特許第6348521号(P6348521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348521細胞の無タンパク質かつ無血清の培養のための培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348521
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】細胞の無タンパク質かつ無血清の培養のための培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20180618BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20180618BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20180618BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C12N5/10
   C12P21/02 C
   C12N1/00 F
   C12M1/00 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-4545(P2016-4545)
(22)【出願日】2016年1月13日
(62)【分割の表示】特願2011-18089(P2011-18089)の分割
【原出願日】2000年9月27日
(65)【公開番号】特開2016-127839(P2016-127839A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】A 1659/99
(32)【優先日】1999年9月28日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515351758
【氏名又は名称】バクスアルタ ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】315010787
【氏名又は名称】バクスアルタ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】マンフレッド・ライター
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ムント
(72)【発明者】
【氏名】フリードリッヒ・ドルナー
(72)【発明者】
【氏名】レオポルト・グリルベルガー
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥーア・ミッテラー
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/008934(WO,A1)
【文献】 国際公開第98/015614(WO,A1)
【文献】 特開昭62−289181(JP,A)
【文献】 HyPep 1510 (IPL:5Z10493),Quest International Product Information[online],1999年4月18日,2015年 6月25日,URL,http://web.archive.org/web/19990418041826/http://www.sheffield-products.com/products/5z10493.htm
【文献】 Cytotechnology(1999),Vol.30,No.1-3,p.191-201,1999年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12P 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を発現させる哺乳動物細胞の培養からの該タンパク質の産生のための無動物タンパク質かつ無血清の培地であって、0.5−50g/Lのダイズ加水分解産物を含み、該ダイズ加水分解産物のうちの少なくとも40%が500ダルトン以下の分子量を有し、1〜100g/Lの合成最少培地、0.05−1g/Lのグルタミン、0.0005−0.05g/Lのアスコルビン酸、0.1−10g/LのNaHCO3、0.0005−0.05g/Lのエタノールアミンおよび1−15μg/lの亜セレン酸ナトリウムを有し、ダイズ加水分解産物が培地の総乾燥重量ベースで10重量%を超える量で含まれる、培地。
【請求項2】
限外濾過されたダイズ加水分解産物を含む、請求項1に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項3】
精製されたダイズ加水分解産物を含む、請求項2に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項4】
ダイズ加水分解産物が500U/g未満の内毒素含量を有する、請求項1に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項5】
ダイズ加水分解産物のうちの少なくとも50%が500ダルトン以下の分子量を有する、請求項1に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項6】
ダイズ加水分解産物のうちの少なくとも55%が500ダルトン以下の分子量を有する、請求項5に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項7】
さらにアミノ酸を含む、請求項1に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項8】
アミノ酸がL−アスパラギン、L−システイン、L−シスチン、L−プロリン、L−トリプトファン、L−グルタミンおよびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項9】
さらに緩衝剤物質、酸化安定剤、機械的応力を打ち消す安定剤およびプロテアーゼインヒビターからなる群より選択される補助的物質を含む、請求項1に記載の無動物タンパク質かつ無血清の培地。
【請求項10】
哺乳動物細胞の培養のための請求項1に記載の培地の使用。
【請求項11】
哺乳動物細胞の培養のための請求項1に記載の培地の使用であって、該哺乳動物細胞が、CHO細胞およびBHK細胞からなる群より選択される、使用。
【請求項12】
細胞の培養のための方法であって、
該細胞を、請求項1に記載の培地中に導入する工程、および
該細胞を、該培地中で増殖させる工程、
を包含する、方法。
【請求項13】
細胞培養からのタンパク質の産生のための方法であって、
所望のタンパク質を発現する細胞を、請求項1に記載の培地中に導入する工程;
該細胞を該培地中で増殖させ、そして該タンパク質を発現させ、それにより、該培地中で該細胞と該タンパク質との混合物を産生する、工程;
該混合物から該タンパク質を精製する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
細胞が、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、プロテインS、プロテインC、これらの因子のうちの活性化形態、およびvWFから選択される組換えタンパク質を産生する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞培養組成物であって、哺乳動物細胞、および請求項1に記載の培地を含む、組成物。
【請求項16】
請求項に記載の細胞培養培地を作製するための方法であって、
ダイズ加水分解産物を得る工程、
限外濾過プロセスを使用して、該ダイズ加水分解産物を限外濾過する工程、
サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、該ダイズ加水分解産物画分を精製する工程、
500ダルトン以下の分子量を有するダイズ加水分解産物からなるダイズ加水分解産物画分を選択する工程、
を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の無タンパク質かつ無血清の培養のための培地に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養、特に、真核生物細胞もしくは哺乳動物細胞の培養は、効率のよい増殖および所望されるタンパク質の産生に必要とされる、栄養物質および増殖物質をその細胞に利用可能にする、特別の培地の使用を絶えず必要とする。一般に、血清または血清(例えば、ウシ血清)由来の化合物が、この点について培地の成分として使用される。
【0003】
しかし、細胞培地におけるヒト供給源もしくは動物供給源由来の血清またはタンパク質添加物の使用に関して、特に、ヒトに投与される医学的薬剤の調製のための開始材料がその細胞培養を介して利用可能にされる場合に、多数の問題が存在する。
【0004】
従って、このような血清調製物に関して、その組成および質は、バッチ間ですでに変化する。これは、まさに、このような調製物のドナー生物の相違が原因である。このことは、特に、細胞集団の標準化およびこのような細胞の標準的増殖条件の確立について、かなりの問題を示す。しかし、使用される血清材料の集中的かつ一定の品質管理が、すべての場合において必要とされる。しかし、これは、特に血清のような複合組成物に関して、非常に時間がかかりかつコスト集約的である。
【0005】
さらに、このような複合調製物は、特に細胞培養から回収されるべき組換えタンパク質についての精製プロセスの状況において、破壊的様式で作用し得る複数のタンパク質を含む。これは特に、回収されるべきタンパク質と相同または類似のタンパク質に当てはまる。当然、これらの問題は、特に深刻である。なぜなら、使用される培地中の生体付属物(pendant)(例えば、ウシタンパク質)は、(例えば、組換えタンパク質のみ特異的に指向するがそのウシタンパク質は指向しない抗体を用いる)非常に特異的な示差的精製を介してのみ、精製の状況において容易に除去され得るからである(Bjoerck,L.、J.Immunol.、1998、第140巻、1194〜1197頁;Nilsonら、J.Immunol Meth.、1993、164、33〜40頁)。
【0006】
しかし、培養培地における、血清もしくは血清由来の化合物の使用における明白な問題はまた、マイコプラスマ、ウイルスまたはBSE因子による汚染の危険である。ヒト血液由来の調製物に関連して、ウイルス(例えば、肝炎ウイルスもしくはHIV)による汚染の危険は、この関連において特に強調されなければならない。ウシ材料に由来する血清もしくは血清成分に関して、特に、BSE汚染の危険が存在する。これに加え、さらに、すべての血清由来材料は、未だ未知の疾患誘導因子により汚染され得る。
【0007】
細胞がその表面に十分接着することを確保しそして細胞から所望の物質の十分な産生を確保するための血清成分の添加は、少数の例外を除き、固体表面上での細胞の培養にとって正に不可欠であると以前は見なされていた。従って、例えば、WO91/09935に記載される方法を用いて、表面依存性永久(permanent)細胞(好ましくは、ベロ細胞)の無血清かつ無タンパク質の培養によって、FSMEウイルス/ウイルス抗原の無血清かつ無タンパク質の培養のためのプロセスを達成することが、可能であった(WO 96/15231を参照のこと)。しかし、これらは、組換え細胞ではなく、むしろ、溶菌プロセスにおけるウイルス抗原の産生のために使用される宿主細胞である。
【0008】
これとは対照的に、組換え調製のために顕著に使用される細胞、例えば、CHO細胞は、限定される程度にしか接着できない。従って、従来の方法により増殖されたCHO細胞は、血清含有条件下でのみ平滑および多孔性の両方のマイクロキャリアに結合する(米国特許第4,973,616号;Cytotechnology 9(1992)、247〜253を参照のこと)。しかし、このような細胞は、無血清条件下で増殖された場合、それらは、この特性を失いそして平滑なキャリアに接着しないか、または、他の接着促進添加物(例えば、フィブロネクチン、インシュリンまたはトランスフェリン)が培地中に提供されなかった場合は、それらは平滑なキャリアから容易に剥離する。しかし、これらもまた、血清に由来するタンパク質である。
【0009】
これに代わって、これらの細胞は、懸濁培養技術を使用して、ならびに、例えば、バッチプロセスを使用して、または連続培養技術を使用して、増殖され得る。培養は、好ましくは、ケモスタットプロセスを使用して行われる(Ozturk S.S.ら、1996、Abstr.Pap.Am.Chem.Soc.、BIOT 164、Payne G.F.ら、「Large Scale Cell Culture Technology」1987、Lydersen B.K.編、Hauser publishers;206〜212頁)。Kattinger H.ら(Advances Mol.Cell.Biology、1996、15A、193〜207)は、無タンパク質培地における細胞の長期培養を記載するが、これらの細胞は、キャリア上で培養されなければならず、連続培養技術としての代替法を残さない。これらの細胞は、キャリアの表面に接着した場合、増殖の減少、そして結果として増殖因子の需要の減少が原因で、長期の安定性のみを示すと記載される。
【0010】
さらに、先行技術において、血清含有条件から開始する無タンパク質培地に細胞を適応させる試みが、いくつかの場合においてなされている。しかし、このような適応に関して、血清含有条件と比較して、発現されるタンパク質の収量および組換え細胞の生産性が、適応後に無タンパク質培地において顕著に減少することが、繰り返し見出された(Appl.Microbiol.Biotechnol.40(1994)、691〜658)。
【0011】
細胞密度が高い場合、組換えタンパク質の産生は、時に、かなり限定されることもまた、見出されている。細胞を無タンパク質培地または無血清培地に適応させる試みの間に、使用される細胞の低下した増殖と共に、不安定性もまた、繰り返し見出され、その結果、発現が減少した細胞が産生されるかまたは非産生細胞が産生され、それによりこれらは、無タンパク質かつ無血清培地において、産生細胞と比較して、増殖の利点を有し、そしてこのことは、これらが、産生細胞を圧倒せんばかりに増殖し、そして最終的に、培養全体が非常に低い生成物収量を生じるという事実をもたらす。
【発明の概要】
【0012】
(発明の要旨)
従って、本発明は、組換え細胞の無タンパク質かつ無血清の培養のための可能性を改善し、そして組換え細胞が、無血清もしくは無タンパク質様式で効率的に培養され得る、因子および方法を利用可能にする、目的を有する。さらに、表面依存性細胞を培養するのみでなく、懸濁培養技術を使用することもまた可能であるはずであり、それにより細胞の生産性の不安定性が可能な程度抑制されることが必要である。
【0013】
本発明のさらなる目的は、さらに、組換え細胞の産生を効率的に増加することである。
【0014】
最後に、本発明に従って、組換え細胞を無血清かつ無タンパク質の培地に適応させることが、改良されそしてより効率的に構成される必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、10L灌流バイオリアクターにおけるrFVIII−CHO細胞クローンの培養の結果を示す: a)42日の期間にわたる第VIII因子活性(ミリユニット/mL)および灌流速度(1〜5/日);b)この灌流バイオリアクターにおける容量生産性(第VIII因子のユニット/L/日)。
図2図2は、種々の培地中での組換え第VIII因子を発現するCHO細胞の培養(バッチプロセスを使用する)の場合における、第VIII因子の生産性(mU/mL)の比較を示す。Mix1は、ダイズ加水分解産物を含まないが、表4に列挙したアミノ酸混合物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなり;Mix2は、ダイズ加水分解産物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなり;Mix3は、ダイズ加水分解産物および表4に列挙したアミノ酸混合物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなり;そしてMix4は、2.5g/lの精製し、限外濾過したダイズ加水分解産物および表4に列挙したアミノ酸混合物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなる。限外濾過したダイズ加水分解産物の精製のために、Sephadex(登録商標)カラムを使用した。
図3図3は、精製し、限外濾過したダイズペプトンの添加開始(すなわち、培養の6日目)の後の無血清かつ無タンパク質の培地における、組換え第VIII因子を発現するCHO細胞の連続増殖の場合における、第VIII因子生産性(U/L)を示す。
図4図4は、ダイズ加水分解産物を含む無タンパク質かつ無血清の培地中で増殖させた、組換え第II因子を発現するBHK細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に従って、これらの課題は、細胞(特に、哺乳動物細胞)の無タンパク質かつ無血清の培養のための培地によって達成され、この培地は、この培地が一定比率のダイズ加水分解産物を含む特徴により特徴付けられる。
【0017】
驚くべきことに、上記に定義された目的が、ダイズ加水分解産物を含む培地において細胞を培養することによって、先行技術において記載される無血清培養の不利益を許容する必要がなく達成され得ることを示すことが可能であった。先行技術において公知の他の加水分解産物(例えば、コムギ加水分解産物、イネ加水分解産物または酵母加水分解産物)と対照的に、ダイズ加水分解産物のみが、本発明に従う特性を媒介し、そして例えば、組換え標的タンパク質の有意に増加した収量をもたらすことが、見出された。これらの用語を扱う場合、用語ダイズ加水分解産物または用語ダイズペプトンのいずれもが、異なる意味を有することなく使用され得る。
【0018】
本発明に従う培地は、好ましくは、その培地の総乾燥重量ベースで、10重量%を超える量のダイズ加水分解産物を含む。一般に、その培地中のダイズ加水分解産物は、4〜40%の量で提供される。
【0019】
特定のダイズ加水分解産物の選択は、本発明に従って重要ではない。市場にて見出される、複数のダイズ調製物(例えば、(例えば、パパインにより)酵素的に消化された、ダイズ粉末由来のペプトン)が、6.5と7.5との間のpH値で、そして9%と9.7%との間の総窒素含量で、そして8%と15%との間の灰分で、本発明に従って使用され得る。これらは、当業者により細胞培養のために一般的に使用される形態の、ダイズ由来のペプトンである。
【0020】
好ましい形態の実施形態に従って、本発明に従う培地におけるダイズ加水分解産物の精製調製物またはその粗画分の使用が、なされる。効率的な培養を妨げ得る不純物が、好ましくはこの精製の間に除去されるか、またはこの加水分解産物の精度が、例えば、分子量に関して、改善される。
【0021】
本発明に従って、限外濾過工程の提供は、実際に、この精製の間で特に価値があることが示されている。このことが原因で、限外濾過されたダイズ加水分解産物の使用が、本発明に従う培地において特に好ましい。
【0022】
限外濾過は、先行技術において包括的に記載されるプロセスに従って、行われ得、例えば、規定のカットオフ値の膜フィルターが使用される。
【0023】
限外濾過されたダイズぺプトンの精製は、ゲルクロマトグラフィーによって、例えば、Sephadexクロマトグラフィー(例えば、Sephadex G25もしくはSephadex G10または等価な材料を用いる)、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、または「逆相」クロマトグラフィーによって、行われ得る。これらは、当業者が精通している先行技術からのプロセスである。この方法を使用して、規定の分子量(すなわち、1000ダルトン以下、好ましくは500ダルトン以下、より好ましくは350ダルトン以下)のダイズ加水分解産物を含む、画分が選択され得る。従って、本発明はまた、無血清かつ無タンパク質の細胞培養培地を作製するための方法を包含し、この方法は、ダイズ加水分解産物を得る工程、限外濾過プロセスを使用して、そのダイズ加水分解産物を限外濾過する工程、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、そのダイズ加水分解産物画分を精製する工程、および1000ダルトン以下、好ましくは500ダルトン以下、より好ましくは350ダルトン以下の分子量を有するダイズ加水分解産物からなるダイズ加水分解産物画分を選択する工程、を包含する。
【0024】
特に有利なダイズ加水分解産物は、以下の特徴によって、特徴付けられる:それが10.3%と15.6%との間の遊離アミノ酸含量を有するか、または好ましくは12%と13.5%との間の遊離アミノ酸含量を有し、7.6%と11.4%との間の総窒素含量を有するか、または好ましくは8.7%と9.5%との間の総窒素含量を有し、そして500U/g未満の内毒素含量を有し、そしてそれにより、その少なくとも40%、もしくは好ましくはその少なくとも50%、もしくは特に好ましくはその少なくとも55%が、200〜500ダルトンの分子量を有し、そしてその少なくとも10%、もしくは好ましくはその15%が、500〜1000ダルトンの分子量を有する。最も好ましくは、そのダイズ加水分解産物のうちの少なくとも90%は、500ダルトン以下の分子量である。そのようなダイズ加水分解産物は、組換えタンパク質の工業的産生に特によく適する。なぜなら、その特定の特徴が原因で、それは特に容易に標準化され得、そして慣用的プロセスにおいて使用可能であるからである。
【0025】
ダイズ加水分解産物に加えて、本発明に従う培地はまた、それ自体公知である様式で合成培地(例えば、文献から十分に公知である、DMEM/HAM’s F12、Medium 199またはRPMI)を含み得る。
【0026】
さらに、本発明に従う培地はまた、好ましくは、アミノ酸を含み、このアミノ酸は、好ましくは、L−アスパラギン、L−システイン、L−シスチン、L−プロリン、L−トリプトファン、L−グルタミンまたはこれらの混合物からなる群より選択される。
【0027】
以下のアミノ酸もまた、好ましくは、本発明に従う培地に添加される:L−アスパラギン(0.001〜1g/L(培地)の量で、好ましくは0.1〜0.05g/Lの量で、特に好ましくは0.015〜0.03g/Lの量で)、L−システイン(0.001〜1g/L、好ましくは0.005〜0.05g/L、特に好ましくは0.01〜0.03g/L)、L−シスチン(0.001〜1g/L、好ましくは0.01〜0.05g/L、特に好ましくは0.015〜0.03g/L)、L−プロリン(0.001〜1.5g/L、好ましくは0.01〜0.07g/L、特に好ましくは0.02〜0.05g/L)、L−トリプトファン(0.001〜1g/L、好ましくは0.01〜0.05g/L、特に好ましくは0.015〜0.03g/L)、およびL−グルタミン(0.05〜1g/L、好ましくは0.1〜1g/L)。
【0028】
上記に示されるアミノ酸は、個別にかまたは組み合わせてかのいずれかで、本発明に従う培地に添加され得る。上述のアミノ酸のすべてを含む、アミノ酸混合物の組み合わせ添加が、特に好ましい。
【0029】
無血清かつ無タンパク質の培地が、特定の形態の実施形態において使用され、それによりこの培地は、上述のアミノ酸混合物と精製された限外濾過されたダイズペプトンとの組み合わせをさらに含む。
【0030】
驚くべきことに、例えば、ウイルスもしくは他の病原体を不活化するために、この培地が、負の効果を伴うことなく、約5〜20分間、または好ましくは15分間、70〜95℃にて、または好ましくは85〜95℃にて、加熱され得ることが見出された。
【0031】
本発明に従って、既知のどの合成培地も、このダイズ加水分解産物と組み合わせて使用され得る。従来の合成培地は、無機塩、アミノ酸、ビタミン、糖質供給源および水を含み得る。例えば、DMEM/HAM’s F12培地の使用が、なされ得る。この培地におけるダイズ抽出物の濃度は、好ましくは、0.1g/Lと100g/Lとの間であり得、特に好ましくは1g/Lと5g/Lとの間であり得る。特に好ましい形態の実施形態に従って、その分子量に関して標準化されたダイズペプトンが、使用され得る。そのダイズペプトンの分子量は、好ましくは50kD未満であり、特に好ましくは10kD未満であり、最も好ましくは1kD未満である。
【0032】
限外濾過されたダイズペプトンの添加は、組換え細胞株の生産性に特に有利であることが示されており、それにより、ダイズペプトンの平均分子量は350ダルトンである(Quest Company)。これは、総窒素含量が約9.5%でありかつ遊離アミノ酸含量が約13%である、ダイズ単離物である。
【0033】
1,000ダルトン以下、好ましくは500ダルトン以下、特に好ましくは350ダルトン以下の分子量である、精製された限外濾過されたダイズペプトンの使用が、特に好ましい。
【0034】
本発明に従う培地はまた、好ましくは、補助的物質(例えば、緩衝剤物質、酸化安定剤、機械的応力(mechanical stress)を打ち消す安定剤、またはプロテアーゼインヒビター)もまた含む。
【0035】
以下の組成を有する培地の使用が、特になされる:合成最少培地(1〜25g/L)、ダイズペプトン(0.5〜50g/L)、L−グルタミン(0.05〜1g/L)、NaHCO3(0.1〜10g/L)、アスコルビン酸(0.0005〜0.05g/L)、エタノールアミン(0.0005〜0.05g/L)および亜セレン酸ナトリウム(1〜15μg/L)。
【0036】
必要な場合、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリプロピレングリコール(PLURONIC F−61、PLURONIC F−68、SYNPERONIC F−68、PLURONIC F−71またはPLURONIC F−108)が、本発明に従って、消泡剤としてこの培地に添加され得る。
【0037】
この薬剤は、通気の負の効果から細胞を保護するために、一般的に使用される。なぜなら、界面活性剤を添加しなければ、上昇しそして破裂する気泡が、これらの気泡の表面上に位置する細胞の損傷をもたらし得るからである(「スパージング(sparging)」(MurhammerおよびGoochee、1990、Biotechnol.Prog.6:142〜148)。
【0038】
非イオン性界面活性剤の量は、これにより0.05g/Lと10g/Lとの間であるが、特に好ましくは、可能な最小量は、0.1g/Lと5g/Lとの間である。
【0039】
さらに、本発明に従う培地はまた、シクロデキストリンまたはその誘導体を含み得る。
【0040】
この無血清かつ無タンパク質の培地は、好ましくは、プロテアーゼインヒビター(例えば、組織培養に適切でありそして合成起源もしくは植物起源である、セリンプロテアーゼインヒビター)を含む。
【0041】
すでに適応されている細胞(すなわち、この無タンパク質かつ無血清の培地における増殖にすでに適応されている細胞)が、好ましくは、本発明に従う培地における培養のための細胞として使用される。このような予め適応された細胞を用いて増加した収量が達成され得るだけでなく、無血清かつ無タンパク質の培養についてのそれら細胞の安定性もまた、本発明に従う培地の使用によって明らかに改善されることが、見出されている。
【0042】
しかし、組換え細胞クローンは、本発明に従って特に価値があることがわかっており、本発明によって、これらのクローンは、無血清かつ無タンパク質の培地中で、開始から少なくとも40世代の間そして好ましくは50世代の間安定であり、組換え産物を発現する。
【0043】
このような細胞クローンは、血清含有培地上でのオリジナル組換え細胞クローンの培養、および無血清かつ無タンパク質の培地へのこれらの細胞の再適応の後に得られる、細胞培養物から入手され得る。
【0044】
用語「オリジナル細胞クローン」とは、組換えヌクレオチド配列での宿主細胞のトランスフェクション後に、実験条件下で安定な様式で組換え産物を発現する、組換え細胞クローントランスフェクタントを意味することが理解され得る。このオリジナルクローンを、その増殖を最適化するために、血清含有培地中で増殖させる。その生産性を増加するために、オリジナルクローンを、必要に応じて、選択薬剤の存在下で選択マーカーおよび/または増殖マーカーでの選択を用いて増殖させる。ラージスケールの工業生産については、オリジナル細胞クローンを、血清含有培養条件下で高い細胞密度にまで増殖し、次いで、産生段階の直前に無血清または無タンパク質培地に再適応させる。この場合、培養は、好ましくは、選択圧を用いずに行う。
【0045】
このオリジナル組換え細胞クローンの培養は、無血清かつ無タンパク質の培地での開始から行われ得;結果として、再適応は必要ではない。この場合において、必要な場合には、選択薬剤をもまた使用し得、そして選択マーカーおよび/または増殖マーカーでの選択を行い得る。このためのプロセスは、例えば、EP 0 711 835に記載される。
【0046】
無血清かつ無タンパク質の培地への再適応後に得られた細胞培養物を、無血清かつ無タンパク質の条件下で(必要に応じて、選択圧の非存在下で)安定した様式で産物を産生する、これらの細胞集団の細胞クローンについて試験する。これは、例えば、組換えポリペプチドまたは組換えタンパク質に対する標識された特異的抗体を用いる免疫蛍光によって行い得る。産物のプロデューサーとして同定された細胞を、この細胞培養物から単離し、そしてこの細胞を、好ましくは産生条件に等しい無血清かつ無タンパク質の条件下で再増殖させる。従って、細胞の単離は、細胞を単離し、そして細胞を産物プロデューサーについて試験することによって行い得る。
【0047】
安定な細胞を含む細胞培養物を、安定な組換えクローンについて再度試験し得、そしてこれらのクローンを、細胞培養物から単離しそしてサブクローニングする。次いで、無血清かつ無タンパク質の条件下で得られる安定な組換え細胞クローンを、無血清かつ無タンパク質の条件下でさらに増殖させ得る。
【0048】
本発明に従う培地中でこのように調製される組換え細胞クローンまたは細胞集団は、これらが、少なくとも40世代の間、好ましくは少なくとも50世代の間、そして特に60世代よりも長い間、安定であり、そして組換え産物を発現するという特徴によって、特に優れている。
【0049】
このような安定な組換え細胞クローンまたは細胞集団の例は、ブダペスト条約に準じて、ECACC(UK)に番号98012206の下で寄託されている。
【0050】
本発明に従って培養される細胞培養物は、好ましくは、組換え哺乳動物細胞から誘導される。本明細書によると、組換え哺乳動物細胞とは、組換えポリペプチドまたは組換えタンパク質をコードする配列を含む全ての哺乳動物細胞であり得る。接着的または非接着的のいずれかで増殖する、全ての連続的に増殖する細胞が、この点において包含される。組換えCHO細胞または組換えBHK細胞が、特に好ましい。組換えポリペプチドまたは組換えタンパク質は、血液因子、増殖因子または他の生物医学的に関連する産物であり得る。
【0051】
本発明に従って、組換え血液因子(例えば、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、プロテインS、プロテインC、これらの因子のうちの1つの活性化形態、またはvWF)のコード配列を含みそして数世代にわたって安定な様式でこれらの因子を発現し得る、細胞クローンが好ましい。vWFまたはvWF活性を有するポリペプチド、第VIII因子またはVIII活性を有するポリペプチド、vWFおよび第VIII因子、第IX因子または第II因子を発現する組換えCHO細胞が、この点において特に好ましい。
【0052】
マスターセルバンクを開始するために、30世代が必要とされる。1000Lスケールの平均的なバッチ培養を行うためには、少なくとも約40世代が必要とされる。個々の細胞クローンから開始することによって、本発明に従う培地を用いて、約8〜10世代で「マスターセルバンク(masater cell bank)」(MCB)および「ワーキングセルバンク(working cell bank)」(WCB)を調製することが可能であり、そしてそれゆえ、生産スケール(生産バイオマス)での無タンパク質かつ無血清条件下で、20〜25世代までで細胞培養物を調製することが可能であるが、対照的に、いくつかの世代は、先の細胞クローンおよび培地を用いた無血清または無タンパク質培地上での増殖後に不安定になり、結果として、a)産物プロデューサーを含む均一な細胞培養が不可能であり、そして、b)長期間にわたる安定な産物の生産性が不可能である。
【0053】
しかし、対照的に、本発明に従って、血清含有培地中で培養したオリジナル細胞クローンと比較してでさえ、増加した産物生産性を見い出すことがなお可能であった。
【0054】
さらなる局面に従って、本発明はまた、細胞(特に、哺乳動物細胞)の培養方法に関し、この方法は、これらの細胞を本発明に従う培地中に導入し、次いで、この培地中で培養するという特徴によって特徴付けられる。
【0055】
従って、本発明はまた、組換え細胞(好ましくは、真核生物細胞、そして特に、哺乳動物細胞)の培養のための、本発明に従う培地の使用に関する。
【0056】
従って、本発明の主題はまた、本発明に従う培地および細胞(好ましくは、真核生物細胞、そして特に、哺乳動物細胞)を含む、細胞培養物である。
【0057】
本発明は、以下の実施例および図面によってより詳細に明らかにされるが、これらに限定されない。
【0058】
図1は、10L灌流バイオリアクターにおけるrFVIII−CHO細胞クローンの培養の結果を示す: a)42日の期間にわたる第VIII因子活性(ミリユニット/mL)および灌流速度(1〜5/日);
b)この灌流バイオリアクターにおける容量生産性(第VIII因子のユニット/L/日)。
図2は、種々の培地中での組換え第VIII因子を発現するCHO細胞の培養(バッチプロセスを使用する)の場合における、第VIII因子の生産性(mU/mL)の比較を示す。Mix1は、ダイズ加水分解産物を含まないが、表4に列挙したアミノ酸混合物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなり;Mix2は、ダイズ加水分解産物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなり;Mix3は、ダイズ加水分解産物および表4に列挙したアミノ酸混合物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなり;そしてMix4は、2.5g/lの精製し、限外濾過したダイズ加水分解産物および表4に列挙したアミノ酸混合物を含む、無血清かつ無タンパク質の培地からなる。限外濾過したダイズ加水分解産物の精製のために、Sephadex(登録商標)カラムを使用した。
図3は、精製し、限外濾過したダイズペプトンの添加開始(すなわち、培養の6日目)の後の無血清かつ無タンパク質の培地における、組換え第VIII因子を発現するCHO細胞の連続増殖の場合における、第VIII因子生産性(U/L)を示す。
図4は、ダイズ加水分解産物を含む無タンパク質かつ無血清の培地中で増殖させた、組換え第II因子を発現するBHK細胞を示す。
【実施例1】
【0059】
(実施例)
(実施例1:血清含有培地から無血清かつ無タンパク質の培地に切り換えた後のrvWF−CHO細胞の安定性)
CHO−dhfr細胞を、プラスミドphAct−rvWFおよびpSV−dhfrで同時トランスフェクトし、そしてvWF発現クローンを、Fischerら(1994、FEBS Letters 351:345−348)によって記載されるようにサブクローニングした。ワーキングセルバンク(WCB)を、血清含有条件下であるがMTX非存在下で安定様式でrvWFを発現したサブクローンから開始し、そしてこれらの細胞を、血清含有条件下で多孔性のマイクロキャリア(Cytopore(登録商標))上に固定した。無血清かつ無タンパク質の培地への細胞の切り換えを、2×107細胞/1mLマトリクスの細胞密度に到達した後に行った。細胞を、無血清かつ無タンパク質の条件下で数世代の間さらに培養した。細胞を、標識した抗vWF抗体での免疫蛍光によって、種々の時点で無血清かつ無タンパク質の培地中で試験した。細胞の安定性の評価を、培地を切り換える前、無血清かつ無タンパク質の培地において10世代後および60世代後で、ワーキングセルバンクを使用して行った。ワーキングセルバンクは、依然として100%rvWFプロデューサーを示したが、rvWFプロデューサーの割合は、無血清かつ無タンパク質の培地中で10世代後に約50%に減少した。60世代後では、95%を超える細胞が、非プロデューサーであることが同定された。
【0060】
(実施例2:安定な組換えCHOクローンのクローニング)
希釈系列を、実施例1に従うrvWF−CHO細胞(r−vWF−CHO F7と命名されたこの安定な細胞クローンは、ブダペスト条約に準じて、ECACC(European Collection of Cell Cultures)、Salisbury、Wiltshire SP4 OJG、UKに、1998年1月22日に寄託し、受託番号98012206が付与された)を含む細胞培養物から調製し、この細胞を、無血清かつ無タンパク質の培地中で60世代の間培養し、そして0.1細胞を、マイクロタイタープレートの各ウェルに播種した。細胞を、血清の添加物もタンパク質添加物も含まずかつ選択圧なしのDMEM/HAM’sF12において約3週間培養し、そして細胞を、標識した抗vWF抗体を用いる免疫蛍光を介して試験した。陽性として同定された細胞クローンを、シードセルバンクの調製のための開始クローンとして使用した。マスターセルバンク(MCB)を、無血清かつ無タンパク質の培地中のシードセルバンクから開始し、そして個々のアンプルを取り出し、そしてワーキングセルバンクのさらなる調製のために冷凍した。ワーキングセルバンクを、個々のアンプルから無血清かつ無タンパク質の培地中に調製した。細胞を、多孔性マイクロキャリア上に固定し、そして無血清かつ無タンパク質の条件下で数世代の間さらに培養した。細胞を、標識抗vWF抗体を用いる免疫蛍光によって、無血清かつ無タンパク質の培地中で種々の時点で生産性について試験した。細胞の安定性の評価を、ワーキングセルバンク段階、および無血清かつ無タンパク質の培地中での10世代後および60世代後に行った。約100%の細胞が、陽性の安定なクローンとして同定され、これらは、ワーキングセルバンク段階、10世代後および60世代後に、rvWFを発現する。
【0061】
(実施例3:組換え細胞クローンの細胞特異的生産性)
規定された数の細胞を、組換え細胞の培養中の規定された段階で取り出し、そしてこれらを、新鮮な培地と共に24時間インキュベートした。rvWF:Risto−CoF−活性を、細胞培養物の上清液中で決定した。表1は、本発明に従う安定な組換え細胞クローンの場合において、細胞特異的生産性が、無血清かつ無タンパク質の培地中で60世代後でさえ安定であり、そしてそれが、血清含有培地中で培養したオリジナルクローンと比較して増加されたことを示す。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例4:合成の無血清かつ無タンパク質の培地の組成)
【表2】
(実施例5:無タンパク質かつ無血清の最少培地中でのrFVIII−CHO細胞の培養)
rFVIII−CHO細胞を含有する細胞培養物を、灌流を伴う10L攪拌タンク中で培養した。実施例4に従う培地を、この場合において使用した。これによって、細胞を多孔性マイクロキャリア(Cytopore(登録商標)、Pharmacia)上に固定し、次いで、少なくとも6週間培養した。灌流速度は、4容量交換/日であり;pHは、6.9〜7.2であり;O2濃度は、約20〜50%であり、そして温度は、37℃であった。
【0064】
図1は、10L灌流バイオリアクター中のrFVIII−CHO細胞クローンの培養の結果を示す: a)42日の期間にわたる第VIII因子活性(ミリユニット(mU)/mL)および灌流速度(1〜5/日);
b)この灌流バイオリアクターにおける容量生産性(第VIII因子のユニット(U)/L/日)。
【0065】
【表3】
表3は、rFVIII発現細胞の安定性および特異的生産性を示す。これらの結果を得るために、サンプルを、15日後、21日後、28日後、35日後および42日後に採取し、次いで、300gで遠心分離し、そして新鮮な無血清かつ無タンパク質の培地中に再懸濁した。細胞培養物の上清液中の第VIII因子濃度および細胞数を、さらに24時間後に測定した。特異的なFVIII生産性を、これらのデータから計算した。
【0066】
888ミリユニット/106細胞/日の安定な平均生産性が達成された。この安定な生産性をまた、無血清かつ無タンパク質の培地中で15日後、21日後、28日後、35日後および42日後に、標識抗FVIII抗体を用いる免疫蛍光によって確かめた。
【0067】
(実施例6:さらなる培地成分を含有する無タンパク質かつ無血清の培地中の組換えFVIII−CHO細胞の生産性の比較)
rFVIII−CHO細胞を含む細胞培養物を、バッチ様式で培養した。この場合において、以下のアミノ酸を添加した実施例4に従う培地を使用した:
【0068】
【表4】
細胞を、37℃でかつpH6.9〜7.2で増殖させた。細胞を、24〜72時間にわたってバッチプロセスを使用して増殖させた。
【0069】
組換えFVIII−CHO細胞の生産性を、以下の培地組成において測定した: Mix1:ダイズペプトンを含有せずそして上記の表に従うアミノ酸混合物をさらに含有する、無血清かつ無タンパク質の培地を含む;
Mix2:ダイズペプトンを含有する、無血清かつ無タンパク質の培地を含む;
Mix3:ダイズペプトンを含有しそして上記の表に従うアミノ酸混合物をさらに含有する、無血清かつ無タンパク質の培地を含む;
Mix4:上記の表に従うアミノ酸混合物および2.5g/lの精製し、限外濾過したダイズペプトンをさらに含有する、無血清かつ無タンパク質の培地を含む。限外濾過したダイズペプトンの精製は、Sephadex(登録商標)カラム上でのクロマトグラフィーによって行った。
【0070】
(実施例7:ケモスタット培養法を用いる無タンパク質かつ無血清の培地中での組換えFVIII−CHO細胞の培養)
rFVIII−CHO細胞を含む細胞培養物を、10Lの攪拌バイオリアクタータンクにおいて培養した。この場合において、ダイズペプトンを含有せず、実施例6に従うアミノ酸混合物を含有する、実施例4に従って作製した培地を使用した。細胞を、37℃でかつpH6.9〜7.2で増殖させ;酸素濃度は、20〜50%の空気飽和度であった。サンプルを24時間毎に採取し、第VIII因子力価および培養物の上清液中の細胞濃度を測定した。全細胞濃度は、2日目から14日目までで一定であった。限外濾過したダイズペプトンを、6日目から開始して、培地に添加した。第VIII因子の生産性を、3に例示する;測定は、CHROMOGENIX CoA FVIII:C/4システムによって行った。免疫蛍光を、標識した抗FVIII抗体を用いて行った。第VIII因子の生産性における明確な増加、それゆえ、このバイオリアクター系の容量生産性の増加が、ダイズペプトンの添加の結果として生じ、これによって、ダイズペプトンの添加が、細胞増殖の明確な増加を導かなかったことが、データから理解され得る。連続培養におけるダイズペプトンの非存在は、数日後の第VIII因子の生産性の明確な減少を導き、これに対して、ダイズペプトンの添加は、結果として、ほぼ10倍の生産性の増加を導く。しかし、この添加は、細胞数を増加しないので、これによって、限外濾過したダイズペプトンが、結果として、生産性における明確な増加を導き、この生産性が細胞増殖に非依存性であることが明確に示される。
【0071】
(実施例8:異なる加水分解産物を含有する無タンパク質かつ無血清の培地中の組換えFVIII−CHO細胞の増殖速度および生産性の比較)
rFVIII−CHO細胞培養物を、バッチ様式で培養した。この場合、異なる加水分解産物(ダイズ、酵母、イネおよびコムギ由来)を添加した、実施例4に記載のように無血清かつ無タンパク質の培地を使用した。加水分解産物を添加しない無血清かつ無タンパク質の培地を、コントロールとして使用した。
【0072】
開始細胞密度は、それぞれ、0.6×105および0.4×106であった。細胞を、pH6.9〜7.2でバッチプロセスを使用して37℃で培養した。
【0073】
表5:ダイズ加水分解産物(限外濾過した)および酵母加水分解産物を添加した無血清かつ無タンパク質の培地中でrFVIII−CHO細胞を用いた培養実験の結果を示す。開始細胞密度は、0.6×105細胞であった。加水分解産物を添加しなかった無血清かつ無タンパク質の培地を、コントロールとして使用した。
【0074】
【表5】
表6:ダイズ加水分解産物(限外濾過した)、イネ加水分解産物およびコムギ加水分解産物を添加した無血清かつ無タンパク質の培地中でrFVIII−CHO細胞を用いた培養実験の結果を示す。開始細胞密度は、0.6×105細胞であった。加水分解産物を添加しなかった無血清かつ無タンパク質の培地を、コントロールとして使用した。
【0075】
【表6】
表7:ダイズ加水分解産物(限外濾過した)およびコムギ加水分解産物を添加した無血清かつ無タンパク質の培地中のrFVIII−CHO細胞での培養実験の結果を示す。開始細胞密度は、0.4×106細胞であった。
【0076】
【表7】
(実施例9:ダイズ加水分解産物を含有する無タンパク質かつ無血清培地中のBHK細胞の培養)
BHK−21(ATCC CCL 10)細胞を、CaPO4手順によって以下のプラスミドを用いて3回同時トランスフェクトした:25μgのプラスミドpSV−FII(Fischer、B.ら、J.Biol.Chem.,1996,第271巻、23737−23742頁)(これは、SV40プロモーター(SV40初期遺伝子プロモーター)の制御下にヒト第II因子(プロトロンビン)cDNAを含む);4μgのプラスミドpSV−DHFR(メトトレキサート耐性);および1μgのプラスミドpUCSV−neo(Schlokat、U.ら、Biotech.Appl.Biochem.,1996、第24巻、257−267頁)(これは、G418/ネオマイシン耐性を媒介する)。安定な細胞クローンを、メトトレキサート濃度を3μMの濃度にまで段階様式で増加させることにより、500μg/mLのG418を含んだ培地中での培養によって選択した。
【0077】
この様式で得られたクローンをサブクローニングし、無タンパク質かつ無血清培地に適応させた。培養を、懸濁培養技術を使用して行った。
【0078】
結果は、表6に示され得る;ダイズ加水分解産物を含有する無タンパク質かつ無血清培地中で増殖させたBHK細胞は高速度かつ安定な速度の、組換え第II因子の産生を示した。
図1
図2
図3
図4