸入器に用いるのに特に適している。処置を必要としている患者は、パーキンソン病のための維持療法、またはパーキンソン病による急性および/またはすくみ現象の場合に必要であるようなパーキンソン病のための救援療法を必要とし得る。一実施形態では、カプセルは、米国特許第6,858,199号および第7,556,798号(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されていうるように1回呼吸で患者に有効量の乾燥粉剤組成物を送達するために乾燥粉剤吸入器中で用いられる。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「有効量」という用語は、所望の効果または有効性を達成するために必要とされる量を意味する。薬剤の実有効量は、具体的薬剤または利用されているその組合せ、処方されている特定組成物、投与方式、そして患者の年齢、体重、状態、そして処置されている病相の重症度によって変わり得る。ドーパミン前駆体、アゴニストまたはその組合せの場合、それは、治療を要するパーキンソン症候を低減する量である。特定患者に関する投与量は本明細書中に記載されており、慣用的考察を用いて(例えば、適切な、慣用的薬理学的プロトコールにより)、当業者により決定され得る。例えば、経口レボドパの有効量は、約50ミリグラム(mg)〜約500mgの範囲である。多くの場合、一般の進行中の(経口)レボドパ処置スケジュールは、1日8回100mgである。
【0031】
1つより多いドーパミン前駆体、アゴニストまたはその組合せ、特にレボドパ、カルビドパ、アポモルフィンおよびその他の薬剤の投与は、同時的にまたは時間内に逐次的に提供され得る。例えばカルビドパまたはベンセラジドは、しばしば、末梢カルボキシラーゼ活性が完全に中止される、ということを保証するために投与される。筋肉内、皮下、経口およびその他の投与経路が用いられ得る。一実施形態では、これらの他の作用物質は、肺臓系に送達される。これらの化合物または組成物は、前、後または同時に投与され得る。好ましい一実施形態では、気道に投与される粒子としては、レボドパおよびカルビドパの両方が挙げられる。「同時投与」という用語は、特定のドーパミン前駆体、アゴニストまたはその組合せ、および/またはその他の組成物が、病相を、ならびに本明細書中に記載される基礎疾患を処置するために折々投与される、ということを意味するために、本明細書中で用いられる。
【0032】
一実施形態では、長期レボドパ療法は、経口カルビドパと組み合わされるレボドパの肺送達のための乾燥粉剤吸入器中の本明細書中に記載される薬学的組成物の使用を包含する。別の実施形態では、レボドパの肺送達は病相中に提供されるが、一方、長期処置は、レボドパ/カルビドパの慣用的経口投与を用い得る。さらなる一実施形態では、長期レボドパ療法は、経口ベンセラジドと組み合わされるレボドパの肺送達のための乾燥粉剤吸入器中の本明細書中に記載される薬学的組成物の使用を包含する。別の実施形態では、レボドパの肺送達は病相中に提供されるが、一方、長期処置はレボドパ/ベンセラジドの慣用的経口投与を用い得る。
【0033】
本発明は、以下の非限定的実施例への言及によりさらに理解される。
【実施例】
【0034】
実施例1. 工程1 粉剤調製
レボドパおよびDPPCを室温で30分間、その後、必要量の水およびエタノールを計量し、被覆水性および非被覆有機相供給容器にそれぞれ移す。水性相容器上の被覆物を55℃に設定し、計量水を加熱して52.5℃にして、その後、必要量の塩化ナトリウムおよびL−ドパを水性相容器に付加し、必要量のDPPCを有機相容器に付加して、それらの全てを撹拌により溶解させる。水性供給容器頭隙を、70scfhに保持した窒素でパージする。
【0035】
乾燥ガス流動(95kg/時間に設定)および排出を始めることにより噴霧乾燥を開始し、乾燥ガスのための加熱器を125℃に設定する。生成物フィルター加熱器を作動させて、60℃に設定し、液体スキッド加熱器を作動させて、55℃に設定する。噴霧乾燥器出口温度が80℃に到達後、霧状ガス(22g/分に設定)およびブランク溶媒(水性流動=28mL/分および有機流動=42mL/分)を開始して、安定化させて、系を冷却、安定化させて、出口温度を52.5℃とする。生成物フィルター脈動を開始し、生成物フィルターパージ流を15scfhに設定する。系が52.5℃で安定化した後、液体スキッド入口を供給溶媒に切り替える。表1は、全操作中に保持されるパラメーターを要約する。
【表1】
【0036】
噴霧乾燥粉剤を毎時間収集し、20℃および15%RHの制御条件下で大型容器に移す。供給溶媒が尽きた後、液体スキッド入口をブランクに切り替えて、約10分間流れさせて、その間に、最終粉剤を収集し、併合する。ブランク溶媒で10分後、液体ライン、霧化ガス、乾燥ガス加熱器、乾燥ガス入口、そして最後に排出を止めることにより、システムシャットダウンを開始する。
【0037】
この工程は、約3.4重量%の水を含有する粉剤を生じる。
【0038】
実施例2. 工程2 特殊乾燥を伴う粉剤調製
レボドパおよびDPPCを室温で30分間、その後、必要量の水およびエタノールを計量し、被覆水性および非被覆有機相供給容器にそれぞれ移す。水性相容器上の被覆物を55℃に設定し、計量水を加熱して52.5℃にして、その後、必要量の塩化ナトリウムおよびL−ドパを水性相容器に付加し、必要量のDPPCを有機相容器に付加して、それらの全てを撹拌により溶解させる。水性供給容器頭隙を、70scfhに保持した窒素でパージする。
【0039】
乾燥ガス流動(95kg/時間に設定)および排出を始めることにより噴霧乾燥を開始し、乾燥ガスのための加熱器を125℃に設定する。生成物フィルターおよび最適化パージガス加熱器を作動させて、60℃に設定し、液体スキッド加熱器を作動させて、55℃に設定する。噴霧乾燥器出口温度が80℃に到達後、霧状ガス(22g/分に設定)およびブランク溶媒(水性流動=28mL/分および有機流動=42mL/分)を開始して、最適化乾燥ガス(70kg/時間に設定)を開始し、安定化させて、系を冷却、安定化させて、出口温度を52.5℃とする。生成物フィルター脈動を開始し、生成物フィルターパージ流を15scfhに設定する。系が52.5℃で安定化した後、液体スキッド入口を供給溶媒に切り替える。表2は、全操作中に保持されるパラメーターを要約する。
【表2】
【0040】
噴霧乾燥粉剤を毎時間収集し、20℃および15%RHの制御条件下で大型容器に移す。供給溶媒が尽きた後、液体スキッド入口をブランクに切り替えて、約10分間流れさせて、その間に、最終粉剤を収集し、併合する。ブランク溶媒で10分後、液体ライン、最適化乾燥ガス、霧化ガス、乾燥ガス加熱器、乾燥ガス入口、そして最後に排出を止めることにより、システムシャットダウンを開始する。
【0041】
この工程は、約2.2重量%の水を含有する粉剤を生じる。1%の含水量の低減は、生成物安定性に有意の改善を生じる。
【0042】
試料1:バルク粉剤(予備充填)を基礎にして:
VMGD=10.2μm;および
タップ密度=0.033g/cm

試料2:同一であるが、しかし充填ロット(60031)で測定したVMGD:
VMGD=8.6μm;および
タップ=0.033g/cm

試料1. 0.2の抵抗を有する乾燥粉剤吸入器からの放出粉剤(28.3LPM):
VMGD=9.4μm;および
タップ密度=0.048g/cm

試料2. 0.2の抵抗を有する乾燥粉剤吸入器からの放出粉剤(60LPM):
VMGD=8.8μm;および
タップ密度=0.042g/cm
【0043】
上記粒子は、肺生成物に関して非常に低密度である。これらの極低密度粒子は、カプセル中に詰め込むのに有益である。低密度のために、吸入器からの放出前に、これらの粒子は離解されるかまたは剪断され得る。これらの離解/剪断化粒子は良好な流動特性および肺中への予期された沈着を有する。
【0044】
その好ましい実施形態に言及しながら本発明を特定的に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱しない限り、形態および詳細における種々の変更がなされ得る、と当業者は理解するであろう。さらにまた、本明細書中に記載される実施形態は相互に相容れないものではなく、種々の実施形態からの特徴は本発明に従って全体でまたは部分的に組み合わせられ得る、と理解されるべきである。