特許第6348529号(P6348529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348529
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】車両用クリップ及び外装部品の締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/00 20060101AFI20180618BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20180618BHJP
   B62D 25/18 20060101ALI20180618BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20180618BHJP
   F16B 19/08 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   F16B19/00 F
   F16B5/06 Q
   B62D25/18 F
   B60R19/24 Z
   F16B19/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-52754(P2016-52754)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-166588(P2017-166588A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】久慈 公裕
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健介
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−179174(JP,U)
【文献】 実開昭63−178616(JP,U)
【文献】 実開昭49−025210(JP,U)
【文献】 特開2003−182482(JP,A)
【文献】 特開2009−126321(JP,A)
【文献】 特開2009−241667(JP,A)
【文献】 特開2007−071368(JP,A)
【文献】 特開2012−086777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00
B60R 19/24
B62D 25/18
F16B 5/06
F16B 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外装部品を挟み込む一対の保持部材を備えると共に該第1外装部品に取り付けられる取付部と、挿入孔とを含んで構成されたクリップ本体と、
第2外装部品に形成された貫通孔と前記挿入孔とに挿入された状態で前記クリップ本体に係止される挿入部と、前記挿入孔よりも大径に形成され前記クリップ本体との間で前記第2外装部品を保持する頭部と、前記頭部から前記取付部側へ延出されて前記挿入部が前記クリップ本体に係止された状態で一方の前記保持部材を介して前記第1外装部品を他方の前記保持部材側へ押圧させる押圧部とを含んで構成されたピン部材と、
を有する車両用クリップ。
【請求項2】
前記クリップ本体を構成する少なくとも一方の前記保持部材には、爪部が形成されており、
前記第1外装部品において前記取付部が取り付けられる部位には、前記爪部が引掛けられる凹部が形成されている請求項1に記載の車両用クリップ。
【請求項3】
前記クリップ本体の前記挿入孔は、前記取付部よりも車両内側に形成されている請求項1又は2に記載の車両用クリップ。
【請求項4】
第1外装部品を挟み込む一対の保持部材を備えると共に該第1外装部品に取り付けられる取付部と、挿入孔とを含んで構成されたクリップ本体と、
前記挿入孔に挿入された状態で前記クリップ本体に係止される挿入部と、前記挿入部が前記クリップ本体に係止された状態で前記取付部側へ延出されて一方の前記保持部材を介して前記第1外装部品を他方の前記保持部材側へ押圧させる押圧部とを含んで構成された第2外装部品と、
を有する外装部品の締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クリップ及び外装部品の締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の外装部品を締結するための車両用クリップとして、特許文献1には、クリップ本体とピンとを備えた構造が開示されている。この特許文献1では、複数の外装部品のそれぞれに形成された貫通孔にクリップ本体の脚部を挿通させ、さらにクリップ本体にピンを圧入することで、クリップ本体の脚部が拡径されて複数の外装部品が締結される。同様の車両用クリップとして、特許文献2では、一方の外装部品を他方の外装部品で挟み込んだ状態でクリップ本体の嵌合爪を挿通させ、さらにクリップ本体に押し込みピンを押し込んで嵌合爪を押し広げることで複数の外装部品を締結させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−71368号公報
【特許文献2】特開2012−86777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、複数の外装部品を重ね合わせて位置決めした状態でクリップ本体を挿通させるため、組付け性(作業効率)を高める観点から改善の余地がある。一方、組付け性を高める観点から、クリップ本体を第1外装部品に取り付けた後、ピンなどによって第2外装部品をクリップ本体に取り付ける締結構造が知られている。しかしながら、第1外装部品と第2外装部品とが直接締結されないため、締結強度の確保が困難となっている。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、組付け性を高めつつ締結強度を確保することができる車両用クリップ及び外装部品の締結構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用クリップは、第1外装部品を挟み込む一対の保持部材を備えると共に該第1外装部品に取り付けられる取付部と、挿入孔とを含んで構成されたクリップ本体と、第2外装部品に形成された貫通孔と前記挿入孔とに挿入された状態で前記クリップ本体に係止される挿入部と、前記挿入孔よりも大径に形成され前記クリップ本体との間で前記第2外装部品を保持する頭部と、前記頭部から前記取付部側へ延出されて前記挿入部が前記クリップ本体に係止された状態で一方の前記保持部材を介して前記第1外装部品を他方の前記保持部材側へ押圧させる押圧部とを含んで構成されたピン部材と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用クリップでは、車両用クリップは、クリップ本体とピン部材とを有しており、クリップ本体は、第1外装部品を挟み込んで取り付けられる取付部と、挿入孔とを含んで構成されている。また、ピン部材は、クリップ本体の挿入孔に挿入された状態で係止される挿入部と、挿入孔よりも大径に形成されてクリップ本体との間で第2外装部品を保持する頭部とを含んで構成されている。これにより、第1外装部品にクリップ本体を取り付けた後、ピン部材によって頭部とクリップ本体との間で第2外装部品を保持させることで第1外装部品と第2外装部品とを締結させることができる。すなわち、第1外装部品と第2外装部品とを直接重ね合わせて位置決めする必要がなく、組付け性を高めることができる。
【0008】
また、ピン部材の頭部には、押圧部が設けられており、この押圧部は、挿入部がクリップ本体に係止された状態で、一方の保持部材を介して第1外装部品を他方の保持部材側へ押圧させる。これにより、第1外装部品に対するクリップ本体の保持力を高めることができ、第1外装部品と第2外装部品との締結強度を確保することができる。なお、ここでいう「第1外装部品と第2外装部品との締結強度」とは、第1外装部品と第2外装部品との外れ難さを示すものである。また、「締結強度を確保することができる」とは、外れ難くする(強固に締結する)ことができるという意味である。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る車両用クリップは、請求項1に記載の構成において、前記クリップ本体を構成する少なくとも一方の前記保持部材には、爪部が形成されており、前記第1外装部品において前記取付部が取り付けられる部位には、前記爪部が引掛けられる凹部が形成されている。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る車両用クリップでは、第1外装部品の凹部にクリップ本体の爪部が引掛けられている。また、ピン部材の押圧部によって一方の保持部材が第1外装部品側へ押圧されているため、第1外装部品に対するクリップ本体の保持力をさらに高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る車両用クリップは、請求項1又は2に記載の構成において、前記クリップ本体の前記挿入孔は、前記取付部よりも車両内側に形成されている。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係る車両用クリップでは、ピン部材が挿入される挿入孔を取付部よりも車両内側に形成することにより、車両の外部からピン部材を見えにくくすることができる。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る外装部品の締結構造は、第1外装部品を挟み込む一対の保持部材を備えると共に該第1外装部品に取り付けられる取付部と、挿入孔とを含んで構成されたクリップ本体と、前記挿入孔に挿入された状態で前記クリップ本体に係止される挿入部と、前記挿入部が前記クリップ本体に係止された状態で前記取付部側へ延出されて一方の前記保持部材を介して前記第1外装部品を他方の前記保持部材側へ押圧させる押圧部とを含んで構成された第2外装部品と、を有する。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係る外装部品の締結構造では、挿入部がクリップ本体に係止された状態で、第2外装部品の押圧部が一方の保持部材を介して第1外装部品を他方の保持部材側へ押圧させる。これにより、第1外装部品に対するクリップ本体の保持力を高めることができ、第1外装部品と第2外装部品との締結強度を確保することができる。また、第2外装部品に挿入部と押圧部とが形成されているため、別体のピン部材などを用いる構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1に記載の車両用クリップによれば、組付け性を高めつつ締結強度を確保することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2に記載の車両用クリップによれば、取付部に爪部が形成されていない構成と比較して、より第1外装部品に対するクリップ本体の保持力を高めることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3に記載の車両用クリップによれば、車両の意匠性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4に記載の外装部品の締結構造によれば、組付け性及び締結強度の確保の両立を図ることができると共に部品点数を削減することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るバンパとフェンダライナとの締結構造を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係るバンパとフェンダライナとの締結構造を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係るバンパのバンパタブを拡大して示す拡大図である。
図4】第1実施形態に係るクリップ本体を拡大して示す拡大図である。
図5】第1実施形態に係るピン部材を拡大して示す拡大図である。
図6図4の6−6線で切断した切断面を拡大して示す拡大断面図である。
図7】第2実施形態に係るバンパとフェンダライナとの締結構造を示す、図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る車両用クリップを用いた締結構造について、図1〜6を参照して説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印Rrは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両が進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る外装部品の締結構造では、第1外装部品としてのバンパ16と、第2外装部品としてのフェンダライナ18とを車両用クリップ10(以下、単に「クリップ10」と称する。)で締結する締結構造について説明する。初めに、バンパ16及びフェンダライナ18の概略構造を説明し、その後に本実施形態に係るクリップ10の構造について説明する。
【0022】
(バンパ16の概略構成)
バンパ16は、車両の前部に配置される外装部品であり、車両幅方向に延在されている。また、バンパ16の車両幅方向両端部からそれぞれ車両後方側へ側壁部16Aが延出されている(図1では、バンパ16の車両左側の側壁部16Aのみが図示されている。)。さらに、側壁部16Aの後端部から車両幅方向内側へ折返し部16Bが延出されており、この折返し部16Bには、本実施形態のクリップ本体12が取り付けられるバンパタブ20が形成されている。
【0023】
図3に示されるように、バンパタブ20は、正面(車両後方側)から見て、車両幅方向内側に向かうほど車両上下方向の長さが短くなる略台形状に形成されている。ここで、バンパタブ20の車両上下方向の中間部分には、バンパ16の折返し部16Bから車両幅方向内側へ向かうにつれて車両前方側へ傾斜された傾斜面20Bが形成されており、この傾斜面20Bの先端部には、凹部としての第1凹部20Aが形成されている。そして、この第1凹部20Aには、後述するクリップ本体12の爪部38Aが引掛けられる。また、第1凹部20Aの車両幅方向内側には、第1凹部20Aから車両後方側へ延出された縦壁部20Cが形成されており、この縦壁部20Cによってクリップ本体12の爪部38Aが係止される。
【0024】
バンパタブ20における第1凹部20Aに対して車両上下方向の両側には、第2凹部20Dが形成されている。第2凹部20Dはそれぞれ、バンパタブ20の車両幅方向内側の端部から車両幅方向外側へ向かって延在されている。また、第2凹部20Dはそれぞれ、第1凹部20Aと同様に車両後方側へ凹んでいる。そして、この第2凹部20Dには、後述するクリップ本体12の突起部44が入り込むようになっている(図6参照)。
【0025】
(フェンダライナ18の概略構成)
図1に示されるように、フェンダライナ18は、クリップ10を介してバンパ16に締結される外装部品であり、図示しないタイヤの上部を覆う形状に形成されている。ここで、フェンダライナ18の前部には、クリップ本体12に重ね合わされる前壁部18Aが形成されており、この前壁部18Aの車両幅方向外側の端部から車両前方側へ向かってフランジ部18Bが延出されている。
【0026】
ここで、前壁部18Aには、貫通孔18Cが形成されており、この貫通孔18Cには後述するピン部材14が挿通される。また、フランジ部18Bには、後述するクリップ本体12を構成するベース部34の形状に対応した切欠部18Dが形成されている。
【0027】
(クリップ10の構造)
次に、本実施形態に係るクリップ10の構造について説明する。本実施形態のクリップ10は、クリップ本体12とピン部材14とを備えている。以下、クリップ本体12及びピン部材14のそれぞれについて詳細に説明する。
【0028】
図4に示されるように、クリップ本体12は、バンパタブ20に取り付けられる取付部22と、フェンダ受け部32とを含んで構成されおり、取付部22は、紙面上下方向を長手方向とする略矩形状のベース部34を備えている。ここで、ベース部34の紙面上下方向の中間部分には、開口部36が形成されており、この開口部36の開口面内に一対の保持部材38及び保持部材40が設けられている。
【0029】
保持部材38は、開口部36における紙面左側の縁部から開口面内へ延出されており、図2に示されるように、保持部材38の先端部には爪部38Aが形成されている。そして、この爪部38Aは、クリップ本体12をバンパタブ20へ取り付けた状態で、バンパタブ20の第1凹部20Aへ引掛けられる。一方、保持部材40は、図4に示されるように、開口部36における紙面右側の縁部から開口面内へ延出された撓み片42の先端に設けられている。ここで、撓み片42は、後述する湾曲部50から延出されている。また、保持部材40は、クリップ本体12をバンパタブ20へ取り付けた状態で、バンパタブ20を挟んで保持部材38の反対側に位置しており、バンパタブ20を車両前方側から押さえている(図2参照)。このようにして、クリップ本体12の取付部22は、保持部材38及び保持部材40によってバンパタブ20(バンパ16)を挟み込んで取り付けられる。
【0030】
なお、本実施形態では、撓み片42を保持部材40よりも狭幅に形成しており、撓み変形可能に構成している。これにより、取付部22をバンパタブ20へ取り付ける際に、撓み片42が撓むようになっている。
【0031】
また、図4及び図6に示されるように、保持部材38に対してベース部34の長手方向両側にはそれぞれ、突起部44が突設されている。さらに、保持部材40に対してベース部34の長手方向両側にはそれぞれ、押さえ部46が突設されている。そして、突起部44はそれぞれ、クリップ本体12をバンパタブ20へ取り付けた状態で、バンパタブ20の第2凹部20Dに入り込む。一方、押さえ部46はそれぞれ、クリップ本体12をバンパタブ20へ取り付けた状態で、バンパタブ20を挟んで突起部44の反対側に位置しており、バンパタブ20を押さえている。
【0032】
図4に示されるように、ベース部34の紙面右側には、フェンダ受け部32が形成されている。フェンダ受け部32は、ベース部34と一体に形成されており、フェンダ受け部32の中央部には、略円形の挿入孔24が形成されている。ここで、図2に示されるように、挿入孔24は、取付部22よりも車両前方側かつ車両幅方向内側に形成されている。
【0033】
図4に示されるように、挿入孔24の孔縁には、ガイド用リブ48が形成されている。ガイド用リブ48は、挿入孔24の周りに全周に沿って形成されており、フェンダ受け部32の一般部から紙面手前側へ突出されている。
【0034】
また、フェンダ受け部32とベース部34とは、湾曲部50によって連結されている。湾曲部50は、図2に示されるように、クリップ本体12をバンパタブ20へ取り付けた状態で、フェンダ受け部32から車両後方側へ向かって車両幅方向内側へ向かうように湾曲されている。そして、フェンダ受け部32は、クリップ本体12をバンパタブ20へ取り付けた状態で、車両前後方向に対して傾斜して配置される。
【0035】
次に、ピン部材14について説明する。図5に示されるように、ピン部材14は、挿入孔24に挿入される挿入部26と、頭部28と、押圧部30とを含んで構成されている。頭部28は、平板状に形成されており、図2に示されるように、フェンダライナ18の挿入孔24よりも大径に形成されている。そして、ピン部材14をクリップ本体12へ挿入した状態で、頭部28は、クリップ本体12のフェンダ受け部32との間でフェンダライナ18を挟むように保持する。
【0036】
図5に示されるように、頭部28の一方の面には挿入部26が突設されている。挿入部26は、頭部28と一体に形成されており、外壁56と、中間リブ58と、係止爪60とを含んで構成されている。
【0037】
外壁56は、略円筒状に形成されており、この外壁56の外周面には、係止爪60が形成されている。また、中間リブ58は、外壁56の内周面の対向する部位の間を掛け渡すようにして略平板状に形成されており、外壁56よりも頭部28から離間する方向へ突出されている。そして、外壁56の先端は、中間リブ58から離間するにつれて根元側(頭部28側)へ傾斜されており、中間リブ58を頂点とする略山型に形成されている。
【0038】
外壁56の外周面に形成された係止爪60は、外壁56よりも外側へ突出した傾斜面60Aを備えている。傾斜面60Aは、外壁56の先端側から根元側へ向かうにつれて外側へ突出するように傾斜されている。また、傾斜面60Aにおける頭部28側の端部には、頭部28と対向する係止面60Bが形成されている。ここで、係止爪60の周囲がくり貫かれており、係止爪60は、傾斜面60Aの一端(紙面上端)のみで外壁56と繋がっている片持ち構造となっている。このため、挿入部26をクリップ本体12の挿入孔24へ挿入する際には、傾斜面60Aが挿入孔24の孔縁から反力を受けて係止爪60が内側へ撓む。また、係止爪60が挿入孔24に挿通されると、係止爪60が復元し、係止面60Bによってピン部材14の抜出が防止又は抑制される構造となっている。
【0039】
ここで、頭部28の外周部には、押圧部30が形成されている。押圧部30は、頭部28と一体に形成されており、頭部28の厚み方向に延出されている。そして、図2に示されるように、ピン部材14の挿入部26がクリップ本体12に係止された状態では、押圧部30が取付部22側へ延出されており、押圧部30の先端が湾曲部50と保持部材40との間に入り込んでいる。そして、押圧部30によって取付部22を構成する一方の保持部材40を介してバンパタブ20を他方の保持部材38側へ押圧させている。このとき、押圧部30における保持部材40と接触している接触面30Aは、保持部材40に対応する形状となっており、接触面30Aと保持部材40とが面接触している。
【0040】
次に、クリップ10によってバンパ16とフェンダライナ18とを締結する手順の一例について説明する。
【0041】
初めに、バンパ16のバンパタブ20にクリップ本体12の取付部22を取り付ける。具体的には、図2示されるように、取付部22の保持部材38と保持部材40とでバンパタブ20を挟み込んで取り付けられる。その状態で、バンパ16が次工程へ搬送される。
【0042】
次に、フェンダライナ18を図示しないボデーへ組み付ける。このとき、ボルト及びナットなどの締結具によってフェンダライナ18をボデーへ組み付けてもよく、他のクリップなどによってフェンダライナ18をボデーへ組み付けてもよい。
【0043】
続いて、クリップ本体12が取り付けられた状態のバンパ16をボデーへ仮組みする。その後、フェンダライナ18をクリップ本体12へセットする。具体的には、クリップ本体12のガイド用リブ48へフェンダライナ18の貫通孔18Cを通して位置決めする。このとき、フェンダライナ18がクリップ本体12から外れないように仮止めしてもよい。
【0044】
最後に、フェンダライナ18の貫通孔18Cとクリップ本体12の挿入孔24とにピン部材14を挿入し、ピン部材14をクリップ本体12に係止させる。以上の手順によって、バンパ16とフェンダライナ18とを締結させる。
【0045】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係るクリップ10及び外装部品の締結構造の作用並びに効果について説明する。
【0046】
本実施形態では、上述したように、バンパ16にクリップ本体12を取り付けた後、ピン部材14によってフェンダライナ18をクリップ本体12に取り付けることでバンパ16とフェンダライナ18とを締結させることができる。すなわち、バンパ16とフェンダライナ18とを直接重ね合わせて位置決めする必要なくクリップ本体12を取り付けることができる。また、ピン部材14の挿入部26がクリップ本体12に係止された状態では、ピン部材14の押圧部30が保持部材40を介してバンパタブ20を保持部材38側へ押圧している。これにより、保持部材40と保持部材38とでより強力にバンパタブ20を挟み込むことができ、バンパ16に対するクリップ本体12の保持力が高められる。この結果、バンパ16とフェンダライナ18との締結強度を確保することができ、組付け性及び締結強度の確保の両立を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、バンパタブ20の第1凹部20Aに保持部材38の爪部38Aが引掛けられており、さらにピン部材14の押圧部30によって保持部材40がバンパタブ20側へ押圧されている。これにより、保持部材38と保持部材40とで強固にバンパタブ20を挟持することができる。この結果、取付部22に保持部材38が形成されていない構成と比較して、バンパ16に対するクリップ本体12の保持力を高めることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、ピン部材14が挿入されるクリップ本体12の挿入孔24を取付部22よりも車両内側に形成することにより、車両の外部からピン部材14を見えにくくすることができる。この結果、ピン部材14が見えやすい位置に設けられている構成と比較して、車両の意匠性を向上させることができる。
【0049】
さらにまた、本実施形態では、図6に示されるように、クリップ本体12のベース部34に形成された突起部44と押さえ部46によってバンパタブ20の第2凹部20Dを挟み込んでいる。これにより、車両の走行時にフェンダライナ18から受けるこじり力などに対する強度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、図4に示されるように、保持部材40と湾曲部50とを繋ぐ撓み片42を保持部材40よりも狭幅に形成して、撓み変形可能に構成している。これにより、取付部22をバンパタブ20へ取り付ける際に、撓み片42を撓ませることができ、取り付けに必要な力を低減させることができる。すなわち、クリップ本体12の取付性を向上させることができる
【0051】
さらに、本実施形態では、ピン部材14のフェンダ受け部32にガイド用リブ48を設けたことにより、ピン部材14を取り付ける前のフェンダライナ18とクリップ本体12との位置決めを容易に行うことができる。また、本実施形態のガイド用リブ48は、フェンダライナ18の前壁部18Aよりも厚く形成されている。このため、このフェンダライナ18よりも厚みが厚い他車種にも適用することができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る外装部品の締結構造について、図7を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
図7に示されるように、本実施形態の締結構造では、ピン部材が設けられておらず、第2外装部品としてのフェンダライナ70にピン部材の機能が含まれている点で第1実施形態と異なっている。具体的には、クリップ本体12が取り付けられる第1外装部品としてのバンパ16は、第1実施形態と同様に、側壁部16Aの後端部から車両幅方向内側へ折返し部16Bが延出されており、この折返し部16Bにバンパタブ20が形成されている。
【0054】
バンパタブ20には、凹部20Aが形成されており、この凹部20Aにクリップ本体12の取付部22を構成する保持部材38が引掛けられる。また、バンパタブ20における凹部20Aが形成された面とは逆の面には、クリップ本体12の取付部22を構成する保持部材40が配置されている。そして、保持部材38と保持部材40とでバンパタブ20を挟み込むようにしてクリップ本体12がバンパ16に取り付けられている。なお、図7では、第1実施形態と同様にクリップ本体12のフェンダ受け部32に挿入孔24が形成されているが、挿入孔24の孔縁にはガイド部が形成されていない。
【0055】
クリップ本体12には、フェンダライナ70が取り付けられる。また、フェンダライナ70は、クリップ本体12のフェンダ受け部32に重ね合わされる前壁部70Aを備えている。
【0056】
ここで、前壁部70Aには、フェンダ受け部32に重ね合わせた状態でクリップ本体12側へ突出されて挿入孔24へ挿入される挿入部72を備えている。挿入部72は、略円筒状に形成されており、第1実施形態におけるピン部材14の挿入部26と同様の形状とされている(図5参照)。また、挿入部72には、図示しない係止爪が形成されており、挿入孔24へ挿入部72が挿入されることで、係止爪がフェンダ受け部32に係止され、前壁部70Aと係止爪とでフェンダ受け部32を挟み込む構造となっている。これにより、フェンダライナ70の抜出が防止又は抑制される。
【0057】
また、フェンダライナ70の前壁部70Aには、押圧部74が形成されている。押圧部74は、挿入部72を挿入孔24へ挿入させた状態で、前壁部70Aからクリップ本体12の取付部22側へ延出されており、クリップ本体12の湾曲部50と保持部材40との間に入り込んでいる。そして、押圧部74の車両後方側の接触面74Aが保持部材40に接触しており、この保持部材40を介してバンパタブ20を保持部材38側へ押圧している。
【0058】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係るクリップ10及び外装部品の締結構造の作用並びに効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る外装部品の締結構造では、フェンダライナ70の挿入部72がクリップ本体12に係止された状態で、フェンダライナ70の押圧部74がクリップ本体12の保持部材40を介してバンパタブ20を保持部材38側へ押圧させる。これにより、保持部材40と保持部材38とでより強力にバンパタブ20を挟み込むことができ、バンパ16に対するクリップ本体12の取付強度を高めることができる。この結果、バンパ16とフェンダライナ70との締結強度を確保することができる。また、フェンダライナ70に挿入部72と押圧部74とが形成されているため、第1実施形態のようなピン部材などを用いる構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0060】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、バンパとフェンダライナとの締結構造について説明したが、これに限定されず、他の外装部品を締結する締結構造に適用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、バンパタブ20の車両後方側の面に凹部20Aを形成したが、これに限定されない。例えば、凹部20Aが形成されていない構造としてもよい。この場合、バンパタブ20に突起などを形成して、クリップ本体12の取付部22側に凹部を形成して係合させてもよい。また、バンパタブ20の両面に凹部を形成した構造としてもよい。この場合、クリップ本体12の取付部22を構成する保持部材40にも爪部を設ければ、より外れにくい構造を得ることができる。
【0062】
さらに、上記実施形態では、クリップ本体12の取付部22よりも車両内側に挿入孔24を形成したが、これに限定されず、取付部22と挿入孔24の位置関係は適宜変更してもよい。
【0063】
さらにまた、上記実施形態では、押圧部をピン部材14又はフェンダライナ70と一体に形成したが、これに限定されない。例えば、図5において、押圧部30をピン部材14の頭部28にボルト及びナットなどの締結具によって接合してもよく、接着剤などによって接合してもよい。
【0064】
また、図7に示されるように、第2実施形態では、フェンダライナ70に挿入部72を一体に形成したが、これに限定されない。例えば、挿入部72を別体で形成し、フェンダライナ70にボルト及びナットなどの締結具や接着剤などによって接合してもよい。この場合、既存のフェンダライナにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用クリップ
12 クリップ本体
14 ピン部材
16 バンパ(第1外装部品)
18 フェンダライナ(第2外装部品)
18C 貫通孔
20A 第1凹部(凹部)
22 取付部
24 挿入孔
26 挿入部
28 頭部
30 押圧部
38 保持部材
38A 爪部
40 保持部材
70 フェンダライナ(第2外装部品)
72 挿入部
74 押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7