(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348548
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】薬物送達注入セット用の小型のばね挿入器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20180618BHJP
A61M 5/20 20060101ALN20180618BHJP
A61M 5/32 20060101ALN20180618BHJP
【FI】
A61M25/06 510
A61M25/06 500
!A61M5/20 550
!A61M5/32 530
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-160607(P2016-160607)
(22)【出願日】2016年8月18日
(62)【分割の表示】特願2013-556616(P2013-556616)の分割
【原出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2016-190124(P2016-190124A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/448,927
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コール コンスタンティノウ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン スクーンメーカー
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−524926(JP,A)
【文献】
特表2010−501281(JP,A)
【文献】
特開2007−216029(JP,A)
【文献】
特開2008−220962(JP,A)
【文献】
特表2010−525869(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/112521(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 5/20
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに着脱可能に接続された挿入器と、
第1のカテーテルハブ位置から第2のカテーテルハブ位置へ動くことができるカテーテルハブと、
前記カテーテルハブに接続され、第1のカテーテル位置から第2のカテーテル位置へ動くことができるカテーテルであって、前記カテーテルハブが前記第1のカテーテルハブ位置にあり、かつ前記カテーテルが前記第1のカテーテル位置にあるときは、前記挿入器内に実質上完全に配置され、前記カテーテルハブが前記第2のカテーテルハブ位置にあり、かつ前記カテーテルが前記第2のカテーテル位置にあるときは、自由端部が前記ベースの外部に配置されているカテーテルと、
前記カテーテル内に位置し、第1の導入針位置から第2の導入針位置へ、前記カテーテルおよび前記カテーテルハブとともに動くことができる導入針であって、前記第1の導入針位置にあるときは、前記挿入器内に実質上完全に配置され、前記第2の導入針位置にあるときは、自由端部が前記ベースの外部に配置されている導入針と、
前記カテーテルハブ、前記カテーテル、および前記導入針を動かすばね部材であって、前記ばね部材を作動させる前に、前記カテーテルハブ、前記カテーテル、および前記導入針は、それぞれ前記第1のカテーテルハブ位置、前記第1のカテーテル位置、および前記第1の導入針位置にあり、前記ばね部材が作動すると、前記カテーテルハブは前記第2のカテーテルハブ位置へ動き、前記カテーテルは前記第2のカテーテル位置へ動き、前記導入針は前記第2の導入針位置へ動き、前記導入針は次いで前記第1の導入針位置へ後退し、前記カテーテルハブが前記第2のカテーテルハブ位置にあるとき、前記ベース内に完全に配置されるばね部材と
を備え、
前記ばね部材は、螺旋状の引っ張りばねであり、第1の端部から第2の端部へ延びるばね部材のコイルは次に進むたびに直径がより大きくなる
ことを特徴とする注入セット。
【請求項2】
前記カテーテルハブは、前記挿入器の内側肩部に係合して、前記第1のカテーテルハブ位置で保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の注入セット。
【請求項3】
前記挿入器が回転すると、前記挿入器の前記内側肩部が前記カテーテルハブから切り離され、その結果、前記ばね部材が前記カテーテルハブを前記第2のカテーテルハブ位置へ動かす
ことを特徴とする請求項2に記載の注入セット。
【請求項4】
前記カテーテルハブが前記第2のカテーテルハブ位置にあるときに前記挿入器が回転すると、ロッキング部材が前記カテーテルハブに係合して前記カテーテルハブを前記ベースにロックする
ことを特徴とする請求項3に記載の注入セット。
【請求項5】
前記カテーテルハブが前記第2のカテーテルハブ位置にあるときに前記挿入器が回転すると、前記挿入器が前記ベースから切り離されて前記挿入器が前記ベースから取り外される
ことを特徴とする請求項3に記載の注入セット。
【請求項6】
前記導入針は、前記挿入器とともに前記ベースから取り外され、前記取り外された挿入器内に実質上完全に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の注入セット。
【請求項7】
プランジャが前記カテーテルハブに着脱可能に接続され、
前記導入針は前記プランジャにしっかりと接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の注入セット。
【請求項8】
前記ばね部材の第1の端部が前記カテーテルハブに接続され、前記ばね部材の第2の端部は前記ベースに接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の注入セット。
【請求項9】
注入セットの作動方法であって、
注入セットベースおよび挿入器は、互いに接続され、
前記挿入器内の張力のかかったばね部材を解放させることによって、前記注入セットのカテーテルが、その自由端部が前記注入セットベースの外部に配置される位置へ動き、前記カテーテル内に位置する導入針が、その自由端部が前記注入セットベースの外部に配置される位置へ動くステップ(a)と、
前記挿入器と前記注入セットベースとの接続が解除されることによって、前記挿入器が前記注入セットベースから取り外し可能になるステップ(b)と、
前記ばね部材の前記解放によって、前記ばね部材が折り重なって前記ばね部材が前記注入セットベース内に格納されるステップ(c)と
を含み、
前記ばね部材は、螺旋状の引っ張りばねであり、第1の端部から第2の端部へ延びるばね部材のコイルは次に進むたびに直径がより大きくなる
ことを特徴とする注入セットの作動方法。
【請求項10】
前記取り外し可能になるステップ(b)は、前記挿入器を取り外すと、前記挿入器とともに前記導入針が取り外し可能になるステップを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の注入セットの作動方法。
【請求項11】
前記挿入器の回転によって、前記ばね部材が解放される
ことを特徴とする請求項10に記載の注入セットの作動方法。
【請求項12】
前記取り外し可能になるステップ(b)は、前記動くステップ(a)の後に前記挿入器が回転されることによって、前記挿入器と前記注入セットベースとの接続が解除されることによって前記挿入器が前記注入セットベースから取り外し可能になるステップであり、前記挿入器が取り外されることによって、前記注入セットベースの隔壁が露出して流体コネクタが受容可能になるステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項9に記載の注入セットの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬物送達注入セット用の小型のばね挿入器に関する。より詳細には、本発明は、導入針およびカテーテルを挿入した後にばね部材が注入セットのベース内に格納される挿入器に関する。さらに詳細には、本発明は、挿入部位における導入針およびカテーテルの挿入がダイヤルまたは外側筐体の回転によって作動される挿入器に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、全体が参照により本明細書に組み込まれている2011年3月3日出願の米国特許仮出願第61/448,927号明細書の利益を主張するものである。
【0003】
糖尿病を患う多くの人が、血糖値の綿密な制御を維持するために、何らかの形の日常的なインシュリン療法を使用している。現在、2つの主要な日常的インシュリン療法の方式がある。第1の方式は、シリンジおよびインシュリンペンを含む。これらのデバイスは、簡単に使用することができ、比較的低コストであるが、通常1日3回から4回の注射のたびに、針で刺す必要がある。第2の方式は、注入ポンプ療法を含み、これには約3年間使えるインシュリンポンプの購入が必要である。ポンプの初期コストは大きくなる可能性があるが、使用者の見地からすれば優れている。したがって、ポンプを使用してきた患者の大部分は、一生ポンプを使い続けることを好む。注入ポンプは、シリンジおよびペンより複雑であるが、インシュリンを連続して注入でき、投与が正確であり、また送達予定をプログラムできるという利点を提供する。この結果、血糖がより綿密に制御され、健康であるという感覚が改善される。
【0004】
注入ポンプを使用するには、ポンプ内のリザーバから使用者の皮膚内へインシュリンを運ぶ、通常、注入セットまたはポンプセットと呼ばれる使い捨ての構成要素を使用する必要がある。注入セットは通常、ポンプコネクタ、1本の管材、およびハブまたはベースからなり、ハブまたはベースから注入カニューレが延びる。ハブまたはベースは、使用中に皮膚の表面上でベースを保持する粘着物を有し、この粘着物は、手で、または手動もしくは自動の挿入デバイスを用いて、皮膚に付けることができる。鋼針注入セットおよび軟性カテーテルセットを含めて、多くの利用可能なタイプの注入セットがある。軟性カテーテルセットは通常、鋼針導入器を用いて手動で患者内へ挿入され、挿入後、鋼針導入器は患者から手で取り外され、軟性カテーテルは定位置に残る。
【0005】
導入針を手で挿入および後退させることに関連する1つの問題は、挿入および後退させる力、速度、平滑さ、ならびに角度にばらつきがあることである。このばらつきにより、カテーテル挿入の失敗率が増大する可能性がある。さらに、上記のように、使用者は通常、カテーテルを挿入した後に導入針を取り外さなければならない。この場合、使用者が取り外した導入針を取り扱う際に偶発的に針で刺す恐れがある。
【0006】
別のタイプの注入セットでは、機械化された挿入デバイスを使用して、導入針およびカテーテルの強制的かつ急速な挿入、導入器の取外し、またはこれらの両方を行う。挿入デバイスは、使用者が携帯および装備する必要のある別個の独立型ユニットであることが多い。通常、独立型の挿入器では、使用者が手で挿入器のばねに付勢する必要があり、その結果、ばねが正しく付勢されなかったときはカテーテルの挿入に失敗する可能性がある。
【0007】
したがって、使用者が携帯しなければならない構成要素の数を低減させ、偶発的に針で刺すことを実質上防止しながら、カテーテルを容易に挿入できる注入セットおよび挿入デバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一目的は、注入セット、特にインシュリン注入セット用の小型のばね挿入器を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ばね部材を使用してカテーテル挿入を容易にし、挿入後にばね部材が注入セットのベース内に格納される注入セット挿入器を提供し、それによってカテーテル挿入の失敗を実質上防止し、低プロファイルの注入セットを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、注入セットのコネクタがカテーテルハブに直接接続される注入セットを提供し、それによって流体経路内の構成要素の数を低減させることである。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によれば、薬物送達注入セットが、挿入部位で導入針およびカテーテルを挿入するばね部材を収容および格納する。カテーテルおよび導入針は、ダイヤルとして働く外側筐体を回転させることによって、挿入器の垂直位置から挿入される。導入針は、挿入器をベースから切り離すことによって、挿入部位から手で取り外される。ばね部材はベース内に格納され、それによって注入セットの厚さを低減させることが可能になる。挿入器上のノブを用いて、導入針を筐体またはダイヤル内へ引き込んで導入針を遮蔽し、それによって偶発的に導入針で刺すことを実質上防止する。さらに、導入針は、カテーテルから完全に後退するため、流体経路の一部ではなくなり、それによって流体経路内の構成要素の数を低減させ、漏れおよび封止に関する問題を実質上防止する。
【0012】
上記の目的は、ベースと、ベースに着脱可能に接続された挿入器とを含む注入セットによって本質的に達成される。カテーテルは、挿入器内に実質上完全に配置された第1のカテーテル位置から、カテーテルの自由端部がベースの外部に配置される第2のカテーテル位置へ動くことができる。導入針は、カテーテル内に位置し、挿入器内に実質上完全に配置された第1の導入針位置と、導入針の自由端部がベースの外部に配置される第2の導入針位置との間を、カテーテルとともに動くことができる。ばね部材は、カテーテルを第1のカテーテル位置から第2のカテーテル位置へ動かし、導入針を第1の導入針位置から第2の導入針位置へ動かして、カテーテルの挿入を容易にする。カテーテルが第2のカテーテル位置にあるとき、ばね部材はベース内に実質上完全に配置される。
【0013】
上記その他の目的は、ベース内にばね部材を格納して導入針を引き込む着脱可能な挿入器を有する注入セットを提供し、それによって低プロファイルの注入セットを提供することによって実質上実現される。さらに、取り外される挿入器内に導入針を配置することによって、偶発的に導入針で刺すことが実質上防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記の利益および利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明および添付の図面からより明らかになるであろう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による注入セットの流体コネクタの斜視図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による挿入器およびベースの斜視図である。
【
図3】
図2の挿入器をベースから取り外し、
図1の流体コネクタをベースに接続した後の注入セットの斜視図である。
【
図4】
図2の挿入器およびベースの横断面斜視図である。
【
図5】
図4の挿入器のカテーテルハブの拡大斜視図である。
【
図6】異なる角度から切り取った
図4の挿入器のカテーテルハブの拡大斜視図である。
【
図7】
図4のベースによって受容された挿入器のカテーテルハブの部分斜視図である。
【
図8】ベーススナップに係合しているカテーテルハブの拡大斜視図である。
【
図9】筐体またはダイヤルから切り離されたベーススナップの拡大斜視図である。
【
図10】導入針および軟性カテーテルが挿入位置にある状態でベースに接続された挿入器の斜視図である。
【
図11】
図10の導入針および軟性カテーテルの拡大斜視図である。
【
図12】挿入器をベースから切り離すところを示す部分横断面斜視図である。
【
図14】ベースにロックされたカテーテルハブの斜視図である。
【
図15】ベースから取り外された筐体またはダイヤルの部分横断面斜視図である。
【
図16】筐体またはダイヤル内へ引き込まれた導入針の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面全体にわたって、同じ参照番号は同じ部品、構成要素、および構造を指すと理解されることとする。
【0016】
以下に記載する本発明の例示的な実施形態は、軟性カテーテルを皮膚内へ挿入する新規な手段を提供する。詳細には、本発明の例示的な実施形態は、導入針142および軟性カテーテル134を皮膚内へ挿入し、次いで
図2、
図3、
図10、および
図14に示すように、注入セット101のベース111内にばね部材171を格納する挿入器121を提供し、それによって低プロファイルの注入セットを提供する。
【0017】
注入セットのベース111は、
図2および
図3に示すように、挿入部位で注入セットを皮膚表面に固定するために、皮膚に固定する接着層112を備えることが好ましい。接着層112により、ベースは皮膚表面に対して正しい位置に確実に留まることができ、挿入中に皮膚を確実に固定して、皮膚表面の傷口を広げるリスクを低減させながら導入針の挿入をさらに助けることができる。
図4、
図10、および
図11に示すように、ベース111は平面113を有し、平面113内に開口114が設けられ、開口114をカテーテル134および導入針142が通過する。
図4に示すように、壁115が平面113の外縁部から上方へ延び、その結果、平面および壁115によって空胴116が画定される。
【0018】
挿入器121は、
図2、
図4、および
図10に示すように、ベース111に回転可能に接続された筐体またはダイヤル123と、ダイヤル123のベース122から上方へ延びるダイヤルポスト124と、ダイヤルポスト124に可動式に接続されたノブ125とを含む。ダイヤル123は、
図2および
図4に示すように、実質上切頭円錐形の形状を有する。ダイヤル123の壁126は、ダイヤルベース122から下方および外側へ延び、ダイヤルポスト124は、ダイヤルベース122から上方へ、ダイヤルベース122に対して実質上垂直に延びる。ダイヤルポスト124は、
図12に示すように、互いから隔置された3つの実質上弧状の部材181、182、および183をその上端部に含むことが好ましい。ダイヤルベース122から下方へは、第1のアーム191および第2のアーム193が延び、ダイヤル壁126内に配置される。
図6に示すように、第1のアーム191および第2のアーム193上には、それぞれ第1の肩部192および第2の肩部194が形成される。
図4〜6に示すように、第1のアーム191と第2のアーム193との間には、スロット197および198が形成される。スロット197および198により、カテーテルハブ131を下方へ動かすことが可能になる。
図11および
図15に示すように、アーム191および193に接続されたフック117および118が、ベース111によって受容される。フック117および118は、
図11に示すように、ベース111の下面132に係合し、カテーテル134の挿入前にダイヤル121が引き込まれるのを防止する。
【0019】
挿入器ノブ125は、
図4に示す第1の位置、すなわち上位の位置と、
図12に示す第2の位置、すなわち下位の位置との間を動くことができる。挿入器ノブ125は、導入針プランジャ141の端部にしっかりと固定される。
図4に示すように、ノブ125が第1の位置にあるとき、導入針142はダイヤル123内に配置されている。
図10に示すように、ノブ125が第2の位置にあるとき、導入針142はダイヤル123の外側に露出される。
【0020】
カテーテルハブ131は最初、
図4および
図5に示すように、ダイヤル123の内側の第1の位置に配置されている。カテーテルハブ131は、第1の接続アーム136および第2の接続アーム137によって接続された内側リング133および外側リング135を有する。カテーテルハブ131が第1の位置にあるとき、第1の接続アーム136および第2の接続アーム137は、
図5に示すように、ダイヤルのアーム191および193の肩部192および194上に位置し、それによってカテーテルハブ131が下方(ベース111の方)へ動くのを防止する。カテーテルハブ131の内側リング133から、軟性カテーテル134が下方へ延びる。
図4に示すように、カテーテルハブ131の内側リング133内に開口138が配置され、導入針142が開口138を貫通することが可能になる。
図4および
図14に示すように、カテーテルハブ131の内側リング133内に形成された凹部の内側には、隔壁172が配置される。
【0021】
図4に示すように、ダイヤル123内にばね部材171が配置される。ばね部材171の第1の端部173は、カテーテルハブ131に接続される。ばね部材171の第2の端部174は、ベース111に接続される。ばね部材171は、螺旋状の引っ張りばねであることが好ましく、したがって、第1の端部173から第2の端部174へ延びるばね部材のコイルは、次に進むたびに直径がより大きくなる。螺旋状のばねは、通常は実質上円錐形状の圧縮ばねである。螺旋状のばねが圧縮を受けると、コイルは互いに押し付けられるのではなく互いの中に入り込み、したがって移動距離をより長くすることができ、圧縮された構成でさらに小型にすることができる。
図4に示すように、最初、ばね部材171には張力がかかっており、カテーテルハブ131はアーム191および193の肩部192および194上に位置し、カテーテルハブ131が下方へ動くのを防止する。ばね部材171は、解放されると折り畳まれ、それによってカテーテル134および導入針142を挿入部位内へ引き込む。
図14に示すように、ばね部材171は折り重なって低いプロファイルを有する実質上円板形状の部材を形成し、この部材がベース111内の空胴116内に実質上完全に受容される。
【0022】
導入針プランジャ141は、
図4に示すように、第1の端部143および第2の端部145を有する。第1の端部143は、ノブ125にしっかりと接続され、その結果、ノブはプランジャ141とともに動く。導入針142は、第2の端部145にしっかりと接続され、その結果、導入器はプランジャ141の動きとともに動く。プランジャ141は、ダイヤルポスト124内で動かすとダイヤル123の外部で動き、アーム191および193内で動かすとダイヤル123内で動く。プランジャ141は、
図4に示す第1の位置から
図12に示す第2の位置へ動き、また第1の位置に戻ることができる。第1のプランジャアーム146および第2のプランジャアーム147は、
図5、
図6、
図15、および
図16に示すように、カテーテルハブ131の下面132に係合するフック148および149を有する。カテーテルハブ131の外周内の凹部185および186により、カテーテル134を挿入した後にプランジャ141をカテーテルハブから切り離すことが可能になる。
【0023】
導入針142は隔壁172およびカテーテル134を貫通しており、その結果、
図7、
図10、および
図11に示すように、カテーテルハブ131が第2の位置につくと、導入針の端部144がカテーテル134の外側に露出される。導入針端部142の端部144は鋭く、所望のカテーテル挿入点で皮膚に容易に穴を開けることができる。プランジャ141が第1の位置にあるとき(
図4)、導入針142はダイヤル123の外側に露出されない。プランジャ141が第2の位置にあるとき(
図12)、導入針142はダイヤル123およびベース111の外部に露出され、その結果、所望のカテーテル挿入点で皮膚に穴を開けることができる。
【0024】
図4に示すように、ベース111内にロッキング部材161が回転可能に配置される。
図8、
図9、および
図11に示すように、ベース111に接続されたスナップアーム106および107がフック108および109を有し、フック108および109は、
図9に示すように、ロッキング部材161の凹部162内に受容され、カテーテル134の挿入前にロッキング部材161がベース111に対して回転するのを防止する。スナップアーム106および107は、挿入中にカテーテルハブ131によって下方へ動かされ、その結果、
図8および
図9に示すように、フック108および109が凹部162から出て、それによってロッキング部材161を回転させることが可能になる。ロッキング部材161は、
図14に示すように、カテーテル134の挿入後にカテーテルハブ131の上へ回転する張出し164および165を有し、それによってカテーテルハブ131をベース111にロックする。
【0025】
図1〜3に示すように、コネクタ103は複数の可撓性のアーム195を有し、可撓性のアーム195は、ベース111の外面内の対応する凹部196に係合するように適合される。コネクタ103からは管材104が延びており、ポンプに接続するように適合される。管材104は、コネクタ103から下方へ延びる貫通部材または鋭利部材(図示せず)に接続され、管材104と貫通部材との間に流体経路が形成される。貫通部材は、
図3に示すように、コネクタ103がベース111に接続されたときに隔壁172を貫通するように適合され、それによって管材104とカテーテル134との間に流体経路を形成する。
【0026】
組立ておよび動作
図2は、使用者によって受容されたベース111および挿入器121の斜視図である。挿入器121のフック117および118は、
図11に示すように、ベース111の下面132に係合し、それによって挿入器121がベースから取り外されるのを防止する。ノブ125は、
図2に示すように、第1の位置、すなわち上位の位置にあり、その結果、カテーテル134および導入針142は、
図2に示すように、ダイヤル本体123内に実質上完全に配置され、それによって偶発的に導入針で刺すことを実質上防止する。カテーテル134が挿入されていないため、コネクタ103(
図1)はまだベース111に接続されていない。
図4に示すように、ばね部材171には張力がかかっている。
【0027】
カテーテル134を挿入する前に、裏当て(図示せず)が取り外されて接着層112が露出し、その結果、ベース111を所望のカテーテル挿入部位で皮膚表面に接着することができる。カテーテル挿入前、カテーテルハブ131はダイヤルアーム191および193の肩部192および194上に位置し、それによってカテーテルハブ131が下方へ動くのを防止する。カテーテル173を挿入するには、ダイヤル123を時計回りに回転させる。接着層112は、ダイヤル123が回転したときにベース111の動きに耐えるように、回転に逆らう力を提供する。ダイヤル123が回転すると、ダイヤルアーム191および193が回転し、それによって、
図6に示すように、ダイヤルアーム191および193の肩部192および194がカテーテルハブ131から切り離される。ここでカテーテルハブアーム136および137は、ベースアーム191および193間でスロット197および198と位置合わせされており、その結果、引き伸ばされたばね部材171内に蓄積されたエネルギーにより、カテーテルハブ131が下方(すなわち、ベース111の方)へ引っ張られる。スロット197および198は、カテーテルハブ131をベース111の方へ下方に動かすことによって案内する。カテーテル134はカテーテルハブ131にしっかりと接続されており、その結果、カテーテル134はカテーテルハブ131とともに下方へ引っ張られる。プランジャフック148および149はカテーテルハブ131に係合しており、その結果、プランジャ141にしっかりと接続された導入針142もまた、カテーテルハブ131とともに下方へ引っ張られる。さらに、プランジャ141の第1の端部143に接続されたノブ125は、
図10に示すように、ダイヤルポスト124に沿って下方へ引っ張られる。ノブ125が第2の位置、すなわち下位の位置に動くことで、導入針142およびカテーテル134が挿入されたことを使用者に指し示す。
【0028】
導入針142およびカテーテル134の挿入前、ベース111のスナップアーム106および107のフック108および109はロッキング部材161内の凹部162内に受容されており、それによってロッキング部材161が動くのを防止する。
図11に示すように、ロッキング部材161から放射状に内方へ延びるタブ178および179がダイヤル123のフック117および118に係合しており、それによって、カテーテル134および導入針142が挿入される前に、ダイヤルがさらに回転して引き込まれるのを防止する。ばね部材171がカテーテルハブ131をベース111内の空胴116内へ引き込むと、
図8および
図9に示すように、カテーテルハブ131はベーススナップアーム106および107に係合して下方へ押す。ベーススナップアーム106および107が下方へ動くと、フック108および109がロッキング部材161内の凹部162から出て、それによってロッキング部材161およびダイヤル123を回転させることが可能になる。ここでカテーテル134および導入針142は、
図10および
図11に示すように、挿入部位内に挿入されている。
【0029】
このとき、ダイヤル123を時計回りにさらに回転させることができる。ダイヤルフック117および118が回転すると、ロッキング部材のタブ178および179が回転する。ロッキング部材161が回転すると、
図9および
図11に示すように、ベーススナップアーム106および107がロッキング部材の外面上の傾斜175および176に沿って摺動してロック凹部177および180に入る。また、ロッキング部材161が回転すると、
図12に示すように、ロッキング部材の張出し164および165がカテーテルハブ131の上へ回転し、それによってカテーテルハブ131をベース111へロックする。
【0030】
ダイヤル123が回転すると、
図11に示すように、フック117および118が動いてベース111内の凹部185および186に係合する。ダイヤル123の回転によってプランジャフック148および149も回転し、カテーテルハブ131内の凹部154および155に係合する。したがって、
図14および
図15に示すように、ダイヤル123およびプランジャ141を含む挿入器121をベース111から取り外すことができる。
図14に示すように、ばね部材171、カテーテルハブ131、およびロッキング部材161はベース111内に留まり、その結果、カテーテル134は挿入部位内に挿入されたままであり、導入針142は挿入部位から引き抜かれる。
【0031】
このとき、
図14に示すように、カテーテルハブ131内の隔壁172は露出されている。ダイヤル123が回転してベース111から取り外された後、軟性カテーテル134は皮膚の下へ挿入されたまま実質上垂直の位置に留まり、すなわち軟性カテーテル134は、ダイヤル123の回転運動とともに屈曲しない。したがって、導入針142が流体経路の一部ではなくなるため、隔壁172に穴を開けることで軟性カテーテル134への直接的な流体経路が設けられる。
【0032】
このとき、流体コネクタ103上の貫通部材または鋭利部材(図示せず)は、隔壁172を貫通することができ、それによってカテーテル134と管材104との間に流体接続をもたらすことができる。使用者は、コネクタ103を注入セットベース111に接続する前に、コネクタ103に呼び水をすることができる。コネクタ103の可撓性のアーム195は、ベース111内の凹部196に係合して、コネクタ103をベース111に着脱可能に接続する。ここで注入セット101は、
図1および
図3に示すように、インシュリンの注入を開始する準備ができている。可撓性のアーム195とベース凹部196を着脱することによって、任意の時点でコネクタ103を取り外し、また再び注入セットベース111に取り付けることができる。隔壁172は、貫通部材が隔壁172から取り外されると無菌障壁を提供し、ベース111内のロッキング部材161によって固定されたカテーテルハブ131内に位置する隔壁172に貫通部材を再び挿入することによって、流体接続が再び確立される。
【0033】
取り外された挿入器121のノブ125は、
図15に示すように、第1の位置、すなわち上位の位置に戻り、それによってプランジャ141を持ち上げ、導入針141を筐体またはダイヤル123内の保護位置へ引き込む。
図4、
図15、および
図16に示すように、ノブ125は、プランジャ141内の凹部157がダイヤル123のフック158に係合するまで持ち上げられる。ダイヤルフック158はプランジャ凹部157に係合し、それによってプランジャ141が下方へ動くのを防止し、偶発的に導入針で刺すことを実質上防止する。
【0034】
上記の例示的な実施形態は、皮下注射または皮内注射で使用するために適合することもできる。さらに、貫通部材197および隔壁172以外にも、流体接続を維持する異なる方法が可能である。たとえば、摺動ガスケットシールを使用することができる。代替的方法を使用して、カテーテルおよび導入器を挿入することもできる。たとえば、角のある針を皮膚に接触させて水平に動かすことで、皮膚の皮下層または皮内層に入れることができる。コネクタをベースに接続する代替的方法を使用して、コネクタの着脱を容易にすることもできる。
図4および
図16に示すように、プランジャ141を上方へ引っ張ってダイヤルフック158に係合させることを容易にするには、凹部157の上でプランジャ141上に傾斜表面159を設けることが好ましい。あるいは、導入針142は、挿入器121とともにベースから引き抜くのではなく、カテーテル134を挿入した後に挿入部位から引き抜いてベース111内に格納することもできる。
【0035】
上記の例示的な実施形態は注入セットであるが、本発明の原理はまた、パッチポンプ(一体化されたリザーバおよびポンプ機構を有する自立型の注入デバイス)ならびに他のタイプの医療用注入および注射デバイスにも適用できることが、当業者には明らかであろう。
【0036】
上記の実施形態および利点は、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。本発明の例示的な実施形態の説明は例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。様々な修正形態、代替形態、および変形形態が当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るものとする。