【実施例】
【0150】
以下の実施例は本発明の例示であるが、本発明の範囲を限定することを意図していない。比較例プロ触媒2および3の調製は、それぞれ、国際公開第2007136496号および米国特許第2011/0282018号に記載されており、これらは、比較例プロ触媒2および3が例示される範囲内において、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0151】
触媒を実際に合成するための特定の実施形態
【0152】
【化26】
【0153】
4,4’−ジ−tert−ブチル−2−ニトロ−1,1’−ビフェニルの調製
室温の水浴中に浸したフラスコ内で、4,4`−ジ−tert−ブチルビフェニル(15.00g、56.30mmol)に、無水酢酸(300mL)を添加した。この懸濁液に、酢酸(15mL、261.81mmol)および発煙硝酸(9.0mL、191.43mmol)の混合物を、等圧添加漏斗(pressure equalizer addition funnel)を介して10分間かけてゆっくりと滴加する。固体は溶液に溶けていき、黄色に変色させる。この混合物を30分間撹拌し、GC/MSで確認したところ、反応の完了を示した。この混合物を2.5Lの氷水に添加し、1時間15分撹拌した。黄色沈殿物を減圧濾過で濾取し、2回の100mLずつの氷水で洗浄した。この未精製固体を250mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を水(250mL)および1M NaOH水溶液(250mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、高真空下で濃縮して、黄色固体として未精製物を得た。この未精製固体を、カラムカートリッジ中の充填のために、最小量のクロロホルム(hloroform)に溶解した。この未精製物を、ISCO装置内のGrace社(Grace)製Reveleris 330gカラムP/N5146135を用い、ヘキサン中10〜20%クロロホルムという勾配で溶出させる、フラッシュクロマトグラフィーで精製して、淡黄色固体として11.04g(63.0%)の生成物を得た。
【0154】
1H NMR (500 MHz, CDCl
3 + TMS) δ 7.80 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.60 (dd, J = 8.1, 2.0 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 1.38 (s, 9H), 1.35 (s, 9H)。
13C{
1H} NMR (126 MHz, CDCl
3 + TMS) δ 151.72, 150.93, 149.22, 134.24, 133.20, 131.55, 129.26, 127.55, 125.58, 120.85, 34.86, 34.59, 31.29, 31.05。
【0155】
【化27】
【0156】
2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾールの調製
グローブボックス内で、4,4’−ジ−tert−ブチル−2−ニトロ−1,1’−ビフェニル(8.00g、25.69mmol)に、亜リン酸トリエチル(31.0mL、179.82mmol)を添加した。この混合物をグローブボックスから取り出し、ドラフトに移した。この混合物を窒素雰囲気下に置き、穏やかな還流下で加熱(175℃マントル温度)し、その間、GC/MSで反応の進行をモニタリングした。反応の完了が決定されたら(4時間)、それを冷却し、冷却器を反応物から取り除き、数mLの液体が残るまで、亜リン酸トリエチルを、75℃(マントル温度)で短径カラムを用いて真空下で留去した。フラスコを125℃にさらに加熱したところ、さらなる蒸留は起こらなかった(残留液体は、非常に高い、予測副生成物を沸騰させる、リン酸トリエチルであり得る)。残渣を室温まで放冷し、次に、およそ100mLの1:1メタノール:氷水で希釈および洗浄し、濾過した。減圧濾過により単離された沈殿物および反応フラスコ内に残留した粘着性残渣を、およそ300mLの塩化メチレンに溶解し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過および濃縮して、9.41gの未精製物を黄色の油(およそ80%のカルバゾール生成物)を得た。この未精製物を、ヘキサン中25%塩化メチレンに溶解させ、同一濃度の溶出液およびGrace社製Reveleris 330gカラムを用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製して、4.70g(66%)の純粋化合物を白色粉末として得た。
【0157】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.92 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.76 (s, 1H), 7.37 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 7.26 (dd, J = 8.3, 1.6 Hz, 2H), 1.40 (s, 18H)。
13C{
1H} NMR (126 MHz, C
6D
6) δ 148.93, 140.04, 120.97, 119.48, 117.29, 107.01, 77.25, 77.00, 76.75, 35.05, 31.79。
【0158】
【化28】
【0159】
2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾールの調製
グローブボックス内の250−mL三つ口丸底フラスコに、2−(2−ヨード−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(21.74g、52.22mmol)、2,7−ジ−t−ブチルカルバゾール(8.03g、28.73mmol)、K
3PO
4(23.40g、110.24mmol)、無水CuI(0.22g、1.16mmol)、無水トルエン(85mL)およびN,N`−ジメチルエチレンジアミン(0.45mL、4.18mmol)を添加した。フラスコをグローブボックスから取り出し、ドラフトへ移し、N
2下125℃(加熱マントル温度)で加熱した。24時間後、GC解析は約76%の変換を示すため、脱水トルエン(0.9mL)およびN,N`−ジメチルエチレンジアミン(0.45mL、4.18mmol)中でスラリー化された追加の無水CuI(0.2g、1.05mmol)を添加し、125℃でさらに72時間撹拌し続けた。合計96時間後のGC解析は、微量の残留カルバゾールを示す。反応物を室温まで放冷し、小シリカプラグに通して濾過し、テトラヒドロフランで洗浄し、濃縮して、24.47gの粗生成物を暗褐色の油として得た。この未精製物を、熱したヘキサン(50mL)から再結晶化して、13.48g(90.9%)の生成物をオフホワイト色粉末として得た(GCにより純度98.12%)。
【0160】
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.00 (dd, J = 8.2, 0.5 Hz, 2H), 7.44−7.49 (m, 2H), 7.45 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.30 (dt, J =8.2, 1.7 Hz, 2H), 7.19 (dd, J = 1.7, 0.5 Hz, 1H), 7.10 (dd, J = 1.7, 0.5 Hz, 1H), 5.25 (t, J = 2.7 Hz, 1H), 3.71 (td, J = 10.9, 2.9 Hz, 1H), 3.47 (dt, J = 11.2, 4.0 Hz, 1H), 1.76 (ABq, J = 14.6 Hz, 2H), 1.42 (s, 6H), 1.36 (s, 9H), 1.35 (s, 9H), 1.12−1.32 (m, 6H), 0.83 (s, 9H)。
13C{
1H} NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 151.18, 148.58, 148.51, 144.34, 142.00, 141.98, 127.78, 126.72, 126.44, 120.82, 120.73, 119.12, 119.08, 117.16, 117.10, 116.60, 106.88, 106.55, 97.19, 61.64, 57.13, 38.27, 35.10, 35.08, 32.48, 31.86, 31.81, 31.74, 31.43, 30.10, 25.01, 17.86。
【0161】
【化29】
【0162】
2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾールの調製
N
2雰囲気下0〜10℃で、乾燥器で乾燥させた三つ口丸底フラスコに、2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール(7.70g、13.56mmol)および無水テトラヒドロフラン(90mL)を添加した。この溶液を約15分間かけて0〜10℃(氷水浴)に冷却し、ヘキサン中2.5M n−ブチルリチウム(14mL、35.00mmol)をゆっくりと添加した。4時間撹拌した後、2−イソ−プロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(7.0mL、34.31mmol)をゆっくりと添加した。この混合物を0〜10℃で1時間撹拌し、その後反応物を室温まで昇温させ、さらに18時間撹拌した。反応混合物に冷飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(75mL)を添加した。この混合物を、4回の50mLずつの塩化メチレンで抽出した。有機相を合わせ、冷飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、次に、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過および濃縮して、9.43gの未精製物を金色の泡として得た。この未精製物を、アセトニトリル(75mL)中でスラリー化し、1時間室温で放置し、その後、減圧濾過で固体を単離した。この固体を少量の冷アセトニトリルで洗浄し、高真空下で乾燥して、8.12g(86.3%)の生成物を白色粉末として得た。
【0163】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.97 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 2H), 7.81 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 8.2, 4.5, 1.7 Hz, 2H), 7.20 (dd, J = 12.9, 1.2 Hz, 2H), 5.02 (t, J = 2.8 Hz, 1H), 2.81 (td, J = 10.8, 2.8 Hz, 1H), 2.69 (dt, J = 10.2, 2.9 Hz, 1H), 1.75 (ABq, J = 14.6 Hz, 2H), 1.41 (s, 6H), 1.40 (s, 12H), 1.36 (s, 9H), 1.35 (s, 9H), 1.31 - 0.94 (m, 6H), 0.82 (s, 9H).
13C NMR (101 MHz, cdcl
3) δ 156.00, 148.68, 148.53, 145.66, 141.80, 141.74, 133.45, 130.47, 129.15, 120.86, 120.61, 118.93, 118.88, 117.04, 107.51, 107.14, 100.80, 83.59, 61.08, 57.08, 38.40, 35.09, 32.49, 31.93, 31.80, 31.53, 31.16, 29.95, 25.06, 25.03, 24.89, 17.99。
【0164】
【化30】
【0165】
4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノールの調製
添加漏斗を備えた丸底フラスコに、N
2雰囲気下、0〜10℃で、メタノール(150mL)、4−フルオロ−2−メチルフェノール(10.00g、79.28mmol)、NaI(14.29g、95.34mmol)およびNaOH(3.92g、98.00mmol)を添加した。この溶液を0〜10℃で約15分間撹拌し、その後、NaOCl(市販漂白剤中の5%v/vからの155mL、104.11mmol)を2時間かけて滴加した。漂白剤添加が完了した後、反応物を0〜10℃でさらに1時間撹拌した。GC解析は約50%の変換を示したため、追加のNaI(7.16g、47.77mmol)および漂白剤(75mL、50.38mmol)を添加し(全て同時に)、0〜10℃でさらに1時間撹拌した。この時点のGC解析は、完全な変換を示したため、50mLの10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液を反応混合物に添加した。次に、反応混合物を5%HClで酸性化し、塩化メチレン(500mL)で抽出し、各500mLの10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、その後のブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルパッドに通して濾過し、次いで濃縮して、暗赤色の油を得た。この未精製物を、ヘキサン中2%酢酸エチルで溶出させる、Grace装置内のGrace社製Reveleris 330gカラムP/N5146135を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製して、13.69g(68.5%)の純粋生成物をオフホワイト色の固体として得た。
【0166】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.19 (ddd, J = 7.5, 3.0, 0.6 Hz, 1H), 6.88 - 6.82 (m, 1H), 5.09 (d, J = 0.5 Hz, 1H), 2.28 (s, 4H)。
13C{
1H} NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 156.12 (d, J = 242.5 Hz), 149.49 (d, J = 2.7 Hz), 125.59 (d, J = 7.8 Hz), 121.50 (d, J = 25.2 Hz), 118.08 (d, J = 22.4 Hz), 84.09 (d, J = 9.6 Hz), 17.38 (d, J = 1.2 Hz)。
19F−NMR (CDCl
3) δ −123.15 ( t, J = 8.2 Hz)。
【0167】
【化31】
【0168】
プロパン−1,3−ジイルビス(4−メチルベンゼンスルホン酸)の調製
丸底フラスコに、N
2雰囲気下で、無水ピリジン(50mL)中の1,3−プロパンジオール(19.25g、252.96mmol)の溶液を、無水ピリジン(200mL)中の4−メチルベンゼン−1−スルホニルクロリド(115.74g、607.10mmol)の溶液に2時間かけて滴加し、0〜10℃で冷却した。反応混合物を0〜10℃でさらに4時間撹拌し、次に、氷水(500mL)に注いだところ、その時点で、オフホワイト色の固体が沈殿した。この沈殿を減圧濾過で濾取し、冷水(200mL)、希硫酸(10重量%、200mL)、1M 炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および再度水(200mL)で洗浄した。この湿った生成物をアセトンから再結晶化して、82.35g(84.7%)の生成物を白色結晶として得た。
【0169】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.72 (d, J = 8.3 Hz, 4H), 7.33 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 4.05 (t, J = 6.0 Hz, 4H), 2.43 (s, 6H), 1.98 (p, J = 6.0 Hz, 2H)。
13C{
1H} NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 144.99, 132.59, 129.90, 127.79, 65.82, 28.62, 21.57。
【0170】
【化32】
【0171】
1,3−ビス(4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)プロパンの調製
N,N−ジメチルホルムアミド(250mL)に、2−ヨード−4−フルオロ−6−メチルフェノール(13.09g、51.94mmol)、プロパン−1,3−ジイルビス(4−メチルベンゼンスルホン酸)(9.99g、25.98mmol)およびK
2CO
3(15.08g、109.11mmol)を添加した。この混合物を100℃で30分間加熱し、その後濃縮乾固した。残渣を50/50塩化メチレン/水(200mL)の混合物に溶解させ、塩化メチレン(3×100mL)で抽出した。有機相を各500mLの2N NaOH水溶液、水、その後のブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルパッドに通して濾過し、濃縮して、9.80g(69.4%)の生成物を白色粉末として得た。
【0172】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.31 (m, 2H), 6.88 (m, 2H), 4.08 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.44 (p, J = 6.5 Hz, 2H), 2.34 (s, 6H)。
13C NMR (101 MHz, cdcl
3) δ 158.44 (d, J = 247.1 Hz), 153.56 (d, J = 3.0 Hz), 133.09 (d, J = 8.3 Hz), 123.39 (d, J = 24.8 Hz), 117.92 (d, J = 22.3 Hz), 91.35 (d, J = 9.5 Hz), 70.13 (d, J = 1.0 Hz), 31.04, 17.43 (d, J = 1.2 Hz)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.17 (t, J = 8.1 Hz)。
【0173】
【化33】
【0174】
1,3−ビス((3’−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−5−フルオロ−3−メチル−2’−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−5’−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)オキシ)プロパンの調製
丸底フラスコに、N
2雰囲気下で、2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール(7.52g、9.89mmol)(HPLCによる91.2%の純度に基づいて調整されたmmol)、ジメトキシエタン(120mL)、水(35mL)中のNaOH(1.30g、32.50mmol)の溶液、テトラヒドロフラン(60mL)、および1,3−ビス(4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)プロパン(2.56g、4.70mmol)を添加した。この系をN
2でおよそ15分間パージし、Pd(PPh
3)
4(303mg、0.26mmol)を添加した。この混合物を85℃で48時間加熱加熱し、その後室温まで放冷した。冷却後、沈殿物が反応フラスコ内に形成され、それを減圧濾過で単離し、高真空下で1時間乾燥して、6.10gの未精製保護配位子を得た。この保護配位子を次の段階でそのまま使用した。
【0175】
【化34】
【0176】
2’,2’’’−(プロパン−1,3−ジイルビス(オキシ))ビス(3−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−5’−フルオロ−3’−メチル−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−ol)(DOC−6156配位子)の調製
未精製保護配位子に、1:1メタノール/テトラヒドロフランの混合物(200mL)およびおよそ100mgのp−トルエンスルホン酸一水和物を添加した。この溶液を60℃で8時間加熱し、その後放冷し、濃縮した。残渣を塩化メチレン(250mL)に溶解し、ブライン(250mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルパッドに通して濾過し、その後濾過して、4.92gの未精製配位子を得た。この未精製物を、ヘキサン中2%酢酸エチルで溶出させる、ISCO装置内のGrace社製Reveleris 330gカラムP/N5146135を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製して、4.23g(71.7%)の純粋生成物を白色粉末として得た。
【0177】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.03 (dd, J = 8.2, 0.5 Hz, 4H), 7.44 (dd, J = 5.1, 2.4 Hz, 4H), 7.33 (dd, J = 8.3, 1.7 Hz, 4H), 7.00 (dd, J = 8.8, 3.0 Hz, 1H), 6.84 (ddd, J = 8.7, 3.1, 0.6 Hz, 1H), 6.18 (s, 2H), 3.66 (t, J = 6.4 Hz, 4H), 1.97 (s, 6H), 1.76 (s, 3H), 1.74 (pent, J = 6.4 Hz, 2H), 1.40 (s, 12H), 1.30 (s, 36H), 0.83 (s, 18H)。
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 158.82 (d, J = 243.2 Hz), 150.16 (d, J = 2.5 Hz), 149.09, 147.76, 142.87, 141.68, 133.48 (d, J = 8.6 Hz), 132.89 (d, J = 8.7 Hz), 129.12, 127.50, 126.28 (d, J = 1.5 Hz), 124.99, 121.07, 119.51, 117.74, 117.18 (d, J = 22.5 Hz), 116.07 (d, J = 23.1 Hz), 106.20, 70.87, 57.17, 38.25, 35.06, 32.51, 31.91, 31.75, 31.66, 30.73, 16.44, 16.43。
19F−NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.80 (t, J = 8.5 Hz)。HRMS (ESI, M + NH
4+): (m/z) 計算値C
85H
108F
2N
3O
4 1272.830、測定値1272.830。
【0178】
【化35】
【0179】
プロ触媒1の調製
配位子(0.4778g、0.38mmol)およびHfCl
4(0.122g、0.38mmol)を、35mLの冷(−30℃)トルエン中に懸濁した。この混合物に、MeMgBrの、0.56mLの3Mジエチルエーテル溶液を添加した。この反応混合物は淡黄色に約20分間呈色し、その後暗色になり始めた。撹拌の1.5時間後、溶媒を減圧下で除去した。残渣に、20mLのトルエンを添加し、その後25mLのヘキサンを添加した。懸濁液を濾過して、無色の溶液を得た。溶媒を減圧下で除去して、0.367gの白色固体を得た。収率66.0%。X線解析用の結晶をNMR管内でC
6D
6から成長させた。
【0180】
1H NMR (400 MHz,トルエン) δ 8.14 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.98 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.85 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.79 (d, J = 2.5 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.46 (dd, J = 8.2, 1.6 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 2.5 Hz, 2H), 7.30 (dd, J = 8.2, 1.6 Hz, 2H), 6.86 (dd, J = 8.9, 3.2 Hz, 2H), 6.12 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 3.49 (dt, J = 9.9, 4.9 Hz, 2H), 3.27 (dt, J = 10.5, 5.5 Hz, 2H), 1.72 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 1.59 (d, J = 14.4 Hz, 11H), 1.57 (s, 18H), 1.36 - 1.31 (m, 2H), 1.27 (s, 6H), 1.26 (s, 6H), 1.25 (s, 18H), 1.12 (s, 6H), 0.87 (s, 18H), −0.93 (s, 6H)。
13C{
1H} NMR (101 MHz, トルエン) δ 160.47 (d, J = 246.3 Hz), 153.83, 149.41 (d, J = 2.7 Hz), 149.38, 147.86, 142.19, 141.51, 140.54, 135.89 (d, J = 8.6 Hz), 135.11 (d, J = 8.9 Hz), 130.45 (d, J = 1.4 Hz), 128.34, 127.81, 126.82, 123.46, 120.93, 120.27, 118.93, 117.48, 117.34 (d, J = 23.5 Hz), 117.21 (d, J = 22.5 Hz), 109.65, 107.68, 76.14, 57.86, 50.94, 38.28, 35.48, 35.24, 33.08, 32.76, 32.40, 32.02, 31.68, 30.32, 29.96, 16.45。
19F NMR (376 MHz, ベンゼン−d6) δ −115.22 (t, J = 8.6 Hz)。
【0181】
【化36】
【0182】
4−フルオロ−2−ヨードフェノールの調製
0〜10℃のメタノール(200mL)に、4−フルオロフェノール(8.00g、71.37mmol)、NaI(12.84g、85.64mmol)およびNaOH(3.43g、85.64mmol)を添加した。この溶液を0〜10℃で約15分間撹拌し、次に、NaOCl(市販漂白剤からの、133mLの5重量%溶液、92.77mmol)を1時間かけて滴加し、その後、0〜10℃でさらに1時間撹拌した。反応を10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液(50mL)でクエンチし、次に、反応混合物を10%HClで酸性化した。有機溶液を塩化メチレン(300mL)で抽出し、各500mLの10重量%チオ硫酸ナトリウム、水、その後のブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルパッドに通して濾過し、その後濃縮して、未精製化合物を得た。この未精製物を、ヘキサンからの再結晶で精製して、11.52g(67.8%)の化合物を白色結晶として得た。
【0183】
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 7.36 (dd, J = 7.6, 2.9 Hz, 1H), 6.97 (ddd, J = 8.9, 7.7, 2.9 Hz, 2H), 6.92 (dd, J = 9.0, 4.9 Hz, 1H), 5.10 (s, 1H)。
13C NMR (101 MHz, クロロホルム−d) δ 156.42 (d, J = 243.0 Hz), 151.45 (d, J = 2.6 Hz), 124.34 (d, J = 25.3 Hz), 116.83 (d, J = 23.1 Hz), 115.08 (d, J = 7.8 Hz), 84.23 (d, J = 9.0 Hz)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −122.52 (td, J = 7.6, 4.9 Hz)。
【0184】
【化37】
【0185】
1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フルオロ−2−ヨードベンゼン)の調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、隔膜、冷却器および窒素ガス注入口を取り付けた。このフラスコに、4−フルオロ−2−ヨードフェノール(7.0020g、29.420mmol)、炭酸カリウム(8.2954g、60.020mmol)、1,3−ジブロモプロパン(59.00mL、581.262mmol)、およびアセトン(200mL)を充填した。この混合物を撹拌して溶解を完了させ、一晩還流させた。この溶液をGC/MS解析用にサンプリングし(アセトン中に希釈され濾過された0.1mLの試料)、反応の完了を決定した。16.5時間後、反応物を室温まで放冷し、減圧濾過で濾過した。丸底フラスコも、アセトン(2×20mL)で洗浄し、濾過した。濾液を回転蒸発で濃縮して、アセトンを除去した。残留した黄色溶液を真空下で(80〜100℃過熱マントル温度)蒸留し、残留1,3−ジブロモプロパンを除去した。未精製の褐色油が残り、これを
1H NMRで解析した。褐色油を少量のヘキサンに溶解し、330g Graceカラム、および2カラム体積に対しヘキサン中0〜5%酢酸エチル、その後生成物が溶出するまでヘキサン中5%酢酸エチルに増加、という勾配を用いる、イスコ社(Isco)製CombiFlashシステム上のカラムクロマトグラフィで精製した。画分をTLCおよびGC/MSで解析した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、生成物を黄色の油として得た。黄色の油を高真空下で乾燥して、8.99g(85.1%)を得た。
【0186】
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 7.47 (dd, J = 7.6, 3.0 Hz, 1H), 6.99 (ddd, J = 9.0, 7.8, 3.0 Hz, 1H), 6.73 (dd, J = 9.0, 4.6 Hz, 1H), 4.07 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 3.68 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.32 (p, J = 6.2 Hz, 2H)。
13C−NMR (126 MHz, CDCl
3) δ 156.64 (d, J = 243.6 Hz), 153.60 (d, J = 2.6 Hz), 125.81 (d, J = 24.9 Hz), 115.49 (d, J = 22.5 Hz), 112.22 (d, J = 8.2 Hz), 67.02, 32.08, 30.15。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −121.86 - −121.97 (m)。
【0187】
【化38】
【0188】
5−フルオロ−2−(3−(4−フルオロ−2−ヨードフェノキシ)プロポキシ)−1−ヨード−3−メチルベンゼンの調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、隔膜、冷却器および窒素ガス注入口を取り付けた。このフラスコに、1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フルオロ−2−ヨードベンゼン(8.9856g、25.032mmol)、4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノール(6.3096g、25.036mmol)、炭酸カリウム(7.400g、53.542mmol)、およびアセトン(165mL)を充填した。この混合物を撹拌して溶解を完了させ、一晩還流させた。この溶液をGC/MS解析用にサンプリングし(アセトン中に希釈され濾過された0.1mLの試料)、完了を決定した。16時間後、反応物を室温まで放冷し、減圧濾過で濾過した。丸底フラスコも、アセトン(2×20mL)で洗浄し、濾過した。濾液を回転蒸発で濃縮して、粗生成物を暗褐色の油として得た。この粗生成物を
1H NMRで解析した。暗褐色の油を少量のヘキサンに溶解し、330g Graceカラム、および2カラム体積に対しヘキサン中0〜5%酢酸エチル、その後生成物が溶出するまでヘキサン中5%酢酸エチルに増加、という勾配を用いる、イスコ社(Isco)製CombiFlashシステム上のカラムクロマトグラフィで精製した。画分をTLCおよびGC/MSで解析した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、純粋生成物を黄色固体として得た。この黄色固体を高真空下で乾燥して、11.55g(87.1%)を得た。
【0189】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.49 (dd, J = 7.6, 3.0 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 7.5, 3.0, 0.7 Hz, 1H), 7.01 (ddd, J = 9.0, 7.8, 3.0 Hz, 1H), 6.85 (ddd, J = 8.6, 3.0, 0.8 Hz, 1H), 6.76 (dd, J = 9.0, 4.6 Hz, 1H), 4.25 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 4.07 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.34 (p, J = 5.9 Hz, 2H), 2.27 (d, J = 0.7 Hz, 3H)。
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 158.73 (d, J = 181.2 Hz), 156.28 (d, J = 178.1 Hz), 153.85 (d, J = 2.1 Hz), 153.05 (d, J = 3.1 Hz), 133.14 (d, J = 8.2 Hz), 125.99 (d, J = 25.1 Hz), 123.26 (d, J = 24.8 Hz), 117.89 (d, J = 22.2 Hz), 115.55 (d, J = 22.4 Hz), 111.75 (d, J = 8.1 Hz), 91.33 (d, J = 9.3 Hz), 85.81 (d, J = 8.2 Hz), 68.89 (d, J = 1.3 Hz), 65.82 , 29.86 , 17.22 (d, J = 1.3 Hz)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −117.93 - −118.11 (m), −122.39 - −122.55 (m)。
【0190】
【化39】
【0191】
3−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−2’−(3−((3’−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−5−フルオロ−2’−ヒドロキシ−5’−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)オキシ)プロポキシ)−5’−フルオロ−3’−メチル−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−オールの調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、隔膜、冷却器および窒素ガス注入口を取り付けた。このフラスコに、2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール(9.4182g、13.575mmol)、1,2−DME(170mL)、水(49mL)中のNaOH(1.8145g、45.438mmol)の溶液、THF(57mL)、および5−フルオロ−2−(3−(4−フルオロ−2−ヨードフェノキシ)プロポキシ)−1−ヨード−3−メチルベンゼン(3.4233g、6.458mmol)を充填した。この溶液を撹拌し、窒素でおよそ15分間パージし、その後Pd(PPh
3)
4(0.5432g、0.470mmol)を加えた。この混合物を85℃で19時間加熱還流し、TLC(ヘキサン中5%酢酸エチル)で完了を確認した。19時間後、反応物を室温まで放冷した。この混合物を相分離のために分液漏斗に移した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過し、回転蒸発で濃縮して、泡沫状の金橙色の固体(22.73g)を未精製保護配位子として得た。この未精製配位子を
1H NMRで解析した。未精製保護配位子をテトラヒドロフラン(250mL)およびメタノール(250mL)の混合物に溶解し、次に、60℃に加熱した。この溶液に、溶液が酸性になるまで、p−トルエンスルホン酸一水和物(3.0380g、15.971mmol)を加えた。反応物を60℃で一晩撹拌し、TLC(ヘキサン中5%酢酸エチル)で完了を確認した。この反応混合物を室温まで放冷し、次に回転蒸発で濃縮して、褐色の粘着性固体(15.13g)を得た。この固体を
1H NMRで解析した。粗生成物をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを添加した。このスラリーを回転蒸発で濃縮して、乾燥粉状混合物を得た。この粉状混合物をイスコ社製CombiFlashシステムに充填し、330g Graceカラムおよびヘキサン中2〜5%酢酸エチルという勾配を用いて実行して、生成物を溶出させた。画分をTLCで解析した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、生成物を淡黄色の結晶性固体として得た。微量の酢酸エチルを除去するため、この固体をジクロロメタンに溶解し、回転蒸発で濃縮して、淡黄色の結晶性固体を得た(2回繰り返す)。この固体を高真空下で乾燥して、6.17g(77.0%)を得た。
【0192】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.12 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 8.08 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.43 (q, J = 2.4 Hz, 2H), 7.40 (t, J = 1.9 Hz, 2H), 7.38 (t, J = 1.9 Hz, 2H), 7.19 (dd, J = 8.9, 3.2 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 1.6, 0.7 Hz, 2H), 7.15 (d, J = 1.0 Hz, 2H), 7.09 (dd, J = 8.8, 3.4 Hz, 1H), 6.88 (ddd, J = 8.6, 3.1, 0.9 Hz, 1H), 6.79 (ddd, J = 8.9, 7.8, 3.1 Hz, 1H), 6.63 (s, 1H), 6.48 (dd, J = 9.1, 4.5 Hz, 1H), 5.71 (s,1H), 3.96 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.69 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 2.01 (s, 3H), 1.88 (p, J = 6.0 Hz, 2H), 1.83 (s, 2H), 1.79 (s, 2H), 1.49 (s, 6H), 1.44 (s, 6H), 1.37 (s, 18H), 1.36 (s, 18H), 0.89 (s, 9H), 0.87 (s, 9H).
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.16 (t, J = 8.7 Hz), −122.85 - −122.93 (m)。
【0193】
【化40】
【0194】
プロ触媒4の調製
窒素雰囲気下、グローブボックス内で反応を開始させた。広口瓶に、HfCl
4(0.1033g、0.3225mmol)およびトルエン(20mL)を充填した。このスラリーをグローブボックスフリーザー内で30分間かけて−25℃に冷却した。撹拌中の冷却スラリーに、ジエチルエーテル(0.45mL、1.35mmol)中の3.0M 臭化メチルマグネシウムを添加した。この混合物を2分間強く撹拌した。固体は溶解したが、反応液は濁っており帯黄色であった。この混合物に、固体としての配位子(0.4000g、0.3221mmol)を添加した。固体を含有するバイアルをトルエン(2.0mL)でリンスした。リンス溶媒を反応混合物に添加した。反応物をNMRで確認した。1.5時間撹拌した後、反応混合物を濾過した(フリット中漏斗)。濾滓を2回の10mLずつのトルエンで洗浄した。この無色の濾液溶液に、ヘキサン(5mL)を添加し、真空下で濃縮して、白色固体を得た。この固体に、トルエン(30mL)を添加し、ほぼ全ての固体が溶解するまで撹拌した。次に、ヘキサン(25mL)を添加した。この濁った帯黄色溶液を濾過し(シリンジフィルター)、高真空下で濃縮して、0.4317g(92.5%)のHf錯体を黄褐色固体として得た。ベンゼン−d
6からの再結晶によりX線解析試料を得た。
【0195】
1H NMR (400 MHz, C
6D
6) δ 8.20 (dd, J = 8.2, 0.5 Hz, 1H), 8.15 (dt, J = 8.3, 0.6 Hz, 2H), 8.04 (dd, J = 8.3, 0.6 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.73 (ddd, J = 13.7, 1.7, 0.6 Hz, 2H), 7.68 (d, J = 2.3 Hz, 2H), 7.46 (dd, J = 8.2, 1.7 Hz, 1H), 7.41 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 3.2, 1.9 Hz, 2H), 7.35 (dd, J = 8.3, 1.7 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.94 (dt, J = 9.1, 3.2 Hz, 2H), 6.26 (ddd, J = 8.9, 7.4, 3.2 Hz, 1H), 6.13 (dd, J = 8.7, 3.1 Hz, 1H), 5.69 (dd, J = 8.9, 5.0 Hz, 1H), 3.79 (dt, J = 10.0, 5.2 Hz, 1H), 3.66 (dt, J = 10.2, 4.9 Hz, 1H), 3.52 (dt, J = 9.7, 5.6 Hz, 1H), 3.16 (dt, J = 10.5, 5.2 Hz, 1H), 1.64 - 1.56 (m, 2H), 1.49 (s, 9H), 1.44 (s, 9H), 1.37 - 1.29 (m, 2H), 1.26 (s, 10H), 1.25 (s, 6H), 1.20 - 1.17 (m, 6H), 0.89 (s, 9H), 0.80 (s, 9H), −0.69 (s, 2H), −1.10 (s, 2H)。
19F NMR (376 MHz, C
6D
6) δ −113.82 (ddd, J = 9.0, 7.3, 5.0 Hz), −115.71 (t, J = 8.4 Hz)。
【0196】
【化41】
【0197】
ビス(クロロメチル)ジエチルシランの調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、2枚の隔膜、冷却器および窒素ガス注入口を取り付けた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、エチルマグネシウムブロミド(40mL、120mmol)およびジエチルエーテル(60mL)を充填した。この溶液に、ビス(クロロメチルジクロロシラン)(9.5002g、47.993mmol)をシリンジで加えた。この混合物を加熱還流した。数分間後、濁った白色混合物が透明になり、白色沈殿が観察された。反応物を5時間還流させ、次に室温で一晩放置した。この混合物を濾過し、濾滓を2回の30mLずつのジエチルエーテルで洗浄した。濾液をゆっくりと撹拌し、0℃に冷却し(氷水浴)、0.1M HCl水溶液(29mL)を添加漏斗によりゆっくりと添加した。0.1M HClを添加中、固体は泡になり始めた。この混合物を分液漏斗に移したところ、白色固体が残った。この相を分離し、白く曇った水相を2回の15mLずつのジエチルエーテルで抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過し、回転蒸発で濃縮して、淡黄色の油を粗生成物として得た。この未精製の油を高真空下で1時間乾燥して、7.6709g(86.3%)の生成物を得た。
【0198】
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 2.94 (d, J = 0.4 Hz, 4H), 1.03 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 0.80 (q, J = 7.8 Hz, 3H)。参考文献: Anderson, W. K.; Kasliwal, R.; Houston, D. M.; Wamg, Y.; Narayanan, V. L.; Haugwitz, R. D.; Plowman, J. J. Med. Chem. 1995, 38, 3789−3797。
【0199】
【化42】
【0200】
ジエチルビス((4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)メチル)シランの調製
三つ口丸底フラスコに、冷却器、2枚の隔膜、磁性撹拌子および窒素ガス注入口を取り付けた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、水素化ナトリウム(95%、0.4137g、16.376mmol)および無水N,N−ジメチルホルムアミド(8.5mL)を充填した。このスラリーを0℃に冷却し、無水N,N−ジメチルホルムアミド(8.5mL)中の4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノール(4.2466g、16.850mmol)の溶液を、反応(水素発生)の制御を維持する速度で、シリンジによりゆっくりと添加した。氷浴を取り除き、得られた赤味を帯びた混合物を30分間撹拌した。次に、無水N,N−ジメチルホルムアミド(4.5mL)中のビス(クロロメチル)ジエチルシラン(1.3002g、7.022mmol)の溶液を、シリンジにより加えた。この反応混合物を17時間かけて60℃まで加熱した。反応物を室温まで放冷した後、0℃に冷却した(氷水浴)。冷却溶液に、水(21.5mL)をゆっくりと加えた。この混合物を分液漏斗に移した際、フラスコの底に厚いスリム(slim)が残った。フラスコをいくらかの酢酸エチルで洗浄してスリム(slim)を溶解させ、この溶液を分液漏斗内に入れた。相を分離し、水相を3回の25mLずつの酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、1M 水酸化ナトリウム(35mL)、次にブライン(21.5mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過し、回転蒸発で濃縮して、粗生成物を赤褐色の油として得た。この油を少量のヘキサンに溶解し、330g Graceカラム、および2カラム体積に対しヘキサン中0〜5%ジクロロメタン、生成物が溶出するまでヘキサン中5%ジクロロメタンに維持、という勾配を用いる、カラムクロマトグラフィで精製した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、生成物を無色の油として得た。微量のヘキサンを除去するため、この油をジクロロメタンに溶解し、回転蒸発で濃縮して、無色の油を得た(2回繰り返した)。この油を高真空下で乾燥して、3.1112g(71.9%)の生成物を霞んだ白色の固体を得た。
【0201】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.29 (ddd, J = 7.7, 3.1, 0.8 Hz, 2H), 6.85 (ddd, J = 8.8, 3.1, 0.9 Hz, 2H), 3.86 (s, 4H), 2.32 (s, 6H), 1.21 (t, J = 7.9 Hz, 6H), 1.10 - 0.99 (m, 4H)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.50 (t, J = 8.1 Hz)。
【0202】
【化43】
【0203】
2’,2’’’−(((ジエチルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−5’−フルオロ−3’−メチル−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−オール)の調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、2枚の隔膜、冷却器および窒素ガス注入口を取り付けた。このフラスコに、2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール(7.4057g、10.674mmol)、水(33mL)中の水酸化ナトリウム(1.3599g、33.998mmol)の溶液、テトラヒドロフラン(165mL)、およびジエチルビス((4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)メチル)シラン(2.9865g、4.846mmol)を充填した。この溶液を撹拌し、窒素でおよそ45分間パージし、次にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4079g、0.3529mmol)を加えた。この混合物を60℃で23時間加熱還流し、完了についてHPLCで解析した。24時間後、反応物を室温まで放冷した。有機相を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過した。固体をジクロロメタンでリンスした。濾液を回転蒸発で濃縮して、粘着性の金橙色の固体を未精製保護配位子(10.9973g)として得た。この配位子をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを加えた。このスラリーを回転蒸発で濃縮して、シリカゲルおよび配位子の乾燥粉状混合物を得た。この粉状混合物をイスコ社製CombiFlashシステムに充填し、330g Graceカラム、および6カラム体積(CV)に対しヘキサン中30%クロロホルム、3CVかけてヘキサン中50%クロロホルムに増加、その後生成物が溶出するまでヘキサン中50%クロロホルムに維持、という勾配を用いて、実行した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、白色結晶性固体(6.4445g)を得た。この固体をテトラヒドロフラン(33mL)およびメタノール(33mL)の混合物に溶解した後、60℃に加熱した。この溶液に、パラ−トルエンスルホン酸一水和物(0.1858g、0.9767mmol)を加えた。反応物を60℃で一晩撹拌し、室温まで放冷した。混合物を回転蒸発で濃縮して、未精製の淡黄色結晶性固体(5.9845g)を得た。この固体をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを加えた。このスラリーを回転蒸発で濃縮して、シリカゲルおよび配位子の乾燥粉状混合物を得た。この粉状混合物をイスコ社製CombiFlashシステムに充填し、330g Graceカラム、および生成物が溶出するまでヘプタン中2%酢酸エチルという勾配を用いて実行した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、黄色の結晶性固体を得た。微量のヘプタンを除去するため、固体をジクロロメタンに溶解し、回転蒸発で濃縮して、黄色の結晶性固体を得た(2回繰り返した)。この固体を高真空下で乾燥して、3.9614g(61.6%)の黄色の結晶性固体を得た。
【0204】
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 7.99 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 7.47 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.30 (dd, J = 8.2, 1.6 Hz, 4H), 7.15 (ブロード s, 4H), 6.94 (dd, J = 8.9, 3.1 Hz, 2H), 6.87 (dd, J = 8.6, 3.2 Hz, 2H), 6.48 (ブロード s, 2H), 3.45 (s, 4H), 2.08 (s, 6H), 1.73 (s, 4H), 1.39 (s, 12H), 1.29 (s, 36H), 0.79 (s, 18H), 0.35 (ブロード s, 10H)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.32 - −119.14 (ブロード s)。
【0205】
【化44】
【0206】
プロ触媒5の調製
窒素雰囲気下、グローブボックス内で反応を開始した。広口瓶に、HfCl
4(0.1258g、0.3928mmol)およびトルエン(24mL)を充填した。このスラリーをグローブボックスフリーザー内で30分間かけて−25℃に冷却した。撹拌中の冷却スラリーに、ジエチルエーテル(0.55mL、1.65mmol)中3.0M臭化メチルマグネシウムを加えた。混合物を2分間強く撹拌した。固体は溶解したが、反応液は濁っており帯黄色であった。この混合物に、固体としての配位子(0.5023g、0.3783mmol)を加えた。固体を含有するフラスコをトルエン(3.0mL)でリンスした。リンス溶媒を反応混合物に加えた。反応混合物を室温で5.5時間撹拌した。黄色の混合物に、ヘキサン(12mL)を加え、懸濁液を濾過した。透明な黄色溶液を真空下で一晩濃縮して、0.412g(71.0%)の生成物を黄色固体として得た。
【0207】
1H NMR (400 MHz, C
6D
6) δ 8.19 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 8.10 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.76 (d, J = 2.5 Hz, 2H), 7.74 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.49 (dd, J = 8.2, 1.6 Hz, 2H), 7.41 - 7.33 (m, 4H), 6.93 (dd, J = 8.9, 3.2 Hz, 2H), 6.14 (dd, J = 8.2, 3.3 Hz, 2H), 3.91 (d, J = 14.1 Hz, 2H), 3.47 (d, J = 14.1 Hz, 2H), 1.62 (d, J = 14.6 Hz, 2H), 1.57 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 1.53 (s, 18H), 1.26 (d, J = 2.5 Hz, 30H), 1.13 (s, 6H), 0.82 (s, 18H), 0.56 (t, J = 8.0 Hz, 6H), 0.26 - 0.06 (m, 4H), −0.72 (s, 6H)。
19F NMR (376 MHz, C
6D
6) δ −116.35 (t, J = 8.3 Hz)。
【0208】
【化45】
【0209】
(クロロメチル)ジエチル((4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)メチル)シランの調製
三つ口丸底フラスコに、2枚の隔膜および窒素ガス注入口を取り付けた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、水素化ナトリウム(95%、0.2496g、10.400mmol)および無水N,N−ジメチルホルムアミド(10.0mL)をシリンジで充填した。このスラリーを氷水浴で0℃に冷却した。スラリーに、無水N,N−ジメチルホルムアミド(10.0mL)中の4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノール(2.4753g、9.822mmol)の溶液を、反応(水素発生)の制御を維持する速度で、シリンジで加えた。氷水浴を取り除き、得られた褐色溶液を室温で30分間撹拌した。別の三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、2枚の隔膜、添加漏斗、および窒素ガス注入口を取り付けた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、無水N,N−ジメチルホルムアミド(12.5mL)中のビス(クロロメチル)ジエチルシラン(5.4571g、29.471mmol)の溶液をシリンジで充填した。無水N,N−ジメチルホルムアミド中の4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノールおよび水素化ナトリウムの反応から得られた先のフェノキシド溶液を、添加漏斗にシリンジで添加した。この溶液を、室温で、無水N,N−ジメチルホルムアミド中のビス(クロロメチル)ジエチルシランの溶液に滴加した。1時間後、反応の完了を決定した。フラスコの底の固体を減圧濾過で濾過し、2回の5mLずつの酢酸エチルで洗浄した。濾液を丸底フラスコに移し、0℃に冷却した(氷水浴)。この冷却溶液に、1M HCl水溶液(16.5mL)を添加漏斗でゆっくりと加えた(反応の制御を維持する速度で)。反応物を回転蒸発で濃縮して(浴槽温度=60〜75℃)、可能な限り多くのN,N−ジメチルホルムアミドを除去した。残った溶液を水(33mL)に溶解させ、分液漏斗に移した後、酢酸エチル(33mL)を加えた。相を分離した。水相を酢酸エチル(4×33mL)で抽出した。合わせた有機相を水(33mL)で洗浄した。小さなエマルジョンが2相間に形成された。大量の(a squirt of)水を加え、漏斗を渦巻かせた(エマルジョンが通過するまで繰り返した)。相を分離し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過し、回転蒸発で濃縮して、未精製の赤褐色の油を得た。この油を、330g Graceカラム、および生成物が溶出するまで100%ヘキサンという勾配を用いるカラムクロマトグラフィで精製した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、生成物を淡黄色の油として得た。微量の酢酸エチルおよびヘキサンを除去するため、この油をジクロロメタンに溶解し、回転蒸発で濃縮して、淡黄色の油を得た(2回繰り返した)。この油を高真空下で乾燥して、2.0211g(51.4%)の生成物を淡黄色の油として得た。
【0210】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.29 (ddq, J = 7.5, 3.1, 0.6 Hz, 1H), 6.85 (ddq, J = 8.7, 3.1, 0.7 Hz, 1H), 3.74 (s, 2H), 3.09 (s, 2H), 2.31 (t, J = 0.6 Hz, 3H), 1.14 - 1.08 (m, 6H), 0.94 - 0.86 (m, 4H)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.34 (t, J = 8.0 Hz)。
【0211】
【化46】
【0212】
ジエチル((4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)メチル)((4−フルオロ−2−ヨードフェノキシ)メチル)シランの調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、2枚の隔膜、冷却器、および窒素ガス注入口を取り付けた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、水素化ナトリウム(0.2750g、11.458mmol)および無水N,N−ジメチルホルムアミド(10mL)を充填した。この溶液を0℃に冷却した(氷水浴)。無水N,N−ジメチルホルムアミド(10mL)中の4−フルオロ−2−ヨードフェノール(2.4893g、10.459mmol)の溶液を、反応(水素発生)の制御を維持するように、シリンジでゆっくりと添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。無水N,N−ジメチルホルムアミド(4.5mL)中の(クロロメチル)ジエチル((4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)メチル)シラン(3.4893g、8.707mmol)の溶液を、室温で、シリンジでゆっくりと添加した。得られた褐色溶液を60℃で撹拌した。18.5時間後、反応物を室温まで放冷した。反応物をさらに0℃に冷却し(氷水浴)、水(25mL)をゆっくりと加えた(反応の制御を維持する速度で)。添加中に固体が形成され、添加後に残存した。混合物を1口丸底フラスコに移した。固体をジクロロメタンに溶解し、このフラスコに移した。この混合物を回転蒸発で濃縮し(浴槽温度=60〜75℃)、可能な限り多くのN,N−ジメチルホルムアミドを除去した。残った溶液を水(30mL)に溶解させ、分液漏斗に移した後、酢酸エチル(30mL)を加えた。相を分離した。水相を4回の30mLずつの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を2回の21mLずつの1M NaOH水溶液で洗浄した。有機相をブライン(25mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過し、回転蒸発で濃縮して、未精製のオレンジ色の油(4.7914g)を得た。この未精製油を、330g Graceカラム、および1カラム体積(CV)に対し100%ヘキサン、1CVかけてヘキサン中5%酢酸エチルに増加、生成物が溶出するまでヘキサン中5%酢酸エチルに維持、という勾配を用いる、カラムクロマトグラフィで精製した。純粋画分を合わせ、回転蒸発で濃縮して、生成物を黄色の油として得た。微量の酢酸エチルおよびヘキサンを除去するため、この油をジクロロメタンに溶解し、回転蒸発で濃縮して、黄色の油を得た(2回繰り返した)。この油を高真空下で乾燥し、3.7015g(70.6%)の生成物を黄色の油として得た。
【0213】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.48 (dd, J = 7.6, 3.0 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 7.6, 3.0, 0.7 Hz, 1H), 7.03 (ddd, J = 9.1, 7.8, 3.0 Hz, 1H), 6.88 (dd, J = 9.1, 4.6 Hz, 1H), 6.83 (ddd, J = 8.7, 3.1, 0.8 Hz, 1H) 3.91 (s, 2H), 3.88 (s, 2H), 2.27 (t, J = 0.7 Hz, 3H), 1.21 - 1.14 (m, 6H), 1.03 - 0.95 (m, 4H)。
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.35 (dd, J = 8.4, 7.7 Hz), −123.07 (td, J = 7.7, 4.6 Hz)。
【0214】
【化47】
【0215】
3−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−2’−(((((3’−(2,7−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール−9−イル)−5−フルオロ−2’−ヒドロキシ−5’−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)オキシ)メチル)ジエチルシリル)メトキシ)−5’−フルオロ−3’−メチル−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−2−オールの調製
三つ口丸底フラスコに、磁性撹拌子、2枚の隔膜、冷却器および窒素ガス注入口を取り付けた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、2,7−ジ−tert−ブチル−9−(2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール(5.2419g、7.555mmol)、1,2−ジメトキシエタン(85mL) 水(25mL)中の水酸化ナトリウム(0.9106g、22.765mmol)の溶液、テトラヒドロフラン(30mL)、およびジエチル((4−フルオロ−2−ヨード−6−メチルフェノキシ)メチル)((4−フルオロ−2−ヨードフェノキシ)メチル)シラン(1.9770g、3.283mmol)を充填した。この溶液を撹拌し、およそ15分間窒素でパージした後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.2755g、0.2384mmol)を加えた。この混合物を85℃で加熱還流した。20時間後、反応物を室温まで放冷した。混合物を相分離のために分液漏斗に移した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濾過で濾過した。固体をジクロロメタン(2×20mL)でリンスした。濾液を回転蒸発で濃縮して、粘着性の金橙色固体を未精製保護配位子(15.6875g)として得た。この未精製保護配位子をテトラヒドロフラン(65mL)およびメタノール(65mL)の混合物に溶解し、その後60℃に加熱した。パラ−トルエンスルホン酸一水和物(0.2492g、1.310mmol)を溶液に加えた。反応物を60℃で一晩撹拌し、TLCで完了を確認した。配位子を濃縮して、粘着性の金橙色固体(15.3856g)を得た。配位子をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを加えた。このスラリーを回転蒸発で濃縮して、シリカゲルおよび配位子の乾燥粉状混合物を得た。この粉状混合物を2本の別々のカラムに分割した。両方のカラムをイスコ社製CombiFlashシステムに載せ、330gGraceカラムを用いて実行した。第一のカラムは、生成物が溶出するまでヘキサン中30%ジクロロメタンという勾配を用いて実行した。画分をTLCで解析し、生成物のみを含有する全ての画分を、回転蒸発で濃縮して、オフホワイト色の結晶性固体を得た。この固体を高真空下で乾燥して、1.4gを得た。第二のカラムは、2カラム体積に対しヘキサン中30%ジクロロメタン、その後生成物が溶出するまでヘキサン中35%ジクロロメタンに増加、という勾配を用いて実行した。画分をTLCで解析したところ、配位子と他の不純物との組み合わせを示した。生成物の大部分を含有する全ての画分を回転蒸発で濃縮して、2.1863gのオフホワイト色の結晶性固体を得た。この固体をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを加えた。このスラリーを回転蒸発で濃縮して、シリカゲルおよび配位子の乾燥粉状混合物を得た。この粉状混合物を、イスコ社製CombiFlashシステムに充填し、330g Graceカラム、およびヘキサン中30%ジクロロメタン、その後生成物が溶出するまでヘキサン中35%ジクロロメタンに増加、という勾配を用いて、実行した。配位子を含有する画分を回転蒸発で濃縮して、オフホワイト色の結晶性固体を得た。この固体を高真空下で乾燥して、0.4672gのオフホワイト色の結晶性固体を得た。全収率は、オフホワイト色の結晶性固体としての1.8672g(23.1%)の生成物であった。
【0216】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.05 (dd, J = 8.2, 0.6 Hz, 2H), 7.99 (dd, J = 8.3, 0.7 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.32 −7.28 (m, 4H), 7.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.00 (dd, J = 8.9, 3.2 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 9.0, 3.2 Hz, 1H), 6.82 (dd, J = 8.7, 3.0 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 6.65 (ddd, J = 8.9, 7.8, 3.1 Hz, 1H), 6.18 (dd, J = 9.1, 4.5 Hz, 1H), 5.64 (s, 1H), 3.60 - 3.47 (ブロード m, 2H), 3.38 (s, 2H), 1.90 (s, 3H), 1.74 (ブロード s, 2H), 1.69 (s, 2H), 1.40 (s, 6H), 1.35 - 1.33 (m, 6H), 1.30 (s, 18H), 1.28 (s, 18H), 0.79 (s, 9H), 0.77 (s, 9H), 0.43 (t, J = 7.7 Hz, 6H), 0.36 - 0.31 (ブロード m, 4H).
19F NMR (376 MHz, CDCl
3) δ −118.46 (t, J = 8.9 Hz), −123.65 (m)。
【0217】
【化48】
【0218】
プロ触媒6の調製
窒素雰囲気下、グローブボックス内で反応を開始した。広口瓶に、HfCl
4(0.0489g、0.1522mmol)およびトルエン(12mL)を充填した。このスラリーを、グローブボックスフリーザー内で、−25℃で30分間かけて−25℃に冷却した。撹拌中の冷却スラリーに、冷却したジエチルエーテル(0.20mL、0.60mmol)中3.0M臭化メチルマグネシウムを加えた。この混合物を2分間強く撹拌した。固体が溶解し、反応液は濁った淡黄色になった。この混合物に、反応の制御を維持する速度で、固体としての配位子(0.2000g、0.1522mmol)を加えた。固体を含有するフラスコをトルエン(約2mL)でリンスした。リンス溶媒を反応混合物に添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。この褐色混合物に、ヘキサン(12mL)を加えた。この混合物を濾過した。濾過物を高真空下で濃縮して、0.2341g(101.1%)の所望の生成物を得た。質量の過多は、固体中にトラップされた残留トルエンによるものであった。
【0219】
1H NMR (400 MHz, C
6D
6) δ 8.19 (dd, J = 8.2, 0.5 fHz, 1H), 8.18 - 8.15 (m, 2H), 8.04 (dd, J = 8.3, 0.6 Hz, 1H), 7.82 (ddd, J = 2.4, 1.7, 0.6 Hz, 2H), 7.76 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.72 (dd, J = 1.7, 0.6 Hz, 1H), 7.66 (dd, J = 1.8, 0.6 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.47 - 7.44 (2 m, 2H), 7.41 (ddd, J = 8.3, 6.7, 1.7 Hz, 2H), 7.35 (dd, J = 8.3, 1.7 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.99 - 6.95 (2 m, 2H), 6.55 (ddd, J = 9.1, 7.3, 3.2 Hz, 1H), 6.11 (ddd, J = 8.4, 3.2, 0.7 Hz, 1H), 5.44 (dd, J = 9.1, 4.8 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 4.37 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.41 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 3.28 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 1.60 (s, 2H), 1.54 (s, 2H), 1.45 (s, 8H), 1.41 (s, 8H), 1.33 (d, J = 1.1 Hz, 4H), 1.28 (d, J = 0.4 Hz, 17H), 1.23 (s, 3H), 1.19 (s, 3H), 0.92 (s, 0H), 0.83 (s, 9H), 0.82 (s, 8H), 0.54 (td, J = 7.9, 2.7 Hz, 6H), 0.25 - 0.09 (m, 3H), 0.10 - −0.06 (m, 1H), −0.58 (d, J = 0.5 Hz, 3H), −1.07 (d, J = 0.5 Hz, 3H)。
19F NMR (376 MHz, C
6D
6) δ −116.21(m), −116.30 (t, J = 8.8 Hz)。
【0220】
単一反応器内でのエチレン系ポリマーの調製
全ての原料(エチレン、1−オクテン)およびプロセス溶媒(Isopar Eの商標名でエクソンモービル社から市販されている沸点範囲の狭い高純度イソパラフィン溶媒)は、反応環境に導入される前に、モレキュラーシーブで精製される。水素は高純度グレードとして加圧シリンダー内に供給され、さらなる精製は行われない。反応器のモノマー供給(エチレン)流は、機械式コンプレッサにより、反応圧力を超えて525psigに加圧される。溶媒およびコモノマー(1−オクテン)供給は、機械式容積移送式ポンプにより、反応圧力を超えて525psigに加圧される。個々の触媒成分は、精製された溶媒(Isopar E)を用いて特定の成分濃度に手作業でバッチ希釈され、反応圧力を超えて525psigに加圧される。全ての反応供給流は、質量流量計で測定され、コンピュータにより自動化されたバルブ制御システムで独立に制御される。
【0221】
連続溶液重合反応器は、液体で満たされた、非断熱型の、等温の、循環する、独立に制御されたループから成る。反応器は、全ての新規の溶媒、モノマー、コモノマー、水素、および触媒成分の供給のための、独立した制御を有する。溶媒、モノマー、コモノマーおよび水素の組み合わせの反応器への供給は、供給流を熱交換器に通過させることにより、5℃〜50℃のいずれかの温度、典型的には25℃に温度制御される。重合反応器への新規のコモノマー供給は、溶媒供給と共に供給される。各重合反応器への総新規供給は、各注入位置間でおよそ等しい反応器体積で、2つの位置で、反応器中に注入される。新規供給は、典型的には、各インジェクターが全新規供給質量流の半分を受け取るように制御される。触媒成分は、特別に設計された注入針を通じて重合反応器中に注入され、反応器より前の接触時間は無しで、それぞれ別々に反応器内の同一相対位置に注入される。主要な触媒成分の供給は、反応器モノマー濃度を特定の目標値に維持するように、コンピュータ制御される。助触媒成分は、主要な触媒成分に対して算出された特定のモル比に基づいて供給される。各々の新規注入位置(供給または触媒のいずれか)の直後に、供給流は、Kenics静的混合要素を用いて、循環する重合反応器の内容物と混合される。各反応器の内容物は、反応熱の大部分の除去を担い、等温反応環境の特定温度への維持を担う冷媒側の温度を有する、熱交換器を通じて、連続的に循環される。各反応器ループ中の循環は、スクリューポンプによりもたらされる。
【0222】
第一の重合反応器(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶解ポリマーを含有)からの流出物は、第一の反応器ループを出て、制御バルブ(第一反応器の圧力を特定の目標値に維持することを担う)を通過する。この流れが反応器を出る際、水と接触されて反応が停止される。さらに、抗酸化剤等の種々の添加剤をこの時点で添加することができる。その後、この流れは別の一連のKenics静的混合要素を通過して、触媒失活剤(catalyst kill)および添加剤を均一に分散させる。
【0223】
添加剤の添加後、前記流出液(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶解ポリマーを含有)は、熱交換器を通過し、その他のより低い沸点の反応成分からの前記ポリマーの分離に備えて、前記流れの温度を上昇させる。次に、この流れは、前記ポリマーが溶媒、水素、および未反応のモノマーおよびコモノマーから回収される、2段階の分離および脱揮発(devolatization)系に進入する。再循環された流れは、反応器に再度進入する前に精製される。分離および脱揮発された(devolatized)ポリマー溶融物は、水中ペレット化用に特別に設計されたダイを通じてポンプにより送られ、均一の固体ペレットに切断され、乾燥され、ホッパー中に移される。最初のポリマー特性を確認した後、前記固体ポリマーペレットは貯蔵用の箱の中に手動で置かれる。それぞれの箱は、典型的には、約1200ポンドのポリマーペレットを収容する。
【0224】
脱揮発段階で取り除かれた非ポリマー部分は、前記系から回収されたエチレンの大部分を分離する種々の工程段階を経て、ベント分解ユニット(vent destruction unit)に送り出される(製造ユニットで再循環される)。溶媒の大部分は、精製床を通過した後に、再循環されて反応器に戻される。この溶媒は、未反応のコモノマーをその中になお含むことができ、反応器に再び入る前に新規コモノマーが追加される。コモノマーの追加は、精製物密度制御法の不可欠な部分である。この再循環溶媒は、いくらかの水素をなお含むことができ、その後に、ポリマー分子量の目標値を達成するために、新規の水素が追加される。非常に少量の溶媒が、触媒流中の溶剤担体および商業用等級コモノマーの一部である少量の溶媒に起因する、副生成物として、系から離れる。
【0225】
比較PE−A、比較PE−B、比較PE−C、比較PE−D、発明PE−1、発明PE−2、および発明PE−3に関する、上記の単一反応器内の重合条件が、表1に報告される。比較PE−A、比較PE−B、比較PE−C、比較PE−D、発明PE−1、発明PE−2、および発明PE−3の特性を試験し、表1に報告した。
【0226】
【表1】
【0227】
【化49】
【0228】
二重反応器内でのエチレン系ポリマーの調製
全ての原料(エチレン、1−オクテン)およびプロセス溶媒(Isopar Eの商標名でエクソンモービル社から市販されている沸点範囲の狭い高純度イソパラフィン溶媒)は、反応環境に導入される前に、モレキュラーシーブで精製される。水素は高純度グレードとして加圧シリンダー内に供給され、さらなる精製は行われない。反応器のモノマー供給(エチレン)流は、機械式コンプレッサにより、反応圧力を超える圧力、およそ750psigに加圧される。溶媒およびコモノマー(1−オクテン)供給は、機械式容積移送式ポンプにより、反応圧力を超える圧力、およそ750psigに加圧される。個々の触媒成分は、精製された溶媒(Isopar E)を用いて特定の成分濃度に手作業でバッチ希釈され、反応圧力を超える圧力、およそ750psigに加圧される。全ての反応供給流は、質量流量計で測定され、コンピュータにより自動化されたバルブ制御システムで独立に制御される。
【0229】
本発明の連続溶液重合反応器は、直列配置で作動する、2つの、液体で満たされた、非断熱型の、等温の、循環する、独立に制御されたループから成る。各反応器は、全ての新規の溶媒、モノマー、コモノマー、水素、および触媒成分の供給のための、独立した制御を有する。溶媒、モノマー、コモノマーおよび水素の組み合わせの各反応器への供給は、独立して、供給流を熱交換器に通過させることにより、5℃〜50℃のいずれかの温度、典型的には40℃に温度制御される。重合反応器への新規コモノマーの供給は、3つの選択肢、つまり第1の反応器、第2の反応器、または共通溶媒のうちの1つへコモノマーが添加されるように手動で調整され、次いで、溶媒供給分割に応じて両方の反応器に分割され得る。各重合反応器への総新規供給は、各注入位置間でおよそ等しい反応器体積で、1つの反応器あたり2つの位置で、反応器中に注入される。新規供給は、典型的には、各インジェクターが全新規供給質量流の半分を受け取るように制御される。触媒成分は、特別に設計された注入針を通じて重合反応器中に注入され、反応器より前の接触時間は無しで、それぞれ別々に反応器内の同一相対位置に注入される。主要な触媒成分の供給は、反応器モノマー濃度を特定の目標値に維持するように、コンピュータ制御される。助触媒成分は、主要な触媒成分に対して算出された特定のモル比に基づいて供給される。各々の新規注入位置(供給または触媒のいずれか)の直後に、供給流は、Kenics静的混合要素を用いて、循環する重合反応器の内容物と混合される。各反応器の内容物は、反応熱の大部分の除去を担い、等温反応環境の特定温度への維持を担う冷媒側の温度を有する、熱交換器を通じて、連続的に循環される。各反応器ループ中の循環は、スクリューポンプによりもたらされる。第一の重合反応器(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶解ポリマーを含有)からの流出物は、第一の反応器ループを出て、制御バルブ(第一反応器の圧力を特定の目標値に維持することを担う)を通過し、同様の設計の第二の重合反応器内に注入される。この流れが反応器を出る際、水と接触されて反応が停止される。さらに、抗酸化剤等の種々の添加剤をこの時点で添加することができる。その後、この流れは別の一連のKenics静的混合要素を通過して、触媒失活剤(catalyst kill)および添加剤を均一に分散させる。
【0230】
添加剤の添加後、前記流出液(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶解ポリマーを含有)は、熱交換器を通過し、その他のより低い沸点の反応成分からの前記ポリマーの分離に備えて、前記流れの温度を上昇させる。次に、この流れは、前記ポリマーが溶媒、水素、および未反応のモノマーおよびコモノマーから回収される、2段階の分離および脱揮発系に進入する。再循環された流れは、反応器に再度進入する前に精製される。分離および脱揮発されたポリマー溶融物は、水中ペレット化用に特別に設計されたダイを通じてポンプにより送られ、均一の固体ペレットに切断され、乾燥され、ホッパー中に移される。次に、ポリマー特性が確認される。
【0231】
脱揮発段階で取り除かれた非ポリマー部分は、前記系から回収されたエチレンの大部分を分離する装置の様々な部分を通過して、ベント分解ユニット(vent destruction unit)に送り出される(しかし、製造ユニットで再循環される)。溶媒の大部分は、精製床を通過した後に、再循環されて反応器に戻される。この溶媒は、未反応のコモノマーをその中になお含むことができ、反応器に再び入る前に新規コモノマーが追加される。コモノマーの追加は、精製物密度制御法の不可欠な部分である。この再循環溶媒は、いくらかの水素をなお含むことができ、その後に、ポリマー分子量の目標値を達成するために、新規の水素が追加される。非常に少量の溶媒が、触媒流中の溶剤担体および商業用等級コモノマーの一部である少量の溶媒に起因する、副生成物として、系から離れる。
【0232】
比較PE−E、比較PE−F、発明PE−4、および発明PE−5に関する、上記の二重反応器系内の重合条件が、表2および表3に報告される。比較PE−E、比較PE−F、発明PE−4、および発明PE−5の特性を試験し、表2および表3に報告した。
【0233】
【表2】
【0234】
【表3】
【0235】
2L回分反応器内でのエチレン系ポリマーの調製
重合反応を140℃、および190℃で実行した。2リットルのパール反応器(Parr reactor)を重合に用いた。全ての供給物は、反応器内への導入の前に、アルミナおよびQ−5(商標)触媒(エンゲルハード・ケミカルズ株式社(Engelhard Chemicals Inc.)から入手)のカラムに通した。プロ触媒および活性化剤溶液は、グローブボックス内で取り扱った。140℃で、撹拌された2リットル反応器に、約605gの混合アルカン溶媒および300gの1−オクテンコモノマーを充填した。反応器を重合温度に到達させつつ、O
2および水の追跡のための捕捉剤として、10μmolのMMAOを反応器に添加した。温度において一度(Once at temperature)、反応器を288psigのエチレンで飽和させた。190℃で、2リットル反応器に、約520gの混合アルカン溶媒および300gの1−オクテンコモノマーを充填した。反応器を重合温度に到達させつつ、O
2および水の追跡のための捕捉剤として、10μmolのMMAOを反応器に添加した。温度において一度(Once at temperature)、反応器を400psigのエチレンで飽和させた。プロ触媒および活性化剤を、トルエン中の希釈溶液として混合し、触媒添加槽に移し、反応器内に注入した。エチレンを必要に応じて添加しつつ、重合条件を10分間維持した。内部冷却コイルを介して、反応器から熱を継続的に取り除いた。得られた溶液を反応器から回収し、およそ67mgのヒンダードフェノール抗酸化剤(チバガイギー社(Ciba Geigy Corporation)製のIrganox(商標)1010)および133mgのリン安定剤(チバガイギー社製のIrgafos(商標)168)を含有する10mLのトルエン溶液を添加することによって安定化させた。重合の実行の間に、洗浄サイクルを実行し、その中で、850gの混合アルカンを反応器に添加し、反応器を160℃に加熱した。次に、新しい重合の実行を開始する直前に、反応器から加熱された溶媒を取り除き空にした。ポリマーを、140℃の最終設定値で温度勾配型真空オーブン内で約12時間乾燥することにより、回収した。
【0236】
回分反応器の実施例1〜12(BRE1〜12)は、表4および表5に報告された条件に従う上記方法により調製し、これらの特性についてBRE1〜12を試験した。それらの特性は、表4および表5に列挙される。
【0237】
【表4】
【0238】
【表5】
【0239】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
【0240】
密度
密度を測定するサンプルは、ASTM D−1928に従って調製する。測定は、ASTM D−792、方法Bを用いてサンプルのプレス成形の1時間以内に行う。
【0241】
メルトインデックス
メルトインデックス(I
2)は、ASTM−D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定し、10分あたりに溶出したグラム数で報告する。メルトフローレイト(I
10)は、ASTM−D 1238、条件190℃/10kgに従って測定し、10分あたりに溶出したグラム数で報告する。
【0242】
DSC結晶化度
示差走査熱量測定(DSC)を用いることで、広範囲の温度にわたってポリマーの溶融および結晶化挙動を測定することができる。例えば、RCS(冷凍冷却システム)およびオートサンプラーを装備したTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を実施する。試験中、50ml/分の窒素パージガス流を使用する。各試料を、約175℃で薄膜に溶融プレスし;次に、溶融した試料を室温(約25℃)に空冷する。3〜10mg、直径6mmの試料を、冷却したポリマーから抽出し、秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)の中に入れ、クリンプして閉じる。次に、分析を実施してその熱特性を決定する。
【0243】
試料の熱挙動は、試料温度を上下させて熱流対温度プロフィールを作り出すことにより測定される。まず、試料を180℃に急速加熱し、その熱履歴を除くために3分間等温に保持する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却し、−40℃で3分間等温に保持する。その後、試料を10℃/分の加熱速度で150℃に加熱する(これが「第2の加熱」勾配である)。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。冷却曲線は、結晶化の開始から−20℃までをベースライン終点に設定することにより分析される。加熱曲線は、−20℃から溶融の終わりまでをベースライン終点に設定することにより分析される。決定される値は、ピーク融解温度(Tm)、ピーク結晶化温度(Tc)、融解熱(Hf)(ジュール/グラム)、および適切な式を用いての試料の、例えば
図1に示される式1を用いてのエチレン/α−オレフィン共重合体の、算出された%結晶化度である。
【0244】
融解熱(Hf)およびピーク融解温度は、第2の加熱曲線から報告される。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から決定される。
【0245】
動的機械的分光法(DMS)周波数掃引
メルトレオロジー、定温周波数掃引は、25mm平行プレートを装備したTAインスツルメント社(TA Instruments)製Advanced Rheometric Expansion System(ARES)レオメーターを用い、窒素パージ下で実施した。周波数掃引は、2.0mmのギャップおよび10%の一定歪みで全ての試料について190℃で実施した。周波数間隔は、0.1〜100ラジアン/秒であった。応力応答を振幅および位相に関して分析し、それから、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、および動的溶融粘度(η
*)を算出した。
【0246】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
エチレン/α−オレフィン共重合体を、以下の手順に従って、GPCにより、それらの特性について試験した。GPCシステムは、オンボード示差屈折計(RI)を装備したウォーターズ社(Waters)(マサチューセッツ州ミルフォード)製150℃高温クロマトグラフ(他の適切な高温GPC装置には、ポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)(シュロップシャー、英国)製の210型および220型が含まれる)で構成される。
追加の検出器として、ポリマーChAR社(Polymer ChAR)(バレンシア、スペイン)製のIR4赤外線検出器、プレシジョン・ディテクターズ社(Precision Detector)(マサチューセッツ州アムハースト)製の2アングルレーザー光散乱検出器2040型、およびビスコテック社(Viscotek)(テキサス州ヒューストン)製の150R 4キャピラリ溶液粘度計を挙げることができる。最後の2つの独立した検出器および最初の検出器の少なくとも1つを有するGPCは、「3D−GPC」と称される場合があり、一方、用語「GPC」単独は従来のGPCを指す。計算を目的として、試料に応じて、15度角または90度角の光散乱検出器を使用する。データ収集は、Viscotek TriSECソフトウェアバージョン3および4チャンネルViscotek Data Manager DM400を使用して実施する。システムには、ポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)(英国、シュロップシャー)製のオンライン溶媒脱気装置も装備させる。適切な高温GPCカラム、例えば、4本の30cm長Shodex HT803 13ミクロンカラムまたは4本の20ミクロン混合孔径充填(mixed−pore−size packing)の30cmのPolymer Labsカラム(MixA LS、Polymer Labs)を使用することができる。試料カルーセル区画は140℃で作動させ、カラム区画は150℃で作動させる。試料は、50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー濃度に調製する。クロマトグラフ溶媒および試料調製溶媒は、200ppmのブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有する。両溶剤を窒素によりスパージングする。ポリエチレン試料を160℃で4時間穏やかに攪拌する。注入体積は、200マイクロリットルである。GPC全体の流量は1ml/分に設定する。
【0247】
GPCカラムセットは、21の狭い分子量分布のポリスチレン標準により、実施例を実行する前に較正する。標準の分子量(MW)は、580〜8,400,000グラム/モルの範囲であり、標準は6個の「カクテル」混合物中に含有される。各標準混合物は、個々の分子量の間が少なくとも10離れている。標準混合物は、ポリマー・ラボラトリーズ社(シュロップシャー、英国)から購入する。ポリスチレン標準は、1,000,000グラム/モル以上の分子量については50mLの溶媒中0.025gに、および1,000,000グラム/モル未満の分子量については50mlの溶媒中0.05gに、調製する。ポリスチレン標準は、30分間穏やかに攪拌しながら、80℃で溶解した。狭い標準混合物を、最初に、そして最も高い分子量成分が減少する順に実行し、分解を最小限にする。ポリスチレン標準のピーク分子量を、マーク‐フウィンク Kおよびポリスチレンおよびポリエチレンの以下に記載するa(αと称される場合もある)値を使用して、ポリエチレンMwに変換する。この手順の実証は、実施例の項を参照されたい。
【0248】
3D−GPCにより、絶対重量平均分子量(「Mw,
Abs」)および固有粘度も、先に記載した同一条件を使用して、適切な狭いポリエチレン標準から独立して得られる。これらの狭い直鎖ポリエチレン標準は、ポリマー・ラボラトリーズ社(シュロップシャー、英国;品番PL2650−0101および品番PL2650−0102)から得てもよい。マルチ検出器のオフセットを決定するための系統的なアプローチは、Balke, Mourey, et al.(Mourey and Balke, Chromatography Polym., 第12章, (1992)) (Balke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym., 第13章, (1992))により公開された方法と一致した方法で行い、Dow1683 広いポリスチレン(アメリカン・ポリマー・スタンダーズ社(American Polymer Standards Corp.);メンター、オハイオ州)またはその等価物から得られた三重の検出器記録(M
Wおよび固有粘度)の結果を、狭いポリスチレン標準較正曲線から得られた狭い標準カラム較正結果に適正化する。検出器容積のオフセット測定を構成する分子量データは、Zimm (Zimm, B.H., J. Chem. Phys., 16, 1099 (1948))およびKratochvil (Kratochvil, P., Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY (1987))により公開された方法と一致した方法で得られる。分子量の測定に使用される全注入濃度は、適切な直鎖ポリエチレンホモポリマー、またはポリエチレン標準の1つから導かれる、質量検出器面積および質量検出器定数から得られる。算出分子量は、記載したポリエチレン標準の一つまたは複数から導かれる光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数(dn/dc)を用いて得られる。一般的には、質量検出器応答および光散乱定数は、約50,000ダルトンを超える分子量を有する直鎖標準から測定されるべきである。粘度計較正は、製造者により記載された方法を使用して、または適切な直鎖標準、例えば、標準物質(Standard Reference Materials:SRM)1475a、1482a、1483または1484aの公開された値を使用して、行うことができる。クロマトグラフ濃度は、第2バイアル係数効果(2nd viral coefficient effect)(分子量に対する濃度効果)への対処を省くのに十分に低いと仮定される。
【0249】
3D−GPCによるg’
試料ポリマーの指数(g’)は、先ず、SRM1475aホモポリマーポリエチレン(または等価参照)を用いて、上記ゲル浸透クロマトグラフィー法に記載された光散乱、粘度、および濃度の検出器を較正することにより決定する。光散乱および粘度計の検出器オフセットは、前記較正に記載されるように、濃度検出器に対して決定する。ベースラインを光散乱、粘度計および濃度クロマトグラムから減算し、次いで、屈折率クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す、光散乱および粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持体積範囲の全ての積分を確実にするように、積分ウィンドを設定する。直鎖ホモポリマーポリエチレンを使用して、広い分子量ポリエチレン参照(例えばSRM1475a標準)を注入し、データファイルを算出し、光散乱検出器および粘度検出器からそれぞれ導かれる固有粘度(IV)および分子量(M
W)、並びに各クロマトグラフスライス(chromatographic slice)のRI検出器質量定数から決定される濃度を記録することにより、マーク‐フウィンク(MH)直線基準線を確立する。試料の分析のために、各クロマトグラフスライスに対する手順を繰返し、試料のマーク‐フウィンク線を得る。なお、いくつかの試料については、より低分子量、固有粘度および分子量データは、測定した分子量および固有粘度が、直鎖ホモポリマーGPC較正曲線に漸近的に近づくように外挿する必要がある場合がある。この目的のために、多くの高度に分枝したエチレン系ポリマー試料は、長鎖分枝指数(g’)算出を行う前に、短鎖分枝の影響を考慮するように、直線基準線を僅かにシフトさせることを必要とする。
【0250】
各分枝試料のクロマトグラフスライス(i)のg−プライム(g
i’)を算出し、
図2に示される式2に従って分子量(Mi)を測定し、ここで、ここで、計算には、直鎖参照試料における等価分子量MjでのIV
linear reference,jを利用する。言い換えれば、試料IVスライス(i)および参照IVスライス(j)は、同じ分子量を有する(M
i=M
j)。簡単にするため、IV
linear reference,jスライスは、参照マーク‐フウィンクプロットの5次多項式フィットから算出する。IV比、g
i’は、光散乱データ中の信号雑音比の限界のため、3,500を超える分子量でのみ得られる。各データスライス(i)での試料ポリマーの分枝の数(B
n)は、粘度遮蔽ε係数(viscosity shielding epsilon factor)を0.75と仮定して、
図3に示される式3を使用して決定することができる。
【0251】
最後に、全スライス(i)にわたるポリマー中の1000個の炭素当たりの平均LCBf量は、
図4に示される式4を使用して決定することができる。
【0252】
3D−GPCによるgpcBR分枝指数
3D−GPC構成では、ポリエチレンおよびポリスチレン標準を使用して、2種類のポリマー、ポリスチレンおよびポリエチレン、のそれぞれについて独立に、マーク‐フウィンク定数、Kおよびαを測定することができる。これらを用いることで、以下の方法の適用において、WilliamsおよびWardポリエチレン等価分子量を正確にすることができる。
【0253】
gpcBR分枝指数を、先に記載したように、先ず、光散乱、粘度および濃度の検出器を較正することによって決定する。次に、光散乱、粘度計および濃度のクロマトグラムからベースラインを差し引く。次に、屈折率クロマトグラムから検出可能なポリマーの存在を示す光散乱および粘度計のクロマトグラムにおける低分子量保持容積範囲の全ての積分を確実にするように、積分ウィンドを設定する。次に、直鎖ポリエチレン標準を使用して、先に記載したように、ポリエチレンおよびポリスチレンのマーク‐フウィンク定数を確立する。前記定数を得た後、その2つの値を使用して、それぞれ
図5および
図6の式5および式6に示されるように、溶出体積の関数として、ポリエチレン分子量およびポリエチレン固有粘度の、2つの直鎖参照の従来型較正(「conventional calibration:cc」)を作成する。
【0254】
gpcBR分枝指数は、長鎖分枝の特徴付けのためのロバスト法である。Yau, Wallace W., “Examples of Using 3D−GPC − TREF for Polyolefin Characterization”, Macromol. Symp., 2007, 257, 29−45を参照されたい。
【0255】
前記指数は、g’値の算出および分枝頻度計算で従来より使用されるスライスごとの3D−GPC計算を省き、代わりに全ポリマー検出器面積(whole polymer detector area)および面積ドット積(area dot product)を使う。3D−GPCデータから、ピーク面積法を使用して、光散乱(LS)検出器により、試料バルクMwを得ることができる。前記方法は、g’決定において求められるような、スライスごとに濃度検出器信号に対する光散乱検出器信号の比を出す手間が省かれる。
【0256】
図7に示される式12における面積計算は、全試料面積として、検出器雑音並びにベースラインおよび積分限界に対するGPC設定により生じる変動に対して感受性がかなり低いので、より精度の高いものを提供する。ピーク面積計算では、検出器容積オフセットに影響を及ぼされないことがより重要である。同様に、高精度試料固有粘度(IV)が、
図8に示される、式8に示される面積法によって得られ、式中、DP
iは、オンライン粘度計から直接モニタリングされる差圧信号を表す。
【0257】
gpcBR分枝指数を決定するために、試料ポリマーの光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定する。試料ポリマーの粘度検出器溶出面積を使用して、試料の固有粘度(IVまたは[η])を決定する。
【0258】
先ず、直鎖ポリエチレン標準試料(例えばSRM1475aまたは等価物)の分子量および固有粘度を、それぞれ、
図9および
図10に示される式9および式10に従って、溶出体積の関数として、分子量および固有粘度の両方に対する従来型較正を使用して算出する。
【0259】
図11に示される式11を使用して、gpcBR分枝指数を決定する。式中、[η]は測定固有粘度であり、[η]
ccは、従来型較正から得た固有粘度であり、M
wは、測定重量平均分子量であり、M
w、ccは、従来型較正の重量平均分子量である。
図7に示される式7を使用する光散乱(LS)によるMwは、一般的に、絶対Mwと称され;一方、従来のGPC分子量較正曲線を使用する
図9に示される式9からのMw,ccは、しばしば、ポリマー鎖Mwと称される。下付き文字「cc」の付いた全ての統計値は、これらの各溶出体積、前述の対応する従来型較正、および質量検出器応答から得られた濃度(C
i)を用いて決定する。下付き文字が付いていない数値は、質量検出器、LALLSおよび粘度計面積に基づいた測定値である。K
PEの値は、直鎖参照試料のgpcBR測定値がゼロになるまで反復して調整する。例えば、この特定の場合におけるgpcBRの決定のためのαおよびLogKの最終値は、それぞれ、ポリエチレンについては0.725および−3.355、ならびにポリスチレンについては0.722および−3.993である。
【0260】
K値およびα値を得た後、分枝試料を使用してこの手順を繰り返す。最良の「cc」較正値として最終マーク‐フウィンク定数を使用し、および
図7〜11の式7〜11をそれぞれ適用して、分枝試料を解析する。
【0261】
gpcBRの解釈は単純である。直鎖ポリマーについては、
図11に示される方程式11から算出したgpcBRは、LSおよび粘度法により測定した値が従来型較正標準に近いので、ゼロに近くなる。分枝ポリマーについては、測定ポリマーM
wが算出M
W,ccより大きく、算出IV
ccが測定ポリマー固有粘度(IV)より大きくなるので、gpcBRは、特に高レベルのLCBの場合、ゼロを超えるようになる。事実、ポリマー分枝の結果としての分子サイズ収縮作用のため、gpcBR値は、IV分率の変化を示す。0.5または2.0のgpcBR値は、等量の直鎖ポリマー分子に対し、それぞれ50%および200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮作用を意味するだろう。
【0262】
これら特定の実施例で、g’指数および分枝頻度計算値との比較においてgpcBRを使用する利点は、gpcBRのより高い精度によるものである。gpcBR指数決定で使用される全てのパラメータは、良好な精度で得られ、濃度検出器からの高分子量での低3D−GPC検出器応答により、有害な影響を受けない。また、検出器容積アラインメントにおける誤差も、gpcBR指数算出の精度には影響を及ぼさない。他の特定の例では、M
wモーメントを決定する他の方法が、前記技術より好ましい場合がある。
【0263】
CEF法
コモノマー分布解析は、結晶化溶出分画(CEF)(スペインのポリマーカー社(PolymerChar社))で実施する(B Monrabal et al, Macromol. Symp. 257, 71−79 (2007))。オルト−ジクロロベンゼン(ODCB)と600ppmの抗酸化剤ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を溶媒として使用する。試料調製は、(特に記載がない限り)オートサンプラーを用いて、160℃で2時間の振盪下で、4mg/mlで行われる。注入量は300μlである。CEFの温度プロフィールは、3℃/分で110℃から30℃までの結晶化、30℃で5分間の熱平衡、3℃/分で30℃から140℃までの溶出である。結晶化の間の流量は、0.052ml/分である。溶出の間の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0264】
CEFカラムは、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)により、1/8インチのステンレス管で125μm±6%のガラスビーズ(MO−SCIスペシャリティプロダクツ社(MO−SCI Specialty Products))を充填したものである。ガラスビーズは、ダウ・ケミカル社の求めによりMO−SCIスペシャリティ社が酸洗浄したものである。カラム容積は2.06mlである。カラム温度の較正は、ODCB中のNIST標準物質直鎖ポリエチレン1475a(1.0mg/ml)及びエイコサン(2mg/ml)の混合物を使用することにより実施する。温度は、NIST直鎖ポリエチレン1475aのピーク温度が101.0℃、エイコサンのピーク温度が30.0℃となるように、溶出加熱速度を調整することにより較正する。CEFカラム分解能は、NIST直鎖ポリエチレン1475a(1.0mg/ml)およびヘキサコンタン(フルカ社(Fluka)、純粋、≧97.0%、1mg/ml)の混合物を用いて算出する。ヘキサコンタンおよびNISTポリエチレン1475aのベースライン分離を達成する。67.0〜110.0℃のNIST1475aの面積に対するヘキサコンタン(35.0〜67.0℃)の面積は、50対50であり、35.0℃未満の可溶性画分の量は1.8重量%未満である。CEFカラム分解能は
図12に示される式12に定義され、ここでカラム分解能は6.0である。
【0265】
CDC法
コモノマー分布定数(CDC)は、CEFによるコモノマー分布プロフィールから算出される。CDCは、
図13の式13に示されるように、コモノマー分布指数をコモノマー分布形状係数で除算し、100を乗じたものとして定義される。
【0266】
コモノマー分布指数は、35.0から119.0℃までの、0.5のコモノマー含量中央値(C
median)から1.5のC
medianの範囲のコモノマー含量を有するポリマー鎖の全重量分率を表す。コモノマー分布形状係数は、コモノマー分布プロフィールの半値幅を、ピーク温度(Tp)から得られるコモノマー分布プロフィールの標準偏差で除算した比として定義される。
【0267】
CDCはCEFによってコモノマー分布プロフィールから算出され、CDCは、
図13の式13に示されるように、コモノマー分布指数をコモノマー分布形状係数で除算し100を乗じたものとして定義され、式中、コモノマー分布指数は、35.0から119.0℃までの、0.5のコモノマー含量中央値(C
median)から1.5のC
medianの範囲のコモノマー含量を有するポリマー鎖の全重量分率を表し、コモノマー分布形状係数は、コモノマー分布プロフィールの半値幅を、ピーク温度(Tp)から得られるコモノマー分布プロフィールの標準偏差で除算した比として定義される。
【0268】
CDCは、以下の段階に従って算出される:
(A)
図14に示される式14に従って、CEFから温度を0.200℃ずつ段階的に増加させて、35.0℃から119.0℃までの各々の温度(T)での重量分率(w
T(T))を得る段階;
(B)
図15に示される式15に従って、0.500の累積重量分率での温度中央値(T
median)を算出する段階;
(C)
図16に示される式16に従って、コモノマー含量較正曲線を用いることにより温度中央値(T
median)での対応するコモノマー含量中央値(モル%)(C
median)を算出する段階;
(D)既知のコモノマー含量を有する一連の標準物質を用いることによりコモノマー含量較正曲線を構築する段階、すなわち、狭いコモノマー分布(CEFにおいて35.0〜119.0℃の単峰性コモノマー分布)を有する、0.0モル%〜7.0モル%の範囲のコモノマー含量での重量平均Mwが35,000〜115,000(従来のGPCによって測定)の11個の標準物質を、CEFの実験の項に明記されるものと同じ実験条件でCEFによって分析する段階;
(E)各標準物質のピーク温度(Tp)及びそのコモノマー含量を使用することにより、コモノマー含量の較正値を算出する段階;
図16に示される式16に示されるように、較正値は各標準物質から算出され、式中、R
2は、相関定数である;
(F)コモノマー分布指数を、0.5
*C
median〜1.5
*C
medianの範囲のコモノマー含量を有する全重量分率から算出する段階、T
medianが98.0℃よりも高い場合には、コモノマー分布指数は0.95と定義される;
(G)35.0℃〜119.0℃の最大ピークに対して各々のデータポイントを探すことにより、CEFコモノマー分布プロフィールから最大ピーク高さを得る段階(2つのピークが同一の場合には、低い方の温度ピークが選択される);半値幅は、最大ピーク高さの半分での前部温度と後部温度の間の温度差として定義され、最大ピークの半分での前部温度は35.0℃から前方に探し、一方最大ピークの半分での後部温度は119.0℃から後方に探し、ピーク温度の差が各ピークの半値幅の合計の1.1倍以上である明確な二峰性分布の場合には、本発明のエチレン系ポリマー組成物の半値幅は、各ピークの半値幅の相加平均として算出される;
(H)
図17に示される式17に従って、温度の標準偏差(Stdev)を算出する段階。
【0269】
クリープゼロ剪断粘度測定法
ゼロ剪断粘度は、直径25mmの平行プレートを190℃で使用するAR−G2応力制御レオメーター(TAインスツルメント社;ニューキャッスル、デラウェア州)で実行されるクリープ試験によって得られる。レオメーター・オーブンは、取付具のゼロ点固定の前に少なくとも30分間、試験温度に設定する。試験温度で、圧縮成形した試料盤をプレートの間に挿入し、5分間かけて平衡状態にした。次に、上側のプレートを、所望の試験ギャップ(1.5mm)の50μm上まで下げる。不必要な材料を切り落とし、上側のプレートを所望のギャップまで下げる。測定は、窒素パージ下、5L/分の流量で行う。デフォルトクリープ時間は2時間に設定する。
【0270】
20Paの一定の低剪断応力を全ての試料に加えて、定常状態の剪断速度が確実にニュートン領域内にあるほど低いようにする。得られる定常状態の剪断速度は、この実験の試料に関して約10
−3s
−1である。定常状態は、log(J(t))対log(t)(ここで、J(t)はクリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間である)のプロットの最後の10%の時間窓内の全データを線形回帰することによって決定される。線形回帰の傾きが0.97よりも大きい場合、定常状態に達したと考えてクリープ試験を停止する。この実験の全ての例において、傾きは30分以内に基準を満たす。定常状態の剪断速度は、 対t(ここで、εは歪みである)のプロットの最後の10%の時間窓内の全データポイントの線形回帰の傾きから決定される。ゼロ剪断粘度は、加えられた応力の定常状態剪断速度に対する比から決定される。
【0271】
試料がクリープ試験の間に分解されるかどうかを判定するために、クリープ試験の前後に同じ試験片に対して0.1〜100rad/秒で小振幅振動剪断試験を実施する。2回の試験の複素粘度値を比較する。0.1rad/秒での粘度値の差が5%よりも大きい場合、試料はクリープ試験の間に分解したとみなされ、その結果は廃棄される。
【0272】
ゼロ剪断粘度比
ゼロ剪断粘度比(ZSVR)は、
図18に示される式18に示されるように、同等の重量平均分子量(M
w−gpc)での、本発明のポリマーのゼロ剪断粘度(ZSV)の、直鎖ポリエチレン材料のZSVに対する比として定義される。
【0273】
η
0値(Pa.s)は、上記の方法によって190℃でのクリープ試験から得られる。直鎖ポリエチレンη
0LのZSVは、M
wが臨界分子量M
cを超える場合、そのM
wに対してべき関数を有することが知られている。このような関係の一例は、ZSVR値を算出するための、
図19に示される式19に示されるように、Karjala et al. (Annual Technical Conference − Society of Plastics Engineers (2008), 66
th, 887−891)に記載されている。
図19に示される式19を参照して、M
w−gpc値(g/mol)を、すぐ下で定義されるGPC法を用いることにより、決定する。
【0274】
M
w−gpc決定
M
w−gpc値を得るために、クロマトグラフシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210またはPolymer Laboratories Model PL−220のいずれかから構成される。カラムおよびカルーセル区画を140℃で作動させる。3本のポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)製10μm Mixed−Bカラムを、1,2,4−トリクロロベンゼンの溶媒と共に使用する。試料を50mLの溶媒中0.1gのポリマーの濃度に調製する。試料調製に用いた溶媒には、200ppmの抗酸化ブチルヒドロキシトルエン(BHT)が含有される。試料を、160℃で4時間軽く撹拌することにより調製した。使用した注入体積は、100マイクロリットルであり、流量は1.0mL/分である。GPCカラムセットの較正は、ポリマー・ラボラトリーズ社から購入した21種の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行う。ポリスチレン標準のピーク分子量を、
図20に示される式20を用いて、ポリエチレン分子量に変換する。
【0275】
図20に示される式20を参照して、Mは分子量であり、Aは0.4316の値を有し、Bは1.0と等しい。溶出体積の関数として対数分子量較正を構築するために、三次多項式を決定する。ポリエチレン等価分子量の算出は、ビスコテック社(Viscotek)のTriSECソフトウェア(バージョン3.0)を用いて行う。重量−平均分子量M
wの精度は2.6%未満において優れている。
【0276】
ポリマーの特徴付け
ポリマーの融解温度(T
m)およびガラス転移温度(T
g)を、示差走査熱量測定(Q2000 DSC、TAインスツルメンツ株式社)によって測定した。まず試料を、「ジャンプ・トゥ(Jump To)」特性を利用して、室温から200℃に加熱した。この温度に4分間固定した後、試料を−90℃に10℃/分で冷却し、4分間固定し、その後、200℃に再度加熱した。分子量分布(Mw、Mn)の情報を、特注のダウ社製Robotic−Assisted Dilution High−Temperature Gel Permeation Chromatographer(RAD−GPC)での解析により決定した。ポリマー試料を、160℃で90分間かけて、5〜7mg/mLの濃度に、栓をしたバイアル中で300ppmのBHTによって安定化させた1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中に、撹拌しながら、溶解させた。次にそれらを1mg/mLに希釈し、その後すぐに、400μL分量の試料を注入した。GPCでは、150℃、2.0mL/分の流量で、2本の(2)ポリマーLabs社製PLゲル10μm MIXED−Bカラム(300mm×10mm)が使用された。試料検出は、濃縮モードのPolyChar IR4検出器を用いて行った。狭いポリスチレン(PS)標準の従来型較正を利用し、この温度でのTCB中のPSおよびPEの既知のマーク‐フウィンク係数を用いて、ホモ−ポリエチレン(PE)に対して見掛けの単位を調整した。1−オクテンの取り込みを決定するため、ポリマー試料を、1,2,4−トリクロロベンゼン中に、160℃で1時間かけて、振盪させながら、30mg/mLの濃度に溶解させた。100μL分量の各ポリマー/TCB溶液を、窒素不活性化下、160℃で、特注のシリコンウエハー上の個々のセル中に入れた。ウエハーを45分間160℃に固定し、その後、熱から取り出し、室温まで放冷した。次に、Nicolet Nexus 670 FT−IR ESP赤外分光計を用いてウエハーを解析した。CH
3面積(1382.7〜1373.5波数)のCH
2面積(1525〜1400波数)に対する比をとり、エチレン−co−1−オクテンポリマー標準のNMR解析を通じて作成された検量線に対して標準化することにより、各試料中のMol%1−オクテンを決定した。
【0277】
本発明は、その精神および本質的な特性から逸脱することなく他の形態に具体化されてもよく、従って、参照は、上記明細書にではなく、本発明の範囲を示している添付の特許請求の範囲になされるべきである。