(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348511
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】発泡助剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01F 17/52 20060101AFI20180618BHJP
A23F 5/40 20060101ALI20180618BHJP
A23F 5/36 20060101ALI20180618BHJP
A23F 5/02 20060101ALI20180618BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20180618BHJP
A23L 2/40 20060101ALI20180618BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
B01F17/52
A23F5/40
A23F5/36
A23F5/02
A23L2/40
B65D81/24 Z
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-550060(P2015-550060)
(86)(22)【出願日】2013年12月23日
(65)【公表番号】特表2016-508867(P2016-508867A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2013077881
(87)【国際公開番号】WO2014102229
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月21日
(31)【優先権主張番号】12199583.1
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】モーラ, フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ドーシン, エリック
(72)【発明者】
【氏名】モンタヴォン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルルー, ヴァレリー マルティーヌ, ジニーン
(72)【発明者】
【氏名】ブランク, イムレ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コルナス, ピーター
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−543336(JP,A)
【文献】
特開2000−210022(JP,A)
【文献】
特開2012−062292(JP,A)
【文献】
FRANK, O. et al.,J. Agric. food Chem.,2007, 55,1945-1954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/00−17/56
A23F 3/00− 5/50
A23L 2/00− 2/40
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも2つの4−ビニルカテコールモノマーを含む組成物を用意するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記4−ビニルカテコールモノマーの重合を熱処理により誘発させて、多官能フェノールを含む組成物を得るステップと
を含み、
前記4−ビニルカテコールモノマーがコーヒー酸から誘導され、
前記多官能フェノールがtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、及び/又はtrans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブタンを含む、発泡助剤を製造する方法。
【請求項2】
ステップ(ii)の多官能フェノールを含む前記組成物をアルカリで処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法によって得ることができる発泡助剤。
【請求項4】
請求項3に記載の発泡助剤の、コーヒー発泡助剤としての使用。
【請求項5】
(a)コーヒー抽出物を用意するステップと、
(b)請求項3に記載の発泡助剤を前記抽出物に添加するステップと
を含む、コーヒー製品を製造する方法。
【請求項6】
前記コーヒー抽出物を乾燥する前に前記発泡助剤を添加する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コーヒー抽出物を乾燥した後に前記発泡助剤を添加する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーヒー抽出物がグリーンコーヒー豆、焙煎コーヒー豆又はこれらの混合物の抽出物である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーヒー製品が、インスタントコーヒー、インスタントエスプレッソコーヒー、液体コーヒー濃縮物及びコーヒーミックス、コーヒー混合物、カプセル入り又はなしのR&Gコーヒー、R&G及びインスタントコーヒーのミックス、レディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料からなるリストから選択されるコーヒー製品である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の方法により得ることができる発泡剤を含むコーヒー製品。
【請求項11】
前記製品中のtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、及び/又はtrans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブタンの総濃度が2.3mg/Lを超える、請求項1
0に記載のコーヒー製品。
【請求項12】
前記製品中のtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダンの総濃度が2.3mg/Lを超える、請求項11に記載のコーヒー製品。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のコーヒー製品を含む容器。
【請求項14】
カプセルである、請求項13に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、発泡助剤を製造する方法に関する。特に、本発明は、例えば再溶解の際に安定なエスプレッソ型の泡沫すなわちクレマを生成するためにコーヒー製品などの飲料で使用される発泡助剤を製造する方法に関する。本発明はさらに、発泡助剤自体、前記発泡助剤を含む得られたコーヒー製品、及び前記コーヒー製品を含む容器に関する。
【0002】
コーヒー、特にエスプレッソコーヒーでは、「クレマ」ともいわれる持続性の泡沫が視覚的な品質判定基準となる。クレマの体積、テクスチャ、繊細さ、色及び安定性は消費者にとって魅力のある特徴である。クレマは表面活性コーヒー成分の抽出によって生じ、前記表面活性コーヒー成分は詰めたエスプレッソコーヒー素地に加圧された熱水を送り込むことによって創出された気泡を被覆し安定化するものである。
【0003】
再溶解の際にエスプレッソ型のクレマを生ずる可溶性コーヒーの開発はコーヒー飲料製品の分野で決定的に競合上の優位性となるであろう。そのような可溶性コーヒー組成物及びその製造は例えばエスプレッソ抽出とは全く異なるので、科学的及び技術的取り組みは相当なものである。
【0004】
欧州特許第0839457号には、インスタントコーヒー、特に熱水と接触した際にエスプレッソクレマと似た泡沫を生じる噴霧乾燥したインスタントコーヒーの製造方法が開示されている。可溶性「エスプレッソ」コーヒーの生成方法の一環として、泡沫形成方法において、抽出液を加圧ガス注入により発泡させ、発泡した抽出液を均質化して気泡の大きさを低減させ、気泡が混入された多孔性粒子を得るのに充分な乾燥機出口温度及び噴霧圧条件下で噴霧乾燥する。微細な大きさの気泡の混入は、欧州特許第0839457号に従って改善されたカップ内泡沫を得るのに不可欠である。
【0005】
したがって、産業界では、コーヒー飲料などの飲料の泡沫体積及び泡沫外観を改善することができる化合物であって、それによりそのような飲料は消費中の品質及び満足感に関する消費者の増大する需要を満たすことになる、化合物を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、発泡特性を有する液体又は粉末化製品のための増大した泡沫体積を伴う、非焙煎コーヒーフェノール酸及びプロセスで変性されたコーヒーフェノール酸から誘導された一群の化合物に関する。
【0007】
したがって、
(i)少なくとも2つの4−ビニルカテコールモノマーを含む組成物を用意するステップと、
(ii)ステップ(i)の4−ビニルカテコールモノマーの重合を誘発させて多官能フェノールを含む組成物を得るステップと
を含む、発泡助剤を製造する方法を提供することが本発明の1つの目的である。
【0008】
別の目的において、本発明は、本発明の方法によって得ることができる発泡助剤に関する。
【0009】
さらなる目的において、本発明は、本発明の発泡助剤の、コーヒー発泡助剤としての使用に関する。
【0010】
さらにもう1つ別の目的において、本発明は、
(a)コーヒー抽出物を用意するステップと、
(b)前記請求項のいずれか一項に記載の発泡助剤を前記抽出物に添加するステップと
を含む、コーヒー製品を製造する方法に関する。
【0011】
さらに、本発明の1つの目的は、前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる発泡剤を含むコーヒー製品に関する。
【0012】
さらに別の目的において、本発明は、本発明のコーヒー製品を含む容器に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】4−ビニルカテコールモノマー(15)の縮合から誘導される、プロセスで誘発された幾つかの多官能フェノール16〜25を示す。
【0014】
【
図2】基準コーヒー(灰色四角)、及び0.065%のrCA、すなわち焙煎コーヒー酸を添加した基準コーヒー(暗色丸)に対して、時間の関数としてFMD(泡測定器、Foam Measuring Device)により測定された泡沫体積を示す。
【0015】
【
図3】a)0%コーヒー酸(黒丸)、b)0.25%コーヒー酸(暗色のばつ印)、c)0.5%コーヒー酸(灰色三角)、d)1%コーヒー酸(灰色四角)及びe)2%コーヒー酸(灰色丸)を添加し、236℃で720秒焙煎したアラビカ(Arabica)1.1コーヒーグリーンコーヒー豆に対して、時間の関数としてウルトラトラックス(Ultratrax)により測定された泡沫体積を示す。
【0016】
【
図4】未処理のコーヒー豆、水に浸したコーヒー豆、コーヒー酸溶液に浸したコーヒー豆、及びコーヒー酸が富化されたグリーンコーヒー抽出物に浸したコーヒー豆に対してKOMOにより測定された泡沫体積を示す。
【0017】
既に述べたように、コーヒーの泡沫(すなわちクレマ)は品質判定基準となる。クレマの1つ又は複数の特徴としていろいろなパラメーターを使用することができる。かかる特徴は体積、テクスチャの細かさ、色及び安定性であってもよい。もちろん、これらの特徴は多かれ少なかれ相互に関連している可能性がある。
【0018】
加えて、コーヒー泡沫は非常に強力な酸化防止活性を有することが示されている。この活性は、泡沫構造にも寄与するコーヒーフェノール酸と直接関連すると考えられる。
【0019】
したがって、これらのフェノール化合物はその二重の活性(発泡助剤及び酸化防止活性)のために多機能(多官能)フェノールと呼ぶことができ、次の2つの主要なファミリーに分類することができる。
クロロゲン酸類としても知られる天然由来のグリーンコーヒーフェノール酸、及び
多官能フェノールのプロセスで誘発された重合産物。ここでプロセスは熱、化学、酸化又は酵素処理でもよい。
【0020】
本発明の発明者らは、少なくとも2つの4−ビニルカテコールモノマーを含む化合物(重合した化合物)が発泡助剤として作用し得ることを見出した。
【0021】
本明細書において、用語「発泡助剤」は、発泡性物質に加えてその発泡特性を改善することができる作用物質に関する。本発明においてこの発泡性物質は、好ましくはコーヒー飲料、例えばインスタントコーヒー飲料を指し得る。「改善された発泡特性」の決定は増大する泡沫体積から見ることができ、これはまた泡のテクスチャ、泡の色及び泡の安定性に対して間接的な影響も有する。
【0022】
用語「4−ビニルカテコールモノマー」は、特に発泡剤として作用する点に関して特別な機能性を有するポリフェノール化合物に関する。ポリフェノール化合物は、他のコーヒー化合物などの他の化合物との多様な範囲の相互作用(すなわち共有結合性相互作用、イオン性相互作用、水素結合、双極子−双極子相互作用)を介して架橋剤として作用し、その結果泡沫体積を高めることができると考えられる。
【0023】
本発明において、「ポリフェノール」とは、複数のフェノール単位(2又はそれより多いのフェノール単位)の存在を特徴とする構造上の1つのクラスの天然、合成、及び半合成の有機化学物質を指す。これらのフェノール下部構造の数及び特徴はこのクラスの個々のメンバーの独特な物理的、化学的、及び生物学的特性の基礎となる。
【0024】
したがって、本発明の1つの実施形態は、
(i)少なくとも2つの4−ビニルカテコールモノマーを含む組成物を用意するステップと、
(ii)ステップ(i)の4−ビニルカテコールモノマーの重合を誘発させて多官能フェノールを含む組成物を得るステップと
を含む、発泡助剤を製造する方法を提供することである。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、ステップ(i)の組成物は少なくとも3つの4−ビニルカテコールモノマー、例えば少なくとも5つの4−ビニルカテコールモノマーなどの少なくとも4つの4−ビニルカテコールモノマー、例えば少なくとも7つの4−ビニルカテコールモノマーなどの少なくとも6つの4−ビニルカテコールモノマーを含む。
【0026】
ステップ(ii)で誘発される重合は、モノマー分子が互いに単に付加される付加重合でもよいし、又はモノマー分子が化合しつつ例えば水のような簡単な分子を失う縮合重合でもよい。ステップ(ii)で誘発される重合は縮合重合であるのが好ましいであろう。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、4−ビニルカテコールモノマーはコーヒー酸から誘導され得る。より具体的にいうと、4−ビニルカテコールモノマーは少なくとも1種のクロロゲン酸から誘導され得るのが好ましい。
【0028】
少なくとも1種のクロロゲン酸は、3−カフェオイルキナ酸(1)、4−カフェオイルキナ酸(2)、5−カフェオイルキナ酸(3)、3,4−ジカフェオイルキナ酸(7)、3,5−ジカフェオイルキナ酸(8)、4,5−ジカフェオイルキナ酸(9)からなるリストから選択することができる。
【0029】
少なくとも2つの4−ビニルカテコールモノマーはコーヒー酸又はクロロゲン酸類のコーヒー酸部分の脱炭酸によって得られるのが好ましい。
【0030】
なお、コーヒー酸は前記クロロゲン酸の加水分解によって得ることができる。前記クロロゲン酸の前記加水分解は加熱処理によって達成することができる。
【0031】
4−ビニルカテコールモノマーは合成的に生成されるか、発酵により生成されるか、又はコーヒーなどの植物材料から誘導され得る。4−ビニルカテコールモノマーはコーヒーから得ることができることが好ましい。
【0032】
本発明に従って使用される4−ビニルカテコールモノマーは
図1の(15)に示されている構造式を有する。幾つかの多官能フェノール(16)〜(25)、及びキノン(26)は、4−ビニルカテコールモノマーの重合で誘導することができる。
図1に示した化合物は網羅したものではなく、本発明の範囲を限定するものでもない。
【0033】
これらの多官能フェノールは、少なくとも2つの4−ビニルカテコール(15)モノマーの縮合に由来する少なくとも2つのフェノール部分の存在によって特徴付けられる。天然由来のグリーンコーヒーフェノール酸の場合と同様に、これらの多官能フェノールは酸化防止活性を示し、泡の構造及び安定性に関与する。この酸化防止特性は、これらの多官能フェノールの、フリーラジカルをクエンチし、反応性の酸素種をクエンチし、又はフリーラジカル生成の原因である金属イオンをキレート化する能力に関連する。泡の構造形成特性は、これらの化合物の、水素結合相互作用、疎水性相互作用、πスタッキング、静電気相互作用、又は共有結合を介してコーヒー素地と相互作用する能力に関連している可能性がある。また、これらの化合物は、一定の条件下で、タンパク質のアミノ酸側鎖及びコーヒー素地中に存在する糖などの天然由来の求核物質と相互作用し、その結果共有結合したフェニルプロパノイド種としてメラノイジンに組み込まれ得る。これらの相互作用がコーヒー泡沫の複雑な多相コロイド系内部で起こると、泡の濃化挙動の結果として後者のさらなる安定化を引き起こすことができる。また、このファミリーの化合物はコーヒー素地内部に酸素の微細気泡の形成を起こすことも立証された。コーヒーに天然に存在するがこのファミリーの化合物が存在すると加速される複雑な酸化還元反応により生成する微細気泡は、安定な泡の形成をも起こし得る。
【0034】
本発明の1つの実施形態において、ステップ(ii)の多官能フェノールを含む組成物は少なくとも1種のポリヒドロキシル化フェニルインダンを含む組成物である。
【0035】
本発明のさらなる実施形態において、ステップ(ii)の多官能フェノールを含む組成物は、trans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブタン、trans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブテン、5,6−ジヒドロキシ−2−カルボキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、trans−4,5−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−4,5−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、trans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−[3’,4’−ジヒドロキシ−5’−(1−(3”,4”−ジヒドロキシフェニル)−1−エチル)フェニル]インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−[3’,4’−ジヒドロキシ−5’−(1−(3”,4”−ジヒドロキシフェニル)−1−エチル)フェニル]インダン、5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−2−[1−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−エチル]−3−(3”,4”−ジヒドロキシフェニル)インダンからなるリストから選択される少なくとも1種の多ヒドロキシル化されたフェニルインダンを含む組成物である。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態において、ステップ(ii)の多官能フェノールを含む組成物は、trans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、trans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブテンを含む組成物でもよい。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、ステップ(ii)の多官能フェノールを含む組成物は、trans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダンを含む組成物である。
【0038】
既に述べたように、フェノール化合物は多官能フェノールのプロセスで誘発された重合産物のグループに分類することができる。このプロセスは熱処理、化学処理、酸化処理又は酵素処理でもよい。好ましくは、プロセスは熱処理とし得る(例えば、Richard H. Stadler、Dieter H. Welti、Andreas A. Stampfli、及びLaurent B. Fay、J. Agric. Food Chem. 1996、44、898〜905(援用により本明細書に含まれる)を参照)。
【0039】
熱的に誘発された多官能フェノールは、例えば焙煎の際遊離のコーヒー酸又は5−カフェオイルキナ酸から放出される4−ビニルカテコールモノマーの縮合で誘導された化合物と定義することができる。これらのモノマーの縮合は、多ヒドロキシル化されたフェニルインダンとして分類することができる多様な反応生成物を生じる。
【0040】
こうして、ステップ(ii)の重合は熱処理により誘発され得る。
【0041】
多官能フェノールの重合を誘発したプロセスは4−ビニルカテコールモノマーの化学処理も含み得る。化学的に誘発された多官能フェノールは、熱的に誘発された多官能フェノール、又は水酸化カリウム若しくは水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質で処理されている天然由来のグリーンコーヒーフェノール酸から誘導された化合物と定義することができる。カテコール部分は酸素の存在下でアルカリ性溶液と反応してキノン(26)を生成することができる。キノンは求電子特性を有し、これは、タンパク質のアミノ酸側鎖、他のフェノール化合物及びコーヒー素地内に存在する糖などの天然由来の求核物質に対する求核付加、すなわち共役付加を容易に起こすことができるということを意味する。また、これらの反応は化学的に誘発された多官能フェノールの形成を起こし得、コーヒー泡沫の複雑な多相コロイド系内部で起こる。化学的に誘発された多官能フェノールは、その系の濃化挙動により泡沫の安定化を起こし得る。
【0042】
1つの実施形態において、本発明の方法はステップ(ii)の多官能フェノールを含む組成物をアルカリで処理するステップをさらに含み得る。前記アルカリは水酸化カリウムであるのが好ましい。
【0043】
また、多官能フェノールの重合を誘発したプロセスは酸化処理を含み得る。酸化的に誘発された多官能フェノールは、熱的に誘発された多官能フェノール又はキノン(26)を生成するために酸化された天然由来のグリーンコーヒーフェノール酸から誘導された化合物として定義される。酸化的に誘発された多官能フェノールは化学的に誘発された多官能フェノールの場合と同様に作用し挙動する。
【0044】
したがって、1つの実施形態において、本発明の方法は、ステップ(ii)で得られた組成物を酸化するステップをさらに含み得る。
【0045】
多官能フェノールの重合を誘発したプロセスには酵素処理も含まれ得る。酵素的に誘発された多官能フェノールは、熱的に誘発された多官能フェノール、又は天然由来のグリーンコーヒーフェノール酸をキノン(26)に変換するポリフェノールオキシダーゼ、ラッカーゼ又はチロシナーゼなどの酵素で処理されている天然由来のグリーンコーヒーフェノール酸から誘導された化合物として定義される。酵素的に誘発された多官能フェノールは化学的に誘発された多官能フェノールの場合と同様に作用し挙動する。
【0046】
本発明の1つの実施形態において、ステップ(ii)で得られた組成物は、前記ポリフェノールからキノンを形成する酵素で処理し得る。
【0047】
前記酵素は、ポリフェノールオキシダーゼ、ラッカーゼ及びチロシナーゼからなるリストから選択するのが好ましい。
【0048】
本発明に従って提供される発泡助剤は液体又は粉末状製品の発泡助剤として使用することができる。特に、本発明に従って提供される発泡助剤は飲料、特にコーヒー飲料の発泡助剤として使用することができる。
【0049】
本発明はまた、
(a)コーヒー抽出物を用意するステップと、
(b)本発明の発泡助剤を前記抽出物に添加するステップと
を含む、コーヒー製品を製造する方法の提供にも関する。
【0050】
本発明の1つの実施形態において、発泡助剤は、コーヒー抽出物が液体形態であるとき、又はコーヒー抽出物が乾燥形態であるときに添加することができる。
【0051】
1つの実施形態において、本発明の方法は、前記コーヒー抽出物を濃縮する少なくとも1つのステップをさらに含む。この前記コーヒー抽出物を濃縮する少なくとも1つのステップは蒸発ステップでもよい。
【0052】
1つの実施形態において、本発明は、前記コーヒー抽出物を乾燥して4%(w/w%)又はそれより低い含水量を得るさらなるステップを含み得る。
【0053】
前記発泡助剤は前記コーヒー抽出物を乾燥する前に添加してもよく、及び/又は前記発泡助剤は前記コーヒー抽出物を乾燥した後に添加してもよい。
【0054】
コーヒー製品は可溶性コーヒー製品でもよい。前記コーヒー製品は、液体中で再溶解することができる水溶性粉末又は顆粒の形態であるのが好ましい。或いは、前記コーヒー製品は液体形態であってもよい。
【0055】
コーヒー抽出物は当業者に利用可能な任意の方法で得ることができる。しかし、コーヒー抽出物は熱間抽出によって得るのが好ましいであろう。ステップ(b)は前記熱間抽出の後に行うのが好ましい。
【0056】
コーヒー抽出物を用意するのに使用される材料はグリーンコーヒー豆、焙煎コーヒー豆又はこれらの混合物のコーヒー抽出物でもよい。
【0057】
本発明の1つの実施形態において、コーヒー製品は、インスタントコーヒー、インスタントエスプレッソコーヒー、液体コーヒー濃縮物及びコーヒーミックス、コーヒー混合物、カプセル入り又はなしのR&Gコーヒー(焙煎され粉砕されたコーヒー)、R&G及びインスタントコーヒーのミックス、レディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料からなるリストから選択されるコーヒー製品である。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態において、発泡助剤はtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、及び/又はtrans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブテンを含む。コーヒー製品中のtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、及び/又はtrans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブタンの総濃度は、2.3mg/L超、例えば2.4mg/L超、例えば2.5mg/L超、例えば2.7mg/L超、例えば3.0mg/L超、例えば3.5mg/L超、例えば4.0mg/L超、例えば2〜8mg/Lの範囲、例えば2.3〜7.4mg/Lの範囲、例えば2.5〜7.0mg/Lの範囲、例えば3〜6mg/Lの範囲、例えば4〜5mg/Lの範囲が好ましい。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態において、発泡助剤はtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン及びcis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダンを含む。コーヒー製品中のtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダンの総濃度は、2.3mg/L超、例えば2.4mg/L超、例えば2.5mg/L超、例えば2.7mg/L超、例えば3.0mg/L超、例えば3.5mg/L超、例えば4.0mg/L超、例えば2〜8mg/Lの範囲、例えば2.3〜7.4mg/Lの範囲、例えば2.5〜7.0mg/Lの範囲、例えば3〜6mg/Lの範囲、例えば4〜5mg/Lの範囲であるのが好ましい。
【0060】
本発明のコーヒー製品は、アルカリで処理された発泡助剤を含み得る。前記アルカリは水酸化カリウムが好ましい。したがって、本発明の発泡助剤は、コーヒー製品中に前記アルカリ又は微量の前記アルカリ、例えば水酸化カリウム、及び/又はアルカリと4−ビニルカテコールモノマーとの反応からの化合物が存在すること、並びに/或いはtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、及び/又はtrans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブテンの含有量によって、他の従来製品と異なり得る。好ましくはtrans−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、cis−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−3−(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)インダン、及び/又はtrans−1,3−ビス(3’−4’−ジヒドロキシフェニル)ブタンの総濃度である。
【0061】
本発明の1つの実施形態において、発泡助剤は、グリーンコーヒー豆、焙煎コーヒー豆又はこれらの混合物のコーヒー抽出物と共にカプセルなどの容器に包装され得る。
【0062】
本発明のコーヒー製品は通例瓶、缶、袋又はカプセルなどの容器内に包装することができる。したがって、本発明のさらに別の態様は本発明のコーヒー製品を含む容器を提供することである。この容器は用途及び中味の種類に応じて様々な形態を取り得る。1つの好ましい実施形態において、容器はカプセルである。
【0063】
本発明の1つの態様に関して記載した実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用することに注意されたい。
【0064】
本出願で引用した特許及び非特許文献は全て、援用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。
【0065】
ここで、以下の非限定実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0066】
実施例1.発泡助剤である焙煎コーヒー酸の存在下でのコーヒー抽出物粉末の再溶解(
図2)。
発泡助剤である焙煎コーヒー酸の調製。
コーヒー酸(Sigma)(1.0g、5.5mmol)を、230℃に設定した実験室規模のオーブンに入れた金属るつぼ内で焙煎した(16分)。水溶性焙煎コーヒー酸生成物は、100℃に加熱したMilli−Q級の水2×50mLを用いて回収した。新たに形成された溶液を遠心分離し(4000rpm)、ろ過した。このろ過した溶液を2つの試料に分割した。1つはそのまま使用し、もう1つは凍結乾燥した。
【0067】
コーヒー抽出物の再溶解後の、泡測定器(FMD)を用いた泡沫体積の決定。
粉末化された自己発泡性コーヒー抽出物(4g)を貯水槽(FMD)に接続された再溶解容器に注ぎ入れた。貯水槽から再溶解容器への水の移動はバルブによって止めた。コーヒー粉末を85℃の200mLの水(対照)又は0.065%の焙煎コーヒー酸を含有する(添加)85℃の200mLの水で再溶解した後、ホールピペットを備えた蓋で再溶解容器を覆った。次に、再溶解容器と貯水槽との間のバルブを開き、再溶解されたコーヒー溶液を水(室温の標準水道水)でピペット中に押し上げて泡沫体積の容易な測定を可能にした。実験は2回繰り返して行った。
【0068】
結果
国際公開第2009/040249号パンフレット(Nestec S.A.)に従って生成した自己発泡性コーヒーの、焙煎コーヒー酸(0.065% w/w%、発泡助剤)の存在下での再溶解により、FMDで測定される泡沫の生成が増大する(
図2)。
【0069】
FMDは自己発泡性コーヒー抽出物粉末の自己発泡性能を測定する。この実験により、再溶解水中に焙煎コーヒー酸が存在すると、粉末化コーヒー抽出物の自己発泡性能が増大することが確認される。
【0070】
実施例2.グリーンコーヒーへのアルカリ化されたコーヒー酸の添加(
図3)。
添加されたグリーンコーヒー豆の調製。
まず、コーヒー酸(1〜8g、5.5〜44.4mmol)をアルカリ化されたMilliQ−水(340〜388mL;水酸化カリウム(1M))に溶解した。次に、この溶液にグリーンコーヒー豆(400g)を一晩浸した。乾燥後、グリーンビーンズを236℃で720秒焙煎し、5.5に設定したディッティング(Ditting)ミルを用いて粉砕し、550μmの平均粒度を得た。この粉砕された焙煎豆はそのまま使用した。
【0071】
ホイッピング法(ウルトラ−トュラックス(Ultra−Turrax))を用いたコーヒー泡沫体積の決定。
未添加及びそれぞれ添加された焙煎粉砕コーヒーサンプルを、メスシリンダー(高さ:20.8cm、内径:26mm)に注ぎ入れた水に懸濁させ(50mLの水中に2.7g、60℃)、分散具S 25 N−18Gを備えたT 25デジタルウルトラ−トュラックス(IKA、Staufen、Germany)を用いて15000rpmで5秒ホイップした。発泡性は、2分後の泡沫体積を測定することによって定量した。泡の安定性を評価するために、泡沫体積を5、10及び15分後も測定した。実験は2回繰り返して行った。
【0072】
結果
上記したようにいろいろな量のコーヒー酸をグリーンコーヒー豆に富化することにより、増大した泡沫体積を有するコーヒーサンプルを生じた(
図3)。泡沫体積対時間(アラビカ):未添加(黒丸)、並びにコーヒー酸添加(0.25%コーヒー酸(暗灰色のばつ印);0.5%コーヒー酸(薄灰色の三角);1%コーヒー酸(薄灰色の四角)及び2%コーヒー酸(薄灰色の丸)。
【0073】
実施例3.コーヒー酸が富化されたグリーンコーヒー抽出物、水及びコーヒー酸によるグリーンコーヒーの浸漬(
図4)。
1つのバッチのグリーンコーヒー豆を500gの3つのロットに分割した。1つのロットは、WOLA1 ESTERASEに記載されている手順に従って生成したコーヒー酸が富化されたグリーンコーヒー抽出物(500g、TC2%)に一晩浸した。第2のロットは水(500mL)に一晩浸し、第3のロットはコーヒー酸溶液(600mg、3.33mmol、500mL)に一晩浸した。乾燥後、全ての豆を236℃で550秒焙煎した。5.5に設定したディッティングミルを用いて豆を粉砕して粒度550μmを得た。粉砕した豆を、ダイオネクス(Dionex)ASE 200を用いて2ステップ抽出手順(100℃/10分及び180℃/10分)を適用することによって抽出した。得られた抽出物を収集し、凍結乾燥した。
【0074】
KOMOマシンを用いることによるコーヒー泡沫体積の決定
上記の焙煎したコーヒー抽出物をTC2%のMilliQ水(75℃)に溶解した。83mLの各サンプル溶液をホイッピング装置(15000rpm、20秒)に通し、発泡した液体を容積シリンダーに回収した。泡沫体積を360秒まで30秒毎に記録した。初期泡沫体積及び泡沫崩壊速度(0〜120秒)は、対数モデルを用いて泡沫曲線から外挿した。
【0075】
この方法から、上記したようにコーヒー酸が富化された担体としてのグリーンコーヒー抽出物を用いてコーヒー酸をグリーンコーヒー豆に富化濃縮すると、増大した発泡性を有するコーヒーサンプルが生成した(
図4)。
参考文献
欧州特許第0839457号
国際公開第2009/040249号パンフレット