特許第6348507号(P6348507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・ヘルスケア・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグの特許一覧

特許6348507充填ベッドクロマトグラフィーカラムの洗浄方法
<>
  • 特許6348507-充填ベッドクロマトグラフィーカラムの洗浄方法 図000004
  • 特許6348507-充填ベッドクロマトグラフィーカラムの洗浄方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348507
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】充填ベッドクロマトグラフィーカラムの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/282 20060101AFI20180618BHJP
   B01D 15/08 20060101ALI20180618BHJP
   G01N 30/50 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B01J20/282
   B01D15/08
   G01N30/50
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-547894(P2015-547894)
(86)(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公表番号】特表2016-507729(P2016-507729A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】SE2013051493
(87)【国際公開番号】WO2014092636
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】1251422-0
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ラッキ,カロル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,ハンス・ジェイ
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−525370(JP,A)
【文献】 特開昭50−038862(JP,A)
【文献】 特開平08−136522(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125674(WO,A1)
【文献】 特開2007−198786(JP,A)
【文献】 特表2002−531848(JP,A)
【文献】 特表2008−533464(JP,A)
【文献】 特表2009−544025(JP,A)
【文献】 特表2011−522247(JP,A)
【文献】 特開2011−053174(JP,A)
【文献】 特開昭63−088035(JP,A)
【文献】 特表2008−542710(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/134413(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01144067(EP,A1)
【文献】 特開2005−321302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/282
B01D 15/08
G01N 30/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の夾雑物質から1種以上の目的生体分子をクロマトグラフィー分離する方法であって、

(a)分離マトリックス粒子の圧密化ベッドを有する軸流クロマトグラフィーカラムを用意するステップであって、圧密化ベッドは下部担体ネットと可動上部アダプターの間に納められている、ステップ、
(b)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ、
(c)アダプターを圧密化ベッドの高さの10%以上持ち上げるステップ、
(d)第1の洗浄液、ベッドを液状化するのに十分な条件下で、ベッドを通って上の方へ流れるようにするステップ、及び
(e)液状化ベッドのマトリックス粒子を再充填して圧密化ベッドを作り、アダプターを下降させて充填ベッドと接触させ、適宜圧縮させるステップ、及び
(f)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
1種以上の夾雑物質から1種以上の目的生体分子をクロマトグラフィー分離する方法であって、
(a)分離マトリックス粒子の圧密化ベッドを有する軸流クロマトグラフィーカラムを用意するステップであって、圧密化ベッドは下部担体ネットと可動上部アダプターの間に納められている、ステップ、
(b)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ、
(c)圧密化ベッドを充填解除し、マトリックス粒子を別の洗浄容器に移送するステップ、
(d)洗浄容器内のマトリックス粒子を第1の洗浄液と接触させるステップ、
(e)洗浄済みのマトリックス粒子をカラムに戻し、圧密化ベッドを再充填するステップ、及び
(f)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ
を含む、方法。
【請求項3】
さらに、ステップ(b)の後、第2の洗浄液を圧密化ベッドに送って通過させることによってカラムを洗浄するステップ(b’)、及び適宜ステップ(b)とステップ(b’)を少なくとも1度繰り返すことを含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、ステップ(d)で液状化ベッドを撹拌することを含んでおり、適宜、撹拌が、(i)液状化ベッド又はマトリックス粒子を震動又は超音波処理すること、(ii)1以上のノズルからのジェット流による撹拌、及び/又は(iii)ステップ(d)での振動流を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
分離マトリックス粒子が、純水と平衡化したときに、1.0g/ml〜1.4g/ml、例えば1.0g/ml〜1.05g/ml、の密度を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
マトリックス粒子が、固定化タンパク質リガンド、例えば固定化されたプロテインA、プロテインG、プロテインL、ラクダ科の動物の一本鎖抗体又はそれらの機能的異種、を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
第1の洗浄液がアルカリ性、例えば10以上、12以上、13以上又は13〜14のpH値を有するもの、である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(i)クロマトグラフィーカラムの内径が2.5cm以上、例えば10cm以上、20cm以上又は10cm〜200cm、であり、(ii)圧密化ベッドの高さが5cm〜50cmであり、及び/又は(iii)クロマトグラフィーカラムの内径と圧密化ベッドの高さの比が0.4以上、例えば0.4〜40、である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
さらに、ステップ(d)とステップ(e)の間に、洗浄済みのマトリックス粒子の試料を回収し、試料を純度に関し分析するステップ、及び/又はステップ(f)の後、第2の目的生体分子を回収し、適宜さらに精製してから薬剤調合に使用するステップを含む、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
充填ベッドクロマトグラフィーカラムを洗浄及び/又は衛生化する方法であって、
(a)分離マトリックス粒子の圧密化ベッドを有する軸流クロマトグラフィーカラムを用意するステップであって、圧密化ベッドは下部担体ネットと可動上部アダプターの間に納められている、ステップ、
(b)アダプターを圧密化ベッドの高さの10%以上持ち上げるステップ、
(c)洗浄液、ベッドを液状化するのに十分な条件下で、ベッドを通って上の方へ流れるようにするステップ、及び
(d)充填流体を下方向にカラムを通過させて液状化ベッドのマトリックス粒子を再充填して圧密化ベッドを作り、アダプターを下降させて充填ベッドと接触させ、適宜圧縮させるステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーの基材を洗浄及び/又は衛生化する方法に関し、より詳細には、洗浄/衛生化ステップを含むクロマトグラフィー分離プロセスに関する。本発明は、クロマトグラフィーカラムを洗浄及び/又は衛生化する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーは今日、生物薬剤産業で使用される定着した精製方法である。典型的には、目的生体分子を含む供給液を、リガンドを化学結合させたマトリックス粒子(樹脂、媒体などとも呼ばれる)の充填ベッドを収容するカラムに通液する。目的生体分子は基材表面のリガンドと結合し、溶出緩衝液による脱着後、精製された状態で回収し得る。或いは、特定の不純物が結合し、精製された未結合の目的分子がフロースルーつまりカラムを通過した除去後の液体中で回収し得る。
【0003】
クロマトグラフィーの基材は高価なので、通常は目的生体分子の後続バッチの精製用に再利用される。再利用を可能にするために、基材はカラム内のその場で、典型的には1M 水酸化ナトリウム(NaOH)などアルカリ性洗浄溶液で洗浄される。アルカリは、強く結合した夾雑物質を脱着させ、タンパク質性夾雑物質を加水分解する。このプロセスは定置洗浄と呼ばれ、CIPと略される。一般にモノクローナル抗体のプロセスに使用されるプロテインA媒体などのタンパク質性リガンドを担持する媒体は、他の媒体よりも高価なので何サイクルも使用することが強く望まれるという点で、洗浄は特別な課題である。他方で、タンパク質性リガンドはある程度アルカリの影響を受けやすいことから、洗浄溶液中のNaOH濃度は限られる。新しいアルカリ安定性プロテインAが各種開発されており(例えば米国特許第8198404号参照)、最高0.5M濃度のNaOH溶液を洗浄に使用することが可能であるが、洗浄効率は、例えばアルカリ安定性イオン交換基材で一般的に使用される1M溶液よりもやはり幾分低い。この目的で異なる洗浄溶液が提案されているが(例えば国際公開第2006/126942号、米国特許第7052609号及び同第6972327号参照)、物質すべてを完全に除去する保証はない。
【0004】
アルカリ性洗浄溶液でのCIPは基材の再利用を概ね可能にするが、CIP後に残存する夾雑物質の問題がある。このことは特に、夾雑物質の強力な吸着及び溶解した物質の局所的な沈殿のせいでファウリング(汚れの付着)がしばしば生じるベッドの入口部に関する。ファウリングのせいでこの領域のマトリックス粒子にCIP洗浄溶液が届きにくくなり、沈殿した物質の溶解が困難になることが多い。
【0005】
したがって、洗浄手順の改善、具体的には異なる細胞培養バッチ間に使用される手順が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0077766号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、分離基材を高基材純度及び低バイオバーデンで複数の細胞培養バッチに再利用できる分離プロセスを提供することである。このことは、請求項1において定義されるプロセスによって実現される。
【0008】
一利点は、洗浄が強化されて高い純度及び衛生度の基材が提供されることである。さらなる利点は、このプロセスは圧密化ベッドのどのように汚れた最上層も含めすべての基材充填物全体の洗浄及び/又は衛生化を保証し、分離効率が改善された層化ベッドが生成できることである。
【0009】
本発明の第2の態様は、高い純度及び衛生度の分離基材が再利用される、代替の分離プロセスを提供することである。このことは、特許請求の範囲において定義されるプロセスによって実現される。
【0010】
本発明の第3の態様は、クロマトグラフィーカラムの高効率な洗浄及び/又は衛生化の方法を提供することである。このことは、特許請求の範囲において定義される方法を用いて実現される。
【0011】
本発明のさらなる好適な実施形態が、従属項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による再充填ベッドの5つのベッド輪切り部(1=沈降後のベッド最上部、5=沈降後のベッド最下部)の粒度分析を含む示差個数(平均)プロットである。A10072609 Start.#avは、カラム実験前のアガロース基材のロットの基準分析である。
図2】本発明による再充填ベッドの5つのベッド輪切り部(1=沈降後のベッド最上部、5=沈降後のベッド最下部)の粒度分析を含む示差体積(平均)プロットである。A10072609 Start.#avは、カラム実験前のアガロース基材のロットの基準分析である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本明細書では「圧密化ベッド」という表現は、ベッドが固体又は可塑性(変形可能な)固体として挙動するのに十分高い粒子体積率を有する粒子のベッドを意味する。このことは、レオロジー用語では、ベッドが約100Paよりも高い降伏応力を有するように、と表現することができる。クロマトグラフィー特性の観点からは、液体がベッドの構造を破壊することなく粒子間の間隙体積を通って送液されることができるほど、ベッドが安定していることを意味する。
【0014】
本明細書では「液状化ベッド」という表現は、粒子体積率が、ベッドが液体又はスラリーとして挙動するのに十分低いことを意味する。このことは、レオロジー用語では、ベッドが約50Paよりも低い降伏応力を有するように、と表現することができる。操作特性の観点からは、ベッドを注いだり汲みあげたり(押し出したり)できることを意味する。同様に、本明細書では「ベッドを液状化する」という表現は、ベッドを液状化ベッドに替える動作を意味する。
【0015】
実施形態の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、1種以上の夾雑物質から1種以上の目的生体分子をクロマトグラフィー分離する方法を開示する。プロセスは、次のステップを含む。
(a)分離マトリックス粒子の圧密化ベッドを有する軸流クロマトグラフィーカラムを用意するステップであって、圧密化ベッドは下部担体ネットと可動上部アダプターの間に納められている、ステップ、
(b)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ、
(c)アダプターを圧密化ベッドの高さの10%以上持ち上げるステップ、
(d)第1の洗浄液を、ベッドを液状化するのに十分な条件下で、ベッドを上方向に通過させるステップ、及び
(e)液状化ベッドのマトリックス粒子を再充填して圧密化ベッドを作り、アダプターを下降させて充填ベッドと接触させ、随意で圧縮させるステップ、及び
(f)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ。
【0016】
カラムは、例えばAxichrom(商標)、Chromaflow(商標)、BPG又はXKカラム(GE Healthcare社)など、可動上部アダプターがついているどのような軸流カラムであってもよいが、プロセスを自動化するためには、アダプターがChromaflowやAxichromのカラムなどのように液圧で動くのが有利である。マトリックス粒子は、親和性リガンド、イオン交換リガンド、マルチモーダルリガンド、キレートリガンド他などのリガンドを含み得る。目的生体分子は、例えばタンパク質、ペプチド、核酸又はウイルス粒子であり得る。それらは例えば抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、ワクチン抗原、インスリン他であり得る。目的生体分子は、未精製供給液として、例えば清澄細胞培養上澄み液又は血漿画分としてカラムに加えることができるし、或いは半精製の状態で、例えば前回のクロマトグラフィーのステップの溶出分として加えられ得る。ステップ(f)の目的生体分子は、ステップ(b)の目的生体分子と同じであってもよいが、異なっていてもよく、したがって第1の目的生体分子種はステップ(b)で分離され、第2の別の目的生体分子種はステップ(f)で分離される。ステップ(b)及びステップ(f)で除去される夾雑物質は、宿主細胞タンパク質、DNA、エンドトキシン、ウイルス、細胞培地成分他など産物に関連しないものか、凝集塊、ミスフォールドもしくはその他の不活性種、断片、アイソフォーム他など産物に関連するものか又は浸出タンパク質リガンド、ウイルス不活化物質、緩衝液成分、修飾試薬他などプロセスに関するものであり得る。ステップ(b)及びステップ(f)の分離は、結合−溶出分離の形態であり得、つまり目的生体分子がマトリックス粒子に吸着し、次いで溶出緩衝液で脱着/溶出される。或いは、分離はフロースルー分離の形態であり得、夾雑物質がマトリックス粒子に吸着し、目的生体分子はフロースルー画分から回収される。分離はさらに、例えば国際公開第2006/99308号(その全容を本明細書中で参照して援用する)に記載されているように、目的生体分子がフロースルー画分と洗浄/溶出溶液の両方から回収される、中間モードで行うことができる。
【0017】
アダプターの持ち上げは、液状化できるようにベッドの粒子体積率を増加させなければならないので、ベッドを液状化するのに十分なスペースを与えるために行われる。アダプターは、例えば、圧密化ベッドの高さの25%以上又は35%以上、10%〜250%、10%〜35%、10%〜25%、15%〜250%、15%〜35%、100%〜250%又は25%〜250%など、10%以上又は15%持ち上げることができる。アダプターを少しだけ持ち上げることは、液状化ベッドの体積が小さいことを意味し、したがって洗浄液の量は少量でよい。他方で、その場合は上方向の流量を注意深く制御して、沈降とアダプターに向けてのマトリックス粒子の集合を相殺しなければならない。より高く持ち上げると、流量の制御は容易になるが、洗浄液の量はより多く必要になる。このことは、できればフィルターを介して洗浄液を循環させることによって、ある程度までは相殺できる。アダプターの持ち上げは、液圧装置などの外力によって行うことができるが、ステップ(d)の洗浄液の流れによって行うこともできる。この場合は、アダプターが垂直方向に自由に動くことができるようにアダプターを解放し、出口をアダプターから閉鎖して、洗浄液を上方向に流してアダプターが所望の高さまで動くようにすることによって、ステップ(c)をステップ(d)の一部として行う。次いでアダプターを所定位置に固定し、出口を開いて、ステップ(d)を続行する。ステップ(d)については、当業者であれば、いくらか実験又は(例えば下で説明するRichardson−Zaki方程式を用いて)シミュレーションを行って、特に流速プロファイルに関してベッドの液状化の最高条件を決定することが必要であり得ることを理解しよう。実験は、カラム側壁が透明であれば、液状化を直接観察できるので、容易になり得る。
【0018】
ベッドの再充填及び圧縮は、例えば特定の使用基材について製造業者の使用説明書に記載されているような、カラム充填の標準的な方法により行うことができる。再充填は、例えば、沈降により、充填流体を下方向にカラムを通過させることにより又はアダプターを押し下げてマトリックス粒子を圧密化ベッドにすることにより行うことができる。充填の結果は、所望であれば、周知のカラム効率(段数)試験により評価することもできる。
【0019】
充填ベッドカラムをバイオプロセスに使用している間、ベッドの最上層はファウリングの影響を受けやすい傾向がある。このことは、供給液成分がビーズに不可逆的に吸着することと、最上層のビーズによって供給液中の不溶性成分が沈殿又は濾過されることの両方のせいである。ファウリングが増大すると、ビーズ間の間隙孔のサイズが縮小し得、濾過効果の増大とファウリングの加速につながる。このファウリングは従来のCIPでは特に除去し難いが、ベッドが液状化手順で崩れると、すべてのビーズ表面がアクセス可能になり、プロセスの力学的作用によってコロイド状物質の解放が促進される。このことは特にビーズ−ビーズ接触域に当てはまり、ここでは汚れのないベッドでもビーズ内及び外への拡散が限られ、夾雑物質はこれらの区域の周りに特に堆積することになるので、汚れた充填ベッドでは物質移送が非常に制限される。ベッドを崩すことによって、もとの接触域は拡散のためにアクセス可能になり、流体力がさらにファウリング層の除去に貢献することになる。加えて、カラム器具表面の洗浄が改善される。再充填中、もとの最上層のビーズもベッド全体に分布することになり、コロイド状物質が残存していてもファウリング加速効果が防止される。
【0020】
さらに、ベッドの再充填は、より大きいビーズが底部に集まり、より小さいビーズが上部に集まって、ある程度のベッド層化につながる。このことは、ステップ(f)の分離中、流れが上方向であれば、有利に利用できる。したがって目的生体分子はまず大きいビーズに接触し、だんだん小さくなっていくビーズと接触することになるが、このことは、M Li,A Liapis:J.Sep.Sci.35,947−956,2012に記載されているように、より効率のよい物質移送をもたらす。アダプターが高い位置にまで、例えば圧密化ベッドの高さの100〜250%持ち上げられると層化が促進されることになり、このことは再充填が、低いマトリックス粒子濃度で行われることを意味する。
【0021】
第2の態様では、本発明は、1種以上の夾雑物質から1種以上の目的生体分子をクロマトグラフィー分離する方法を開示する。このプロセスは、次のステップを含む。
(a)分離マトリックス粒子の圧密化ベッドを有する軸流クロマトグラフィーカラムを用意するステップであって、圧密化ベッドは下部担体ネットと可動上部アダプターの間に納められている、ステップ、
(b)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ、
(c)圧密化ベッドを充填解除し、マトリックス粒子を別の洗浄容器に移送するステップ、
(d)洗浄容器内のマトリックス粒子を第1の洗浄液と接触させるステップ、
(e)洗浄済みのマトリックス粒子をカラムに戻し、圧密化ベッドを再充填するステップ、及び
(f)カラムで目的生体分子を1種以上の夾雑物質から分離するステップ。
【0022】
マトリックス粒子を別の洗浄容器に移送する利点は、この容器内の方が撹拌しやすいことである。また、カラムと適合しない洗浄液、例えばガスケット他と適合しない腐食性液体又は溶媒を用いることも可能になる。
【0023】
目的生体分子は、例えばタンパク質、ペプチド、核酸又はウイルス粒子であり得る。それらは例えば抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、ワクチン抗原、インスリン他であり得る。目的生体分子は、未精製供給液として、例えば清澄細胞培養上澄み液又は血漿画分としてカラムに加えられ得又は半精製の状態で、例えば前回のクロマトグラフィーのステップの溶出分として加えられ得る。ステップ(f)の目的生体分子は、ステップ(b)の目的生体分子と同じであってもよいが、異なっていてもよく、したがって第1の目的生体分子種はステップ(b)で分離され、第2の別の目的生体分子種はステップ(f)で分離される。ステップ(b)及びステップ(f)の分離は、結合−溶出分離の形態であり得、つまり目的生体分子がマトリックス粒子に吸着し、次いで溶出緩衝液で脱着/溶出される。或いは、分離はフロースルー分離の形態であり得、夾雑物質がマトリックス粒子に吸着し、目的生体分子はフロースルー画分から回収される。分離はさらに、例えば国際公開第2006/99308号に記載されているように、目的生体分子がフロースルー画分と洗浄/溶出溶液の両方から回収される、中間モードで行うことができる。
【0024】
第1の態様及び第2の態様の両方に適用される一部の実施形態では、プロセスは、さらに、ステップ(b)の後、第2の洗浄液を圧密化ベッドに送って通過させることによってカラムを洗浄するステップ(b’)を含む。これは、例えば、pHが12以上、13以上又は13〜14など、pH10以上のアルカリ性洗浄溶液を用いる定置洗浄(CIP)ステップであり得る。ステップは典型的には0.1〜1M NaOH溶液を用いることができる。第2の洗浄液は、第1の洗浄液とほぼ同じ成分を有するか又は異なる成分を有することができる。
【0025】
第1の態様及び第2の態様の両方に適用される特定の実施形態では、プロセスは、さらに、ステップ(f)の後、第3の洗浄液を圧密化ベッドに送って通過させることによってカラムを洗浄するステップ(f’)を含む。これは、例えば、pHが12以上、13以上又は13〜14など、pH10以上のアルカリ性洗浄溶液を用いるCIPステップであり得る。ステップは典型的には0.1〜1M NaOH溶液を用いることができる。第3の洗浄液は、第1及び/又は第2の洗浄液とほぼ同じ成分を有するか又は異なる成分を有することができる。
【0026】
第1の態様及び第2の態様の両方に適用される一部の実施形態では、プロセスは、ステップ(b)とステップ(b’)及び/又はステップ(f)とステップ(f’)を1回以上繰り返すことを含む。プロセスは、例えば、キャンペーンの形態で利用することができ、第1のキャンペーンは1つの細胞培養バッチのいくつかのクロマトグラフィープロセスサイクルを含み、サイクルの合間にCIPを行う。次いでステップ(c)及びステップ(d)に記載のようにカラムを洗浄し、再充填する。カラムは次に、第2のキャンペーンで第2の培養バッチの複数のプロセスサイクルに使用され、サイクルの合間にCIPが含まれる。第1及び第2のキャンペーンは、2種類の異なる目的生体分子のプロセスを随意で含むことができる。
【0027】
第1の態様及び第2の態様の両方に適用される一部の実施形態では、プロセスは、さらに、ステップ(e)とステップ(f)の間にカラムを保存するステップを含む。カラムは、1週間以上(例えば1か月以上、3か月以上)又は1週間乃至2年間(例えば1週間乃至1年間)保存し得る。保存温度は、例えば、室温又は15℃〜30℃であり得る。保存する前に、夾雑物質、汚れ、及びあらゆる胞子もしくは微生物を除去して、カラム内での生物増殖のあらゆるリスクを予防し、また、保存中に夾雑物質/汚れがさらに不溶化することを予防することが非常に大切である。
【0028】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、プロセス又は方法は、さらに、ステップ(c)で液状化ベッドを撹拌することを含む。撹拌は、第1の態様のステップ(c)で振動流を加えることを含み得る。撹拌は、例えば液状化ベッドの震動又は超音波処理も含み得る。撹拌は、アダプターの上下の振動運動を含み得又は例えば米国特許第5902485号(その全容を本明細書中で参照して援用する)に記載のノズルなどのノズルからのジェット流(例えば液体ジェット流)による撹拌も含み得る。撹拌は、特に小径のカラムではベッドの液状化を促進し、さらにマトリックス粒子から不溶性夾雑物質を解放しやすくし得る。汚れがひどいベッドでは、夾雑物質はマトリックス粒子をまとめる糊として働くことがあり、その場合は1回目のベッドの崩壊の結果、凝集した粒子の塊ができることがある。そのような塊をすべて撹拌によって分散させて、すべての粒子と洗浄液が良好に接触できるようにすることが非常に望ましい。振動流は、例えば、上昇流の速度における周期的変動として、流れを加えない周期と交互に上昇流の脈動として又は上昇流と下降流の交互の脈動として、実施することができる。ベッドを液状化するための交互の脈動列に続いて一定の上昇流を与えて、残りの洗浄サイクルの間マトリックス粒子を浮遊させておいてもよい。ノズルからのジェット流による撹拌は、ベッドの充填及び充填解除用に1以上のノズルを有するカラム内で便利に行うことができる。そのようなカラムの例は、Chromaflow(商標)及びAxichrom(商標)であり、どちらもGE Healthcare Bio−Sciences社(スウェーデン)から入手可能である。
【0029】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、分離マトリックス粒子は純水と平衡化されると、1.0g/ml〜1.1g/ml又は1.00g/ml〜1.05g/mlなど、1.0g/ml〜1.4g/mlの密度を有する。周囲の液体よりも粒子の方が密度が高いことが有利であるが、液状化と再充填を容易にするためには密度は高すぎてはいけない。
【0030】
すべての態様に適用される一部の実施形態では、マトリックス粒子は固定化されたプロテインA、プロテインG、プロテインL、ラクダ科の動物の一本鎖抗体又はそれらの機能的異種などのタンパク質性リガンドを含む。タンパク質性リガンドは、抗体や抗体断片などの商業上関心の高いタンパク質を高選択的に捕捉するが、高アルカリ性洗浄液に対する安定性は限られる。タンパク質性リガンドを担持する基材は高価でもあり、尚更別のプロセスにも再利用したい。このように、これら基材のプロセス間洗浄の改善には大きな関心が寄せられている。
【0031】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、第1の洗浄液は、及び随意だが第2及び/又は第3の洗浄液も、pH値が10以上、12以上、13以上又は13〜14などのアルカリ性である。アルカリ性洗浄液は、ふつうは最も効果的であり、洗浄効率は一般にはpHとともに増大するが、多くの場合は基材の安定性のせいで有用なpH範囲に上限が設けられる。アルカリ性洗浄溶液は、NaOH、水酸化カリウム(KOH)他の水溶液であり得、例えばNaOH又はKOHの濃度は10mM〜1M又は10mM〜0.1Mなど10mM〜5Mであるが、水と混和する溶媒、界面活性剤、カオトロープ、還元剤、塩、殺菌剤他などの他の成分も含んでよい。洗浄液は、カラムの衛生化、つまりベッド又はカラム内の他の場所に存在する微生物又は胞子の殺菌も提供し得る。このことはアルカリによって実現し得るが、例えば次亜塩素酸塩、二酸化塩素、過酸化水素又は過酢酸のような他の殺菌剤を用いることも、これらの剤と基材及びカラムが適合する場合は可能である。やはりすべての態様に適用される一部の実施形態では、洗浄液のうちの1種類又は複数が酸性であり、例えばリン酸、酢酸、ベンジルアルコール及び/又は過酢酸のうちの1種類又は複数である。
【0032】
すべての態様に適用される一部の実施形態では、クロマトグラフィーカラムの内径は、10cm以上、20cm以上、2.5cm〜200cm、10cm〜200cm又は20cm〜200cmなど、2.5cm以上である。圧密化ベッドの直径が大きいほど液状化が容易になる。さらに、プロセスは、ふつうは大径のカラムが使用される、生物薬剤のパイロット製造及びフルスケール製造にとって特に有利である。
【0033】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、圧密化ベッドの高さは、5cm〜40cm又は5cm〜30cmなど、5cm〜50cmである。前述したが、ベッドの高さが30cm〜50cmを超えなければ液状化はより容易になる。他方で、ベッドの高さが少なくとも5cmであれば、特に大径のカラムでは再充填がより容易になる。再充填ベッドの層化は、ベッドの高さが10cm〜40cmなど、10cm〜50cmのものを用いれば容易になる。
【0034】
すべての態様に適用される一部の実施形態では、クロマトグラフィーカラムの内径と圧密化ベッドの高さの比は、0.4〜40、1〜40、1〜20、5〜40、5〜20、少なくとも0.4、少なくとも1又は少なくとも5など、少なくとも0.4である。直径/高さの比が高いとベッドの液状化はより容易になるが、再充填は比が高すぎない方が容易になる。
【0035】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、マトリックス粒子は基本的には球状であり、(体積加重)平均径は、30μm〜300μm、30μm〜150μm又は50μm〜100μmなど、少なくとも20μmである。平均ビーズ径が20μm以上であれば液状化と再充填の両方が容易になるが、過度に高い沈降速度を防止するには300μmを超えないことが有利である。また、球形状は液状化と再充填を容易にする。
【0036】
すべての態様に適用される一部の実施形態では、マトリックス粒度分布の(体積加重)変動係数は、10%〜40%又は15%〜35%など、10%〜50%である。マトリックス粒子の適当な多分散性は、再充填中、ベッドの所望の層化を可能にする。他方で、多分散性が高すぎると、カラムの操作中に過剰な背圧を誘発することになる。
【0037】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、マトリックス粒子は架橋アガロースなどの多糖類担体を含む。多糖類基材は、親水性及び弾性なので、液状化及び再充填が容易である。非脆性でもあるので、洗浄及び再充填の操作中に摩損する恐れが減少する。さらに、このような操作に適した密度を有している。一部の実施形態では、高密度フィラーなしの多糖類担体が用いられる。そのような担体の密度は、1.0mg/ml〜1.05mg/mlの範囲となる。
【0038】
主として第1の態様及び第3の態様に適用される一部の実施形態では、ステップ(d)の上昇流の速度は、200cm/時〜400cm/時など100cm/時〜500cm/時であり、第1の洗浄液の粘度は1.0mPas〜1.3mPasなど1.0mPas〜1.5mPasである。速度と粘度は洗浄中のマトリックス粒子の液状化及び懸濁に影響するので、当業者であれば、所与の液体粘度に対する最適な速度を見出すために何らかの実験作業が必要であり得ることを理解しよう。或いは、適切な流速は、例えばRichardson−Zaki方程式u=uiεnを用いて計算することができ、式中、uは、排除体積(液体体積率)εの懸濁液中の粒子沈降速度である。uiは、無限希釈状態で妨害されない粒子沈降速度であり、nはRe<0.2:n=4.65+19.5d/D;0.2<Re<1:n=(4.35+17.5d/D)Re-0.03;1<Re<200;n=(4.45+18d/D)Re-0.1;200<Re<500:n=4.45Re-0.1;Re>500:N=2.39(式中、dは平均粒径であり、Dはカラムの内径である)による系のレイノルズ数Reに応じて選択された係数である。uiは、ストークスの法則ui=gd2(ρp−ρl)/18η(式中、gは重力加速度であり、ρpは粒子密度であり、ρlは液体密度であり、ηは液体粘度である)で計算することができる。上昇流の速度は、uと同じ範囲になるように適切に選択し得る。
【0039】
すべての態様に適用される特定の実施形態では、プロセス又は方法はさらに、ステップ(d)とステップ(e)の間に、洗浄済みのマトリックス粒子の試料を回収し、この試料を純度に関し分析するステップを含む。このステップは、洗浄ステップで十分な基材純度が得られていることを確認する。カラム容量が例えば少なくとも1L又は少なくとも10Lと大きい場合、少量の試料(例えば1mL未満又は10mL未満)を回収しても次のプロセスのステップに悪影響はない。基材の種類と夾雑物質のプロファイルにより、アミノ酸分析、窒素分析、ラマン又はIR分光法他など、いくつかの異なる分析方法を適用できる。
【0040】
第1の態様及び第2の態様の両方に適用される一部の実施形態では、プロセスはさらに、ステップ(f)の後、目的生体分子を回収し、随意でさらに精製してから薬剤調合に使用するステップを含む。ステップ(f)の目的生体分子がステップ(b)の第1の目的生体分子とは別の第2の目的生体分子である場合、例えば第1の目的生体分子の残渣の最大キャリーオーバーは0.8mg/Lの充填ベッドになることを意味し得る。全体として、製薬に使用するための純度要件は非常に高く、基材中のいっさいの夾雑物質を徹底的に排除することが不可欠である。
【0041】
第3の態様では、本発明は、充填ベッドクロマトグラフィーカラムを洗浄及び/又は衛生化する方法を開示し、方法は以下のステップを含む。
(a)分離マトリックス粒子の圧密化ベッドを有する軸流クロマトグラフィーカラムを用意するステップであって、圧密化ベッドは下部担体ネットと可動上部アダプターの間に納められている、ステップ、
(b)アダプターを圧密化ベッドの高さの10%以上持ち上げるステップ、
(c)洗浄液を、ベッドを液状化するのに十分な条件下で、ベッドを上方向に通過させるステップ、及び
(d)充填流体を下方向にカラムを通過させて液状化ベッドのマトリックス粒子を再充填して圧密化ベッドを作り、アダプターを下降させて充填ベッドと接触させ、随意で圧縮させるステップ。
【0042】
この方法は、マトリックス粒子とカラム器具の両方の洗浄を実現することになる。
【0043】
上記の実施形態はこの態様にも適用される。なお、第3の態様のステップ(b)、ステップ(c)、及びステップ(d)は、それぞれ第1の態様のステップ(c)、ステップ(d)、及びステップ(e)に対応する。
【実施例】
【0044】
材料/調査したユニット
カラム:GE Healthcare社のXK−26/20(内径26mm)、商品番号28−9889−48。
【0045】
クロマトグラフィー系:Akta Avant A25−32105 GE Healthcare社 Unicorn 6.1ソフトウェア内蔵。
【0046】
マルチサイザー3、AD48164、ベックマン・コールター社(Beckman Coulter AB)(粒度分布分析)
タンパク質分離媒体/化学物質
アガロース基材:高剛性の架橋アガロースビーズを米国特許第6602990号に記載の方法によって調製した。平均ビーズ径は80μmであり、逆サイズ排除クロマトグラフィーでデキストランをプローブ分子として決定した空隙率は、分子量110kDaのデキストランでKD値が0.54に相当し、このことはビーズ体積の54%をデキストラン分子が利用できたことを意味している。空隙率を決定する方法は、L Hagel et al:J Chromatogr A 743,33−42(1996)に記載されている。
【0047】
0.1M NaOH、ドイツ国メルク社(Merck)のTitrisol(登録商標)。
【0048】
赤色色素:ドイツ国Drystar Textilfarben社のProcion Red、H−E7B。
【0049】
青色色素:ドイツ国Drystar Textilfarben社のProcion Blue、H−EGN 125。
【0050】
方法
一般的なゲル洗浄手順及びスラリー中ゲル含有量の決定
20%エタノールを含むゲルスラリーのアガロース基材をガラスフィルター(Schott Duran 4)上で減圧(under pressure)を用いてMilli−Q水で繰り返し洗った。次いで半乾きの基材をメスシリンダーに移し、およそ50/50(v/v)のゲル/水比になるまでMilli−Q水を加えた。充填の調査のために、Milli−Q水を沈降した基材スラリーに加えるか又はそれから吸引して、ちょうど50%(v/v)の沈降基材濃度が得られるようにした。
【0051】
充填前に50%基材スラリーをXK−26/20カラムに満たす
メスシリンダー内で沈降したスラリーを振盪して均質な懸濁液にした。この手順の間、シリンダーの開放端をパラフィルムで覆った。次いでちょうど必要なだけの量をカラムに加えた。
【0052】
粒度分析
粒度分布は、マルバーン社(Malvern)のマスターサイザーレーザー回折器で測定した。データは個数と体積両方の分布としてプロットした。
【0053】
試料調製の概要
試料は室温でおよそ3日間0.9% 塩化ナトリウム(NaCl)に懸濁させて、ビーズが安定した粒度を得ていることを確認した。試料(g)/NaCl体積の比は次のとおりであった。
【0054】
【表1】
結果と考察
無着色基材
充填
目的は、高さ60mmの圧縮された沈降ベッド(高さ60mmは32mLに等しい)を得ることであった。このために、70mLの50%基材スラリーをカラムに注入した(上端要素は取り外した)。カラムを満たしてから上端要素を取り付け、Milli−Q水を下方向に25mL/分(283cm/時)で押し出した。充填作業は10分続いた。カラムの背圧は3.5バール(XK26/20での上限は5バール)になるように監視した。充填が終了すると、上端要素をベッド表面に達するまで下降させた。その後充填ベッドを上部アダプターでさらに5mm押して、ベッドをさらに圧縮した。圧縮ベッドの最終高さは57mm(基材は30mL)であった。
【0055】
充填解除
充填解除の手順では、Unicornソフトウェアで流れの方向を上方向に変更した。理想的には、充填解除の流量は、0.1M NaOHを溶媒として(CIP溶液)、1カラム体積(CV)/分とすべきである。(充填した基材に対する)1カラム体積は、30mL/分(339cm/時)に等しい。しかし、Akta Avantの最高流量は25mL/分(283cm/時)である。したがって、これは選択した流量であった。充填解除プロトコルでは手順は次のとおりであった。
【0056】
上端要素のナットを緩める
上端要素のスプリングをペーパークリップで妨害して上端要素が自由に動けるようにする
ポンプを始動する
上端要素が所望の位置に達したらポンプを停止する
上端要素のナットを締める
ペーパークリップを取り外す(上端要素は完全に固定される)
上方向に流れを加えると、上端要素は所望の位置まで徐々に持ち上がって、全部で67mLを包囲する。充填ベッド全体が充填解除中持ち上がる。この手順が終わってから2分後に充填基材ベッドが崩れ始めたことが通知された。およそ40分後、基材はカラム底部に沈降していた。
【0057】
5.1.3流れの振動
ベッドが崩れる速度を上げるために、流れの方向は振動する態様に変更することができる。理想的には、振動は、0.1M NaOHを25mL/分(283cm/時)の流量で用いて交互の上昇流と下降流によって実施すべきである。使用したポンプ装置は、流れの方向を変えるのに一定の反応時間を有した。すなわち、選択した流量に達するのにおよそ15秒を要した。なお、展開相においては、下方向の時間と比べて上方向の時間が長い方が有利であった。この理由は、基材がカラムの底部(下向きの流れの方向)に充填されている場合、基材の「栓」は反対方向のように容易に崩されないからである。最終の振動プロトコルは、組合せた6つの上昇流と下降流のサイクルを含んでいた。各サイクルは、2.5分の上昇流期間、続いて1分の下降流期間を含んだ。振動プロトコルの全体時間は23.5分であった。
【0058】
着色樹脂での試験
開発した混合プロトコルの効率を証明するために、染色した基材を用いて調査を行った。
【0059】
染色及びゲルスラリーの調製
20%エタノールを含むおよそ500mLのアガロース基材を赤色又は青色の色素で染色した。2種類の調製済み基材(赤色色素と青色色素)を2つのガラスフィルター(Schott Duran 4)上で減圧を用いてMilli−Q水で繰り返し洗った。
【0060】
半乾きの着色基材を2本のメスシリンダー(各100mL)に入れた。Milli−Q水をおよそ50/50の基材/水比となるまで各シリンダーに加えた。充填する前に、沈降した基材にMilli−Q水を加えて、1種類の青色に着色された50%(v/v)基材スラリーと、1種類の赤色に着色された50%(v/v)基材スラリーを得た。
【0061】
5.2.2充填(3層)
前述の充填無着色基材ベッドの高さは57mmであった。このベッド高さを得るために、70mLの50%基材スラリーが必要であった。好ましくは、3色のベッドは、最下部の青色1層、真ん中の無着色1層、そして最上部の赤色1層を含む3層を含むべきである。各層に23mLのスラリーを用い、上述の充填プロトコルを行った。選択した充填液はMilli−Q水であった。充填手順後、ゲル表面と接触するまで上端要素を下降させた。最後にアダプターをカラム内にさらに5mm深く、機械的に押し込んだ。
【0062】
5.2.3充填解除
充填解除は、0.1M NaOHを25mL/分(283cm/時)の流量で用いて実施した。この手順は無着色ベッドの手順と同じであり、上端要素を好ましい上端位置に達するまで流れ方向に自由に上方向に移動させた。達した時点でポンプを停止して端部要素を固定した。
【0063】
5.2.4振動
振動プロトコルを用いて着色ベッドを崩した。無着色ベッドについては、振動は25mL/分の流量で上方向と下方向のポンプ作用を用いて実施した。選択した振動液は0.1M NaOHであった。
【0064】
5.2.5沈降ベッドの回収と分析
振動手順後、カラム内の紫色のスラリーを1時間かけて沈殿させた。次いで(カラムをAkta Avantに接続していた毛管ナットを外してから)上端要素を下降させてベッドと接触させた。最後に、下端要素を取り外し、上端要素を押下することによって紫色のベッドをプラスチックトレイ上に押し出すことができた。回収したベッドを5つに輪切りし、視認の結果紫色については均質であることが見出され、洗浄手順の間に粒子が完全に混合されたことが示された。
【0065】
5つの輪切り部の粒度分析
5つの輪切り部を0.9% NaClに懸濁させた。図1図2では、それぞれ示差個数(平均)プロットと示差体積(平均)プロットを示す。表1に結果を示す。
【0066】
【表2】
本明細書では、最良の形態も含め本発明を開示するために、また、あらゆる当業者が、あらゆるデバイスやシステムを作製し利用し、あらゆる組み入れた方法を実施することを含め本発明を実施することを可能にするために、諸例を用いている。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲により定められ、当業者が想到する他の例も含み得る。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を備える場合又は特許請求の範囲の文言と実質的に差異のない均等な構造的要素を含む場合は、特許請求の範囲内とする。なお、1つの実施形態に関して記載したどの特徴も、ここに記載した他のどの態様及び実施形態の1以上の特徴と組合せて使用してもよい。
図1
図2